satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第344話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ラルとか雫とかリランとかの話をしました。
ラル「まとめが雑で笑う」
てへてへ。
ってことで、今回は戻ってちびティール達とのお話です。


《L side》
私がセイラさんの部屋の前まで戻ってくると、丁度、扉を開けてどこかへ出ていこうとするアンジュさんと目が合った。
「あ、ラル様! 丁度、お伺いしようかと思っていたところでした。セイラ様とティール様、大分落ち着かれたようでしたので」
「それはタイミングよかったみたいで何よりです」
……が、落ち着くとは? 話が?
アンジュさんに促されるがまま、部屋の中まで入っていけば、お揃いで目元を少し赤くしている二人を見つける。
どんなやり取りをしていたのかは分からないが、こちらはこちらで号泣していたらしかった。
「ラルねぇ!」
「あ、ラルちゃん……ふふっ、恥ずかしいところを見られちゃいました」
それは今更では……とは言わず。
セイラさんは恥ずかしさからか、少しだけ赤くなりつつも、隣に座るティールを優しく撫でる。そして、私に向かって「ありがとうございます」と微笑んだ。
私は何に対しての感謝なのか心当たりがなく、首を傾げた。
この場を設けたことについてなのか。はたまた、別のことなのか。さっぱりである。
「ずっとティールの傍にいてくれたことについて、ですよ」
「? ずっとって言われる程、今のティール君といないと思いますけど」
「いいえ。そんなことありません。ラルちゃんがこの子と探検隊を組み、今まで一緒にいてくれたもの」
それはそうかもしれないが。
それと今と何の関係があるのだろう。私と一緒にいた期間なんて、幼いティールにはない記憶、体験のはず。つまり、それらは幼いティールは覚えていない事柄のはずだ。
「私の想像でしかありませんが、私とティールだけだったら、先程のような本音は聞けなかったと思います。ラルちゃんがいてくれたから、ティールは話してくれたんです」
「……そうなんでしょうか」
「はい。……今のティールにラルちゃんと過ごした記憶になくても、心の奥底にラルちゃんはいるんですよ。でなければ、大人を避けていたティールがあそこまで懐くはずがありませんもの」
確かに。
初対面で私の名前に懐かしさのような、そんな引っ掛かりを覚えていたのは、私が心に残っていたからなのだろうか。
仮にそうだとして……それなら、ティールにとって、私って何なのだろう。
相棒で、親友ってだけ……じゃないの?
「? ラルねぇ?」
不思議そうにこちらを見つめるティールに私はゆっくりと首を振る。
今はそんなことはどうでもいい。
「……何でもないよ。お母さんとちゃんとお話、できた?」
「うんっ!」
「これでお母さんとティールは隠し事なしですもんね~♪」
「ん。なくなった」
「ふふん♪ では、その調子でブライトとも仲良くいきますか! お母さんとしたみたいに、ティールの気持ち、伝えに─」
「いやっ!」
さっきまで明るい笑顔を浮かべていたティールはどこへやらだ。
食い気味且つ、全力否定である。
セイラさんの膝の上は嫌がったけれど、話すのはまだ否定しなかった。しかし、ブライトさん相手だと話しすら駄目なのか。
「あらま、重症ね。どうしましょ」
ティール君」
以前、ティールからはブライトさんについての思いは聞いている。けれど、こちらの『ティール君』の思いはまだ聞いていない。
私はティールと目線を合わせ、ゆっくり問い掛ける。セイラさんと話す前にしたように。
「お父さんは嫌い?」
「……わかんない」
「分からないか」
「ん。とーちゃ、わかんない。……いつも、おこってるから」
「怒って? いえ……怒ってないですよ? 確かに無口だし、何を考えてるか分からない時はあるけれど……沸点は低くないし、まして、ティールに怒るようなことも」
「でも、とーちゃ、こわいもん」
ふむ。
三者が何を言っても信じられない。そう本人も言っていたし、ここはブライトさん本人の口から聞くしかないだろう。
「セイラさん、他人の私達がブライトさんの気持ちを代弁したところで、信じられないと思います。ティール君にはそう見えないから」
「なるほど……自分の目で見ないと信じないってやつですね。となれば、ブライトのところへ突撃しちゃいますか」
とんでもないこと言うな、この人は。
「突撃できると思いますか? 今のティール君に」
成長したティールならともかく、今の幼いティールには難しいだろう。なんせ、生まれたての小鹿レベルに震えてるのに、面と向かってまともに話なんてできるはずもない。
「かといって、ブライトさんと話をさせないと、ティールの不信感がなくなることはないし……堂々巡りですね、これ」
「誰かと話してるところにティールも居合わせたらいいんですかね?」
「まあ、そうですね。ですが、滅茶苦茶気まずくないですか?」
「確かに……私だったら逃げちゃうかも」
私もあれこれ理由をつけて逃げるかもしれない。っていうか、逃げたい。その場にいる必要ないよね? 私ってなるし。
「ふーむ。…………あっ! そうだ! 私、いいもの持ってます! ちょっと待っててくださいね?」
セイラさんはさっとその場から立ち上がると、部屋を出て行ってしまう。一国の王妃様とは思えぬ、機敏な動きで止める暇もなかった。
「セイラさん、実は今でも現役探検家とかじゃないよね」
「ほあ……? かーちゃ、いし、すきだからね、よくぼーけんするの」
その冒険とやらがダンジョンであるか否かは……想像するだけに留めておこう。疑問を口にしてしまえば、最後、延々と話が続いてしまう気がした。

時は夕刻。
場所は王宮の廊下、厳密に言えば、ブライトさんの執務室付近の廊下。
そんな場所で私、ティール、セイラさんの三人は固まって作戦会議(?)をしていた。
「はい♪ ラルちゃん」
「えーと、これは?」
セイラさんから手渡されたのは白いフード付きのマントだ。他に特筆すべき点も見当たらない。
「それは『気配遮断布』と呼ばれる道具です。元は透明化能力を持つモンスターの素材だったんですよ~♪ そして、言わずもがな、ルーメンお爺様お手製」
出たよ、明けの明星……!
名前の通りの効果とモンスターの透明化という能力が本当なら、装備した人の気配と姿そのものをを隠す能力があるのだろう。それはまあ、理解した。
っていうか、なんでそんなものがセイラさんの手元に!?
「どういう経緯だったかは覚えてませんねぇ~? 多分、お試し品をお裾分けしてもらったとかですかね。まあ、そんな感じなので、私も今の今まで存在を忘れていたのですけれど」
そんなあやふや知識で大丈夫なんだろうか。信用していいのか、この道具。
半信半疑な私に対し、セイラさんは疑いの欠片もなく、にっこにこである。
「大丈夫です! ティールにとってはどちらに転んでも、それはお守りになりますので」
まあ、それは……そうかもしれませんけども。
ティールには「お父さんにバレずに話を聞ける魔法の道具がある」とだけ説明しているので、本当に効力があるかどうかは重要ではない……のだろう。
セイラさんの作戦はこう。
まず、私とティールが気配遮断布を被り、セイラさんの後ろについて行き、ブライトさんの部屋に入る。
次にセイラさんがブライトさんの本心を聞き出し、姿と気配を消した私達もそれを耳にする。結果、ティールはブライトさんの本心を聞ける……という作戦だ。
この作戦の不安要素は多い。
この道具をどこまで信用していいのか。
そして、気配や姿を消したとして、王であり、一流の剣士としても名高いブライトさんを欺けるのかも疑問だ。
大体、どんな話の流れでティールの話をするのかもさっぱりである。
そもそも、突撃訪問して、話をしてくれるかすら分からない時点で、不安しかないのだけれども。
最後に最大の疑問を一つ。
「……セイラさん」
「はぁい?」
「私、いりますか?」
「いります。私もいるとはいえ、布を被ったティールひとりぼっちにできないじゃないですか」
うーーん……それを言われると、何とも言えませんけども。
ある意味、家族のプライベートな話を赤の他人である私が聞いてしまってもいいのだろうか。……耳を塞ぐにも、ティールとマントを被るとなれば、ティールを抱っこしなきゃいけないので、塞げないし。
都合の悪い話だったら、どうにかして忘れるか。よし、それでいこう。
「ラルちゃん、ティール、心の準備はいいですか?」
「私はいつでも」
「ぼくも、だいじょぶ」
「よぉし! では、作戦開始ですね!」
私は渡されたマントを羽織り、ティールを抱っこすると、フードを被る。
……この場で一番乗り気なのはセイラさんなんだよなぁ。大丈夫なんだろうか、この作戦。



~あとがき~
いつでもどこでも明けの明星製の道具は出てくるなぁ。

次回、ブライトの思い。

今回出てきた『気配遮断布』ですが、これはただの道具扱いです。魔道具とかではなく、分類的には装備品だそうです。(相方談)
この道具自体に魔法付与してあるわけではないので、道具、装備品扱いなのでした。
なので、作中でちびティール君には「魔法の道具」と説明してますが、あくまで言葉のあやってことでよろしくな!!

ではでは。