satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第449話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でだらだらしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ツバサ、ミユル、ステラ、リーフの参加する玉入れが終了しました。結果は白組の勝利! まあ、謎パワーによって、紅組に白組の玉が混じってたみたいですけど!
ツバサ「……私、ちゃんと背を向けて投げてたんですよ……?」
ま、まあ、あれがツバサちゃんのせいだとは決まってないので! き、決まってないので!!


《L side》
一日目午前の部、最終競技が始まろうとしていた。午前の最後の競技とはいえ、最後なので、生徒の盛り上がりも一際である。
……いや、この異様な盛り上がりは多分、最後だからって理由じゃない。競技自体が特殊なのだ。
『さあ、続いては! 今回の体育祭競技の中で、いっちばん倍率の高かった! パン食いレースだぁぁぁっ!!!!』
『噂では……数年前、あまりの倍率の高さのせいで、大会当日まで、参加者同士争いがあったとか、なかったとか……?』
私は水分補給をしながら、二人の前説を聞いていた。
単なる体育祭競技でなんつー事件を生み出しているんだ。まあ、理由は知っているのだけれど。
『おうよ! なんてったって、この競技に使われるパンの中には『幻のジャムパン』と噂高い、クレアおばさんのりんごのジャムパンがあるからな!』
……はい。これが理由です。
高等部では有名である、数量限定の『幻のジャムパン』が競技で食べられるのだ。もちろん、こちらでも限られた人にしか、手にできないのだけれど。それでも、参加さえできれば、誰にでも食べられるチャンスがあるのは確かである。
『ジャムパンだけでなく、他のパンもクレアおばさんのお手製ですから、全て美味しいんですけどね~?』
『それでも! 幻のジャムパンファンからすれば、これは見逃せないビッグイベントなんだぜ、相棒!!』
幻のジャムパンファンって何。……いや、言っている意味は分かるけど、そんな名称、いつからついてるんだ。
『えぇっと……先輩? もしかして、出たかったんです……?』
『おうよ! くそー! 抽選に外れたんだよー!!』
リュウ君の事情なんて、くっそどうでもいい~
リュウ君は軽い咳払いをし、改めて競技についてルール説明をしてくれた。
『このパン食いレース! 各レースに分けられる……なんてことはなく、全員参加! 一回限りのガチンコレース! 参加者は四ヵ所に設置されたパンを食べて、ゴールを目指してくれ!』
『ゴール前以外のポイントでは、ちゃんと手に取ったパンを完食してから走り出してくださいね? 食べきる前に走り出したら、失格になります!』
『最終ポイントだけは、少女漫画あるあるの口に咥えた状態でのゴールが許可されてるから、一直線に目指してくれよな! 曲がり角はないから、安心しろよ☆』
『ちなみに、幻のジャムパンは最終ポイントに配置される予定です♪ 運がよければ、手にできるのではないでしょうか?』
『トップ争いに躍り出て、ジャムパンを引き当てるか、残り物にはなんとやら~……で、あえて、後方に位置付くのか……その辺は参加者次第だ!』
いや、これ、一応、競走だから。幻のジャムパン引き当てたら勝ちってルールではないぞ?
『よぉし! 説明は以上だ!! 参加者はスタート位置についてくれ!』
……簡潔に言うと、だ。
数十名によるパン争奪戦である。三ヵ所に設置されたポイントでパンを食べ、最後のポイントでパンを手にして、ゴールをする……それだけである。
中等部、高等部合わせて、千人はいるので、この数十名ってのは、高い倍率を掻い潜り、選ばれた戦士(笑)ってところか。
「……なあ、ラル」
「ん?」
自前の上着のフードを被り、じっと下を見つめるフォース君。……ちなみに、ついさっき、こちらの席に帰ってきたので、ステラちゃん達の玉入れは見てないと思う。
そんな彼の視線の先には我らの仲間、ティールの姿がある。
彼もまた、死線(倍率)を潜り抜けた戦士の一人だ。いやはや、あのりんごに対する執着は天晴れだよ。もう何も言えないよ、私は。
私はふわりと欠伸を溢しつつ、パラパラと体育祭のパンフレットを捲っていく。
この態度で察してくれるだろうが、私はこの競技にまっっったく、興味がない。ティールが勝とうが負けようがどうでもいいのです。強いて言うなら、怪我だけはするなくらいです。
「この三年、ずっと思ってたけどさ……今までの競技の中でもこれが一番、怪我人出ねぇ?」
「皆、加減を知らないからねぇ」
とはいえ、会場の不思議パワーのお陰で、大きな怪我をしなくてすむ─負ったとしても、軽い擦り傷程度である─ので、こういう無茶苦茶なレースもありである。
「それを許す学園もどうかしてるわ。……時にラルさんや」
「今度はどうしたんだい、フォースさんや」
「あの胃袋ブラックホールなディーネさんと同等のスピードを見せつけている君の相棒に一言、お願いします」
そう言われ、私もフィールドへ視線を向ける。
パン食いレースなので、アリアちゃんもいるだろうと思ってたけど、やっぱり、ちゃんといるんだな。
そんなアリアちゃんは今、三つ目のポイントで焼きそばパンをぺろりと平らげているところだ。そして、ティールは少し遅れながらも、三つ目のポイントでカレーパンに手を伸ばしているところである。トップ争いの軍にはいるので、上手くいけば、トップスリーに入るかもしれない。
「……あんな相棒、存じ上げません。人違いでは?」
「現実から目を逸らすなよ」
「最後のポイントで絶対に幻のジャムパン、だっけ? それを取れるかは運ですよね?」
ステラちゃんの言葉に私は小さく頷く。
そう。ルール上、幻のジャムパン以外のパンも多くあるので、普通なら、幻のジャムパンを引き当てるのは難しいだろう。
普通なら、ね。
「アリアさんって、すーくんとラルさんのお友達なんですよね?」
「友達ではねぇよ。……クラスメイトではある」
「んもう、細かいなぁ……そのクラスメイトのアリアさんも幻のジャムパン、取れるか分かんないですよね。運勝負ですし」
「だよね? 普通のジャムパンとかも混じってると思うし、見た目が似てるパンは沢山あるし……ワタシだったら無理ですよ~?」
「いやぁ? アリアちゃんは取ると思うよ。食に関して、犬の嗅覚してるから。……それにティールも。トップを守れるなら、引き当てられるよ。りんごに対する嗅覚は鋭いから」
こんなことに確信は抱きたくないが、ティールとはそういうやつなのだ。
彼のりんごに対する執着は、時に人の能力を越える。……と、いうか、だ。
「そういう超人パワー、もっと別なところに発揮させなさいよ……!」
なんで! りんご限定なんだよ!!!
……私の悲痛の叫びが彼に届く日は一生来ないだろうな。
一番、最初にゴールテープを切ったのは、言わずもがな、アリアちゃん。そして、ティールは少し遅れて、三位である。二人に共通するのは似たような菓子パンを手にしていることだろう。
ここからでは、本当に手にできたのか判別できないが、あのティールがりんご絡みでミスするとも思えない。何より、あの笑顔が物語っている。
「……お目当てのジャムパン、ゲットしたみたいですね、ティール君は」
「それをこっから判断できるお前は流石、相方を理解してるよ」
うるせぇ。あんなやつ、私は知らんわ……!



~あとがき~
忘れた頃にやってくる、幻のジャムパンネタ。相方が周年イラストで描いてくれた場面はここでした。

次回、昼休憩!

りんごが絡むとラルさんは相棒に冷たいですが、悲しいかな、相棒のことは誰よりも理解している。
ちゃんと見てなくても、ティールがどうなったか、どうなるかはちゃんと分かってます。

ではでは。