satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第333話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわちゃわちゃしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、海の国の王とその妃であるブライトとセイラが登場しました。ブライトは一言くらいしか喋ってないですが。
今回はラル視点より別視点の方がおもろ……いえ、久々に別視点の方がよいかなと思ったので、アラシ君視点です。ほら、久々にできそうな場面だし。ねっ! ねっっ!!??
アラシ「誤魔化し方下手くそか。動機が不純過ぎるだろ」


《A side》
案内役であり役職的には王と王妃を守る役目のはずのゼニスさんがいなくなってしまった。
いいのか。大丈夫なのか、これで……と謎に不安になってしまうのだが、ラルは何か思い当たる節でもあるのだろうか。さっきまでは笑顔だったのに、すっと苦笑いに変わる。
え、何? 何があんの……?
「……さてっと。ティール~?」
セイラ様とティールが立ち上がったのはほぼ同時だった。ティールが慌てたように踵を返し、こちらへ戻ろうとしたところで、一直線に駆け寄ってきていたセイラ様に手首を掴まれる。そして、どこにそんな力があるのかと問いたくなるのだが、セイラ様は掴んだ手首を引っ張り、自分の方にティールを抱き寄せた。
「ちょ、母上! 人前! 人前ですが!?」
「んもうっ♪ 母が息子を抱き締めるのに理由なんていりませんし、一目なんて気にしなくていいんですよ~♪」
「こちらが気にするのですが!?」
さっきまで、王妃として振る舞っていたはずのセイラ様が、今はティールにこれでもかとぎゅうぎゅうと抱き締めまくっている。これを異様な光景と言わずに何て言えばいいんだ?
「あらまぁ……やっぱり始まったか」
「やっぱりって何。何だよ、これ」
「うーん。親子愛?」
いや、分からんて。
戸惑ってるのは俺だけではなく、ラルを除く他メンバーは頭上にはてなを浮かべている。しかし、レオンだけは通常運転で、最初こそは首を傾げていたものの、今はどこか楽しそうに笑っている。
「なんか面白そうなことになってきたな~?」
「お前のそれは最早才能だな。流石だよ」
なんて言ってはみたものの、憧れもしないし、褒めもしてないけど。
「元気にやっているのは分かっていましたが、こうして姿を見ると安心しますね。私の知らないところで風邪や怪我してませんでしたか? 何か嫌なこととかありませんでした?」
「ないです! ないっ! 強いて言うなら、今この瞬間が嫌です!!」
「ちゃあんと元気だったんですね~♪ お母さん、嬉しいです~♪」
「都合のいいことしか聞いてないその耳を何とかしてください。母上、私は……」
と、ここまでにこにことティールを抱き締めていたセイラ様だったが、ふと不満そうに息子であるティールを見つめる。
ティール。いつも通りでいいと言ったはずです」
「あれはラルに言ったのでは?」
「ラルちゃんにも言いましたけれど、ティールにも言いました。なんなら、この場の全員に向けて言いました! 母上じゃなくてお母さん。敬語もなしだと何度も言ってるでしょう?」
「それは理解していますが、人前ですよ」
「人の目があろうとなかろうと、関係ないのです! 私がティールのお母さんなのは変わらないですもんっ!」
「いや、この場では私の母ではなく、国の王妃であるべきだと話してるんです」
「あら。それはもう終わったと思いますけれどねぇ」
「……終わってないから言ったんだけどね、ぼく」
……マジで俺達は何を見せられてるんだろう。
最後の最後でティールはいつもの口調に戻ったが、セイラ様はティールから離れようとはしない。ティールから「お母さん」と呼ばれない限りは離れるつもりがないのだろうか。……あるいは、これが通常なのか。
「通常だよ。セイラさん、ティール大好きだもん。ティールが帰ってきたら、大体、あんな風にくっつくらしいからねぇ」
と、ラルが教えてくれた。
呼ばれても呼ばれなくてもあんな風になるんだ。……ティールのやつ、苦労してんな。
「母さん」
「はぁい♪」
ティールが諦めたようにセイラさんを「母さん」と呼び、それにセイラ様は嬉しそうに答える。ついでにセイラ様の抱き付きからの脱出も諦めたらしく、されるがままになっていた。
「ツバサ達に改めて自己紹介でもしたら? ちゃんと名前、言ってないよね」
「あら、そうでした♪ んもう、あなたも教えてくれればいいのに~? そこで黙って見てないで、こっちにいらっしゃいな」
セイラ様は今まで静観し続けていたブライト様に目を向ける。ずっと静かだったから頭から抜けてしまっていたが、ブライト様もあの光景をじっと見ていたのか。止めようとは思わなかった……いや、毎回あんな風になるのなら、止めても無駄だってことなのかもしれないな。
セイラ様に呼び掛けられたブライト様は、ゆっくりと玉座から立ち上がり、俺達の方へ歩み寄る。そして、容赦なくセイラ様の頭をぽかんっと叩いた。
「きゃう」
「教えたところでお前は止まらんし、私の言葉など聞かないだろう。……それはそれとして、さっさとティールを離せ。何度も言うが、客人の前だ」
「まあっ! ブライトもそれですか。いいじゃありませんか。せっかく久し振りに会えたのですよ? ぎゅーってしたいじゃないですか」
「やりたい気持ちは否定しない。だから、やりたいのなら後でやれ」
「後でやらせてくれなさそうだから、今やるんですよ。分かってませんね、ブライトは」
後でやらせてくれなさそうだから……ってのは分かる気がする。確かにあの反応だとティールはやらせてくれなさそうだけども。
しかし、ブライト様の言葉も一理あると思ったのか、セイラ様は名残惜しそうにティールからそっと離れる。まあ、解放されたティールは一目散にラルの影に隠れたが。
「ほら、逃げられちゃいました」
「私が悪いのか?」
「そーです。ブライトが悪いんですー!」
「……暴論が過ぎる」
……声には出さないけど、俺もそう思う。セイラ様には申し訳ないけど。
セイラ様はぷいっとブライト様から目を逸らすと、今度は俺達に視線を向ける。先程まで不機嫌そうだったのに、俺達を見る目はそれを感じさせない優しい眼差しだった。
「うふふ♪ お見苦しいところをお見せしてごめんなさいね? では、改めまして自己紹介を。私はセイラ……一応、この国の王妃として王を支える役目をしています。けれど、今回は皆と王や王妃としてではなく、ティールの父と母として接したいと思っています♪ なので、様なんて仰々しい呼び方はしなくても大丈夫ですからね~♪」
そいや、ラルもブライト様、セイラ様ではなく、ブライトさん、セイラさんって呼んでたな。もしかして、セイラさんにこうやって頼まれたからなのか。でなきゃ、意外と真面目なラルが不用意に様付けを止めるわけがないもんな。
「そして、私の隣でしかめっ面をしているのが私の夫であり、国王の……」
「ブライト・リエンマイムだ。……セイラ、しかめっ面は余計だ」
「あら。事実ですよ? 久々の息子と対面なのに、その顔はないでしょうに。きちんと会話をしたらどうですか~?」
「しかめっ面はお前のせいだし、会話をさせる隙を与えなかったのもお前のような気がするが?」
「うふふっ♪ 聞こえませ~ん♪」
「……」
あぁ、この感じ……苦労してんだろうな。
セイラさんに振り回されたこの場の空気だったが、ようやくこちらに手番が回ってきたような気がする。ならば、今度はこちらが挨拶する番だ。
その空気をツバサも感じ取ったのだろう。今までのティール達のやり取りをぽかーんっと眺めていたのだが、ハッと我に返り、慣れた所作で恭しく頭を下げる。
「ご挨拶が遅れました! 私、ツバサ・L・ケアルです。陛下と王妃様のことはお母さ……両親から聞いています」
清楚な白のワンピースの裾の端を持ち、いかにもお嬢様の挨拶だ。
俺もツバサに続いて、騎士スタイルの姿勢でペコリと頭を下げる。
「アラシ・フェルドです。今回は主に騎士団の方々にお世話になると思いますが、よろしくお願いいたします」
「レオン・エクレールです。ツバサの付き人として参りました」
最後にレオンも恭しく一礼したところで、俺達は顔を上げる。
ブライトさんの表情は変わらないが、セイラさんはにっこりと微笑み、満足げに何度か頷いた。
「三人のことはルーメンお爺様から聞いてますよ。ここにいる間のお部屋や食事なんかはこちらで用意します。自分のお家だと思って、自由にして構いませんからね♪」
自分の家だとは思えないけど、そう言ってくれるのは歓迎してくれている……と思っていいのだろう。
手短ではあったが、俺達の挨拶も済ませ、とりあえずは任務達成……と言ったところか。
「なんか意外。レオン君、そういう心得あったんだ?」
ぽつりとラルが呟く。
恐らく、ラルの中で、レオンが礼儀作法がきちっとできていた事実が不思議だったのだろう。俺は騎士団で学ぶ機会もある、ツバサは生粋のお嬢様だからできて当然。でも、レオンはどこで学んだのか、と疑問に思ったらしい。
普段、おちゃらけて、ふざけた姿しか見せてないから、その反応は間違ってない。
「にしし♪ 実は小さい頃、ツバサ達と一緒に礼儀作法を教えてもらってたんだよな~♪ だから、こういう場面での作法、マナーはバッチリだぜ?」
「へぇ? ツバサ達ってことは他の……アリア達もってこと?」
ラルと同じようなことを考えていたのか、ティールも不思議そうに首を傾げる。その質問にはツバサが笑顔で頷き、肯定した。
「はいっ♪ 皆が遊びに来てた時とか、たまにですけど、一緒にそういう授業を受けていたんです」
「一緒に受けてたっつーか、ツルギが脱走しないように見張るみたいなやつだったけど」
「あはは♪ そう言えばそうだったね~? 昔のツルギは私も巻き込んで、礼儀作法の先生から逃げてたなぁ……今はもう流石にないけど」
今よりもうちょい小さかった頃はよくあったよな。いやぁ……あの手この手で逃げ出すもんだから、大変だったぞ。
「あらぁ? セラちゃんから聞いてはいたけれど、ツルギ君はセラちゃんによく似ているのねぇ?」
クスクスと楽しそうに笑うセイラさん。ブライトさんも声にはしないものの、何度か頷き、セイラさんの言葉を肯定していた。
そんな二人をツバサはぽかんとしながら見上げ、首を傾げる。
「そう、なんですか?」
「えぇ。だって、セラちゃんも小さい頃はよく脱走していたものよ? ブライト、苦労させられてましたものね~」
「……否定はせんが、困っていたのは私だけではないぞ」
「ふふっ。確かにギルドのみーんな、困ってましたね♪」
「ほえ! そうだったんですか!? そんな話、聞いたことないです」
俺もそんなセラおばさんを想像はできない。
話を続けようとしたセイラさんだったが、ふと何かに気づいてブライトさんに目を向ける。
「あ、ブライト、この後の予定って大丈夫そうですか?」
「今更それを思い出すのか、お前は」
「ちなみに私は問題ないです!」
「……アラシさんは騎士団の方で合同訓練があったように記憶しているが」
セイラさんの言葉は無視し、ブライトさんは俺をちらりと見た。「間違ってないだろうか」と確かめるような目に俺は無言で頷く。
「他は特にはなかったように思う」
「なるほど。じゃあ、ラルちゃん達は私と一緒に行きましょうか!」
「え、嫌ですけど」
ラル、即答で否定かよ!?
しかし、聞こえているのかいないのか。セイラさんはにこにこ笑顔のまま、がしっとラルの腕を掴む。
「せっかくです! たくさんお喋りしましょう♪」
「この後の展開が予想できるから、嫌なんですけど!! ティール! へループ!!」
「え、ぼく?」
ティールは私のところへ来い」
早速、頼りたい相手が取られちまったな、ラルのやつ。
ティールはぴくっと肩を震わせ、ほんの少しだけ気まずそうに俯いた。しかし、それも一瞬で、ブライトさんの言葉に小さく頷いていた。
「はい、父上。……ごめん、ラル」
「うん、知ってたー! 知ってたけど、助けてくれー!!」
「今回は一人じゃないよ、ラル」
「……た、確かに?」
何をどう納得してるんだろう。つか、あっちは何が行われようとしてるんだ。
結局、俺は部屋の外にいるゼニスさんと合流し、合同訓練へ。
ティールはブライトさんと、他のメンバーはセイラさんと行くことになった。
ラルのあの反応の真相は気になるが、俺は様子を見に行けそうにない。……まあ、レオンもいるし、ツバサは大丈夫だろ。



~あとがき~
長くなっちった。
犯人はセイラさんです!

次回、セイラチーム。わちゃわちゃする未来しか見えません。

いやはや、アラシ君視点はいかがですか!
セイラが楽しそうに話しかしてませんね! そのせいで他メンバーみーんな大人しかったですわ!(笑)
アラシ君視点の意味とは。
いや、私の当初の意図としては、わちゃわちゃするセイラ達を見て、アラシ君があわあわするというか、困惑するみたいなのが書きたかったけど、書けなかったね。私にスキルがないばかりに……!

ではでは。