satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第126話

~前回までのあらすじ~
そろそろ終わりたいなって思います。
ピカ「あらすじって言葉知ってる? 作者の気持ちなんて誰も知りたくないんだよ?」
ポチャ「ま、まあまあ……前回は二人が婚約の儀を買わしたところですね~…」
フォース「引っ張りすぎてワケわかんなくなってきたよな。何しに来たんだろ、おれ」
鈴流『私はフォースといれて嬉しいけどね♪』
フォース「……そういうの入れなくていいから」
鈴流『なんでなんで? フォースは嫌?』
フォース「誰もんなこと言ってねぇ」
鈴流『じゃ、いいよねっ!』
フォース「馬鹿! 急に抱きついてくんな……!」
…………くそ。こいつらなんかムカつく!
ピカ「嫉妬かな? それとも自分が不憫?」
ポチャ「ピカ、意地悪言わない」
お前らもリア充して爆発しろよぉぉぉ!!
うおぉぉぉ!!
ピカ、ポチャ
「えぇ~………?」


鈴流に連れてこられたのは少しだけ山になっている丘の上。心地よい風がふわりと吹き、二人の間を通り抜けていった。そして目の前には沈み行く夕日がオレンジに輝き、もうすぐ夜になるのだと思わせる。
「…………ほお?」
『えへへっ♪ 綺麗でしょ? 私、この風景が好きなのっ』
冠と持っていたブーケを下に置きながら、フォースを見上げて言う。フォースはちらりとそれを見て、再び正面を見た。
「ここに時間なんて概念あったんだ。……ずっと太陽が出たまんまだと思ってたよ」
『ちゃーんと朝から夜まであるもん。……まあ、外とは多分、時間経過が違うけどね?』
「ふうん……お前の行きたいとこってここ?」
『そうだよ! フォースに見せたかったのっ』
「……そうか。ありがとな」
『うんっ。………フォース、私、また貴方に会えてよかったって思ってる。本当だよ』
「………うん?」
『最初は意地悪で無愛想で威圧的で……とにかくムカつくから嫌いだったけどね! 大嫌いだったもんね!』
べぇっと舌を出して挑発するような仕草を見せる。しかしそれもすぐにやめ、にこっと笑う。
『でも、今は大好き。フォースが優しい人って知ったから。私のこと、第一に考えてくれる思いやりのある人だって知ったから』
「……鈴流?」
『それがフォースの仕事だとしても、嬉しかったの。今まで私のために何かしてくれる人なんていなかったんだもん。……だから、私はフォースを好きになったんだよ。駄目なことだとしても、好きになっちゃったの。悪い子だね、私は』
困ったように笑う鈴流。彼女ももう何かを悟っているのかもしれない。フォースはふっと安心させるように笑い、ぐじゃぐじゃっと鈴流の頭を撫でた。
『………きゃっ!』
「おれだってお前のこと、嫌いだったよ。印象最悪。変に前向きでウザいし……鬱陶しいし、お人好しで馬鹿だしな。あと、うるさいし。えっとそれからー……」
『ちょっとフォース? それは言い過ぎだと思わないの?』
「お前だって散々今言ったろうが。お互い様だろ」
『それは……そうだけどさ』
「でも、おれはお前のそんな馬鹿正直なとこに救われたんだ。明るくてお節介なところにね。……おれを悪い夢から醒ましてくれた。……人って見かけによらないって思ったな」
『………それって誉めてる? 全然誉め言葉に聞こえないんだけど』
怪訝な表情で首を傾げる鈴流にニッと笑って見せた。
「分からない? 主のために尽くすってお前に教わったんだぜ? 人も少しは丁重に扱うし」
『! 無闇に人、殺してないの?』
「してない。鈴流に言われてから一回もな」
『………前は邪魔なヤツは消すぞー! みたいなノリだったのに……』
「あれ、そんな軽い感じだったか……?」
『それくらい殺戮してたってことだよ……?』
確かに鈴流の前に制御者としてやっていた時はとりあえず悪影響を及ぼす者は制裁を下していた。……気がする。鈴流にするなと言われる前も一度、鈴流の属する群れを襲ったこともあった。そんなことを思い出しながらぽつりと呟く。
「怖いな。おれ」
『怖かったよ。フォース』
「………ごめん。昔の話だから忘れてくれ。……でもま、そんなおれを変えたのはお前だ。感謝してるんだよ。鈴流がいなきゃ、すぅやラル達と関わることなんてしなかっただろうしな」
『……そっか。よかった。…………っ!』
「鈴流っ!」
ふらりとバランスを崩し、前のめりになって倒れていくところをフォースが抱き止めた。うっすらと目を開け、フォースを見上げている。
『……ん』
「………あのさ、れい…」
『知ってる。……もう消えちゃうんでしょ…? お願い、叶ったから……消えるんだよね』
「! 知ってたのか、お前」
『んっ………マスターさんから聞いてたの。私のほんとのお願い、叶ったら……消えちゃうって』
「ごめん、おれ……今日は鈴流を輪に戻すために来て…」
『マスターさんに言われたの……?』
「……あともう一人の神様に」
『そっか。……でも、さっきも言ったけど、私、フォース会えて幸せなんだよ……普通に生きるよりも、ずっと幸せ……だから、ね…笑って欲しいな』
鈴流はすっとフォースの頬に触れた。幽霊とは言え、もう何も感じないくらいになってしまった。分かっていたとはいえ、実際に見て体感してしまうと胸が苦しくなる。
「笑う。………出来るかな」
『出来るよ。だって私の大好きなフォースだもん。……私のフォースはとってもかっこいいんだからね……だいじょーぶなのっ…』
「そっか。だいじょーぶ、か。……結局、お前の望みはおれと家族になることだったのか?」
『最初はね、違ったの。………会って、話すだけでいいって思ったんだけど………欲張っちゃった。ごめんね、迷惑かけたよね……?』
「そんなことねぇさ。おれは嬉しかった」
鈴流に顔を寄せ、唇に軽く触れるだけのキスを交わす。鈴流はもうすぐ消える。それが本来の形であり、ルールであるから。それに従うことでこの世界に存在することが出来るのだ。
『…………んっ』
「鈴流に会えて嬉しかった。幸せだった。……鈴流を好きになってよかったよ。鈴流と夫婦になれてよかった」
『えへへ……そう言ってくれて、嬉しい…』
けほっと渇いた咳を溢す。もう時間がないのだろう。
「約束する。鈴流のこと、ずっと好きでいる。ずっと覚えているから……愛するから。また、会おうな」
『会う……?』
「魂は転生するんだ。姿を変えてきっとまたこの世界に生まれるんだよ。鈴流がおれのこと覚えてなくてもおれは覚えている。絶対に探し出して、また会ってやるからな。覚悟しとけよ」
『ふふ……それは、覚悟しなきゃ。……私も忘れないよ。生まれ変わっても、フォースのこと、好きでいるの。無理だとしても……おぼえて…いるからね』
涙を流しながらフォースに向かって笑った。無理して笑っているのがバレバレな程、ぎこちないものだったがフォースは何も言わず、鈴流の頬を伝う涙を拭う。
『フォース、ぎゅってして……?』
「ん。分かった……」
鈴流に言われて強く抱き締める。鈴流のいるという感触を忘れないように強く。鈴流は力が入らないないのか弱々しかったが、抱き締め返した。
『大好き……大好きだよ。…ずっと、ずっとずっと、大好きだからね。……愛してるからね……っ!』
「あぁ。……おれも。………今度はおれが待つ番だ。お前をずっと待たせてたんだ。何百年でも待ってやるよ。………ただいまって言うからな」
『それは………たのしみ…だなぁ……ね、フォース……いまのおともだち、まもってね。ピカちゃんたちのこと…ぜったいよ……?』
「……任せとけ。あんなこと、二度と繰り返したりしねぇから」
『う、ん……………さよならじゃないよね……?』
「言ったろ。また会うって。……またな、だろ?」
『んっ…………また、ね?』
ふっと鈴流の感触が腕から消えるとフォースはそのまま自分の腕を抱いた。震える体を抑えるようにその場にうずくまった。
彼女の前では最後の時まで泣かなかった。泣きそうになってはいたけれど、泣いてしまえば鈴流が消えるのを躊躇うかもしれない。それだけは避けたかったのだ。ここでフォースがやり遂げられなかったら、別の方法で消される可能性だってあったのだから。
「…………泣くのは、おかしいよな。だって、鈴流は……外を見に行っただけなんだから……っ!」
声に出して自分に言い聞かせるも、感情は正直だ。両目から止めどなく涙が溢れて流れ出た。最初は声を殺していたが、すぐに息が出来なくなり、嗚咽を漏らす。やがて、彼はたった一人になった世界で愛する人のために泣き叫んだ。
これでよかったんだと無理矢理納得させながら。
彼女のために必要だったのだと思い込むように。
いつの間にか夕日は沈み、辺りは薄暗く星が輝いていた。

一頻り泣いたあと、フォースはふらりと立ち上がり、鈴流の墓まで歩いた。そしてその場にしゃがみ、ぎこちないながらも笑みを見せる。
「…………泣くまいと思ってたけど、無理だったよ。おれの中でお前は大きすぎたんだ。……お前のこと、すっげー大切だったんだって改めて思ったよ。なんて、ちょっと遅いな。ごめん。……鈴流を待つ間、おれはおれのやるべきことをするから」
鈴流から貰ったリボンを横で簡単に結び直すと、ぱちんっと自分の頬を叩いた。風でリボンが揺れ、フォースは空を見上げる。大きく息を吸い込むと高らかに宣言するように声を上げた。
「っしゃあぁぁぁ!! 気合い入れていってらあぁぁぁぁ!!」
散々泣いた後で若干声が掠れていたが、全く気にしなかった。次に進むのだ。ずっと進むのを恐れていた過去とは違う。これからを今を生きる者…イブ達と前へと進むために、未来へと歩むのだ。フォースは踵を返し、元の世界へと帰っていった。



~あとがき~
はい! 終わり!
ちょいと長かったフォースと鈴流の話ですが無事終了しました。いやぁ……ごちゃごちゃでしたね(汗)

次回、夏祭り編突入! 久しぶりにスカイメンバーが集結する。……はずです!
基本、コメディー感満載のワイワイした感じになると思います。久しぶりにイブ視点……かな?

ここまでフォースと鈴流の話を書いてきたわけですが、お付き合いいただきありがとうございました!
最初は過去編で持ち上げ、本編で一度再会(つっても、ピカに体借りて会っただけだけど)。で、今回の約六話くらいの本編ですかね。長かった!
書いた私が言うのもあれですが、二人には幸せになってほしかったです。無理だったけど。
はっきり言うと鈴流は最初からこうなる設定……ではなく、幽霊ながらも留まってフォースと絡むみたいな設定だったんです。が、それじゃあ優しすぎかと思い、こうなりました。
なんか気づいてたら鈴流消滅ENDしか考えてなかった。……ま、流れ的にそんなんだったんでしょうね。

ではでは!