satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第358話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で、わちゃわちゃしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、回想前で終わりました。今回は過去編ってことで! いっくぞぉー!
久々の誰でもない視点でお送りします。めっさ苦手なので、変なところあっても暖かい目で見守っててください。


とある夏の昼下がり。
男性数名がギルド『明けの明星』内にある資料室で、各々仕事をしていた。
一人は数冊の本を広げ、なにやらメモを取る犬族の男性。
一人は山のような書類の束を軽々と運ぶ人族の男性。
一人は足場に登り、目当ての資料を探す人族の男性。
彼らは次の商談に向け、資料作成をしている最中だった。彼らにとって、何も珍しくはない、とある日常風景である。
「……ハル先輩、お探しの資料はこちらですか?」
「ん? お~♪ そうそう、それだ。ありがとうな、ライト」
差し出された資料をにこやかに受け取るハル。そんなハルとは対照的にライトは、にこりともしなかった。彼がハルの対面に座ろうとしたところで、もう一人の人族の男がこちらへ手招きしていた。
「おい! 探しもんが終わったんなら、こっちを手伝え、ライト!」
「はい。……? カズキ先輩、それ、前回の資料では?」
「えー? せーんぱい、それ、使わないやつっすよ~?」
「うえぇ? 早く言え、早く!」
バタバタと慌ただしく資料をまとめ、しまい始める。そんなカズキの様子に二人は思わず苦笑を漏らした。
これもまた、彼らのいつもの光景である。
──そんな様子を見つめる一人の少女がいた。
少女があまりにも自然にそこにいるから、三人も特に気にする様子もない。それをよしとしたのか、少女は二つの椅子を横に並べ、その上に上る。そして、椅子の上で仁王立ちすれば、キッと愛らしい目をつり上げた。
「ライトくーーーん! ここにきなさーーーい!」
「行きますから、椅子の上は降りてください。お嬢」
お嬢と呼ばれた少女──ギルドの親方の娘、兎族のセラフィーヌはライトの忠告を無視し、頑なに仁王立ちを止めない。
そんなセラフィーヌに、ライトはため息をつきながらも、言われた通りに彼女の目の前に立つ。
本来なら、四十センチ以上の身長差がある二人だが、今はセラフィーヌが椅子の上に乗っている。そのため、いつもは見上げていたライトを今、セラフィーヌは見下ろしていた。
これを優越感に浸ると言う。実際、セラフィーヌは自信満々に威張っていた。
「来ましたよ、お嬢。早く降りてください」
「ライトくん! いい加減、お姉様とどうするのか、決めなさいっ!」
セラフィーヌには、姉と慕う年上の少女がいた。名前はセイラ。セイラはライトの数年来の友人でもあり、二人は恋仲……ではなく、仲のいい友人関係であった。少なくとも、二人の中では。
セラフィーヌに言わせれば、何を悠長に構えているんだと、ライトを叱りつけたかった。いや、事実、今現在、叱りつけている。
だと言うのに、ライトは叱られている自覚がないのか、はたまた本気に捉えていないのか─恐らく、両方─全く動じない。それに加え、質問にも答えず、セラフィーヌを見つめていた。
「人の話を聞け。降りろ」
「むふー!」
「威張るな。危ないから、降りろって」
少女と青年のやり取りを見守っていた先輩二人は、どちらかに加勢せず、傍観者に徹していた。
「……いやぁ、ライトがギルドに来て、一年! あいつもお嬢の扱いには慣れたもんだな~♪」
「お嬢の突然の行動にも、あぁやって平然と注意するようになりましたもんね~? にしても、今回もまた突然だなぁ……?」
なんてやり取りをしている一方、セラフィーヌとライトの睨み合いは続いていた。
「お嬢、いい加減にしてください。怪我をしたらどうするんですか」
「自分で治すから、だいじょーぶだもん! そんなことより!!」
「そんなことよりぃ?」
「ライトくん、お姉様との間をはっきりさせなさーーい!」
「またそれか。……セイラとの間って、関係性ってことですか?」
ライトの問いかけにセラフィーヌは大きく頷いた。
そして、側で聞いていたハルとカズキも「確かに」と同意を示す。
「僕らも常々思ってましたけど、お嬢、よく言いますね。ライト相手に」
「言わなきゃ、分かんないもん!」
「まあ、その通りではありますがねぇ……相手がなぁ?」
カズキやハルが曖昧な反応を返す理由は、ライト本人にあった。
そんなことは露知らず。ライトはしばし悩んだ後、淡々と答える。
「……関係性って言われても。セイラとは友人関係ってだけですが。あぁ、たまにコンビ組んで仕事するし、仕事仲間でもあるか」
「むぐぐ~……! そうじゃない! そうだけど、そうじゃないのー! ライトくんは、お姉様とそれ以上にならないのっ!? ってお話しをしてるの!」
「……? それ以上……?」
そう。彼は超がつく程の鈍感であった。
周りが呆れてしまう程には『そういうこと』に疎い。
それを先輩であるカズキやハル、彼の目の前で、仁王立ちするセラフィーヌですら理解している。
いや、だからこそ、なのかもしれない。
セラフィーヌは今年に入ってから、幾度となく、ライトに同じような問いを投げ掛けていた。それこそ、両手では足りなくなるくらいには。
そして、セラフィーヌの問いにライトはいつも同じ返答、或いは、反応をしていた。
それを見る度、セラフィーヌの心境には、ふつふつと怒りが沸き上がってくる。
なんでこんな奴をお姉様は……と。
それを口にしないだけ、セラフィーヌは実年齢十一にしては、大人な対応だった。代わりに、目一杯頬を膨らませ、勢いよく椅子から飛び降りる。そして、やり場のない苛立ちを声にして、吐き出した。
「むう~! ライトくんのバーーーカ!!」
「はあ……? そうですね……?」
「バカバカバーーカ! ライトくんなんて知らない! 分からず屋! ライトくんの分からず屋!!」
「語彙力が大変なことになってますけど、大丈夫ですか。お嬢?」
「誰のせいだーー!!」
と叫びながら、セラフィーヌは資料室を飛び出した。残された三名は、その後を追うこともなく、ぽかんとセラフィーヌの背中を見つめていた。
やがて、セラフィーヌの姿が見えなくなった辺りで、ライトが二人の方に振り返った。その顔は何とも言えない表情を浮かべていた。
「……俺のせいですか? あれ」
「あ~……ん~……まあ、うん。そうね?」
「つっても、お前にその自覚はないんだろーけどな。あー、とりあえず、何もすんなよ? 適当に謝っても、お嬢を怒らせるだけだかんな」
「まあ、そうですよね。分かりました」
こうして、三人はまた仕事に戻る。
悲しいかな、これもまた、ここではよくある日常風景。だからこそ、三人は普通に作業に戻った。


旅人兼音楽家の少女─セイラは、突然、訪問してきたセラフィーヌに言われるがまま、スプランドゥールの街中にあるカフェへと来ていた。
そのカフェでは、色取り取りのケーキ、ゼリー、アイス等のスイーツが並べられ、好きなものを好きなだけ食べられる。所謂、スイーツバイキングなる店の一つだった。
そんな庶民に人気のカフェで、セラフィーヌは膨れっ面で、目の前の桃のタルトを無心で頬張っていた。
やけ食いである。理由は言わずもがな、先程のやり取りのせいだ。
「ライトくんったら、ほーんとわかってないんだから!」
「あはは♪ セラちゃん。そんなに怒りながら食べても、ケーキは美味しくないよ?」
セイラにとって、突然現れたセラフィーヌに誘われ、どこかに行くこと自体は、大して珍しいことではない。なんなら、しょっちゅうある。
お稽古が嫌だから。
勉強したくないから。
お姉様に会いたくて来ちゃった。
ライトくんがあんぽんたんなの。
……理由は様々であるが、事ある毎にセイラの元を訪れ、どこかへ出掛けるのである。
セイラは「今回はライトが原因か」等と思いながら、自身もショートケーキを一口食べた。
「だってだって! お姉様はこーんなにライトくんが好きなのに、肝心のライトくんが、あんなんだもん!! 気づいてないんだよ!?」
「そうだね~……ん? そう、だね?」
「ギルドのみんなだって、お姉様の気持ちには、気づいているのに、肝心の本人があれだよ!? もうどーゆーことなのって話だもん!! それも! ライトくんがうちに修行に来てから! ずーっとあんなんだもん!!! お姉様、あの頃からずーーっと、ライトくんが好きなのにー!!」
「こ、声が大きいよ、セラちゃん!? あ、あと、なんで、そこまで広まるの~……?」
セラフィーヌの言う通り、セイラはライトに淡い恋心を抱いていた。
そもそも、ライトとセイラはこの街で出会ったのではなく、別の街……なんなら、別の国で出会い、親交を深めてきた。セイラは、その頃からライトに好意を抱いていたのだ。
つまり、数年間、片思い状態である。
「正直、セラとしては、クソ真面目で、融通が利かなくて、鈍感で、にぶちんのライトくんに大好きなお姉様を任せられないって思うけど」
「わあ~……信用ない」
「……でも」
セラフィーヌは静かにフォークを置く。
セイラはライトと一緒にいる時、一番楽しそうに笑う。幸せそうに笑っている。
そしてそれは、ライトも同じであることをセラフィーヌは知っていた。
そんな光景をセラフィーヌはずっと見てきた。何度も。何度も。
「お姉様にとって、ライトくんと一緒にいることが一番の幸せだもん。セラ、分かってるもん。……分かるけど~!」
自分の中にある様々な感情がごちゃ混ぜになり、頭の中は整理がつかない。
頭を抱えるセラフィーヌに、セイラはにこりと笑う。
「セラちゃん。確かに私はライトが好きだけど……でも、ライトと恋人になりたいとは思ってないよ?」
「え? お、お姉様……?」
セイラが数年間の片思いを周りに気づかれても、ライト本人に伝えない理由があった。
「だって、彼は王子様だもん。平民の私なんかと恋人になんて、なれないよ。全然、釣り合わないし……お友達として仲良くできるだけで、十分幸せだよ?」
ライト……本名はブライト・クランド。彼は、ここから離れたところにある一国の王子であった。それも次期国王として認められていた。つまり、未来の王である。
そんな彼が身分を偽り、ギルドに滞在しているのも、あらゆる経験を積むため、修行によるものだ。それを知った上で、ギルドのメンバーもライトと接していたし、セイラも彼の正体を知りつつも、ここではライトとして接していた。
「だから、セラちゃんが心配しなくてもいいんだよ。ありがとね、たくさん怒ってくれて」
「むう……ほんとに?」
「うん。本当だよ」
セラフィーヌは、どこか疑うようにセイラを見つめる。目の前のセイラは、いつもと変わらない、優しい笑顔を見せてくれていた。
──その笑顔は、誰かを気遣うための笑顔であると、セラフィーヌは知っていた。
だからこそ、セラフィーヌは一つの問いを投げ掛けた。
「……お姉様。お姉様はライトくんが結婚しちゃっても、同じこと言える?」
「……え?」
「ライトくんがお姉様以外の人と、結婚しちゃってもいいの?」
この問いにセイラは答えなかった。否、すぐに答えられなかったが正しいのかもしれない。
「まあ……今の方がセラの側にいてくれるし、セラも嬉しいから、いいんだけど」
「……ふふ。ありがとう、セラちゃん。私もセラちゃんといれて、嬉しいよ♪」
セラフィーヌ自身で問い掛けたものではあったが、あの沈黙に耐えられなくなり、無理矢理に話題を変えた。すると、セイラもにこっと笑いながら、答えてくれる。
あの問いを聞くまで、笑顔だったセイラが見せた一瞬の悲痛な表情に、セラフィーヌは、言わなければよかったと後悔した。それと同時にやはり、セイラには幸せになって欲しいと願う。それにはライトの存在が必要なのだ。
ライトにセイラの思いを気付かせる。至極、単純なことなのだが、その単純なことが一番難しい。
「……そうだ! 今年の女神祭、準備もうすぐだよね?」
「へ? う、うん。そうだよ?」
「私、今年は見に来れそうなの。去年は駄目だったけど、今年はセラちゃんの神子姿、見に行くね?」
「ほんとに!?」
毎年、スプランドゥールで行われる大きな祭り、女神祭。街で信仰しているミルティアに感謝を捧げる祭事は、他の街や国でも有名な祭りであり、毎年、多くの人が訪れる。
その祭りでセラフィーヌは神子として、舞を踊る。それを任されるようになったのは去年からなのだが、あの年はセイラの都合が合わず、見せることができなかったのである。
「実はね、今年の女神祭で、友達夫婦が音楽を聴かせる予定だったんだけど、奥さんが妊娠したんだって。だから、その奥さんの代わりに、私が旦那さんと出ることになったの」
「そうなんだ……セラ、お姉様のライブ、見に行くね!」
「ありがとう。……まあ、このお仕事がなくても、意地でも来るつもりだったけどね? ほら、去年から代替わりの時期でしょ? 代替わりなんて、不定期で行われるものだし、巡り合わせもあるから。セラちゃんとルーメンさんの神子神楽は貴重だもん。……絶対に見なくっちゃ!」
「代替わり……神子の」
「? セラちゃん?」
神子の代替わりというワードに一つ、引っ張られてきたものがある。
それは、とあるジンクスだ。
代替わりの年にだけ行われる行事がある。それが神子探しであった。二人の神子を捕まえた者は仲良くなれる……そんな話を聞いた覚えがあったのだ。
それを思い出した瞬間、セラフィーヌの中で、これを利用しない手はなかった。
「これだーー!!」
「え、あ、何が……?」
「お姉様! ごめんなさい! セラ、お家に戻らなきゃ! 今すぐにやること、思い出したの!」
「そうなの? まあ、スイーツは十分に堪能したし、セラちゃんが満足したのなら、いいんだけど。じゃあ、ギルドまで送ってあげる」
「うん! ありがと、お姉様! あ、お姉様、セラ、頑張るね!」
「うん? うん、頑張ってね♪」
いまいち噛み合っていないものの、セイラとセラフィーヌはカフェを後にした。
セラフィーヌは大好きなお姉様の幸せのため、一つの作戦を実行する。そのために、当日までにやらなければならないことに取り組み始めるのだった。



~あとがき~
あぁぁぁぁ!!! 一人称視点の小説むずい! ごめんなさいね!? 視点があちこちいってます! ごめんなさい!!

次回、大好きな姉のため、暗躍する少女です。
お楽しみに。

若い頃の三人。
セラフィーヌさんは当然、今より幼い少女時代なので、今より天真爛漫で自由な女の子です。大人しくして、「うふふっ♪」て笑ってません。
セイラは口調すこーしだけ違う。まあ、彼女の場合、デフォルトが敬語なので、余計に違う感じもするですけどね。
そんな中、ブライトはあまり違いが分かりません。理由としては、ハルさん、カズキさんが先輩だから、です。敬語なんすよね。
セラちゃんに対しても、基本、敬語ですが、時々、ポロッと出てる本音の時は、口調が違います。あれが『ライト』としての口調だと思ってくれれば。
今後、セイラと話すシーンもあるので、そこでブライトとライトの違いを感じてくださればと思います。

ではでは。