satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

☆第15回 ゆるゆるトーク☆

~前回までのあらすじ~
ポチャ「前回から意味が分かりません。誰か助けてください……」
ピカ「あべこべな世界に迷いこんだ(?)ポチャの運命とは! 生きて帰ることが出来るのか!」
ポチャ「その紹介、ぼくが死にそうじゃない?」
ピカ「……骨は拾うよ?」
ポチャ「やめてください。本当に死んでしまいます……!」
ここでの会話はいつもの二人ですのでご安心を!
ポチャ「どういう注意の仕方!?」


ポチャ(……何事もなく帰ってきた。寝て起きたら夢でしたオチでもいいから、なんとかならないかな)
ピカ「あのさ、ポチャ」
ポチャ「うん?」
ピカ「明日、どこか行こっか。最近、仕事ばっかりだったから息抜きしたいんだ。付き合ってくれるかな?」
ポチャ「ピカがそう言うなら、喜んで付き合うよ。むしろ、覚悟しておいてね」
ピカ「えー……怖いなぁ~」
ポチャ(……このピカは最初に突っ込んだくらいで、他のことは何も言わないんだな。ぼくが『演じている』このキャラが正解なのか……わざと何も言わないだけなのか)
ピカ「でも、すっごい楽しみだよ。僕」
ポチャ「うん。……私も♪ どこに行くかは任せるよ。その代わり、期待してるんだからねっ!」
(読めないな。元々、ぼくがこういうことを得意としてないってのもあるんだろうけど
……ぼくから動く必要がある、か)
ピカ「すっごいプレッシャーだなぁ……でも、その期待を裏切らないように頑張るさ
はい。リンゴ! 今日のご飯」
ポチャ「ありがとー! ダンジョン行ってお腹すいてたんだ~」
(ここにもリンゴはあるんだ。そんな場合じゃないけど、幸せ……)
ピカ「……」ジッ
ポチャ「? 今度はなあに?」
ピカ「朝、変だったから。でも、心配いらなかったみたいだね。いつものポチャだなーって」
ポチャ「あれは寝惚けてたって言ったじゃん。……ピカだって、それで納得したでしょ?」
ピカ「したけどさー……もし、何かあったら、嫌じゃないか」
ポチャ「心配しすぎ! 大丈夫だから!」
(……今、影が落ちたな。その表情の意味はなんだ? ぼくが知っている情報と相違点があるってことか)
ピカ「ごめんって。もう気にしないからさ!」
ポチャ「そーそー! 気にしなくていーの
明日はたっくさん振り回してあげるから、さっさと寝れば?」
ピカ「そうするよ。君のその言葉は嘘じゃなさそうだからね」
ポチャ「はいはい。おやすみ!」
ピカ「おやすみ」
ポチャ(とりあえず、分かっていることを整理しなきゃな。あーもー! こういうのはピカの役目なんだけど! でも、無い物ねだりしても仕方ない。ぼくがやるしかないんだ)
「……行くか」

~夜の海岸~

ポチャ「ぼくは男だけど、それ以外は反転したような世界。似てるけど、違う世界……別世界だって思った方がいいんだろう。……となれば、ぼくがするべきことは……!」
フォース「“チェーン”」
ポチャ「フォース!? なんで攻撃……! いや、今は考えてる暇はない! いるか分かんないけど、スイ!」
スイ『ほいな!』
ポチャ「あ、いたんだ。……来い!」 
スイ『ほいほいっとな!』
しゃらんっ
ポチャ「やぁっ!」
ガチャン…
フォース「……あらま」
ポチャ「あっぶないな。急になんなの?」
フォース「別に。……あの子に近づいて、何するつもりなの?」
ポチャ「ピカのこと? 別に何もしない。っていうか、こっちが色々知りたいことがあるくらいだよ。どうせ、バレるだろうから言うけど、ぼくはここの人じゃない。多分だけどね!」
フォース「……へえ?」
ポチャ「君には心を読む力があるんだよね。ぼくが知ってる君はそうだから」
フォース「……信じる。それ、誰にも言ってないことだから、知り得ない情報。詳しく聞こうかしら。何か手助けになるかもしれないわ」
ポチャ「……君、男の子になれたりする? 出来ればイーブイで」
フォース「? 別にいいけれど。すぅが男だから、私が女になっているだけだもの。こだわりはないし、問題はない」
ポチャ「じゃあ、お願い。女の子の君と話していると調子が狂うんだよ」
フォース「……ふーん。おれには関係ない話だけど、こっちの方が話が進むなら、変えてやる」
ポチャ「ありがと」
(う、上手くいったー! こういう交渉も出来るんだな! よくやったよ、ぼく!)
フォース「で、ここの人じゃないなら、どういうことなわけ」ストン
ポチャ「別世界って言えばいい? 多分、そんな感じ。起きたらここにいたの。場所は基地の中
ぼくの知っている世界とは反転した世界だ。何もかもがってわけじゃないけど」ストン…
フォース「なるほど。……となれば、お前が元に戻る方法は一つだな。つーか、分かってたんじゃねぇの?」
ポチャ「まあ、ね。フォースに襲われる前に思いついてた。……ギラティナに頼む」
フォース「他に知りたいことは?」
ポチャ「彼……ピカについて聞きたい」
フォース「あいつ? どこにでもいる探検隊の一人ってだけで、おかしなことはしてない。顔は広いが、それくらいだな」
ポチャ「パートナーがいるよね。ぼくと同じ、ポッチャマの。どこにいるか分かる? もしかして、ぼくと入れ違いになっていたり……」
フォース「それはないな」
ポチャ「……え?」
フォース「お前のところはいるのか?」
ポチャ「ぼくのパートナーって話なら……いるよ。彼と同じピカチュウの」
フォース「あいつ……ピカにはパートナーはいない。昔にいなくなったって聞いた」
ポチャ「!……えっと」
フォース「何が原因とか聞いたことはない。おれは興味もないし、聞く必要もないし、肩入れする気もないからな。あくまで、すぅを守るのが仕事。それ以外はどうでもいい」
ポチャ「……似てるけど、君の方が何倍も冷めてるね」
フォース「お前の知るおれがってことか?」
ポチャ「そう。フォース、探検隊とか入ってないでしょ。あと、友達とかさ」
フォース「必要がない」
ポチャ「……ぼくのところでいう、ピカがいないせいかな。そういう影響もあるのか……
……あれ? ってことは……つまり……?」
フォース「? どうした?」
ポチャ「彼の……!」
フォース「探しに来たな、あいつ。……じゃあな、別世界の住人さん。平行世界って本当にあるんだな。面白い体験したわ」スクッ
ポチャ「フォース」
フォース「……私はこれ以上は手伝えない。言ったでしょ? 私はすぅと一緒にいることが仕事なの」
ポチャ「そうじゃなくってさ。……女の子はもう少し笑った方が可愛いと思うんだけど」
フォース「あら。余計なお世話
幸運を祈っているわ。ティール・クランドさん」
ポチャ「心読んだな……」
フォース「ふふっ♪ 二度と会わないんだし、いいじゃない? せっかくだから、覚えておいてあげるわ。……それじゃあね」
シュッ…
ポチャ「話してて整理がついたけど……これって、あり、なのかな」
ピカ「ポチャ! 勝手にいなくならないでよ! 起きたらいないんだもん。心臓に悪いよ」タタッ
ポチャ「……ごめんね? 眠れなくて、散歩に出ていただけなの。私も子供じゃないんだから、一人で出歩くくらいするよ?」
ピカ「ダメって話じゃないさ。一言ちょうだいって話」
ポチャ「寝ている相手に一言も何もないんじゃないかなぁ……?」
ピカ「うっ……まあ、そうかもしれないけれど」
ポチャ「ごめん。そんな意地悪言うつもりはなかったの。……帰ろう。まだ夜遅いから、一緒に帰って寝ようね」
ピカ「……うん」
ポチャ(……きっと、ぼくがいなくなることを……また、同じ道を辿るのが嫌なんだな。ピカがぼくを連れてきたとは思わないけれど……どのタイミングで、パートナーがいなくなったんだろう?
ぼくが思いつく限りでも、時の歯車の事件……悪夢の事件……脱退事件……他にもあるか。脱退して姿を消したと言うよりは、死んだ可能性だってある。……むしろ、そっちの方が可能性は高い)
「ピカ」
ピカ「?」
ポチャ「明日、楽しみにしてるから」
ピカ「! うんっ!」
ポチャ(仮にそうなら……ぼくは、耐えられないんだろうな)



~あとがき~
ゆるトークって名前なのに緩くない……だと?
まあ、いいや。誰がなんと言おうと、これはゆるトークですよ!!!!

ピカ「私……違うな。“僕”のキャラがブレブレなのをどうにかしてほしいです。作者」
フォース「ラルに限った話じゃないと思うけどな」
うん! どうすることも出来ないね!!
ピカ「感電死がお望みかな??」
ポチャ「あー……やめたげて……」
あぎゃあぁぁぁ!!!!(☆△☆)
ポチャ「あ、あーあー……(;^ω^)」
ピカ「満足!」
フォース「うっわ……(-∀-;)」
ピカ「今回はフォース君も喋ってたね! どうだった?」
フォース「うーん。おれだなーって? こう、変わる前のおれのまんまって感じ」
ピカ「私と関わる前のってこと? それにしてもクール過ぎじゃない?」
フォース「それは誤差だと思う。すぅの性格との兼ね合いもあるんじゃねぇの? いや、知らんけど」
ポチャ「なんか、そんな面倒なことになってるんだね」
ピカ「言い訳すると、ゆるトークのコンセプトが思いついたまま書き殴るなんだよ」
フォース「あはは~♪ 初めて聞いた~」
ポチャ「同じく」
ピカ「なんで、深いところまではなんも考えてない。つまり、別世界の私たちのこともなーんも考えないわけよ! 以上!」
フォース「まあ、キャラはブレブレでも、今回の話に関しては終わりはしっかり考えているらしいよ。ちゃんとさっさと終わるんじゃないか?」
ポチャ「うん。でも、一つ聞きたいのはなんでぼくをピックアップしてるのってところなんだけど」
フォース「ほら、本編で大変な目に合ったから」
ピカ「せめてもの償いじゃない……?」
ポチャ「それなら、ほのぼのな償いでよかったよ……だらだら話すような、そんなのでよかった」
ピカ、フォース
「そこには同情しかないです」

ではでは!

幼き騎士は何思う?

~前回までのあらすじ~
トリスを保管(?)してある領域に誰かが侵入! 一体誰の仕業なのか!?
やっと書きたいところその一です。
なんか、関係ないんだけど、神霊と神器ってややこしいな。今まで総称的な意味合いで神器って使ってきてたけど、トリスやマリー個人を指すなら神霊が正しいんだよね。武器になったら神器って名前になるんだろうけど。
ヴァルツ「ふわふわしてるな」
それな……もう、始めるわ。


侵入者? そんなこと、今まで一度もなかったはずだ。少なくとも俺は聞いたことがない。
『歴史的に見れば、なかった訳じゃない。僕のところまで来る奴は、例外なく全員死んでるんだけどね? ほら、よくあるやつだよぉ。俺に触れると怪我するぜー! 的な? そんな感じぃ~』
「お前に触れば死ぬってことか? じゃあ、死なせておけ」
『いいの? ふぃーちゃんいるんだけど』
「…………は?」
なぜここであいつの名前が出てくるんだ。
理解する前にマリーが探りを入れたらしい。そして、珍しく俺の許可なく、この場に現れた。
「残念ですが、兄様の言う通りです。兄様の気配のする場に数名の生命反応を感じます」
「その中にふぃーが?」
そう聞くと、マリーはゆっくりと首を振った。
「……そこまでは」
「マリー、行くぞ」
『行ってどうするよ?』
そこまでは考えていない。しかし、何もしないわけにもいかないと思った。旅をしていた時に身に付けていたものを手早く装備する。
堂々と玄関から出るわけにもいかない。そのため、俺は窓を開けると、その窓枠に足をかけた。
「行くのですね。お供いたします」
『マジィ? や、止めないけどぉ』
「だろうな。仮に止めたって無駄だ」
『ですよねぇ~』
呆れた様子でもう何も言わなくなった。自分のことなのにかなり他人事なのは、どうでもいいと思っているせいだろうか。どうせ触れた相手は死んでしまうとか思っているんだろう。実際、その通りになってきた経験があるから、間違いではないか。
窓から飛び降り、無事に着地する。俺に続いてマリーも降りてくる。そして、マリーの案内の下、トリスのいる場所まで向かった。間に合うかは分からないが、どうにかするしかない。

マリーの案内とトリスの邪魔なのかアドバイスなのか微妙な指示に従い、聖域までを目指す。その間、侵入者の姿は見ていないが、俺達の先を行っているのだろうか。マリーに様子を聞いてみるも、ふるふると首を振った。
「兄様の気が強すぎて上手く探れません。ムカつきます」
『あはっ♪ まだまだ修行が足りないんじゃなぁい? この未熟者~』
「うるさいです、兄様」
「トリスは俺に言っているんだろう。……すまない、マリー。俺がお前の力を最大限に引き出せていないせいだから、気にするな」
「愛し子のせいではありません。兄様の強欲で自己顕示欲が強すぎるだけですので」
なんだろう。この押し付け合いは。
『ヴァルツ、もうそろそろ僕のところだよ。多分、敵と同時到着って感じかな』
「ふうん? 俺達の方が遅かったのにか」
『雑なマリーの案内と僕の完璧な案内だよぉ? 最短距離に決まってるでしょ! あと、侵入者は迷わせておいたの。僕の場所だからね』
「兄様、いちいち喧嘩を売らなければ話せないのですか? 頭おかしいのでは?」
この二人は一生仲良くなんて出来ないのだろう。誰にでも相性というものはある。悲しいかな、それが神霊にも通じるとはね。しかしまあ、神霊様とやらは基本的に一人だ。別の神霊といるなんてことはほとんどないから、合う合わないも分からないし、合う必要もないかもしれない。
草むらを掻き分けて出てきた先には、ぽっかりと空いた空間だった。俺達以外に人影は見えない。その空間には祠のようなものがあり、その扉は開いている。覗きこむと、薄い緑色で細かい彩飾を施してある細剣が祀られていた。これがトリスなのだろう。
「思ったより細かいな。もっとシンプルなものを想像していたよ」
『んふふ。ヴァルツとは一回しか会ってないから。あのときは小さいナイフだったし、僕の装飾なんて見えなかったと思うよ。そう思ったとしても不思議てはないねっ!』
何の自慢なのだ。誰に対してのアピールなのか分からないが、無視しておくに越したことはない。
トリスを手に取ってもいいが、俺もまだこいつに認められていない。何かあると危険だから、触りたくはない。出来ることなら一生関わりたくもないのだけれど。
「愛し子よ、来ます」
『僕の迷宮、抜けてきたのぉ? 諦め悪いね』
トリスの祠を背に、体を構える。一応、どこから襲われてもいいように警戒しておくが、相手が複数だと面倒だ。
「……来い、マリー」
「はい。我が愛し子よ」
マリーを短剣にし、再び周りを警戒した。すると、真正面からふらふらと数人が入ってきた。入ってきたのは何人かは、この数日の中で見たことのある人だ。父の葬式なんかで見た顔だ。俺の親戚筋、ということになる。その人達は目の焦点が合っておらず、どこを見ているのかはっきりしない。
「あれは……?」
『恐らく、長くこの場にいたせいで兄様に当てられたのでしょう。私にはここまでの力はないので、こんなことは起きませんでしたが……』
「トリスに当てられた?」
『神霊……いえ、神器とは神の器。つまり、神が宿る武器。そう簡単に人に渡るものではないのです。……心に邪気を……つまり、兄様に合わなければ、悪影響が出るのです』
神器は神霊に認められなければ使えない。それは俺の中の常識であったが、そこまで影響があるものなのだろうか。
「トリスに認められなかった人はああなると? で、トリスに触れて死ぬのか」
『そー♪ 僕に引き寄せられ、僕に手を伸ばす。んでもって、僕に命を吸われるの~♪』
「最早、神ではなく悪魔の領域だな」
『しかし、手にすれば強大な力を得ることになりますわ。……悔しいですが、兄様は高位の武器。使うも触れるも代償が大きいというものです』
確かに、触れるだけで命を狩るのは如何なものなのだ。いや、今はこの話は関係ないか。
今見える中にふぃーの姿はない。あいつはどこに?
「……マリー、ふぃーは?」
『そう、ですね……近くにはいる様なのですが、はっきりとは』
仕方ない。目の前の奴らを倒してから探しに行こう。
『うっは♪ 容赦ないね』
「お前にだけは言われたくない。黙っていろ。……行くぞ、マリー。力を貸せ」
『もちろんですわ、我が愛し子よ。私の力、全てを与えましょう』



~あとがき~
戦闘は面倒なのでカット!

次回、ヴァルツがトリスを手にする話。というか、理由公開……になるのかな。いや、ある意味もうしてるんだけども。そろそろ終わるのではないだろうか。

神器に気に入られるうんぬんの話がちらっと出てきましたね。マリーは気に入った相手が来ると、自分から近づくタイプ。逆に言えば、合わないなと思えば姿は見せません。トリスはとりあえず引き寄せてみて、相性良ければ使ってもいいよ。あ、でも、ちゃんと面白くしてよ。実力なければ切るから。みたいな適当なやつです。雷姫さんは気に入らない人はそもそも触らせません。気に入ったところでつまらないと思ったり、飽きればポイするタイプです。
さあ、あなたは誰を選びますか!?((←

ではでは。

はじまりのソラ 7ー4

~attention~
この物語は時、闇、空の探検隊の物語を元にしております。原作のイメージが崩れる場合がありますので、苦手な方はバックです!
前回は遠征メンバーが発表されましたね。やったね。(前回更新半年前)
ピカ「やったね……?
というか、これはこれで放置しすぎて何してたか忘れちゃったんだけど……」
今回は遠征行っちゃうぞ~ってところだよ!
ピカ「そこまで進めてたんだ。なるほど」
……まあ、そこまで進められるといいなっていう希望なんだけどね。……では、スタート!
ピカ「えっ!?」


~7-4 ギルド遠征、重なる謎~


準備のために皆はトレジャータウンへと向かっていった。私達も行かなくては行けないんだけれど。その前に一言。
「よかったね、ポチャ。行けて」
「うん! よかった!! ぼく、ピカと一緒がよかったから。一緒に行けてよかったよ~♪」
…………うん、はい。うん……そうね。
話しかけなきゃよかった。純粋な笑顔と素直な感想が飛んできた。本当に歪みのない人だ。こんな奴ばっかなら、世界も平和なんだろうな。あーあー……
「? ピカ?」
「すぅ……はぁー……よし、私達も行こうか。準備しないと」
深呼吸をして、きらきらと目を輝かせているポチャに向かって言う。ポチャは私の言葉に大きく頷くと、トレジャータウンへと足を向けた。
トレジャータウンに着くと、いつも以上に賑わっていた。ギルドで遠征に行くことになった、というのはもう既に町中に広まっているせいだろう。元々、遠征をやることが伝わっていたからこの状況は不思議ではない。
「やっほ~」
「ホノオさん」
のんびり歩いてきたホノオさんに話しかけられ、立ち止まる。ホノオさんも話は聞いたようでおめでとう、と笑ってお祝いしてくれた。
「これから行くんだね。大変だと思うけど、頑張って」
「はい。ホノオさんはこういう、遠いところに行くことはあるんですか?」
「あるよ。しょっちゅうだもん。食べ物と回復道具は持ってた方がいいよ。あとはタネとか玉とか」
そうだよな。ダンジョンにいくつも連続で挑むことにもなるかもしれないし、大きなダンジョンに行くことになるかも……うん、しっかり選別をしておかないと。
「私、ホノオさんとの特訓思い出して、頑張ってきます」
「あはは。役に立てるといいんだけど。……引き留めてごめんね? じゃあ、いってらっしゃぁい~」
ひらひらと手を振ると道場の方へと行ってしまった。何ならお店まで一緒に行ってもらってどれが必要とか教えてもらいたかったけれど、流石にそこまで甘えるわけにはいかない。
「ぼく達、いろんな人に期待されてるんだね」
「そうかも……ううん。そうだね」
「……うん。頑張らなきゃ、だね」
自覚したせいか、少しだけ緊張しているらしい。そこまで気負う必要はないだろうに。
「ポチャ。楽しんでこーぜ」
「楽しむ?」
「今回、私達だけじゃないんだしさ。頑張る必要もあるけど、それ以上に自分達が楽しまなきゃ損じゃない? こんな機会、滅多にないんだから」
「……うんっ!」
ポチャは少し考えてしまうとどんどん重く、悪い方へと考えてしまう傾向にあるらしい。よく言えば真面目で責任感のあると言えるのだろうけれど。ずっとそう考えるのはよくない。私が色々な方向から見て、気づかせてあげればバランスが取れるというものだ。
「ほらほら~♪ 行くとこいっぱいあるんだから、早くしないとね!」
「わっ! 待って待って! 走らないで~!」
ポチャの手を掴み、倉庫と商店のある方へと走り出す。ポチャが転けないように気をつけながら、引っ張る。こうやって引っ張ってあげるから、私の隣をちゃんとついて来てよね。

準備を終えると、ギルドへ戻った。私達が戻った時点でまだ全員帰って来ていなかったが、少しずつ集まってきてやがて全員がギルドへと戻ってきた。
全員帰ってきたことを確認すると朝会のときと同じ様な並びになり、ペラップの話を聞くことになる。
「皆が集まったところで、今回の遠征の説明を行う。今回の目的は『きりのみずうみ』の探索。ここより東に位置する湖なのだが……名前の通り、霧に包まれ、はっきりと確認されていないのだ」
ふむふむ……なかなか探検隊らしい話だ。噂だけが残っており、それだけが世に通っているということか。それを解明するべく、遠征に行くのか。
「しかし、そこには美しく素晴らしいお宝が眠っているという話があるのだ♪」
そのお宝をギルドで探し出すということになるのだろう。話だけ聞いていると雲を掴むような話だが、現実の話となるのだろうか。
「皆、不思議な地図を出してくれ」
ペラップに言われ、今まで黙って話を聞いていた全員が地図を取り出した。もちろん、私もバッグから取り出し、後ろにいるポチャと一緒に見る。
前ではペラップが持つ地図にいくつか印がつけられており、その印を指しながら話を続けた。
「この場所が『きりのみずうみ』があるとされる場所だ。未開の地であるから、地図で見ても雲に覆われ、詳しくは分からない。……そして、我々のギルドはここ」
ペラップはすっと指を動かし、ギルドの場所を指した。地図上で見てもかなりの距離があることが分かる。いつもの依頼をこなすのとは訳が違う。いや、理解していたつもりではあったが、実際見てみるとえげつない距離だ。
「見て分かる通り、ギルドからはかなり距離が離れている。そのため、この高原の麓にベースキャンプを張ろうと思っている。また、この人数で一緒にベースキャンプに向かうのは大人数だから、いくつかチームに別れて向かうことにするぞ」
確かに。時間がかかったり、はぐれたりしてトラブルが多そうだ。
「では、チームの発表を行う」



~あとがき~
ちょっと短いですけど、きりがよかった。

次回、ベースキャンプへ向かうチーム発表!
やっと遠征に行けるかな……まだギルドにいるんだけど(笑)

前にもちょっと書きましたが、ピカはポチャに依存している節があります。まあ、誰も知らない世界で記憶もなんにもない状態だったピカを助けたのは、ポチャなので特別な思いというか、関係になるのは当たり前ですけど。一番、頼れるのはポチャなんですね。空と海になるとまた変わってくるとは思うんですが、ポチャに期待したり頼ったりなんてところは変わらないですね。

ではでは!

空と海 第198話

~前回までのあらすじ~
キーテとピカ、ゆるーく終わりましたね。今回はヴァルツの方へと向かいます。どうなったんだろうね、あの人。
ヴァルツ「死んではないとだけ」
ピカ「まあ、そうだろうと思ってますよ」
もうね! もう終われる! はず!!
ピカ「もう、二百話目の前なんですけど~」
ヴァルツ「本編は全体の半分ってところか」
ピカ「話数がってところじゃないのが怖いところですよねぇ~」
やめて……


前を走るピカを黙って追いかけつつも、周りの警戒は怠らないようにしていた。とは言え、ポチャが気付く前にピカの方が反応が早く、敵はピカの手によって倒されていた。更にその敵達は復活することなく、消えるところを見るに、彼女は的確に弱点を突いているのだろう。勘なのか、見えているのかは定かではないが。
「もうそろそろ、ヴァルツさんに言われた地点なんだけど……あは。すっごい嫌な感じ」
『む。……大方、予想はしていたがの。こうなると、相手が弱いことを願うのみじゃな』
二人には何が起こっているのか分かっているらしいが、ポチャにはさっぱりである。だからといって、この二人が説明をしてくれるわけでもない。
「こっから狙える?」
『狙ってもよいが、マスターの仲間も巻添えになるかもしれんぞ。それでもよいなら、やるがな』
「……んじゃ、加速しようか。ポチャ、ついてこれたらついてきてね~♪ ここ真っ直ぐだからさ」
「えっ!? いや、待って。説明を……!!」
「説明する時間も惜しいんだよね。……一言で言えば、神器使いと一戦交えてくる、かな」
「神器使い? それってピカと同じ……ってあぁぁっ!? もういないし!」
一言だけ言い残し、雷姫を使って移動スピードを上げたピカは、一瞬にしてかなり先まで行ってしまったらしい。ポチャが内容を聞き返す時間もなかった。これでは、何のために合流したのか分からない。しかし、場所だけは言っていたので、辿り着くことは可能である。
「もー! これだからピカはー!!」
こんな調子で呆れつつも、心のどこかで安心感とどうにかなると考えている自分がいた。ピカの存在がそれほどにも大きいのがはっきりと分かる。
ピカ言う真っ直ぐをひたすら走って追いかけることに専念した。少なからず時間はかかっても、合流は出来るだろう。

ヴァルツはトリスを小さく、普段から馴れていて扱いやすいナイフに変化させ、対応していた。相手が大剣であるため、懐に入ったり避けたりするのには適当であったのだ。しかし、技術面や身体能力でカバーをしているが、体力面では大幅に遅れをとっていた。
「うえっ……化け物かよ」
『ヴァルツも大概だと思うけれどね。……こいつから、全く神霊の声が聞こえない。完全に意識飛んでいるのかな? しかも、二人とも暴走状態。んふふ。嫌だねぇ』
「嫌だと言う割には、楽しそうだな」
ヴァルツが大きく避けたために、空振りをするガオガエンから距離を取りつつ、体勢を整える。逆手にナイフを持ち変え、呆れ気味にトリスに問いかけた。絶望的な状況にも関わらず、彼の声は弾んでいたのだ。この状況下が楽しくて仕方がないと言わんばかりの調子だ。
『まあねん♪ こんなピンチ、滅多になくない?』
「……確かに久し振りではあるが、俺は楽しくはないからな」
『ふふん♪ ヴァルツもまだまだだね』
「……は?」
『あっははっ♪ ほらほらぁ~? 来るよ。前』
トリスの声で前を向くと、ガオガエンがゆらりと体をふらつかせつつ、こちらに向かって剣を振り上げてきた。上から下に振り下ろすつもりなのだろう。後ろか前に避けるか考えたあと、攻撃を仕掛けるために一気に前進をした。体もあちらの方が大きいため、股下を潜り抜けて、攻撃を回避した。それと同時に相手の背後を取る。
「トリス!」
『まっかせて~♪』
呼びかけに応じ、トリスはナイフから片手剣に姿を変えた。くるりと手のひらで回して持ち変えると、素早く相手を斬りつけた。斜めに二回、体を回転させて一文字に一回、計三連撃の攻撃を繰り出す。これで怯めばよいと思ったのだが、ガオガエンは二、三歩よろけただけで、大したダメージにはならなかったらしい。振り向き様、大剣による一文字に斬りつけられ、大きく横方向へと飛ばされる。咄嗟に防御姿勢は取っていたため、真っ二つになることはなかったものの、これによってぷつりと糸が切れてしまった。
「げほげほっ!……けほっ……これ、立てる気、しない……トリス、折れてないか」
『折れるわけないでしょ。……あれ何? めっちゃヤバいんだけど。あと! 斬ったとき! 手応えなさすぎ!』
ピカが来るまでの時間稼ぎをと思ってここまで戦ってきていたが、どうにもこちらが消耗するばかりでダメージを与えられている気がしないのだ。そして、トリスの言う手応えは、ヴァルツも感じていない。撤退も視野に入れているが、そもそも相手が邪魔で逃げることも不可能に近い。仮に逃げ道があったとして、敵が大人しく逃がしてくれるとも思えなかった。
「あー……にげ……てもなぁ」
『進行方向、敵に阻まれてるんだけどぉ?』
「そうなんだ、よな…………どう、しようか」
『ねえ、ヴァルツ? ここで寝るとかやめてよ? お前を守りながら突破は出来ないから。寝るな!』
「……ねては、ないけど、なんかもう、思考が……追いつかない」
実際、トリスが指定してきた三分はとうに過ぎている。ヴァルツがここから戦いの場に戻ることは出来ないだろう。それはトリスも分かっている。分かっているが、諦めは死に直結してしまうのも事実である。トリスはヴァルツに色々と要求してきた身であるが、別に彼を死なせたいわけではない。だからと言って、どうにか出来るような案も出てはこないが。彼らの頭脳であるヴァルツがほぼ動けないため、どうしようもないのだ。
「ガ……ヴヴ……」
『獣みたぁい……ほんとに理性の欠片もないねぇ……醜いなぁ』
「お前が言うか……けほ……あ」
『え、なあに……っ!?』
ヴァルツに何かに気が付き、それでトリスもあるものに気が付く。そして、何も言わずに剣からリーフィアに姿を変えると、ヴァルツを抱え、大きく横へと飛び退いた。先程いた場所は激しい電撃の直線状にあったらしく、地面に焦げ跡を残して電気は宙に散った。電撃を直接見たわけではないが、かなりの大技であったことは、焦げ跡を見れば嫌でも認識せざるを得ない。ガオガエンが巻き込まれたかは分からないが、結果的に二人の退路は目の前に現れた。電撃が飛んできた方向へ走り出しつつ、トリスは背中に冷たいものを感じていた。
「こっわ……え。何。これ……この終盤にこんなの撃ってくるの」
「本気……ってこと、だろ」
「そーゆーことでぇす♪ 遅くなりました~」
前に立っていたのは現れたのはピカだった。目を赤く光らせ、雷姫を構えている。目が赤いのは雷姫の能力だろう。雷姫の使い手に与えられる能力は攻撃力上昇、素早さ上昇など、肉体強化が一つ挙げられる。他にもあるらしいが、トリスもヴァルツも詳しい内容は知らない。
「ヴァルツさん、死にそうな顔してますね。でも、まだ死ぬには早いですよ?……雷姫。二分、稼いできて」
「はあ!? あれ見て、道具の僕らにどうにか出来ると思えるの!? 頭おかしいね!」
「ふん。我と貴様を同類に語るな。マスターがやれと言うのなら、それに従うのみ。それに、我になら出来ると思ってくれているからこその命令だ」
実体化した雷姫はトリスを一瞥するとふいっとそっぽを向く。そして、そのまま敵に向かって走り出してしまう。いつの間にか地面に座っていたヴァルツがガオガエンと雷姫を見つめつつ問いかけた。
「ピカ、いいのか?」
「はい。人の子ごときに雷姫を倒せるわけがないので。……でも、雷姫はあくまで時間稼ぎしか出来ません」
ピカはヴァルツのポーチに手を突っ込み、いくつかの薬と注射器を何本か取り出した。ざっと目を通し、適切なものだけをヴァルツに投与していく。
「……これくらい、自分でやってくださいよ~? まだ、やってもらいたいことがあるんですから」
「瀕死のやつを捕まえて、よく言えるな……」
「ヴァルツさんにしか出来ないんだから仕方ないでしょう? 私は私でやることやりますんで」



~あとがき~
はー……あと十話くらいで終わればいいね……無理だね。めっさなげぇ……

次回、ピカVSガオガエン
片方、意識飛んでるとはいえ、神器使い同士の戦いになります。ヴァルツもそうだったけど、ほぼカットしましたからね((←

今回の話で一番不憫なのは、ポチャだと勝手に思っています。ヴァルツもなかなかだけどね。

神器同士……この場合は神霊同士ですかね。彼らはお互いの面識があるわけではないです。ですが、ピカとヴァルツは顔見知りですんで、トリスと雷姫はお互いを認知してます。だからって仲いいとかそういう話ではないんですけれどね!

ではでは!

空と海 第197話

~前回までのあらすじ~
華麗にピカさんの復活! やったね。
ピカ「うえ~い」
ポチャ「色々言いたいことがあるんだけど……」
まあ、だろうね……でもまあ、本編の中で語ってくださいな二人で! うん? 二人じゃないか……敵がいるか。
ポチャ「どっちでもいいよ!」
ピカ「落ち着きなよ~? 人生色々だからね!」
ポチャ「なんでこんなに明るいんだ……」


「ピカ……どうやってあいつを……っていうか、なんで寝てないの!?」
ピカのことを見上げながら、目の前に現れた相棒に質問を投げ掛ける。いなくなったことは知っていたが、いなくなった理由を本人の口から聞きたかったのだ。ピカは心配するポチャを余所に、面倒臭そうに口を開いた。
「質問多いなぁ……いいけどさ。まず、前提としてこんなときに寝てられなくない?」
「そ、そうかもだけど! 大丈夫なの?」
『本来なら、大丈夫とは言い難いの。しかし、我がついておるし、死なせはせんよ』
ピカが答える前に彼女の持つ刀、雷姫が自信満々に答える。雷姫の答えを裏返せば、まだ万全の状態ではないということになりかねない。しかし、ピカは特に気にした様子もなく、取り戻したスイをポチャに投げ渡す。
「ちゃんと持ってなきゃ駄目だよ。スイちゃんとセツちゃん、かわいそうでしょ?」
「あ、ごめん……ありがと」
『すいちゃー!!! おかえりぃー!!』
『せっちゃー! ただいまぁ!』
一時的に手元を離れていただけだったが、二振りにとっては感動の再会となったらしい。申し訳なさを感じながら、ゆっくりと立ち上がる。ピカの一歩後ろに立ったところで、キーテも立ち上がったらしい。それなりに飛ばされたようで、遠くの方でよろめきながら立ち上がっていた。
「……敵意は感じない。戦意も感じない。……私の一撃で無くしたのか……あるいは、私には興味ないってか? ははっ……馬鹿にしやがって~♪」
目を細めながら、冷静に分析をする。構えていた雷姫をラフに持ち直し、辺りを見回した。ここら一体で何かの気配は感じない。ここにいるのは、自分達と敵のキーテのみだ。ここを終わらせれば、当初の目的を果たせるだろう。
「雷姫」
『ふむ……問題ないぞ?』
「了解。……ねえ。やる気ないなら、どっか行ってもいい? こっちは忙しいんだよねぇ? あなた達の横やりで仕事増えたしさぁ~? 私の読みは半分外れるしぃ~? いや、ある意味では当たっていたかもだけど……この際、どうでもいいというか」
ある程度、会話出来る距離まで両者が近付いたところで、再度バトルになるかと思われたが、キーテはそのまま素通りする。そして、ぴたりと歩みを止めると少しだけ振り返った。
「最初は、戦うつもりなんてなかったんだけど、成り行きでこうなったことは謝罪するよ。……なんて、する必要もないかもな」
「お互い様ってことで。貸し借りなしだ」
「分かりやすくていい。それじゃあ、また」
「またなんていらないけどねぇ~……そうも言ってられないか」
ピカの言葉に肩をすくめると、再び歩み始める。そして、その歩みを止めることはなく、この場から去ってしまった。それを確認し、ピカも肩の力を抜くとへたりこんでいたポチャに手を差し伸べる。
「ほら。立てる?」
「あ、ありがとう……で、ぼくの質問、まだ答えてもらってないんだけど」
「あぁ……あのピチューを吹っ飛ばした技? んなもん適当に飛ばした電撃に決まってるでしょ。遠くから気づかれないようにね」
「……まさかとは思うんだけど、“雷龍”じゃないよね? そんな大技をそんな状態でやるわけないもんな?」
立ち上り、ピカと目線を合わせつつ、にこりと問い詰める。ポチャの知る限り、同じタイプで効果がありそうな技は、“雷龍”しかないと思っているのだ。
“雷龍”は“龍陣”という技の一種で、本来は陣を描き、呼び出すような形で使う技の一つである。その中でも“雷龍”は、強力な電撃を龍のような形に変形させて撃つ技である。また、威力を調整することで様々な恩恵を授かることの出来る応用性のある技だ。しかし、“龍陣”とは、あまりにも強力な技であるがために、使用者はほとんどいないのが現状であり、使えばそれなりの反動が返ってきてしまう。
「……想像に任せるよ♪」
この返答を聞くに、ポチャの考えは概ね正解しているらしい。反論しないのが一番の証拠であった。さらにと言わんばかりに問い詰めた。
「移動しながらってことは、陣も描いてないんだよね……ピカぁ?」
「大丈夫大丈夫。なんとかなるよ」
「死んじゃっても知らないからね!?」
陣を描かずに使うことも可能ではあるが、威力は落ちるし、失敗する確率も格段に上がってしまう。失敗しても反動は返ってきてしまうため、リスクしかないのだ。これで死んでしまう使用者も過去を見れば少なくない。
「死なないよ。雷姫がいるから。……私がいない間、リーダーしてくれたんでしょ? ありがとう。これからは私がやるから、ね」
ポチャはそう言われ、今まで持っていた無線機をピカに手渡した。プクリンのところに配属された者達への指示はここから出来るし、全体に呼び掛けることも可能である。彼女が指揮を執るなら問題はないだろう。
「……うん。ねえ、ピカ……?」
「んー?」
「今の状況、分かってる?」
「うん。得たいの知れない敵がうようよしてるんだよね。その対処法も把握はしてるけど、対応は出来ない。……いや、対処法は全体的に知っている人は少ないか。とりあえず、そっちをどうにかしなきゃねぇ……考えはあるんだけど、私だけじゃどうにもならない」
移動中、あるいは、身を隠していた間に今の状況を把握していたらしい。把握だけでなく、どうするべきかの打開策まで用意しているらしかった。ピカの頭のよさにはいつも驚かせられる。
「……時間がない。ヴァルツさんのところに行くよ! ポチャもついてくるでしょ?」
「え、あ、うん! 行くけど……なんでヴァルツさんの名前が?」
「あの人、瀕死なんだよ。ウケるよね~♪ あの人に死なれたら困るから助けに行くの。ヴァルツさんがいなきゃ、この状況も打破出来ないから」
笑顔で言うことではないだろうが、それが本当ならば助けなければならない。ピカを先頭に戦場の中を走り出した。他にも聞きたいことは山程あったが、今はピカに従うのが先決であると判断したのだった。



~あとがき~
ピカとポチャがちゃんと話して、合流して、力を合わせて戦います。いつぶりやねん……

次回、ヴァルツの下へと向かう二人! 二人が見たものは!?
特に深い意味はないんですよね。この次回予告(笑)

“龍陣”の話が出てきました。昔に設定で出したことがあった気がしますが、遠い昔なのでここでも軽く説明をいれました。要はめっちゃ強力でやばい技だってことです。
ちなみに、ポチャはポチャで“水龍”という“龍陣”を使うことが出来ます。出るかは知らないですが。考えてないのでね! 分かんない!

ではでは!

空と海 第196話

~前回までのあらすじ~
あちこち走り回るポチャ君。ピカを探して転々としているところですな。
ポチャ「ほんっとにね……」
まあ、頑張れ。ここら辺はノープランなので、さっさと進めていきますわ。
ポチャ「……大丈夫なのかな」
さあ……? なんとかなるなる!!
ポチャ「ほんとに大丈夫?」


後ろを振り返り、誰もついてきていないことを確認をすると、ほっと息をつく。
「ちょっとは気を付けなきゃな」
再びピカを探して歩き始める。しばらくは黙って探していたのだが、ある気配を感じて、その動きを止めた。その気配が何なのかまでは分からない。そこまで敏感ではないため、じっと集中しなければどこから来るのか分からないのだ。
「何……?」
スイを構え、警戒体制に入る。近くの影から現れたのは一人のピチューだった。片耳にバンダナを巻き、首元の毛先が少しだけ跳ねていた。怯えている様子もなく、戸惑っている様子もない。ただ、何かを探すように辺りを見回していた。
「……ねえ、君、誰か探してるの?」
「え? あぁ、いえ。お構い無く」
ポチャに話しかけられ、にこりとも笑うことなく返答した。見た目はポチャよりも年下だと思われるが、落ち着いた受け答えにそれも疑問に思えてくる。
「え、一人?」
「いえ。仲間がいたんですけど、どっか行っちゃいまして。……まあ、今回、僕は何もしてないし、関係ないんだけど」
「その仲間を探して?」
「一応。形だけでもしておかないと拗ねるし……ところで、大海のポチャさん」
久し振りに呼ばれた通り名に反応が遅れる。そんな名前もつけられていたなと思ったくらいだ。
「……あ、ぼくのことか。何?」
「初めて見ましたけど、結構隙だらけですね。わざと?……それとも、スラに何か言われたか?」
「! 君は」
「あーっと……先に言っておくけど、僕に戦意はない。武装もしてないし、今回のことはリーダーの独断なんだ。それにスラが駆り出されて、僕は半分、遊びみたいなものだったんだけど……黒さんが見てこいって言うから、敵地観察」
ひらひらと力なく手を振る。ピチューの言う通り、見たところ武装した様子はない。彼から聞いた名前は以前、ピカから聞いたものと同じものである。話の内容も嘘はないだろう。つまり、このピチューも敵であり、倒すべき相手なのだ。
「君の名前は」
「キーテ。雷獣から聞いてないか」
「さあ。……名前までは知らないよ。ひと悶着あったのは知ってるけど」
春祭り前に敵と交戦した話は前に聞かされていた。そこで名前が伝えられたかまでは覚えていないのが本音である。そもそも、ピカが彼から名前を聞いたのかさえ謎だ。
「こっちは色々知っているよ。敵のことを知るのは常識だから。……海の国の第一王子ティール・クランド。ここでは、探検隊スカイのサブリーダーで雷獣ピカのパートナー」
攻撃の体勢は取らず、知っているらしいことを話し始めた。攻撃されていないし、突然襲うのも気が引けてしまう。先手必勝なんて言葉があるが、今のこの状況ではやりようがなかった。少なくとも、ポチャの性格ではそんなことは出来なかった。これが誰かを人質にしているなど、そんな状況なら話は変わってくるのだが。
「時の歯車事件、悪夢事件を解決したヒーロー……ってところかな。他にも実積あるんだろうけど。……で、今から約一年前。ある仕事中、自分のパートナーに大怪我を負わせてしまった……だったか。このことをつつかれた?」
「……っ」
無意識に反応してしまった。先程と同じように。キーテはそんなポチャを見ても特に何かをするでもない。
「スラから聞いた話はそんな感じだったな。その様子はビンゴ? あ、これ以上は何も言う気はないから。でも、失望はしたよ。そんなものなのか? 雷獣の相棒は」
ふっとその場から消えたと思ったら、一瞬でポチャの懐へと潜り込んでいた。小さな体を生かして隙間へと入ってきたのだ。抵抗する間もなく、腹に蹴りを入れられていた。その反動でスイを落としてしまう。
「聖剣と神器の違いは扱いやすさにある。神器は人を選ぶが、聖剣は素質があれば誰にだって扱える……もちろん、最大限引き出すにはそれ相応の努力と素質が必要だろう。が、単純に使いたいだけなら、その必要はない」
『てぃー!』
「けほ……っ! スイっ!」
ポチャが呼び戻す前に、キーテがスイに近づき、軽々と持ち上げる。自分の身長とほとんど変わらない剣を何でもないように扱った。
「聖剣二振りは扱えないけど、一つだけなら問題ないな」
「スイ……来い、セツ」
『はいなっ!』
セツを構え、キーテを見据える。キーテはこんな状況でも至極冷静だった。こういう場に慣れているかのように全く動じなかった。
「剣を向ける勇気はあるんだな」
「……ぼくも探検隊の端くれだ。やらなきゃいけないことは分かっているつもりだよ」
スイを取られたということは、ポチャの心に隙があったということになる。聖剣の主はポチャなのだ。その気になればキーテの手から無理矢理引き剥がすことだって可能なはず。しかし、それをしないのは、呼び戻せないと直感で悟っているからだ。今の精神状態では、剣はついてこない。取り戻したいなら、敵の隙をつくか、気絶させるか等をする必要があった。今のポチャにそれらが出来るかは定かではないが。
『てぃー……すいちゃ、帰ってくる?』
「取り戻すよ……っ!」
「やっぱり、聖剣の力までは引き出せないか……そこそこ軽いし、僕には合わないな。……まあ、この際、何でもいいけれど」
『やーだー! てぃーのとこ、もどるー!』
何度か手に馴染ませるように素振りをしていたキーテが呟いた。聖剣を手に出来たのは、彼の剣士としての実力が高いためだろう。スイの声は聞こえているのかいないのか分からないが、聞こえていて無視している可能性が高い。
スイを構えたキーテが、ポチャの懐を目指して走ってきた。それにポチャが対応出来ないはずもなく、防御姿勢を取る。突撃を防がれつつも、キーテは体を捻らせ、横からの斬撃を繰り出した。その攻撃の速さは普段、ポチャが繰り出すものより数段上であった。
「はやっ……! セツ!」
『あうーー! がんばう!』
セツを冷気に溶け込ませ、一瞬で盾のように変形させた。スイとポチャの間にはばかるように作り、一度距離を取る。
「雪花はそんなことも出来るのか」
「……ほんと、詳しいね。色々」
「神器は文献などほとんどないが、聖剣はそれなりに出てくるからな。使い手が多かったという証拠。それでも、一度に複数を操る人は少数だろうな」
『てぃー、ちょーし、わるい? だいじょぶ?』
「……さっきのあれで、心が乱れてる……んだろうね。あまり、大丈夫じゃないよ」
セツに指摘されなくても、動きが鈍いことと狙いが定まっていないことは分かっていた。剣の乱れは心の乱れだと、何度も師に……父のブライトに教わったくらいだ。
盾に変形させていたセツを剣に戻し、再び構える。少しだけ手元が震えているのが分かる。これだけ乱されるとは思わなかったが、自分が考えているよりも、トラウマとはずっと根深いものなのだろう。立ち向かうことすら、嫌になるくらいの虚無感を感じていた。ここでやめてしまえば、どれだけ楽になれるのだろうと考えてしまう。
その気の迷いが敵に悟られないはずもなく、キーテが突っ込んできた。剣を振り上げ、数秒後には振り下ろされるだろう。
「敵意がないと言ったが、訂正しよう。見ていて腹が立つから、ここで斬らせてもらおう。……迷いがあるものから戦場では消えていく。……だから、大海はここでさようなら、だ」
「……っ!」
『てぃー!』
セツを盾にするのも間に合わない。何かの技を使って回避するにも時間が足りない。出来ることいえば、少しでも体をずらし、致命傷を避けるくらいだろうか。体をずらしつつも思わず、ぎゅっと目を閉じ、来るべき痛みに耐える準備をした。
しかし、その必要はなかったらしい。いつまでも痛みが襲ってこない。目を開けてみると、キーテが目の前からいなくなっていた。
「……な、んで?」
「私の下に来い! スイちゃん!」
ポチャの目に写ったのは、電気を帯びる刀を構え、ポチャの愛剣の名を呼ぶ姿。どこからともなく、スイが現れ、彼女の手元に収まる。
『マスター、それは欲張りというものではないか? まあ、我は構わんがな』
「あっはは♪ 仕方ないでしょ? 私の相棒、戦意喪失してるんだもの」
「ピカ……っ!!」
ポチャの声に振り返ったのは、いつもの自信に満ち溢れる笑顔を見せるピカだった。にこっと笑った彼女は、すぐに前を向く。
「さあって……お仕事といきますか! 私を楽しませてよね!」



~あとがき~
何話ぶりなんですかね。ピカ様の登場です。
どうやってキーテを吹っ飛ばしたのか……謎です。明らかになるのでしょうか……(無計画)

次回、ピカとキーテです。戦うかは知らないけど。

やれやれ……大まかにやることは決まっているのにそこまでが遠い。長い! 辛い!!
でも、頑張ります。バトル描写は苦手なのでそこまで続かないはずだ……はずだ……!

ではでは!

空と海 第195話

~前回までのあらすじ~
ヴァルツがなんとか全員倒したけども、新たな脅威が……!? そして、お久し振りのピカでした!
今回はフォース達と別れたポチャをやりますね。つっても、時系列は大して変わりません。フォースに連絡もらった後からです。
ヴァルツ「こちらは放置か」
トリス「うっわー……ひどくなぁい?」
そんなことないですよ!!!
この二人の関係は色々突っ込み入れたいですが、まあ、大したこともないです。所有者じゃなくても扱えるってだけなので!
では、始めます!


フォースにスラの相手を任せた後、ポチャは各場所を回っていた。どこも手は足りているものの、やはり倒せない敵に苦労しているのが目に見えて分かった。そんなところに時折、手を貸しつつ各地を転々としていた。大丈夫であろうと思ったところに加わったところで手持ち無沙汰になるだけである。そう感じて、一ヶ所に留まることをしなかった。何より、周りの状況を把握したいという思いもあったのだ。
「結局、どこも苦戦はしてるけどそれは倒せないからで……対応出来ない訳じゃないんだよね」
とはいえ、苦労していることに変わりはない。どうにかして、効率化を図りたいが、その方法を思い付けずにいた。そもそも、どう倒すのが最適なのかも分かっていない状況だ。情報交換はしているものの、弱点がどこかにあるらしいということしか分かっていない。また、その弱点は統一されている訳ではない。それも戦う全員の負担となっている。
彼が各地を回っているのには別の理由もある。これはフォース達と別れてすぐに入った連絡が要因であった。その連絡相手は救護テントで救護スタッフとして動いていたレンからである。その連絡を受け取ったとき彼の困ったような焦ったような、あるいは申し訳ないようなそんな声が届いた。
『あー……ポチャ? 聞こえてるか?』
「は、はい。大丈夫です」
『あんなー……単刀直入に言うわ。ピカが消えた。もう影もなく。さっぱりと』
「……んーっと。え? 動ける状態だったんですか?」
医者ではないし、医療の知識のないポチャにははっきりとしたことは分からないが、あの状態で動けるとは思えなかった。それだけは探検隊として、様々な状況を目にして培った感覚である。
『んなことねぇと思うんだけどぉ……でもまあ、いないから、動けたんだろーなー』
「ちょっと待ってください……バッジの反応は、本部付近にありますけど」
『行ってみたけど、いなかったぞ。ここから本部近いし』
レンのこの一言で、完全に理解してしまった。
ピカは面倒なことは嫌うし、仕事も積極的にするタイプではない。やりたくないことはやりたくないとはっきり言うし、出来ないものは出来ないと言う。しかし、責任感と何より、窮地に立たされた時、じっとしていられないのがピカだ。こうも全体が混乱し、危機に陥っていれば、出来なくても、やりたくなくても動いてしまう。それが自分のところのリーダーであった。
とどのつまり、この場面において、ピカがじっとしている理由がないのである。
「あーじゃあ、もう、あれですね。どっかに隠れて動いてます……それ」
『マジか。やっべーやつだわ~! 下手したら死んじまうぞー?』
「そうだと知ってても戦いますよ。こういうときのピカは、自分は二の次なんです。……自分大切にしろよ……ほんとに」
理性的なのか感情的なのか分からないが、彼女ならそうするだろうとポチャは思う。伊達に何年もパートナーをしていないのだから。
「とにかく、こっちで探してみます。連絡ありがとうございました。そっちも忙しいのに……」
『そっちほどではねぇさ。んじゃねー』
そんなやり取りをした末に、ポチャはピカを探すべくあちこち転々としていたのである。
その間に浅葱にも連絡をしてみた。ピカを治療したのは浅葱であるため、状態を聞くのに一番よいと思ったからである。こんなときに聞くことでもない気もするが、万が一があってからでは遅い。
浅葱は案外普通に連絡を取ってくれ、声も聞く限り普通であった。普通過ぎて逆に怖いと思うくらいだ。
『ピカちゃんの容態? まあ、少なくとも一日は安静にしてくれると嬉しいわ。満足に動けるようになるまでには時間がかかると思うけれど』
「数時間でコンディションは戻りませんか?」
『生活に支障ないくらいは回復するわ。戦闘に参加するなら、一日は待ってほしいって話』
浅葱の話は正論である。ポチャだって、それくらいは必要だと思っていたし、何なら一日と言わず二、三日は安静にしてろと頼むところだ。
『……ふふっ♪ ポチャくんのその様子だと、ピカちゃんは脱走しているのね。そんな気はしていたわ』
「見かけたりはしてません……よね?」
『残念ながらね。ピカちゃんもバレるといけないから、バッジは置いていったんでしょう』
「そこら辺は頭が回るようで……もし見かけたら連絡ください。それじゃあ」
『ええ。分かったわ』
浅葱との連絡を切った後、溜め息しか出てこないのは当然だと心の底から思った。

ピカを探し、適当に歩いていた。愛剣も心配しているようで、先程からずっと話しかけてきていた。
『ぴー、どこにいるんだろねー?』
『てぃー、ぴー、どこー?』
「分かれば苦労はしない。……あーもー! どこにいるんだよ!! 頼むから、ぼくの寿命縮めるようなことしないで!」
心からの本音だったが、これに答えるものはいない。チームにも連絡は回し、探してもらっているが、見つけたという連絡はなかった。
叫んだことにより、周りにいた敵が襲いかかってきた。マークされてしまったかと焦るが、取った行動は冷静そのものであった。
「スイ! セツ!」
『はいなー』
『あいあーいっ♪』
二振りを使い、的確に狙っていく。何度か復活させてしまうものの、こちらがダメージを負うことはなかった。倒せない敵に深追いしても仕方がない。粗方散らしておき、この場の突破を図る。
「こういう奴らに目眩ましが聞くのか知らないけど……“しろいきり”!」
時間稼ぎとして辺り一面を霧で覆う。しばらくすれば勝手に晴れてくるだろう。目というものが見当たらない相手に意味のない攻撃かもしれないと思いつつも、ないよりはましの考えで放った。気持ち動きが鈍った気がしたため、その霧の中を駆け抜けて、その場は脱出した。



~あとがき~
ポチャ君、胃痛枠。

次回、上手く敵を掻い潜り、ピカを探すポチャの続きです。ピカは見つかるのでしょうか?

ピカの性格に関しては矛盾したような気もしますが、そんなもんだよね!!!
なんだろう。危険が迫るとか、そんな状態になればピカも本気出すよってことなのかもしれません。普段適当にしてても、それが本当の姿ではないんですね。ピカの場合はそんな感じです。フォースも似たような感じですかね。文句言っててもやるところとか。反対に残りの三人は、そこんところ素直ですけれど。

ではでは!