satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第352話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわいわいしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、真面目な親子会話してたところに乱入者がー!!!???……ってところで終わってます。
そんな乱入者、セラフィーヌさんとブライトの話。一旦、真面目な話は置いときましょうね~!
ティール「置いとかないで欲しかったんだけどな……?」


《Te side》
「ライトくん! 聞いてるんですか!?」
突然現れたセラフィーヌさんはなぜか怒りながら、父さんに詰め寄る。詰め寄られてる方は特に慌てるでもなく、いたって冷静だ。
「聞いてますよ。……今更、連絡もなく訪ねることに対して、何かを言うつもりはないですが、せめて、ノックくらいはして欲しいですね」
「あら? お父様はよくて、私は駄目なんですか? お父様もノックしないで入りますよね?」
「入りますね。いや、そもそも、それを承諾した覚えもないし、あの人にも再三、ノックくらいはしろって言っています」
「そうなんですか? でもまあ、お父様がいいなら、私もいいですよね? ライトくんだもん」
「セラさん。私の話、聞いていました? 『でも』に繋がっていませんよ」
ティールくん、驚かせてごめんね? ライトくんはお久し振りです」
セラフィーヌさん、父さんの話を聞く気ないな……これ。
「えーっと……セラフィーヌさん、先日はお世話になりました」
「いえいえ♪ 私は何もしてないわ♪ 勝手にお世話してたのはお父様の方だもの」
ぼくに対してはいつもの優しい笑顔を見せてくれている。やっぱり、父さんにだけあんな感じなのだろうか。
父さんは隠すでもなく、盛大なため息をつき、ちらりとセラさんを見上げた。
「……それで? 随分とご無沙汰なセラさんの用件は?……まあ、大方、予想はしていますが」
「流石、ライトくん。先日、ティールくんにお願いした伝言の通りですからね♪」
伝言……色々よろしくのやつだっけ……?
セラフィーヌさんは改めて父の方に向き直れば、肩がけバッグから綺麗に包装された箱を取り出す。
「仕事の用事でこちらに来て、久しぶりにライトくんにも会えるな~と思って訪ねた次第です。後、うちの子が随分とご迷惑をおかけしたみたいで、その謝罪も兼ねて」
セラフィーヌさんの耳にも昨日の事件の件は入っていたらしく、どうやら、箱はお詫びの品的なやつらしい。
父さんはそれを受け取り、まじまじと見つめると、再びセラフィーヌさんの方へ目線を向ける。
「なんとなく想像できますが、一応。中身は?」
「うちの新商品です♪」
「ですよね。商売しに来たんですか」
「いいえ? たまたまですよ~♪ 『パチパチ! ひんやり真冬ゼリー』って商品で、夏にぴったりのスイーツです。是非、ご感想をお願いします」
「……やはり、商売に来てますよね?」
「違いますよ~? ほら、人様のお宅に訪ねる時は必要でしょう? 手土産は」
その手土産に自分の関わりのあるところを持ってくる辺り、セラフィーヌさんも抜け目ないと思う。
……というか、真冬ゼリーってなんだ。どういうゼリーなんだ。想像できないんだけど。
まあ、それはそれとして。
突撃した初め、怒ったように声を張り上げていたが、今は落ち着いていて、笑顔で会話を交わしている。しかし、父さんの方はいつも以上に難しい顔をして、セラフィーヌさんを見つめていた。何か思うところがあるのだろうが、それが何かは分からなかった。
「……父上、どうかされました?」
「ん……今は別に。これからどうにかなるとは思う」
……は!? 今からどうにかなるの!?
「ふふっ……私の話はこれくらいにしましょう。今は私よりティールくんの話ですよ。ティールくんの」
ぼ、ぼく?
「ごめんなさい。盗み聞きするつもりはなかったのだけれど、二人の話、聞こえちゃったの。もちろん、全部じゃないけれどね?」
あ、あぁ……聞かれてたのか……
……いや、そこまで音が外に漏れるような構造じゃないような。ぼくらも大声で話していた訳でもないし……?
セラフィーヌさんは、なぜぼくらの話が聞こえてきたのかには触れず、こほんと咳払いを一つすると、ニコッと笑う。
「とにかく……ライトくん、ここに座って」
と、セラフィーヌさんが指差すのは自身の目の前……もっと言えば、床である。つまり、自分の目の前、床に座れって言いたいんだろうけど……なんで、床?
「セラさん。この場には息子がいるのですが」
「あら。関係あります?」
「……」
な、なんなんだ、この空気!!
これが漫画の世界なら、セラフィーヌさんの背後に「ゴゴゴッ」という効果音が書かれてるんじゃないかってくらい威圧感が凄い。
そんな威圧感を放つセラフィーヌさんを一瞥し、父さんは数秒だけぼくを見る。そして、諦めたように小さくため息を漏らせば、ソファから立ち上がり、セラフィーヌさんの目の前に移動。そのまま、慣れた動作で正座する。もちろん、セラフィーヌさんの目の前に正座していた。
「父上!?」
一国の主のそんな姿、誰も見たくないけど!!??
困惑するぼくをよそに、父さんはいつも通り反応はないし、セラフィーヌさんも腕組みしながら、父さんを見下ろしていた。
「……さっきも言ったけど! おっそい! 遅すぎる! なーんで最初からあぁやって言ってあげないんですか!?」
いきなりの怒号に、ぼくが言われたわけではないのに、思わずビクッと体が震えた。
「確かにライトくんはあまり喋らないし、一緒にいても話は盛り上がらないけど! もう少しやり方あるでしょうが、やり方が!! 最初にライトくんが話さないと、ティールくんも困るに決まってるし、接し方に迷っちゃうでしょうがぁぁぁ!!!」
わ、わー……もしかしなくても、滅茶苦茶怒ってる~……?
「……私なりに気にはかけてました」
「それが分かりにくいって話を散々してるの!!! というか、その気のかけ方もなんかズレてるの! ライトくんの場合!!」
ここまで感情的なセラフィーヌさんも初めて見る。いや、今後一生見ないかもしれない。
いつだったか、ルーメンさんから「セラはよくライトにお説教しててな~」みたいな話を聞いた気がするが、これ程までとは思ってもなかった。
んー……ぼく、出てった方がいい……?
……とはいえ、お二人の近くに出入り口の扉があるので、こそっと出ていけそうにない。第一、セラフィーヌさんはマシンガンのように話しまくってるので、ぼくがいなくなっても気づかなそうだが、説教を受けている父は時折、こちらを気にかけている素振りを見せていた。多分、ぼくが部屋を出て行ったら、速攻でバレる。少なくとも、父さんにはバレる。
……もうこれ、聞かないフリするしかない。ここは父さんの仕事部屋だ。暇潰しできそうな本は山程ある。適当に読書でもして、気を紛らわそう。何かしてないと、この居心地の悪さに耐えらんないです、ぼく!
「むかっしからそうよ! ライトくんってば、変に空気読んじゃってさ! 変な方向に気を遣うんだもん! 的外れもいいところだよ!?」
「気を遣えない奴よりましでは」
「そうだけどね! ましだけど、今言いたいのは、そうじゃなぁぁあいっ!! あのね、ティールくんもライトくんと同じで気遣い屋さんなの、分かる!? この悪循環!!」
「はあ……?」
「分かってないでしょ、この鈍感っ! あんぽんたんっ!!」
「その辺の語彙力は昔と変わりませんね」
「うるさーーーいっ! 論点はそこじゃない! ライトくんの話をしてるの!!」
「……ティールの話では?」
「そうだね!? ティールくんの接し方に問題のあるライトくんの話だね!?」
……本を読んでいても、話は耳には入ってきてしまう。それは許して欲しい。許して欲しいついでに一つ聞きたい。
ちょいちょい父さんが茶々(?)入れるのは、素でやってるの? 意図的にやってるの?? どっちだ?
ちなみに、表情からは全く読めないので、誰か教えてください。
『うふふ。あれはね、素でやっているの』
……白雪、なんでここに。
珍しく、人型の姿─といっても、半透明でぼく以外には見えないようにしてる─で現れた白雪は、ぼくの背後から肩に腕を回し、顔を近付けてきた。
『あら、貴方が教えてくださいって言ったから、教えに来たのよ?』
嘘つけ。面白そうだから見に来たに決まってる。
白雪は純白の髪を揺らし、クスクスと笑う。否定はしないらしい。
『せっかくだから、眺めていくことにするわ。この子達のコミュニケーション♪』
……え。コミュニケーションなのか、これ。
白雪曰く、あの説教は二人のコミュニケーションの一つらしい。どこがそうなのかは分からないけど……そう言うってことは、頻繁に行われているのかもしれない。
密かに白雪が見守る中、セラフィーヌさんのお説教は続いた。ライトくんのどこが駄目だの、ライトくんのこーゆーところが悪いだの……最早、ぼくの話なんでどこかへ行ってしまっているのは突っ込まないでおく。
やがて、お説教の内容が父さんの仕事問題に移っていく。
「──だいったいね、ライトくんは仕事のしすぎなの!」
「そうですか? いつも通りですよ」
「そのいつも通りの量が普通に多いって話! もっと減らして、家族の時間を作りなさぁぁあいっ!!」
「それなりに作っているつもりなんですが」
「作ってたら、さいっしょからティールくんと仲良くやってたでしょーがっ!! どの口が言ってるの、全く! とにかく、仕事量を減らして! 同じようなことを起こさないためにもっ!」
「……一応、善処はします」
善処できてたら、母上は「ブライトったら、また夜中までお仕事してるんですよ~?」という愚痴を言わない。多分だけど。
『うふふっ♪ やっぱり、あの二人は見てて飽きないわ。いい暇潰しになった♪ それじゃあね、未来の王。また逢いましょ♪』
好き勝手するだけして、勝手にいなくなりやがった……まあ、いいけど。
白雪が姿を消してから程なくして、セラフィーヌさんも満足したのか、ふうっと息を吐くと、ニコッと笑顔に戻る。
「今日はこのくらいにしておきましょ」
「? 今回は随分と短いですね。十分程度しか経っていません」
十分の説教が短いって、普段、どれだけ言われてるんですか、父上……!?
「あら? もっと長い方がよかった?」
「そういうことでは」
「……うふっ♪ この先は私じゃなくて、ティールくんの番かなって思いまして♪」
……ぼくの番、とは。流石に、セラフィーヌさんみたく捲し立てるのはできないですよ。やったことない……!
「大丈夫。私みたいにする必要はないから。……ないけど、これくらい色々言ってもいいと思う。他人の私でこれだもの。この朴念仁、なんだかんだ応えてくれるわよ? 二十年以上もお説教してきた私が言うんだもの、その辺は保証します♪」
ぼくを安心させるためか、優しい笑みを浮かべながら、こちらを向く。
もしかしたら、セラフィーヌさんはわざとぼくの前で説教したんだろうか。あれこれ言った後なら、ぼくも言いやすいだろうって。
「セラさん? 本人の前でそれを言いますか」
「事実でしょう? ライトくんがそんなんだから、過去にお姉様はうちに家出したんじゃない」
「……まだその話をします?」
「まだも何も、私はお姉様を泣かせた事を許したつもりはないけれど? 何だったら、続きを今ここでしてあげようか?」
「遠慮させていただきます」
……違うな、これ。父さんに不満言いたいだけだ。
セラフィーヌさんは気持ちの切り替えでもするように、先程のようにこほんと咳払いをする。
「本当はこんな話を長々とするじゃなくて、ライトくんと仕事の話をするつもりで来たのだけれど……先にお姉様のところに行ってきますね」
「? 私は今でもいいですよ」
「ライトくぅ~ん? 家族との……ティールくんとの時間を作りなさいって話をしたばかりでしょ。私の話は後でいいの。……だから、後でお姉様のお部屋に来てくださいねっ!」
「あ、はい。分かりました」
父さんの返事を聞くと、セラフィーヌさんは満足したように頷き、満面の笑みで部屋を出て行く。
こういっては何だが、嵐のような人だったと思ってしまう。
「あの……だい、じょうぶですか……父上?」
「あぁ、問題ない。いつものことだからな」
あれをいつもの光景だと思いたくないけど、いつものことなんだな。悲しい事実を知った気がする。
父さんはその場から立ち上がると、ソファに座り直した。十分以上も正座していたというのに、平然としているのはやはり、慣れているからなのだろうか。
「……それで、ティールから何かあるのか?」
「えっと」
「私としてはセラさんが来る前に話終えていると解釈していたが……何かあるなら聞こう」
「……」
話したいことがない訳じゃない。
でも、それを今、ここで口にしてもいいんだろうか。……そんな迷いが出てきてしまう。
……出てきちゃうけど。
「さっき、全部、話すって言っちゃったしなぁ」
ティール?」
「父上……ううん、父さん。ぼくの話、聞いてくれますか」
「構わないよ」
「色々言っても、大丈夫ですか」
「もちろん」
「……話が繋がってなくても、何が何だか分からなくなっても、いいですか」
「お前が思ったことを言えと言ったのは私だ。問題ない」
「……ありがとう。じゃあ、今でのこと、全部言う。思ってたこと、感じたこと、して欲しいこと、して欲しかったこと、全部……言う」



~あとがき~
ブライトとセラさんのところ、結構ノリノリで書いてたのは内緒にしててください。

次回、ティールの話。
ゆーて、大体話してるんですけど、もう少しだけお付き合いくださいませ。

白雪の言った「二人なりのコミュニケーション」とは。蛇足ですが、少し書いときます。
あそこまでブライトに何かを言う人って、セラさんくらいしかいないんですよね。
もちろん、セイラもルーメンさんも言うには言うけど、直球でどかーんと言ってくれるのは、セラさんくらいなもんです。だからこそ、二人のやり取りは特別なんだろうなと思います。それを白雪も知っているから、あんな風に表現したのではないかと。
何事もそうですが、あんな風に言ってくれる人が近くにいるのは幸せなものです。

ではでは。