satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第332話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわやわやしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、王宮突撃したら、新キャラのゼニスとアルベルトが登場しました。
ラル「厳密に言えば、王宮がある敷地内にはいるけど、王宮内にいないんだよなぁ」
ティール「手前でのんびりしてたねぇ」
……た、立ち往生はしてないからね??(滝汗)
ラル、ティール「それはそう」


《L side》
王と王妃……ブライトさんとセイラさんか。
王と王妃に謁見する場となると、王宮内にある謁見の間だろう。二人はすでにそこにいるのだろうか。
「到着時刻はルーメン様から伺っていましたから。概ね、予定通りかと」
なるほど。
ゼニスさんを先頭に王宮内を進んでいく。私は一度、来たことがある関係である程度、王宮内─というか、ティールん家一帯─のマップというか、間取りは把握済みだ。
だからと言って、我が物顔で歩けるものでもないのだが。
すれ違う使用人や王宮内で働く官僚達は─という言い回しで合っているかは謎─私達を見て、恭しく一礼してくる。ゼニスさんがいるせいなのか、私達が客人だからなのかは分からない。それでも、遠回しに「特別な方々」なのだと認識されてるのかと思うと、むず痒いと言いますか。
「皆様、こちらです」
ゼニスさんに案内されたところは煌びやかな装飾が施された大きな扉の前だ。如何にも「この先に王様いるぞ!」と主張する扉だなぁというのが平々凡々な私による感想です。
「この先に陛下と王妃がお待ちです。しかし、お二人からは殿下も共にと仰せつかっていますので、皆様はこちらで少々お待ちください」
「はーい♪ なんか今更だけど、俺ら、めっちゃ私服だけどよかったんすかね? アラシは騎士団員の服だからいいとしてさ~?」
レオン君の言う通り、正装してるのはアラシ君だけだ。残りの面々は当然だが、私服。奇抜な格好をしているわけではないし、問題はないと思っている。何より、だ。
「私は初対面の時より、真面目な格好しているから大丈夫だと思ってる」
「ほえ? ラルさん、どんな服着てたんですか?」
「探検隊用の服。ローブ羽織ってたとはいえ、それなりに泥だらけだったような」
「……ラル、お前」
何をどう考えたのか、アラシ君から哀れみの目を向けられる。何をどう考えたんだ、本当に!
「あの、誤解しないで? この国にあるダンジョンへ仕事があった帰りに色々あって、ここに連れてこられたんだよ。ゼニスさんに」
全員の目がゼニスさんに向く。
ゼニスさんは大人の余裕の笑みを浮かべ、「そうでしたねぇ」とにこやかに話し始める。
ティール様が我々から逃げようとなさるので、あの手この手で捕まえたんでしたね。その節はご迷惑をおかけしました」
中二の夏。この国を訪れた理由は仕事である。その帰りにこの国の街を探索中にばったり、巡回中の騎士団員を連れたゼニスさんと出会した。一回目は上手く撒いたのだが、二回、三回と回を重ねた結果、ゼニスさんの手によって捕まってしまい、嫌々ここへ連れてこられたというわけだ。
「謎の鬼ごっこしましたね。……今なら完全に撒ける自信あるんですけど、あの頃は本当に未熟で」
「おやおや。今度、再戦しますか? こちらも手は抜きませんよ」
……怖そうなんで嫌ですね。
話が脱線したが、ブライトさん達がこのままでいいと言ってくれたのなら、お言葉に甘えていいと思う。というか、身なりを整える時間もなく、ここに連れてこられたので、必要ないってことなんだろう。
「ゼニスさん、穏やかな人なのかと思ったけど、意外と容赦ないタイプ……?」
「それはアラシ様のご想像にお任せします」
「っ……あの、ゼニスさん。アラシ様ってやめていただけると」
おずおずとアラシ君が申し出る。アラシ様呼びが聞き慣れていないから……という理由ではなさそうだ。
なぜなら、騎士団員の人達からアラシ様って呼ばれているから。彼らからすれば、アラシ君は次期団長。アラシ様って敬うのは当然なのだし、アラシ君自身、そう思っているはずだ。でなければ、団員達からの呼び掛けに平然と受け答えしていない。しかし、ゼニスさんは他国の騎士団でそれも団長さんだ。そんな人から「アラシ様」って呼ばれるのはどうにも居心地が悪いのだろう。
「私からすれば、皆様は大切なお客様。敬うのは当然かと」
「ぐ……そうかもしれませんけど」
「ふむ。……そうですね。訓練が始まれば、様呼びはしないと約束しましょう。しかし、今の私は単なる案内役です。ご理解くださいませ」
要約すると、あと少しだけ辛抱してくれやってことだな。
ゼニスさん、騎士団長なのに時々、執事ではと思うことあるもん。それはきっと、普段からブライトさんの側に仕えてるからなんだろな。
「ふふ。そう思っていただけて何よりです。……と、話している間にティール様のご到着ですね」
ゼニスさんの言葉にツバサちゃん達もそちらを振り向く。ティールを見た第一声はと言うと。
「お、おぉ……なんつーか、別人だなぁ?」
「…………え、誰」
「はわぁ~♪」
ティール! ティール、おーじさまだ!」
以上である。
普段からフォーマルな服を好むティールだけど、王子ver.なるとより一層それが強まるというか、別次元で変化するというか。
落ち着いた青系統の貴族が着るような豪華な衣装。髪も綺麗にセットしてあり、左耳には小さなひし形の宝石が揺れるピアスがしてあった。
「素直な感想、どうもありがとう……! っと、お待たせしました」
「いえいえ。何事もなくこちらへ来られたようで何よりです」
「………………まあ、うん。ソウデスネ」
あ、あれは何かあった間だ。
しかし、その内容についてティールは触れず、そっと扉の前に立つ。そのまま扉に手を掛けるかと思ったけれど、何を思ったのかその手を止め、ゼニスさんの方をちらりと見た。
「流れでぼくが先頭に立ったけど……ゼニスじゃなくていいの?」
「私はどちらでも構いませんよ」
「……そう」
ティールは扉に手を掛けてから、一度だけ深呼吸をすると、意を決したように扉を開ける。
その先には白い壁、大きな窓に囲まれた大広間があり、奥には二つの玉座が厳格な場であると言うような存在感を放っている。
玉座にはそれぞれ、人が座っている。
一方は軍服のような服からマントを纏う男性。男性にしては長めの髪は、艶のある紺色をしていた。特に表情を変えることもなく、じっとこちらの様子を窺っている。
一方は可憐なドレスを身に纏った女性。水色の髪はふんわりとウェーブを描きながら腰辺りまで伸びている。優しそうな笑みを浮かべつつ、こちらを見つめている。
誰がどう見ても、あの二人がこの国の王とその妃だと分かる。そして、そんな二人がティールの両親、ブライトさんとセイラさんである。
ティールは数歩、前に出るとそっとその場で傅くように膝をつき、頭を垂れる。それに数秒遅れるように私達もぺこっと頭を下げた。
ティール・リエンマイム、ただいま戻りました」
「はい、お帰りなさい♪」
言葉を返したのは女性……セイラさんだ。
そこからほんの少しの間があり、ブライトさんがティールの名前を呼ぶ声が聞こえた。
「面を上げろ。……ラルさん達も上げてもらって構わない」
「畏まりました」
「……ブライト様、セイラ様。お久し振りでございます。この度はこの場の滞在をお許しいただき、ありがとうございます」
と、ある意味お決まりの台詞を言ってから顔を上げる。ツバサちゃん達もこの場の空気に飲まれているのか、目の前の二人に圧倒されているのか分からないが、戸惑いつつもそっと顔を上げた。
「あらあら♪ ラルさん、今更そのような態度を取らなくてもいいんですよ? いつも通りいきませんか? 私もそうしますから♪」
……一応、畏まった方がいい気がしたんだけどな。
セイラさんの隣にいるブライトさんの様子を窺うものの、やっぱり表情は読み取れない。しかし、セイラさんの発言を制止はしなかったので、問題ないと思っている……としようかな。
「では、お言葉に甘えて。……改めて、お久し振りです。セイラさん、ブライトさん。しばらくの間、お世話になりまーす♪」
「……! はじめまして! しずくです!」
「え、ちょ、雫!?」
いきなりいつものテンションで挨拶をするしーくんに驚くティールだが、いつもの通り宣言をしたセイラさんは気にする素振りはない。なんなら、楽しそうに笑い、しーくんに小さく手を振っている。
「はぁい♪ 雫くんのことはティールから聞いてますよ。本当に小さい頃のティールによく似てますねぇ♪ うふふっ! 昔を思い出します~♪」
一頻りキャッキャッした後、セイラさんは私達の後ろに控えていたゼニスさんに目を向け、にこりと微笑む。
「ゼニス君、ここまでラルさん達を案内してくれてありがとうございました。もう下がって大丈夫ですよ」
「畏まりました。何かあればお呼びください」
「はーい♪」
ゼニスさんは恭しく一礼し、そっと謁見の間を出ていく。一国の主の護衛がさっさと出ていく光景にツバサちゃん達は驚いているらしい。そりゃ、基本的には側に仕えているべきだ。私達が客人とは言え、何もしない確証はないはずなのだから。
しかしまあ、ゼニスさんを追い出し……いえ、退出させたってことは……始まるのか。



~あとがき~
この先続けてしまうと長くなるので、次回に持ち越しです。

次回、一体、何が始まるのか。

作中でもラルが言ってましたが、彼女は過去に一度、ここを訪れ、王宮の方々とは顔を合わせております。
訪れるきっかけとなった経緯は語った通りです。家に帰りたくないティールに付き合って鬼ごっこした結果、捕まって連行されたからですね。

ではでは。