satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第343話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ティールとセイラの話が終わりました。
今回は全てを知った上で幼児化を見届けているラルの話。


《L side》
アンジュさんと別れた後、私は人気のなく、物陰に隠れられるようなところで足を止める。
ティールが幼児化して、ここまで誰かと一緒にいたから深く考えなかったが、一人になるとどうしても考えてしまう。
心の奥底でちくちくと痛むような、或いは、きゅっと締め付けるような、そんな心苦しさがずっと離れない。
事前に知っていた私でこれなんだから、何も知らないしーくんにとって、どんなに辛かったろう。
「ごめんね、しーくん」
あの子に話さないと決めたのは私だ。
その結果、しーくんが悲しむと分かってても、話さないと決めたのだ。
分かっていた。
想像できていた。
それでも、しーくんをあんなに悲しませてしまい、上手い言い訳もできなかった。
悲しむしーくんを置いて、私は何をしているんだろう。……もう少し、どうにかできただろうに。
いつもなら、上手く立ち回っている。
振る舞いだって、言葉だって、自分の心すらだって、欺く自信だってある。いつだって、そうしてきたはずなのに。
それができなかったのは、なぜなのか。
できなかったから、こんなに苦しいのか?
……苦しい? 何が? どこが?
しーくんに対する罪悪感?
それとも、ティールに対する罪悪感?
或いは、自分に対しての憤りか? 自己嫌悪か何か?
「……迷宮だな、これ」
考えたところで、この感情の出所は探れないし、探れたところで取り除けない。
感じなくすることは恐らく可能だ。しかし、それは私が私でなくなってしまう。
とは言え、押し潰されては何の意味もないのだが。
……これもまた、迷宮の入口だ。出口なんてないし、逃げ場もない。
私はふらりと歩き始める。
一人で暇を潰していても思考の海に囚われ、奥底に沈んでいくだけだ。それなら。
「……しーくん、まだ泣いてないかな」

リランとしーくんが待機している部屋─私としーくんの部屋─に来てみれば、メアリーさんの姿があった。
彼女はブランケット片手にこちらへ会釈をしてきた。
「メアリーさん? なんで、ここに」
「雫様とリランを残しておけませんもの。お嬢様はアラシ様とレオン様にお任せしてありますから、心配ありません」
リランは犬の姿でソファに座り、しーくんはそんなリランに抱き付くようにして寝息を立てていた。
リランは寝てはないようで、私に気付くと顔をそっと上げてこちらをじっと見ている。
「ラル様、ティール様は?」
「今はセイラさんといます。二人で話したいみたいなので、私はしーくんの様子を見に来たんですが……必要なかったみたいですね」
「そうでしたか。雫様、泣き疲れてしまったのか、先程寝てしまわれました。……この度はお嬢様が大変申し訳ありません」
と、メアリーさんは深々と頭を下げる。
「い、いえ。そんなに謝らないでください。……あれは事故みたいなものですし、防ぎようがなかったのでしょう? しーくんも……今は上手く整理できなくても、分かってくれると思いますから」
お決まり文句を言ってみるものの、メアリーさんから、申し訳なさはなくならなかった。一時的とは言え、実害を与えてしまった事実が後ろめたさを感じさせているのかもしれない。
「メアリーさんがよければ、もう少ししーくんの傍にいてくれるとありがたいです」
「……はい。もちろんでございます」
完全に罪悪感を拭えた訳ではないが、少しは気持ちが軽くなったのか、小さな笑みを見せた。
メアリーさんは何か飲み物を用意してくると言い、ブランケットを私に手渡すと、部屋を出ていく。
このブランケットはしーくんに掛けるつもりで持っていたのだろう。ついさっき、寝付いたみたいだし。
私はしーくんとリランに近付き、ブランケットをしーくんに掛けてあげる。
しーくんの目は泣いた後だから、腫れぼったくなっている。それを見て、また胸が締め付けられる感覚がする。
それを振り払うかのように寄り添っていたリランの頭をそっと撫でる。
「……リラン、しーくんの傍にいてくれてありがとうね」
「わふんっ」
しーくんを起こさないよう、小声で返してくれる。
そう言えば、今のリランは犬の姿だ。
リランを犬の姿に変えているのはツバサちゃんの変身魔法だったはず。そして、その変身魔法ってそれなりに魔力を使うとかなんとか言っていたような……?
いや、それ以前に病人が魔法を掛け続けている方が現実的ではないな。
「リラン、どうやって今の姿を保ってるの? ツバサちゃんの魔法……ではないよね。今の状況下で」
「くぅ? あんあんっ」
こてんと首を傾げたあと、その理由を説明してくれた……とは思うのだが、生憎、私はリランの言葉を深く理解できない。心の読めるフォース君や言葉を理解できる雷姫ではないから。
「あんっ」
『こんなことのために我を呼ぶでないわ、駄犬の分際で』
ふわりと私の背後に何者かが現れた気配がする。その人物……雷姫は深くため息をつきながらも、私の耳元にそっと近付く。
『……そやつは一日程度なら、自身の魔力で変化を維持できるらしい』
「言われてみれば、そんなことをアラシ君辺りが言ってた気がする」
どこで聞いたんだったか。お茶会の場?
雷姫は私から離れ、ふわりと浮かび上がると、向かいのソファに座り─もちろん、実体化はしていない─、腕を組みながらそっぽを向く。
『ふん。ならば、ずっと駄犬でおればよいのだ』
「くぅ~ん」
『はあ!? ずっとは窮屈じゃと? 何を甘えたことを言う。……そんなんだから、あの白狐の小娘は変身魔法を覚えたのだろうな。全く、こんな阿呆のために奇特なことを』
「あん?」
『黙れ、駄犬』
この二人……いや、一人と一匹は相変わらずだな。
私はしばらくの間、リランと一緒にしーくんの傍にいた。ちなみに、雷姫はさっさと帰った。
その後、メアリーさんが飲み物を持って戻ってきたため、私も頃合いだろうとその場から立ち上がる。
「そろそろ、ティールのところに戻ります。……もうしばらく、しーくんのこと、お願いしてもいいですか?」
「もちろんでございます」
「あんっ♪」
メアリーさんとリランに見送られ、私は部屋を後にする。



~あとがき~
なんかもうふわふわしとる……(笑)

次回、作戦会議。

あまり言いたいことはないんですが……そうですな。
とりあえず、感情ぐしゃぐしゃなラルはどっかで救われるとは思います。それだけは保証しようかな……うん。

ではでは。