satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第335話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界での物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回は豪華な服を着せられたり、セラフィーヌさんのあれこれ(?)を聞いたりしました。
今回は父と子の話。


《Te side》
二人で父上の執務室へ向かう道中、特に会話らしい会話もなく……かといって、何かあったわけでもなく、本当に何事もなく執務室の前へとやってきた。
父上は部屋の扉を開け、無言でぼくに入るように促してくる。それにぼくも黙って従った。
父上の執務室は綺麗に整理されており、物が多い割に散らかっている印象はない。固い空気を纏うような、無機質な空間だ。
父上が扉を閉め、この空間にはぼくらだけになった。父上はぼくがこちらに帰ってきたら、こうして話をする機会を設ける。だから、これはいつものことではある。内容は事務的なことばかりで会話ではないけど。
ティール」
父上は普段から使う仕事用の机に軽く腰しかけ、ぼくの名前を呼ぶ。
「その……先程は言えなかったが……おかえり」
「……ただいま」
ついこの前、前向きになろうと決めたはずなのに実際、本人を目の前にすると駄目だ。長年の蓄積があるせいか、変に緊張している。
こういうとき、ぼくから話題を振るべきなのだろうか。振るとして、何をどうすれば。
ここ数年、父親相手に雑談で花を咲かせた記憶はない。勝手が分からなすぎる。
そもそも、いつもなら、父上から滞在中の予定をざっくり聞かされ、その後は部屋に戻るように言われる。……だが、今回はそれすらない。なんで。怖いんだけど。
「……」
父上はぼくと目線を合わせず、腕を組んで何やら考え事をしているらしかった。
……滞在中の予定表を脳内で精査でもしてるのか。だから、黙りなのか。そうなら、話しかけない方がいいとは思うけれど……何が正解なのかが分からない。
「……それに座れ。少し、話したいことがある」
「? え、と?」
座れと示した先には本棚付近に置かれている椅子があった。なぜ、あんなところにポツンと置かれているのかは分からない。もしかしたら、本棚の近くで読書するための椅子かもしれない。いや、そんな椅子になぜ座れと言われたのかが不明すぎるけれども。今まで、そんなこと言われた経験ないのに。
ぼくの頭にははてなしか浮かんでないけれど、とりあえず、言われた通りにした。断る理由もないし、仮に断ったとして更に空気を重くするのも嫌だったからだ。
気持ち、父上の机よりに椅子を寄せてから腰かける。すると、父上も自分の仕事机の席に座り、ちらりとこちらを見る。
「ここには私達しかいないから、楽にしていなさい」
……この空気でどう楽になれと。いやでも、椅子に座れと言ったのは、もしかして、父上なりの配慮だったりする?
「話は聞いている。……『明けの明星』で世話になったらしいな」
「はい。仕事の依頼を貰って、その関係で色々と。ルーメンさんには随分とお世話になりました」
「ふむ。……何か聞かされたか」
「そう、ですね。スプランドゥールの街のことやギルドのことなど、丁寧に教えてくださいました。……それから、父上と母上の昔話を少しだけ」
ぼくの返答に父上はピクリと眉を動かす。しかし、それ以上の追及はなく、「そうか」と呟くだけだった。
せっかく、会話らしい会話をし始めたのに、また沈黙になるのは耐えられない。何か話題のネタはないかと考えていると、お祭りの時の言伝を思い出した。
「あ……理事長……ではなく、セラフィーヌさんから父上にと伝言を預かっていました」
「セラさんから?」
「はい。……『久し振りに色々と話したいからよろしく』と。近々、こちらで仕事があるようで、そのための伝言だとは思います。とはいえ、詳しい内容までは教えてくれませんでしたが」
「……ふむ」
父上は机の上の万年筆を手に取ると、くるくると回し始める。そして、その手をピタリと止めると、隠す素振りもなく、盛大にため息をついた。
「あ、の……父上?」
「もしかして、セラさんは『色々』という言葉を強調して伝えてこなかったか」
「え……? えー……と」
んー……これ、言ってもいいのか。
父上の言う通り、『色々』の部分は強調していたし、それはとても意味深だったけれど。それの意図はぼくには図りかねるし、理解もしていない。実のところ、意味なんてないかもしれないし。
「あぁ……その様子だとしていたのだな」
ルーメンさんやセラフィーヌさんから散々、超絶鈍感だと言われていた父上にさらっとバレた。え、そんなに分かりやすかった?
「……その、申し訳ありません」
「いや。ティールが謝るようなことではない」
そう答えた父上は頬杖をつきながら、再び万年筆をくるりと回す。そして、どこか苦い顔をしつつ、もう一度、ため息を漏らした。
「父上、大丈夫……ですか?」
「ん? あぁ、問題ない。……これは、そうだな。自業自得というやつさ」
「自業自得?」
「……ティールは先程、私達の昔話を聞いたと言っていたな。ならば、ルー爺やセラさんからは私のことを……そうだな。気にかけ半分、呆れ半分で話してたろう?」
ぼくは黙って頷く。素直に頷いていいものか悩みもしたけれど、さっき黙っててもバレたのだ。今更、隠す必要もない。
「だろうな。……では、ティールは昔の話を聞いて、どう思った」
「え……?」
「正直に言っていい。……あの二人から聞いた通りだ。どうやら、私は超絶鈍感な朴念仁らしいからな」
……だから、自業自得ってこと?
いまいち、繋がらない気もするけれど、父上の中では完結しているらしく、説明するつもりもなさそうだった。それに今の本題は昔話を聞かされた時の感想についてだ。
本人は正直に言えと言うが……本当にいいんだろうか。ルーメンさんの話で感じたことをそのまま言ってしまっていいのだろうか。下手したら、気分を害しかねないと思うんだけど……適度に誤魔化すべきか?
ごちゃごちゃ考えていたことが表情にも出ていたのだろう。父上は珍しく小さく笑いながら、真っ直ぐこちらを見つめてきた。
「私が言えと言った手前、叱責などしない。安心しろ」
「えぇっと……そんなに分かりやすいですか?」
「? 普段はそうでもないが、今はそれなりに、かな。……素直な所は相変わらずで何よりだ」
……なんか恥ずかしい! あと、いきなり父親面する父上も怖い!
あぁ……いや、最初から父上は父親だったのだろう。それをぼくが見なかっただけ……見ようとしてこなかっただけなんだ。
「昔の話を聞いて、最初に思ったのは……随分と不器用な人なんだなって」
ルーメンさんやカズキさん達に母上との仲を茶化されたり、お節介されてたり。
「ぼくの知る父上はどこにもいなくて、ぼくが感じていた父上のイメージとはかけ離れてて。……なんて、言うのかな。ちゃんと一人の人だったって……思った。言い方は変かもしれないけれど、そんな一面も父上なのだと」
ぼくは完璧な王であるブライト王しか知らなかった。国民から慕われ、臣下達に慕われる、善き王である父しか知らなかった。
だからこそ、お祖母様の亡くなったあの日から……気が付いたら、近付き難い存在になってしまっていて。
「……少し、昔話とは関係のない話をしても?」
「もちろん」
「ありがとうございます。……ぼくは父上の知らない一面を見なかった……見ようとしなかったせいで、父上のことが分からなくなってしまいました。多分、いつの日からか、貴方に期待しなくなってたんだと思います。貴方はぼくなんて気にも止めないのだと……見てくれないのだと、そう勝手に決めつけて」
仕事で忙しくなって、関わりが少なくなってしまってそう思ってしまった。当時のぼくはそれを声に出すことすらしなかった。父上が無口で感情が表に出にくいと知っていたはずなのに、自ら主張することを諦めてしまっていた。
だから、今の今まで期待することをしてこなかった。何かされても、どうせ本心ではないのだろう、と。何か意図があるはずだと。勘繰って、勝手に疲れてしまっていただけだった。
「でも、そうじゃないって教えてくれたのが、ルーメンさんとセラフィーヌさんでした。貴方が誰よりも家族思いで優しい父親だと」
「……そうか」
「はい。それと、昔、母上と大喧嘩して家出された時も大慌てでギルドまで捜しに来るくらい情に深いんだぞと言ってました。口下手で不器用だから、周りに伝わらないだけできちんと家族を思っているって」
「あの老人はそんな話までティールにしていたのか……? あのお節介にも困ったものだ」
今の今まで大して表情が変わらなかった父上だったが、母上の家出話だけは何か思うところがあったらしい。苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、ふいっとそっぽを向いてしまった。
「あ、えっと……父上にとっては知られたくなかったかもしれませんが、ぼくは聞けて良かったと思っています。先程も言いましたが、父上の新たな一面を知れたので」
「……」
父上はどこか思案するように宙を仰いだかと思ったが、それも数秒ですぐにこちらに向き直る。
「すまなかった」
「……なぜ、父上が謝罪を」
「今までの態度について。……実のところ、お前に避けられているのは分かっていた。だから、私は好かれてないのだろうと思っていた。それならば、こちらから不用意に話しかけてはならないと……私から極力接触しないようにしていたのだが。……どうやら、そんな私の態度がお前を不安にさせ、傷付けてしまっていたのだな」
「……っ」
「先程語った全てがティールの抱えていたものだとは思ってはいない。しかし、末端には触れられたと思っている。だから──」



~あとがき~
これ以上は長くなるなと思ってやめました。
ティールとブライトの話はもうちょいだけ続きます。

次回、父と子の話の続き。

なんかこのままの流れで仲良くなれるんじゃねぇ!? って思ってます。なれそうだよなぁ?? ティールの本音はまだ語ってませんが(こっち見ろ、寂しかったんだおらー的なやつ)、大部分は見せられたのではなかろうか!?
けどまあ、ぶっちゃけ、ティール君は心を完全に開いてはないので……今後に期待。

ではでは!