satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第366話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でだらだらしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、神子探しがスタートし、セイラがセラちゃんを捕まえたところで終わりました!
今回は一方その頃ってやつです。
ブライトがルーメンさんを捕まえられるのか!?……ってところから。
ラストまでばーっと走りますよ~!


ライトは街中をあるものを追いかけるために駆けていた。
その、あるものというのは、目の前を軽快に駆けていく一匹のオレンジのウサギだった。
水泉が見つけたウサギとの追いかけっこは、かなりの時間続いていた。初めは他の参加者が、あの手この手で追いかけ、捕まえようと試みていたのだが、どれも失敗に終わった。やがて、参加者らは体力の限界を迎えたのだろう。一人、また一人と脱落していた。
その結果、残ったのはライトだけになっていた。
「くっそ、滅茶苦茶すばしっこい。捕まる気あんのか、あの人っ!?」
『がーんばれ、がーんばれ!』
『るっちゃ、まだまだけんきなのら!』
「俺はしんどいけどな……!」
ギルドでの鍛練の成果もあり、体力には自信があるものの、ライトも人間である。無限に走り続けられはしない。
つまり、どこかでアクションを起こさない限り、この追いかけっこに終わりはない。
一応、ルーメンに対する対抗策がないわけではなかった。しかし、それなりに体力を使うため、できるならやりたくはない。
「……やりたくない。やりたくなかったけど、やらないと終わらねぇ……! あー! くそ! 来い、雪花っ!」
『ほあ!』
手元に雪花を呼び寄せ、剣として構える。ルール上、神子に対しての攻撃行為は禁止されているため、目の前のウサギを攻撃することはできない。
「この世界を凍りつかせろ。“絶対氷華”」
『あいあいさー!』
雪花を地面に突き刺し、力を注ぎ込む。すると、突き刺した地面が白く凍り始める。それに伴い、辺りの気温も下がり始めた。
普通のウサギは寒さに弱い。これは兎族のルーメンも同様らしく、寒さは得意ではない。それをライトは知っていた。
「頼むぞ、雪花」
『ん!』
強力な冷気を放ち続ける雪花を手放し、ウサギの元へ走る。
素早い動きで翻弄し続けていたウサギだったが、この寒さのせいで動きが鈍くなっている。それでも簡単には捕まらんと言いたげに、逃げる足を止めなかった。
「まだ逃げるか。……雪花!」
『ほよよ~!』
ライトの合図に雪花は冷気の届く範囲を広げる。それはどんなものより速く、強く、辺りを掌握した。
雪花は地面に氷の花を咲かせ、物を凍りつかせる。ここら一帯を氷の世界に変える程の力を加えてようやく、ウサギの足は止まった。
動かなくなったウサギを捕まえるのは子供にだって容易だ。ライトは息を切らしながらも、ウサギを持ち上げ、真っ暗な夜空と、そこで儚げに光る星々を仰ぐ。
「はぁっ……はあ……やっと、つっかまえた……!」
『やたー! るっちゃ、つかまえた!』
まるで自分が成し遂げたと言わんばかりに水泉は辺りを飛び回る。それを注意もせず、ライトは後方に置いてきた愛剣に片手を伸ばした。
「戻ってこい、雪花」
その一言で雪花はライトの手中に収まり、雪花の作り出した世界も一瞬にして消えてしまう。それを確認したライトは腕の中で大人しくするウサギを見下ろした。
「親方ですよね」
「……」
ウサギは何も答えない。分かりきったことを聞くなと言うような目をしていた。
──そして、これは唐突だった。
何の前触れもなく、ライトの体がぐらりと揺れ、支えを失った人形のように地面に倒れてしまったのだ。
これにはウサギも驚いたのか、ぎょっとしつつ、彼の腕から抜け出すと、強い光に包まれた。一瞬で晴れたその光から出てきたのは、神子衣装姿のルーメンだった。
「おい、ライト!? しっかりしろ!」
倒れてしまったライトの脈や呼吸を確認してみれば、特に異常はなかった。一応、急病ではないらしい。
そもそも、ライトは至って健康で、持病もない。仮に能力使用後なら、高い確率でこのような状況になり得るのだが、ルーメンを追いかけている間、ライトが能力を使う素振りもなかった。
つまり、ルーメンにはライトが倒れる要因が思い当たらない。
一方、ライトの剣の一つ、水泉はのほほんとした様子で『ありゃ~? でんちきれた~』と気になる発言をした。
「電池切れ? どういうことだ?」
『いーちゃ、ずっとおきてたもん。だから、でんちきれたの。……は! これ、いっちゃだめなんだっけ? あばあば! るっちゃ、ないしょだよ!?』
それだけルーメンに告げると、水泉も剣に戻ってしまい、何も喋らなくなってしまった。
しかし、今の水泉の言葉にルーメンは思い当たることがあった。
ルーメンは昨日の夜、作業をする彼の姿をギルドで見かけていた。その際、ライトには明日もあるのだから、早く寝なさいと声をかけていた。
「……徹夜明けであんな大技すりゃ、そうなるわ。全く馬鹿なヤツだ」
気持ち良さそうな寝息を立てるライトに対し、大きなため息をつきながら、起きない程度に軽く小突いた。

ルーメンが捕まった一報を聞き、セラフィーヌとセイラはルーメンの元へ向かった。
二人がルーメンの元に駆け寄れば、目の前の状況を目の当たりにした。
倒れているライトを横目に、彼の先輩らがルーメンと話をしているのだ。
「カズキさん、ハルさん……アンナさんまで。なんで……って、ライト!?」
「ライトくんっ! どうしたの!?」
「おお、来たか。いやぁ、何。ライトは心配いらない。全員の話を聞いてみれば、徹夜どころか、三徹くらいしてたみたいで、今、電池切れしてるところ」
「さ、三徹!? え、三日、寝てないってことですか!」
「そうなるねぇ?……私が三日前かね? 深夜まで作業するライトを見てるし、カズキも次の日に見てるんだよ」
「で、昨日は親方が見てるって訳でして。……いやぁ、全く気付かんかったわ!」
豪快に笑うカズキを横目に、セラフィーヌは、じとーっとライトを見下ろしていた。セイラは困ったように笑いつつも、今日のライトの様子を思い起こしていた。
いつもより眠そうにしていたこと。
神子探しの際、本調子ではないと溢していたこと。理由を聞いた時、慣れないことをしたせいだと言っていたことを思い出す。
素直に言わなかったのは、当人は問題ないと判断したからだ。少なくとも、祭りを見て回る程度の体力はあると思ったのだろう。
「こんな時になんですが……ライトはルーメンさんを捕まえたのですか?」
「あぁ、きちんと捕まえてくれたよ。こいつ、私の苦手分野で攻めてきてな。……まあ、捕まえた後、ばったり倒れるもんだから、ぜーんぜん締まらんけども」
ルーメンの言う通りだとこの場の全員が頷く。全員が呆れ返っていた。
ルーメンはパチンっと手を鳴らす。
「まあ、ただ疲れて寝てるだけなら、問題ないだろ。……セイラさん、ライトについてやってくれるかい?」
「はい! もちろんです!」
「カズキ、ハル。ライトをギルドの医務室に。セラ、私達は壇上に上がり、観客達に説明をするぞ。この様子じゃ、加護の付与は後日になるだろうからな」
「了解です」
「はい、お父さま!」
「アンナは持ち場に戻って、この後の片付けを頼む」
「了解だよ、親方」
この場の全員に指示を出し終えたルーメンはふうっと息を吐き、各々が行動するように促した。

女神祭の全工程が終了し、片付け等もギルドメンバーの協力もあり、粗方済んだ頃。
普段着に着替えたルーメンとセラフィーヌは、ライトの様子を見るため、医務室へと向かっていた。
セラフィーヌはぷくっと頬を膨らませ、不満げな声を漏らす。
「せーっかく色々したのに、ライトくんが寝ちゃったら台無しだよー! ぶー!」
今年の祭りはセイラのためにと奮闘していたセラフィーヌにとって、あの終わり方は不服であった。当然である。思い描いた結末とは違うのだから。
「今日じゃなくても、きっかけになればって話じゃなかったかい?」
「む~……でもでも、お姉様が幸せになるなら、早い方がいいもん」
「まあ、早いに越したことはないけどねぇ。そこは本人達のペースってもんに」
「あ、ついた! お姉様ー! 来たよー!」
「やれやれ……聞いてない」
目的地に着くやいなや、セラフィーヌはコンコンっと部屋をノックし、盛大に扉を開けた。最早、ノックの意味がないと思えるくらい大きな音が辺りに響く。
「お姉様ー! ライトくん起きたー!?」
「今の音で、起きてなくても起きそうだがなぁ……様子はどうかな、セイラさ……ん?」
ルーメンがセイラに目を向ければ、そこには顔を両手で覆い、体を震わせるセイラと、こちらを驚いた様子で見つめるライトの姿がある。
「お、お疲れ様です。親方、お嬢」
「お前もな。……もしかして、取り込み中だったか? それなら申し訳ないことをしたな」
「いえ。適当に話していただけですから、お気遣いなく」
ライトの言葉に、ルーメンは何やら思案し始める。この場の空気と、セイラの様子に思うところがあったのかもしれない。
セラフィーヌもセイラの様子が気掛かりだった。心配そうに話しかけるも、あまり反応のないセイラに、原因は一つしかないと決めかかり、キッとライトを睨む。
「ライトくん、お姉様に何したの!?」
「何って。……セイラ、これって言っていいやつ?」
ライトの言葉にセイラはガバッと顔を上げる。彼女は顔を真っ赤にさせ、何度も首を横に振る。
「ん~~~っ!? 駄目っ! 恥ずかしい! 今は誰にも言わないでっ!!」
「ふーん。そういうもん? じゃあ、何もしてないです」
「嘘だー!!!」
「俺からは何も言えません。セイラから聞いてください」
それだけ言うと、ライトは立ち上がり、呑気に欠伸を漏らしながら背伸びをし始める。そんな彼をルーメンは横目に見つつ、ぼそっと名前を呼ぶ。
「なあ、ライト」
「くあぁ~……あ、はい。なんですか?」
「おめでとう、で、あってるか?」
セラフィーヌのお膳立ての数々、それを経て今のセイラの様子を踏まえて、そう告げる。
ライトはちらりとセイラを見て、彼女やセラフィーヌがこちらを気にしていないのを確認すれば、小さく頷いた。
「親方の思うそれが、俺と相違なければですが」
「ほ~う?……そうか。ようやくか」
ルーメンは小さく笑い、ライトの背中をとんっと叩く。
「頑張れよ、ライト」
「はい」
程なくして、どこから広まったのか。
ライトとセイラの関係が進展し、晴れて『友人』から『恋人』関係になったと広まるのは、数日後の話である。



~あとがき~
うぇ~い! 終わった!!!
今年最後の更新でしたが、意外ときりのいいとこで終わって満足!
三人称視点のような、一人称視点のような曖昧な回想でしたが、終わります!

次回、馴れ初め話のまとめ回。
回想中に回収しきれなかった部分とかをばーっとできたらと。

ブライトもティール同様、同じ能力を持っています。しかし、コントロール精度がティールよりもはるかに劣り、且つ、ティール以上の火力持ちのため、滅多なことでは使いません。今までも片手で足りる程度しか使用してません。
ちなみに、アルドアーズも二人と同じ能力を持ってますが、彼もまたそこまで使うことはないです。純粋に能力に頼るより、自身の戦闘能力の方が信用に足るからです。別にブライトみたく、危ないから使わねぇってことはない。

ではでは!