satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第453話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、騎馬戦がありました。そこで意外な交流を築いていたユーリとシエルくんの存在が……!
今回はまた別競技の話です。


《F side》
「……すーくん! 起きてー!」
「…………ん」
ずっと閉じていた瞼を上げると、目の前にはおれの肩を掴む、すぅがいた。
「……何?」
「何じゃないよ。すーくん、借り物競走、出るんでしょ? 出番だよ?」
あぁ、もうそんな時間なんだ。
ふわりと欠伸をして、席から立ち上がる。そんなおれをラルはニヤッと嫌らしい笑みで手を振ってきた。
「いってらっしゃ~い♪ 面白いお題を引くことを願ってるね☆」
「じゃあ、その面白いお題に当てはまったら、問答無用で連れ出す」
「いいよ? 当てはまるならね」
言ったな。そん時は小脇に抱えて連れ出してやる。
「頑張ってね、フォース!」
「いってらっしゃい」
りぃとティールは普通に送り出してくれる。ラルも大人しくこうすればいいのに、なんて可愛げのない女なんだろう。
まあ、それを言ったところで、あいつには響かないのだろう。
おれはフードを被り直して、観客席から伸びる階段を降り、フィールド上に出る。
借り物競走は個人戦だが、なぜか参加人数が多い。それだけレースも多いんだろうけど、走る前から気が滅入るくらいだ。
そもそも、生徒は必ず一つは出ろという制約もウザい。サボるにサボれないし。まあ、どんな状況でもアクシデントはある……という名目で、仮病とか使って休んでもいいかとも思った。が、二日間まるっと欠席するのは、今後にも響きかねないので断念した。何より、すぅがいる時点で、サボれるはずもない。
で、唯一参加する競技に、なぜ、参加人数の多い借り物競走を選んだのか。それには理由がある。
『続いて行われる競技は借り物競走だー! レーンの途中に設置された紙を拾い、そこに書かれたお題を観客席から探し出してくれ! フィールドにいる選手から借りるのは、なしだぜー!』
『書かれたお題が物なら誰かに借りて、人ならその人物と一緒にゴールを目指してください。ゴールした瞬間、係の人がそのお題と相違ないか確認します。問題なければ、完走となり、間違っていれば、お題探しからやり直しとなりますので、注意してくださいね!』
『お題は色々用意してるからな~♪ 何が出るか楽しみだな!』
……このお題がおれがこれに出た理由である。
毎年、マジでくだらんお題が紛れ込んでいる。その中の一つには『好きな人』という、ド定番なやつまである始末。あるのはいい。いいんだけど、これのせいで一昨年、知らん女達に追いかけ回された。
そのため、去年、今年と自分で出るようにして、追いかけ回されるのを阻止していた。一人一競技参加という制約も達成できるし、これにさえ出れば、後は適当に暇潰ししていればいいので、一石二鳥ではある。
まあ、おれ自身が『好きな人』お題を引き当てる可能性も捨てきれないけど、そん時はそん時である。ぶっちゃけ、レーン上に設置されたお題札はそれなりに多いので、引く方が確率は低いと思ってるけども。
『それでは、参加者は所定の位置についてください!』
『借り物競技、スタートだぜ!』

レースは順調に進み、おれが参加するレースの手番となる。
選手は八名程。借り物競走という障害物(?)があるからか、男女混合レースとなっている。
「……」
その中に同級生のディーネもいた。あいつは何を思って、これに参加しているんだろう。食べ物は出てこないのに。
「位置について……よーいっ!」
スタートの合図として、雷管の音が勢いよく鳴り響き、選手らは一気に走り出す。全員の目的はもちろん、お題が書かれた紙である。
おれも適当に散らばるそれらの中から一枚拾い上げ、書かれたそれを確認する。
「……あ~」
そこには『ピンクのリボンを身に付けている生徒』とある。色指定している辺り、いるのか、いないのか博打みたいなお題だな。まあ、こんだけの生徒がいれば、どこかにはいるだろうという算段かもしれないが。
今回の場合、すぅがそれに当てはまるので、あいつを連れていこう。身内にいてよかった。
能力を使えば、一発であいつの傍にいけるけど、流石にルール違反だ。移動系の技って訳じゃないけど、端から見れば、そう取られても不思議じゃないし。
……分かっていても、わざわざ、足で戻るの、面倒臭いなぁ。
おれは急いで走る……でもなく、普通にラル達のいる観客席に戻ってきた。全員が『この中にいる誰か、もしくは持っているもの』が目当てなのだろうと察しているらしい。
「宣言通り、面白いお題だったの~?」
「ん~……別に。残念ながら、お前を連れ出せそうなお題じゃない」
色指定なしで、リボンを身に付けている生徒、なら、ラルを小脇に抱えて、連れ出せたのに。惜しい。
おれは一応、すぅの身に付けてるリボンをちらりと確認する。まあ、今朝、おれが結ったので、間違いないのだが……今でもきちんとピンクのリボンで髪を結んでいる。
「すーくん、お題なんだったの?」
「それは後で。すぅ、ちょっと来い」
「? うん。私でよければ!」
「サンキュー♪……んじゃまあ、失礼して」
立ち上がろうとしていたすぅの腕を引っ張り、そのまま両手ですぅを抱き抱えた。
「ひゃ……ちょ、ちょっと、すーくん!?」
「おやおやぁ? これはこれは~♪」
「ラル、うるさいよ……?」
本当にそう。おれが戻るまでにこいつのこと、黙らしておいて欲しい。
ラルに構っている時間も惜しいので、おれは気にしないことにして、くるっと方向転換する。
「じゃ、行ってくる」
「ねえ! すーくん、普通に行こうよぉ~~!!」
「あ? こっちの方が速い」
「あ、えと、ステラ、いってらっしゃ~い……?」
「リーちゃーーーん!!??」
「あんま騒ぐなよ。危ないし、舌、噛むぞ?」
「騒ぎたくなるような抱え方するからでしょ!? こ、これ、お姫様抱っこ……!」
そんなことを言われても。こっちの方が運びやすいんだよ。
ぎゃーぎゃー騒ぐ、すぅはガン無視して、おれは来た道を戻る。階段から一気に飛び降りることも考えたけど、目立ちそうなので、やめておいた。
ゴール付近ですぅを下ろし、ポケットからお題の紙を取り出した。そして、その紙を待機していた係の人に渡す。
「お疲れ様でした! お題の確認をしま~す♪」
「さ、最後の最後まで……下ろしてくれなかった……っ!」
何度も言うようだが、おれ一人が走った方が速い。
「……ありがとうございました! お題は『ピンクのリボンを身に付けている生徒』で、お題はクリアです!」
「どーも」
残念ながら─と、言ってみるけど、おれは全く興味ない─一位は逃したらしい。とはいえ、三番目にクリアできたので、上々ではないだろうか。
「すーくんのばかっ! なんで、すぐに下ろしてくれないの!? 私、一緒に走れたのに!」
「しつっこいな。……だから、おれが一人で走った方が速いっての。文句言うな」
というか、もう終わりましたけどね。
すぅは運ばれ方が気に食わなかったのか、おれの背中をずっと叩いている。全く痛くないので、気にならないんだけども。
おまけに頬を膨らまし、大変ご立腹のようで。
「言うよ! 全生徒に見られちゃったじゃん!」
「あ? 別にいいだろ。あんなの見られたところで、減るもんはないだろ?」
「よくない! 私はよくないの!」
何が。不都合でもあるわけでもあるまいに。
「あるよ!? すーくん、明日から、『中等部の女の子をお姫様抱っこした』って噂になるからね!?」
そう言われると、そうかもしれない。しれないけど、だからなんだって話だ。剣技大会時の鈴流に関しても、いつの間にか何も聞かれなくなったし。それと同じだろ。
「変に反応しなきゃ、人は勝手に飽きる。気にすんな」
「んもー! それができるのは、すーくんだけなのっ!」
えぇ……? 抱っこなんて星の数ほど、してきませんでしたっけ?
これ以上、何か弁明してもすぅの耳には届かなそうである。無視安定かもしれない。
ぷりぷり怒り続けるすぅは無視し、おれはふとゴールの方へ目を向ける。そう言えば、おれと同じグループにディーネがいたはず。ゴールした選手の中にいないので、まだお題探しをしているのかもしれない。
「……すーくん、聞いてるの!?」
「あ? うんうん。聞いてる」
「嘘つけ……って、あれ。ツバサちゃん?」
ん?
おれが話した係とは別の人にディーネがお題の紙を渡している。そのディーネの側にツバサがいた。
「お題の確認、失礼します。……あれ、えと……お題には『好きな人』……と、ありますが」
「ん。……そこに、異性って指定はない」
「あーちゃんの好きなお友達として、来ました~♪」
「な、なるほど……?」
まあ、『好きな人』ってだけで、性別や好きの種類等々の細かい条件の指定はない。二人の主張は間違ってはないだろう。
ド定番お題、ディーネが引いたんだな。いい回避してるじゃん。
まあ、それはそれとして。
おれは『好きな人』お題を引かずに、そこそこの成績で終わらせられた。体育祭最後の競技としては、悪くないんじゃない?



~あとがき~
本編でフォース視点は初めてでしたな。

次回、体育祭、一日目ラスト競技!

フォースがちゃんと競技に出てる話でした。
リボンという指定だけなら、ラル、ステラ、リーフ、全員いけるんですよね。実は。
リボン指定だったら、嫌がらせも兼ねて、ラルを連れ出すと思うんですが、大人しく抱えられるかは謎ですね(笑)

ではでは。