satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第342話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、皆で集まって、今後(?)を話しました。
今回は大暴走しちゃってたセイラとティールのお話です。


《L side》
「んもー……ブライトったら、仕方のない人ですねぇ? ま、元々あぁいう人ですけれど」
セイラさんの文句はブライトさんに聞こえていたか定かではないが、恐らく仕事に戻るために部屋を出て行ったのだろう。
残された私達もブライトさんに言われた通り行動するため、各々行動を始める。
アラシ君とレオン君はツバサちゃんの部屋へ。
アルベルトさんはゼニスさんのところへ。
そして、私とセイラさん、ティールは一旦セイラさんの自室へ向かうことになった。
「ふふっ♪ いつだってティールは可愛いですが、幼いティールは一段と可愛いですねぇ♪ この後、またぎゅーってしましょう~♪」
私の隣を歩くティールを覗き込むように語りかける。が、ティールは頑なに目を合わせようとせず、私の影に隠れたまま、ぼそっと呟いた。
「……やだ」
「可愛い我が子を甘やかすのに同意なんて必要ありません。絶対にぎゅーってしますっ」
ティール好きもここまでくると病気なような気がしてきた。……が、私がしーくんを溺愛するのと同じだなとも思う。それなら仕方ないか。だって、可愛いもんは可愛いもんな?
セイラさんの部屋に到着し、私とティールはソファに座るように促される。セイラさんはアンジュさんにお茶の準備をお願いすると、有無を言わさず、ティールを抱っこして、自身の膝の上に乗せて座る。
あまりに自然な流れだったからか、ティールも何をされたのか理解できなかったらしい。数秒ぽかーんとして、私と目が合う違和感からバッと後ろを振り返れば、セイラさんとばっちり目が合った。
「!?」
「うふふっ♪ まだまだ私の感覚も捨てたもんではないようですね」
驚きすぎて、声も出ないティールは固まったまま動かなくなった。多分、思考停止でも起こしたのだ。とりあえず、復帰するまで放置しておこう。
「……そういえば、昔は旅人をしていたとか」
「そうなんです。十代前半くらいから、宛もなくフラフラと。明確な目的があったわけではないけれど、自分の目で世界を見たい……そんな気持ちはありましたね」
「へぇ……ってことは、ティールの冒険好きはセイラさん譲りなんですね?」
「確かに。……あの人も探検家でしたけれど、私みたいに探究心が強いわけではありませんでしたからね。後、冒険の話はティールに寝物語としてよく聞かせていたから、その影響もあるかも」
「ありそうですね。ティール、探検の話をする時はいっつも目がキラキラしてるので。セイラさんの話す冒険譚は憧れだったんですね、きっと」
本人に言ったら完全否定されてしまいそうだけれど、幼い頃から話をよく聞かされていたのなら、確実に影響は受けているはずだ。
アンジュさんがそっと差し出してくれた紅茶を会釈しながら受け取りつつ、そっと口に含む。茶葉の香りが口に広がり、ほっと息をついたところで、純粋に疑問に思っていた事を問いかける。
「セイラさんが行ったところで一番覚えてるところってどこですか?」
「え~……どこですかねぇ~……? 沢山ありますけれど……場所で言えば、『奇跡の洞窟』ですかね。ラルちゃんも行ったのでしょう? あの場所に眠る鉱石の数々は感動ものです。極めつけはあの鉱石。……正確には魔力石ですが、とっても素晴らしいですよっ」
セイラさんほ言う鉱石ってのは、女神の涙のことかな。多分。
そういえば、スイちゃん、セツちゃんがブライトさんとセイラさんも訪れたと話していたっけか。鉱石好きなセイラさんとしては、外せない場所なのかも。
「後は『星の洞窟』とか。ここもとっても幻想的なダンジョンなのですよ。まるで満点の夜空の下をずうっと進んでいるような……そんな場所なのです。ま、生息しているモンスターは、その場所に似合わないくらいすっごく強いんですけどね~? 何度やられそうになったことか~♪」
それ、明るく言うことか?
他にもいくつか場所やダンジョンで見た風景をあれこれ熱弁してくれた後、セイラさんは少し考えるような素振りを見せ、困ったように笑う。
「……私、やっぱり鉱石、石が好きなので、それ関連のダンジョンだったり、場所が印象深いですね。偏見ばかりの意見でごめんなさいね? あまり、面白くないかも」
「いえいえ。私の知らない場所の話も聞けて楽しいですよ。なんなら、今度、行ってみたいって思ったくらいです」
「あら、うふふ♪ ラルちゃんにそう言って貰えて嬉しいです。ブライトは「またその話か」って感じの顔するので……」
へぇ……あのブライトさんでもそんな反応示すのか。
「まあ、言っても微々たる変化なので、気付かないフリで話し続けることも可能です。なんなら、よくやってます」
よくよく見なければ気付かない程度、なのだろうか。それは見逃してしまいそうだ。
「ラルちゃんくらいになれば、あの人の変化はすぐに気付けそうですけれどね? でも、それくらい過敏にならないと、ブライトの変化って分かりにくくて……」
「──もう、やっっ!!! はなして!!」
と、ずっと固まったまま動かなかったティールが大声で泣き叫び始める。何の前触れもなく突然だったために、私もセイラさんも驚いて、ティールに「どうした」と問いかける。しかし、彼は「嫌だ」を連呼するのみで話にならなかった。
挙げ句の果てには、セイラさんの膝の上も嫌がり、セイラさんに対しても嫌だ、嫌いだと言い始める。
「これは収集つかなくなってきたな……ティール君? 一度、落ち着こっか。こっち来る?」
そう問いかけてみれば、ティールは泣きながら無言で何度も頷く。私はセイラさんからティールを受け取り、抱き抱えた。
「っしょ……ほら、落ち着いて~? ゆっくり息、しようね……大丈夫。大丈夫だからね」
とんとんと優しく背中を叩き、号泣するティールをどうにかあやしていく。しばらくの間、そうしていると、なんとか落ち着いてきて、しゃくり上げつつも、大号泣からは脱したらしい。
「……急にどうかしたのかな。何が嫌だったか言える?」
「かーちゃ、ちかく、やだった……っ!」
「セイラさんのお膝かな? どうして?」
「かーちゃ、ぼくのこと、きらいなの。……なのに、かーちゃ、やさしくする……やだ。もう、やなのっっ!!」
「……え? 私が、ティールを?」
そんな素振り、なかったように思うが……いや、ティール自身が話していたか。
祖母が亡くなり、家族の時間がめっきり減ってしまったこと。仕事が忙しくなったと分かっていながらも、それが幼いティールにとって、自分の事を嫌いになったのだと、関心がなくなったから、話してくれなくなったのだと解釈してしまったのだと。
今更、優しくされてもどうしていいか分からない。どうせ、また見なくなるのなら、もう関わらないでくれ、と今のティールは思っているのだろう。だからこその拒絶。
もちろん、幼い今の思考ではここまで理解しているとは思えないけれど、漠然としたもしもが怖いのだ。
「そんなことありません。私は今も昔も、ティールが大好きよ?」
「うそ! ずっと、おはなし、してくれなかった! ぼくのこと、きらいだから、かーちゃも、とーちゃも、いないになった! もう、いないなら、いないでいいっ! それで、がまんするもんっ!! がまん、できるもん……なのに……」
今のティールにセイラさんが何を言っても信じてくれない。
ティールは今、抱いている感情がなんなのか考えることを放棄している。それが楽だから。でも、それでは改善しない。
「お母さんやお父さんとお話しできなくて、ティール君は寂しかったんだね」
「……」
「寂しかったって言いたかったね。嫌いになる……ううん。嫌いだって思うようになる前に言いたかったね。辛かったね」
過去のティールはそれを口にしなかったと言う。
口にできなかったから、親との距離感が分からなくなったと言っていた。それならば、ここで言わせてあげられたら、少しは気持ちも楽になり、整理もつくはずだ。
「寂しかったね。ずっと一人で我慢してたんだね」
「……う、ん」
ティール君はどうして欲しかった? 今、どうして欲しい?」
「ぼくは」
「うん。ゆっくりでいいよ。本当の気持ちを聞かせて」
「……おはなし、してほしかった。……ずっとはできなくても、ちょっとでもいいから、はやく、いっしょ、いたかった……」
「うん」
「……でも、かーちゃ、いそがしだから、できなくて、いっしょがいいって、いえなかった」
私はセイラさんの様子を窺う。
真剣な様子で話を聞いていて、表情はどこか悲しそうにしているものの、嬉しそうにもしていて。
セイラさんはそっとソファから立ち上がると、私の隣に座り、ティールの頭を優しく撫でた。
「ごめんなさい、ティール。あの頃……いえ、今の貴方にはあの時、と言うべきね。……お義母様、サフィアお祖母様が亡くなった時、王宮内も慌ただしくなり、ティールをちゃんと見てあげられなかった。そのせいで、ティールには随分と寂しい思いをさせてしまって……小さな貴方の優しさに甘えてしまっていました」
セイラさんは撫でる手を止め、小さな我が子の手を優しく包み込む。それに気付いたティールもちらりとセイラさんに目を向けた。
「お母さんがティールを嫌うなんてありません。いなくなったりしません」
「……かーちゃ」
「だって、ティールは私の……私とブライトの大切な愛する子供だもの。何があっても嫌いになんてなりません」
「でも、かーちゃも、とーちゃも、また……ぼくのこと、みてくれなくなるんでしょ……?」
「もう二度とそんなことはありません。ブライトは仕事人間なので保証できないけれど、私は二度としないと誓います」
すっごくいい場面なのだが、ブライトさんのそれ、必要だったか?
滅茶苦茶突っ込み入れたくなるが、そんなことをしたらいい雰囲気がぶち壊しなので、黙っておくとして。
ティールは戸惑いながら、セイラさんを見つめる。その目にセイラさんも真剣に見つめた。
「……ほんと?」
「はい。本当です」
「! かーちゃ!」
ティールは私の腕から離れ、セイラさんの胸へと飛び込む。それをセイラさんもきちんと受け止め、強く抱き締めた。
ティールはセイラさんの腕の中でわんわん泣きき始める。
「ごめんなさい! ぼく、ほんとは、かーちゃ、やじゃないの! でも、でもっ!」
「うん。……また、離れちゃうのが嫌だったから、離れたままにしたかったんですよね。……大丈夫。ティールの気持ちは分かってますから」
「かーちゃぁぁぁっ!!」
「はい。ここにいますよ、ティール」
……これで多分、大丈夫そうだな。
元よりセイラさんとの仲は問題なさそうではあったが、心に残った小さなわだかまりが取り除けたのであれば、これでよかったと思う。
ティールも当時、話せなかった心の内を吐き出せたのだ。戻った後にプラスに働いてくれたらいいのだけれど。
私は二人からそっと離れて、部屋を出た。しばらくの間、二人だけにしておいた方があれこれ話せるだろう。
「ありがとうございました、ラル様」
「アンジュさん……?」
扉の外で待機していたのか、アンジュさんが神妙な面持ちで頭を下げた。
「セイラ様は時折、あの頃の自分を責めていました。幼いティール様を一人にしてしまったと……自分はよき母親ではないと。もちろん、ティール様はそんなことはないと仰有っていました。けれど、セイラ様自身、許せなかったのだろうと思います」
「当時、ティールの気持ちに気付けなかったから?」
「恐らくは。……今回の件を経て、当時のティール様の思いに触れられ、セイラ様も救われたと思います。その感謝をさせてください」
「いえ。……頃合いを見て、戻ります。その間、二人をお願いします」
「畏まりました」
お礼を言われるようなことなんてしていない。
私はただ、言われたからやっているだけだ。
……助けろって言われたから、やっただけ。
そこに意味なんてないし、感謝をされる筋合いもない。
「受け取れない。一瞬でも、止めたいと思った私に」
機会を奪おうとした私に、受け取る資格などないのだ。



~あとがき~
なんか日に日に長くなってる気がする。
ひえん。

次回、ラルの気持ち。
こいつ、闇落ち寸前か?←

セイラもきゃーきゃーしている合間にたまーにですが、ティールに対して申し訳なさ、引け目は感じていました。
彼女は無理やり壁をぶち壊して、元通りにしてましたけれど、しこりはやはり残ってはいて、「あの頃、幼いティールを一人にしてしまった」という後悔はあるんです。
ただただきゃっきゃっしてるだけじゃないんやで!!

ではでは。