satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第373話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でだらだらしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ツバサちゃんがティールを褒めちぎりました!!
ティール「それだけじゃなくない!?」


《L side》
「──いやはや、大変、有意義な時間でした。これからもよろしくお願いいたします」
「はいっ♪ これからもご贔屓に」
ある程度、話を終えたファンブル様とツバサちゃんは、互いに挨拶を交わし、ツバサちゃんはその場を離れる。それに私とレオン君も続く。
あのやり取りのお陰で、ティールとツバサちゃんの婚約話もデマだと広まるはずだ。きっと、貴族様の情報網は早いだろうし。
一旦、休憩でもと私達は、参加者達の輪から外れた。そして、その道すがら、近くのテーブルから貰ってきたオレンジジュースをツバサちゃんに手渡す。
「わ! ありがとうございます」
彼女はそれを美味しそうに一口飲み、こてんと首を傾げる。
「……なんであの人、ティールさんとの関係を聞いてきたんですかね?」
「この国の王子様と仲良くしてると、色んな噂が立つんじゃないかな?」
「ほへ~……?」
あ、分かってない顔だ。
「皆、ここにいたんだ」
「あ、ティールさん……ティール様」
ティールでいいよ。誰も見てないみたいだから」
ティールもファンブル様から離れたらしく、こちらへと近寄ってきた。彼の近くにブライトさんとセイラさんの姿がないので、あの二人は挨拶回りを続行中なのだろう。
ティール、こっち来てよかったの?」
「うん。ぼくもまあ、父上達のオマケみたいなもんだからね……普段、こういうパーティーには顔出さないし。今回は父上と親交の深い相手方だったから、ぼくも同席しただけ」
人付き合いって難しいなぁ……
同じことをレオン君も思ったのか、困ったように眉を下げながら口を開く。
「ほ~ん? お前も大変だな~?」
「まあね……というか、ツバサ」
「はい! なんですか?」
知り合いに囲まれているためか、令嬢モードのツバサちゃんではなく、通常ツバサちゃんの笑顔で答える。
「さっきのあれ、本音かい?」
「う? はい!」
「……そ、そう。……ありがとう。普段、そんなこと言われないから、驚いたけど」
「あわ、ごめんなさい! 聞かれたので、つい……でも、ほんとのことですよ?」
天使の褒め言葉にはティールも勝てんか……そら、そうだ。
素直で真っ直ぐなツバサちゃんの視線に耐えきれなくなったのか、ティールは照れ臭そうに視線を外し、飲み物や食べ物の並ぶテーブルを指差す。
「……ぼく、何か飲み物とか取ってくるよ」
「お? それなら、俺も手伝うぜ。ラルはツバサの側にいてくれるか?」
「了解。行ってらっしゃい」
「レオン! 私、美味しそうなケーキ食べたいっ♪」
「りょーかいっ! じゃ、待っててな~♪」
ティールとレオン君を背中を見送れば、すでに飲み終わっていたツバサちゃんのグラスを係の人に手渡す。
こうして見渡してみれば、色んな人がいる。しかし、誰もが高貴な人なのだと分かる。細かな所作、話し方、振る舞い、どれもが私とは違って見えたから。
やっぱ、住む世界違うわぁ~……
「ラルさん」
「ん? どしたの?」
「もう緊張とか、してないですか? 疲れてないですか?」
私だけがこういう場に慣れていないのをずっと気にしてくれていたのだろう。心配そうな顔で私を見上げていた。
さっきまでのツバサちゃんはどこへやら。……全く、優しいなぁ、この子は。
「……うん。ツバサちゃんがいてくれるから、私は大丈夫。心配かけてごめんね?」
「! いえ! 何かあったら言ってくださいね♪」
「ありがと。ここがパーティー会場じゃなかったら、ぎゅーってしてたかも」
「なら……帰ったら、してくれますか?」
してあげる! 思う存分、してあげるよぉ!! むしろ、させてくださいっ!!
なんて可愛いんだろ、天使すぎる……!
「……少しよろしいかな」
「はい。なんでしょう」
見知らぬ男性に話しかけられ、ツバサちゃんはパッと表情を切り替える。
「失礼。ルーメン殿のご令孫のケアル嬢とお見受けしたが……間違いはないだろうか?」
「? はい。確かに私はルーメン・L・ケアルの令孫です」
「いやはや、やはりそうか。貴女のお祖父様には、大変お世話になりましてねぇ」
どこか見下したような雰囲気のある男性。そして、お祖父様に大変お世話になった……か。この人、もしかして。
ツバサちゃんも私と同じ考えに辿り着いたようで、笑みを絶やさず、「あなたは……」と呟く。
「もしかして、モーグ……モーラス様でしょうか?」
「いかにも。お祖父様とお母上は、お元気ですかな?」
ツバサちゃんの言い間違えには気付かなかったのか、華麗にスルーしただけなのか。モーラス様は淡々と話を続ける。そんな彼に、ツバサちゃんも他愛ない返答で話を合わせていく。
私は、この二人のやり取りを見てることしかできないので、なんとなくモーラスを観察してみる。
この人からは胡散臭い気配がする。この人の話し方、態度がそうさせているのかもしれないが。
なるほど。セラフィーヌさんが気にする理由が分かる。この人を見ただけで、できるなら、愛娘とは関わらせたくない気持ちがよく分かるもの。
そういえば、セイラさんが教えてくれたっけか? この人をルーメンさんがハゲにしたんだよね……その割には髪の毛、ふっさふさだな。カツラか? カツラにしては、違和感ないなぁ……? 高いんだろな、それ。
「──それはそうと、ケアル嬢」
と、ちらりと私の方を見てきた。しかし、それも一瞬で、すぐにツバサちゃんへ視線を戻す。
「貴女の付き人は平民だとお見受けする」
……おお? 私に矛先向けてきたか?
どうやら、ツバサちゃんが当たり障りのない返答しかしないところを見て、好機と見たらしい。ルーメンさん、セラフィーヌさんにやられ続けた鬱憤─というか、完全な八つ当たり─を晴らすチャンスだとでも思ったのだろうか。
ちっせぇ大人……未成年を言い負かすことに何、執念燃やしてんだろ……?
平民の私を連れているツバサちゃんを見下すつもりなのだろうか。それとも、単に私を見下したいのか。後者ならまあ、別に構わんのだけど。慣れてるし。
「……そうですね」
少し、ツバサちゃんからピリついた空気を感じた。しかし、彼女は変わらず笑顔を浮かべている。浮かべてはいるのだが。
……モーラスさん、なんか、地雷踏んだんでは?
「こちらは、ティール様と同じ学園に通う私の先輩で、とてもお世話になっている方ですの。今回のパーティー同伴もこちらから急遽お願いしたのですが、快く引き受けてくださったのです」
「おやおや、そうでしたか。……世話になっているということは、もしや、生徒会に在籍してらっしゃるのかな」
ツバサちゃんに目を向けず、私に視線を向けてきた。この問いには私が答えろと言いたげである。
あ~……無視してぇ……なんなら、普段、下手に絡まれたら無視するタイプの人間だよ、こいつ。
けど、ここで私が下手な行動をすれば、ツバサちゃんやティール……ブライトさん達にまで迷惑がかかるかもしれない。
今までの経験で培ってきた愛想笑いを向けてやる。どう答えてもいいのだが、当たり障りのない返答でいいだろう。
「はい。……ツバサ様やティール殿下と共に務めさせていただいています」
「なるほど……ふむ」
モーラスはニヤリと笑う。いいネタみっけ……そんな感じの顔だ。
「僭越ながら……ケアル嬢、殿下もですが……付き合う人は選んだ方がよいですぞ?」
「……と、おっしゃいますと?」
また、ツバサちゃんからピリっとした空気を感じる。やっぱり、地雷踏んでるぞ。モグラなんだから、ちゃんと地面は見てくれ!
「平民ばかりと付き合えば、視野も狭まりましょう。世界は広いのですから」
「……」
「もしや、学園の生徒とは彼女のような平民ばかりが通う学園なのですかな? それは大変だ。もったいない! ケアル嬢や殿下のような方が通うべき学舎とは言えませんなぁ!」
なんか、あらゆる人を見下し始めてないか? 大丈夫??
私個人を蔑むのは勝手なのだが、他を巻き込むのはやめていただきたい。
学園を馬鹿にするのなら、それに携わる全ての人を見下しているのと同じだし、生徒を馬鹿にするのなら、そこに通い、親交を深めてきたツバサちゃんやティールも間接的に見下しているのと同じだ。
……いや、それが目的なのか?
平民の私を連れたツバサちゃんを無下に扱い、自分のちっさい自尊心を満たしたいんだろう。たどしたら、なんて可哀想な人なんだ。
……さて、どうしたものか。
私がどうにかしてもいいけど、下手に動くのは危険だ。事故を装って雷姫ちゃん、ぶつけてもいいけど……こんなところで、手荒な真似もしたくはない。
「……?」
ふと、私の隣のツバサちゃんの雰囲気ががらりと変わったことに気付いた。さっきまでは感じる程度だったのに、今は、はっきりと分かる。
……めっちゃ怒ってる。ツバサさん、お怒りだぁ~!?
それに気付かない鈍感なモーラスは、気持ち良さそうに持論を説き続けている。やれ、平民は何が悪いだ、やれ貴族はここがいいだ。……延々と繰り返されたそれを遮るように、ざっとツバサちゃんが扇子を広げる。そして、広げた扇子をそっと口許を隠すように持ち、にこりと笑った。どこか影のある笑みとでも言うのか、普段のツバサちゃんなら絶対に見せない黒い笑み、とでも言うべきか。
「あら、失礼? 少し会場が暑く感じたもので」
「いえ。……お、お気になさらず」
あまりの変貌にモーラスも調子を崩されたのだろう。先程までペラペラと饒舌に語っていたにも関わらず、ぴたりと口を閉ざした。
「そういえば、モーラス様? うちの商会で頻繁にお買い求めなさる商品がありますね」
「…………は?」
「確か……その商品のシリーズでは、一番品質の高いカツラ、だとか」
やばい。つい、笑いそうになった。
え、ルーメンさん達を目の敵にしているくせに、ちゃっかりそこの商品買ってんの!? この人、プライドないんか!
ツバサちゃんはにこりと笑い、周りにも聞こえるような声で話を続けた。
「モーラス様がご購入なさるケルピーの毛を使ったカツラは、すぐ駄目になってしまうものの、使用者の頭皮に馴染むようオーダーメイドで採寸、加工しているために、大変つけ心地がよいとか?」
「いや、あの……」
「あのカツラの大体の消費期間は一ヶ月です。しかし、一度つけたら、他では満足いかなくなるそうですね」
周りで聞いていた貴族からも、ざわめきが起き始めた。大体が、「モーラス様ってカツラだったんか!」みたいな驚きだけども。そんなどよめきが起きるってことは、この人はカツラを使っている事実を周りにはひた隠しにしてきたってことだ。
それを今、この場でバラされた。それを知ったモーラスの顔色が一気に青ざめていく。
「……今後とも、我が商会をご贔屓にしてくださいませ?」
十二歳の少女に言い負かされた。言い負かすつもりが、逆に負かされていた。これはもうなけなしの自尊心もズタボロってやつだ。
「…………小娘が」
きっと、彼としては頑張って出した悪口なのだろう。負け惜しみとも言うかもしれない。
だけど、私も限界だった。
「……一時とはいえ、今の私はツバサ様の付き人なの。……私のお嬢様をそのように呼ばれるのは心外」
まあ、セラフィーヌさんには殺気で追い返せって言われたしね? これくらいなら許してくれるよね。
「何を」
「──ねえ、雷姫? この男、どうしてやろうかしら」
私は刀ではなく、自身の背後に雷姫自身を呼び出した。
この男に雷姫がどう写ったかは分からない。
けれど、雷姫は一般的には畏怖の存在だ。
強大な力を持つ神器。
魂を食らう妖刀。
そんな彼女をどう見たのだろう。
鬼か。悪魔か。それとも……?
「ひいぃ!!」
モーラスは情けない悲鳴を上げながら、その場を立ち去った。
……本当に殺気だけで追い返せるんかい。とんだ小心者だ。
「ありがとう、雷姫。帰っていいよ」
『なんだ。あの男、斬らんでよかったのか? 我が地獄より深い絶望を見せてやってもよかったのだが?』
背後にいた雷姫がふわりと私の正面に立つ。もちろん、半透明の状態だ。
「いや、流石にそこまで怒ってないよ」
『本当に?』
……怒ってないよ。いなくなったからね。
『そうか。なら、よい。……しかし、気が変わったのならいつでも力を貸すぞ、マスター?』
あー、はいはい。あんがとな~?
すっと姿を消した雷姫を見送り、私はふーっと息を吐く。
やれやれ、あれ以上食い下がってきていたら、本当に手が出るところだった。危ない、危ない♪



~あとがき~
ツバサちゃんもラルも怖すぎかよ。

次回、パーティーと言えばダンス!

今回はツバサちゃんとラルしかいませんでしたが……あの場にティールがいたら確実に滅されてたし、アラシ君がいても滅されてたと思います。
ちなみに、ブライトやセイラがいても、滅されてたと思います。社会的に。
そういう意味ではモーラスは運がいいのかもしれません。

ではでは。