satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第364話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、三人でご飯もぐもぐしてました。
描写はありませんが、三人で楽しく屋台巡りもしてます。
今回はブライトとセイラ。


三人で屋台を堪能しつつ、ギルドを目指していると、ちょうどよい頃合いにギルド前に到着していた。あまりにも、いいタイミングだったため、セイラは先導していたライトに質問してみる。
「ライト、計算してた?」
「まあ、ある程度は」
「……しれっと凄いことしてるなぁ」
「そうか?」
と、本人は何でもないように返答した。彼にとっては造作もないらしい。
ライトはセラフィーヌと目線を合わせ、ニコッと笑う。
「お嬢、神子様としてのお役目、頑張ってください」
「うん。ちゃんと見ててね!」
「はい。言われた通り、ここから見てます」
ライトの言葉に満足したのか、セラフィーヌは大きく頷くと、パッとギルド方面へ駆け出した。しかし、何か思い出したのか、くるりと二人の方を振り返ると、大きく手を振りながら笑顔を向けた。
「あーっ! 後、神子探しに出てね、ライトくーん! じゃ、いってきまーす!」
と、叫び、ギルドへ走って行ってしまった。
セラフィーヌの言葉にキョトンとしているライト。そして、セイラは数日前にセラフィーヌからお願いされていたことを思い出した。
「ライトくんと一緒に神子探しに出て、セラ達を捕まえてね」と。
「あ、わ……そのこと、すっかり忘れてた」
「……神子探し? なんか先輩達も言ってたような……神子探しって何?」
「ライト、知らないの? 文字通り、神子様を探すゲームみたいなもので、神子探しは代替わりの年じゃないとやらないの。今年はちょうど、代替わりの年なんだよ」
「ふーん」
ライトは大して興味もなく、質問した本人だと言うのに、適当に返事をするだけで、それ以上は何も聞かなかった。
対するセイラは、興味の無さそうなライトに、どう参加を促そうか考えていた。セラフィーヌからのお願いもある。祭りが終わってから、できませんでした、なんて言うわけにもいかない。
「ライト」
「ん?」
「神子神楽まで、まだ時間あるし……もう少し、街を見て回ってもいい?」
「ん。いいよ」
ライトとしては神子神楽までの暇潰しとして。
セイラとしては神子探しまでにライトをどう誘うか考えるための時間稼ぎとして。
目的は違えど、二人は共に賑わう縁日の中へ混じっていった。

「──わぁ、美味しい!」
「お、嬉しいこと言ってくれるね、お嬢ちゃん。お嬢ちゃん可愛いし、もう一つ、おまけしちゃう」
「わー! ありがとう、おじさまっ♪」
セイラは手渡されたフルーツ飴を隣に立つライトに渡す。彼は何か考え事をしていたらしく、差し出された飴を数秒、無言で見つめ、小さく首を傾げた。
「……え、何?」
「だって私、今、食べてるもん。持ってて?」
「あぁ、そういう。……はいはい」
セイラは祭りをこれでもかと満喫していた。それはもう、先程までの「どうにかして、ライトを神子探しに参加させなければ」という悩みを忘れるくらいには。
「いくつになってもお祭りって楽しいなぁ……♪ さっきはセラちゃんがいたし、思い切り、はしゃげなかったからね~♪」
セイラの言葉に、ライトは先程までの光景──二人でわいわいしながら遊んでいた光景を思い浮かべる。
輪投げをしたり、型抜きしたり。二人して思う存分遊んでいた……はずである。
「……十分、はしゃいでた気がするけどな」
「まだまだ。あれは序の口ですよ?」
「だとしたら、お嬢の方が大人ってことか」
「だーかーらー、いくつになっても、お祭りは楽しいって話で……っ! ライト、あれやろ!」
セイラが指差したのは、的当て屋らしき出店だった。
複数の矢を投げ、的に当たった場所での点数を競うものらしく、得点が高ければ高い程いい……単純明快なゲームである。
「ライト、こういうの得意だもんね? 見たい見たい! ライトのかっこいいとこ!」
「べっつに得意じゃないけど。俺の専門は剣だし。むしろ、的に当てるんなら、お前の専門分野だろ」
「弓じゃないから無理。ね、お願い」
「……はあ。分かった。つか、何が楽しいんだ、そんなところ見て」
文句を言いつつも、ライトは屋台の店員に代金を支払い、矢を五本受け取る。
矢は、手に収まる程の大きさで、投擲の要領で、的に当てることができそうだった。怪我しないよう、先端部分はプラスチックでできているらしく、万が一当たっても、人に刺さることはなさそうだった。
「真ん中が一番、点数高いんだな。その分、狙える範囲も狭い、と」
ペンでも玩ぶように、一本の矢を手元でくるくると回しながら、辺りを観察する。的の距離、矢の形状、周りの環境。それらの情報を五感で捉え、冷静に分析していく。
「ライト、頑張れ!」
そして、狙いを定めるようにそっと構え、静かに矢を投げる。
すっと的に吸い込まれるように矢が刺さる。それもど真ん中に。
「わあっ! さっすが、ライトー!」
セイラの歓声に耳も傾けず、ライトは続けざまに矢を投げていった。
とん、とん、とん、と、残りの矢も的の中心を射貫く。
店員はもちろん、周りで見守っていた客からも、どよめきが起こる。
「に、兄ちゃんすげぇな……!」
「いえ、そんなことは。実際、最後の矢は狙いよりもずれましたから。……うーん、難しいな」
「さっすがだね、サブ職が暗器使いなだけありますねっ♪」
ライトが幼い頃、母親から面白半分で学んだ戦闘技術だった。今はそれらを扱うことは少なくなったが、相手を一発で仕留める技術に置いては、剣士となった今でも大いに役立つスキルであった。
「いや、それと的当ては違うだろ……?」
「獲物を投げて、的に当てるってところは同じだよ~?」
「そう、か?」
「いやぁ、すげぇもん見せてもらった! 兄ちゃん、これ、賞品だよ。普段はうちで取り扱ってる商品なんだけどよ。よかったら、もらってくれ」
と、店員からもらったのは、綺麗なガラス細工の施されたキーホルダーだった。
街のシンボルでもあるエクラ城と夜空をモチーフにしているらしく、光に当てれば、きらりと光る美しい工芸品だった。
「ありがとうございます」
「おう! また来てくれよ! 今度はうちの店にもな♪」
気さくに二人を送り出してくれ、二人も会釈をしながら店を後にした。
適当に歩く道すがら、ライトは先程の賞品をセイラに差し出した。
「セイラ、あげる」
「うん? え、いいの?」
「俺が持ってても、宝の持ち腐れだろ」
「わあ……ありがと、ライト! 大切にするねっ」
ライトから受け取ったキーホルダーを大切そうにぎゅっと握り、ポーチの中にしまう。
そんなセイラの様子をライトは何を言うでもなく、じっと見つめていた。
「……」
「? どうしたの、ライト?」
「……いや、何でもない」
「そう?……勘違いならいいんだけど、なんかずっと考え事してる? 何か悩みでもあるの?」
祭りを回る最中、時折、ライトは心ここにあらず、といった様子で、ぼうっとしていた。セラフィーヌと三人でいた時はそうでもなかった─セイラが見逃してなければ─のに、だ。
「私、何かしちゃった?」
「あぁ、いや。そうじゃなくて……大丈夫。ちょっと気になることがあるだけで、悩みって程じゃねぇから」
「そう? なら、いいけど」
「そうそう。大したことじゃないから」
ライトにそう言われてしまえば、セイラから何か言える空気ではなくなってしまう。
セイラの勘だと、何かあると言っているのだが、本人が語らうとしないのなら、確かめようがない。
こういう時のライト、絶対、何かあるのになぁ~?──なんて、今度はセイラが悩んでいると、不覚にも、人の流れに足を取られ、そのまま人混みに流されるまま、ライトから離れてしまう。
「ひょあぁぁ!? わ、わわっ! 流される……っ!」
「!? セイラ!」
ライトから伸ばされた手を掴むこともできず、あれよあれよと、流されてしまった。
ライトの焦った声が遠くで聞こえたかと思ったのも束の間。セイラが人混みの波から抜け出した時には、ライトと共にいた場所から随分と離れてしまっていた。
「うーん、うっかりうっかり……でも、セラちゃんといた時は、こんなことなかったのに。神子神楽の時間が迫ってるから……? いや、ライトが人混みを避けてたのかな。セラちゃんのために」
思い返せば、セラフィーヌと回っていた時は、ライトが逐一、道を指示していた場面があった。恐らく、周りの大人と比べ、体の小さいセラフィーヌのため、比較的、人の多い場所を避け、ギルドへと向かうためだったのだ。
「どうしよ。最悪、ギルドに行けば、合流はできるかな……? 私達の最終目的地はそこだし」
とは言ったものの、口約束で、はぐれたらそこへ向かえ、と決めていた訳ではない。仮にライトがそれをせず、セイラを捜して街中を捜索していたら、この場から動かない方が利口である。
「下手に動いて、また流されるくらいなら、ここにいよっかな……? で、神子神楽の時間が近くなったら、ギルドに行く! これだ!」
セイラが空を見上げれば、夏の空はまだ明るい。それでも、少しずつ、日が沈む始めているのは確かである。
街を一人で歩くのは怖くない。なんなら、普段は気ままな旅人生活だ。一人歩く夜道にも慣れているし、野宿だって慣れたものだ。
それなのに、セイラの心には不安が広がる。理由は分からない。
二人で祭りを楽しんでいたから、その反動か。
思ってもいないハプニングに、心に余裕がなくなっているせいなのか。
「……ライト」
無意識に名を呼ぶ。
名前を口にすれば、少しは安心できるかもしれないと思ったからだ。
それに返答は求めてなかった。
──求めてはいなかったのに。
「──セイラ!」
聞き慣れた声に名前を呼ばれ、思わずそちらを向く。
声の主は息を切らしながらも、セイラの目の前に現れ、力強く抱き締められる。
「よっ…………かったぁぁぁ~……っ!」
「あ、えと……ライ、ト?」
ライトはセイラを抱き締めていたが、静かに離れると、両手をセイラの両肩に置き、安堵のため息を漏らした。
「はあぁぁ……! 焦った。いや、本当に。柄にもなく。めっちゃ焦った。……大丈夫か、セイラ」
「う、うん。だいじょぶ……だけど、そんなに焦って捜してたの?」
「まあ、うん。……人、多いからな」
それだけが理由なのだろうか、と不思議に思う。
いつものライトなら、冷静に捜索していただろう。ギルドの人に協力を仰ぐなり、何かしらの策を講じるはずなのだ。それをせず、一人で走って捜していたらしい。
なぜ一人で宛もなく捜したのか。その理由を問おうとしたものの、あまりにもライトがホッとした様子を見せるので、その疑問を口にできなかった。
「ごめんね、ライト。私がぼーっとしてて。えへへ……駄目だね。ライトには何、考え事してるのーなんて、言ったのに」
「いや、いいよ。……つか、ある意味、これも無駄じゃなかったよ。俺としては」
「? どういうこと?」
「何て言うか……気になってたことが吹っ切れたってことかな。……あぁ、もう時間か」
そう言いながら、ライトは手を差し出す。なんてことはない。はぐれないように手を繋ごう、という誘い。今の状況を考えれば、妥当な行動かもしれない。
しかし、いつもなら、ライトからこんなことはしない。するなら、セイラから提案するのが、いつも光景であるはずだ。
セイラは、ライトの微妙な変化に戸惑いを隠せないものの、差し出された手を受け入れた。
ライトははぐれないように、離さないように、それを確かめるようにぎゅっと優しく握ぎった。
「今度は大丈夫。離さねぇから」
「う、うん……私も気を付けるね」
「あぁ。……じゃ、行くか」
「うん」
今度ははぐれないようにと、セイラはライトにぴたりとくっついて歩く。ライトは歩きにくいだろうに、何も言わず、ギルドを目指した。
──どうしたんだろ、ライト。
セイラのその疑問の答えは、そう遠くない未来で明かされるのだった。



~あとがき~
きゃーー!!??
やりたい放題してたら、長くなっちゃった!
いつものことですね! すんません!

次回、神子探し。
結局、ライトを誘えていないセイラは、この後、どうするんでしょうか。お楽しみに。

途中、一人でセイラを捜すブライト視点がないのは、その場面をセラさんもセイラも知らないからです。あくまで、二人の語る過去話なので。その体は守ってるでやんす。
ま、ブライト視点あった方が彼の心境の変化とか見れて、分かりやすいんですが……知らんもんは知らんのでね!(笑)
まあ、明確に何かあったのは、見ての通りですよ。はい。

ではでは。