satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第386話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ブライトの執務室で手紙と証を見つけ、次なる場所、約束の場所へ!
そろそろ、手紙の主とご対面できるですよ。


《L side》
ティールの案内の下、王宮をこっそり抜け出した私達がやってきたのは、街から少し離れた丘の下だった。
空は既に日が暮れ、薄紫色に染まり、点々と星が輝きつつあった。
「ここにサフィアさんの宝物があるの?」
私とティールは丘の上を目刺し、ゆったりとした坂を上っていきながら、ティールに問いかける。
彼は私の前を歩きながらも、こくりと頷く。
「ぼくの記憶が間違ってなければね。……昔、お祖母様に連れられた時、『ここはおじいちゃまとの大事な場所なのよ』って言ってたんだ」
「おじいちゃまとの……アルドアーズさんとの?」
「うん。……まあ、お祖母様が亡くなった後、ぼく一人で何度か来てるけど、ここでお祖父様は見たことないけどね」
ふぅん?
「お祖母様、ぼく以外の人にここを教えたことないんだって。だから、お祖母様の言う宝物はここだと思うんだ」
「……ティールは、サフィアさんの宝物に見当がついてるの?」
「一応。多分だけど……っと、見えてきた」
そう言うと、彼はとある場所を指差した。その先には、大きな木が一本と、その側にベンチが備え付けられている。
どうやら、あそこが頂上のようだ。
そこに到着してみれば、街が下の方で小さく映り、その分、空が近くに感じられた。
ここ、思った以上に街から離れているのだろうか……もしくは、思った以上に高いのか。少なくとも、あっちの方に王宮は小さく見えるけど。
「ラル、その辺に例のやつ、ありそう?」
おぉっと、そうでした。景色を堪能している場合じゃないね。手紙と小箱を探さないと。
ティールに言われ、辺りを見回してみるものの、それらしきものはない。ついでに言えば、手紙に「待っている」とあったはずのサフィアさんの姿もない。
文字通り、サフィアさんが待っているとは思ってなかった。だって、もう亡くなっているのだ。そこに姿が見える方がおかしな話である。
とは言え、何かしら目印というか、今までの正解を記した何かはあると思ってたのだが、それらしいものは、何一つとして見当たらなかった。
……もしかして、ティールの思っていた「約束の場所」とサフィアさんの思う「約束の場所」が違う可能性がここに来て浮上するのか?
「仮にですけど、他に思い当たる場所ってあるの?」
「え? 他ぁ? いやぁ~……ん~? いや、特に、は」
そうかぁ。じゃあ、武器庫の時みたく、謎解き要素でもあるのか……いや、パッと見た感じ、そんな文章なかったように思うが。
私はポーチから手紙を取り出そうとするも、手紙ではなく、別の方に目がいってしまい、伸ばした手をぴたりと止める。
「あれ、ブローチが光ってる」
「! もしかして、最初のところみたいに何か示してくれるかも!」
なるほど? その手があったか。……困った時の羅針盤ってね。
ティールに促されるまま、私はブローチを取り出してみる。ブローチは最初の謎解き時に見たように白色に淡く発光している。そして、その光は一つの線となり、一点を指し示した。
「そこの木の下……っぽい? 地面、かな?」
「タイムカプセル……?」
いや、知らんけども。まあ、辿れば分かるか。
二人で光の先へ行ってみれば、予想通り木の下を示していた……わけではなく、私達の死角となる場所に建てられた、小さな石碑を示しているらしかった。
その石碑は、誰かが定期的に手入れをしているのか、目立った汚れや傷はなく、綺麗な状態を保っている。
「何の石碑なんだろ」
「……ここ、お祖母様の名前」
しゃがんでそれを見ていたティールがぽつりと呟く。その言葉に私は首を傾げる。
「……? サフィアさんの? お墓ってこと?」
「いや、そんなはずない。王族の墓は決められた場所にちゃんとあるし。うぅん?……まあ、いいや。で、ブローチはこの石碑を?」
「うーん……と、ちょっと待ってね」
再び、ブローチに目を落とす。ブローチから伸びる光は、一直線に石碑のすぐ正面の地面を指していた。
そこの地面を見てみれば、丁寧に均してあるものの、最近、弄られたような真新しい土の色をしていた。
「……掘ってみるか」
ティールの言葉に私も頷くと、二人してその場にしゃがんで、そこを手で掘り返してみる。掘り出し始めてすぐ、シンプルなアルミ缶が顔を覗かせた。周りの土を全て退かして、アルミ缶を掘り出し、蓋を開けてみれば、そこには最早、見慣れた手紙と小箱が収められていた。
「ビンゴ! やったね、ティール♪」
「うん。だけど……触る前に手を洗わないと。ちょっと待ってて」
ティールはなるべく、自身の服を汚さぬように懐中時計を取り出し、能力も併用して、ぽわんっと水の玉を空中に作り出してくれる。そして、すい~っと私の前まで持ってきてくれ、私も遠慮なく、そこに手を突っ込む。
元々はティールの技とは言え、ひんやりと冷たくて気持ちいい。
「いやぁ、便利だわ。どこでも手を洗えるもんね」
「……言う程、便利か?」
便利だよ! うちにはやんちゃ狐っ子がいるもん。外で汚れたら、遠慮なく洗えるじゃん。水は自然に返しても大丈夫だし。
「ラルのその感じだと、洗うのは手だけじゃないような?」
さあ、どうだろねぇ?
ティールのお陰で、手を綺麗になったところで、ようやく、サフィアさんの最後の手紙を読むことができそうだ。
ティールはアルミ缶に入っている手紙をそっと広げる。
『貴方なら、ちゃんと辿り着けるって信じてた。この場所を忘れないでいてくれて、ありがとう。とっても嬉しいわ。

私の予想だと、きっと貴方達の方が早いと思うの。だから、もう少し待っていてくれるかしら。
私の宝物を眺めながら、その時を待っていて。貴方達が一番の宝石を見つけた時が約束の時間だから。』
……とのことらしかった。
今までと違うのは、他の場所を示すような文章がないこと。つまり、ここが本当に最後の場所、なのだろう。
とは言え、サフィアさんはもう少し後にならないと、来てくれないらしいが。……もう少しとは、どのくらいなのだろう?
「……一番の宝石、か」
どうやら、ティールは何か思い当たる節があるようだ。しかし、それ以上を口にすることはなく、そっと小箱へ手を伸ばしていた。
ティールが開けた箱の中には、水色の石が入っていた。
「残りの窪みも一つだけ。……これで完成……なのかな」
ティールが石をはめ、ブローチを見てみる。しかし、何か変化があるようには思えない。……これも、サフィアさんが現れたら、分かるのだろうか。
「立ってるのもあれだし、座って待ってようか」
「うん。そだね」
ティールに促されるがまま、ベンチに腰掛ける。
その時とやらが何時なのかは分からないが、まあ、一人ではないだけ、ましである。
「ラル、なんかごめんね? 色々、連れ回しちゃって」
「そんなことは。むしろ、きっかけは私が持ってきたんだし、ティールが謝ることじゃないよ」
「それはまあ、そうなんだけど。でも、本当にお祖母様がやってることなら、巻き込んだことには変わらないかなって」
なんだ、そんなことか。
どこか申し訳なさそうにするティールの背中をぽんっと叩き、私はニッと笑ってみせた。
「気にしないで。いつものゴタゴタと比べたら、優しいもんでしょ。なんなら、遊びなわけだし」
「ラル」
「それに、王宮内とはいえ、ティールと一緒にあちこち回れて、楽しかったよ? 何て言うのかなぁ……? 子供らしい夏休みらしい……? うん、楽しい夏休みだったと思う! ほら、仕事ばっかじゃない夏休みなんて、初めてじゃない?」
普段、学生をする私達にとって、長期休みは格好の稼ぎ時……いや、探検隊らしい仕事をする絶好の機会だ。それ故、学生らしい休みをあまり過ごした記憶はない。もちろん、休み期間中、ずっと働き詰めってわけでもない。だが、記憶の大半は、どこかへ遠征に行っている。
それが、今年に限って、遠出はしているものの、仕事詰めではなく、程よく遊んだり、仕事をしたり。学生最後の夏休みでようやく、それらしいことをしたという実感が出た。
それはティールも同じ気持ちらしく、ふわりと、そして、楽しそうに微笑む。
「……うん、そうだね。ぼくも、楽しい夏休みだったと思う。君と……皆と、色んな所に行けたから」
「えっへへ♪ 考えてみれば、なんか、こうやって友達と旅行するの、初めてかも。仕事絡みとはいえ、それだけじゃないわけだし」
スプランドゥールで仕事もしつつ、だらだらもした。街を観光もしたし、祭りや花火だって楽しんだ。
海の国に来た後だって、色んなことに巻き込まれつつも、海に行ったり、王宮内でのんびり過ごさせてもらったり、こうして、─経緯はさておき─ティールと二人、仕事でもなく、遊んでいて。
「確かに。今までで一番、夏って感じがするな」
「うん。学生がそれでええんかって気もするけどね」
「最後だからな。いいんだよ、きっと」
夏はまだ、終わらない。
まだ少し、残っている。
その残った期間で、学生らしい夏休みを過ごせるといいな。
ティールと……そして、皆と。



~あとがき~
学生でもあり、探検隊でもある二人は学生最後の夏休みで、ようやく学生らしい夏休みを過ごせたみたいです。

次回、サフィアの宝物とは。

ようやく、終わりが見えてきた……(笑)
まあ、見えただけで、すぐに終わるわけじゃないんだけど。なんで、もう少し、お付き合いくだされ……!

ではでは。