satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第372話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、パーティー会場にゴーしました。
駆け足感否めないですが、許してくれ。この辺、トントン拍子で進むんや……!


《L side》
快適な馬車移動の末、目的地である貴族様所有の古城へとやってきた。
辺りは広々とした草原に囲まれ、メルヘンチックというか、同じ海の国なのだが、異国の雰囲気を感じる。海辺が近くにないせいだろうか。
私達の他にも多くの貴族らがお呼ばれしているようで、多くの馬車が城の近くに停められていた。
王族であるティール達は私達より先に会場へ入ったため、私達とは別行動の予定だ。とはいえ、途中で合流する瞬間はあるだろうけど。
……よくよく考えたら、王様も呼ばれるくらいのパーティーだもんな。お偉いさんもたくさんいらっしゃるのだろう。……まあ、見分けつかんけど。何か粗相したら、どしよ。こえぇ~……!
「あんま緊張しなくていいぞ、ラル」
「そうですよ、ラルさん♪」
「……そうは言うけど、こういうの初めてだし、するなって言われる方が無理だよ」
「つっても、パーティーに呼ばれてんのはツバサだし? 俺らはオマケだぜ。そこまで身構える必要ないって~♪」
「ですです。気楽にいきましょ~う♪」
レオン君はともかく、ツバサちゃんは気楽にいったらアカンのでは?
「……あ、レオン、ラルさん。私達もそろそろ行きましょう♪」
ひえっ!? もう行くんですか!?
「だーいじょぶだって! 堂々としてろ~?」
レオン君が慣れた様子で馬車を降り、次に降りるツバサちゃんをエスコートする。
私もそんな二人に続き、馬車を降りた。
手続きもスムーズに済ませた後、私達がパーティー会場へと足を踏み入れれば、パーティーの参加者の視線はこちらに──ツバサちゃんに注がれた。
噂のせいなのか、ケアル家という家名のせいなのか。はたまた、白の魔法使いという珍しい見た目のせいなのか。
その視線の意味は様々だ。興味の目、奇異の目、好意の目、畏怖の目……様々な視線が一度にツバサちゃんへと向けられる。
これが貴族社会なのか……単なる偏見の目なのか。
「……ラル。大丈夫だよ、ツバサは」
私が周りの雰囲気に、体を僅かながら硬直させたのを気付いてか、ボソッとレオン君が呟き、小さく笑った。
私を安心させるためだけの言葉かとも思ったが、それは間違いだとすぐに気付いた。
なぜなら、目の前のツバサちゃんの雰囲気が一気に変わったのが分かったから。
普段、見せてくれる天真爛漫な笑顔でも、ふわっとした優しい笑顔でもない。
普段よりずっと大人びていて、堂々していていた。控えめな笑みを見せ、周りの雰囲気に押されることもなく、前へと歩み出る。
「ツバサってさ、小さい頃からおばさんやルー爺から礼儀作法とか、色々学んでんだよな。ツバサ本人も学ぶことに対して前向きだからさ~? 新しい知識はスポンジみたいに吸収すんの」
レオン君がこっそりとツバサちゃんの雰囲気が変わった理由を教えてくれる。そして、「ツルギはこういうの、苦手なんだけどな」と苦笑ぎみに漏らした後、更に続けた。
「んで、スポンジの如く吸収した結果があれ。社交界っつーの? そういう場では普段とは違う雰囲気を出すようになったんだとさ。まるで、本物の貴族みたいだろ?」
確かに周りの貴族達と遜色ないくらい堂々としているし、雰囲気もある。十二歳の子供だとは思えないくらいだ。
「ってなわけで、俺らはそんなツバサのオマケなんだよ。主役を際立たせるための花? 蝶? なんかそんなやつだから、緊張しなくて大丈夫。大体、存在感しかないツバサの横にいれば、俺らなんて気にする人いないし、透明人間みたいなもんだよ」
なるほど。透明人間、か。
確かに、レオン君の言う通り、ツバサちゃんに視線は注がれているものの、後ろに控えている私達には、一つも意識は向けられていないし、視線すら感じない。この場にいる全員、ツバサちゃんしか意識していないのだろう。
よくも悪くも、ツバサちゃんは目立つ存在なのだ。本人は大して気にしてなさそうだが。
ツバサちゃんは真っ直ぐに今回の主催者であろう貴族の元へ向かう。
そこにはブライトさん達の姿もあり、先に話をしていたらしい。
ファンブル卿。先程、陛下が仰有っていた方々が到着されたようですよ」
私達に気付いていたらしいティールが主催者らしき貴族に目配せをする。
主催者の貴族はファンブルという名前らしい。貴族の雰囲気はあるものの、柔らかい物腰のおじさまって感じだ。
ファンブル様はツバサちゃんの姿を見るなり、パッと顔を明るくさせる。
「おぉ! 君がルーメン様の!」
「お初にお目にかかります、ファンブル卿。本日はこのようなパーティーにご招待いただきありがとうございます。ルーメン・L・ケアルの令孫、ツバサ・L・ケアルと申します」
マナー講師の先生から教わったのだろう、令嬢らしい綺麗な一礼だ。
「存じておりますとも! ルーメン様の商会には、いつもお世話になっておりますからなぁ」
「いつもご贔屓にしてくださって、ありがとうございます。実は、ファンブル卿が愛用してくださっているシリーズの新商品が今後、発表されると祖父から言伝て預かっています。そちらの商品もぜひ、お試しください♪」
「なんと! それはよいことを聞いた。是非、買わせていただきますよ」
「ふふっ。ありがとうございます♪」
ルーメンさんから言われた通り、初対面の相手にも、きちんと新商品の宣伝している。これがお嬢様の力……いや、ツバサちゃんの力、なのかな。
「……ラル、大丈夫?」
いつの間にか、ブライトさんの横から私の横に移動していたティールが私に話しかけてきた。きっと、初めての場所、慣れない空気に飲まれていないか、心配してくれているのだろう。
「うん。……恥ずかしい話、さっきまでは緊張してたんだけどね~……今はもう大丈夫。ありがと、ティール」
「そっか。なら、よかった。……でも、何かあったら頼ってね?」
それだけを言い残し、ティールはまたブライトさんのところへと戻っていく。
「……レオン君、その顔はどういう意味かな?」
「いんや~? べっつにぃ~?」
とは言いつつも、どこか楽しそうにニヤニヤしている。
別にって顔してなくね? 面白がってるよな。絶対。いや、そういうんじゃないからな!?
「──そう言えば、お二人は仲がよろしいんですかな?」
ファンブル様は唐突にそんなことを言い出した。
お二人というのが、ツバサちゃんとティールを指しているのは明白だった。つまり、ファンブル様も『例の噂』を知っているのだろう。
そして、会場内で噂を知るらしい貴族達の目線も、一気にこちらへと向けられた。
皆、噂の真意が知りたいのだろう。そりゃ、目の前の少女が未来の国王様のお嫁さんかもしれないのだ。気にしない方がおかしい。
「確か、同じ学園に通われているとか……?」
「ええ。ルーメン様のご息女が経営している学園ですから。息子の研鑽にはよい場所ですよ」
「おやおや。陛下のお墨付きなのですね」
お墨付きの意味が違う気がするぅ!!
多分、ブライトさんとしては、できるなら、適当に話題を逸らしたかったのだろう。しかし、完全に違う意味に取られているのは感じたのか、ブライトさんはそれ以上は語らなかった。隣のセイラさんは特に何かを言うことはなく、にっこりと微笑んでいるだけ。
そいや、二人とも、きっぱりと訂正しないんだよなぁ……? その辺もルーメンさん任せというか、ツバサちゃん任せにするつもりなのかな?
ふと、好奇の目を向ける貴族達の中に見知った人を見つける。
警備をしているらしいアラシ君だ。今の持ち場は会場内らしく、入口付近に待機している彼もまた、こちらに視線を向けていた。ただ、周りと違うのは完全に怒りオーラを出しているってことだ。表情には、辛うじて出ていないものの、オーラというか、目は完全にお怒りモードである。
や、やめてくれ……アラシ君……! そんな目をこっちに向けるな!! 分かる、分かるよ? 君の気持ちは十分に分かるけどね!? 隠せ! きちんと隠せ!!
レオン君も気付いた─もしかしたら、私が見すぎたせいかもしれないが─のか、ちらりとアラシ君の方を見て、すぐに正面を向く。しかし、どうやら笑いが堪えきれないのか、ぷるぷると肩を震わせていた。
「な、なあ……? ア、アラシのやつ、隠す気あんのか?」
「いやぁ……? その気がないから、オーラがだだ漏れなんでしょ……?」
まあ、そんなアラシ君はさておき。
ファンブル様はツバサちゃんの返答を待っているらしく、にこにこと笑って黙っていた。それを察してか、ツバサちゃんは少しだけ不思議そうにしつつも、「仲はいいと思います」と答えた。
ティールさ……ティール様とは学園の先輩後輩の仲で、生徒会の一員としても大変よくしてくださっています」
「ほほう? では─」
「学園のティール様は凄いんですよ。副会長という立場から会長を支えていますし、その傍ら、私達後輩へと気配りもかかしません。きちんと休めているか、仕事は滞っていないか、分からないところはないか……色んなことを気にしてくださる、優しくて頼りになる先輩なのです♪」
「んっ!? え、ちょ、なん……えっ!? ツバサ様!?」
唐突の褒めちぎりにティールも素に戻りかけてる……まあ、ギリギリ体裁は守ってるかな。多分。
ツバサちゃんは曇りのない瞳でティールのいいところを一から十まで語っていく。もちろん、プライベートな部分や話せないところには触れず、当たり障りない範囲ではあるが、要するに「めっちゃいい人で、優しくて、頼りになって、ティール先輩は凄いんだぞ!」ってことらしい。
思ったこととは違う話がツバサちゃんから話される現状に、周りの貴族もぽかーんとしてしまっている。まあ、当然っちゃ、当然の反応かもしれない。
「あらあら、ティールってば、学園ではそんな存在なのですねぇ♪」
「らしいな」
対する、ティールのご両親は止めるつもりはなく、むしろツバサちゃんの「ティール凄いんだぞ!」アピールを楽しそうに聞いている。
そして、褒められまくってるティールはと言うと、どうしていいのか分からないようで、助けてくれという目を私に向けていた。
いや、ごめん。助けるとかないわ。天使に褒められとんのやぞ? ご褒美やん。受け取れ。素直に受け取れ。
そんな感じに頷いておけば、ティールから「ラルの意地悪!」という視線を感じるけれど、無視しておいた。
「──なので、ティール様は頼りになる先輩なんですよ?」
「な、なるほど。……つまり、ツバサ嬢とティール様は先輩後輩以上の関係はない、と?」
「? それ以外の関係が他にあるのですか?」
ツバサちゃんの純粋な瞳にファンブル様も「何もない」と確信したのだろう。何度か首を振り、「何でもありませんよ」と笑い飛ばした。
……貴族社会というのは、互いの腹の探り合いだ。互いの問答には必ず裏があるし、表は全てが建前になる。それを探り当て、相手の弱みを見つけて優位に立つ。そういう世界らしい。現にツバサちゃんに向けられた視線がそれを物語っている。語らずとも、『ツバサ』という人物を探っていたのだから。
しかし、ツバサちゃんに裏も表もない。つまり、光そのもの。
「悪意だらけの闇の世界に、強い光が差し込めば、闇は勝てっこないよねぇ?」
ルーメンさんはそれを知ってたから、ツバサちゃんに噂の沈静化を任せたのだ。任せたというか、任せなくても勝手に沈静化してくれると思ったから。
純粋無垢なツバサちゃんだからこそできる芸当。他の人じゃ真似できない。
「失敗する確率も十分に考えられるのに、よくやるよね。ルーメンさん」
「にゃは~♪ それがルー爺って人だぜ?」
怖い人。つくづく、敵に回したくない相手だと思うよ。本当に。



~あとがき~
またやらかして、こんな時間に更新だよっっ!!!!
それはそれとして、ツバサちゃんは聖人ですね。
私のキャラに完全光属性キャラ、おらんかもしれん(笑)

次回、パーティーは続くよ。

いつメンにあまり褒められないティール君。褒められ慣れてない人です。まあ、ラルもなんですけど。
というか、素直にあれが凄い、ここが凄いと矢継ぎ早に言われたら、誰だって照れるか……やっぱり、ツバサちゃんは聖人ってことだ。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第371話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でだらだらしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、どんなドレスにしよっかな~? 会議が行われました。無事、ラル好み(?)なドレスを見つけられましたとさ。
そんなドレスはどんな風に変わったのか。ツバサちゃんはどんなドレスなのか! そんな感じにお送りしま~す!


《L side》
今回、開かれるパーティーの主催者はブライトさん達と仲のいい─実際、仲いいかは知らないけど─貴族の一人らしく、場所もその貴族の所有する古城にて行われるらしい。
パーティーの参加者はブライトさんら王家の方々、そして、ツバサちゃん。
私とレオン君はツバサちゃんの付き人枠で参加し、アラシ君やゼニスさんも警備の任務を受け、私達に同行するらしい。パーティー中はずっと側にいるわけではないらしいが。
そんなパーティー当日。
朝から王宮内は慌ただしかった。
理由は簡単で、パーティーに参加する女性陣の準備のためである。
お風呂に入れられたり、エステされたり、マッサージされたり、ネイル整えられたり等々……なんかもう、すんごいのである。
そして、それを護衛である私も受けているのも謎だった。
セイラさんやツバサちゃんがそれらをするのは分かる。けど、私はオマケみたいなものだ。主役でもないし、呼ばれたわけでもない。それなのにここまで整える必要があるのだろうか。
異議申立てしたかったけど、そんな雰囲気でもなく、されるがままだった。口に出す勇気もなかったのかもしれない。
……それら諸々が終わり、私はソファに倒れ込む。
「……なんもしてないのに疲れた」
いや、おかしい。されたこと全部、体を整えるというか、メンテナンスしてもらったようなものなのに、なんで疲れてるんだ。パーティー始まってもなければ、ドレスやメイクもまだなのに!?
「大丈夫ですか、ラルさん?」
私と一緒に諸々されていたツバサちゃん─セイラさんはまた別室で受けているらしく、この場にはいない─が心配そうに話しかけてきた。
ツバサちゃんはこういうのにも慣れているのか、平気そうにしていた。気疲れなんてしてないようだ。
「……大丈夫。未知の世界に圧倒してただけだから。……パーティーに行くだけなのにこんなに準備必要なんだね?」
「そうですね。……私もここまでされたことはなかったです! 貴族様ってスゴいですよね!」
「そう、なんだ? ちなみに、ツバサちゃんはいつもどれくらいかかるの?」
「これの三分の一の時間で終わります」
なら、普段ならとっくに準備終わってるんだな~……へ~……そっかそっか~……なるほどなぁ。
そんな会話をしていると、控えめにドアをノックする音が響く。それに答えれば、王宮のメイドさんがペコリと一礼して入ってきた。
「ラル様、ツバサ様、お召し物のご用意が整いました」
「は~い! 今行きます!」
「……はい」
そうだ。まだドレスもメイクもまだでした……

メイドさん達の努力もあり、時間内に全ての準備を終えた私達は、すでに準備が終わっている男性陣の到着を待っていた。
ちなみに、セイラさんはセラフィーヌさんに連行され、ブライトさんのところに行ってしまった。セラフィーヌさん曰く、「こういう時もライトくんは自分から顔を見せないから」……だそうだ。
ブライトさんとしては、後で顔を会わせるのなら、今でなくてもいいだろ思考な気がするけど。
「ラルさん、とっても綺麗です! 似合ってます!」
お嬢様に変身したツバサちゃんが目を輝かせながら褒めちぎってくる。
ツバサちゃんはオレンジ色のAラインドレスだ。鎖骨の見えるオフショルダーに、スカート部分はフィッシュテールになっていて、全体的に妖精のドレスという雰囲気がある。
対する私は、先日見せられたブルーのスレンダーラインドレスを着ている。ハイネックに沿ったスタンドカラー、後ろは羽のようなマントが添えられている。
「あ、ありがと……こういうの、着慣れてないから変な気持ちだけどね」
「変だなんて! そんなことないですよ! とっても似合ってます!」
あぁ……ツバサちゃんはいつでも天使だわ。こんな私にも優しい言葉をかけてくれるんだもん。これを天使と呼ばず、何とお呼びすればよいのでしょう……?
ツバサちゃんの光パワーを存分に浴びていると、ドアをノックされる。
多分、ティール達が来たんだろう。
「はーい! 入って大丈夫ですよ~♪」
ツバサちゃんが元気よく答えれば、ドアをガチャと開けられ、そこから顔を覗かせたのはしーくんとリランだった。
「ほあ! ラル、きれいー! ツバサお姉ちゃんも!」
「あんあんっ!」
「ありがとー! しーくん、リラン!」
「お~? ラルもツバサも綺麗にメイクアップされてて、いい感じゃん♪」
スタンダードなタキシード姿で現れたレオン君がひらひらと手を振りながら入ってきた。そんな彼に続くようにティールも入ってくる。ティールは貴族らしくというか、王子様だなって服だ。
「見て見て、レオン! ここの刺繍、ラルさんとお揃いなんだよー!」
誰かに自慢したくて仕方なかったのか、レオン君が入ってくるやいなや、ツバサちゃんは彼に駆け寄り、ドレスを見せていた。レオン君の前でくるりと回り、楽しそうにしていた。
レオン君は私とツバサちゃんのドレスを見比べ、ニコッと笑う。
「お、本当だな♪ おばさんが考えたのか?」
「そうなの! お母さんがね、ラルさんと私に似合うデザインを考えてくれたんだよ!」
セラフィーヌさんに持ちかけられたお揃いとは、これのことだった。
私とツバサちゃんのドレスの裾には夜空の海をイメージした刺繍が施されているのだ。
「よかったな♪ よく似合ってるぞ~♪ なあ、ティール……? ティール、固まってっけど、大丈夫か~?」
そういえば、ここに入ってきてから一言も発してないな。
私はティールの目の前まで行き、彼の前で手をぶんぶん振ってみる。
ティール、起きてる?」
「……へ!? あ、う、うん! おきてるおきてる!!」
だ、大丈夫かな……?
若干、片言になりつつも、ティールは咳払いをし、ぎこちないなりに笑みを浮かべる。
……いや、待て待て?
なんで若干、赤くなってるんだ、こいつ!
女性のドレス姿なんて見飽きてるだろ!? え、どこに動揺するポイントがあるんだ?
どこか変なのか……? やっぱ、私にこんな高価なドレスは似合わないのでは……?
「あのさ、ティール」
「うん?」
「私、本当に大丈夫? いや、今更、他のドレスに変更はできないんだけど……もしかして、変……かな?」
「ううん! 大丈夫! ラルにちゃんと似合ってるし、綺麗だよ」
お、おう……素直にそう言われるとなんか恥ずかしいな。直近で似たようなやり取りした気がするのは気のせいだろうか。気のせいであってほしい。
レオン君にニヤニヤされていたような気もするが、それは突っ込まないことにして……
合流した私達は正面入り口へと向かった。そこには移動のための馬車が二台用意されており、そのうちの一台には、すでにセイラさんとブライトさんが乗車済みのようだった。
外で待っていたらしいセラフィーヌさんとアラシ君が私達の姿を見つけ、こちらに合図を出してくれた。
「アラシー! お待たせ!」
「お、おう……」
綺麗にドレスアップしたツバサちゃんに見惚れていたアラシ君だったが、すぐに騎士の顔に戻り、ツバサちゃんをスマートにエスコートしていた。
「ツバサ、足元、気を付けろよ」
「うん、ありがとう♪」
ツバサちゃんを馬車までエスコートすれば、すぐに彼女から目線を逸らす。その顔は若干の赤みが増していた。
「かっわいいなぁ、アラシ君は~」
「初ですなぁ、うちのアラシ君は~」
「……君ら、いい趣味してるよね」
ティールの呆れた突っ込みが聞こえてきたけれど、それは最早、褒め言葉だ。
「そうだ。ツバサ」
「ん、なぁに? お母さん」
アラシ君の様子にニヨニヨしていると、その横ではセラフィーヌさんが窓越しにツバサちゃんと会話していた。
「あなたのことだから、上手くやれると思うけれど……何かあった時はマナー講師の先生と一緒に教えたアレ、実践するのよ?」
「うん! 分かった!」
はて。……アレ、とな?
元気よく返事をするツバサちゃんに対し、セラフィーヌさんも楽しそうに微笑む。その姿はどこか先生のような雰囲気があった。……いや、実際、セラフィーヌさんは先生なのだけれど。
「じゃあ、最終確認です♪ 『もし、貴族の人によく分からないことを言われたら』?」
「持っている扇子で口許を隠して、微笑む! できたら、その時、思ったことをそのまま相手に話す!」
「よくできました! じゃあ、ギルドの商品の宣伝、頑張ってね?」
「はーい!」
……ふむ。
私は横にいるティールの裾を引っ張る。彼はそれに気付き、耳をこちらに傾けてくれる。
ティールさんや……私には貴族様の正しい接し方なんて知りませんけども……あれは正しい接し方の一つなんでしょうか。正しい礼儀作法なんでしょうか」
私の問いかけにティールはにこりと笑う。その表情だけで何が言いたいのか、なんとなく分かってしまう。
「残念ながら、私は存じ上げません」
ですよね!!
「……お前が知らんのなら、正しくないのでは?」
「さあ? あれじゃない? ケアル家直伝の接し方なんじゃない?」
ありなのか……それは。
なんだか不思議な確認もありましたが……それはそれとして。
私達は馬車に乗り、セラフィーヌさんやしーくんらに見送られ、パーティー会場である古城を目指して出発したのだった。



~あとがき~
こんな中途半端な時間に投稿してるのは、予約投稿を忘れたから。
ごめんなさいっっっ!!!

次回、ツバサ一行、パーティー参戦!!

特に語りたいことがない。
まあ、どんなパーティーになるか、噂の根絶はできるのか、ラルは貴族らの洗礼をどのように受けるのか、ツバサちゃんを狙う(?)モグラ貴族はどんな人物なのか……等々、意外とあれこれありますんで、お楽しみに。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第370話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわいわいしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、久々にラルとアラシ君がきちんと絡んでました。というか、夏休みの話、全体的にアラシ君の出番がないんですよね。
まあ、多分、秋以降はバンバン出るよ。多分。きっと。恐らく……うん。
アラシ「そんなに曖昧なら、無理に希望持たせなくていいけど!?」


《L side》
私がしたいと言った覚えはないが……セイラさん達とドレス選びをすると約束した時間。
私はしーくんを連れ、セイラさんのコレクションルーム……もとい、着せ替え部屋に来ていた。ちなみに、ティールはいない。先日、ブライトさんと約束していた剣を見せる話が今日の午後にあるらしい。きっと、今頃、二人で楽しく剣を交えていることだろう。
……ブライトさんもこれを知ってて、時間を設けたのではないかと思う。だって、セイラさんやセラフィーヌさんが私といれば、ブライトさん達の方には行かないわけで。
「なんやかんやで、ブライトさんも賢いよなぁ」
「うゆ? どしたの、ラル?」
どうやら、私の独り言を聞かれていたらしい。
しーくんは私の隣に座って、出されたジュースを飲んで大人しくしていた。そんなしーくんは今、こてんと首を傾げ、こちらを見上げている。
「んーん? ごめんね、何でもないよ」
いや、本当に。どうでもいいことに頭使ってただけなので。
ふと、とあることを思い出し、今度は私がしーくんに尋ねる。
「……そう言えば、しーくんは私と一緒でよかったの? ティールと一緒でもよかったんだよ。多分、しーくんだったら二人も許してくれてたし」
「う~ん……ティールとおじいちゃんのも、みるのたのしそーだけど」
しーくんは持っていたコップを机に置くと、私の手をぎゅっと握ってくる。
「ラルをひとりぼっちさせちゃ、ダメだっておもったの!」
「しーくん……!」
やだ。私の知らない間にイケメンになっちゃって……!
ティールがね、おばあちゃんがぼーそー? したら、なにしてもいーからとめろって! まかされたの!」
しーくんに何頼んどんじゃ、パパは!!?? 何してもいいわけないだろがっ!!
でも、自信満々なしーくんはとっても可愛いので、とりあえず、なでなでしながら、私はセイラさん達の方に視線を向ける。
先日、セイラさんの言っていた通り、ここにはあらゆる服が揃っている。
カジュアル─といっても、その辺で売っているような安物ではないけど─な服から、どこのメルヘン世界の服だと問いたくなる服まで選り取り見取りだ。
そんな中から、パーティーに相応しいと思われるドレスを引っ張り出しては、セイラさんとセラフィーヌさんはあーでもないこーでもないと繰り返している。
「オーソドックスにこんな感じのドレスとかどうですか~?」
と、セイラさんが見せてきたのはお姫様が着るようなフリフリなドレスだ。所謂、プリンセスドレスというものだろう。
パステルカラーの黄緑色に大きなリボンやフリルがあしらわれているドレスは、確かに可愛いし、パーティー向きなのだろう。そうなんだろうけど……!
「フリル多すぎて好みじゃないです」
「あら~? 可愛いのに~? じゃあ、こういうのは? こちらはベルラインドレスって言うんですけど」
今度はレース多めのオレンジのドレスを見せてくる。こちらもパーティー向けでダンスとか踊ったらふわりとスカート部分が舞い上がって優雅なんでしょうけども、生憎、ダンスを踊る予定はない。
そして、綺麗なんだけど、こっちはレースは多すぎる! 可愛さMAXに極振りしやがって!!
「そっちも好みじゃないです」
「あらら。せっかくのパーティーだから、こういうのが似合うと思うんですけどね~?」
いや、私はドレスの種類にケチつけてる訳じゃない。地味であるなら、プリンセスドレスだろうが、ベルラインドレスだろうが着ますよ。フリルやレースが控えめなら、なんでもいいよ、この際!
しかし、セイラさんの勧めてくるものはThe.お姫様みたいなものばかりだ。どれも私の好みではない。いや、見るのは好きよ? そういうのを着てる可愛い女の子を眺めるのは好き。それはセイラさんに同意するけどね?
「高校生にもなって、あんなふりっふり着れるわけないやろがい……!」
「? ラル、どのドレスでもにあうよ~?」
「うん、ありがとね、しーくん……そう言ってくれるのは嬉しいな……」
「お姉様。ラルちゃんなら、こういうドレスが似合うと思いますよ♪」
今度はセラフィーヌさんか。どんなふりっふりふわっふわドレス見せてくるんだ……?
最早、自分で見繕った方が早いのではと思いつつ、セラフィーヌさんの持ってきたドレスを見上げる。
「……おろ?」
セラフィーヌさんの持つドレスは今までのとは毛色が違っていた。
可愛いフリル多めなドレスでも、綺麗なレースが多くあしらわれたドレスでもなく、ブルー系のシンプルなスレンダーラインのドレスだった。
急な路線変更にぽかんとしてしまうものの、そんな私にセラフィーヌさんはこちらを向き、ぱちっとウインクする。
……もしかして、今までの私の反応を見て、セラフィーヌさんが配慮してくれたり?
「確かにラルちゃんによく似合うと思うけど、パーティーに行くには地味すぎじゃないかしら?」
「ふふっ♪ 大丈夫ですよ、お姉様。このドレスに少しアレンジを加えますから」
セラフィーヌさんはどこからか取り出したスケッチブックに、さらさらっと何かを書き込んでいく。そして、それを覗き込むセイラさんの顔が次第に明るくなる。
「流石、セラちゃん! 素敵なデザインだわ♪」
「ですよね! これくらいのアレンジなら、王宮の針子さんでも問題なくパーティーまでに間に合います。……どうかしら、ラルちゃん?」
セラフィーヌさんがこちらにパッとスケッチブックを見せてくれる。
シンプルだったドレスに刺繍を加え、背中の部分にはマントのようなベールのようなものが加えられていた。
「これくらいなら、ラルちゃんも納得してくれるかなって思うんだけれど……?」
「ほわ~! ラル、にあう! ぜったいにあうよー!」
「うぐ……そう、かな」
「うんっ!」
しーくんがそう言うなら……それに今まで見せられたドレスよりは地味だし、この辺が許容範囲かもしれない。それ以上地味なのは、セイラさんの反応的にも無理そうだし。
「ねえ、ラルちゃん?」
「……? なんでしょう?」
ニコッと笑みを浮かべるセラフィーヌさんが私の耳元にそっと近づく。
「せっかく、ツバサの護衛として参加するんですもの。……あの子を喜ばす意味でも『お揃い』にしてみない?」
デザイナーとしての血もあるかもしれない。或いは、子供の喜ぶ顔が見たい親心か。
どちらにせよ、セラフィーヌさんの誘いは、私にとって何かを崩壊させるのには十分だった。
「……よろしくお願いします!」
さっきまでのローテンションはなんだったのか。自分でも不思議なくらい、テンションが上がっていた。
いやほんと、天使の力は偉大ですわ。



~あとがき~
ドレスって色々種類あるんやなぁ……

次回、お披露目。

個人的にラルは何着てもかわええやろって思ってます。(うちの子贔屓目)
でもまあ、ラルも好みってもんがあるってやつですね。見るのと実際に着るのとでは違うってことや。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第369話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわいわいしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ながーい回想後、お茶会の続きが行われ、何か知らんけど、パーティー出ようぜ!とラルが言われましたとさ。
そんな次の日の話。
ラル「いきなり飛ばさんでくれます!?」
いやぁ、最近出番のない(?)彼と話したいやろ?
ラル「……?」


《L side》
明朝。
薄い空色を伸ばしたような快晴。
私はなぜか目が覚めてしまい、部屋にしーくんを残して、王宮内を散歩していた。ここは滅茶苦茶、広い。ここに住んでいるティールですら、未だに知らない部屋があるくらいに広い。だからこそ、適当に歩いて、適当に部屋を覗いてってするだけで暇潰しにはなる。
……まあ? 人ん家で何してるんだって突っ込みは、なしでお願いしますねぇ~?
「……あれ、あそこにいるの、騎士団の人達だ」
王宮の二階の廊下から、何気なく外を見てみると、ちょうど、騎士団の朝練が行われているのが見えた。
ゼニスさんとアラシ君の二人が、部下さん達を指導しているのだろう。二人は朝練自体に参加はせず、時折、部下さんらを指差したり、ジェスチャーしたりしていた。そして、何より遠くからでも分かる程、鬼の形相であつ~い指導をしているのだ。
「……ゼニスさんが鬼教官なのはティールから聞いてたけど、アラシ君もなのか」
まあ、アラシ君の兄、イグさんがそうだし、特別、驚きはしないが。
ここから高みの見物をしていてもいいのだが、せっかく見つけたのだし、直接、挨拶しに行くのも悪くはない。
「降りるか。……降りた後でも、同じ場所にいてくれるといいんだけど」

私が外に出て、二人を見かけた場所へ行ってみれば、騎士団の朝練はまだ続行中だった。
遠くからでは、影になっていて分からなかったのだが、部下さん達があちこちで伸びていて、まさしく死屍累々状態であった。
「……おはようございます。ゼニスさん、アラシ君」
鬼教官状態だった二人に話しかけるのも悪いかなぁと思いつつも、ここまで来たのだから、挨拶しないわけにもいかない。
二人は私の姿を見て、鬼の形相……ではなく、いつも通りの笑顔を見せてくれた。
「ラル様。おはようございます」
「よお、ラル。こんな朝に会うとはな」
「……ラル様も朝練に参加されますか?」
にこやかにとんでもねぇ提案してくるな。流石、ゼニスさん。容赦ない。
「いえ、遠慮しておきます。今日は朝のお散歩中なので」
どんな訓練メニューをこなしているのか分からないが、朝からバテバテになりたくはない。やるならせめて、心の準備くらいはしたい。やりたくはないけども。
「そいや、あっちにいた時、ルー爺んとこの朝練、出てたって聞いてたな。……ラルはゼニスさんと朝練やったことあんの?」
「過去に何度か。とは言え、そこまでスパルタ指導を受けた記憶はないけどね。……スパルタと言えば、アラシ君の指導もなかなかだね?」
「ん~……そうか? 普通だろ」
あ、あれが普通なのか。こわ。
流石、イグニースの弟。容赦ねぇ。
「ラル様。もうそろそろ、訓練も折り合いがつきます。少々お待ちいただけますか?」
「あぁ、いえ。私が勝手に来ただけなので。お気になさらず」
とは言ったものの、ゼニスさんの言葉通り、本当にあと少しだったようで、アラシ君と共に数名に何やら指示出しをした後、再び私のところへと来てくれる。
「お待たせしました、ラル様」
「本当に大丈夫ですか? 何なら、私、帰りますけど」
「いえ。問題ありませんよ。休憩時間なのは間違いないので」
あぁ、そういうこと。
ゼニスさんとアラシ君は、今回の合同訓練について、簡単に説明してくれる。
今回の目的は新人育成。アラシ君の連れてきた騎士団の人々も、比較的、入団歴の浅い人達で、編成されているらしい。そして、ゼニスさんのところも同じ様に新人を集め、彼らの体力強化をメインに訓練を行っているとのこと。
「こうして一緒に合同訓練を行ってみると、流石、フェゴさんの息子さんだなと思います」
ゼニスさんがにこにこと笑いながら、アラシ君の指導姿を褒める。彼は褒められるとは思っていなかったようで、驚いたようにゼニスさんを見つめた。
「そ、そうですか!? どの辺が……?」
「新人とは言え、彼らはアラシ君より年上でしょう? そんな中でも、フェゴさん譲りのスパルタ指導を行えるのは、素晴らしいと思います。フェゴさんに鍛えられてるんですね」
「え、えーっと……そこまで褒められたものでもないですよ」
「ご謙遜を。……私も若い頃、何度かフェゴさんの指導を受けましたが、あれをこなせるだけで称賛物です」
フェゴさん……アラシ君のお父さんで、現騎士団長さんだったか。
同じ騎士団長として、交流もあるのだろう。ゼニスさんとフェゴさんはお知り合いのようで。
「お知り合いと言いますか……団長として、あちらが先輩ですから、色々とご鞭撻してくださったのです。私なんて、まだまだ若輩者ですよ」
「そんなに凄いんですか? フェゴさんの指導」
単なる興味本位で聞いたのだけれど、二人は無言で何度も頷いた。その反応だけで、笑えないくらい厳しいんだなと悟る。
「……イグさんより厳しい?」
「厳しいよ。……なんなら、兄貴のやつなんて、優しいもんだって思う時すらある。そんくらい、親父の指導はやべぇぞ?」
よかった。フェゴさんの指導を受ける機会がなさそうで。
「あー……そ、そいえばさ。ラル?」
「? うん?」
これ以上、フェゴさんの話はしたくなかったのか、若干、苦い顔をしているアラシ君がこちらに別の話題を振ってきた。
「ツバサと一緒にパーティー出るんだってな?」
……今度は私が嫌な顔をする番だった。
それを見たアラシ君は、イグさんを連想させるような嫌な笑みを見せる。
「ツバサが嬉しそうに話してたぜ?」
「そうですか……なら、よかったです。……なんで笑ってるの?」
「え? 深い意味はねぇけど?」
……そうですか。
どこか面白がっているように見えたけど、深い意味がないならいいです。はい。
──なぜ、一般人の私が参加することになってしまったか。それは昨日のお茶会まで遡る。

「──パーティーに参加してくれないかしら!?」
私の手を握り、唐突にそんなお願いをされた。
全くもって訳が分から……いや、先程までの話の流れで、なぜ頼まれているのかは分かる。分かるけれど、なぜ護衛を増やす必要があるのかが分からない。
そもそも、私はパーティーとか煌びやかな世界とは無縁の人間だ。社交界とか知らんし、貴族社会とか、もっと知らんが!?
エスともノーとも言えない私に、ティールが近寄り、ぽんぽんっと優しく肩を叩いてくれる。そして、代わりにセラフィーヌさんに質問を投げ掛けてくれた。
「セラフィーヌさん、なんでラルを……というか、そもそも護衛を増やす必要がある理由から伺っても? でないと、ラルも返事できないかと」
「あら、ごめんなさい! そうよね。急に言われても困るわよね。今から説明するわ」
と、パッと私の手を離し、こほんと咳払いをする。
「実は、今度のパーティーの参加者の中にケアル家に因縁をつけてる相手が急遽、参加することが分かってね……いざって時の護衛を増やしたくて」
因縁、ですか。
過去に決裂した相手からの恨みでも買ったんですかね……そういう世界ってどこにでもあるのか。
「決裂というか……そういうことはなくて。頭皮の因縁を持ってる?」
とうひ……頭皮? 頭?
頭の因縁とはなんやねん。何があった、過去に!!
セラフィーヌさんのこの言葉にツバサちゃんは思い当たることがあったのか、ぱちんっと手を鳴らした。
「前にじいじの言ってた、モーグラーって人のこと?」
「ツバサ、モーグラーじゃないわ。モグーラ様よ?」
「セラちゃんも違うから。モーラス様ね。モーラス様」
どれが正しいんだ。……セイラさんの言った名前が正しいのか?
セラフィーヌさんは詫びる素振りもなく、にこりと─正しくは目元は笑っていないが─笑いつつ、首を傾げる。
「あら、そうでしたっけ? モグラ様ではなかったでしたっけ?」
モグラじゃないよ、モーラス様。……もしかして、セラちゃん、まだ怒ってる?」
「まさか! もう十年以上も経ちますもの。流石に怒ってませんわ。我が家にした嫌味、嫌がらせの数々など……とうに忘れました♪」
いや、絶対に忘れてないし、怒ってるな。根に持ってるよ、セラフィーヌさん。
セイラさんも困ったように笑うだけで、それ以上は追及しなかった。
「セイラさん、そのモーラス様って人と、何かあったんですか? というか、何かなきゃ、あんな風に思いませんよね」
「そうですね~……? 先程は因縁と言いましたが、一方的にあちらが根に持ってると言いますか……」
黒い笑みを浮かべるセラフィーヌさんには、とてもじゃないが聞けなかったので、セイラさんに聞いてみた。すると、セイラさんはこそっと簡単に教えてくれる。
──事の発端は十何年も前の事。
ルーメンさんが若く、アルドアーズさんが王位につく前の話だそうだ。
この頃の海の国の貴族社会は、今以上に差別的な思想が強く、アルドアーズさんの友人であるルーメンさんに難癖をつける貴族も多かったらしい。
そんな一人に、モーラス様もいた。
モーラス様は、特に差別的思想が強かったらしく、事ある毎に「平民の癖に」とルーメンさんに絡んでいた。しかし、ルーメンさんは悪口、嫌味等々を華麗にスルーし、気にも止めてなかったと言う。そんな態度が、モーラス様は気に食わなかったのだろう。
次第に悪口、嫌味、嫌がらせはエスカレートし、挙げ句の果てに、この国の未来の主君であるアルドアーズさんや、女神と崇拝される白雪ちゃんに対し、暴言を吐いた。
それがルーメンさんの逆鱗に触れ、魔法でモーラス様の髪を綺麗さっぱり失くしたのだと言う。
「……それ以来、モーラス様とケアル家の因縁が始まったのです。大体はルーメンお爺様に対してなのだけれど、いつだったか、セラちゃんにも目を付けたことがありまして。……セラちゃんが高校生くらいの時、だったかしら? まあ、セラちゃんはモーラス様を笑顔で言い負かして、倍返ししちゃったみたいですけど」
うへぇ……なかなかに執念深いお方のようで。というか、メンタル強者だな。その執念、もっと別の方向で活かせればいいのに。
まあ、それは置いといて、だ。
そのような過去があるから、セラフィーヌさんはツバサちゃんの身を案じているのか。そりゃ、心配になるわな。親だもの。
とはいえ、ツバサちゃん本人は大して気にしてなさそうである。ルーメンさんから話を聞いているのなら、少なからず、今の状況も分かっていそうなものだ。
ツバサちゃんが事態を理解していないだけなのか、単純に重く受け止めてないだけなのか。……どっちもあり得そうなので、何とも言えない。
「お母さん? 私は大丈夫だって」
いつも通り、のほほんとした様子で答えるツバサちゃんに対し、セラフィーヌさんは心配そうにしている。
「そうは言っても……一応、ラルちゃんについていてもらいましょう。変なことはないと思うけど、万が一って言葉もあるし……一応ね?」
と、ツバサちゃんを説得し始めている。
説得はいいが、私、ついていくとか、参加しますとか、一言も言っていないんだが。なんなら、行きたくないけども。
「……ねぇ、ラル?」
話を黙って聞いていたティールが私の耳元にそっと囁く。
「母上の話を聞くに、ツバサにも何かする可能性はあるよね? だって、現に娘のセラフィーヌさんに手を出してるわけだし」
「……それは、そうだけど」
「お願い、聞いてあげれば?」
「むぅ……でも」
「君があぁいう空気感が苦手なのは分かるけど、今、セラフィーヌさんが頼れるのはラルだけなんだ。……なんなら、仕事だと思いなよ。セラフィーヌさんからの依頼」
依頼……仕事だとして、それには報酬が必要だ。じゃなきゃ、嫌なことなんてやってられねぇぞ。
「…………報酬は」
「ツバサのドレス姿を間近で眺められる権利、とか? 近くに控えているんだし、飽きる程、観察してても大丈夫だよ」
………………そう来るか。
流石、相棒。私という人物をよく理解していらっしゃることで。
私とティールが話している間に、どうにかこうにかツバサちゃんを説得し終えたらしい。セラフィーヌさんが私に向かって、手を合わせる。
「駄目かしら、ラルちゃん。特別なことはしなくて大丈夫なの。あのモーグラー…」
「セラちゃん。モーラス様」
「……モーラス様がツバサに何かしようとしたら、追っ払うだけでいいの! ラルちゃんの殺気で!」
「殺気、ですか」
私、そこまで殺気ないと思うけど。
なんて思っていれば、なぜかティールがグッとガッツポーズしてきた。
「やったね、ラル! 滅茶苦茶、得意じゃん。殺気出まくりだから」
「おいこら、お前。殺すぞ」
「お願いっ! ラルちゃんっ!!」
「……分かりました。引き受けます」
まあ、実際にツバサちゃんに何かあったら嫌だしね。それを私がいることで守れるんなら、協力しますか。
「本当に!? ありがとう、ラルちゃーん! なら、早速、ラルちゃんのドレスを決めないと!!」
「……ドレス?」
いや、待て。それは聞いてない。聞いてないけど!?
「そりゃあ、貴族の開くパーティーだよ? ドレスコードくらいはあるさ」
ティールさん!? 分かってて黙ってた!?」
「……言ったら、簡単に頷かないだろ?」
ティールさん!?!?
相棒にいいように、はめられたってことですか!?
「あ、あの、私、ドレスとかじゃなくて、スーツ的なやつでいいです。動きやすさ重視で……」
「今からデザインしていては間に合わないよね。……セラちゃん、私のドレスルームから選んで、手直ししましょ? それならパーティーまでに間に合うわ♪」
「流石、お姉様! そうしましょう♪ ラルちゃん、明日の午後、ドレス一緒に選びましょうね!」
あ、あう……ドレス……嫌です、けど……!
「私達がラルちゃんに似合うドレス、選ぶから安心してくださいな~♪」
「………………ハイ」
「……にゃはは♪ 流石のラルも、あの二人には勝てなかったみたいだな?」
「? ラル、パーティーいくの? すごいね! たのしそうだね!」
今の今までずーっと黙っていたレオン君と、しーくんがにっこにこで話しかけてきた。
しーくんはいいとして、レオン君は単純に、面白そうだから眺めていたんだろうな。
くそう。こんなはずでは……!

──ということが昨日のお茶会で起こった。
つまり、今日の午後にそれがあるわけで。ドレスの着せ替えコーナーが待っているわけでして。
それを想像しただけでテンションだだ下がりである。
「……今からでも、タキシード的なやつにならないかな。それなら選ぶ必要もない。ドレス着る必要もない。何かあったときにすぐ動ける。いいこと尽くしなんですけども」
「ならんだろ」
私の素敵提案をアラシ君は冷めた目でバッサリ切り捨てた。
「お前、男じゃねぇし、普通にタキシードなんて着れる訳ねぇだろ。ドレスコード守れ、ドレスコードを」
それなぁぁぁ!!??
つーか、世の中の女の子全員がドレス着たいと思うなよ!? いや、違う。ドレス自体を嫌がっているわけではない。私が恐れているのは、あのふわふわヒラヒラ地獄である。
何が好きで、あんなヒラヒラのふわっふわなドレス着るんじゃ! 皆がああいうの好きだと思うなよ!?
「なんで、あんなヒラヒラ着なきゃなんないのよぉ~……!」
「それが社交界の正装だからな? 大体、ラルがスーツやらタキシードやら着てみろ。絶対に浮くからな。そっちの方が目立って仕方ないだろ」
「うるせぇ。正論いらねぇんだよ、くそぉ。アラシ君の癖に正論言うな」
「あ? なんで俺が罵られてんだよ。おい」
「ラル様のお気持ちも分かりますが、アラシ君の言うことが一般的であることは確かですね」
ゼニスさんまでぇ……!
私はアラシ君の「さっさと諦めてドレス着ろ」という言葉に渋々頷き、時間も時間だったので、二人とはお別れしたのだった。
やだなぁ、ふわふわヒラヒラ地獄……見るのは好きなんだけど、着るのはなぁ……?



~あとがき~
めちゃなげぇが、きりのいいとこまで書きたかったんや。許してくださいっ!

次回、ドレス選び。

久々にちゃんとラルとアラシ君が絡んでるなぁと思いました。いや、幼児化にも出てきてはいたんだけど、あそこはあまり絡んでないし。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第368話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわいわいしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、回想では語られなかったちょっとした疑問を投げ掛ける話でした。
今回は……まあ、次回の話の前フリみたいなもんっすかね。お楽しみに。


《L side》
セイラさんとラブラブした─恐らく、本人達にその自覚はない─ブライトさんはこの後、仕事があるようで、執務室へと戻っていった。
そんなブライトさんの背中にセラフィーヌさんは……
「お仕事は程々にしてくださいね、ライトくん!!」
と、叫んでいたけれど、ブライトさんに届いたかは不明である。
改めて私達だけになると、セラフィーヌさんはふうっと息を吐き、ティールに視線を移す。
ティールくんはこんな風にならないでね?」
「……? え、ぼく、ですか?」
「そ。お父さんみたいに周りの協力がなきゃ、自分の思いを伝えられない……なんてことにならないでねって話」
「あ、あぁ……そういう」
「ふふ♪ だから、ティールくんに好きな人ができたら、ちゃんと自分で告白しましょうね? 間違ってもライトくんみたく、誰かに言われるまで無頓着、その後も他人におんぶ抱っこじゃ駄目よ?」
ティールはそこまで鈍い部類か……? 確かに、こっちの気持ちも考えろよって行動はあるけど。……あぁ、その時点で、鈍感なのかもしれない。ブライトさん程ではないにしろ、だ。
ティール本人もその自覚はあるのか、セラフィーヌさんの言葉に困ったように笑った。
「恋愛に敏いとは言いませんけど……さ、流石に、父より鈍感でもないと思ってますし……大丈夫かと」
「それならいいのよ~♪」
どこか面白がるような雰囲気のあるセラフィーヌさんだけど、それはブライトさんを見てきたからなのだろうか。
まあ、それはそれとして。
仮にティールに好きな人ができたとして、周りに背中を押されることはあれど、おんぶ抱っこは多分、ないだろう。今まで一緒に過ごしてきた感覚としては、ブライトさんみたいに「恋愛……とは……?」ってタイプではないし。
「皆さん、ただいま戻りました~♪ あ、お母さん!」
「おばあちゃんだー! こんにちはー!」
遊びに満足したのか、ツバサちゃんがしーくんとリランを連れ、私達の元へと駆け寄ってきた。
「ふふっ♪ こんにちは。雫くんは元気いっぱいね~♪」
「元気だよ。リランもね、元気なの!」
「あんあんっ♪」
「あら~♪ たくさん遊んで楽しかったのね」
「あんっ!」
中庭を大いに駆け回ったのか、リランの白い毛並みには、ところどころ汚れがついていた。リランらしいと言えばらしいけど。
その汚れをツバサちゃんが魔法を使って落としてやり、綺麗にしたところで、アンジュさんがタイミングよく─もしかしたら、タイミングを見計らっていたかもしれない─二人にお茶とお菓子を出してくれた。リランにはお皿に水を出してくれている。
「わあ♪ ありがとうございます、アンジュさん!」
「ありがとう!」
「いえいえ。お口に合うとよろしいのですが」
できるメイドさんは違いますね……落ち着いてるし、仕事もできるし。
メイドとしての仕事を全うしているアンジュさんを眺めていたセイラさんは、クスッと小さく笑う。
「アンちゃん、私以外の人がいると真面目なメイドさんだもんね?」
「……ふえ!? セイラ様!?」
「ふわふわなアンちゃんも好きですよ、私♪ だから、ふわふわしてくれてもいいんだよ?」
「ふ、ふわふわなアンジュは……セイラ様だけのアンジュですので! 皆様の前ではお見せいたしませんっ」
ふわふわなアンジュさんとは。
「アンジュさん、母上のこと好きですからね。母上に対する愛情は父上の次にあると思いますよ」
ティール様まで。そ、そのようなことは……っ!」
アンジュさんは恥ずかしくなったのか、持っていたトレイで顔を隠しながら、私達の側を離れてしまった。
「アンジュさんのお姉様好きは今更ですのに。照れちゃってましたね~♪」
「そんなアンちゃんも可愛いよね~♪」
……という二人の女子会トークが始まり、ツバサちゃん達を加えたお茶会(二次会)がスタートしたのだった。

ツバサちゃん達がお茶会に参加し、十数分程が経った頃。
それまでは、他愛ない話で盛り上がっていたセイラさんとセラフィーヌさんだったのだが、セラフィーヌさんの方が何かを思い出したらしく、「あっ」と声を上げた。
「ライトくんがいたときに聞けばよかった~……あの、お姉様。ご相談したいことがありまして」
「うん? 私で大丈夫なやつ?」
「大丈夫です。まあ、ライトくんもいた方がスムーズだとは思いますけど……いないので今はいいです。相談というのが、今度、ツバサが参加するパーティーの件で」
ルーメンさんの言ってた商品売り込み……じゃなくて、噂の沈静化を図るために参加を決めたやつかな。
こちらはこちらで、わいわい話していたのだが、セラフィーヌさんがツバサちゃんの名前を出したために、全員がセラフィーヌさんの話に耳を傾ける。
「実は護衛を増やしていただきたいんです。できたら、女性の方で……表向きはツバサの付き人として」
「なるほど。……レオン君が護衛兼付き人としていたはずだけど、更に増やしてってこと? 何かあったの?」
「いえ。現状、何かあったわけではないのですが……不安要素が少し」
「そうなんだ~……うーん。アンちゃん」
セイラさんはアンジュさんから手帳のようなものを受け取り、パラパラとページを捲っていく。それを眺めつつ、難しい顔をした。
「そうね。……増やすこと自体は多分、できなくはない。その辺はやるのなら、ブライトが上手くやってくれるから。けれど……付き人するだけじゃなくて、護衛できる女性って条件がなぁ」
「う~……ですよね。急な話だし、下手な人をツバサの側に置いておきたくないですもの」
セラフィーヌさんが何を心配して、付き人兼護衛を増やしたいのか分からない。今の戦力というか、人選のままでは不安が残る何かがあるのかもしれない。
ちらりとレオン君に目配せしてみるものの、彼も思い当たる節はないのか、首を傾げている。そして、当事者であるツバサちゃんも同じように、不思議そうに話を聞いていた。
「当日、パーティーには私やブライトもいるけれど、ツバサちゃんの側にずっとはいないし。ティールも私達と一緒に挨拶回りしてもらう予定だから難しいし」
「そうですよね。お姉様達はお姉様達で招待を受けてますものね」
うん。そもそも、ティールは女の子ではないですけども。もしかして、いけそうだったら、ティールに女装でもさせるつもりだったのか……?
ツバサちゃんの付き人問題に二人が悩んでいれば、ツバサちゃんがニコッと笑う。
「お母さん、私は大丈夫だよ? レオンがいるから」
「そうなんだけれど……あ、レオンくんが頼りないとか、一人じゃ心配って訳じゃないのよ? ただ、用心するに越したことがないってだけで」
レオン君にあらぬ誤解を受けさせたくないと思ったのか、パッと立ち上がり、慌てた様子で否定するセラフィーヌさん。レオン君は全く気にしていないようで、へらっと笑う。
「俺は大丈夫っすよ~♪ 別にそんな風に思われてないって分かってますって」
「ごめんなさいね、レオンくん。…………あっ!?」
黙って行く末を見守っていた私だったが、ふと、セラフィーヌさんと目が合う。
そして、その瞬間、セラフィーヌさんは勢いよく私の所まで近寄ってきたかと思えば、両手で私の手を握ってきた。セラフィーヌさんの目は「お宝みっけ!」みたいにキラキラとした目をしている。
「ここにいるじゃないっ! 適任者がっ!」
「え、えーっと……適任?」
誰が。何の。……いや、話の流れで分かるけどもだ。
「お願い、ラルちゃん! 今度のパーティー、ツバサ達と一緒に参加してくれないかしら!?」
「…………なぜ?」



~あとがき~
高みの見物はできないらしい。

次回、朝の騎士達とラル。
大丈夫。ちゃんとどうなったかもお話ししますんで。

本編ではしっかりメイドのアンジュだけど、私の中ではそれなりに(?)ふわふわしてるというか、喜怒哀楽がはっきりしてて、分かりやすい子のつもりです。言ってしまえば、ツバサお嬢様大好きっ子メアリーさんみたいな人というか。なんか、そんな感じをイメージしてるつもりなんだが……普通に仕事できる女になってておもろい。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第367話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で話を聞く物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、めでたくお付き合いすることが決まったセイラのブライト。そんな回想が終わりましたとさ。
今回はまた現代に戻ってきて、あれこれ質問大会やります。


《L side》
セラフィーヌさんが─時々、セイラさんも─話してくれた話をまとめると……
「セイラさんとブライトさんは祭りの後、医務室で二人きりになって……晴れて、ゴールインした、と」
「そうなるわね~♪」
「ラルのその言い方は、結婚まで一直線でしたって感じするけど」
いや、実際にしてるやん。
あのブライトさんのことだ。お付き合い云々も真面目且つ、誠実に捉えているはず。
「生半可な気持ちで、セイラさんと付き合うわけないわ! 一生、幸せにしてやんよって思いだったに決まってる! つか、宣言してるよ、絶対に!!」
「やめて!? ラルちゃん、恥ずかしいから、やめてくださいっ!」
セイラさんは顔を赤くして、ぶんぶんと首を横に振る。そんなセイラさんの横でセラフィーヌさんは楽しそうに紅茶を飲みつつ、にこっと笑う。
「ふふ、お姉様ったら。いつまで経っても可愛いですね♪」
「からかわないでよ、セラちゃんっ!」
この場にセイラさんの味方っていないなぁ……まあ、興味津々な人達と、嬉々として語る人しかいないからな。仕方ないか。
「話には、なかったっすけど、どっちから告白したんすか?」
「あら~♪ やっぱり気になるわよね? 実は当時の私も気になったから、ライトくんに聞いちゃった。お姉様は教えてくれなかったから」
レオン君の質問にセラフィーヌさんは笑顔のまま答える。
「本人からは「俺からです」って聞いたわ。流石に内容は教えてくれなかったけど……あ、お姉様、この際ですし、話しちゃいません?」
「話しちゃいませんっ!!」
これまた全否定。多分、今までも、こんな風に否定してきたんだろうな。
とはいえ、セラフィーヌさんが教えてくれた話で、ある程度、予測はできそうだ。
「もしかして、打ち上がる花火をバックに愛を誓ったんですか? その時間、花火、上がってたんでしょ?」
「だろうなぁ~♪ ギルドの医務室から花火バッチリ見えるはずだし♪」
「ってことは、真面目なブライトさんのことだから、直球の言葉で告白されたのでは?」
「よ、予測禁止っ! ラルちゃん、当ててきそうで怖いっ!」
そう言うってことは、そこまでは当たってるのかな。
話に出てきたセイラさんは、ブライトさんとの交際について、積極的ではなかった。理由としては、身分や当時の環境等、要因はいくらかあったはずだ。それらを踏まえると、セイラさんが素直に、ブライトさんの「好きです。付き合ってください」的な直球告白をすんなり頷いたかは怪しいところ。
となれば、ブライトさんに説得されたか、言い合いの末、愛のために茨の道を進む覚悟を決めたのか……何にせよ、二人にとって、印象的な夜になったに違いない。
「なんか勝手に納得してるけどさ……ラルがその気になれば、視れるよね? 視るの?」
私が一人で思考を巡らせていれば、ティールが大して興味もなさそうに問いかけてきた。確かに、ここにはティールもいることだし、視ようと思えば視れる。その考えが少しでも過ったのは否定しない。
「視ないよ。二人だけの大切な思い出みたいだし、その手を使うのは野暮でしょ?」
「……へぇ。そういう常識はあるんだ」
お前は私のことをなんだと思ってるんだよ。私はちゃんと常識人ですけど!
「あ、そうだ。告白以外の質問なら答えてくれますか?」
告白シーンを聞こうと、あの手この手でセイラさんに話しかけていたらしいセラフィーヌさんだったが、それは諦めたようだ。別の質問をセイラさんに投げ掛ける。
「え、何かあったっけ……?」
「私を見つけた道具の話。初耳だなって思って」
ブライトさんがセラフィーヌさんを見つけるための道具だと、セイラさんにサングラスを渡していた。確かに、話してくれたセイラさんからは、仕組みについて詳しいことは出てこなかった。
「あぁ……あれか。話した通り、ブライトに内緒にしろって言われてたから、今までセラちゃんにも話してなかったの。まあ、もう時効な気もするけど……と、噂をすれば! ブライト~!」
セイラさんがパッと立ち上がり、どこかへと駆けて行く。その先を目で辿ってみれば、確かに、どこかに向かう途中らしきブライトさんが歩いていた。
セイラさんがブライトさんと一言、二言、話せば、私達の方を指差し、また少し話をする。そして、話がついたのか、セイラさんはブライトさんを連れて戻ってきた。
「お待たせしました♪」
「皆さんお揃いで。……セイラから話は聞きました。私達の参加した神子探しで、使用した道具のことを聞きたいとか」
「そうです。なんだったんです? ライトくんの自作道具?」
「私一人で作ったわけではないですよ。……あれは言葉通りで、セラさんを探すための道具です。名前は特につけていなかったかと。具体的に言えば、セラさんの魔力を探知して、マップに表示していました」
「私の?」
ブライトさんは静かに頷き、アンジュさんからメモ用紙を受け取ると、さらさらと何かを書きながら、仕組みについて教えてくれる。
「魔法使用者には魔力パターンが存在します。魔力パターンとは、指紋や声紋、網膜等と並んで、個人を特定できる情報源です。それをサーチできれば、個人を追える。……仕組み自体は簡単ですし、対策しようと思えば簡単にできる。なので、貴女には秘密にするようにセイラに言いました」
「……つまり、ライトくんはあのサングラスに私の魔力パターンを記録させて、追わせてたってこと?」
「そうですね。セラさん、私の前で魔法使ってくれるから、サンプルには困りませんでした」
ブライトさんにしては珍しく不敵な笑みを浮かべ、セラフィーヌさんは話を聞いて、ピタッと固まってしまう。
セラフィーヌさんには悪いけど、私としては、ブライトさんがもの作りに関わっていたことに驚いた。
「ブライトさんって、ルーメンさんのとこで道具作りとかしてたんですか?」
「そうだな……本格的にしていた訳ではないかな。何かを作り出すというか、発明は得意ではないから。しかしまあ、せっかく修行という形で外へ出ているのだから、何事も経験だと思ってね」
ほへ~……ブライトさんって意外と、好奇心ある方だったのかな。それとも、単に何かを学ぶのが好きなのか。
ブライトさんは書き終わったらしいメモ用紙を私の方へ差し出してきた。私は首を傾げつつも、それを受け取り、メモを読んでみる。
中身は、さっきまで話していたサングラスの簡単な設計図のようだった。
「ラルさんはこういうの、好きなんだろう? もし、更に詳しく知りたければ、資料を探しておくよ。まだ残していたと思う」
「…………ブライトさ~んっ! 好き!!! 資料、お願いしますっ!」
「? あぁ、分かった」
ブライトさんからのメモを大切にポケットにしまい、話を元に戻す。元々は二人の─セラフィーヌさんも含めば三人─昔話を聞いていたのだ。
「話は変わりますけど、ブライトさんって、どのタイミングでセイラさんを好きだな~って自覚したんですか?」
「ちゃんと聞くね、ラル……?」
いや、せっかくご本人様いらっしゃるし?
ブライトさんは当時を思い返しているのか、しばらく考え込んでいた。その間に復活したセラフィーヌさんが「確か……」と口を開く。
「お祭りの最中にって私は聞いたけど……違いました?」
「合ってるよ。私もそう聞いたから。……というか、私も気になったから、すぐにブライトに質問したもの」
祭りのブライトさんの様子がおかしいってのは、セイラさんも気づいていた訳だし、そのタイミングなんだな。
「それに気付いて、即行動したんすね」
レオン君の言う通りだ。
自分の気持ちに気付いて、即行動に移したのは、最早、勢いに任せて言ってしまったのではと思ってしまう。いや、ブライトさんに限って、勢い任せってのはなさそうだけども。
こういうのって慎重になりそうなものだけれど、ブライトさんはそうじゃなかったんだな。自信家って訳でもないだろうけど、セイラさんに嫌われてないって、なんとなく思っていたのだろうか。
「正確に言えば、セイラと回っていて、はぐれた時だったかな」
「あら、そうだったんですか? 何かきっかけでも?」
これはセイラさんも初耳だったのか、不思議そうに質問を投げ掛ける。
「きっかけと言うなら、はぐれたことがきっかけかもしれんな。……今、振り返っても、あれ以上に我を失ったことはない気がする」
「やだぁ~♪ そんなに私が好きだったんですか?」
「そうだろうね。今でもそうだよ」
「うふっ♪ ありがとうございます♪ 私もあなたが大好きですよ?」
「ありがとう」
ラブラブやな、お前の両親。
「そうだね。二人きりの時にやってほしい」
それはそうかもしれないけど、他人の前で、こうもはっきり言いきれるのも、仲のいい証拠よな。
ますます、二人がどんな形で付き合うようになったのか気になるものの、そこには触れないでおくのが二人のためなのだろう。



~あとがき~
いつまでたっても仲良しなブライト&セイラでした。周りの人は、この二人をどんな気持ちで見とるんやろ(笑)

次回、次章の前フリ。

最後まで二人の告白シーンを描写するか否か悩みました。が、本編上では内緒という形にしました。現状、セイラもブライトも周りに語ってないので、本編で語るのもあれかなと。後、流れ的にもない方がええもんでな。
とはいえ、もしかしたら、番外編という形に残す可能性は大いにあります。いやだって、一緒になった経緯を話してるのに、肝心の部分が明かされてないんですもん。これからだって時に打ち切りしたって感じが凄い(笑)
なんでまあ、どこかタイミングのいいところでぽいっとするんじゃなかろうか。……多分?

ではでは。

気ままな神さま達の日常記録 vol.17

こちらは『学びや! レイディアント学園』の番外編でございます。スピンオフというか、なんというか。全く本編に関係のない皆々様に焦点を当てたお話となっています。
今回は例の方の部屋の話。
遂にあの魔窟ともおさらば……?



☆さくっと登場人物紹介☆
アルフ:転生の神様。魔法が大の得意。ミィに関することには、とことんやる(意味深)がモットー。

ミィ:アルフに仕える蒼い目をした白猫。今回に関しては、特に何するでもなく、のほほんしてる。

ファウス:力の神様。大体、ろくな目に遭わない。きっと、そういう世界に生まれてしまった哀れなお方なのだ。

フォース:制御者の一人。得意な仕事は特になし。ファウスに付き従ってきた期間が長いため、仕事に関しては、培ってきた経験、スキル共にハイスペック。

エレル:制御者の一人。得意な仕事は書類整理。ただし、図書館では迷子になるので、周りの手間が増える。

ユウ:制御者の一人。得意な仕事は整理整頓と書類作成。黙々と何かする作業が性に合ってる。

ラウラ:制御者の一人。得意な仕事は特になし。なんでもそつなくこなし、可もなく不可もなく。ただし、手伝わない率もそこそこ高い。





★天界の魔窟、大改造計画★
ここは天界。様々な神が住まう世界。
そんなところで、おれは欠伸を漏らしつつ、適当に廊下を歩いていた。
別に仕事があって来たわけでも、調べ物がしたくて来たわけでも、呼ばれてきたわけでもない。
ただ、なんとなく、が一番しっくりくる理由だった。
下でやることもないし、暇だから帰ってきた次第である。ぶっちゃけ、散歩なら下界でもできるけど、ここなら人酔いせずに適当にブラつけるから、気楽でいい。仮に散歩に飽きたら、ここにある自室に籠るか、図書館に足を運べば、いくらでも暇は潰せるし。
無計画に、何も考えずに、適当に歩いていると、角から何かが転がってきた。その何かはおれの足に当たって、ピタリとその動きを止める。
「……? ペン?」
拾い上げてみれば、シンプルなデザインの筆ペンのようだ。
こんな廊下にペンが一つ転がってくるとは。恐らく、誰かの落とし物なのだろうが……誰のかなんて、見ただけじゃ分からない。ラルなら、能力を使って簡単に探し出せるのだろうが、おれにそんな便利能力はない。
転がってきた先に行けば、持ち主がいるんだろうか?
そう思って、そちらに目線を向けたところで、曲がり角の影からひょっこりと顔を覗かせた人物──いや、動物がいた。
「みっ!」
白くてふわふわした毛並み。
くりっとした蒼い瞳。
鈴のついた赤い首輪。
そんな子猫……アルフ様の従者兼パートナーのミィがいた。
ミィはおれの姿を見れば、パッと顔を輝かせ、笑顔を見せた。
「みゃあ!」
「ミィか。一人か?」
「みゃ~……にゃにゃっ!」
この反応は一人ではなかったみたいだが、今は近くに誰かがいるわけではないらしい。
ミィはおれの持つ筆ペンを見ると、前足でちょいちょいっと欲しがるような仕草を見せる。
「? これ? お前の……では、ないよな。だとすると、アルフ様か兄貴か……兄貴は筆ペンって趣味じゃねぇな。なら、アルフ様のか?」
「にゃにゃにゃっ!」
どうやら、正解らしい。
転がってしまったペンを追いかけ、ミィはここまで来たのだろう。
となれば、この近くにペンの持ち主……アルフ様がいらっしゃるはず。
「ミィ、アルフ様はどこだ?」
「にゃ? にぃ~……にゃうっ!」
こてんっと首を傾げたものの、すぐに居場所を思い出したようで、ニコッと笑い、おれを案内するように前を歩き始める。そんなミィの小さな背中を追いかけるように、おれもゆったりと後ろをついていく。
そして、大した時間もかからずに、目的の人物を見つける。
アルフ様は、とある扉の前で何やら作業中。楽しそうに鼻歌交じりに何かをしていた。
「アルフ様」
「? あれ、フォースくん? ファウスさんなら今、ここにはいないよ?」
なぜ、マスターの名前が……と思うけど、よく見たら、ここはマスターの部屋(私室)の前だ。通称、天界の魔窟。悲しい事実だが、おれ達のマスターの部屋は、天界では有名な汚部屋なのだ。いや、マジで涙が出てこないくらい、とても惨めで悲しい話なのだけれども。
そんな部屋の主は今、ここにはいないらしい。くっそどうでもいいけど。
「いえ。マスターにこれと言った用はないです」
「あら、そう? じゃあ、どうしたの? たまたま通りかかったとか?」
たまたまと言えば、たまたま、なのかな。
「そこの曲がり角で、このペンとミィに出会いまして。……ミィの反応からして、アルフ様の物ではないかと」
と、ずっと持っていた筆ペンをアルフ様に差し出す。筆ペンを見たアルフ様は、「あっ」と声を上げる。
「それ、僕のだ。ありゃ、作業途中に転がっちゃったのか……ありがとう、フォースくん♪」
「礼なら、ミィに。ミィが追いかけてなかったら、おれはこのペンがアルフ様のだと分からなかったので」
「にゃっ!」
「そうだったんだ。……ありがとうね、ミィ♪」
「にゃにゃ~ん♪」
無事、ペンを持ち主へと返せた……が。
それはそれとして、アルフ様はなぜ、マスターの部屋の前で作業をしているんだろう。しかも、とても怪しげな。
「アルフ様、差し支えなければ教えてください。ここで何をしてらっしゃるので?」
「うん? ファウスさんの部屋の魔改造
と、アルフ様は曇りのない笑顔で答える。そして、ついでと言わんばかりに、これまた、満面の笑みで補足説明までしてくれる。
「ほら、前に話したでしょ? 会議でファウスさんの部屋の問題が議題に上がったって話」
「ありましたね。そんな不名誉な話が」
少し前、それが理由でアルフ様とミィ、そして、おれ達制御者+兄貴とで、マスターの部屋の掃除をしたことは記憶に新しい。
「あの時、掃除はしたけど、根本的な解決はしてなかったでしょ? だから、今、解決するために作業してたって訳」
「なるほど。……ちなみに、部屋の主に許可等は」
「もちろん。取ってないよ!」
……だよなぁ。
「あ、安心して? 『魔改造』なんて言ったけど、怪しい魔術を施してる訳じゃないからね。ただ、扉にちょっとした仕掛けをね?」
扉に、ですか。
そう言われて、扉に目を向けるものの、パッと見、変化はなさそうに思う。いやまあ、目に見えた変化があれば、マスターが気付いてしまうから、意味ないのだけど。
「これがきちんと作動すれば、勝手に扉が開く心配はなくなるよ。……ミィも安心して通れるようになるね~♪」
「にゃ~♪」
この前の雪崩でミィが怪我した事件(?)……未だに根に持っているらしかった。
「どのような効果で雪崩を阻止するのですか?」
「う~んとね~……あ! ほら、この前の掃除で使った袋。覚えているかい?」
袋に場所を指定させ、その袋に入れた物をその場所へ転送するあれですか。名前は……確か、『移動袋』でしたっけ。
「そそ♪ つまり、この扉を起点にして、部屋から廊下に流れていった物を元あった所へ戻すってこと」
図書館の本は図書館へ、他人から借りたものはその人の所へ……以前、使った袋の上位互換みたいなもんか。あれは一つの指定先にしか物を送り込めなかったし。
何より、部屋いっぱいになった物達は自動的に仕舞われるって訳で、掃除も幾分か楽になりそうだが……
「アルフ様。他から借りたり、持ち出した物が扉から廊下に流れた場合、持ち主の元へ返るんですよね?」
「うん。そうだよ♪」
「なら、元々その部屋にあった物……つまり、マスターの私物はどうなるのですか? その理屈で考えれば、マスターの部屋に戻りますよね?」
アルフ様はピタリと作業の手を止める。
そして、たっぷりと間を空けた後、にっこりと微笑む。
「それは内緒♪ けど、そうだな。僕からは、ファウスさんには『天罰』が下るかも……ってだけ、言っておこうかな?」
「天罰……ですか」
「うんうん♪  ま、どうなるかは、すぐに分かると思うよ。……だから、フォースくんはこの事、ファウスさんには内緒にしててね?」
「……は、はい」
いやほんと、あの件を未だに根に持ってるんだな、このお方は。

──そんなやり取りから数日後。
おれ達、制御者四人は、エル主催、カードゲーム(ババ抜き)大会をしていた。
おれとユウが先に抜け、ラウラとエルの一騎討ち。突然、それは起きた。
「──どわあぁぁぁぁ!!!???」
と、物凄い悲鳴と共に、物凄い音がマスターの部屋から聞こえてきた。
制御者全員がそちらに目線を向け、少なからず何かしらの反応は見せる。とは言え、ある種、日常みたいなものでもあるので、大した焦りはないが。
「ん~? 今の声はマスターかな? 今回は何したんだろうね?」
ラウラは大して興味もないくせに、にこにこと笑いながら、おれ達に向かって問いかけてきた。
そんなラウラの質問にエルは「うーん」と考え込み、首を捻る。
「なんだろ? あ、この前はね~? やらなきゃいけない仕事の書類、くしゃくしゃになって出てきて、大慌てしてた。……今日もそれ系?」
そんなエルの回答に、ユウは別の意見を持ち出してきた。
「或いは、山積みになった本が降ってきたとかかも。つい最近もあったよ。その件でミィ、ぷんすか怒ってたから」
「あはは♪ あったねぇ? その話繋がりで言うと、ウィル様から黙って借りてた資料が山程出てきて、ウィル様が大激怒してたこともあったねぇ?」
「あー! あったあった! で、売り言葉に買い言葉で、二人で大喧嘩したんだよね?」
「うん。それで、結局、アルフ様に止められたやつ」
おれの知らない事実が山程出てくるな。あいつ、マジでなんなんだ。トラブルしか振り撒かないのか?
「……さて、と。こんな辺りで答え合わせ、しに行く?」
と、ラウラは面白そうだと言わんばかりにおれの顔を覗き込む。
おれはラウラの言葉には返答せず、黙って立ち上がり、マスターの部屋のある方向へと歩き出した。エル達も遅れつつも、後ろをついてきていた。
あいつらは好き勝手言っていたけど、数日前のアルフ様の件がある。多分、それ絡みだと思うんだよな。
……なんてことを思いつつ、おれはマスターの部屋の前まで来ると、黙ってその扉を開ける。
「う、うぐ……」
室内を覗いてみれば、アルフ様の仕掛けが正常に作動している証なのだろう。アホの部屋にしては整頓されていた。
そして、その整頓された室内で、頭を押さえて痛みに悶えるアホの姿があり、その近くには、大きなタライが転がっていた。
恐らく、あの巨大タライが頭上に降ってきたんだろう。アルフ様の言う、天罰とやらのせいで。
事情を知らない三人は、倒れているマスターに目を丸くし、慌てた様子─というよりは、理解に苦しんでいるから、状況把握のため─で部屋に入り、マスターの傍へと近寄る。
エルは倒れてるマスターへ。
ユウとラウラはその辺に転がっているタライへ。
「マスター! 何があったんですか!?」
「な、なんか、頭に……当たった……俺の頭、ちゃんとありますか……?」
大丈夫だ。話せてる時点で、頭は取れてねぇよ。つか、取れてたまるか。
「え、えと……タ、タライ? そんな大きなタライ、どこから持ち出してきたんですか……?」
「俺も知らん……え、俺のですか、これ?」
「覚えてないの? これ、マスターのだから、部屋にあるんじゃ?」
「知らない子だよぉ、それぇ」
涙目で語るマスターに、ラウラはけらけらと、楽しそうに笑う。
「あはは~♪ そうなんですか?……じゃ、どこしまおっかな~?」
「冷静というか、なんと言うか。……ドライだな、ラウラ」
「ふふ。そう? でもさ、そこいるリーダー程じゃないでしょ?」
ラウラは扉付近から動かないおれをちらりと見る。
そりゃ、ねぇ? アルフ様が何かしてたのを知っているから。
アルフ様の言っていた天罰とは、この事なのだろう。
恐らく、マスターの私物がどうなるのか、それの答えが、『タライが降ってきた』なのだ。
いつもなら、廊下へと流れ出るはずだった数多くあるマスターの私物。そんな私物の中から、マスターにそこそこのダメージを負わせられ、且つ、危険度の低いものが降ってくる仕組みなのだろう。でなければ、タライなんて絶妙なもの、頭上に落ちるわけがない。
「フォース、俺がなんで、こうなったか知ってる風なの……?」
「だったら、どうするんだ?」
「いや、どうというか……状況説明して欲しいな~って」
「残念。おれも知らねぇよ。……そうだな。アルフ様にでも聞いてみれば?」
「!? そう言うってことは知ってるってことだよね!? アルフさん、何したの! 俺の部屋に何してるの、あの人ー!!!??」
悪いことではないからいいんじゃないの?
これに懲りて、定期的に整理整頓して欲しいものだね。……ヤツが自主的にしてくれるかは、知らないけど。



~あとがき~
なんか、ほぼ毎年、この人の部屋の話をしている気がします。けどまあ、これで完結だろ。来年はしない。つまり、ファウスの出番も終わり……?←

次回、通常更新に戻ります。
回想のまとめ回からですな。

フォース達のマスターこと、ファウス。今はこんなんでも、昔はちゃんと神様やってたんです。真面目に仕事に勤しんでたんです。けどまあ、月日が流れ、こうなりました。理由はちゃんとあるけど、一言で言うなら、世界が平和になったから、なんですよね。
きっと、彼が真面目に仕事をやるってことは、世界に何かがあった時、なんです。だからまあ、ちゃんとしない神様のままの方が、世界的に幸せかもしれません。
フォース達の手間は増えますけど←

ではでは。