satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第166話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で忙しくしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、一週間ぶりにギルドに顔を出したラルとティール。メンバーからの熱い出迎え(笑)が待ってましたね。今回は親方とノウツとの話ですね。
ラル「イグさんとリアさんとの出会いだって言ってるのにあの二人出てこないんですけど! いる!? 私らのこういう話!!」
まあ、あれよね。ラルやティール視点で話してるって言う前提があるからね? いや、本当はシリウス視点もあるっちゃあるけど……語れる人がおらんからねぇ~
ラル「作者の自己満足だよ~……これぇ」
まあ、楽しいのでね。それはあるかもですわ←
では、始めていきまっしょい。


ノウツと親方に呼び出されて、どれくらい経ったのだろう。楽しいことや時間を忘れるくらい何かに没頭していると、時間が経つのが早いと感じる。けれど、どうでもよかったり、することがなかったりすると、遅く感じるものである。はて、今のこの状況はどちらにあてはまるのだろうか? 案外かなりの時間経っているかもしれないし、ないかもしれない。要は体内時計が頼りにならないというやつだ。
ノウツの説教は終わりを知らず、永遠と小言を聞かされていた。同じ話を何度も繰り返している気分だ。
「大体、お前達は自覚が足らんのだ! いいか、まだ新米であると言う自覚を─」
そういえば、助けてくれたと言う探検隊?……とは、誰だったのだろう。私はぼんやりとしか覚えていないし、会話を交わしたわけではない。ティールの話だと、私達より少し年上で男女のコンビ。名前は……
「ラル! 聞いているのか!?」
「え、あ、聞いてる聞いてる」
「嘘をつくんじゃないよ。……ラル。お前は隊を率いるリーダーとして、隊員の命を預かる身だ。分かっているのか?」
「え……っと」
ずっと怒鳴り散らしていたのに、いきなりの真面目トーンになるから、思わず聞き返してしまった。目を吊り上げて怒っていたノウツは、じっと私を見据えている。
「今回は運が良かったに過ぎない。それを肝に命じておけ」
……そうだ。たまたま、助けが入っただけで、本当ならあそこで死んでしまっていてもおかしくはなかった。今考えても、あれはどうしようもない場面ではあったけれど、どうしようもない、理不尽な状況でも、対応しなければならないのだ。私がリーダーだから。
ティール。お前に関しては立場ってものがあるんだ。ここでは関係ないかもしれんがな。ワタシの言いたいこと、賢いお前ならば、分かるだろう?」
「……でも」
「我々はティールがどういう立場の人間かを知った上で、ここに迎い入れ、自由にさせているつもりだ。強制はしたくないという親方様の意向もあるからだが……でも、今回ばかりは言わせてもらう。『王子』である事実は忘れては駄目だ。何かあっては、陸と海、それぞれの友好関係にも関わってくるのだからな」
ティールは、家の仕来たりに従って修行期間という名目で国外に出ているらしい。己を鍛え、外を知るため、何年かは従者もなく、自分の力でやり遂げるものらしく、そこで何をするかはある程度自由のようだ。ティールの場合は学校に通いつつ、探検隊をしているわけだ。
修行期間は、何かあっても自己責任なのかもしれないけれど、限度はあるのだろう。何事にも。
私達が何も言えなくなってしまったタイミングで、ずっと黙っていた親方が─見てなかったけれど、寝ていた説もなくはない─ぴょこんっと椅子から立ち上がる。そして、散歩でもするような気軽さで三人の輪に入るとニコッと笑う。
「ノウツ~? 終わった?」
「お、親方様……? 緊張感という言葉、ご存知ですか……?」
「ん? うん。……あのね、二人とも。ノウツがうるさーく色々言ってたけど、ラルとティールを心配してたんだよ? この一週間、仕事に手がつかなくなるくらいはね~♪」
「は、この音符が?」
「……ノウツが?」
親方からの冗談とも聞こえるような暴露にノウツは、焦ったように顔を真っ赤にさせる。それたけで、信憑性が増した。
「おおおお親方様!? 何をいきなり!?」
「ラル。君はとっても優しくて、仲間を思いやれるいいリーダーだよ。仲間を守るその意識は大切だからね♪ でもね、自分のこともちゃあんと大切にしてあげて?」
抗議しようとするノウツは完全無視して、親方は私の頭を優しく撫でてくれた。そして、今度はティールに視線を動かし、同じように頭を撫でる。
ティール。立場とかも大切なんだけど……ボクは気にせず、自分の気持ちを大切にしてほしいなーって。でもね、それを突き通すにはたくさんの努力が必要なんだ。だからね、これからも頑張るんだよ?」
「はい」
「うんうんっ! はい! 終わり! 色々言っちゃったけど、ノウツもあんまり怒らないっ! 別にラルは転移アイテム持ってなかった訳じゃないんだからさ。お礼が届いてるからね、あとで受付で受けとるよーに!」
あ、あぁ……あの場で薬草と交換条件のつもりだったのに。お礼なんて必要なかったんだけどな。
というか、なんで親方がそれを……わざわざ?
ベヒーモスの件は終わり! 誰も悪くない! 分かった? 三人とも」
「ら、ラジャー……?」
無理矢理締めてしまったような感じがするけれど、有無を言わせない親方のその言い方に、私達は頷くしかなかった。
アイテムを渡してしまったその日にベヒーモスと遭遇したのは偶然。現場にいた私達にも、ギルドも察知できるはずもない。ある種の事故だ。きっと、それで取った行動を親方は今後は気を付けるようにと……そういうことなんだろう。多分。
「では、失礼しま……あ、そうだ。親方。ノウツ……一つ聞きたいことがあるんですけど」
お開きムードだったのだが、ふと思い出して私は扉に向かっていた足を止める。二人も質問が来るとは思ってなかったのか、不思議そうにしていた。
「私達を助けてくれた……シリウスってご存知ですか? 私、名前も知らなくて」
私よりも他の探検隊と深く付き合いのありそうな二人だ。何か知っているだろうと思っての問いかけなのだが、ノウツはちらりと親方を見て、特に何かを言ってはこなかった。そんな親方がデスクの上のセカイイチを一つ手に取り、パッと笑う。
「シリアル! おいしーよね!」
「食べないで」
「ありゃ? じゃあ、シリアス?」
「ちが……あ、いや。ちがくは、ない?」
「? そうなの?」
こてんと首を傾げるティール。私よりも物知りなティールは知っていそうだけれど。
シリウスの語源が星ならね。星のシリウスはシリアスとも読めるみたいで……じゃあなくてー! ノーウツー!! 放置するなー!」
「あ、あぁ……いやぁ、親方様がラルで遊びたそうだったもので、つい」
遊びたそうだったもので!? なんなの!?
「すまんすまん。こほん……『シリウス』は牙狼族のイグニースとチンチラ族のリアで構成される探検隊さ♪ ここの業界では、イグニースは“炎鬼”、リアは“舞姫”と呼ばれている」
炎の鬼と、舞う姫、かぁ……それが助けてくれた人達……か。
「二つ名がついちゃうくらいに有名チームってことだねー? あ、あの二人、レイ学の生徒さんだよ? 高等部だけど~♪ 二年生だったっけ」
「そうですね。我が校の生徒です♪ つまり、お前達の先輩だな」
「……えぇぇぇぇ!?」
世間せっっっま!?



~あとがき~
シリアスしたり、コメディしたり、忙しい親方部屋でした。

次回、ノウツや親方に諭された二人のプチ会議。(in ギルド内カフェ)

ティールの王子様については、ギルドメンバー全員承知の上です。だからって、「ティールさまー!」とはならないのが、いいところ(?)ですね。
いい意味で放任主義なので、ティールも気負わずやってましたが、今回の行動は『王子様』としてよろしくないからねとノウツに言われてしまいましたわ。
護衛もつけないのは、ティールが適切な判断の取れると信頼されているからなのと、プリンの方針もあります。「拘束するのはしんどいもん。いらな~い♪ いらな~い♪」みたいな。お気楽なプリンらしくもあります。
ちなみに、プリンとティールの父が繋がっているかは特に考えてませんが、密かに繋がってるかもしれません。だって、プリンだもん……(汗)

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第165話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で大騒ぎしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、病室にてラルとティールがお互い高め合う誓いを立てました。それが今の強さに繋がるわけだが……そんなの今までのシーンにないんだよな~(汗)
……気を取り直して、今回からはスカイとシリウスの出会い編、後半となります。出会い編改め、再会編ですね。
視点は戻って、ラルです。


簡単な依頼をこなして終わり……という何でもないお仕事になるかと思いきや、まさかまさかのハプニングに見舞われ、病院にお世話になることになろうとは。こんな展開、誰が予測できただろうか。私はしてませんでした。
「……やだなぁ。行きたくない」
「もうっ! 怖いことは早く終わらせるよ! ぼくはもう電話越しにこってり絞られたんだからー! ラルが逃げるからさ!」
「それはもう散々謝ったよ……?」
病院での退院手続きを迎えに来てくれたムーンが終わらせ─事情が事情なので、経費はギルド持ちである─、その足で一度帰宅。荷物を置き、服も私服に戻して、今はギルドへと向かっている最中である。
ちなみに、病院まで迎えに来たムーンは、初め、私達の無事を喜んでくれたのだけれど、こほんと咳払い一つした後、がらりと雰囲気が変わった。
「僕より先に死んだら許しません」
である。なんか、年寄りみたいな入りからの一言二言の説教を受けた。終始、笑顔ではあったけれど、目は全く笑ってなかったのは言うまでもない。
「ついたよ。ラル」
「う、ん。……ついちゃったね」
「覚悟はいいですか」
「……よくはないけど、仕方ない。行こう」
私達は顔を見合せると、意を決して扉を開いた。
ギルド内はいつも通りの賑やかさで、色んな人が掲示板を見たり、依頼の受注を行ったりしている。なんでもない日常風景だ。
「ラルー!!」
「え、あ、ひま……っちぃっ!?」
横からひまっちが飛び付いてきて、受け止めきれずにそのまま倒れてしまう。怪我は完治したし、問題はないけれど……かなり強く抱き締めてきてて、痛いです。
「わーーー!! もう! 連絡くらいしなさいな! ティールから状況は聞いていましたけれど! 心配したんだからっ!」
一方的に捲し立て、涙でぐしゃぐしゃになるひまっち。女の子としては大変素晴らしい力でぎゅうぎゅうと私を抱き締めてくる。
「ひ、ま……」
あの、息、できない……し、死ぬ……!
「ヒマワリ? ラルが死んじゃうよ……?」
ティールもですわよー!!」
「え、わわっ!?」
今度は止めに入ったティールに抱きつき、わんわん泣き始める。ティールはよろけはしたものの、私みたいに押し倒されはしなかった。流石、男の子。
普段は強気で頼りになるお姉さんだけれど、ここまで心配かけてたのか。なんだか申し訳な……
「ラルー!!」
「今度はだ……れぇぇぇえ!?」
ギルドメンバーほぼ全員が押し掛けるように飛び出してきて、ここはバーゲンセールですかと聞きたくなるくらいの勢いだ。ひまっちの奇襲のせいで床に座ったままの私なんて、簡単に踏み潰されそうだったので、慌てて立ち上がり、その場から逃げる。
「くぅらぁぁぁ!! なぜワシらから逃げるのだ!! 止まれえぇぇ!!」
「お、追いかけてくるからぁぁ!! あと、怖いからだよ! お前らが!! 全員涙拭けよ!? 何で泣くの!?」
「心配したんでゲスー! ラールー!」
「うん! それはごめんね!?」
ギルド内なんて広いっちゃ広いけれど、おいかけっこに適した場所ではないし、ギルドメンバー以外にもお客さんはいるわけで。つまり何が言いたいかって、私は簡単に隅っこに追い詰められるわけで。
追い詰められた私は、いっぺんに話し始めるメンバー達に適当に相槌を打つしかなかった。
事情を知らない人からすると、かなり恥ずかしい場面を見られている気が……いや、考えるな。この騒ぎもフェアリーギルドっぽいとスルーしてくれているかもしれない。うん。大丈夫。
「何をしている、お前達!!」
ギルドの二階に通じる階段の上から親方の(自称)右腕的存在のノウツが、入口付近で大騒ぎするメンバーを怒鳴りつける。
こんなところでノウツのお説教なんて聞きたくないんですけど……流石にスルーしてくれるレベルじゃないもん。絶対。
ちらりと私とティール、それぞれを見ると、くいっと顎で来るように示す。
「ラルとティール、親方様がお待ちだ。……関係のないお前達は仕事に戻りな」
ずいぶん、冷めてらっしゃる……?
「いやぁ……人様の手前、冷静なとこを見せたいだけだな。ワシは意味ないと思うんだがな~?」
きょとんとしていた私に、ドームが耳打ちしてくれる。普段からうるさいと言われる彼にしては、かなーり声を潜めて教えてくれた。だが、地獄耳なノウツには意味なかったようで、─かなり距離があったのに─じっとドームを睨んでいた。
「なんであの距離で聞こえてるんだ?……まあ、いい。じゃ、また後でな」
「うん。……説教はごめんだけどね」
なんて言ってみるものの、ドームは豪快に笑うだけで、頷いてはくれなかった。
一人一人、説教コースかなぁ……これ。

一人でひまっちの相手をしていたティールと一緒に、ギルドの二階へと上がる。ノウツはすでにどこかへ行ったのか、はたまた親方の部屋にいるのか分からないけれど、階段にも上がった先の廊下にもいなかった。
「私さ、開口一番、こらーって言われると思ってた。ノウツとかは特に」
「これ、何も言わない方が逆に怖いってやつだろ? 静かに怒られるの怖いよ」
私もだよ。まあ、怒鳴られるのも嫌いだけど。
親方の部屋の前で二人で深呼吸をする。何度か吸って吐いてを繰り返して、緊張と恐怖でいっぱいの心を落ち着かせる。
「ノックするね、いい? ティール」
「う、うん! いつでもいいよ……!」
……よし!
三回のノックをし、一呼吸置いた。そして、気持ちがぶれないうちに口を開く。
「探検隊スカイ所属、ラル。ただいま帰還しました!」
「同じく探検隊スカイ所属、ティール。帰還しました。入室してもよろしいですか?」
「どーぞー♪」
「あ……し、失礼、します……?」
ん~? 思ってたのとちがーう! こちらが気合い入れたわりに、いつも通りの親方の声が聞こえてきたんだけど……? あれ?
部屋から聞こえてきたのは呑気な返事だった。怒っているわけでも、感情を殺しているわけでもなくて。ただ、いつもの明るい声が聞こえてきた。
肩透かしを受けた気もするが、落ち着け。この先何があるかは分からないのだから。
部屋に入ると、デスクの上や床にいくつかの書類を無造作に散らし、セカイイチを美味しそうに頬張るプリン親方の姿がいの一番に飛び込んできた。
そして、その隣には静かに怒るノウツの姿もある。
「やあやあ! おかえり~♪ 今回はラル、大変だったねー? だいじょぶ~?」
「へ、あ、はい……」
「そかそか! ティールも。ラルみたいな大怪我はなかったみたいだけど、だいじょぶだった?」
「ぼくは、全く……問題ない、です」
「そっかー! うんうん! 元気が一番だからね! そんな二人を見られてよかった♪ お話はそれだけ~♪」
「え」
んと。え、いいの?
「親方様ぁぁぁ!!?? もう少し! この二人をお叱りください! 何ですか、よかったって! よかったって!!」
「えー? そういう空気、ボク、得意じゃないも~ん」
「親方様は場の空気を気になさるような方ではないではありませんか!?」
いや、それは失礼なんじゃないかな……?
なぜか叱るつもりのない親方の説得を早々に諦めたのか、ノウツがきっとこちらを睨んできた。
「親方様が仰らないのであれば、ワタシが代わりに言います! 覚悟しろ、お前達!!」
……まあ、うん。ある意味、予想通りな展開だ。



~あとがき~
ごちゃっとして、まとまりのない話になってしまった。すみません。さらっと流しといてくれ……

次回、親方とノウツとスカイの二人の話。
ノウツの長い説教はカットです。

特別言いたいことはないけど、ラルとティールはメンバーに愛されてるな。
ん?……これ、どっかで言った気がするな。どこでだっけ?(汗)

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第164話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で大人しくしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
名前はまだ出てませんし、お知り合いにもなってないけど、イグ&リアの登場でした。
スカイとちゃんと話すのはまだ先です。
ラル「イグさん、あのベヒーモス、どうやって倒したんです?」
イグニース「“ブースト”っつー移動速度あげる魔法使って、敵の懐に潜り込むだろ? んで、炎属性の斬撃で一刀両断」
ラル「わー……カッケー」
イグニース「ほんとに思ってるかぁ~?」
ラル「思ってる思ってる」
今回もティール視点なのじゃ。


《Te side》
二人に運ばれた病院で適切な処置を施してもらった。挫いてしまった左足首に簡単な治癒魔法をかけてもらい、包帯を巻いてもらう。
念のためにと撮ってもらったレントゲンを見ながら、初老の先生はにっこりと笑う。
「骨は問題なさそうですね。回復力を上げる薬を使えば、一晩で治るでしょう」
医療発展してるなぁ……
自然治癒で治そうとしたら、一週間はかかりそうなものだけれど、多分、あの女性の手当てと回復補助が充実しているお陰で、早く治りそうだ。
「あなたと一緒に運ばれた彼女も命に別状はありません。かなりの大怪我ではありますが……それでも、致命傷は一つもありませんでした」
「そうですか」
運が良かったのか、ラルが意図的にそう仕向けていたのか。あるいは、無意識にガードしていたのか。……まあ、いずれにせよ、無事ならいい。
「しかし、骨折は回復力を上げ、安静にしていたとしても完治に一週間はかかります……ですが、今後の活動には支障は出ないでしょう。安心してくださいね」
「ありがとうございます。……失礼します」
「お大事に」
痛みはほぼ感じないとはいえ、体重をかけるのは怖いから、左足を庇うように診察室を出た。そして、待合室まで戻ってくると、辺りを見回す。ちらほら診察待ちの人がいるだけで、あの二人の姿はない。
「……いなくなってる?」
『もー、けらいもかんじなーい』
え。いないの。お礼言ってないのに。
一応、受付であの二人の容姿と多分、探検隊か何かだと伝えると、看護師さんは思い出したように頷いた。
「一緒に来ていた方々でしたら、もう行ってしまいましたよ。なんでも、依頼人の家に用があるとかで」
「そ、そうですか。ちなみに、あのお二人の名前とか分かります?」
「お名前……確か、シリウスって名前の探険隊なのだけれど……個人名までは。ごめんなさい。私達は探険隊とは、あまり関り合いがないものだから」
シリウス。聞いたことあるような、ないような。
……うん。こんなところで考えても仕方ないか。次だ。次だ。
「この辺に宿ってありますか? あの子残して自宅に帰るわけにもいかなくて。……それに、ここ、ぼく達が住んでる町じゃないので、一週間、泊まれる、場所……」
いや、待て待て。一週間の宿代なんて持ってないぞ。泊まれるわけなくない? え、どうする。野宿でもいっか……? いやいや? どこでするんだよ!? 夜営……え、一人で!?
「……それでしたら、付き添いの方用の仮眠室をお貸しします。そこでお休みなさってください」
「! い、いいんですか?」
混乱していたぼくの姿がどう映ったのか分からないけれど、看護師さんは優しく柔らかな笑顔でありがたい提案してくれた。
「はい。そこでよろしければ」
「ありがとうございますっ!」

ラルが完治するまでの寝床を確保し、ぼくはラルの眠る病室へとやってきた。大部屋だけど、他のベッドはがらんとしていて、ここはラルしかいないみたい。
途中で回復薬を使ったぼくとは違って、彼女は一度も道具に頼らなかったみたいだ。頼る暇がなかっただけかもしれないけれど。それでも、ラルはぼくを逃がすためにと体を張った。……ううん。自分自身を犠牲にしようとしていたんだ。ぼくを助けるために。
病室においてある丸椅子に腰かけて、ラルの左手を優しく握る。
「ごめんね、ラル。痛かったよな」
つい成り行きで始まったこの探険隊だったけれど、今回初めて、命の危険に晒された。まあ、危ないなと思う場面は何度もあったけれど、死ぬようなものではない。せいぜい、大したことのないモンスターの大群に囲まれて逃げてみたり、立ち向かってみたり、その程度だ。どれも、ぼくらのレベルで勝てると確信があって立ち向かっている。けれど、今回はそうじゃなかった。
もちろん、頭の中ではダンジョンは危険だと知っていた。鍛練して、強さに自信のある人しか行っちゃ駄目だと知っていた。
「力を過信してた訳じゃないし、あれは事故みたいなもんだけど……そんなの、言い訳にもならない。だって、死んだら意味がない。言い訳なんて、意味がなくなる」
ぼくの選択は間違ってなかっただろうか?
そもそも、さっさと帰っていれば、ベヒーモスと対峙はしなかったわけで。いや、そこを気にしても仕方がないか……
ラルの撤退を命令通りに、外に出て連絡していれば、ラルはここまでの怪我をしなかったのか。
それとも、一度目の撤退をも無視してあそこに残れば、彼女を怪我させずにすんだのか。
……なんてね。どれも、結果論にもならないよ。もしも話なんて、あり得ないのに。
ラルとは、一緒にいるようになってからまだ半年しか経っていない。ぼくは、彼女を知らない。彼女すら、自分を知らないのだから、どうしようもないかもしれないけれど。
「それでも、ぼくは」
君を失うのはすごく怖いんだよ。それくらい、君を大切に思ってしまっている。だって、君は。ラルは、ぼくを贔屓目で見ずに接してくれた人だから。ぼくをただのティールとして受け入れてくれた人だから。ぼくの中で、ラルはもう普通の友達じゃなくなってる。大切な友達……親友だから。相棒だから。
だから、だからさ。
「……もう、あんなこと、しないでよ。お願い。……ぼくを、置いてかないで。一人は嫌だよ」
あのときみたいに、一人でやろうとしないで。
今回みたいに、一人で行こうとしないで。
「……てぃ、る?」
「! ラル……! 分かる?」
揺らぐ視界を慌てて手で拭い、ラルに呼び掛けた。瞼を震わせ、ゆっくり目が開かれる。
「ん……なんか、いろんなとこ、痛い気がするけど、大丈夫だよ。……ティール、無事で何より」
「それはこっちの台詞だからね!?」
「たはは……そっかぁ」
ふわりと笑うラル。そして、繋いでいた手に弱々しくも力を込めた。
「まあ。生きてるし、いいんじゃないかな」
「よくない。ラルのやり方、危ないんだもん。いつだって、自分は後回しで……」
「……うん。私なんかより、ティールが大切だから、そういうことしちゃったけど……そだよね。一人ぼっちはやだよね。ごめん」
……聞いてたの?
「ん~……ちょっぴりね」
申し訳なさそうに笑うラルに、ぼくは恥ずかしくなってそっぽ向いてしまう。
女の子に情けないところ見せちゃってるぞ……いいのか、これで。
「もう、死んじゃうような危ないことはしない。……無茶はきっとやめらんないから、せめて、死に急ぐようなことはやらないって約束する」
「何それ。……無茶をやめてほしいなぁ」
呆れつつ彼女を見ると、ゆっくりと首を振るところだった。そして、ふにゃっと笑う。
「やめたら、仲間を守れないもん。弱い私は、安全圏じゃなくて、危険地帯まで出て、全力で抗わなきゃ。だから、ティールはそんな私を守ってね。隣で、一緒に強くなろう……二人なら、きっと」
「……最強?」
「最強かぁ。大きく出るね。嫌いじゃないよ……なんて。この状態での励ましなんて、気休めにもならないかもだけど……強くなろうってのは、本音」
「うん。ぼくも、強くなる。君を隣で守りきれるくらい、強く……一緒に」
「うん。一緒に、頑張ろう。……ところでさ、ティール」
なぁに?
「私がどれだけ寝ちゃったのか分かんないんだけど……ギルドに連絡、した?」
「…………あっ」
してないな。やばい。怒られる。みんなに。
別の意味でさぁっと血の気が引く。ノウツの大激怒が頭に浮かび、冷や汗が止まらなかった。
「あの、ラ、ラルさん? ここはリーダーが連絡した方が……」
「あー! なんだか眠くなってきたわー! おやすみ、ティール!」
かつてないほどの元気なお休みの挨拶だな!? ふて寝しないで!! やめてやめて!!
しかし、ぼくの呼び掛けに答える気がないのか、大袈裟に寝息を立て始める。狸寝入りしてますよーと言わんばかりの態度である。
「もー!! やだぁぁ!!」
このあと、泣く泣く一人で連絡をし、ノウツにヒマワリにドームに……ギルドメンバーほぼ全員に怒鳴り散らされたのは、言うまでもないだろう。



~あとがき~
シリアスが台無しだよ、お前ら。

次回、時は流れて、怪我を治した二人がギルドに帰還します。

ここらで半分かな?
伏せていましたが、この話はスカイとシリウスの出会い編となります。シリウスの名前が出せなくてっな! 〇〇編ですー! と最初に言えませんでした。申し訳ない!
まあ、言えなかったからといって、支障はあんまりないですけどね! 言い換えはしてたわけだしな。

ではでは!

空と海 第235話

~前回までのあらすじ~
フォースとラウラで紅様退治完了。
ラウラ「僕というか、フォースくんだけどねー」
フォース「そういうこと言うなよ。悲しくなるだろー」
ラウラ「うっそだ~」
フォース「正解。嘘だよ」
さてさて、今回からこの奇妙な集落の話のまとめとなります。とっちらかってますが。
フォース「無計画だからこうなる」
ラウラ「今更だねぇ」
あ、視点はイブに戻りまっす。


時間は少し、遡る。
すーくんが戻ってこないと、二人に打ち明けてどうするかどうかを話し合った。その結果、動かない方がいいのではという結論になり、待機していたときだ。
夏とはいえ、日は沈み、森の中は不気味な暗さになっていた。
「……怖いなぁ、夜の森って」
いつの間にか、すーくんが創ったランプは消えていて、私達は自分達で火を起こして明かりを確保していた。
私は洞窟の入口ですーくんの帰りを待っていた。私の中に戻るって話だったけど、もしかしたら、歩いてくるかもしれない。だから、見えるところで待ってないと。
「今のところ、敵の気配はないかな」
「占いでそういうことも、分かるんですか?」
「あ、これは占いじゃないんだ。星のとの対話。今は夜だから、星の力が一番届きやすいんだよ」
洞窟の奥ではアイトさんとチコちゃんが親しげに話していた。すーくんを待つ数時間でアイトさんも緊張がほぐれたのか、普通に話してくれるようになっていた。
アイトさんのことはギルドと相談すればいいけど……ここの集落の人たちはどうしたらいいんだろう? 警察……に届けるべきなのかな?
そんなことをぼんやり考えてると、遠くの方から誰かが歩いてくるのが見えた。でも、敵の気配はないってアイトさんが言ったばかりなのに。……なら、味方? すーくん?
「おー! すっちー!!」
「!? るーくん!」
すーくんじゃなかった!! なかったけど、え、るーくん!?
にっこにこ笑顔でこちらに近づいてきたのはるーくんだった。そして、そのるーくんに背負われていたのは、ずっと待っていたすーくんだ。
「すーくん!」
「あ、大丈夫。寝てるだけっぽい。ただ、俺でも起こせないから、ちょっと厄介だね~? あ、どもども! 君がかーくんが捜してた人だな? 俺はウィルって言うの! よっろしくー!」
「よ、よろしくお願いします」
るーくんがすーくんを静かに寝かせ、奥にいたアイトさんに挨拶をする。アイトさんも戸惑いぎみだったけれど、すーくんを連れていたし、私達が警戒してないと悟ったみたい。
「すーくん……」
私が呼び掛けても、なんにも答えてくれなかった。戻れって願っても、すーくんはなんにも言わない。
「ねえ、るーくん。すーくん、どうなっちゃったの?」
「ん~……多分、誰かに邪魔されてんじゃないかなぁ? きっと、どっかで戦ってるんじゃない?」
戦ってる……
「……るーくんはなんでいるの?」
「かーくんにお呼ばれしたから。あんね? ここの人達、多かれ少なかれ、闇の侵食を受けている。だから、悪いことも悪いって思わないようになってるんだよ」
闇の侵食?
聞きなれない言葉に、私達は首を傾げる。るーくんは少しだけ唸ると、私達三人を奥へと招き、丸くなるように言ってきた。
「お兄ちゃんの特別講座! 闇の侵食という言葉は案外、昔からあります! そもそも、闇ってのは、悪い感情に作用するもの。嘘ついたりとか、何か悪いことしちゃったりとか。所謂、マイナス感情に作用する」
罪悪感を抱くようなこと?
「まあね! んで、闇の侵食が原因の大きな事件としては、数年前に時が狂い、悪夢が広がるやつがそうかな?」
『じげんのとう』崩壊と悪夢の事件……どれも、ピカさんとポチャさんが解決した事件だよね。
「そ。まあ、この事件に関しては悪夢事件を引き起こした犯人の仕業だったらしいけど! さてさて、話を戻します。闇の侵食ってのは何なのか。それは人の心に闇が広がること。どうしようもなくなるほど、悪に染まること。これは、元から悪い人ってことじゃないよ。がらっと人が変わった、みたいな現象だね」
え……?
「闇による症状は人それぞれだ。でも、共通項として存在するは、人の心の暴走。それがどんな形で現れるかは変わると思うけど……俺なら、無差別に生命を絶つ。自然への命の供給をやめてみる、とかかな? 分かんないけど?」
「じゃ、じゃあ、ここの人達は、アイトさんの軟禁をいいことだと思って、やっていたってこと? それを守るためなら、ワタシ達も、殺せちゃう……って?」
「そーゆーことだよ、りっちー」
そんなの自分勝手な思い込みじゃない。
「そこのおにーさんの力を独占したいと思う気持ちが、闇に魅入られた。それを先導していたのは、きっと」
「ザゼル、さん?」
私の言葉に、るーくんは静かに頷いた。
「さっきの話だけど、かーくんにも、俺にも武器を向けてきた。話し合うなんて考えはなかったんだね。敵の排除だけが目的。その目的を果たすためなら、どんな手段も問わない……一見すると、どこにでもいる悪いやつらみたいで、どこも変じゃないと思うけど……」
あ、すーくんが言っていた。
ここの人達の態度が急に変わったって。親しくしてくれたのに、それもなくなったって。
ここの人達は、元から悪人ではない。変わったきっかけがある。それに、アイトさんも言っていた。嫌な気配がしていたと。
「普通なら閉じ込めるなんてしないよね? 閉鎖的な集落ならまだしも、そんなこともなかったんだもん」
闇の侵食があって、アイトさんの力を知り、それを欲した……住み着いた闇がここに住む人達の独占欲を高めて、軟禁なんて行動に……?
「あ、あの。その闇の侵食は意図的に行われたのでしょうか……?」
え、意図的?
アイトさんが恐る恐る質問を投げかける。るーくんは何か言うことはなくて、そのまま話を続けるように促した。
「前にも似たような事例があったみたいですし……誰かが引き起こしたのかな、って。これがたまたまなら、運が悪かったですむ話ですから」
運が悪かったの一言で、すませられるような話ではない気がするのは気のせいかな……?
とはいえ、そこは重要なところではあると思う。もし、これを引き起こした犯人がいるのなら、次があるかもしれない。そんなのは絶対によくない。
止められるなら、止めないと。
「うーん。そだなぁ。俺の見解でいくと、故意に引き起こした、かなぁ」
「ふぁ!? だ、誰!?」
「お祭りのときの狐さんだよぉ。あの人、めちゃめちゃヤバかったもん。あの人が振り撒いてるんじゃなかろうか~?」
あ、あのキュウコンが……?
「もちろん、あの狐が大元ではないよ。もっと大きな存在がいる。……けど、普通じゃないよ。あの紅という狐は」
お祭りのとき、わざとすーくんに心を読ませて、引き込もうとしていた、あのキュウコン。確かに普通ではないだろう。
制御者であるすーくんをあそこまで追い込んだんだ。
「ま、今言えることは、ここの集落に住む方々を大人しく警察に引き渡した方がいいってことだね。多分、これ以上、すっちー達にできることはない。……俺を含めてね」
るーくんは、少し残念そうに笑って、講義を終わらせた。そして、すーくんの近くに座り、じっと顔を覗きこんでいる。
「るーくんは癒し手なんでしょ? なんとかできそうだけど」
「無理だよぉ。人の心に作用するなんて、俺の専門外! 俺が癒し手と名乗るのは、怪我とか治せるからだもん。精神的な癒しはまた別だよ」
ふーん……そうなんだ。

るーくんの講義が終わって少し経った頃。すーくんが目を覚ましたり、るーくんがばしーんと平手打ち受けちゃったり。私は思わず泣きついたり色々あったけれど……
それでも、平等に朝はやって来るのだ。



~あとがき~
まあ、補足って感じの回すな。

次回、ギルド戻るでーい。
ごちゃごちゃしてるけど、まあ、なんとか納めますんで! ね!!

闇の侵食ってやつ、空海を作り始めてからあった話というか、設定ではあります。んでも、だらだらしている間に似たようなやつがなぁ……本編で出てきてるんだよなぁ…(汗)
超ダンかマグナゲートかな……? それっぽいのって。まあ、今さら変えようがないので、それはそれとしてお楽しみください。いや、ほんと。ドンピシャなやつでてきてもーてるやん。と当時焦った。
マグナゲートや超ダン世界じゃないからね。ここは……うん!←勝手な開き直り

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第163話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で危機一髪してる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
先に逃がしたはずのティールが帰ってきましたが、未だ危機は脱せず。さあ、どうなる!?
ってところでしたねー
これ、ギャグ&コメディ的なやつだと思ってたのに、なんでこんなに危ない目に遭ってるんだろう。謎ですね。
今回はティール視点。なんでって? ラルが気絶してるからだよ!!


《Te side》
なぜか興奮気味のベヒーモスの更なる攻撃に備えて、後ろにいるラルを守るために防御姿勢をとったものの、ベヒーモスはぼくらに突進してこなかった。大きな炎の道が見えたと思ったら、ベヒーモスがふらつき、ばたりと倒れてしまう。
「……えっ?」
ぼくは何かしたつもりはないし、後ろのラルが何かした気配もない。それなのに、独りでに倒れてしまうのはなぜだろう? 運が良かった……なんて、そんな偶然あるわけない、と思う。
とはいえ、危機は去ったと考えて間違いないのは確かだ。終わったと実感した途端、ずっと気を張っていたせいか、全身から力が抜けてしまう。
へなへなとその場に座り込み、大きく息を吐いた。
死ぬかと思った。本当に。終わったと思った。
「…………あっ! ラル!? 大丈夫!? 返事して!」
スイとセツを鞘に納めると、慌てて彼女の元へと近づく。ぼくの問いかけに答えることはないけれど、比較的落ち着いた呼吸をしているみたいで、安心する。
「ラル……よかった。生きてる」
「……かってに、ころすなっての」
小さく咳き込んだあと、ぼそっと呟いた。閉じられていた目を無理矢理開けるみたいに、瞼を震わせた。ぼくはそんなボロボロの相棒の姿にぐっと胸を掴まれたみたいに苦しくなる。それを誤魔化したくて、彼女の頭を優しく撫でる。
「そだね。ごめん」
「こんどは、いいつけ、まもれよな……」
「それは、約束できないや」
「ばか」
……ごめん。
ラルは目を開けているのが疲れてしまったのか、再び目を閉じてしまう。ずっとこのままでいても、ラルの怪我は治らない。手当てして、どうにか病院に運ばないと。
『てぃー、るー。だれか、くるよ』
『よくないひとじゃないのら。だいじょーぶだとおもーう』
誰か……あのベヒーモスを倒した人だろうか。
スイとセツが言う方角に目をやると、こちらに駆け寄る人影がある。二人が言うなら、怪しい人物ではないのだろうけれど。
駆け寄ってきたのは、水色のワンピースの上からパステルカラーの緑色のチュニックを着た一人の女性だった。ぼくよりも少し年上だろうか。
灰色の獣の耳にクリーム色の髪をゆるく二つ結びにまとめた女の人。多分、チンチラ族の人だろう。ここにいるということは、たまたま鉢合わせた探検隊とかそういう人、なのかな。
「大丈夫!? 今、手当てするわね!」
「あ、えと……」
見知らぬ人に触れられるの、ラルは大丈夫かなと思うけれど、今はそんなの気にしてられない。
「ぼくより、この子をお願いします」
「分かった。君は少し待っててね」
ごめん、ラル。嫌かもしれないけれど、我慢してね。
「まずは体力回復させないとね……“ヒール”」
この人、魔法使いか。なら、ヒーラー寄りの土属性魔法使い……か?
“ヒール”は名前の通り、体力回復と少しの怪我の回復を促す魔法だ。完全に怪我は治せないけれど、ある程度の止血をするならこの魔法で対応できる。
「……っ」
回復魔法のお陰か、ぴくりと反応を見せる。それを見た女性はほっと息をついた。反応があって、よかったと思ったのかもしれない。
「皆、手伝って」
そう言いながら、地面を軽く叩くと、モコモコと地面が脈打ち、そこから数体の手のひらサイズのゴーレムが現れる。これは精霊召喚魔法だ。
「この子の負担にならないよう、優しく体の向きを変えてあげて?」
「うー!」
あ、ゴーレムってそう喋るんだ……?
数体のゴーレム達がラルに近づき、命令通りに体を向きを変える。そして、女性はどこからか取り出した救急箱を開き、ガーゼと消毒液を取り出した。
「ちょっと染みるけれど、我慢してね?」
てきぱきと応急手当をする姿はとても手慣れていて、無駄がなかった。魔法系統もそっち寄りだし、普段からやっているのかもしれない。
女性を補助するゴーレム達はラルの右腕と左足にそれぞれ集まって、「うー!」とパタパタと両腕を動かした。何かを訴えかけている……ように見えるけど、ぼくには何がなんだかさっぱりだ。しかし、主の女性はにっこりと笑った。
「あら、骨折してるのね。教えてくれてありがとう」
……えと、パタパタしてただけだよね?
『せーれーのことば、あるじにはちゃあんとつたわるもんなのら』
『せっちゃたちとおんなじなのら!』
はえ~……不思議だね? でも、お前らは精霊とは違う気もするけど。
『ただ、せーれーは、なれてくれば、だれでもおはなしできるんらよ! てぃーもできるよ!』
そ、そうなんだ? けど、周りに精霊使いいないから、その情報は豆知識適度にしかならないなぁ。
「……これでよしっと。次は君の番ね」
ラルの手当てを終わらせた女性はぼくの方を見て、にこりと微笑みかける。
「え、あ……ぼくは」
「放置しておくと長引くわよ~?」
「あう……お言葉に甘えて、お願いします」
ラルよりは軽傷だから、大した時間もかけずにぱぱっと終わらせてしまう。話すことがないくらいに手際のいい手当てだ。
はやい……
「よしっと。……二人とも応急処置程度だけど、手当て終わったわ。でも、病院でちゃんと診てもらった方がいいわね。このあと、一緒に行きましょう」
「えっ!? いや、流石にそれは……」
「おーい! そっちは終わったか~?」
「あら。そっちこそ」
「俺がしくじるわけないだろ? リアが倒せるって言ったんだし~♪」
「ふふ。そうね♪」
わ。新手か……
牙狼族と思われる男性は、赤いマントに濃い灰色のベストを身につけた男の人。長めの赤髪を後ろで一つにまとめていた。この人、チンチラ族の女の人と同じくらいの年、なのかな。そして、あのベヒーモスを倒したんだろう。それも、一人で、一撃で。
「災難だったな、お前ら。空腹状態のベヒーモスと遭遇なんてさ」
ベヒーモスからドロップした何かを詰め込んだ大きな袋を肩に担いだ男性が、あっけらかんとした笑顔を向けてきた。
空腹……そうか。だから、あそこまで興奮していたのか。
遭遇したときは思案する暇なんてなかったけれど、元々、ここはベヒーモスが住むような環境ではないのだ。だから、きっと食べるものも合わないだろう。それでも、この辺に住む魔物を食べて生き長らえていたけれど、食べるものにも困って……たまたま通りかかったぼくらを襲った。
「……餌かぁ、ぼく達」
『るーもおんなじこと、いってたよー』
ラルは気づいていたの。
リアと呼ばれた女性は、簡単にぼく達の状態を男性に説明し、それを理解した男性はこくっと頷いた。
「OK。そう言うことなら、俺らと近くの病院まで行くか~♪」
「はっ……その話に戻るのか! いや、でも、そこまでしてもらうのは流石に」
「ほーう? その足で仲間を運ぶ自信があると?」
あっと。そこは~……ない、けど。それはあなた方も同じなのでは……
「あらあら。そこは問題ないわよ? 皆、集まって。この子達を運ぶわよ~♪」
「うー!!」
さっきのゴーレム達……?
手のひらゴーレム達がわらわらと群がると、一つの土の山へと変化する。そして、むくむく成長し始め、最終的には約二メートルのゴーレムになった。
でっか……
『じょーいせーれーさんなのら』
『おつよいせーれーさんなのら』
へ、へぇ……ぼく、もっとちゃんと勉強しよう。そうしよう。
「“ソイル”、彼らを優しく運んであげてね」
「コオォ……」
ソイルと呼ばれたゴーレムは、その命令通りにぼくを両手で抱き上げると、肩に座らされる。そして、ラルは気遣うように両手で優しく抱き抱えると、前を歩く二人についていく。
「……あの人達、何者なんだろうね」
ぼくはゴーレムから落ちないよう、申し訳ないと思いつつも、ゴーレムの頭にしがみついていた。
『わるいひとじゃないらよ』
『ねー! てぃーとるー、ちゃんとしんぱいしてたもん』
そ、そう……
あの二人に何かを問いかける元気もなく、ただただ、ゴーレムに揺られながら病院へと運ばれるのだった。



~あとがき~
イケメン兄さんのシーン、ティールちゃんと見てなかったな。描写できないじゃん……!

次回、病院へと運ばれる二人。
今回の件を経て、二人が思うところは……

名前は! 出してないけど! 出てきましたね!!
今よりも若い(?)学生時代のイグさんとリアさんです。あ、リアさんは名前出たわ。
とはいえ、お知り合いになるには、まだまだかかります。もう少しお付き合いくださいね。

そして、大人リアさんが精霊を使うシーンが出る前に学生リアさんが精霊を使いましたね。
レイ学キャラでは三人目の精霊使いっす。ユーリ、ツバサちゃん、リアさん。
……ツバサちゃんを数えていいのかは謎だけど(汗)
まあ!? 使えるしぃ!? いいよね! ね!!

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第162話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で戦闘してる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
まさかまさかの高ランクモンスターのベヒーモスさん登場。この頃のラルとティールでは倒せませんが、ラルが捨て身の囮に!! さあ! どうする!? というところでした。
ところで、ベヒーモスって打ってますけど、ヘビーモスって間違えそうになります。私だけですかね?
あ、直接的な表現はありませんが、注意すべきっぽい感じになってます。
ラル「ふわふわか。私がぼっこぼこになるんだから、軽い暴力表現的なのあるって言えよ」


スイちゃんを両手で握って中段で構え、力強く地面を蹴る。助走の勢いを利用し、突き技の“スラッシュ”を敵の前足を掠めるように狙いを定めて繰り出した。そうしないと、あの分厚い肉壁に阻まれて、足が止められてしまうからだ。とはいえ、これが通るなんて思っていない。
「通らなくてもいい。……次!」
ベヒーモスの後ろに回り込んだ私は、ぐるっと体を回転させて、その遠心力に任せた回転斬りをした。そして、体を反転させ、斜めに、上に、下にと連続で叩き込んでいく。
「グオォォ……」
「流石に連続で攻撃すれば、少しは痛いでしょ……あんまり手応えはないけど。腕力のなさがぁ」
『るー! がばっと! ごくっんこくるよー』
「何それ。補食されるの、私」
連続斬りのお陰か、ぐらりと巨体を揺らせるものの、致命傷にはいたってない。そして、スイちゃんの忠告通り、口が大きく開けられた。
「噛みつきか……? ひゃあぁっ!!」
攻撃の溜めがなかったから、噛みつきだと勝手に断定し、大きく後ろへと後退する。同時に、がちんっと金属同士を合わせたような音が辺りに響いた。
『ぱっくんちょー!?』
「そ、そんな可愛いものなんかじゃ……補食なんてされたら、死亡だよ。即死だよ」
ん。……というか、だ。
「あいつ、あれか。私らを餌だと思ってる? お、美味しくないですけど……?」
『おなか、すきすきなのら? あのおっきーの』
かもしれない。
ベヒーモスは離れた私に向かって、再び大きく口を開ける。今度は遠距離からの魔法攻撃……ブレスが飛んでくるのだろう。
「これは直線距離。……まだ避けやすいわ」
ゴゥッと光の光線が放たれた瞬間、私は横に大きく飛び退く。光線は咄嗟に構えたスイちゃんも掠めて、岩壁へと直撃した。後ろで岩の崩れる音を聞きながら、そっとスイちゃんを撫でる。
「ご、ごめん、スイちゃん。大丈夫……?」
『らいじょーぶ。あんなのでこわれちゃう、すいちゃじゃないのだ~♪』
なら、よかった。
多分、やっと見つけた餌にありつけず、イライラしているベヒーモスは、その苛立ちを表すように無茶苦茶に頭を振る。そして、そのまま、突進してきた。
「わわ。どう避けろと……!」
どちらに飛べば、その頭に当たらなくてすむのか判断できなかった。せめてもと、スイちゃんで防御したところで、下からの突き上げに直撃し、宙へと投げ飛ばされた。一応の防御したものの、かなりの衝撃が私を襲う。肺から全ての空気が抜けるような感覚に、躊躇わず全て吐き出した。
「かはっ……!」
「グオォォ!!」
『ばーんてくるよ!! あしで、ばーん!』
いや……流石に、無理だわ。
ベヒーモスの鉤爪を防ぐ暇もなく、直撃を許してしまう。なす術なく、横に凪ぎ払われ、壁に激突して地面に倒れる。今度は空気だけじゃなく、込み上げてきた鉄の味に激しく咳き込んだ。
『るー! るー!!』
……しんどいなぁ。これ、どっか折れただろ。あちこち痛くて、どこが折れるのかわかんないけど。
「グアァァァ!!」
あーあ。元気だなぁ、あいつ。やっと飯だーって思ってんのかね。そりゃよかったね……ご飯は大事だよなぁ。人も、魔物も。
『るー! あきらめちゃだめー! てぃーとのやくそく! あるよ!!』
遠くの方でスイちゃんの声が聞こえてくる。あの衝撃で手放してしまったらしく、私の近くにはないらしい。
「けほ……あった、けど……これ、死んじゃう展開でしょ……?」
走馬灯すら流れないくらい、短い間しか知らない私が、この絶望的状況から助かる方法なんて思い付くはずもない。
指一つ動かせない今の私に、ベヒーモスの攻撃を避けることも、受けることもできるはずもない。
ここから分かることは一つだ。絶対的な死である。まあ、生きとし生きる者は死があると言う。私の終わりは、こういうものだったってだけで。
迫り来るベヒーモスを睨む元気もない私はそっと目を閉じる。あわよくば、来世でもう少しましな人生になることを祈るよ。
「てやあぁぁぁっ!!」
「……!?」
聞き覚えのある雄叫びに思わず、目を開ける。
そこには、セツちゃんと私が放してしまったスイちゃんを構える相棒がいた。ベヒーモスティールに押し返されたのか、後方へと追いやられていた。
「な、んで」
「なんで!? こっちが聞きたいよ! こっち来る気全くないじゃん! それに、君だけ残して撤退なんてやっぱりできない」
……馬鹿。
回復薬を使ったからといって、怪我が完璧に治るわけではない。その証拠に、ベヒーモスの攻撃で痛めた左足は今も引きずったままだ。そんな状態では満足に剣を振るえないはずなのに。
「ここでラルを見捨てたら、ぼくは自分を許せない。たった半年だけの仲だとしても、ラルはぼくのパートナーで一番の親友だから! やるだけやって死ぬなら後悔はないよ」
『しらゆき、よんじゃう!?』
『よーんじゃおー!』
「却下。大剣の重さに耐えられる気がしない」
重心を右足に変え、なるべく、左足に負担かけないような構え方をする。
今のティールに走り込んで突っ込むとか、素早く翻弄するだとかはできっこない。一撃一撃が単調で、分かりやすいものになってしまった。それでも、ティールは諦めるつもりはないみたいだ。
「グオォォ!!」
『てぃー、とっちんらよー!』
「問題ない。弾くぞ!」
踏ん張りがきかないはずなのに、受けきるつもりらしい。スイちゃんもセツちゃんも、やる気満々だ。理由ははっきりしている。動けない私が後ろにいるからだ。……そんなことをしてないで、逃げればいいのに。私なんて、構わずに。
目を閉じるつもりなんてないのに、私の意思に逆らってゆっくりと視界が閉じていく。
ここが私の限界だと告げるかのように。
「……えっ?」
ティールの驚く声が聞こえてきたが、何も見えないせいで、その理由は分からなかった。



~あとがき~
きりがいいので、短いですがここで終わり。

次回、ティールが驚いた理由と、二人の運命は。
ラルちゃんがぼろっぼろですが、これは過去編です。何が言いたいかって、ちゃんと生きてるよ!

今のラルなら、空中に突き上げられても、慌てることなんてないんでしょうね。むしろ、自分から口に突っ込んで、雷姫を通し、電撃ぼかーん! くらいはしてしまいそうです。
時間が経つというのは恐ろしいね……特にラルの成長が怖い←

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第161話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でバトルしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回から初々しい(?)ラルとティールの過去編をお送りしてます。いや、分かってる。メインはイグさんを出すことだと。リアさんと会わせることだと! んでも、もう少し先だと思います。はい。
ラルは物静かな感じだし、ティールはちょっと幼いですね?
ラル「今とは逆転だな!」
ティール「何があったんだろうね、ぼくら」
とはいえ、今でもクールなラルはいるし、どこか子供っぽいティールも健在だけどね!


発火石というものがあるらしい。石炭の一種らしいが、高火力な炎を長い時間継続して燃えると噂されている。見た目も黒くて石炭と間違えてしまいそうなくらいだ。そんな発火石、岩山やら渓谷やら、とにかく岩が転がっているようなダンジョンに発生するアイテムの一つ。
つまり、定期的にポップするモンスターと同じで、定期的に発生するアイテムの一つなのだ。そのため、安価で取引されるし、需要もある。
「さてっと……これだけ集めればいいかな? 数指定なかったよね?」
本人曰く、親の影響で石に詳しくなったというティールのお陰で、意外にもスムーズに進んだ鉱石集め。彼の持つ袋は何でもないただの袋だが、それにはたくさんの発火石が詰め込まれている。
「いいんじゃない? というか、すっごく重そうだね。……運べるかなぁ」
「大丈夫。ぼくらの鞄は異次元収納機能のある鞄だから! 魔法ならこれすら必要ないけどね~」
ふうん? 世の中にはそんな魔法もあるのね。
「あはは♪ たっくさんあるよ。便利な魔法。ぼくらには使えないけどさ」
私はバッグの口を開け、ティールの持つ袋をしまう。明らかに容量オーバーだろと突っ込みたくなる比率だったけれど、何の問題もなく、バッグはスリムなまま。本当に不思議なものだ。
とりあえず、依頼はこれにて完遂。周りにモンスターの気配も人の気配もないから、バッジで帰れる場面ではある。
ティールはバッジのマップ機能を立ち上げ、私達が通ってきた道を確認していた。
「うーん。思ったより奥まで来ちゃったね? どうせなら、奥地まで行ってみる?」
「まあ、そうだね。時間もあるし、せっかくの探検だもんね。踏破してみよっか」
「やった♪ 程よく見て回ろうね」
探検好きだなぁ……いいけどさ。
周りに広がるのは、岩の壁とちろちろと流れる水だけ。森の中にある渓谷ではなく、岩山の渓谷だから、本当に見通しもよく、迷うことはなさそうなところである。だから、初心者向きだとか言われているのだろうけれど。
マップを表示させつつ、ダンジョン内を歩いていく。私達が一歩進めばマップ内の道も一歩明らかになる。つまり、足を踏み入れない空間は、何も表示されず、空虚なままだ。
「ここまで来ると、地図を完璧にマッピングしたくなるよね……意味ないのは分かってるんだけれども」
「分かる。時間があれば端から端まで見たいよね。ダンジョンは入る度に地形が変わるから、この地形は二度と拝めないから」
「……はぁ。私にもティールの探検馬鹿が移ったかもしれない」
「えー! いいじゃん。一緒に楽しもうよ~♪」
いや、楽しんではいるけれど……なんて言ったら、調子に乗りそう。黙ってよ。

しばらくは幸運にもモンスターも出てこず、二人で談笑しつつ奥地を目指していた。
しかし、遠くの方で遠吠えのような声が聞こえてきた。その声に私は足を止める。ティールにも聞こえていたらしく、同じく歩みを止めた。同時に、ティールの愛剣のスイちゃんを抜く。
「……なんだ。今の」
「何か、聞こえた、よね? スイ、分かる?」
ぐぬぬ~……ちょっととおいのらぁ……でも、がおーてこわいけらいらよ~』
かなりアバウトな説明だったが、この先に敵がいるという認識は間違っていないようだ。警戒するに越したことはない。
地の底から這い出るような声の持ち主は、その雄叫びと共に段々と近づいてきていた。とてもじゃないが、走って後退できるほど、ゆっくり来てはくれないらしい。
ティール、隠れよう。このまま逃げても追い付かれるかも」
「……了解」
小さな小道に入り、岩壁に張り付くように周りの様子を窺う。目の前には大部屋。他モンスターもアイテムも落ちていない、閑散とした部屋だった。
ティールに倣って、私も短剣をホルダーから抜き取り、構えておく。
「……グオォォォ!!!」
「ひゃっ……な、何あれ。でっか!」
大きな角が二本生え、強靭な四足を持つ、悪魔みたいなそのモンスターは、禍々しいほどに赤く光る目で辺りを見回していた。私達の何倍も大きい。あんなの、初めて見た。
「あ、あれ、ベヒーモスじゃない? なんでこんなところにいるんだろ。あいつのすみかはこんなところじゃないはずなのに」
ベヒーモス? 目の前の怪物の名前?
「そうだよ。あれは、ボス級のモンスターだから……高ランクの討伐対象モンスターさ。今のぼくらじゃ勝ち目ないな。……それに、な、なんか興奮してるし、我を忘れてるっていうか」
部屋に入ってきたベヒーモスさんは低く唸り声を上げ、ぶんぶん頭を振っている。確かに、正気ではない気もするが。
「うぅ~……戦闘するのは死ぬようなもんだよ。……ラル、緊急脱出しよ。転移用の道具は?」
「それはずっと入れてあるし、あると……ん? いや、待って。ないわ。ごめん」
「えっ」
ついさっき、人に譲ってしまったのだ。あれ一つしか持っていない。
「……あげちゃったの?」
「お困りの方がいらしゃったので……つい」
「それは、偉い……けど、この状況下では最悪だよ。ターゲットされてなければ、バッジで逃げれるんだっけ?」
「確か……! ティール、回避!」
「うわっと!!」
ベヒーモスの明確な殺意の視線に私達は、隠れていた小道から飛び出した。飛び出した瞬間、ベヒーモスの前足が振り下ろされるところだった。
「あっぶな! ティール、無事?」
「な、なんとかね。どうする? 今、タゲとられたよね、絶対」
「……だねぇ。ありゃあ、化け物ですよ。……とりあえず、攻撃して隙を作るしかない。戦闘準備!」
「了解! ぼくが前に出るから、後ろから指示出して!」
「了解。……鉤爪攻撃くるよ!」
ティールから離れつつ、ベヒーモスのモーションから、次の攻撃の予測を立てる。私達を襲った際の初撃にも使った、前足を振り下ろしてからの爪攻撃だろう。
私の予測通り、ティールに狙いを定めて前足を振り下ろしてきた。一瞬、受けきれるか思案したようだが、無理だと判断したらしく、前へと走り出し、ベヒーモスの下を駆け抜ける。鉤爪攻撃から逃れたティールは、スイちゃんといつの間にか握っていたセツちゃんを構え、後ろ足に斬撃を食らわせると、一定の距離を取った。
ティールの攻撃、効いてる気がしないなぁ。ヤバイヤバイ。どうするどうする……」
「グオォォォ!!!!」
強靭な足にたった一撃与えても、なんの意味もないらしい。それどころか、ベヒーモスの神経を逆撫でしてしまったのか、地面が揺らぐほどの咆哮を繰り出すと、ゆらりと尻尾を揺らした。
ティール、尻尾来る! 下がれ!」
「尻尾の凪ぎ払い!? いやいや!? 回避間に合うわけないだろ!!」
と、文句を言いつつも、二つの剣で防御姿勢を取る。足で避けられないと悟ったからか、少しでもダメージを軽減しようとしたのだ。
ベヒーモスの尻尾による凪ぎ払いは狙い済ましたようにティールにヒットする。防御していたとはいえ、巨体から放たれた攻撃を踏ん張れるはずもなく、ティールは横へと吹き飛ばされた。
ティール……っ!」
『げほっ……けほ……うぇぇ。……だ、だいじょぶ。一応、生きてる……から。あーくそ。いってぇ……このままだと、走馬灯見るって。絶対』
通信機からティールの声が聞こえてきた。叫ぶ元気はなくても、話す元気はあるみたいだ。しかし、今のティールに前に出て戦えってのは酷な話。たった一撃であの有り様だ。……かなり、絶望的なのではなかろうか。今ある手札を考えてみても、私にできる技や技術で倒せる相手ではない。私よりも剣技に優れているティールであのやられようだ。私にできるはずもない。
なら、今持っている道具でどうにかできるか? 回復薬はあるが、敵を妨害するための道具も気休めにもならない。つまり……このまま二人で脱出する手立てが残念ながら思い付かないのだ。
……なら、二人での脱出を諦めるしかないな。
心でそう割り切ると、短剣をくるりと回す。そして、ベヒーモスをじっと見据えた。
壁際でぐったりしているティールに利口なベヒーモスは狙いを定めていた。動けない相手から仕留めてやろうとするのは知性のある証拠だ。
「私の相棒を簡単にやらせるか! “まもる”!」
私がトップスピードで駆け抜け、ティールとベヒーモスの間に割り込むと、透明で、あるかどうかも分からない壁を作り出す。しかし、この壁はベヒーモスの鉤爪をしっかり受け止め、弾き返した。敵が体勢を崩した隙を狙い、バッグから回復薬を取り出すと、ティールの口に突っ込んだ。
ティール、ここから離脱して。外に出たら、ギルドに連絡してほしい。その時間くらいなら私が稼げる」
「んぐぐぅっ…………っぷはぁ! り、離脱って……ラルは? 一人で戦うの」
「誰かが囮をするしかないからね。私がやる。ティールよりは動けるし……私、速いから。いざってときは逃げ切ってみせる」
私の命令にティールは何か言いたげだったけれど、今の自分の状況を見て、顔を歪ませる。そして、悔しそうに小さく頷いた。
「……けど、条件がある。逃げてくるって約束して。それと、スイを置いてく。ぼくに返してね。絶望だよ」
スイちゃんを差し出し、ゆっくりと立ち上がる。回復薬を使ったからといって、怪我全てが治るわけではない。あくまで、歩ける程度には回復しただけなのだ。
「……了解。よろしくね、スイちゃん」
『うり! よろしく! るー!』
短剣をホルダーにしまい、スイちゃんを構える。ようやく体勢を整えたベヒーモスは今度は私に狙いを定めたらしい。ギロリと睨んでくる。
「行って。ティール」
「了解」
ティールは、おぼつかない足取りではあるものの、ダンジョンの入口方面へと向かう。ある程度離れれば、ターゲットは外れ、バッジのシステムが起動するはずだ。そうすれば、ティールの命だけは助かる。
「……さて、やるか」
仮に私がここで死んだとしても、問題はない。誰も私を知らないのだし、私も誰も知らないのだから。けれど、ティールは違う。家族がいる。帰るべき家があるんだ。ならば。
「危険な役目は私がやるべきだ」



~あとがき~
ラルの性格は昔も今も変わりません。

次回、ラルVSベヒーモス
……ってやりたいけど、戦闘シーン嫌なので、いい感じに終わらせよ……(笑)

ティールと二人だから、いつものラルですね。今よりも爪の甘く、考えがどこか稚拙なラルちゃんではありますが。
ちなみに、この辺のスカイは二人の他にムーンが仲間になっています。空海でいう、ソル君ですね。出てくる気配ゼロですが。
今回でも出てくる……出てくる……ところは……あったかなぁ。あると、いいね……!

ではでは!