satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第185話

~前回までのあらすじ~
浅葱と太陽でした! 浅葱の使う武器がお披露目しましたね。
浅葱「失敗すると自分の腕を切り落としそうになるのよね~♪」
あ、明るく言わないで……?
浅葱「まあ、腕が落ちるくらい、自分の能力でなんとか出来るけれどね。くっつくでしょ。多分」
やめて……そういうこと言わないで……!!!
浅葱「……ふふっ♪」
含み笑いもやめてー!!


「この辺でいいだろ」
ヴァルツを背負って走り続けていたもえぎはその言葉に足を止める。
「さ、三分……経ちましたか……?」
「もう少しでな」
何度か大きく息を吸い、呼吸を整えた。そして、今まで自分が走ってきた道をじっと見つめる。特に敵が近付いている気配はないため、マリーが上手くやっているのだろう。とりあえず、“リーフブレード”を抜き、構えておく。しかし、ヴァルツの“シャドーボール”が効かなかったから、これもあまり意味はないのかなと思い始めた。ないよりはましくらいの気持ちでいた方がいいのかもしれない。
どうしようかと考え始めた頃、通信機が音をたてて鳴り始めた。思わず、体を振るわせて反応してしまう。
「はうぅうっ!」
「俺だ」
『ヴァルツ。うちやけど』
通信の相手はまろである。先程、武器使用の許可を取るように指示をしていた。その結果が出たのだろう。ヴァルツは率直に訪ねる。
「どうだった」
『貰えた。結局、あんたの名前出したんやけど、嫌味なことは言われんかったよ』
「ふうん。ちょっとは悪いと思ってるのかね」
『……そんで、こっからどうするつもり?』
「反撃するに決まってる。どこまでやれるかは、自分のお体と相談だがな」
『無茶は禁物やけんね』
「へーへー……しないように気を付けはするよ」
何か言いたそうにしているたまろとの通信を強引に切る。そして、何度か背伸びをした。
「ふぃー」
「ひゃいっ!」
「あいつ呼び出せ。使用許可が出た」
「は、はい……分かりました。ヴァルさん、どうするつもりですか……?」
なんとなくは想像しているものの、一応、聞いてみる。ヴァルツはもえぎの予想通りの答えを返してきた。
「マリーを使う。……戻れ、マリー」
『はい。愛し子の仰せの通りに』
どこからともなくマリーが現れる。逃げるために後ろを守ってくれていたマリーからは疲れなどは感じない。神器に疲れるなんて考え方は、存在しないのだろうか。そんな今の状況とは関係ないことをもえぎは考えていた。
「結果は?」
『彼らには弱点が見えました。大きさは様々でしたが、核のようなものを感じたのです。それを壊せば復活はしなくなりますわ。ただ、普通の技は先程試したように貫通してしまうようです』
「ふーん……感知は出来るか?」
『愛し子が命じるのなら、マリーはなんだってしますわ。もちろん、出来る範囲で♪』
「よし。ふぃー、俺が弱点を指示する。そこを狙っていけ。いいな」
「はいっ! お願いします、トリスさんっ」
武器の名を呼び、もえぎの手元にその姿を現した。綺麗なエメラルドグリーンをした、大鎌である。武器でなければ、マリー同様に宝の一種ではないかと見間違うくらいだ。手に馴染ませるように何度か大きく振るった。
「今日は……鎌なんですね……」
『ふふんっ♪ 命を刈り取るにはこういう武器がお似合いなんだよ、もえぎ?』
「これ、おっきくて、使いにくいんですよ。……剣がいいです」
『駄目』
キッパリと断られてしまった。信頼関係がないのかと思うが、もえぎの言葉には素直に従うことが多いため、全くないとは言えない。トリスと呼ばれた神器は楽しそうに笑う。それを聞いたマリーは不満げな声を発した。
『兄様。主には従うことが私共の使命であり、義務ですよ。兄様はもえぎ様を主として認めたのですから』
『あっははっ♪ 僕より下位の神霊が分かったようなことを言うねぇ? 教育がなってないんじゃなぁい? なあ、ヴァルツよ』
「俺に話を振るな。大体、マリーを教育するつもりはない。教育が必要なのはお前だ」
『冗談やめてくれない? 僕の気紛れでもえぎに憑いてあげてるんだから、感謝するべきだろ』
トリスとヴァルツ、マリーコンビはなかなか友好な関係とは言い難い。これもいつものことなので、もえぎは慌てて、自分の発言を撤回をする。元はと言えば、もえぎの発言から発展してしまっているのだ。
「あうあうっ! このままで大丈夫です! トリスさん、ご協力ください!!」
『うん。僕は素直なもえぎがだぁいすき♪ ヴァルツも見習いなよ』
「うるさい。やるぞ、ふぃー」
「はい、ヴァルさん!」
トリスとヴァルツは元々、契約を交わしていた。つまり、ヴァルツはトリスの所持者であった。今は色々あって、もえぎが所持者だが、力を引き出すのは断然ヴァルツの方が上手である。トリスを手放した理由は、一言では言えないためにここでは割愛しよう。しかし、虚弱体質になってしまったのは、トリスが一因であるとは言っておこう。
「マリー」
『承りました。愛し子』
「い、いきますよ……? トリスさん」
『はいはぁい。任せて』

救護班は慌ただしく動いていた。警備に回っている人達の手当てというよりは、混乱に巻き込まれて転倒したり、ぶつかったりなど一般人の手当てである。パニックになれば、予想外なことも起きるもので、意味もわからず泣き叫ぶ者、怒鳴り散らず者、じっと動かない者等、反応は様々だった。
「あーもう! うっさいわね! そっちは手当て要らないわよ!! そんなんほっといても治る!」
「医者としてどーなの、その台詞」
痛いからどうにかしろと詰め寄られていたシアが詰め寄っていた相手をあしらっていた。そんなところをレンは遠目で見ていたのである。
「まあ、シアは医者じゃなくて薬剤専門だけど。やれやれ……シーちゃぁん? 俺のお仕事増やさないでくれるかなぁ?」
「はぁ!? じゃあ、レッちゃんがどうにかしてよ!!」
昔の呼び方で呼んでみると、普通に反応した。まだ冷静に判断はしているのだと勝手に納得をする。
こういった、パニック状態の時は浅葱が一喝を入れれば、なぜか大抵収まるものである。鶴の一声とも言えるそれは、この場にはない。
「やっぱ、浅葱はこの場に必要だったな~」
「レン! 消毒液と包帯テントから取ってきて」
「はいはい……」
手当てを素早く終わらせ、救護テントを潜る。テントの中に設置されているベッドは今のところ、誰も寝ていないためか、がらんとしていた。重傷者がこの場にいないのが幸いである。重傷者が全くいないとは言わないが、ここでは手に負えないと判断した場合、即ギルドに送っているのだ。ここで待たせる程、出ていなくて内心ホッとしている。
「はよ戻ろ……シアにどやされる」
シアに言われた物を持ち、足早に外へと出る。今は重傷者がほとんどいなくても、これから増える可能性がないとは言えないのだ。気を抜けないのは変わらない。



~あとがき~
ヴァルツともえぎだけじゃ少なかったので……レンのところも入れました。

次回、イブやフォースに視点を置きますかね。メインはそこだよなぁ。

また出てきました。新しい神器。トリスです。鎌だけど鎌じゃないらしい。
元々はヴァルツの持ち物ではあったんだけど、なんやかんやあってもえぎに落ち着きました。そこら辺は番外編を見てね! ここでも、軽い設定を置いておきます!

トリス(♂っぽい)
もえぎが所持している神器。固有能力として、形状変化を持ち、持ち主に合わせて武器の形を変えられる能力を持つ。そのため、トリス自身の気分によって武器の形も変化してしまう。
性格は本編通り。
マリーに兄様と呼ばれてはいるが、尊敬はされていない。嫌味を含めてそう呼ばれているだけである。そう呼ぶ理由はマリーを所持する前にヴァルツが持っていたのがトリスだったため。

トリスは嫌なキャラになってくれればと勝手に思ってます。はい。

ではでは!