~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわいわいしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、無事にセイラと合流しました。
なんかその時、色々ありましたけど、まあ、それはそれとしてな。うん。
屋台巡りの仲間にセイラが加わったところで、この後、神子としての仕事のあるセラフィーヌを送り届けなければならないため、ギルド方面へ向かいつつ、気になる屋台に寄ることにした三人。
まずはお目当てのたこ焼き屋を見つければ、セラフィーヌの目はキラキラと輝き始める。
「ライトくん! あった! たこ焼き屋さん! ここがいい!」
「はいはい。一つでいいですか」
「うん。ほんとはたくさん食べたいけど、この後、お仕事あるし、ライトくんのおサイフにも優しくしないとだもんね。一つでゆるしたげる」
「……わー、お嬢ってば、やさしー」
「わお。過去にないくらい棒読みだなぁ、ライトってば」
というセイラの突っ込みは無視し、ライトは店でたこ焼きを購入する。
一つ六個入りのそれは、思ったよりも大振りで、セラフィーヌはそれが狙いでここを指定したのでは、と勘繰ってしまう。そもそも、時間は空いているとはいえ、ポテトも一人で平らげ、それ以外にも買い食いしていた。そんなセラフィーヌがこれを完食できるのだろうか。買って手渡した手前、心配になってきてしまう。
「お嬢、食べきれます?」
この質問にセラフィーヌはじっとたこ焼きを見つめる。そう問われてしまうと、自分も不安になってきてしまった。しかし、食べたい気持ちは本物だし、セラフィーヌ自身が選んだ店だ。残すわけにはいかない。
「う、うん。……ほら、たこ焼きは別腹だもん。だいじょぶ」
「いや、聞いたことねぇけど……?」
「あ。なら、私達と分けっこする? それなら、大丈夫じゃない?」
セイラの提案にセラフィーヌはこくこくと頷く。それなら問題なく食べられそうだと思ったからだった。
三人は近くの飲食スペースに移動し、各々腰を下ろす。ついでにと、近くの屋台でセイラは自身のご飯にと焼きそば、ライトは三人の飲み物を買い、二人にも手渡した。
「ライトくん、いいの? セラ、もうお金ないのに」
「これくらいは別に。……けどま、一応、親方には内緒で」
「わ~いっ♪ ライトくん、ありがと!」
「どういたしまして」
セラフィーヌは嬉しそうにカップに入ったジュースを受け取り、たこ焼きを一つ頬張る。外はカリッと、中はトロッとしたたこ焼きには、豪勢にも大きなタコも入っており、満足のいく一品であった。
セラフィーヌの隣で、焼きそばに舌鼓を打っていたセイラは、目の前に置かれたジュースを見て、ニヤッと笑う。
「ライトくーん? 私にも奢りってことですか~♪」
「あ? 別に構わんけど。……敢えて口に出す辺り、卑しいな、お前」
「んなこと言うなら、払いますけどー!! 持ってけ、どろぼー! いくらですか!?」
「だー! いらねぇわ!」
「えへ。ありがと」
「くそ。素直にそう言っとけ」
不毛なやり取りを交えながらも、三人はつかの間の休息を取る。
たこ焼きを夢中で頬張っていたセラフィーヌだったが、ハッとステージで歌うセイラの姿を思い出し、感想を伝えていないことにも気付く。ジュースで喉を潤し、セイラに笑顔で先程のステージの話をし始めた。
「お姉様! さっきの演奏と歌ね、すっごくよかったよ!」
「あら、ありがと~♪ 今回のために練習した甲斐があったなぁ」
「お姉様の音楽はいつもいいけど、今日のは一番よかったの! 一緒に弾いてた人とのギターがきれいで、お姉様の声もきれいでね?」
「えへ~♪ そんなに褒めても何もないよぉ! ライトは? どう思った?」
ふわりと欠伸を漏らしていたライトに問い掛けてみる。ライトもセイラの音楽はよく聴いている。とはいえ、そこまで音楽に精通していないし、そもそも、ライトは音楽が得意ではなかった。セラフィーヌみたいにどこがよかった等々の感想は思い浮かばない。
「んあ~……? いつものだなって思った」
「あはは! ならよかった!」
雑にも聞こえる感想だったが、セイラは気にしておらず、むしろライトらしいと笑い飛ばした。しかし、セラフィーヌは自慢のお姉様の凄さを分かっていないライトが気に入らない。むっとしつつ、ジュースのストローを咥える。
「む~……ライトくんに音楽の授業した方がいいんじゃないかな、お姉様?」
「しても分からないと思うな。ライト、音痴だもん」
「うるっせ。……でもま、お前の声は……なんだろう。その場を支配してるっていうか……存在感はあったと思うよ。普段話すお前とは、また違うっていうか?」
それを聞いた二人は思わず感心してしまった。先程は雑な感想を述べたのに、と。
「お~……それを感じられるんなら、ライトの感性も捨てたもんじゃないかもしれない。今度、一緒に音楽祭にでも行く? 秋くらいに隣街でやるんだ~♪」
「行ってもいいけど、全部同じに聴こえそう」
「わ~! あり得そうっ♪ じゃ、セラちゃん行く?」
「行きたーい! 今度、お父さまにお話ししてみる! あ、お姉様、ライトくん。たこ焼きあげるっ!」
残り三つになったところで、セラフィーヌは二人の間にたこ焼きの入った舟を置く。
「セラちゃん、ありがとう。遠慮なく、いただきます♪」
多少、時間は経っているとは言え、たこ焼きの熱気で、未だに鰹節が踊るそれを余っていた爪楊枝で持ち上げる。後は、口に運ぶだけなのだが、何を思ったのか、セイラは小さく笑い、辺りの賑わいに視線を向けていたライトを呼び掛けた。
「ん。な……にっ!?」
振り返ったライトの口にすかさず、たこ焼きを押し込む。熱々ではないが、まだ暖かいそれに驚きつつも、もぐもぐと口を動かす。
「ふふっ♪ そっぽ向いてるから、お仕置き~♪」
「…………ん」
ライトは口に広がるソースと鰹節の風味、タコの食感。そして、目の前のたこ焼きが一つ減っているのを確認すれば、半ば無理矢理、口に突っ込まれたのだと理解する。
それを理解してしまえば、ライトのやることは一つしかなかった。
「セイラ」
「ん~?」
「その爪楊枝、貸して」
「ん? うん、いいよ」
セイラから手渡された爪楊枝を残っているたこ焼きに刺す。
「次、口開けろ」
「それは嫌ですね」
ストレートな指示に何をされるかピンと来たセイラは、にこりと微笑みながら即答する。それでも、ライトはニヤリと笑い、ひょいっとたこ焼きを持ち上げた。
「……そうそう。お前が探してるっていう『チェリー・ハート』っていう鉱石だけど、ここから南西にあるダンジョンで見つかるらしいぜ?」
「!? ほんと!? え、行く! 行きたい!! いつ行っ──!!」
「隙あり」
セイラがずいっとライトに迫った瞬間、彼はたこ焼きをセイラの口に突っ込んだ。彼女は無言で、もぐもぐと口を動かした。
「あっはは! 単純だな、お前~!」
「むぐっ…………んぐ。……もー! ライトってば、卑怯だよ! はっ! もしかして、鉱石の話も嘘!?」
「鉱石に釣られるお前が悪い。後、そっちは本当。だから、行くとしたら、来週かな。祭りの後始末やら、溜まった仕事も、そのくらいになれば落ち着くだろ」
「なら、許す。来週ね? 約束ね?」
「了解。詳しいことはまた後でな」
「はーい! はぁ~♪ 楽しみだなぁ~!」
「……二人とも、セラのこと、忘れてない?」
十一歳にしては大人なセラフィーヌは空気を読んで、気配を殺していた。
二人の悪ふざけ(?)を眺めながら、セラフィーヌの頭にはなぜ、この二人は恋人がするような行為をいとも容易く行うのだろう。そして、なぜこれで二人して友人関係だと言い張るのだろう。……等、そのような思考がぐるぐる回っていた。
セラフィーヌは不思議で仕方がなかった。
これで、付き合っていないんだもん。なんで。と、思うのも仕方がないと言うやつである。
それと、セラフィーヌは一つ不満に思うことがあった。
「ごめんね、セラちゃん。大丈夫。忘れてはないよ? ただ、つい楽しくなっちゃって♪」
「ライトくん。羨ましい」
「……? 何がです?」
「お姉様にあーんってされてた! 羨ましい!」
「あーんって言うか、無理矢理、突っ込まれてませんでした?」
「でも、お姉様にあーんってされてた!」
「され……てるのか、あれは」
「あらあら♪……じゃ、セラちゃんにもしてあげる。セラちゃんが残してある、最後の一個もあるし」
セイラのこの言葉にセラフィーヌはパッと顔を輝かせた。先程までの不満など、もうどこにもなかった。
「ほんと! やったー! ありがと、お姉様!!」
「……お嬢も大概、単純だよな」
ライトの呟きは幸か不幸か、セラフィーヌの耳には届かなかった。なぜなら、憧れのお姉様のあーんをしてもらっていたからだ。
「ん~♪ おいしいっ!」
「ふふっ♪ よかったね、セラちゃん♪」
腹ごしらえに思ったよりも時間を使ってしまったが、これはこれで、よい思い出というやつになるのだろう。
そう無理矢理、解釈し、ライトは二人を連れ、ギルドへと向かう。
もうじき、神子様による『神子神楽』の時が近付いていた。
~あとがき~
本当は屋台を堪能する三人をもっと書く予定だったけど、ご飯食べるだけになりました。なんでだ。
次回、ライトとセイラの屋台巡り。
まだまだ私のターンだよ☆
(訳:私のオリジナル展開が続くんだぞ☆)
今回の話、私がやりたいのでやってもいいですか、と相方に告白(?)した話になります。やってよかった。楽しかった。(自己満足)
ではでは。