「楽しませてよ!」
ずらりと並んだ知らない人たち。その人たちの目線の先には、リーちゃんの姿。
「どうすればいいんだろう? すーくん……どうしよう?」
『おれが蹴散らしてもいいけど?』
怖いこと言うな。
『じゃあ、聞くな。つか、自分で頑張るんじゃないのか?』
一応、聞いただけ。私が頑張るに決まっているでしょ……あぁ……どうしよう?
『頼りない』
そこまで言わなくても……ひどい。
『これ以上何を言えと?』
は、励ましの言葉とか?
『棒読みでよければ』
…………いいです。余計に惨めになる。
そのまますーくんは黙る。
私が考えなきゃ……えっと……んと……
「何か道具とかない?」
『……あ? そうだな……ちょっとだけならあるが……』
ほぅ……どんな?
少しだけ考え込んだすーくん。何か思い出したかのように、教えてくれた。
『飛び道具とタネ類……武器になりそうなのはこれくらいかな』
そっか……よし、いける!
「すーくん、私の言う道具があるか探してくれない?」
『了解』
私とすーくんは、リーちゃん奪還作戦の準備を始めた。
待っててね、リーちゃん!!
「お前、どこからきたんだよ?」
「なんかいいもん持ってないのかー?」
ここまで近づくと何しゃべっているのか、はっきり聞こえる。どうやら、リーちゃんのこといじっているみたいだ。
『こっちだ』
はい!
すーくんの指示通りに進んでいく。
私達は、(……と言ってもすーくんは、出てきてないけど)敵に見つからないようにリーちゃんに近づいていく。
この場所は最後のフロアなのか、大広間。出入り口も一つだけ。
私は周りの草木に隠れながら進んで行く。
うぅ……リーちゃん、どこぉ?
『ここらへんだな。そっから覗いてみ?』
見つからないかな?
『大丈夫だろう。ここにいる奴らはそこまで手練れじゃない。お前逹を見つけた奴の気配がないから……下手なことしない限り大丈夫』
私達を見つけた奴?
『えっと……グラエナ……だったかな。普通のグラエナ』
そっか……鼻がきくのかな。でも、いないならチャンスだねっ!
私はすーくんの言う通りに草木の隙間から覗いてみる。
リーちゃんの後ろ姿が見えた。リーちゃんの目の前には、十人前後の敵と思われる人たち。
「いた……!」
『やっぱり、グラエナはいないな。でも、あれでいいのか?』
うん、大丈夫……だと思う。
すーくんは、少しだけ心配そうに私の様子をうかがったけれど、何も言わなかった。
「………ありがとう、すーくん」
『おれが危険だと思ったら、嫌でも出てくるからな』
わかった。
よし、行こう!
私は“ドロンのタネ”を食べると奴らがいる、フロアへと入って行った。
「リーちゃん、リーちゃん!」
「ふぇ!?」
あぁ……大きな声出さないで!?
ゲッ! なんかこっち見てる~……
「なんだ?」
「あ、いえ。何でもないです」
リーちゃん、ナイス♪
リーちゃんは相手に聞こえないくらいの声で話始めた。
「どうしてここがわかったの?」
「話はあとだよ。リーちゃん、すぐに動ける?」
「うん、動けるけど……どうするの?」
「私の合図で後ろに走り出して。……いくよ?」
リーちゃんは少しだけうなずいた。
……一、二の三っ!!
私は持っていた“ばくれつのタネ”その他もろもろを敵に投げつけた。
同時に“ドロンのタネ”の効果も切れた。
「……っ! リーちゃん、行こう!!」
「うんっ!!」
私達が走り出したと同時に“ばくれつのタネ”の爆発する音がした。
「なんだ、これっ!?」
「ばくれつのタネっ!? 誰だ、これ投げたのはっ!?」
私ですっ!! なんて言ってられないんだよね。とにかく、逃げなくちゃ!!
でも、私……前……見えないんだよね。リーちゃんが前走っているから……まぁ、またはぐれるよりましか。
「……うわぁっ!! 誰かにぶつかるっ!!」
誰かって誰ぇ!!
確かめるすべもなく、リーちゃんは誰かにぶつかった。
「リーちゃんっ!! 大丈夫……なわけないか……えっと……」
リーちゃんはぶつかった衝撃で目を回している。その近くにぶつかった相手らしき人影。そのそばには、ピカチュウが。
「…………」
ヤバい、とりあえず謝ろう。
「ごめんなさいっ!! ちょっと、敵に追われてて……その、大丈夫ですか?」
「……ふ、あははっ!! ダサいよっ! これくらい避けないと……あはは♪」
………なんだ、この人?
そんなこと言っている間に敵の気配がした。しかし、そんなことは気にならないのか、はたまた気づいていないのか、ピカチュウさんはずっと笑っていた。ひとしきり笑った後、笑いの波が収まったのか、何度か深呼吸をする。
「ふぅ……えっと、君、追われてるって言った?」
「え、あ、はい」
「あいつらかな?………ねぇ、楽しませてよ!!」
やっと追いついた敵に向かって言い放った。敵に向かって楽しませろ、とは呑気なのか度胸があるのか……
言われた方も戸惑っているらしく、お互いの顔を見合う。
というか、この人、誰……?
もしかして、私、さらに危険にさらされているの……!?
~あとがき~
長いっ!Σ( ̄ロ ̄lll)
いつも以上に長い!!……気がするのは私だけかな。
とりあえず、リーちゃんはイブと合流したよっ♪ よかったね、リーちゃん。
次回、謎のピカチュウが大暴れw
てか、誰だかわかるよね(;・ω・)
ではでは!