satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第340話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界での物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ツバサちゃんのくしゃみ(魔力暴走)に巻き込まれ、なぜかちっこくなったティール出現!
ということで、海の国編~幼児化事件の章~が開幕じゃい!


《L side》
「きみ、だぁれ?」
ティールのこの言動に全員が言葉を失い、レオン君が手にしていた連絡用端末を床に落とした音だけがその場に響いた。
「……あれ、扉開いて……メアリーさん? ツバサが風邪引いたって話を聞いたんすけ……ど、え?」
私が換気のために開けっぱなしにしていた扉からアラシ君が入ってきた。彼もまた、目の前の光景に呆然とし、キョロキョロと辺りを見回す。
「……何事?」
「ア、アラシ様、その……ですね」
「え、あ……え~……っと、まさか?」
と、アラシ君は固まった動かなくなったレオン君を見る。レオン君は首だけアラシ君の方を向け、真っ青な顔をして、小刻みに何度も頷いた。
「!?!? マジかよ! ツバサのやつ、やったのか!?」
「あ、わ、私、陛下にこの事を伝えて参りますっ!!」
「頼みます! おい、レオン! 思考放棄したくなる気持ちは分かるが、固まってないで、端末拾え! ルー爺に連絡しろ、連絡っ!!」
「っ! りょ、了解っ!」
メアリーさんがブライトさんに報告するために出て行き、レオン君は落とした端末を拾い上げ、部屋の外へと行ってしまう。
「ラル」
「……なぁに?」
「俺は騎士団の奴らに事情を説明してくる。ちょっと様子を見に行くだけのつもりだったから……こんなことになってるとは思ってなくて。……すぐ戻るから、ツバサのこと、頼む。なんもないと思うけど」
「うん、いいよ。行ってらっしゃい」
アラシ君も出て行き、再び沈黙が訪れる。
私はというと、アラシ君に話しかけられてようやく、思考が戻ってきた感覚がしたところだった。
この場には熱で目を回すツバサちゃんと、いまいち状況を把握しきれていないティールと、同じくぽかんとしているしーくんしかいない。
さて、どうするか……どうするのが最善なのだろう。
「しずく、だよ? ティール、わかんないの?」
しーくんが私の腕から抜け出し、小さくなったティールに戸惑いながらも近づく。
ティールは何度も首を横に振り、「わかんない」と呟く。
「はじめまして……だよ。ぼく、しらないもん」
「……なんで。なんで、ティール、おぼえてないの? ラルは……ラルは?」
ティールの目は私に向く。そして、先程と同じように首を振った。
「ううん。……しらない」
「なんで……やだ。やだ! やだ!!」
「ふぇ……っ!」
しーくんの声にティールが怯えたように体を震わせる。記憶のないティールからすれば、当然だ。怖いに決まっている。突然、目の前に現れた子に訳も分からず責められているのだから。
私はしーくんの元に駆け寄り、何も言わずに抱き上げる。
「ラル……ティール、ボクのこと、おぼえてないの! ラルのことも、おぼえてない!」
「……うん。そうだね」
「やだ、やだよ……いっしょがいい……やだぁ……ティール、どこ、どこにいるのぉ……!」
大粒の涙を流しながら、何度も何度も問いかけてきた。
それに私は何も言えない。
……何も、言えなかった。
私は泣きじゃくるしーくんを抱っこしたまま、窓を閉め、ツバサちゃんをベッドにきちんと寝かせてから、この場にじっと留まっていたリランに近寄る。
「一番に騒ぎそうなのに、落ち着いてるな。リランは」
「くぅん」
「……リラン、しーくんをお願い」
「あんっ!」
力強く頷いてくれたリランにしーくんを預ける。本当なら私がしーくんをあやさなきゃいけないけど、それだと、今のティールを一人にしてしまう。それだけは、駄目だと思った。
「ごめんね、ティール君。初めましてなのに、びっくりしたよね」
ずっと不安そうにしていたティールと同じ目線になり、安心させるためにそっと微笑んだ。
「……だぁれ?」
「私はラル。ティール君のお父さんとお母さんのお友達でね、二人にここへ遊びにおいでって言われて、ティール君のお家に来てたの。そこに寝てるお姉さんも、さっきまで一緒にいたお兄さんやお姉さん達も、そう。私とおんなじ」
「ラル……とーちゃ、と、かーちゃの、おともだち」
「うん」
「ラル……ラル?」
「うん、ラル。それが私の名前だよ。……初めましてだから、珍しいかな。その名前」
「……あのね、へんなの」
あ? まさか、変な名前とか言うのか、こいつ。泣きたいの我慢して優しくしとるんだぞ、こっちは!
「しらないのに、しってるっておもうの。……ほんとに、はじめまして?」
「……っ」
やめて。やめて、そんな言葉を使わないで。
期待させないで。
ティールはいない。私を知る、ティールはいない。いないから。
期待をするな。
「……うん。初めまして、だよ。もしかしたら、お母さんかお父さんからお話を聞いたのかもしれないね」
「……ラルねぇさま」
「……は?」
思わず、素が出てしまった。
こちらは感情ぐっちゃぐちゃなのを必死に隠しつつ、平静を取り繕い接しているというのに、それを壊すかのような斜め上の質問。
「なんだか、ラルねぇさまとは、はじめましてっておもえない。……だから、ねえさま」
申し訳ないが、「だから」という接続詞に繋がってない気がするのだけれど。しかし、ティールの中ではそれがしっかりとした理由になっているのだろう。
「私はティール君のお姉さんじゃないよ?」
「うん、わかってる。……けど、だめ?」
「だ、め……ではないけど……姉様はちょっと、その……」
本来、同い年で長年の相棒に姉様って呼ばれるのは何かくるものがあります。大体、様付け自体、好きではないのに。
だが、今のティールにとって、私は年上のお姉さん……それを思えば姉さんと呼びたくなるのも分からんでもない。しーくんが年上の人達をお姉ちゃん、お兄ちゃん呼びするのと同じなのだ。
「……ラルねぇ、なら……いいよ。百歩譲って」
「! わかった。ラルねぇ」
くそ。こちとら、君と同い年なんですけど……一応。
私との会話で幾分か不安も消えたらしく、今は笑顔を見せてくれていた。いつもの優しそうな笑顔。
……次は、と。
ティールに少し待つように伝え、私はリランの側へ戻る。
「ありがと、リラン」
「あん♪」
しーくんはリランにしがみついたまま、ずっと泣いていた。現状を上手く理解できず、混乱しているのもあるし、純粋にティールに忘れられたことが悲しいのだろう。
そんな状態のしーくんとティールを一緒にいさせるのはよくない。特にしーくんにとっては。
「ねえ、リラン。少しの間、しーくんと一緒にいてくれないかな」
「くぅん?」
「多分、この後、ティールのご両親に説明しに行かなきゃなんないと思うから。本当なら、私の役目なんだろうけれど」
アルフォースさんの話によれば、今のティールはブライトさんとセイラさんを避けていた頃のティールだ。そんなティールを一人にしてはおけない。そんなことをすれば、過去と同じ思いをさせてしまう。それでは意味がない。
「……お願い、リラン」
「わふんっ」
「ありがとう。……しーくん、ティールはね、魔法でしーくんのことを忘れちゃってるだけなの。でも、魔法が解けたら、いつものティールだから」
「……ほ、んとに?」
「うん。だから、お部屋で待っててね」
「ん……わかった……」
しーくんを少しでも安心させるためにの言葉であり……自分にそう言い聞かせるための言葉でもあった。
魔法が解ければ、ティールは私達を思い出す。……そのはずだと。



~あとがき~
昨日、投稿し忘れてたんで、今日しました。今日だけだぞ☆←
いや、まじすんません。予約忘れてました。(土下座)

次回、ちっさくなったティールと両親の話。
ご対面じゃい。

スプランドゥールでアルフォースさんが話していましたが、今のティールは現在の記憶はなく、当時の記憶しか持ち合わせていません。それなのに、ラルに親しみを持ったままなのは……なんででしょうね。愛のなせる技かもしれない←

ではでは!