satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第401話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
『赤獅子』の謎に迫る回想の後編です。前回に引き続き、アルドアーズ視点なのじゃ。


《Ar side》
どのくらいの時間が経ったのだろう。四六時中、薄暗い部屋に閉じ込められ、男達の相手をしている俺の時間感覚が狂ってしまったため、今が何日の何時なのか。拐われてからどのくらい経ったのかさっぱりだった。
男達の遊び相手も楽なもんじゃない。
適度に痛め付けてくるし、なんかよく分からないものも飲まされたり、打たれたり。
自白剤なのか、単純に弱らせるための毒なのか。その類いに慣れすぎている俺にとっては、薬自体が弱すぎたのだろう。体に出るだろう効果も、副作用すらもなく、マジでどんな反応をすればいいのか分からなかった。
いや、見当すらつかなかったから、とりあえず力なくその場に倒れている演技で誤魔化していたけど。
……つか、これ、誤魔化せてるんですかね?
さっきもなんか飲まされたので、適当に苦しむ演技して、ぶっ倒れてるんだけど。
気持ち悪いとか、どっか痛い、苦しいとかもないし、焦燥感に駆られることもない。
ただの水を飲まされてるんだろうか……それなら、苦しむ演技も、ぶっ倒れてる演技も無意味なんだが。
「──!」
ヤバい。なんか喋ってるけど、なんも聞こえん。
……はっ! これが薬の効果……んなわけあるかーい。単純に殴られ過ぎで耳がアホになっただけだわ。小声で話されると、何話してるか聞こえない。
「──」
初日に俺と話していた男が俺に近寄り、俺の髪を掴み上げ、これでもかと顔を近付けてきた。
「で? 話す気になったか?」
「……あは。なったんなら、泣き叫んで、許してくださーいって言ってると思うよ?」
「はん……強情で馬鹿王子め。仕方ねぇ。使えねぇ駒は壊すしかねぇな」
掴み上げていた手を乱暴に離し、片足で踏みにじるように俺を踏みつける。今回は本気のようで、どんな方法かはさておき、数分後にはさくっと殺られてるだろう。
……ここがタイムリミットかぁ。じゃあ、最後の抵抗でもするか。
「あんたらの力がなかったから、馬鹿な王子の口を割れなかったんだろうが。三下の下等集団さん」
「……あ?」
踏みつけていた足を軽く上げ、冷酷な目で俺を見下ろす。それに対し、俺は皮肉を込めてニヤリと笑ってやる。
チェックメイト。俺の勝ちだ」
「はん! 何を言ってやがる。詰んでるのはそっちだろうが」
俺が? いや、お前だろ。
遠くで仲間達の声が聴こえる。俺の大切な仲間の声が。
「──置いてってごめんな? 水泉、雪花。それと」
部屋の出入口から轟音と共に、勢いよく数人の男達が吹き飛ばされる。当然、何事かと部屋にいた奴らは全員、音のした方を振り向いた。そして、そこにいた人物を目にした奴らからどよめきが起こる。
「なっ……なぜ、ここがっ!?」
「待ちくたびれたわ。あんの脳筋野郎め」
返り血なのか自身の血なのか、全身血まみれの男──ルゥが鬼の形相でこちらを睨み付けていた。
その辺に転がっている男の頭を掴み上げると、ボールのように軽々とこちらへぶん投げてくる。
「くそっ!」
親玉の男は慌てて避ける。投げられた男は周りの安っぽい家具を壊しながら、その場から動かなくなった。
しかし、怒り狂ったルゥがそれだけで止まるはずもなく、周りの奴らからの攻撃を受けながらも、持ち前の筋肉で次々と蹴散らしていく。そして、親玉の前まで辿り着くと、間髪入れず、力任せに殴った。何度も。何度も。
うわぁ、痛そう……あ、何か今、変な音聞こえた気がする。どっち? どっちの骨がいっちゃった音なの??
『あずだー!』
『あず~!!』
「お、やっぱ、ルゥんとこ行ってたか」
水泉と雪花は俺を周りを不安げに飛び回っていた。この部屋に二振りの力を感じなかったし、声も聞こえてこなかったから、ここにはないんだろうと思っていたのだが。
「俺が気絶する前に俺から離れたろ。ナイス判断だったよ」
さふぃーいたら、さふぃーんとこ、いってたー!!』
『でもでも、いま、いないから、るっちゃのとこ、いったの。……いくの、だめかなっておもったけど』
『ね! あずとるっちゃ、このまえ、ぼこぼこして、ふんってしてたから!』
あぁ、殴り合いの喧嘩してましたもんねぇ。そら、流石のこいつらでも気遣いもするわ。
……さて、現状は?
辺りを見回してみれば、ルゥが殴り込みしたお陰か、周りにいた奴らは全員、その場で伸びていた。親玉の男も現在進行形でルゥにぼっこぼこにされているし、なんとかなったと見ていいだろう。
「……はぁっ……はぁ……」
「ルゥ」
「アズ……遅くなってごめ─」
ルゥがこちらに寄ろうと立ち上がった瞬間、ぐらりとその体が揺れる。そして、支えを失った人形のようにその場に力なく倒れてしまった。
「ルゥ!」
俺が名前を叫ぶのと同時に、ずっと感じていた手首の圧迫感が消える。不思議に思い、背後を見れば、ふてぶてしい表情を浮かべたぶち模様のウサギ……ルゥの精霊、クルスがいた。
「クルス、お前が切ってくれたのか」
「ぷ。……ぷぅ!」
「……そうだな、ごめん。そんなこと言ってる場合じゃないよな。……雪花、俺の荷物探してこい。多分、どっかにあんだろ」
『あいさー! でも、あずは? だいじょぶ?』
まあ、大丈夫ではないが、目の前で倒れてるこいつよりは大丈夫。
「俺はいいから、早く行け。……クルス、お前にも頼んでいいか? 雪花が見つけても運べないかもしれないからさ」
「ぷぅ」
仕方ねぇな。とでも言いたげに、部屋の出口へと駆け出していく。そして、雪花もクルスの後を追いかけるようにして出ていく。
「そんでもって俺はっと……来い、水泉!」
『あいっ!』
水泉を手元に呼びつけ、ルゥの元へと近寄った。さっきまでは遠目だったから分からなかったが、ルゥ自身も怪我が酷い。あちこちの傷口から出血しているし、肩口も出血……というか、綺麗に外れてる?
「助けに来るとは信じてたけど、ここまでの怪我をしてまで来いとは思ってねぇよぉ~……」
なんなんだ、この筋肉馬鹿。阿保なのか。もっと頭のいい救出方法あるだろ!!
「……けほっ」
「なんだ、起きてんの。じゃあ、そのまま気合い入れて起きてろ。水泉」
『ん! じょーかのみずっ!』
能力を使うのは好きじゃないが、この際、四の五の言ってられない。
水泉が作り出してくれた水─水泉曰く、回復作用があるらしい─でルゥの傷口を清めていく。
本当なら、ちゃんとした道具と知識のある人にやってもらった方がいいんだけど、どっちもないし仕方ない。
「はーい。じゃあ、今から手当てすっから。動くなよ」
水泉の水が染みたのか、ルゥが身動ぎする。気持ちは分からなくはないが、動かれるとこちらも手元が狂うし、何より傷口が開きかねない。
俺は軽くルゥの頭を叩き、大きなため息をつく。
「あーも! 動くなっての。……ったくよ〜? なぁんで、あんな脳筋な助け方しかできないの。もっとやり方があるでしょうが」
「…………わりぃ」
「……? それ、何に対しての謝罪? 無茶な助け方か? 喧嘩の方?」
ルゥはバツの悪そうな表情を浮かべ、俺から目線を外すと、ぼそっと呟く。
「……どっちも」
この状況でそれを言うのは、なんか狡くないか。いや、あの聞き方をした俺も狡いか。でも、ルゥらしくもある。
頭いいくせに、頭悪いよ。ほんと。
「……あっはは♪ まあ、喧嘩の方は許してないけど、礼は言っておく。……なんてね。ぶっちゃけ、ルゥなら絶対に来るって思ってた」
「……あ? なんで。この前、殴り合いの大喧嘩したのに? しかも、ついさっきまで、互いに口も聞かなかったじゃねぇか」
「関係ないね。お前は約束を破らない。俺にどう思われていようが、サフィとの約束……『アズをよろしく』って約束は守る。……つか、お前なら? サフィとの約束がなくも、助けてくれるだろうけどねぇ」
俺がルゥを信じて疑わない姿勢に疑問があるようで、訝しげな視線を向けてきた。説明してやってもいいんだが、いかんせん、その辺りをきちんと話すのは、かなり照れ臭いものだ。
「自分の胸に手を当てて考えろ。それが答えだ、馬鹿」
「あぁ? なんっだそれ……ってぇ!? おまっ、もっと優しくやれって!」
手当中に大声出すからじゃないの?
というか、こっちも怪我人ですけど。
「怪我人に手当させるドS野郎に優しくする義理なんてない。……というかさぁ、どんだけの無茶をすれば、ここまでの大怪我を負うの。肩とかどうした。向かないはずの方向向いてますよ」
「? なんもわかんねぇけど」
「……あ、そう」
戦闘による興奮状態が冷めてないのか、あちこち痛すぎて何がどうなってるのかさっぱりなのか……まあ、どっちでもいいけど。はよ、病院行かないと駄目だな。素人目にも分かる。俺じゃ手がつけられません。
「こうなる前にセーブかけなさいよ、この馬鹿は」
「さっきから馬鹿しか言わねぇけどよ……それはアズもだろ」
「えぇ? どの辺が?」
「ここの奴ら、俺のことを聞き出そうとしてたんだろ? あいつらの標的は俺なんだから。だったら、適当言って、逃げりゃよかったじゃねぇか」
「まあ、それを考えなかったつったら嘘になる。けど、それをしても俺は殺されてたろ。……いっちょまえに交渉してきてたけど、んなのに乗るわけないし。大体、それがなくても言うわけ無いじゃん」
「なんで?」
「相棒を売る理由がない」
「……!」
「確かに、俺はお前の過去なんて知らない。それが原因で大喧嘩中だけど、お前の相棒をやめたつもりはないし、友達を売る理由にもならないよ。……ぶっちゃけ、過去を話してないのは、お互い様だし?」
ルゥはこの返しを想像していなかったようで、目を見開き、かなり驚いている。俺からしてみれば、当然のことなんだけどな。何を今更、驚くことがあるのだろう。
「仮にお前を嫌いになったとしても、悪党に情報も、お前自身も売らないから安心しろ」
「……アズ」
「ふふん♪……とは言ったけど」
俺は渾身の笑顔を浮かべ、手当したばかりのルゥの腕を引っ叩く。それはもう大変いい音が辺りに響き、大変痛そうで。
流石のルゥも突然の痛みに耐えるように目を閉じ、落ち着いた頃に上半身を起こして、俺のことをキッと睨んできた。
「いってぇな! なんだよ、いきなり!」
「今後、絶対に売らないって断言する俺に、なぁんにも話さない……は、ないんじゃないんですかねぇ? つか、俺、知ってるから。お前が俺の過去について、軽く知ってること。サフィが話したろ?」
俺は絶対に言うなとサフィに釘刺したはずなのだが。まあ、あのサフィのことだ。これからのことを考えて、もしもが起きないようにと思ったのだろう。そういうサフィの気遣いは嫌いじゃないけど、除け者にするのは嫌だなぁ?
「んなぁ!? な、なんで、それを……って、痛い痛い! お前、ここぞとばかり、八つ当たりしてるだろ!?」
「えぇ? 八つ当たりなんて、人聞きの悪い。手当てだよ、手当て♪」
「嘘をつけ! お前ってやつは、本当に……ぐっ!」
ルゥの体がぐらりと揺れ、俺の腕にしがみついてきた。八つ当たり……いや、手当てが原因で気が遠くなったわけではなさそうだ。
「えぇ〜……? 今度は何?」
「っ……毒、が」
「はぁ? 毒?」
「ここ、来る前に受けた毒が、今になって体に回り始めた……気合いで抑え込んでたのに」
いやいや……気合いで毒は止まらんよ、ルーメンさんよ。
しかしまあ、先程から水泉の回復水の効きも悪くなってきている気はしていた。毒のせいだったか。
「冷静に考えてる場合じゃないな。……毒を気合いで抑え込めるわけ無いでしょうが。何したの、君は」
「なんもしてねぇわ。……くそっ」
「くっそ丈夫な体だな、羨ましいよ。……にしても、困ったな。俺、解毒剤は持ってない」
俺が毒に耐性があるばかりに、持ち歩く癖がないのが仇になったか。そもそも、その辺の道具の用意は普段からルゥに任せっきりだ。
ルゥよりは元気のつもりだが、流石にこいつを運ぶ元気はない。荷物の中に転送系の道具があるなら、こいつだけでも送ってやれるけど……そんな便利道具、俺の鞄にあるんだろうか。入っていたか覚えがない。
『あずー! おにもつ、みつけてきたー!』
「ぷうぅ……!」
クルスが鞄を引き摺りながら、宙を舞う雪花と共に帰ってくる。そして、雪花は剣に戻ると、どこか嬉しそうにしながら報告を続ける。
『あとね! るっちゃのおなまか、つれてきた! せっちゃ、えらいでしょー!?』
「ルゥのお仲間?」
誰だ、それ。つか、なんだそれ。
雪花とクルスに遅れて、こちらに向かってくる足音が複数聞こえてくる。そして、ルゥを探すような声も聞こえてきた。
「仲間ってのは……救助隊、か?」
『うん! なんかね、いろんなどーぐ、もってた!!』
本来はルゥが俺を助けるために呼んだ応援ってところか。今はこいつを助けるための応援って気もしなくはないが。
いやはや、本当に頭がいいんだか、悪いんだか。
「馬鹿な相棒だよ、全く」



〜あとがき〜
終わった!

次回、過去編を経て、感想会。

アルドアーズとしては当然なのですが、この真っ直ぐな姿勢がルーメンさんにとって、驚きでもあり、同時に彼の心を動かしたというか……
本編では書きませんが、この事件、出来事がきっかけで、ルーメンさんは自身の過去をアルドアーズに打ち明けるし、それを聞いたアルドアーズは臆することもなく、ルーメンさんを受け入れます。
そんなアルドアーズの存在がルーメンさんにとっても大きな存在……らしいのですけど、どうにもその辺は本人は伝えていないご様子。そして、今後も伝える予定はないらしい。(相方談)
いやまあ、アルドアーズのあの性格なんでねぇ……ルーメンさんも言ったところで面倒くさいなって思ってるんでしょうね。

ではでは。