satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第345話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で話を聞く物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回はどうやってブライトとティールを話させようかみたいな作戦会議をしてました。
今回はその作戦を決行します!
ラル「結構、当たって砕けろみたいなところありません?」
セイラ「えへへ~♪」
ラル「褒めてはないです」


《L side》
セイラさんはブライトさんの執務室の前まで来ると、扉をノックするも、返事を待たずに流れるように部屋に入っていく。
私はその隙間を縫うように部屋へと入った。
ブライトさんの執務室は整理されているものの、仕事道具であろう物は多い。しかし、王宮内にあるにも関わらず、高級感のある部屋というよりは、整えられた仕事部屋という感じである。
この辺はブライトさんの好みなんだろうか。
ブライトさんは仕事机に向かい、何やら書類仕事中だったようで、いくつもの紙束が机上に広げられていた。
「ブライト、お話しいいですか~?」
「……入れと言った記憶はないが」
「あら。でも、もう入っちゃいました♪ もしかして、お時間、ないですか? 五分、十分程度でいいのですけれど」
セイラさんがブライトさんに話しかけている間、私は部屋のすみっこに移動する。姿も見えなければ、気配も遮断されているのであれば、端による必要はないんだろうが……これはもう私の気持ちの問題だ。許してほしい。
「別にそのくらいの時間ならば問題ない。……だが、仮に時間がないと言えば、素直に引くのか、お前は」
「そうですねぇ……そうなったら、仕事の片手間でいいから、耳はこちらに向けてくださいと言いますかね?」
「……ならば、初めから聞くな」
確かに。
「あら? 私は形式的に聞いただけですよ。礼儀は必要でしょ?」
「礼儀を語るなら、ノックしてすぐに入ってくるな」
確かに!
「……それで、話とやらはなんだ? ティールといたのではなかったのか?」
セイラさんの行いを咎めるのはやめたのか─諦めたに近い気もする─、ブライトさんが軌道修正を図る。流石です、ブライトさん。
ティールは今、ラルちゃんと一緒なので安心してくださいな。あの子、ラルちゃんにべったりなんですよ。うふふっ♪ 私、妬いちゃいそうですっ」
「そのようには見えんな」
「あら、バレました? ラルちゃんならいいかなーって思ってますからね~♪」
はい? どゆこと??
謎の告白に思考が追い付かなそうになるものの、本題はそこではないことを思い出す。
ティールの話をするんじゃなかったのか。なんだこの、のんびり会話っ!
そんなことを心の中で突っ込みつつ、緊張気味のティールの頭をそっと撫でてやる。姿と気配が遮断されているとはいえ、声を出してしまうと速攻でバレる気がするので、極力、音は出したくない。
ティールには申し訳ないが、なでなでで許してくれ。
「あ、ブライト。本題いいですか?」
「お好きにどうぞ。仕事はさせてもらうが」
「どうぞどうぞ。……では、本題を。ブライト、あなた、ティールをどう思っていますか?」
「………………は?」
……わー!! すこぶる直球だーーー!?!?
仕事をすると言ったブライトさんだったが、セイラさんの謎話題にその手も思わず止まってしまう。そりゃそうだわ!
「だって、ティールが大変な時にあなたってば、お仕事優先なんですもの。いくら、心の広い私でも怒っちゃいますよ?」
「あぁ……そういう。だが、それについては今更では?」
「だとしてもです。私が納得できる明確な答えを要求しますっ」
「仕事優先したつもりはない。ただあの場では効率のいい役割分担したまでだ」
「分かっていますよ。っていうか、そっちの答えじゃないですけどね! ティールをどう思ってるかって話!」
それを聞いたブライトさんは持っていた万年筆を机に置くと、机の上に肘を付き、どこか思案するように黙ってしまう。
数十秒の沈黙後、セイラさんが耐えきれなくなり、困ったように笑いながら口を開いた。
「……別に裏があるとかではないですよ?」
「いや。そこは考えてはない」
「なら、何を考えているのです?」
「…………」
ブライトさんはセイラさんの疑問に答えなかった。その代わりに首は動かさず、目だけでぐるっと部屋を見る。一瞬、ブライトさんと目が合うものの、あちらからは私達は見えていないはずだ。
それなのに見られたと思ったのは気のせいだろうか。……気のせいであってほしい。
私がドキドキしている間にブライトさんは小さく息を吐きながら、席を立つと机の前に移動して視線をセイラさんに戻す。
「さて、私がティールをどう思っているか、だったか」
「はい」
「……どうも何も、ティールは私の大切な息子だとしか言えない」
「はい」
ティールにどう思われようが、その思いは変わらない。私も父上は好きではないから、例え、ティールがそうであっても私の思いが揺らぐことはない」
真面目なブライトさんだ。好き勝手にふらふら遊び回るアルドアーズさんを好きになれないのだろう。元々、そういう性格は好きでもなさそうだしな。
「相変わらず、お義父様に冷たいのですね」
「今更何を。……まあ、王であった頃のあの人は尊敬しているがね。とはいえ、父親としてはどこも好きになれん。あの大雑把で不真面目な塊……おまけに毎夜の如く遊び歩く奴のどこを好めと言うのだ」
言いたい放題だな……ブライトさん。ここまで悪態をつく姿、初めて見るかもしれない。
しかし、セイラさんには見慣れた光景なのだろうか。涼しい顔で受け流していた。
「……そんな父親に育てられたのだ。普通の父親像なんて知らないし、そもそも、普通とは縁遠い環境下だった。……まあ、そんなのは言い訳にしかならんな」
どこか寂しそうに語るブライトさんは、本当なら「普通の父親」になりたいのかもしれないと思う。ただ、その普通の姿が分からないだけで、子供を思う気持ちはどこにでもいる親と変わらなくて。
ブライトさんも一人の人間だ。悩みもするし、迷いもする。けれど、それを口にするのが人より少し不器用なだけなのだ。
「……こんな父親で申し訳ないと思うし、不甲斐なさも感じる。だが、ティールを大切に思う気持ちはセイラの腹にいる頃から今……そして、今後も変わらないと誓う。あの子は愛するお前との間に産まれた子だから」
「……っ!」
私の腕の中にいるティールの瞳には大粒の涙が溢れていた。それは堰を切ったように一つ二つとこぼれていく。
ティール、あなたは愛されて産まれてきた。
嫌われてなんかないし、見られてないなんてこともない。
どこにいたって、ティールを思い、愛してくれる両親の下へ望まれ、愛されるために産まれてきたんだ。
「……今のでお前の求める答えになったかな?」
「はい。なりました。……けど、それをなぜ今まで、ティール本人に伝えてあげなかったのです?」
「タイミングがなかった」
「んも~……そんなんだから、セラちゃんに怒られるんですよ」
「セラさんも私のそれは理解していると思うがね」
「それはそうですけれど」
あれがきっと、ブライトさんの本心の全て。
……これを聞いて、ティールがどう思っているかなんて、あの反応を見れば一目瞭然だ。
「いっておいで、ティール君」
「で、も、ラルねぇ……かくれ、ばれ……」
「それはいーの。それとも、ティール君、お父さんのところ、行きたくない? それなら、隠密行動……かくれんぼは私の得意技だから、こそっと出ていっちゃう?」
我ながら、狡い聞き方かもなと思う。
けれど、今だけは大目に見てよ。
ティールは大きく首を振り、私の腕からブライトさんの下へと駆け出していく。
「とーちゃっ!!」
ティール……?」
ブライトさん視点、突然現れたティールだったにも関わらず、きちんと受け止め、戸惑いながらもティールの頭を撫でていた。
「セイラ以外にも気配は感じていたが……ティールだったのか。いや、しかし……?」
やはり、ブライトさん相手に道具一つのみで対抗するには無理があったか。……しかし、あの感じ、私のこともバレてそう? くそ。家族団欒の場になりそうだったから、しれっと抜けてやろうと思ったのに。
「ごめんなさい、私もいました……っ!」
私はフードを脱ぎ、深々と頭を下げながら素直に白状した。
「……ラルさん。これで全員かな」
「はい。隠れてたのは私とティールだけです」
「なら、よかった。……セイラ、ここまでする必要はあったか?」
そう聞くってことは、何かしらの思惑は感じていたのだろうか。となれば、それに敢えて乗っかっていたことになる。
一国の王、やはり侮れぬ……
「ありますよ? ティールのためですもの。……ブライト、今は私よりもティールの話を聞いてあげてください」
「……話?」
セイラさんの言葉を聞き、ブライトさんは不思議そうにティールへと視線を落とした。
ティールは少しだけ言いにくそうにするものの、意を決して「あのね」と言葉を紡ぎ始める。
「とーちゃ、ぼくのこと、きらいじゃ、ない? おこって、ない?」
「? いや……嫌いでもなければ、怒るようなこともないが」
「ほんとに?」
「嘘はついていない」
「ぼくと、おはなし、やじゃ、ない?」
「嫌ではないよ。セイラ程、得意ではないが」
「もう、いないに、ならない……?」
「……ならない」
「っぐす……えっぐ……ご、ごめんなさい、ごめんなさい! とーちゃ、ごめん、なさ……っ!!」
最後の答えを聞き、ティールは泣きながら謝った。何度も、何度も。
ティール……どうした? 何かあったのか?」
「んもー……ブライトったら。もう少し黙っててください。ほら、なでなでするっ!」
「? あ、あぁ」
ティールの謝罪に心当たりのないブライトさんは不思議そうにしながら、ぎこちないながらも優しく、ゆっくりとティールの頭を撫でていく。
「ぼ、ぼく、いま、まで、とーちゃ、わかんなくてっ」
「あぁ」
「きらい、なったって、おもって……みなく、なって、いないに、なってっ……とーちゃ、ぼくの、きらいってなったって、おもったの……っ! で、でも、ちがくて、とーちゃ、ぼくのこと……っ!」
「嫌いになっていない。……なるはずがない、お前は私の……お父さんの誇りだ。大切な守るべき家族だ。嫌いになんてならないよ」
「ぼ、くも、とーちゃ、きらい、ちがうの! ちがくてっ!」
「……そうか。ありがとう」
「っ……うわあぁぁあっ!!」
泣き続けるティールをブライトさんはそっと抱き締めた。優しく背中を叩いて、ティールが落ち着くまで、ずっと続けていた。
その姿はどこにでもいる父親の姿そのものだった。
「……何が普通が分からない、ですか。分かってるじゃないですか、ブライトさん」
「うふふっ……そうですね。本当に、そう。……ちょっぴり、不器用で口下手で自分の気持ちに鈍感で……全く、仕方のない人達です」
そう語るセイラさんも嬉しそうにそっと涙を流す。
きっと、セイラさんもこの日を待ち焦がれていたのだ。愛する夫と息子が分かり合える日を。
──きっと、その日はもう目の前だ。



~あとがき~
もうそろ終わる! はずっ!!

次回、入りきらなかった話をします。
まあ、ある意味、今回の続きですな。

語りたいことはない!
本編で全てです。
よかったね、ティール。よかったな、ブライト。

ではでは。