satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第385話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でだらだらしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、つかの間の休息を楽しんだ(?)二人でした。今回からまた、謎解きするぞ!


《L side》
アルベルトさんが用意してくれたサンドイッチも少なくなってきた頃。適度な休憩とお腹も満たされたからか、ようやく頭も回り始めたので、再度、手紙を確認する。さっきは手紙に謎解き要素があったけれど、今回はそんなこともなさそうだ。となれば……
「やっぱ、ティールのとっておきの隠れ場所を思い出す必要があるよ。こればっかりは、サフィアさん関係ないかもよ?」
手紙にある『あなただけの隠れ場所』というのは、ティールに向けられたメッセージに他ならない。そして、言葉から察するに、サフィアさんと巡った中で見つけた場所でもなさそうだ。だって、『あなただけ』……つまり、ティールだけの隠れ場所ってことだから。
「いや、分かるよ。言ってる意味は分かるけど……でもなぁ」
ティールは、言葉を理解していても、心当たりはないらしく、何度も手紙を見つめては、腕を組んでは暫し、唸る……それを繰り返している。
「あなただけの……隠れ場所。ティールだけの……うーん。……ん?」
そこしか読んでなかったから、気にしてなかったが、よくよく読んでみれば、『あなただけの隠れ場所だった』とある。過去形なのだ。
つまり、今のティールには当てはまらない場所?
「過去のティールが隠れ場所として、使っていたところにあるってこと? そんなとこ、思い付く?」
と、ティールを見てみるが、彼はコーヒーを片手にこちらを見つめるばかりだ。特にこれといった場所は思い付かないらしい。
なんだ。もう少し、範囲を絞れってか。いいよ、やったろうじゃないの。
先程は、サフィアさんは関係ない……と言ってしまったが、この手紙はあくまで、サフィアさんが書いたものだ。サフィアさんの知ることしか書けないはず。
現に、今まで巡った所は、サフィアさんが生きていた頃、ティールとの冒険で巡った所だった。
「そうだな……サフィアさんがご存命だった頃、ティールがよく使ってた隠れ場所……とかは? どう?」
私の問いかけに、しばらくは考え込む様子を見せるものの、やがて、ティールは黙ってコーヒーを飲み干す。そして、空になったコップを静かに置き、どこか気まずそうな表情になりつつも、ぼそっと呟いた。
「………………父上のところかも」
「え? ブライトさん?」
「正確には、父上の執務室。……あの頃、よく行ってたんだ」
「隠れ場所として? なんで?」
「理由は色々あった。……母上から逃げるためとか」
ちっさい頃もセイラさんから逃げとるんかい! なんなのだ、こいつ!?
「あ、えと、勘違いしないで? 不仲だったとかではないから。……母上の大切なものをスイが壊した時とか、注射が嫌で逃げ出した時とか。……母上から逃げる以外にも、その、助けてほしいとか、隠れたいって思った時に行ってたんだよ」
幼い頃は随分とブライトさんに懐いていたんだな。……それがなぜ、あんな拗れ方をするのやら。解決したとはいえ、謎すぎる。
「それに朝、話したあれの時も」
「幽霊疑惑のやつ?」
「そう。影と鈴の音を聞いた当時も……真っ先に父上のところに行ったんだ。だから、子供の頃によく使った隠れ場所は……そこかな、と」
これ以上は照れ臭いのか、無理矢理、話を遮るように残ったサンドイッチを手に取り、食べ始める。
「なるほどな。……嫌々してたくせに、案外、ブライトさんのこと好きだったんじゃん。今更だけど、ティールが素直になれば、もっと早くに解決してたんじゃないの~?」
「う、うるさいな! 今はどうでもいいだろ!」
思春期特有の素直になれない時期と被ってしまったが故の拗らせ方だったのだろうか。何とも言えない話である。
……けどまあ、素直になれない理由はあるわけだし、一概にティールがどうこうすれば~という話でもないけれど。
なんて……たられば話はさておき。
「じゃ、行ってみる? ブライトさんの執務室」
「そうだね。今、父上はいないみたいだし、行くなら今かもね」
「残念だったね、いなくて」
「好都合だよ!!」
あっはは! 照れちゃって、可愛いなぁ?
ぷんぷんするティールを適当にあしらいながらも、私達は次の目的地を定めた。向かう前に片付けしないと……と、思ったのだが。
「ベルトにやらせるから大丈夫だよ」
というティールの言葉に甘え、そのままにして、ブライトさんの執務室へと向かうことにした。

アルベルトさんの話によれば、ブライトさんは今、仕事で部屋にはいない。だから、黙って部屋を開けてしまっても問題はないとは思う。……が、流石にそんなことはできない。仮にいたら、非常識のなんでもないし。
私は控えめにノックをしてみる。しかし、返ってくるものはない。
「うん。……本当にいないみたいだね」
「……ねぇ、ラル? 今更なんだけど、いないってことは、鍵かけてるんじゃ」
普通なら、そうかもしれない。大切な資料等もあるだろうし、留守の時は施錠してても、おかしくはない。
「でも……ここが正解だとしたら、閉まってないと思う」
私はドアノブに手を掛け、ゆっくりと扉を開けてみる。どこかで引っ掛かる手応えもなく、すんなりと扉は開かれた。
無人の執務室は人気がないせいか、はたまた、無機質な空気のせいか、室内はひんやりと冷たく感じる。
「ほ、本当に開いちゃった。大丈夫なのかな、これ……大切なものとか、出しっぱなしになってないよね?」
日頃の真面目さからか─心配性というか、職業病とも言えるかもしれない─ティールは、確認するように辺りを見回す。
ティールは大して気にしていないようだが……人がいないとはいえ、寒くないか、流石に。
誰もいない部屋とはいえ、不自然に冷気が漂っているように感じる。扉を開けたというのに、そちらへと流れる様子すら感じない。
ブライトさんの得意属性は、氷属性だと聞く。しかし、その本人はここにはいない。そもそも、本人がいたとして、氷属性の技を使う理由も分からないが。
と、なればだ。思い当たる原因は一つしかなかった。
「もしかして……セツちゃん、いる?」
私の呼び掛けに応えるかのように、部屋全体に纏わりついていた冷気が一ヵ所に集約していく。そして、見慣れた剣の姿になると、ティールの手元へと収まる。
突然、現れたセツちゃんに、ティールも驚きを隠せないらしく─それでも、ちゃんとセツちゃんを手に取れるのは日頃の慣れか─、戸惑いながらセツちゃんを見下ろしている。
「え、セツ? なんでこんなところに」
『はわ……るー、なんでわかたの? せっちゃ、かくれてたのに』
セツちゃんはセツちゃんで、見つかったことが驚きだったらしい。ティールには見つからなかったのに、とでも言いたいのかもしれない。
「なんでって……寒いんだもん、この部屋」
「え、寒いかな?」
『むゆ。……せっちゃ、そんなにほんき、だしてない。れーぼー、がんがん、これくらいのすずしさ』
それが寒いって言ってるんだけどな。
寒さ耐性の高いティールは、あまり気にならなかったようだ。もし、ティールだけだったら、セツちゃんの存在に気づけなかっただろう。
「で、セツはここで何してるの?」
『ゆ? あのね! いーちゃのたのまれごと、してたの! ここのおへや、おまもりちゅう! へんなひときたら、こおらせるおしごとなの!』
つまり、ブライトさんの言い付けで、不審人物の侵入を防いでいた……と? 聖剣を防犯機器として使用するのは、どうなのかと聞きたいが、それはそれとして。
「ぼくらは入ってよかったのか? お前、ここを守ってたんだろ?」
『いーちゃ、てぃーと、るーは、いいっていったの。だから、せっちゃ、なにもしなかった!』
ブライトさんは元々、私達の訪問を知っていた……? ってことは、ここにあるのかもしれない。
「……父上が事前に準備していたってことは、協力者、なんだね」
「セツちゃんが嘘を言ってなければ、そうなるかな」
『? せっちゃ、うそ、ついてないよ!』
と、宣言するが、嘘ついていても、いなくても、セツちゃんはいつもこんな感じなので、実際のところ判断はつかない。それは長年、付き合いのあるティールも同じのようで、呆れた表情を浮かべつつ、首を振っていた。
まあ、なんだ。今は嘘か真かどうでもいい。証と手紙を探さないとね。
……とは、思うのだが。
特にそれらしい隠し場所があるようには思えない。机の引き出しや棚の引き出しを勝手に開けるわけにもいかないし。
なんなら、幼いティールはこんな隠れ場所もなさそうなところのどこに隠れていたのだ。
「これ、どこにあるんだろ?」
「……ぼくだけの隠れ場所にあるんだろ、多分」
ティールはそれだけ答えると、ブライトさんの仕事机に一直線に向かう。そして、椅子をどかし、机の下に潜ったと思えば、すぐに顔を出した。
「あったよ、箱と手紙」
「君のとっておきの隠れ場所、そこなの?」
『てぃー、まえのゆーれーやしきでも、つくえのした、かくれたの! だから、つくえのした、てぃー、かくればしょ!』
「そうなの? つまり、昔からの定位置ってこと?」
「君達、一旦、黙ろうか」
あっはい。
ティールは箱を机の上に置き、手紙を広げる。私も覗き込む形で手紙に目を通してみる。
『ここはあっさり見つけられたかもね。隠す場所がなくて、こちらが困ってしまったくらいだもの。もう少し、飾ることを覚えた方がいいわね、あの子は。

さて。次が約束の場所。
あの場所は私の一番の宝物箱のような所。
そこで私は待っているわ。』
……そう、手紙には記されていた。
「今まで以上にヒントがないのでは。ティール、君の記憶が頼りだぞ」
「最初からそうだろ、これ。……まあ、そういうものなのかもしれないけど」
ティールは手紙を一度、机の上に置くと、今度は箱を開ける。そこには今まで通り、小さな石が入っていた。今度は紺色のようだ。
今まで手にしてきた石、どれも寒色系……それも、青色ばかりだ。何か意味があるのだろうか。
「今回のも適当にはめとくよ」
ティールは、ブローチの窪みにパチンと小石をはめる。そして、再び手紙を手に取ると、次の場所がどこなのか考え始めた。
今回、私は何かできる訳じゃなさそうなので、今一度、ブライトさんの執務室をぐるりを見回してみた。
前回と今回、必要なかったから─前回に関しては、ゼニスさんが側にいたからだけど─使わなかったが、あのブローチ……羅針盤も謎である。何かしらの仕掛けがあり、手紙、或いは箱に反応して、道を示してくれるのだろう。しかし、それが何なのかは分からないし、ティールも知らないようだった。
となれば、サフィアさんが今回のために用意したヒント……なのだろうか。
手紙の内容的に次の場所がラストっぽいのに、なぞが解明される感覚はない。むしろ、深まるばかりというか、掴めそうで掴めないというか……何とも、もどかしい気分である。
サフィアさんがこの遊びを提案した理由。
私達の道を示す役割のある羅針盤
そして、なぜか協力者してるブライトさん。
「……そういえば」
ブライトさんが協力者と確定したのなら、ブライトさんはサフィアさんと事前にコンタクトを取ったことになる。幽霊とどうやって?
そもそも、非現実的な事象に興味もなさそうなブライトさんがなぜ、こんなことを。
いや……その疑問を簡単に解決する方法はある。この一連の出来事全て、ブライトさんが起こしているという答え。
実際、ゼニスさんも客観的に考えた時、そうだと思ったわけで。現実的な答えとしては、正しいのかもしれない。
……けど、あの誠実で真面目なブライトさんが身内とはいえ、故人の名を騙り、こんなことをするとは思えない。ましてや、ティールの苦手なお化けや幽霊の存在をちらつかせるようなことまでするだろうか?
そこを考え出すと、ブライトさんの主犯ではないと思えてきてしまう。
そうなると、やっぱり、故人のサフィアさんとコンタクトを取り、今回の件の協力を受け入れたってことになるのだが。
「……う~ん。わっかんねぇ」
考えたところで、何も分からないのが現状だ。推測の域を出ないと言うか……むしろ、想像の域すら出ていないような。
思考の堂々巡りをしていれば、控えめに肩を叩かれる。そちらを振り返ってみれば、ティールが首を傾げながら、小さく笑っていた。
「考え事、終わった?」
「終わってないけど、終わった。そっちは? どこか分かったの?」
「うん。……というか、一つしか思い当たらないんだよね」
「へぇ? どこなの?」
「外だよ。王宮の外」
「庭とか?」
「いや。ここの敷地は出るかな」
おぉう。そっちの外かよ……!



~あとがき~
駆け足感が否めないですが、許してちょ←

次回、二人は約束の場所を目指し、王宮の外へ!

特に語ることもない……そうだなぁ。
ブライトは、少し前の回想でスイとセツ両方使ってましたが、やっぱり、セツとの方が相性がいいので、使用頻度が高いです。別に優劣があるわけではないんですけど、ブライトとしては馴染みやすいんですよね。なので、今回の部屋の守備もセツに頼んでました。
同じ理由で、ティールはスイを多用しがちです。アルドアーズは半々って感じかな……?

ではでは。