satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第351話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で話してる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ブライトに話の約束をしたり、ラルとちょっと話したりしました。なんというか、入りきらなかった繋ぎの部分を公開した……そんな気分です←
ってことで、今回はお預けになっていたブライトとティールのお話の続きです。


《Te side》
ぼくは父の執務室前まで来て、扉をノックする前に一回、深呼吸をする。
気持ちを切り替えたところで─実際、切り替わっている実感はない─扉をノックする。
昼頃に尋ねた時と同様、父上の返事が聞こえてきて、ぼくは扉を開ける。
「失礼します、父上」
「あぁ……いらっしゃい」
さっきより、机の上の書類は減っているものの、相変わらず書類仕事を黙々とこなしていたらしく、忙しなくペンを走らせていた。
「あと二分程待っててくれないか。きりのいいところまで終わらせたい」
「あ……と、その、忙しいようであれば、後日でも大丈夫ですが」
「……いや。問題ない。ただ、私が仕事をしながら話したくないだけだ」
……片手間に話すことはしたくない……ってことかな。
ぼくは父上の仕事が終わるまで、黙って待っていた。その間、父上が元々頼んでいたのか、ティーセット─ティーセットなんて言ったけど、中身は多分コーヒーだ─を持ったアンジュさんが訪ねてきて、ローテーブルにそれを置くと、恭しく一礼して出ていった。
父上の方は仕事が一段落したらしく、机上の書類をまとめている最中だった。
「……そういえば、父上には専属の使用人はいないんですよね」
ぼくにはアルベルトがいて、母上にはアンジュさんがいる。ほぼ王宮にいないお祖父様ですら、ハロルドさんっていう年配のベテラン執事さんが専属の使用人として配置されている。ちなみに、お祖父様がいない時のハロルドさんは別の仕事を色々やってくれている。
しかし、父上にはそういう人はいない。傍にいるって面ではゼニスさんがいるけど、ゼニスさんはあくまで護衛の騎士だ。
「ん? あぁ、いないな」
「……理由を伺っても?」
「構わんよ。とは言え、理由はいくつかあるが……そうだな、一番の要因は気が散るからだな。昔はハロルドが父上の面倒を見る傍ら、私の面倒も見てくれてはいたんだが。……今は誰も置いていない」
「もしかして……いない方が仕事しやすい、からですか」
「……言い換えれば、そう」
と、父上にしては珍しく不敵な笑みを浮かべる。
止める人がいなければ、永遠に仕事し続けそうだな……父上にとっては、そっちの方が都合いいのかもしれないけど。
ある程度、片付けが落ち着いたのか、父上は椅子から立ち上がると、ぼくが座っているソファの向かいに座り直す。アンジュさんが持ってきてくれたコーヒーに口を付ける。
「……それで、話だったか」
「はい。昨日……もう一昨日か。途中だったので……本来なら、昨日してくださるはずだったのに、申し訳ありません」
「こちらは別に。お前に大事がなかったし、問題ない。……むしろ、どこか懐かしく思ったくらいだ。お前の幼い姿もそうだが、あぁいう騒動にもね」
そういえば、昨日、そんな話をチラッとしていたような……その辺は母上に構い倒されていたし、それが嫌で周りの話を聞いていなかったせいか、あまり覚えてないけど。
「……そうなのですか?」
「セラさんがトラブルメーカーだったのだろう。……今回、ティールが受けたようなそれも、私は修行時代に似たような経験がある」
ぼくが知っているセラフィーヌさんって落ち着いていて、しっかりしていて、母上を慕ってて……くらいなのだけれど。
「あの頃はそれが日常で、私も大して気にしてなかったよ。……今思えば、なかなかに刺激的な日常で、あれは一般的に非日常の呼ぶべきものだったんだろう。……それくらい、色々とやっていたな。辺りを爆発させてみたり、壁を破壊してみたり。他人の頭に獣の耳を生やしたり、強制的に眠らせに来たり……軽く思い出しても、本当に色々と出てくるものだな」
「あのセラフィーヌさんが」
ぼくがそう問いかけると、父上はだまーって頷く。
父上が昨日の今日全く変化がなかったのは、お転婆お転婆なんて可愛いものなのか、不明になってきたけど─セラフィーヌさんとの日常で耐性があったからなのか。
「……だから、まあ、なんだ。ティールが責任を感じる必要はないし、何度も謝らなくていい」
う、むぅ……父上にとってはそうなんだろうけど。
「……しかし、幼児化したとはいえ……父上にはご迷惑を」
「あれくらいの年齢なら普通だろう? 泣きたければ泣くし、我儘も言う。親に甘えたければ存分に甘える年頃……違ったか?」
「ちが……わないとは思いますけど」
歯切れの悪いぼくに父上はそっと目を細めながら、小さく頷く。
「そうか。……お前としては、どこか納得しがたい経験になってしまったのだな。……が、私個人としては、あの頃のティールの思いを聞けてよかったと思っているよ」
「……え?」
「あれはティールに向けて言ったわけではなかったが……昨日、セイラに言った通りだ。私は普通の父親を知らない。接し方も知らない。……お前を思う気持ちはあるが、それの表現方法を知らない……それに、私は自ら何かを語るような性格でもないし、他人の気持ちを察するのも悪い方だ」
確かに似たようなことを昨日、母上に言っていた。
父上はそこで一旦言葉を切ると、コーヒーを一口飲む。そして、そっと口を開く。
「……だから、何かあるなら……思うことがあるのなら、ティールから言ってくれるとありがたい」
「それ、は」
「……という話を一昨日のあの時、言うつもりだったんだ。遅くなってしまってすまない」
「え! いや、遅いなんて……!」
散々言ったけど、話ができなくなったのは、幼児化事件があったせいであって、父上のせいではない。
父上は優しい眼差しでぼくを見つめ、小さく笑う。
ティール、お前は私とセイラの大切な息子だ。それを言い訳にするつもりはないが、今までも私なりにお前を気遣っていたつもりだ。……先日、お前の話を聞き、昨日の話も踏まえて、上手く伝わってなかったと自覚したよ。それはきっと、互いに言葉を交わさなかったからだろう」
ぼくは過去の経験から父上を避け、それを感じた父上もまた、深く関わらないようにしていた。それが歯車が変な方向に噛み合ってしまった結果、互いに避け合い、溝を作ってしまったのだ。
「ならば、これからは言葉を交わそう。なんでもいい。お前の思いを言葉にしてくれ。それを受け止め、私なりに言葉を返す。……申し訳ないが、私からは特になくてな」
「ぼくに対して、何もですか?」
「そう。……いや、何もないと言うと語弊があるが。……なんだろうな。セイラみたいに感情的に何かを言いたいという気持ちがないだけだ。……伝わっているだろうか?」
ぼくは頷く。
父上は感情的な人間ではない。いつだって冷静で理性的な人間だ。自身の感情に流されて、あることないこと話す人ではない。
きっと、心の中に決まった感情があって、でもそれを改めて口にする必要がないだけなんだろう。だって、ずっと言ってくれていたから。
「父上はぼくに自由にして欲しいんですよね、きっと。……昔から、よくも悪くも放置してましたから」
「そうだな。セイラに言わせれば、何か言って欲しいみたいだがね」
「母上は……構いたがりですから」
「違いない」
ぼくと父上は互いに苦笑を漏らす。ぼくと父上で浮かべている光景は違うかもしれないけれど、母が何かしらきゃーきゃーしてるところを浮かべたのは間違いないだろう。
「……ですが、何でも話すと言っても……何でもって」
「言葉通りの意味だよ。願いでも、我儘でも、怒りでも……甘えたりでも構わん。まあ、お前のその年で甘えるなんてなさそうだがね。……親として、お前の思いを受け止め、何かできるのなら手を貸すし、知恵を出す。そんなところかな」
「……親として」
王としてではなく、親として、父として、ぼくと向き合う……そのために言葉を交わしたい……ってことなんだろうか。
「今更、こんなことを言うのも変な話だな。すまないね、ティール。お前には随分と気を遣わせてしまっていたな」
「…………とう、さん」
ずっと面と向かって呼べずにいた。立場とか周りの目とかを気にして、一線を引くようにしていたから。
昔はそんなことを気にせず、呼んでいたはずなのに。舌足らずの口で、「とーちゃ」って。
もしかしたら、初めて呼んだかもしれないその言葉を聞いて、父さんはほんの少し、驚いたように目を見開く。そして、すぐに優しい目に戻って、ふっと笑う。
「ふむ。……セイラではないが、そう呼ばれるのも悪くないな」
「……父さん」
「うん?」
「ぼく……これから、ちゃんと話す。思ってたこと、父さんに全部」
「あぁ。気が向いた時でもいい。話してくれ」
「……うん。わかっ─」
ぼくの言葉を遮るようにバン、と大きな音が響く。条件反射で身に付けていた懐中時計に手を伸ばしながら、音がした方を振り向いた。
そこにいたのは薄ピンク色の髪に垂れ耳の兎族の女性……セラフィーヌさんだった。
セラフィーヌさんはきっと目を吊り上げ、ぼくらの方──と言うよりも、父さんの方を見てビシッと指を指す。
「そこに辿り着くまでがほんっとに遅すぎっ!!」
「セラフィーヌさん!? なんでここに」
ちなみに、父さんは音にもぼくの反応にも、セラフィーヌさんの登場にすら全く動じてなかった。なんなら、セラフィーヌさんの方を見向きもせず、コーヒーを飲んでいた。
……なんで動じないの、この人。



~あとがき~
何をするにもなんかタイミングが噛み合わないねぇ……この親子は(笑)

次回、セラフィーヌさんとブライトさん。
あれこれ話には出てましたが、きちっと話すのはここが初めてやな。どんな感じになるのかお楽しみに。

言いたいことはないです。
毎度のことなんですが、なんか似たような話を何度もしている気がしてるけど、許してくれ。

ではでは。