satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第347話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわいわいしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、やらなくてもよいのでは? みたいな話をしてしまったなと悶々としてました。
今回は事件のあった次の日からです。


《L side》
ティール幼児化事件から一夜明けた次の日。
天気は快晴。朝の陽射しが部屋の中を照らし、気持ちのよい朝である。……普段だったらだが。
結局、クランド一家のいざこざを修復するために奔走(?)したはいいが、いざ自分のことになると、どうにもならなくなり、夜は大して眠れなかったのが現状だった。
眠れなかった割には、眠くて起き上がれないなんてことはなく。その辺は習慣なのか、そもそも睡眠できるような精神状態ですらないのかは判断できなかった。
惰性的に朝の支度をしていると、扉をノックする音が部屋に響く。それに答えてみれば、アンジュさんが顔を見せ、恭しく一礼する。
「おはようございます、ラル様」
「おはようございます。何かありました?」
昨日の一件もあり、朝食はしーくんと部屋で……と伝えてあるので、朝食のお誘いとかではないと思うのだけど。
「トラブルではないのでご安心ください。朝食後、サロンまでよろしいですか? ツバサ様の体調が戻られたようで、この後、ティール様を元に戻すのです」
「あぁ、はい。分かりました」
意外と早い。セイラさんのことだから、あと半日は一緒にいたいーって言うのかと。
すると、アンジュさんは苦笑を浮かべながら、小さく頷いた。
「ラル様の言う通り、セイラ様はそのように申しておりました。が、ブライト様の一言でできるだけ早く戻すと決まりまして」
なるほど。ブライトさんの鶴の一声ってやつだな。
「……こういう時のブライトさんは流石ですね」
「ふふっ……はい♪ それでは失礼しました」
再び恭しく一礼し、アンジュさんは部屋を出て行った。
……ご飯食べたら、行かなきゃな。

ということで、運ばれてきた朝食をしーくんと取った私は、アンジュさんに言われた通り、しーくんを連れてサロンへとやって来た。
「おはようございます」
「おはよう、ラルちゃん♪」
サロンにはすでにセイラさん達は来ていて、各々、好きなようにくつろいでいた。
セイラさんは膝の上にティールを座らせ、のんびりしているし、ブライトさんはその横でコーヒー片手に何か読んでいる。……恐らく、仕事関係の何かだとは思うが、何かまではよく分からなかった。
「もう少ししたら、ツバサちゃんも来ると思うので、それまで楽にして待っててくださいね~」
「あ、はい」
セイラさんに促されるまま、空いている席に座る。今のティールとしーくんが顔を合わせるのが個人的に気まずかったのだが、幸か不幸か、当人らは互いにノータッチだった。……それはそれで、気まずいのだけれども。
私達が席についてすぐ、ツバサちゃん達はアルベルトさんに連れられ、サロンへとやって来た。
三人を代表してか、アラシ君がセイラさん達に向かって、口を開いた。
「し、失礼します」
「あ、いらっしゃ~い♪ 朝早くに呼んでしまってごめんなさいね?」
「……」
ツバサちゃんはセイラさんの言葉に反応はせず、すすっとセイラさん、ブライトさんの前に出ると、流れるような動作でその場に正座する。
びっくりする私達─ブライトさんだけはノーリアクションだった─をよそに、アラシ君とレオンくんもそれぞれ、ツバサちゃんの両端に正座し、三人揃って頭を下げた。
「昨日は風邪を引いていたとはいえ、ほんっとに! 申し訳ありませんでしたっ!!!」
この様子だと、恐らく、体調が戻った後、周りから事情を聞かされたのだろう。それにしても、開幕土下座とは……不謹慎だが、ツバサちゃんが土下座すると、ただただもふもふしてる白い饅頭にしか見えない。それくらい小さくなりながら、全力で土下座してるってことなのだろうけども。
「もう、なんと謝罪すればいいのか……たくさんのご迷惑をおかけしてしまって……っ!」
「あらあら……迷惑なんてそんなそんな~♪ ねぇ、ブライト?」
「そうだな。……三人とも、顔を上げなさい。こちらとしては何も問題はなかったし、気に病むことはない」
ブライトさんの言葉にアラシ君とレオン君はそっと頭を上げ、姿勢を正した。しかし、ツバサちゃんだけは未だに申し訳なさそうにしていて、顔を少し上げるだけに留まった。
「で、でも……」
「そうですよ、ツバサちゃん。私は楽しかったですよ? こうしてティールを心行くまで愛でられたんですから。……しかも、いくら抱き締めても、撫でても嫌だと拒否されないっ! こんなこと、もう二度とないと思ってたもの~♪」
滅茶苦茶楽しんでんな。流石だよ、いや、本当に。
横できゃっきゃっしているセイラさんを完全無視し、ブライトさんは「それよりも」と話を続ける。
「ツバサさん、体調はもう大丈夫なのかな?」
「は、はい……そっちはもう問題なく」
「それは何よりだ。……セイラ程ではないけれど、今回の件はある種、よい機会だった。私も色々と気付かされたからね。……そんなきっかけをくれた君に感謝すらしている。だから、もう謝らないで欲しい」
「……ブライトさん」
「しかし、このままでいいと言うことにはならない。……ティールにかかってしまった魔法を解いてもらえるだろうか?」
「はい……! もちろんです!」
そこでようやく立ち上がった三人。早速、ツバサちゃんが魔法を……とはならず、セイラさんの膝の上にいるティールを見て、遠慮がちに口を開く。
「あ、あの、セイラさん……? ティールさんをお膝から下ろしてもらえると……」
魔法を解けば、ティールは元の成長した姿まで戻る。成長したティールを膝の上に~……というのは、無理があるってもので。
それはセイラさんも理解しているはずなのだが、なぜかティールを下ろそうとはしなかった。そして、理由は何となく察した。
「……最後なんですね、このティールを抱き締めるのはっ!」
「ほあ? かーちゃ?」
セイラさんはぎゅーっとティールを抱き締め、離そうとしなかった。名残惜しいってもんじゃない。未練しかない。未練タラタラである。
そんなセイラさんを横目にブライトさんが感情が乗らない声を漏らす。
「最後も何も、本来はすでに過ぎた過去だろうが」
「まあ! ブライトが冷たいっ!」
「冷たいも何も、それが事実だ」
ティール! お父さんが冷たいっ! お母さんをいじめてきますー!」
「おあ……とーちゃ、なかよくしなきゃ」
「大丈夫。こんなことで揺らぐ仲ではないから。……いい加減にしろ。ツバサさんが困っているだろう」
と、ブライトさんが器用にセイラさんからティールを奪い取り、彼を床に下ろす。
「あー! ブライトー! もう少し感傷に浸らせてくださいよー!」
「うるさい。黙れ。大人しくしていろ。ティール、ツバサさん……彼女の近くへ行ってこい」
「? でも、かーちゃが」
「お母さんは放っておけ」
「いじわるー! ブライトが意地悪ですっ!」
「何とでも言え。……ツバサさん、頼めるかい? セイラは無視していいから」
「は、はい!」
ブライトさんがセイラさんを抑えている間にツバサちゃんはティールをブライトさん達から、ほんの少し離れた場所に連れていく。
ティールさん、本当にごめんなさいっ!」
「ほあ?」
ティールはなぜ、謝られているのか理解できず、こてんと首を傾げる。そんなティールをよそに、ツバサちゃんは祈りを捧げるようなポーズをすると、二人を中心に魔法陣が現れた。
その魔法陣からは淡い光が放たれ、少しずつティールの周りに集まると、やがてその光はティールの全身を包み込んだ。光は本来の彼を形作るように変化していき、それが完成すると、光はパッと宙へ消えていく。
「──ん……? あ、れ……」
光が消え、そこから現れたのは私のよく知るティールだった。
ティールは何度か瞬きをした後、辺りを見回し、最終的には私を見て、困ったように笑う。
「えと、その、ごめん。ラル……これ、どういう状況……?」
「どういう……って」
昨日のこと、覚えてない? それとも、理解が追い付いてない? どっちだ?
私が説明しようと口を開きかけた瞬間、ツバサちゃんが再び、がばっとお饅頭形態……いえ、土下座をする。
ティールさぁぁあんっ!! ごめんなさいっ! 本当にごめんなさぁぁいっ!!」
「え!? あ、ツバサ? 何、急に……?」
ティール!!!」
「うわっ!? え、雫までどうしたの」
我慢できなくなったしーくんが全力で駆け出し、ティールに飛び付いた。飛び付いてきたしーくんを見事な反応速度でキャッチしたティールだが、余計に状況が飲み込めなくなったらしく、困惑した様子で再び、私を見る。
「え、本当に何? 何があったの?」
ティール、昨日のこと、何も覚えてないの?」
「昨日の……? 昨日って別にな、に……も」
ここでぴたりとティールの動きが止まる。そして、少しずつ思い出してきたのか、それに伴って顔も赤くなっていく。
「いや……あれ、は……っ!」
ティールは自身の両親へと目を向ける。
先程まで取っ組み合いじみたことをしていた二人だったが、今はその影は一切なく─なんなら、最初からなかったような雰囲気すらある─、ティールの視線にセイラさんは微笑みながら手を振り、ブライトさんは目を閉じ、小さく笑って応える。
「ゆ、め……じゃ……ない?」
「残念。あれは現実だよ。……ティール『君』?」
「……た、多大なるご迷惑をおかけしましたあぁぁっっ!!!」
赤面したティールの叫びが部屋にこだまする。昨日のあれこれを思い出して、居たたまれなくなったのかもしれない。彼らしくはあるけれど。



~あとがき~
もう少しだけ続きます。

次回、今回の事件を経て。

色々あったけど、元通り(?)になりました。……あれ。元通りになってるか?
まあ、いいや。
作中、触れませんでしたが、ティール君の服はツバサちゃんの魔法でおっきくなったり縮んだりしてるので、困るようなことはないです。便利だね、魔法。

ではでは。