satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第353話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で話してる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ティールとブライトの話に乱入してきたセラフィーヌさんの独壇場になってました。が、今回からはまたティールとブライトの話に戻ります。



《Te side》
……何から話そう。
ルーメンさんと話す前は父に対して、あれこれ思っていたけれど……今はそれも特にない。誤解だって分かったし、そう思う必要もないと分かったから。
幼い頃に抱いた「見てくれない」「好きじゃない」という感情も昨日の事件を経て、誤解だって分かった。
もしかして……今更、話すことなんてない、のか?
「過去の不平不満でもいい」
「……父さん?」
「過去、言いたかったことがあるなら、今ここで言っていい。あのセラさんを見たろう? あの人は十年以上も前の話を未だに持ち出して文句を言う。……まあ、あれは私のせいだから、何も言えないが。……ともかく、セラさんのそれを許しているのだから、ティールも言いたいのなら言って構わん。むしろ、今のお前から聞きたい」
「何を、ですか」
「不平不満を。お前から直接、聞いた試しがないしな」
まあ、言えるわけないし……
けど、今なら……?
「むか、しは」
「あぁ」
「昔は、仕事ばかりになった父さんが嫌でした。けど、仕方ないって分かってたから、何も言いませんでした。……あの時、あの日……お祖母様が亡くなったあの日から、ぼくの我儘で二人を煩わせてはいけないと」
一人遊びが得意なフリをして、大丈夫なフリをした。それで大好きな二人が安心するならと、子供ながらに幼稚で浅い考えで、一人でも平気だと振る舞い、周囲に嘘をついた。
「いつしか、何も言えなくなった。話し方を忘れ、甘え方を忘れた。……どうやって、二人と話していたか、忘れました。だから、あの時から……嫌いになれば、見なくなったと思えば、言えなくても、言えなくなってもおかしくはない。……そう思うようになった」
元々は大好きな二人に心配をかけたくなくてついた嘘が、本当に変わってしまった瞬間だった。それがずっと……本当にずっと、ぼくを縛り続けていたんだと思う。
その鎖が成長するにつれ、息苦しさに変わって、家に居場所を見つけられなくなった。
「……もう、独りが耐えられなくなって、仕来たりを理由に逃げました。ここじゃない遠くに……まあ、それも逃げられた訳じゃなかったけど」
「……そうだな。あれはこちらで用意した場所だから」
「きっと、ぼくがレイ学を選ばなくても、何らかの形で保護はされていたのでしょう?」
「否定はしない」
……だろうな。
「今から言ってもいいですか。今更、どうにもならない理不尽なこと」
「いいよ」
ずっと、思っていたこと。
今は思ってないけど、どこか引っ掛かっていたことを……これをきっと、不満とか文句って言うんだ。
「ぼくは……どこかで助けて欲しかった。父上に、父さんに。助けて欲しかったよ……苦しくなっちゃう前に、話せなくなる前に助けて欲しかった。なんで助けてくれなかったの。なんで何も言ってくれなかったの。なんで……なんで、ずっと独りにしたの……っ!」
本当に今更なことを言ってるなって思う。
アホらしいし、馬鹿馬鹿しい。子供っぽいし、なんかもう、女々しいとすら思う。
理由は分かっているし、納得しているのに、今更なんで言ってるんだろう。
「……ずっと寂しかった」
「あぁ」
「遊んで欲しかったし、話したかった。父さんと、母さんと、三人で。ずっと」
「……あぁ」
「…………ずっと、そう思ってた。家を出る前はずっと。……家を出てからは劣等感ばっかり感じてた。逃げてばかりの弱い自分が嫌いで、強い父さんと比べてばっかいた。苦しくて離れたはずなのに、結局、どこにいても心のどっかにいるんだ。嫌も嫌も好きの内ってよく言ったものだよね。……それが離れて暮らしてきて感じたこと」
ぼくは一度、深呼吸をする。
そして、目の前の父に頭を下げる。
「嫌なこと、聞かせてごめんなさい。今更、こんなことを言っても仕方ないし、言う意味もないんだけど……でも、過去に少しでもそんなことを考えてたって話をしておきたかったので。……何だったら、忘れてください。ぼくが自己満足で言いたくて言ったし、笑い話になるくらいには、ぼくも忘れようと思うから」
不意に頭を優しく叩かれる感覚がした。
顔を上げれば、目の前にいたはずの父がいなくなっていた。代わりにぼくの隣に座り、片手をぼくの頭上に乗せ、もう一度優しくぽんっと叩く。
「忘れないよ。それは私の犯した過ちだからね。今のお前が許しても、私は私自身を許せない。何の意味もないかもしれないが、謝罪させてくれ。……すまない、不甲斐ない父親で。至らない父親ですまない」
「……」
ぼくは父さんに寄り掛かる。何かして欲しくてそうした訳じゃなかったけど……いや、不意に頭を撫でられて、どうしていいか分からなかっただけだ。
今、父さんはどんな顔をしているのだろう。
相変わらず、無表情なのだろうか。
ほとんど顔には出さず、淡々と話しているのだろうか。
それとも、珍しく感情を表に出しているのだろうか。
「これからは、目をかける。お前にも伝わる形で。……できていなかったら、言ってくれ。それは先程も言った通りだ。他にも何かあればその都度、教えてくれると助かる」
「……はい」
どっちでもいいか。
今の言葉に偽りがないのなら、何だっていい。父さんは人より感情を表に出さないんだから、その辺を気にしたって仕方がないのだから。
ぎこちない手付きでぼくの頭を撫でてくれる。
高校生にもなって、こんな子供みたいな甘え方をするなんて、滅茶苦茶恥ずかしく思うけど……今日だけは許して欲しい。
しばらくの間、黙ってされるがままだったが、ぼくが少し動けば、その手は止まる。
そのままぼくは隣に座る父さんを見つめる。
「……父さん」
「……なんだ?」
「話は変わるんですが、一つ、我儘言ってもいいですか」
「唐突だな。……とは言え、お前の我儘なんて久しい。なんだ?」
「ぼく、学園を卒業しても探検隊、続けたいです。彼女と……ラルと仲間達と一緒に」
スプランドゥールでラルと決めたことだ。
ギルドに誘われて、彼女に問われた時からどこかで言わなければと思っていた。
「……ほう」
「約束では学園を卒業したら、ここに戻る予定でした。その後は父上の後を継ぐための勉学や公務に励むようにと……そういう予定だったと思います」
「そうだな。……探検隊を続けるということは、ここを出て行くか? そちらの方が専念できるだろう」
「いえ。行きません」
「……? なら、お前はどうしたいんだ?」
「ぼくは……私はこの国の王子です。ゆくゆくは貴方の後を継ぎ、この国を担う者であると、理解しているつもりです」
少なからず、王である父の姿に憧れを抱いているんだ。その役目から逃げようなんて思っていない。
「しかし、それと同時にラルと一から作り上げたチームも大切に思っているのです。だから、今はまだ、あそこにいたい。もっと世界を見て、ラルと一緒にたくさんのところを見て回って、知りたいんです。世界を……世界に散らばる謎をラルと解き明かしたい。今はその気持ちが強いんです」
「なるほど。探検隊としてやれることをやりきりたい……その後でこちらへ戻る、と」
「……両方なんて、虫がよすぎますよね。分かっているんです。無理を言ってるのは承知してます」
どっちもやるなんて無理に決まっている。我儘を言ってる自覚がある。だから、我儘を言っていいかって聞いたのだ。
ここまで言って否定されるなら、仕方がない。またどこかで打診するか、それでも駄目なら、どちらかを選ぶまでだ。
そもそも、こんな大切なことをここでぽんっと決められるはずもない。だって、修行期間は決まっているのに、それをもっと延ばせって言ってるのだから。各所に知らせなきゃいけないだろうし、今後のスケジュールだって変更しなきゃいけない。
い、今言うべきじゃなかったかもな~……くそぅ。なんか、今ならなんでも言えるって思っちゃったんだ! 思っちゃったんです!! ごめんなさいっ!! 勢いに任せすぎました!!!
「構わん。好きにしろ」
「そうですよね、今すぐに決められ──え? 今、なんて?」
「好きにしろと言った。探検隊、やりたいんだろう? 満足するまでやればいい」
「え、えあ……えっ?」
「なんだ、その反応は。……やはり、どちらかを選ぶのか? それならそれでも構わんが」
「そ、そうじゃなくって、ここでそんなこと、決めちゃっていいの?」
「決めるも何も、これはお前の問題。ティールの人生だろう。私は選択ができなかったから、お前にはその自由を与えてやりたい。……だから、好きにしたらいい。周りの対処はこちらに任せておけ。どうにでもしておくさ」
……本当にいいんだろうか。こんなあっさり。
思ってもいなかった程にトントン拍子で話が進んでしまい、呆然とするぼくをよそに、父さんはふっと小さく笑う。
「セイラはまた何かと騒ぐかもしれんが、あいつだってお前の好きなことをさせてやりたいと思っているよ。でなければ、まだ幼かったお前を一人、異国へと送り出すはずがないのだから。……私達のことやここでの役割なんて気にするな。早々に息子の手を借りなければ回らんような国ではないさ、今はね」
「父さん」
「やると決めたのなら、後悔のない選択をしろ。私から言えるのはそれだけだ」
昔、似たようなことを言われた。
留学が決まり、母さんがたくさんのパンフレットを見せてくれて、ぼくがレイ学へ行くと決めた日。
あの時は好き勝手言ってくれるな、と思ったものだけれど。
──今は違う。
「ありがとうございます、父上。今後も精一杯精進し、研鑽します。そして、いつか貴方のような立派な王になれるよう、多くを学んできます」
「ははっ……そうか。期待している」
「え!? えっと~……その期待はちょっと重いかも?」
「何を謙遜する必要がある。お前は強い。自身の考えで未来を決め、それに突き進もうとしているのだ。十分、期待に値する男になっていると思うが?」
「……そ、そっか。じゃあ、頑張る」
まだ少し照れ臭いし……言葉を選んでいる節は否めないけど。それでも、昔よりずっといい。
これから、少しずつどこにでもいるような普通の家族になって、時々、親子喧嘩できるような仲になればいい。……面と向かって、意見の言える、いい喧嘩ができるような、ね。



~あとがき~
長かったなぁ……ここまで来るのに。

次回、セラさんのお仕事について。

ブライトがティールの将来に寛容な理由について。どこかで書いた気もしますが、一応、ここでも。
過去のブライトは彼の父であるアルドアーズを(というか、家族や大切な人達を)助けるべく、今の道を突き進む未来を決めました。というか、それをするしかなかったとも言えます。それ以外を選ぶことができなかったんですな。なぜそうなってしまったのかという理由は色々ありますけど、それは今は関係ないので省略。
とまあ、彼にはそんな過去があるので、息子であるティールには好きなように生きてほしいと心から思っています。実際、好きなように生きて行けるように、色々と根回しをする用意は常にしているし、既に準備もしてあります。その一つがルーメンさんだったりするんでしょうね。後はプリンとかにもそうです。彼にも話は通ってると思います。
とまあ、あの場ですんなりティールの我儘が通ったのは上記の関係もあるって訳でした。

ではでは。