satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第380話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、手紙の全容が明らかとなりました。どうやら、孫とその友人と遊びたいご様子。
そんな続きからやってくぞー!


《L side》
幽霊のサフィアさんの仕業なのか。
あるいは、赤の他人の悪戯なのか。
それを突き止めるため、私とティールは手紙にある『遊び』に付き合うことに決めた。
……ってことで、やって来ました! 王宮内にある書庫!
流石、王宮の書庫と言わざるを得ない。小さな町の図書館並みの規模感である。
真新しい本もあれば、年代を感じるような色褪せた古書も多く所蔵されていた。
そんな中、ティールは迷うことなく、一直線に、とある本棚へと手を伸ばす。そして、差し出されたのは古い絵本だった。
その絵本は少し色褪せているものの、大切にされてきたのだろう。特別、大きな破損は見受けられない。
絵本の題名は『ゆうきのけんしのぼうけん』だ。
「これ、お祖母様のお祖父様……ひいお祖父様のだって聞いてたから、結構昔のやつだと思う」
ふへ~……そうなんだ。
それを考えると、本の状態はかなりいい方なのでは? 子供が扱う絵本だから、汚れなんかもありそうだけれど、そんなことはない。ちゃんと字も絵も読めるし、ページが抜けているわけでもなさそうだ。
きっと、サフィアさんも、サフィアさんのおじいさんも丁寧に扱ってきたのだろう。そして、ティールも。
「内容は……ごく普通の冒険の話だったと思う。あちこち旅をして、世界一の宝を見つける……そんな話」
大切そうにページを捲るその手は、その絵本が本当に大好きで、大事なものなのだと見て分かるくらいだ。
ティールの言う通り、話の内容はどこにでもありそうなもので、特別、何かがあるようには見えなかった。これのどこが鍵になり得るのだろう?
ティールもそこは疑問のようで、懐かしむように絵本を眺めているものの、特に気になる点はなさそうだ。
「剣士が世界を冒険する……か。各地を冒険して、お宝を見つける。時には謎も解き明かしていくなんて、私達みたいじゃない?」
「まあ、探検隊だし、それっぽい仕事ではあるよね。けど、ぼくらはこの剣士みたいに世界中巡ってる訳じゃないし、こんなに宝物を見つけてる訳じゃないけど」
それを言うなよ。寂しいやつめ。
しかしまあ、『ぼうけんのしょ』を遊びの鍵にするなら、そこかもしれない。
「この物語みたいに冒険してみろってことなのかな。道標的な?」
「道標……か。でも、物語に出てくる場所はどれも架空の場所だし、その通りにするって言っても定義が分からないよ。適当にダンジョン踏破すれば終わりなの?」
ぬぅ……確かにそう。受け取り方によっては、どうとでもなってしまうから、物語になぞって行動するというのは、ちょっと違うか。
「……ねぇ、ティール。そもそも、なんでこの絵本を『ぼうけんのしょ』って呼んでたの?」
鍵が何なのか、何をすればいいのか……現状、あるだけの情報では停滞気味なので、別視点から何か思い付けばと思って問いかけてみた。
元々、『ゆうきのけんしのぼうけん』って題名があるのに、『ぼうけんのしょ』って呼んでいたのだ。そこには何かしらの理由はあるはずで。
ティールはどこか照れ臭そうに手元の絵本に視線を落とす。
「あの頃、この絵本にあった冒険は、本当のことなんだって信じてたんだ。この絵本に書かれている話は、実際の出来事で、世界にはこんな楽しいことがあるんだって疑ってなかった」
「そっか。昔から好きだったんだ。そういう話が」
「うん。きっと、両親の影響でね。……だから、この絵本を手引き書みたいに思ってて。お祖母様と冒険する時、いつも持ち歩いて、て…………あっ」
「? どうしたの?」
「お祖母様も持ってた。『ぼうけんのしょ』……もしかしたら、そっちかも」
サフィアさんの『ぼうけんのしょ』?
ティールは小さく頷くと、その『ぼうけんのしょ』があるところへ案内すると書庫を出ていく。
「待って待って! どこにあるの、サフィアさんのやつ」
「誰も触っていないとしたら、お祖母様の自室だと思う」
……なるほど。サフィアさんの部屋、か。
亡くなってしばらく経つけれど、部屋自体はまだ残っているらしい。
目的地へ向かいつつ、その道すがら、ティールが未だに部屋が残っている理由を教えてくれた。
「お祖父様がお祖母様の部屋は片付けず、そのまま残すように指示したんだって。理由は分からないけど……多分、お祖父様がお祖母様を思い出すための場所の一つなんだと思う」
ティールに適当にあしらわれたり、ルーメンさんにお仕置きされたりしてた、あのアルドアーズさんからは、そんな姿、あまり想像できないけれど。
「ぼくもだよ。……ただ、そうなんじゃないかって想像だ。たまーに、その部屋に入っては、しばらく出てこないことがあるから」
「……そう、なんだ」
アルドアーズさんは今でも、サフィアさんを一番に想っているのかもしれない。
いやほんと、そんな姿、微塵も想像できないんだけどね?
「もし、お祖父様がいらっしゃったら気まずくて入れないけど、今日、お祖父様はいらっしゃらないから、大丈夫なはず」
「おっしゃ! じゃあ、早速、向かいますか。サフィアさんの部屋!」
「うん。こっちだよ」
……あ、サフィアさんの部屋に行く前に私達が泊まってる部屋にも寄りたいです。
私の提案にティールはぴたりと足を止め、不思議そうに首を捻る。
「? 何で?」
「だって、今から冒険の始まりなんでしょ? だったら、準備が必要じゃない?」
今の私はどこにでもいる女子高生だし、ティールは王子様。そんなんで冒険なんてできるわけがない。
ティールはぽかんとした後、納得したように小さく笑う。
「……なるほど。そうかもね」
「ふふん♪ ってことで、準備ができ次第、探検隊スカイ、出撃で~す!」
「了解だよ、リーダー」

……ってことで、私も動きやすい服装へチェンジし、ティールも王子様のキチッとした服から、普段の服装へと着替えた。流石に探検用の服を着る必要はないけど、あちこち動く可能性もあるし、外に出る可能性だってある。慣れた服の方がいいだろう。
「? ティール、髪も元に戻したの?」
さっきまできちっとセットされていたけれど、今は前髪も下ろされていて、普段の見慣れたティールだ。
「いつも通りにって君が言ったんだろ?」
「そうだけど。……うん。やっぱ、そっちの方が見慣れてて好き~♪」
「はいはい。ありがとう……で、ここがお祖母様の部屋、なんだけど」
ティールがドアノブに手を掛けてみても、鍵がかかっているのか、開く気配はない。そりゃ、普段は人が来ない部屋だろうし、鍵かかってるか。単なる空き部屋ではないのだから。
「誰が鍵持ってるんだろ? 持ってそうなお祖父様……は、今はいないから、ハロルドさん……? んでも、今、ハロルドさんっていたかなぁ」
おや。始めて聞く名前。
「お祖父様専属の執事で、王宮で一番偉い執事長でもある人だよ。だから、マスターキーとかも持ってそうなんだけど、それを貸してくれるはずもないし……そもそも、ハロルドさんはお祖父様の実家や別邸の管理もしてて、王宮にいないことも多い。……だとすると、父上が管理してるのか?」
アルドアーズさんと女神祭で会った時は、一人だったけど連れがいたんだろうか。それっぽい人を見かけた記憶はないが。
「どうだろうね。お祖父様、単独行動多いし、お忍びだーとか言って、護衛つけずにふらふらすることも多いから……いなかったかもね」
アルドアーズさん、自由すぎやしません?
一応、元国王だし、今でもブライトさんの仕事を手伝って外交関係の仕事してるんだよね? この国の要人なんだよね? そんな人がふらふらしてていいの?
私の脳内では、あらゆる疑問が浮かんでは消えを繰り返す中、ティールもそれを察してか、何とも言えない表情を見せ、大きなため息をつく。
「ぜんっぜん、よくないけど……まあ、お祖父様のご意向だから」
「……いいように言いくるめられてない?」
「そうとも言う」
……まあ、今はアルドアーズさんなんて、どうでもよくてだな。
話を戻すと、ここの鍵を誰が持っているのかは不明。可能性の高いブライトさんから聞き出すしかない……と。
とはいえ、そのブライトさんも今どこにいるか分からない。執務室なのか、どこかへ出掛けているのか。或いは会議等でしばらく話せない可能性すらある。
それらを待っていたら日が暮れるかもしれない。……じゃ、残された手段は一つしかないな。
「仕方ない。私が開けるか」
「え、ラルが? どうやって」
「やっだ! 知ってるくせに~♪ 一応、誰か来ないか見張っててね?」
私はポーチからピッキングツールを取り出すと、鍵穴に器具を差し込み、指先の感覚と今までの経験を元に鍵明けを試みる。
数分程弄っていると、カチャリと鍵の開く音が聞こえる。無事、御開帳である。
「うっしゃ! 楽勝♪」
「……早。怖」
「今更かよ」
道具をポーチにしまい、私はドアノブに手を掛け、ゆっくりと扉を開いた。
やはり、誰かが管理しているのだろう。使っていない部屋にも関わらず、埃っぽさは全く感じない。
カーテンを開け、室内を見渡してみれば、私の泊まらせてもらってる部屋と広さは大差ない気がした。
豪華な天蓋付きのベッド。細やかな装飾が施された豪華そうなチェストやソファ、ドレッサー等の家具類。
「ここがサフィアさんの部屋」
「うん。正確には寝室らしいけど」
……あ~ね? 別に私室があるんか~……?
「一応ね。けど、ぼくが産まれた頃から、お祖母様は病気を患ってたから。ここが私室みたいになってたみたいだよ」
なるほど。だから、サフィアさんの私物も残ってるのか。だとしたら、ティールの言うサフィアさんの『ぼうけんのしょ』もここにあるんだろう。
ティールはベッド近くにあるチェストに近付くと、懐からキーケースを取り出し、その中から小さな鍵をチェストの鍵穴へと差し込む。
ぴたりとはまったそれは簡単に回って、カチャリと小さな音を立て、解錠される。
「なんでティールがそこの鍵持ってるの?」
「一応、これはスペアキーなんだけどね。昔、お祖母様から貰った。『ティールなら、おばあちゃまの宝物守ってくれるから』って」
幼い頃のティールはおばあちゃんのこと、おばあちゃまって呼んでたのか。なんとまあ、可愛い……ではなくて。
ティールが引き出しを開けてみれば、そこには二つの物が納められていた。
一つは紺色で装丁されたシンプルな手帳。もう一つは楕円形の透明な石だ。
これのどっちが『ぼうけんのしょ』ですかと聞かれれば、手帳ですって答えるけど。
「うん。この手帳がお祖母様の『ぼうけんのしょ』だよ。でも、この石は初めて見るな……?」
ふむ。ならば、とりあえず、そっちは後回しにするか。



~あとがき~
思ったよりも進みが悪い!(笑)
さて、どれだけの話数で終わるのか……予想してみてください。

次回、見つけたもの。

幼い頃のティール君、サフィアのことをおばあちゃまって呼んでました。ちなみに、アルドアーズのことはおじいちゃま。
両親のことはいつぞやの幼児化事件で判明してますが、とーちゃ、かーちゃですね。さ行が苦手だったご様子。
今ではそんなことはないけど、アルドアーズには時々、「昔みたいにおじいちゃまって呼んでもいいんだぞ~?」って茶化されてます。まあ、アルドアーズ的には、一種のコミュニケーションなので、呼ばれないことは分かってるんですけどね。やめられない止まらない状態なのだ。

ではでは。