satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第382話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でだらだらしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、透明な羅針盤を手にしたり、ツバサちゃん達の言葉に何かを思い出したりしました。
光なき道とはどこなのかー!
……それが明らかになると思われ!


《L side》
少し前に訪れた庭園迷路前にやってきた私達。あの時はブライトさんと鉢合わせしたけれど、流石にそれもなく、周りには誰もいない。
今回はティールを先頭に迷路へと入っていく。いつもなら、ティールお得意の不運発揮で、何かとトラブルに巻き込まれるけれど、自宅の迷路─字面が凄いけど、気にしない─なので、そんなこともなく。
ティールは、とある場所で足を止め、私も彼に倣って、歩みを止める。
目の前には、植物の蔓でできたトンネルがあった。そのトンネル内は、蔓で光が遮られ、若干ではあるものの、見通しはあまり良くはない。
ティールは羅針盤を取り出し、私に手渡してくると、彼はトンネル横の草陰を何やらゴソゴソといじり始める。
「昔、お祖母様に教えてもらった通りなら……この辺にスイッチが……っと!」
ティールがお目当てのスイッチとやらを押したのだろう。トンネル内の真ん中辺りの地面が、ゆっくりとズレていく。そして、人一人が通れるくらいの幅がある、地下へと続く階段が現れたのだ。
そして、その階段が現れた瞬間だった。
私の手元にあった羅針盤─正確には透明な石の方─が淡い光を帯び、そこから、白く細い光の線が伸び、地下の階段を指し示したのだ。
「この反応をするってことは、羅針盤はこれのことで間違いなさそう?」
「……かも、しれないね。この先には、小さな部屋と王宮に続く道が続いてるんだ。元々は、王宮から外へ続く道……一つの逃げ道だったみたい」
敵から逃げるための隠し通路ってわけね。
光なき道……明るい外の道ではなく、ここを目指せって意味だったのか。
「中は暗いから気をつけて」
「はーい」
足元に気をつけながら、地下への階段を下っていく。私達か下りきったタイミングで、上からゴゴゴッと音がして、上の入り口が閉まってしまう。それによって、辛うじて差し込んでいた光すらもなくなり、完全に真っ暗になってしまった。
「閉じ込められた……というよりは、自動で閉まるように、できてるんだね?」
「うん。……確か、その辺に開けるためのスイッチがあるはずだから、閉じ込められることはないよ」
それは安心だ。安心だけど。
「大体の仕掛けって、スイッチでどうにでもなる世界なんだな」
「……何の話?」
ここに限らず、世界で用いられる仕掛けの話だよ。
まあ、そんなことはどうでもよくって。
微かな光源だった扉も閉まってしまい、傍にいるはずのティールすらも見えない。しかし、羅針盤からは変わらず、光の線は発せられていて、行き先をはっきりと示してくれていた。
通路もそこまで広くないし、一本道みたいだから、はぐれる心配はない。とはいえ、互いの間隔は見計らえないので、私は空いている方の手でティールと手を繋ぎ、羅針盤を頼りに前へと進んでいく。
「炎とか出せたらよかったんだけど、できなくてごめんね~?」
「それを言うなら、ぼくもだよ。……というか、ラルは電気を使って、照らせるんじゃないの?」
照らせると思うけど。
しかし、目元の羅針盤の光はとても弱い。私がここら一帯を照らしてしまうと、この光は見えなくなる可能性がある。
「あんまりやりたくはないかな。せっかくの道標を消したくないし」
「なるほどね。……けど、こうも真っ暗だと足元も見えないし、危ないよね」
慎重に進む分には、問題ないとは思うが、焦って転んだ日には、方向感覚も狂ってしまいそうだ。それに暗闇を手探りで進む恐怖もそれなりにある。
「ある程度、通路が狭いのは、少しでも迷わないようにするためなのかも。……お?」
一直線に前だけを指していた光の線が、とある場所で曲がっていた。どうやら、そこがティールの言っていた部屋の場所なのかもしれない。
ティール。これ、握ってて。私の服」
「了解」
手を握る代わりに服の裾を握らせ、空いた手で、扉の取っ手を手探りで探す。見つけたそれらしきものを握り、ゆっくりと開けてみる。
キィ……と小さな音を立てながら、扉は簡単に開いたようで、手を前に振ってみれば、障害物等もなさそうだ。ちゃんと部屋らしいところへ辿り着けたらしい。
「今更なんだけど」
「? どうかした?」
「私、これはサフィアさんと遊んでるつもりでやってたけど、これが悪党の仕業だとしたら、結構、無防備な状態だなぁと」
「まあ、ここがダンジョンとかなら……確かにね。そうかもしれない。でも、ここは王宮内だよ」
……それもそうか。
今の私達は、意図的に暗黒の空間に誘い込まれ、閉じ込められたようなものだ。そんなの、今が奇襲のチャンスだ。いつもなら、そう思ってた。というか、さっきまでそう思ってた。
「ごめーん。気持ちが探検隊でした」
「あはは♪ 確かに、雰囲気はあるもんね?」
とはいえ、まだ赤の他人が仕掛けた悪戯の可能性は捨てきれない。一応、用心しておくか。生憎、今日は魔具は持ってないし。
私は念のためにと雷姫を帯刀すると、部屋の中へと足を踏み入れた。
「この辺の壁に電気のスイッチがあったはず。……つけてみる?」
「そだね。ここまで来たら、道標もなくて大丈夫だし、もし、また道標が必要なら、消せばいいか」
「OK。じゃあ、ちょっと離れるね?」
ティールが離れる気配がして、数秒後、パチンッと言う音がすると共に、古びた電球が何度か点滅し、部屋を照らしてくれた。
ずっと暗闇にいたからか、急な光に目が眩むけれど、それも数回、瞬きをすれば目が慣れてきた。
「……ふぅ。これで周りが見えるね」
「うん。と言っても、そこまで物がある訳じゃなさそう?」
部屋の中は簡素なものだ。
古びた木製のテーブルと椅子。そして、何も収納されていない本だなと小さなチェスト。家具らしい家具は、これだけだ。
一応、ティールと手分けしてチェストの中や本棚の裏とか見てみるものの、目ぼしい何かが見つかるわけではない。
と、なれば、だ。
「そのテーブル上の箱しか、怪しいものはなさそうね」
「みたい、だね」
「なんだろうね、その小さな箱」
「え? な、なんだろ、ね……?」
分からん。
周りの家具類は、古ぼけたものしかないのに、その箱だけは真新しさを感じる。まるで、最近、置かれたもののように。
じっと眺めていても、何かが起こるはずもない。となれば、ここは一つ、こいつを開けてみるしかない。
「ねぇ、ラル? 開ける前に”時空の叫び“で視れないかな。この箱に危険がないかどうか」
手紙では失敗したけど……まあ、試してみるか。不調ではないもんね。
見た感じ、外側に何か仕掛けがあるようにも見えないし、触るだけなら問題ないだろう。
私は小箱に手を伸ばし、ちょんっと触れてみる。そして、ゆっくりと深呼吸をしながら、目を閉じて意識を集中させる。
その瞬間、くらりと軽く目眩が襲い、脳裏に映像が浮かび上がってきた。
場所はこの部屋。そして、この部屋に誰かが入ってきた。顔ははっきりとは見えない。男なのか女なのかも分からない。言葉で例えるなら、人影そのものだった。
人影はどこからか小箱を取り出し、机の上に置く。そして、迷うことなく、部屋を出ていき、私達が来た方へと歩いて行ってしまった。
──そんな映像が小箱から視えた。
あの迷いのない足取りを見るに、あらかじめ、懐中電灯でも持っていたのだろうか。光源になり得るような何かを持っていたのかもしれない。
しかし、今のあれだけでは、小箱が危険なのかどうかは分からなかった。
「ごめん。視えたけど、危険かどうか判断できるようなものじゃなかった」
私はさっき視たものをティールに簡単に説明した。説明しつつ、先程の光景を思い出す。
あの人影は私達が来た方向……つまり、外に向かって歩いていた。
ここの道は一本道だと言う。つまり、王宮内に出るか、外に出るか二択だ。
「王宮内に戻らなかったのはなんでだろ。身内じゃない? ねぇ、ティール? これって王宮内のどこに繋がるの?」
「うーん? どことは一概に言えないけど、ぼくらの居住区近く、かなぁ? ほら、さっきも言ったろ? ここは逃げ道として使われてたって」
そう言えば。ってことは、本当はここ、一方通行?
「うん。だから、昔は外のスイッチ……ぼくらが入るために使ったスイッチは、なかったんだってお祖母様が言ってた。お祖父様がつけたらしいよ、あれ」
へぇ、アルドアーズさんが?
ティールは小さく頷き、話を続ける。
「お祖父様が若い頃……王様になる前、隠れて仕事するための部屋だったって。今にして思えば、そういう継承者争いの手前、情報収集だったり、仲間と集まるための場所として、隠れて使ってたのかもね?」
継承者争いなんてあるの、こんな平和そうな国なのに?
「昔はあったみたい。先々代までは……つまり、お祖父様のお父様の代までは、一夫多妻制を存分に使って、腹違いの兄弟姉妹が多かったみたいだよ? もう何十年も前だけど」
候補となる兄弟が多ければ、王様になる可能性のある人も必然と増える。だから、兄弟間での争いも絶えなかったのかもしれない。
しかし、今はそうじゃないってことは、アルドアーズさんは一夫多妻制を利用しなかったのかな。あんなに遊び人雰囲気あったのに。……意外としっかりした人なのか?
いや、それは今はどうでもよくて。
「今はどっちにも行けて、出れるんなら、そこから判断はできないな」
「でもさ、人影が置いてったんだよね? 箱を置いてったのは、お祖母様じゃないってこと?」
うーん。何とも言えないかも。
あの光景に出てきた人物の性別も分からない。そもそも、実体があったのかすら分からない。本当に影でしかそれを視れなかったのだ。だから、判断のしようがない。
「そっか。今のところ、何も分からず、か。……これも、開けるしかないな。……ぼくが開けるよ」
今度はティールが箱に手を伸ばし、そっと箱の蓋を開けてみる。
突然、ぶわっと煙が巻き上がり……なんてことが起きるはずもなく、箱には一通の手紙と小さな石が入っていた。
ティールが手紙を手にし、ゆっくりと読み上げてくれた。
『クリアおめでとう。
最初だったから、そんなに難しくなかったかしら?
一つ目の証、羅針盤にはめ込んでみてね。きっと、素敵になるから。
さて。次の場所に行きましょう。

門番の宝の奥に探し物は眠る。
箱に記す先、そこに証はある。

さあ、まだまだ楽しんでね。』
──手紙にはそう綴られていた。
二つ目の手紙の字は……一つ目の手紙、そして手帳の文字と一致する。つまり、これはサフィアさんの字。亡くなったはずのサフィアさん相手に、私達は『遊び』をしている。
どのような手段を用いているのかは分からない。それでも、亡くなったはずのサフィアさんが、これを用意しているのは確かなのだ。
それは、ティールが誰よりも理解しているはずだ。それでも、それに触れないのは、幽霊を認めたくないからなのか。それとも……
「この石、はめればいい、のかな」
手紙と一緒に入っていた小さな石。薄い水色のような、白を混ぜた空色のような石。
「多分。場所の指定はないから、好きなところでいいんだろうけど……どうする?」
私の言葉に、ティールは少しだけ考えるものの、石を上部の窪みに押し込む。すると、ぴったりとはまり、ブローチに色味が一つ加わった。
「次は『門番の宝の奥』ってのを探そうか?」
「そうだね。王宮で門番っていうと、騎士団の皆さんかなぁとは思うけど……? その宝って?」
「守る対象を指すなら、ぼくらのこと? でも、宝の奥って言うくらいだし、場所だよね……うーん。武器庫、とか? 武器がないと、ぼくらを守れないから?」
確かに?
じゃあ、騎士団の武器庫とやらに行ってみますか!



~あとがき~
きりどころ皆無で長かったり、短かったりと安定しませんが、お許しを。

次回、次なる場所、武器庫へ!

アルドアーズが側室を迎えてたか否か。本編で語るところがなかったような気がするので、さらっとお伝えします。え? なんでかって? そりゃあ、もちろん、書くことないんで!
妻と呼べるのはサフィア一人だけです。が、何人も仲良しな女性達はいました。アルドアーズらしいね☆

ではでは。