satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

気ままな神さま達の日常記録 vol.17

こちらは『学びや! レイディアント学園』の番外編でございます。スピンオフというか、なんというか。全く本編に関係のない皆々様に焦点を当てたお話となっています。
今回は例の方の部屋の話。
遂にあの魔窟ともおさらば……?



☆さくっと登場人物紹介☆
アルフ:転生の神様。魔法が大の得意。ミィに関することには、とことんやる(意味深)がモットー。

ミィ:アルフに仕える蒼い目をした白猫。今回に関しては、特に何するでもなく、のほほんしてる。

ファウス:力の神様。大体、ろくな目に遭わない。きっと、そういう世界に生まれてしまった哀れなお方なのだ。

フォース:制御者の一人。得意な仕事は特になし。ファウスに付き従ってきた期間が長いため、仕事に関しては、培ってきた経験、スキル共にハイスペック。

エレル:制御者の一人。得意な仕事は書類整理。ただし、図書館では迷子になるので、周りの手間が増える。

ユウ:制御者の一人。得意な仕事は整理整頓と書類作成。黙々と何かする作業が性に合ってる。

ラウラ:制御者の一人。得意な仕事は特になし。なんでもそつなくこなし、可もなく不可もなく。ただし、手伝わない率もそこそこ高い。





★天界の魔窟、大改造計画★
ここは天界。様々な神が住まう世界。
そんなところで、おれは欠伸を漏らしつつ、適当に廊下を歩いていた。
別に仕事があって来たわけでも、調べ物がしたくて来たわけでも、呼ばれてきたわけでもない。
ただ、なんとなく、が一番しっくりくる理由だった。
下でやることもないし、暇だから帰ってきた次第である。ぶっちゃけ、散歩なら下界でもできるけど、ここなら人酔いせずに適当にブラつけるから、気楽でいい。仮に散歩に飽きたら、ここにある自室に籠るか、図書館に足を運べば、いくらでも暇は潰せるし。
無計画に、何も考えずに、適当に歩いていると、角から何かが転がってきた。その何かはおれの足に当たって、ピタリとその動きを止める。
「……? ペン?」
拾い上げてみれば、シンプルなデザインの筆ペンのようだ。
こんな廊下にペンが一つ転がってくるとは。恐らく、誰かの落とし物なのだろうが……誰のかなんて、見ただけじゃ分からない。ラルなら、能力を使って簡単に探し出せるのだろうが、おれにそんな便利能力はない。
転がってきた先に行けば、持ち主がいるんだろうか?
そう思って、そちらに目線を向けたところで、曲がり角の影からひょっこりと顔を覗かせた人物──いや、動物がいた。
「みっ!」
白くてふわふわした毛並み。
くりっとした蒼い瞳。
鈴のついた赤い首輪。
そんな子猫……アルフ様の従者兼パートナーのミィがいた。
ミィはおれの姿を見れば、パッと顔を輝かせ、笑顔を見せた。
「みゃあ!」
「ミィか。一人か?」
「みゃ~……にゃにゃっ!」
この反応は一人ではなかったみたいだが、今は近くに誰かがいるわけではないらしい。
ミィはおれの持つ筆ペンを見ると、前足でちょいちょいっと欲しがるような仕草を見せる。
「? これ? お前の……では、ないよな。だとすると、アルフ様か兄貴か……兄貴は筆ペンって趣味じゃねぇな。なら、アルフ様のか?」
「にゃにゃにゃっ!」
どうやら、正解らしい。
転がってしまったペンを追いかけ、ミィはここまで来たのだろう。
となれば、この近くにペンの持ち主……アルフ様がいらっしゃるはず。
「ミィ、アルフ様はどこだ?」
「にゃ? にぃ~……にゃうっ!」
こてんっと首を傾げたものの、すぐに居場所を思い出したようで、ニコッと笑い、おれを案内するように前を歩き始める。そんなミィの小さな背中を追いかけるように、おれもゆったりと後ろをついていく。
そして、大した時間もかからずに、目的の人物を見つける。
アルフ様は、とある扉の前で何やら作業中。楽しそうに鼻歌交じりに何かをしていた。
「アルフ様」
「? あれ、フォースくん? ファウスさんなら今、ここにはいないよ?」
なぜ、マスターの名前が……と思うけど、よく見たら、ここはマスターの部屋(私室)の前だ。通称、天界の魔窟。悲しい事実だが、おれ達のマスターの部屋は、天界では有名な汚部屋なのだ。いや、マジで涙が出てこないくらい、とても惨めで悲しい話なのだけれども。
そんな部屋の主は今、ここにはいないらしい。くっそどうでもいいけど。
「いえ。マスターにこれと言った用はないです」
「あら、そう? じゃあ、どうしたの? たまたま通りかかったとか?」
たまたまと言えば、たまたま、なのかな。
「そこの曲がり角で、このペンとミィに出会いまして。……ミィの反応からして、アルフ様の物ではないかと」
と、ずっと持っていた筆ペンをアルフ様に差し出す。筆ペンを見たアルフ様は、「あっ」と声を上げる。
「それ、僕のだ。ありゃ、作業途中に転がっちゃったのか……ありがとう、フォースくん♪」
「礼なら、ミィに。ミィが追いかけてなかったら、おれはこのペンがアルフ様のだと分からなかったので」
「にゃっ!」
「そうだったんだ。……ありがとうね、ミィ♪」
「にゃにゃ~ん♪」
無事、ペンを持ち主へと返せた……が。
それはそれとして、アルフ様はなぜ、マスターの部屋の前で作業をしているんだろう。しかも、とても怪しげな。
「アルフ様、差し支えなければ教えてください。ここで何をしてらっしゃるので?」
「うん? ファウスさんの部屋の魔改造
と、アルフ様は曇りのない笑顔で答える。そして、ついでと言わんばかりに、これまた、満面の笑みで補足説明までしてくれる。
「ほら、前に話したでしょ? 会議でファウスさんの部屋の問題が議題に上がったって話」
「ありましたね。そんな不名誉な話が」
少し前、それが理由でアルフ様とミィ、そして、おれ達制御者+兄貴とで、マスターの部屋の掃除をしたことは記憶に新しい。
「あの時、掃除はしたけど、根本的な解決はしてなかったでしょ? だから、今、解決するために作業してたって訳」
「なるほど。……ちなみに、部屋の主に許可等は」
「もちろん。取ってないよ!」
……だよなぁ。
「あ、安心して? 『魔改造』なんて言ったけど、怪しい魔術を施してる訳じゃないからね。ただ、扉にちょっとした仕掛けをね?」
扉に、ですか。
そう言われて、扉に目を向けるものの、パッと見、変化はなさそうに思う。いやまあ、目に見えた変化があれば、マスターが気付いてしまうから、意味ないのだけど。
「これがきちんと作動すれば、勝手に扉が開く心配はなくなるよ。……ミィも安心して通れるようになるね~♪」
「にゃ~♪」
この前の雪崩でミィが怪我した事件(?)……未だに根に持っているらしかった。
「どのような効果で雪崩を阻止するのですか?」
「う~んとね~……あ! ほら、この前の掃除で使った袋。覚えているかい?」
袋に場所を指定させ、その袋に入れた物をその場所へ転送するあれですか。名前は……確か、『移動袋』でしたっけ。
「そそ♪ つまり、この扉を起点にして、部屋から廊下に流れていった物を元あった所へ戻すってこと」
図書館の本は図書館へ、他人から借りたものはその人の所へ……以前、使った袋の上位互換みたいなもんか。あれは一つの指定先にしか物を送り込めなかったし。
何より、部屋いっぱいになった物達は自動的に仕舞われるって訳で、掃除も幾分か楽になりそうだが……
「アルフ様。他から借りたり、持ち出した物が扉から廊下に流れた場合、持ち主の元へ返るんですよね?」
「うん。そうだよ♪」
「なら、元々その部屋にあった物……つまり、マスターの私物はどうなるのですか? その理屈で考えれば、マスターの部屋に戻りますよね?」
アルフ様はピタリと作業の手を止める。
そして、たっぷりと間を空けた後、にっこりと微笑む。
「それは内緒♪ けど、そうだな。僕からは、ファウスさんには『天罰』が下るかも……ってだけ、言っておこうかな?」
「天罰……ですか」
「うんうん♪  ま、どうなるかは、すぐに分かると思うよ。……だから、フォースくんはこの事、ファウスさんには内緒にしててね?」
「……は、はい」
いやほんと、あの件を未だに根に持ってるんだな、このお方は。

──そんなやり取りから数日後。
おれ達、制御者四人は、エル主催、カードゲーム(ババ抜き)大会をしていた。
おれとユウが先に抜け、ラウラとエルの一騎討ち。突然、それは起きた。
「──どわあぁぁぁぁ!!!???」
と、物凄い悲鳴と共に、物凄い音がマスターの部屋から聞こえてきた。
制御者全員がそちらに目線を向け、少なからず何かしらの反応は見せる。とは言え、ある種、日常みたいなものでもあるので、大した焦りはないが。
「ん~? 今の声はマスターかな? 今回は何したんだろうね?」
ラウラは大して興味もないくせに、にこにこと笑いながら、おれ達に向かって問いかけてきた。
そんなラウラの質問にエルは「うーん」と考え込み、首を捻る。
「なんだろ? あ、この前はね~? やらなきゃいけない仕事の書類、くしゃくしゃになって出てきて、大慌てしてた。……今日もそれ系?」
そんなエルの回答に、ユウは別の意見を持ち出してきた。
「或いは、山積みになった本が降ってきたとかかも。つい最近もあったよ。その件でミィ、ぷんすか怒ってたから」
「あはは♪ あったねぇ? その話繋がりで言うと、ウィル様から黙って借りてた資料が山程出てきて、ウィル様が大激怒してたこともあったねぇ?」
「あー! あったあった! で、売り言葉に買い言葉で、二人で大喧嘩したんだよね?」
「うん。それで、結局、アルフ様に止められたやつ」
おれの知らない事実が山程出てくるな。あいつ、マジでなんなんだ。トラブルしか振り撒かないのか?
「……さて、と。こんな辺りで答え合わせ、しに行く?」
と、ラウラは面白そうだと言わんばかりにおれの顔を覗き込む。
おれはラウラの言葉には返答せず、黙って立ち上がり、マスターの部屋のある方向へと歩き出した。エル達も遅れつつも、後ろをついてきていた。
あいつらは好き勝手言っていたけど、数日前のアルフ様の件がある。多分、それ絡みだと思うんだよな。
……なんてことを思いつつ、おれはマスターの部屋の前まで来ると、黙ってその扉を開ける。
「う、うぐ……」
室内を覗いてみれば、アルフ様の仕掛けが正常に作動している証なのだろう。アホの部屋にしては整頓されていた。
そして、その整頓された室内で、頭を押さえて痛みに悶えるアホの姿があり、その近くには、大きなタライが転がっていた。
恐らく、あの巨大タライが頭上に降ってきたんだろう。アルフ様の言う、天罰とやらのせいで。
事情を知らない三人は、倒れているマスターに目を丸くし、慌てた様子─というよりは、理解に苦しんでいるから、状況把握のため─で部屋に入り、マスターの傍へと近寄る。
エルは倒れてるマスターへ。
ユウとラウラはその辺に転がっているタライへ。
「マスター! 何があったんですか!?」
「な、なんか、頭に……当たった……俺の頭、ちゃんとありますか……?」
大丈夫だ。話せてる時点で、頭は取れてねぇよ。つか、取れてたまるか。
「え、えと……タ、タライ? そんな大きなタライ、どこから持ち出してきたんですか……?」
「俺も知らん……え、俺のですか、これ?」
「覚えてないの? これ、マスターのだから、部屋にあるんじゃ?」
「知らない子だよぉ、それぇ」
涙目で語るマスターに、ラウラはけらけらと、楽しそうに笑う。
「あはは~♪ そうなんですか?……じゃ、どこしまおっかな~?」
「冷静というか、なんと言うか。……ドライだな、ラウラ」
「ふふ。そう? でもさ、そこいるリーダー程じゃないでしょ?」
ラウラは扉付近から動かないおれをちらりと見る。
そりゃ、ねぇ? アルフ様が何かしてたのを知っているから。
アルフ様の言っていた天罰とは、この事なのだろう。
恐らく、マスターの私物がどうなるのか、それの答えが、『タライが降ってきた』なのだ。
いつもなら、廊下へと流れ出るはずだった数多くあるマスターの私物。そんな私物の中から、マスターにそこそこのダメージを負わせられ、且つ、危険度の低いものが降ってくる仕組みなのだろう。でなければ、タライなんて絶妙なもの、頭上に落ちるわけがない。
「フォース、俺がなんで、こうなったか知ってる風なの……?」
「だったら、どうするんだ?」
「いや、どうというか……状況説明して欲しいな~って」
「残念。おれも知らねぇよ。……そうだな。アルフ様にでも聞いてみれば?」
「!? そう言うってことは知ってるってことだよね!? アルフさん、何したの! 俺の部屋に何してるの、あの人ー!!!??」
悪いことではないからいいんじゃないの?
これに懲りて、定期的に整理整頓して欲しいものだね。……ヤツが自主的にしてくれるかは、知らないけど。



~あとがき~
なんか、ほぼ毎年、この人の部屋の話をしている気がします。けどまあ、これで完結だろ。来年はしない。つまり、ファウスの出番も終わり……?←

次回、通常更新に戻ります。
回想のまとめ回からですな。

フォース達のマスターこと、ファウス。今はこんなんでも、昔はちゃんと神様やってたんです。真面目に仕事に勤しんでたんです。けどまあ、月日が流れ、こうなりました。理由はちゃんとあるけど、一言で言うなら、世界が平和になったから、なんですよね。
きっと、彼が真面目に仕事をやるってことは、世界に何かがあった時、なんです。だからまあ、ちゃんとしない神様のままの方が、世界的に幸せかもしれません。
フォース達の手間は増えますけど←

ではでは。