satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第360話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界わいわいしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回はセラちゃんがお姉様の幸せのために奔走してました。
今回も似たようなものです。のほほーんとお楽しみください。


女神祭の準備の傍ら、セラフィーヌはセイラのためにと、あらゆる根回しをしていく。
まずは今回の件を実行すると決めた日、真っ先にルーメンの元へ赴いたにも関わらず、事情の一つも話してなかったことを思い出す。そのため、カズキとハルの協力を得たその日の夜に再び、ルーメンの元を訪れ、事のあらましを話した。
ルーメンはセラフィーヌから事情を聞けば、彼女が何をしたいのか、何を狙っているのか、全て理解したらしく、面白そうに笑い、協力を快く受け入れた。
次に、ライトやセイラと関り合いの深いギルドメンバーそれぞれに、祭り当日の作戦について簡単に話し、セラフィーヌが─厳密に言えば、セラフィーヌだけではないのだが─裏で動いていることは、二人に秘密にして欲しいと頼んだ。
元々、『そういった』ことが好きなメンバーは多い。話を聞いたメンバー達は楽しそうにしながら、セラフィーヌからの要請を聞き入れた。
また、当の本人達……特にライトに関しては、セラフィーヌがいつも以上に問い詰めていた。それに加え、祭りの参加にも耳にタコができるほど、よく言い聞かせていた。
「いーい? ライトくん。今年の夏祭りはぜーーったいに参加してね!」
「はいはい。……親方からもそのように聞いてますよ。現に、当日はお嬢と回るよう言われてますし」
「それはセラも知ってる。だから、セラと離れた後も参加してよ?」
「……? ってことは、最後まで?」
「もちろん! お祭りの後の花火、すっごいんだから! ちゃーんと見てよね!」
「はあ……? 分かりました」
聞いているのか、いないのか、はっきりしない返事しか寄越さないものの、これだけ聞かせれば、忘れてました等と言うこともないだろう。いや、あってはならないのだ。
セラフィーヌが「そんな言い訳をしてきたら、絶対許さない! もし、そんなこと言ったら、とことんお説教だもん!!」と心の中で決心するくらいには再三、彼に伝えている。
──そのような日々を送りながら、女神祭まであと数日という今日。セラフィーヌは舞の練習の合間を縫って、セイラの元を訪れていた。
彼女もまた、限られた時間のみではあるものの、祭りで演奏を披露する演者。ここの所、練習や打ち合わせ等々で忙しそうにしていた。今も当日に使用する楽器の調整をしている最中にセラフィーヌが宿へやって来た次第である。
そのような状況にも関わらず、セラフィーヌの訪問に嫌な顔一つ見せないのは、彼女の優しさに他ならない。
二人はいつも通り他愛ない話をしていると、不意にセラフィーヌが甘えるようにセイラに抱きつく。
「? セラちゃん?」
「あのね、お姉様。……セラね、お姉様にお願いがあるの」
突然の申し出にセイラは首を傾げる。彼女にとって、セラフィーヌのお願い事を聞くのは珍しくはない。しかし、あまりにも突然だったから、多少なりとも驚きはした。
「お願い?」
「うん。……お祭りの最後にやる神子探し……セラ、お姉様に捕まりたいの。……ライトくんと一緒に」
「え……と、神子探し?」
セイラは神子探しのジンクスを知っていた。ジンクスはそれなりに有名で、その手の話に興味のあったセイラは、誰かに聞くまでもなく、内容を把握していたのだ。
つまり、捕まえた二人はより絆を深められるジンクスがある……という大雑把なものではなく、同姓なら永遠の絆、異性なら永遠の幸せな暮らしを……というものであることを知っていた。
セラフィーヌの言う通り、ライトと参加し、今年の神子、ケアル親子を捕まえたとしたら、得られるであろうジンクスが後者のものになる。それはセイラとって、不都合でしかない。例え、単なるジンクスだとしても。
セイラからの返答がないのはセラフィーヌがわざと捕まりたいのでは、と勘繰られたと思った彼女は慌てて、訂正した。
「あ! セラ、手加減しないから、だいじょぶだよ!? 手加減はしないけど……捕まるなら、お姉様がいいなって」
「え、えと、そこは疑ってないよ。セラちゃん、お利口さんだもの。……そうじゃなくて、ライトと一緒に神子探しに参加してほしいってことなのかなーって思ってて」
「そうだったの? なら、よかった!……そうだよ、お姉様とライトくんとで参加してほしいの!」
「そ、そっか……でも、ライトの都合もあると思うんだよね。ほら、ライトはギルドの人だから、当日は街の警備とかお仕事あるんじゃ」
「ううん。ライトくん、午前中はセラの付き人のお仕事あるけど、それだけだよ。……あのね、セラとお祭り回る約束してるの。お姉様も一緒に回ろうね?」
「あ、うん……そっか、ライト、今年は仕事、あんまりないのか」
去年の経緯は本人からも聞いていたし、セラフィーヌからも聞かされていた。だからこそ、今年も何らかの仕事を振られているだろうと、勝手に解釈していたのだった。
「その後のライトくん、暇になるの。だから、セラがライトくんを神子探しにも参加させるから、安心して?」
セイラとしては、どこにも安心できる部分はなかった。しかし、セイラはセラフィーヌのお願いに弱かった。
「……お願い、お姉様。だめ、かな?」
特に上目遣いによるうるうる攻撃には弱かった。まさしく、今、行われているそれに弱いのである。
「わ、分かった。……頑張ってみるけど、期待しないでね?」
「わあ~っ! ありがと、お姉様! 大好きっ!」
再び、むぎゅっとセイラに抱きつくセラフィーヌ。とても嬉しそうにしている彼女に、セイラも何も言えなくなってしまう。
「……神子探し、か。今から何か対策考えなくっちゃだなぁ」
セラフィーヌの頭を撫でつつ、半ば勢いに負けて参加を決めた神子探しについて、思考を廻らせるセイラだった。

一方その頃。
ギルドメンバーは祭りの準備に駆り出されて、街中やギルド内をあちこち駆け回っていた。
ライトもまたその一人であり、彼の先輩であるカズキとハルと共に、屋台で使われるだろう機材を運んでいる最中だった。
その道中、隣を歩くライトに視線を向けつつ、「暇だし、一つ、聞いてもいいか?」と話しかけた。
「暇ではないですが……何でしょう?」
「お前さぁ、セイラさんとは友達のまんまなのか? ほれ、ここ最近、ずーっとお嬢に聞かれてたろ? お姉様とはどーなんだーってさ」
セラフィーヌからのお願い。……ライトにセイラの思いを気づかせること、そのお願いを達成するべく、今まで何度か似たような問いかけをしてきた。しかし、あまり成果は上げられていないのが現状だった。
女神祭まで日もないとはいえ、元より、最初から過度な期待もしていない。だからと言うわけではないが、そこまで焦っているわけではなかった。しかし、焦りはなくとも、やり場のないモヤモヤ感は抱え込んだままだった。
どこまでも鈍感な後輩に、これ以上、なす術も見当たらないまま、今日も適当に質問を投げ掛けている。
「あぁ、はい。……言われていましたが、友達のまま、と言うと?」
「なんつーの? ライトはセイラさんを嫁に迎えたりしないのかなーって。……お前の場合は王妃か」
最後の部分だけは声を潜め、ライト本人にしか聞こえないようにした。否、側にいるのはライトだけではない。ハルもいる。彼にも話は聞こえていたため、カズキの話を補足するように話しかけた。
「ほら、ライトってギルドの人以外とは、セイラさんくらいとしか仲良くしてないからさ。だから、そういう考えがライトにもあるのかな~って僕らも思ってたんだよ?」
「確かに、セイラ程仲のよい女性はこの街だと彼女しかいません。……しかし、彼女を嫁に迎えたり……ですか。今まで考えたことないですね。セイラとは単なる友人関係ですし」
ライトの場合、言葉通りの意味の告白なのか、そういった目で見ていないという否定の表れなのか、二人は判断できなかった。
まあ、恐らく前者だよな、ライトだし……という思いはなくはないが。
今回も駄目か、と思いつつ、カズキは話を切り上げるため、適当に話をまとめていく。
「ふーん? じゃあ、セイラさんが他の男と仲良くしてたり、結婚したって聞いても、ライトはセイラさんと友達として接していくんだ? 確かに、お前は気にしなさそうだもんなぁ」
「いいこと言ってるのに……そういうところですよ、カズキさん」
「あ? 何が」
仮にライトの中でセイラが特別な存在だとしたら、『他の男』という言葉は刺さるかもしれない。しかし、発言したカズキは意識して言ったわけでない。彼はそういう男である。
「いや、ほんと。そういうところっす。そういうところ」
「だから、何が?」
カズキの言葉にライトはぴたりと動きが止まった。しかし、二人はそれに気付かないまま、持っていた荷物を所定の位置に下ろしていく。
「ライト、お前の持ってる荷物はこっちに……? ライト、どうかした?」
ライトの異変に気付いたのは、ハルが荷物を持ってこいと指示しようと振り返った時だった。
彼は足元に荷物を下ろし、胸に手を当てながら、何か考えているように見えた。
「ライト? 大丈夫?」
「あ、はい。大丈夫です。……カズキ先輩との話が途中でしたね。俺は彼女が幸せになるのなら、友人としてその道を応援しますよ」
「はーん? そっか~……お。ライト、そっちに入ってるはずのコード、こっちにくれ」
「今、持っていきます」
下ろした荷物を再び抱え直したライトはカズキの側に近寄り、コードを手渡した。
そんな光景を眺めつつ、ハルの心には、もしかしたら、お嬢のお願い、達成してるかも?……という淡い期待が生まれる。
でなければ、先程のライトの反応に説明がつかないからだ。とはいえ、確信があるわけではない。あくまで、そうだったらいいなという希望でしかない。
それでも、今の変化が何かに繋がればよいと思いながら、ハルは作業に戻った。



~あとがき~
次から祭りだわっしょい。

次回、女神祭!

後半の話、セラさんいないんですけど、ここは三人称視点のいいところと言いますか。後日、こんなことあったと聞きまして~の体で、語り聞かせているみたいな状況だと思ってくだされば。

ではでは。