satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第331話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でのんびりしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、海の国へ到着し、王宮前まで来ました。入れんかったわ。今回は入りますよ!
ラル「入れなかったらビビるけど?」
ティール「門の前で立ち往生」
王子がそこにおるのに立ち往生とはこれ如何に??
いや、立ち往生しないから!! 大丈夫だから!!


《L side》
今まで馬車と並走していたアラシ君が騎竜から降り、その手綱を他の騎士さんへと手渡すと、門の側にいる騎士さんへ近寄る。
「陸の国、スプランドゥールの『明けの明星』の長、ルーメン・L・ケアル様。並びに騎士団団長、フェゴ・フェルドの名代として参りました、アラシ・フェルドです。今回、陸、海両国での定期貿易、騎士団合同訓練の為にこちらへ参りました。そちらの騎士団団長殿へ取り次ぎは可能でしょうか?」
こちらに背を向けているので、表情までは読み取れないのだが、今のアラシ君は真面目な顔をしているに違いない。
最初から私に対して敬語を使わないアラシ君が、ここまで畏まった言い方をしているのが面白くて仕方がない。
しかし、この真面目空気で笑うわけにもいかないので、すんっと澄まし顔をしていると、門番の騎士さんが何か返答する前に王宮の門がゆっくりと開く。
「ふふ。……時間通りの来訪、感謝します」
シンプルなロングコートに片手剣を帯剣している男性が微笑みながら姿を現した。そして、その横にはいかにも執事ですって感じの燕尾服姿の男性が佇んでいる。
騎士さんはロングコートの男性に対し、ぴしっと背筋を伸ばし、右手を胸に当てる。ついでにアラシ君もペコッと頭を下げた。
「団長! お疲れ様です!」
「あぁ。……君達も警備、ご苦労様」
門番の騎士さんに言葉をかけ、すぐにアラシ君へ目を向ける。
「話には伺っています。君が……」
「は、はい! アラシ・フェルドです!」
「ふふっ……そんなに緊張しなくても大丈夫です。私が海の国の騎士団団長、ゼニス・グレイフォード。こちらは王宮に仕える執事の一人、アルベルトです。……それにしても、お久し振りですね」
「……?」
ゼニスさんの言葉に恐る恐る頭を上げるものの、困惑気味なアラシ君。そんな彼の気持ちを察したらしいゼニスさんはニコッと笑い、付け加える。
「以前、私とお会いした時は小さかったので覚えていないのも無理はありませんね。……アラシ様は一度、お父様に連れられ、ここへ来たことがあるんですよ?」
「はいっ!? そうなんですか!? 親父、そんなこと一言も……」
「そうですね。……恐らく、黙っていた方が面白いと思われたのではないでしょうか。まあ、フェゴさんのことは君がよく分かっていると思いますけれど」
「うっ……! 確かに、親父が考えそうですね。……いやだからって、黙ってるのはどうなんだよ、親父のやつ!」
お祭りの時も思ったけれど、アラシ君ってフェゴさんに玩具にされてないか? 流石、イグさんのお父さん……なんて言うと、アラシ君もそうなのだけれど、彼は誰かを玩具にするイメージはない。
ここにはいないフェゴさんに対する恨み言に忙しいアラシ君は放置し、私は窓から大きく身を乗り出し、ゼニスさんへ手を振る。
「こんにちは、ゼニスさーん! しばらくお世話になりまーす!」
「おや、ラル様。お久し振りでございます」
以前、ここへ訪れた際、ゼニスさんとは顔見知りになっている。なんなら、過去に滞在していた時は騎士団の訓練に参加したことすらある。流石に騎士団全員の顔を知っているとまではいかないけれど。
しかし、ゼニスさんの横にいる執事さん、アルベルトさんとやらは初見である。
ティール、あの執事さんは知ってる人?」
「……ん?」
顔を出すつもりがなかったらしいティールは馬車の中でじっとしていたのだが、私の言葉にちらりと窓から外を見た。そして、─そこまで身を出していた訳ではないが─アルベルトさんと目が合ったのか、ティールはしまったという顔をし、アルベルトさんはパッと顔を輝かせる。
「……アルベルトはぼくの従者だよ。ツバサのメアリーさんみたいな感じの」
専属の使用人さんってことね。ティールは随分と慕われているようで……ん? アルベルト?
「前にドジっ子執事の話を聞いた気がするけど、あの人?」
ティールは小さく頷く。
私が聞いた話は、荷物を運べば転び、料理を作れば、何かしらひっくり返して、掃除洗濯をすれば、何かと手間を増やす……でしたっけ?
「そ。一日一回は何かしらトラブルを起こすことで有名なアルベルトです」
「にゃはは♪ それ、使用人として大丈夫かぁ?」
「が、頑張ってるのは一応知ってるから……っ!」
何とかフォローしているように思うが、今の話でなぜ使用人として雇われているのか謎な人物ではある。もしかしたら、優しいティールの堪忍袋が切れるのは近いかもしれない。
そんなアルベルトさんはティールに熱烈な視線を送り続けている。早く話したくてウズウズしている……そんな感じだ。
「……くっそ。これは行かなきゃ駄目かぁ」
そう呟くと、ティールは身なりを整えながら馬車を降り、アラシ君のところまで歩み寄る。
「お久し振りで……いや、久し振り、ゼニス。ベルト」
「はい。お久し振りでございます、殿下」
「お久し振りでございます、ティール様! お元気そうで何よりです。このアルベルト、ティール様の帰りを待ち望んでおりましたー!」
「うるさい、ベルト。客人の前だ。自制しろ」
「申し訳ありません。嬉しくて、つい」
アルベルトって人、なんだろう、子犬みたいな人だな。私の第一印象はそれだ。
「はっ! 申し訳ありません! 思わず、取り乱しました!」
ティール達三人の会話でようやく我に返ったアラシ君は三人に向かって再び頭を下げる。
「いえいえ、お気になさらず。……アラシ様のその性格は陛下から伺った通り、若い頃のフェゴさんにそっくりです」
「……へ?」
ぽかんとするアラシ君にゼニスさんはクスッと小さく笑うと、「単なる独り言です」と返す。
「さて。皆様をこのままこの場に留まらせておくわけにはいきませんね。定期貿易並びに合同訓練。そして、ティール様一行についても聞き及んでおります。どうぞ、中へ。……ティール様も一度、馬車へお戻りになられますか?」
「いや、面倒だから歩く。すぐそこだし」
すぐそこって距離ではなくないか?……と思ってしまうのは、私の感覚が庶民だからだろうか。いくら王宮の門を潜ったからと言って、目の前に王宮どーんって訳ではないのだけれど。
門を潜って最初に目に入るのは、綺麗に剪定された庭園。その庭園を抜けた先に王宮の扉が見えてきたはずで。
「畏まりました。……では、ティール様はそのままアルベルトと共に自室へ。スプランドゥールの騎士団方は私の部下が、ギルドの皆様は王宮前で担当の者がご案内致します。……もちろん、ラル様方は私がご案内致しますので、ご安心を」
「分かった。……ぼくの荷物は」
「後程、私がお運びします」
噂のドジっ子執事とは思えない程、きちっとした所作で名乗り出る。恭しく頭を垂れるそれは正しく、主を敬う従者の手本のようなそれだ。
「ふむ。ベルトが? 転けてぶちまけないって約束できるか」
「私の命に代えても死守致します」
ティールはじーっとアルベルトさんを見つめた後、そっとゼニスさんへ目を向ける。
「ゼニス、頼んでもいい?」
「はい。他の使用人に伝えておきましょう」
ティールさまー!!??」
「信用ならない。ぼくがいるならともかく、一人でだろ? なんか怖い」
おおう……バッサリやな。
先程、馬車ではフォローしてたけど、実際はそうでもないらしい。
「アルベルトさんだっけ? ティールから手厳しく扱われてんだな。刺々しいティール、あんまし見ない気がするなぁ」
「うゆ? ラルにおこるとき、あんなかんじだよ?」
「あぁ~♪ 確かに、生徒会室のティールさん、あんな感じの時ありますもんね♪」
……明言はせず、黙秘させてもらおっかな。えへへ。
私達の乗る馬車はゼニスさんの先導─流れでティールとアルベルトさんもゼニスさんと先頭を歩いてる─で庭園の中を進んでいく。
数分、のんびりと進むとようやく目的地の王宮前へと到着する。ここから更にいくつかの棟というか、別邸があるのだ。
王宮そのもの、王家達の住まう邸宅、お客様用の邸宅、騎士団員の仕事場&寮、その他諸々。それら一帯全てがティールのお家に含まれるのだから訳が分からない。
「ほあー! 綺麗です!」
「立派なもんだな~……昔からあんの?」
「まあ、王権主義国家として国を治める時代からあるから、古いっちゃ古いね。適宜補修とか、建て直しとかしてるから、そこまで目立つ劣化はないけど」
「どこまでがティールのおうちなの~?」
「遠くの方までだよ。後で一緒に行く?」
「いくー! ティールのおうち、たんけんだ!」
馬車から降りたツバサちゃんやレオン君、しーくんの言葉にティールが笑顔で返答する中、私は後ろを振り返り、遠くを見つめる。
あんなに大きかった門が小さく見えた。それ程遠くに王宮自体存在するということになる。
「ツバサちゃんの家もひっろいなぁなんて思ったけど、ティールの家はその次元越えてるよね。いや、マジで」
「王都内にあるとは思えない程の広さですからね。もしかしたら、片田舎の村くらいの敷地面積はあるかもしれません♪」
いやね? 笑えんのよ、ゼニスさん。冗談に聞こえないから、笑えませんのよ。
ゼニスさんはそれ以上は何も言わず、私に向かってニコッと笑いかけると、てきぱきと自身の部下達に指示を出したり、ギルドの人達を案内する使用人さん達に手短に状況を説明したりしていく。
「さあ、ティール様。こちらです」
「知ってるよ。ぼくの家だから。……じゃあ、ラル、皆のことよろしくね? 何かあったらゼニスさんを頼ってね」
おっすおっす!
ティールはにこっと笑うと、「おいで」と呟く。すると、どこからともなく、スイちゃんとセツちゃんが飛んできて、ティールの腰へと装備される。そして、私に向かって小さく手を振って、慣れた足取りで王宮内へと入っていく。
この場に残ったのは、私、しーくん、ツバサちゃん、レオン君、アラシ君。そして、案内役のゼニスさんだ。
「おやおや、ティール様。最後の最後で気を抜きましたか。残念です」
ゼニスさんの笑みを絶やさず、意味深(?)な言葉にツバサちゃん達は首を傾げる。しかし、それについての説明はせず、ゼニスさんはそっと王宮の扉を開く。
「私達も参りましょう。皆様の荷物はこちらで運びますのでお気になさらず」
「? 参るってどこにっすか?」
「国王と王妃の元へです」



~あとがき~
やべぇぇぇ!!! ぐだってるなぁってのがまる分かりじゃぁぁぁ!!! はずいぃぃ!!

次回、海の国の王と妃。
名前ばっか出てたお二人の登場じゃい。

明確に決めている訳じゃないけど、ティールの家は王宮やし、その他諸々施設(?)もあるしでめっちゃめちゃに広い設定。
そして、今回は騎士団のゼニスと執事のアルベルトが登場しました。今後も頻繁に出てくるかまでは分かりませんが、よろしくな!

ではでは。