satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第21話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で奔放に遊ぶ物語です。本編とは一切関係ありません。また、擬人化された前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回は、初のアラシ君視点です。新入生組三人も別で犯人(ツルギ)君を追います。
アラシ君は人様のキャラ様なので、色々難しいけど……ほら、好き勝手出来ないじゃない!?
アラシ「そこかよ!?」
レオン「でも、俺達にも出番来たな! いえーい」
アラシ「お、おお……」
ツバサ「解決するぞー♪」
アラシ「おぉ……?」


《A side》
しかし、捕まえると決めたのはいいけど、実際の居所はさっぱりなのが現状だ。どこに現れるとかも分からないし、しらみ潰しに探すのも骨が折れる。ここは莫大な敷地を持つ学園。何も考えずに特定の人物を探せるほど、楽ではない。楽ではないんだけど、その場でじっとしているわけにもいかず、とりあえず、校内を歩きながら作戦会議をする。その間にも何人かに話しかけられたけど、適当にあしらっていた。
「今までの話って全部、昨日の話っぽいよな?」
「あぁ。だけど、アイツのことだから今日も来るだろ。……イタズラしに」
「にゃはは~♪ だよなぁ~? でも、手がかりもなし、か。ツバサ、ツルギの気配とか感知出来ないのか?」
レオンが聞くと、ツバサはふるふると首を振った。分かっていた反応だったけど、なかなか厳しいところだな。
「私の格好してるってことは、多分、幻術を使ってると思うの。そうなると、結構近づかないと分かんないかなって」
ツルギの得意分野だからなぁ。幻系の魔法。流石のツバサでも、分からないか。
幻術は文字通り、幻を見せる魔法。ないものを見せるそんな魔法だ。解くには術者以上の力を持った人が解除魔法をかけるか、かけた本人が解くしか方法はない。幻なんて聞くと何でもないように聞こえるが、高度になると、本物と偽物の区別がつかなくなり、バトルとかでも妨害としてもよく使われる。もちろん、高性能な幻だとしても、実際には存在しない。触ってしまえばないことに気づくし、今回もツルギ本人に触れば、ツバサではないって分かる……はずだ。本来なら。
なんせ、ツルギはツバサの双子の兄。背丈も見た目もほぼそっくりだ。仮に触れられても気付かれないんだろうな。
「双子ってこういうときに使えるってことだよな」
「成り代わりか~……イタズラの幅が広がるぜ♪」
ツバサはそんな性格じゃないから、よかったけど、レオンにいたら周りを困らせていそうだな。関わりたくねぇわ。
「んなこというなよ、アラシ~♪」
「うるっせ! 来んな!」
悪ふざけで抱きつこうとするな! 気持ち悪い! 昔から、俺の嫌がることを的確にしてきて、本当にムカつく! まあ、それで縁を切らない俺も俺。腐れ縁なんて、そんなものかもしれない。
「手がかりないなぁー! ミユル達に聞いてみっか? 望み薄いけど」
そうするか。見かけたかどうかだけでも聞いて、足取りを追った方がいい。なんでもいいから、情報が欲しいな。
「ん~……ツルギ、なんでこんなこと?」
「いや、多分だけど、嫉妬だろ~?  ラルのことを羨ましいっていうか……なんていうか?」
俺もそう思ってる。確実なことは分からんけど、何て説明すればいいかは難しい。言葉を間違えると、ツバサの機嫌を損ねるだろう。そうなったら、面倒だし……ツルギの身のためだ。
「嫉妬? ツルギが? どして?」
いや、どうしてって……ねぇ?
どうオブラートに包んでやろうかとレオンと考えていると、ジャージ姿の男子生徒二人とすれ違った。オレンジの髪と桜色の髪色。背丈からして先輩で、どっかの部活に所属してる人だろう。肩にスポーツバッグをかけて、どこかに移動する最中らしい。そして、オレンジ髪の先輩はちらっとこちらを見た。
「あれ? あの子、柔道場方面に向かってた子っぽくない?」
「いやいや。こっから距離あるから、見間違いに一票~」
「そーだよなぁ」
柔道場……!?
「あの! それ、本当っすか!?」
咄嗟に叫んでしまい、二人を驚かせてしまった。変に思われるかもと後悔したが、幸いにも先輩達は立ち止まってくれた。
「えっ? あ、おう。なぁ?」
「さっきだったよな。俺らは見かけただけなんだけど」
ツルギだ!
柔道場っていうと、運動系の部活動が集まるエリアか……!
「そいつ、まだ柔道場にいるんすかね? 俺達、そいつのこと、探してて~♪」
いきなり話しかけた俺とは違い、レオンは答えやすいように理由まで並べる。口が達者なレオンらしい。
「さあ? 向かうところを見かけただけだし。でも、周辺にはいるんじゃないか?」
「そんなに前じゃないから、多分だけど」
「ありがとーございます! 時間とらせてすんませんでした!」
レオンが軽く頭を下げ、俺も慌てて頭を下げる。少しの間があった後、二人の先輩の笑い声が聞こえて、頭を上げる。
「別にいいよ。会えるといーな」
俺達に軽く手を上げ、そのままどこかへ行ってしまった。ふぅ、親切な人達でよかった。
さて、気持ちを切り替えて、俺達も追った方がいいな。勘づかれたら鬼ごっこになりかねない。そうなったら、気配を辿れない俺らは後手に回っちまう。

急いで柔道場へ向かう。落書きをしたなら、多分外だろう。落書きを中に入ってまでしない。かなり目立つし、見つかりやすくなる。それはツルギも望まないはず。三人で辺り周辺をぐるっと探してみるも、犯人らしき人物は見当たらない。
一足遅かったか……!
「くっそ、いない……次はどこに行くんだよ」
「こっちもいないわ! 別んとこ行ったって感じかね~? まぁた、目撃者を探すところからかよ~」
別のところを探していたレオンが髪を掻きむしりながら、こちらに近寄ってくる。ツバサはどこ探しているんだろう。柔道場の裏手かな。
「そいや、レオン。お前はラルの悪口の落書きは見つけた?」
「いんや。表の方見てたし、そんな目立つ場所に落書きしなくね? アラシは?」
「柔道場から少し離れたとこを見てて、そこにはなかった……あ」
数秒の沈黙の後、たらりと冷や汗が俺達の頬を伝う。これはまずいのではないだろうか。ないのだろうか!!
「……ツバサ、見つけちゃった系? ダイレクトに御対面かな」
「やばいかも。ツバサ!?」
二人で柔道場の裏手に回る。俺達が見ていない場所はここだけだったからだ。すると、柔道場の壁を見つめて動かないツバサの姿があった。壁を見てみれば、そこには予想通りというか、話の流れで予測出来ていたが、『高等部の会長は仕事しないバカ会長』と書いてある。内容はまあ、間違っていない……けど。ティールとかも仕事しないとよく言っているし。バカまでは言ってないけども。
「バカ会長……子どもの悪口って感じ。こう……ストレートなところが特に子どもっぽい気がする~♪」
「ツバサと同い年の十二だ。これが普通なんじゃ……ツバサ?」
「ふ、ふふ……」
わなわなと肩を震わせ、狂ったように小さく笑っている。いつかも似たような状況を何年か前に見た。
これはキレる前兆だ。
「ツバ……ツバサちゃ~ん? いや、ツバサさん!? 落ち着いて!」
レオンの態度が変になっているが、慌てるのも分かる。俺も似たような気持ちだ。ツバサはゆっくりとこちらを振り返る。にっこりと笑っているが、目は全く笑っていない。寒気を感じると共にツバサの口が開く。
「やだなあ……レオン、私は落ち着ているよ?」
「あ、そうですね……」
え、怖いんだけど。落ち着きすぎて怖い!
「アラシ! レオン! 絶対に犯人……お兄ちゃんを捕まえるよ! 次の目的地は美術室!! 行くよ!」
感情的に動く辺り、落ち着いてるなんて言えないのではと頭の片隅で考えながら、バッと走り出すツバサを後ろから追いかける。なぜ美術室なのかは謎だけど、兄妹の勘……なのか。そこら辺は俺とレオンは分からない。黙ってついて行った方がよさそう。



~あとがき~
ぷんぷんツバサ様……

次回、ラル視点に戻し、アラシ君達とは違う方法で犯人を追います。

ラルの悪口とかどうしようとか考えて、バカ会長にしておきました。複雑なものではなく、単純でいいと言われていたので……はい。見せなくてもいいかなとも思ったけどね。

たまーにあるレオン君とアラシ君の馬鹿みたいな絡みは私の趣味です。楽しい。
主にレオン君がアラシ君を馬鹿にしています。

ではでは!

未熟な新芽が華開くとき

~前回までのあらすじ~
《この物語は死ネタ、暴力表現等の過激な表現が含まれます。閲覧する際はご注意ください》

前回はまさかのピカ登場でしたね。私もびっくり。
ヴァルツ「だな」
もえぎ「はうぅ」
今回はあれです。事件についてお話ししていく……つもりです! はい! 多分!!
ヴァルツ「こっからどう話に繋がるんだろうな」
もえぎ「えと、私がトリスさんを持つ……そんな話でしたね……」
そのはずなんだけどな。


待ち合わせているという場所はギルドからそこまで遠くありませんでした。場所は私もたまに行くカフェでした。テラス席でピカさんとそのパートナーさんだと思われるポッチャマさんが座っています。ピカさんが私達に気が付くと、にこりと笑ってくれました。
「さっきぶりですね~♪ こんなに早く再会するとは思いませんでしたよぉ」
「俺もだ。……悪いな、時間をとらせて」
最後の一言はピカさんにではなく、その隣のポッチャマさんに言っていました。ポッチャマさんは優しそうな笑顔で応えます。
「大丈夫です。きっと、大切な話ですよね? ぼく、席を外しましょうか?」
「いや。そこまでしなくていい。……ピカが聞かれると不味い話をするなら話は変わるがな」
「えへへ~♪ まあ、ものによりますけど、さっきミーさんに聞かれた話なら問題ないですよ。このまま話しましょう」
店員さんに断りを入れ、私とヴァルさん、ピカさんとそのパートナーさんの四人でお話をすることになりました。とはいえ、私は話すことなんて何もありませんから、黙っているだけだと思いますけれど。
「まずは改めて自己紹介を。私は探検隊スカイのリーダーのピカでーす。ランクは一応、マスターランク手前……だったかな? まあ、ランクなんてこの際、どうでもいいですけど!」
探検隊のランクはよく分かりませんが、それが凄いことなのは理解出来ます。というか、親方様が頼る相手ですから、実力者なのだという認識はありました。
「同じく、スカイ所属のポチャです。基本的にはピカのパートナーとして、アシストするのが仕事。あとはスケジュール管理とか……そんな感じ?」
……あ、私も自己紹介しなくちゃですね。そもそも、私のために自己紹介してくれてるんですもん。
「えと、ヴァルさんのパートナーの……もえぎ、です。普段はえっと……ギルドのお仕事をやってて、ヴァルさんとお仕事をしてます……です。はい」
「……終わった?」
「ここはヴァルツさんもする流れですよー!」
黙って聞いていたヴァルさんが飲んでいたコーヒーをソーサーに置いて、私達に向かって問いかけました。そんなヴァルさんにピカさんはにこにこと笑顔で茶化しました。……私にはそんなこと出来ません。
「必要か、それ」
「もう。ノリ悪いなぁ? いいですけれどね。さて、何を知りたいんですか?」
「ピカはどこまで把握しているのかを」
「噂程度です。ぶっちゃけ、探検隊の中でも色々と流れてきてるんですよね。それくらいの知識です」
「ふむ」
明日向かうとなると、今日、大方の情報収集をする必要があります。やることは多いです。
「ミーさんが言ってたかもですが、『神殺し』はあくまで通称。私は一連の事件を起こしている犯人を指す言葉だと思います。由来は、犯人の通り名か能力か。……あるいは、犯人の狙いに意味があるのかもしれませんけど」
「ぼく、初めて聞いたけど、そんな話あった?」
「私達の大陸は平和だからね。物騒な話とは縁がない。アンテナ張ってる私でさえ、そこまで入ってきてないんだもん」
本来、こちらの仕事を請け負うような仕事をしていないピカさん達を引き留める理由はないです。マスターも無理に受けさせるわけにはいかないですから。
「……私の主観でお話すると、何か目的があると思うんです。だって、殺りたいだけなら、どんどん移動すればいいし、自ら動くべきです。でも、相手は動かない。場所に意味があるのか、誰かが来るのを待っているのか、とかね?」
「人物に意味がある、と?」
「人物だとするなら、お目当てじゃないし、顔見られたから殺す。……今の状況はそんな感じかもですね~……あとは、能力の場合か。“神殺し”……パッと思い付くのは神と呼ばれるポケモンを殺したって線ですけど、彼らは基本、不老不死なのでないです」
私とあんまり歳が変わらなそうなのに、ぽんぽん思い付くようです。ヴァルさんが頼るくらいですから、ある程度予想はしていました。ピカさん、頭の回転がとっても早い人なんですね。
「じゃあ、他に神ってつくものは何かってことになります。私は身近にあるので、“神器”を思い浮かべました。神器……正確には神霊かもですけど、どちらにせよ、無力化してしまうみたいな。そうなると、神器を身に宿らせる使い手にも影響が出る……かもしれません」
笑顔で恐ろしいことを言います。どれも可能性の話ですが、共通して言えることは、相手がどれだけ危険なのかということです。こちらの人員を簡単に切り抜けられるくらいですから、一筋縄ではいかないでしょう。
「全てを総合して考えたとき、自分の身を取りました。自分に危険が及ぶなら、同行する仲間にも被害が及ぶし、結果的に周りに被害が飛ぶ恐れもある。二つ返事で了承出来る話ではなかったので、私はお断りした所存です」
「時間があれば受けていた?」
「下調べする時間があれば、考えなくはなかったですよ。まあ、したところで、受けるかは五分五分でした。今の噂だけで予測出来る可能性が危険すぎますから。本業が探検隊の半端な私達が、首を突っ込める話ではない」
探検隊のリーダーという肩書きを持っているピカさんは、周りの影響と自身の力を見極めて、今回の判断をしました。全てが推測に過ぎませんが、それだけでも力が及ばないと考え抜いた結果と言えます。大陸も違うし、職業も私達とは違うので、お断りしたのは大正解なのかもしれません。
「確証がない話とはいえ、可能性はある。……しかし、今回送り込まれた者達は言うほど弱くはないと思うんだが」
冷めてしまった紅茶に口をつけていたピカさんは、ヴァルさんの言葉にぴくんと耳を動かしました。そして、にこりと笑います。その笑顔はとっても嘘っぽくって、わざとそんな表情をしているように感じてしまいました。
「あっは♪ ヴァルツさん、分かってるくせに」
「……まあ、そうだな」
「あ、あのさ。ピカの言う通りだとして、“神殺し”って呼ばれるなら、神器……神霊がやられた事実があるってことになるよね? そんなのあり得るの?」
今の話で気になったらしい、ポチャさんが遠慮がちに質問を投げ掛けました。確かにポチャさんの言う通りです。神霊が最低でも一つはやられていないと、その名はつかないでしょう。神器はとっても珍しい武器。この世にいくつあるかも知られていないくらいに珍しいものだと聞きます。そんな武器が簡単にやられるのでしょうか?
「そう言われるとそうだね。じゃあ、この線はないかも~」
ピカさんはさらっと自身の答えを捨て、あっけらかんと答えました。ここまで真剣に話したのに。
「適当な奴」
「言ったでしょ? 私の主観で話すって。私にとっての最悪を話したまでですよ。どうせ、現地に行って下調べするんだから、私の考えなんてなくても同じでしょうに。ヴァルツさんは慎重派なんだから」
「こんな仕事をしていれば、慎重にもなるさ。お前も似たようなものだろう?」
「あ~……そうですね。そうかもです。……なので、主観的な意見としてもう一つ。神霊がやられたとすれば、一筋縄ではいかない。神器の強さにもよりますけど、ヴァルツさんでも敵わない可能性すらあり得ますからね。……お気をつけて」
「あぁ。生きて帰れるように頑張るよ」
適当な返事をすると、ピカさんは椅子から立ち上がると、ヴァルさんに何かを手渡しました。何なのかは私からでは見えませんでした。
「餞別です。役に立つかは知りませんけど」
「……お前の餞別は別の意味で恐怖しかないんだが、有り難く貰い受けるよ。……手間かけさせたお詫びにここは俺が払うよ」
「お、やったぜ! ありがとうございますっ♪ あ、例の件はよろしくです~」
「あぁ。続けておく」
二人にしか分からない会話を手短に済ませると、ピカさんとポチャさんは帰っていきました。帰り際に、「今度、ゆっくり話しましょうね」と明るい笑顔で話しかけてくれました。ほぼ喋ることも動くこともしていなかった置物のような私を気にかけてくれていたようです。ピカさん、いい人ですね。
「ヴァルさん、ピカさんに何をいただいたのですか?」
「何だろうな」
すでにウエストポーチに仕舞ったみたいで、手元には何も持っていませんでした。残ったコーヒーを飲み干すと、伝票を持って、会計を済ませに行ってしまいました。私も慌てて、アイスティーを飲み、席を立ちます。
今回の事件と言いますか、お仕事は一筋縄ではいかない。……そんな気がします。元々、仲間が何人もやられているので、初めから簡単なんて思ってなかったんですけれど、よりそう感じたと言いますか。……なんて言うんでしょう? こんなに不安にさせられるお仕事は初めてです。
私は、ヴァルさんのお役に立てるのでしょうか?



~あとがき~
ピカはどんなときでも柔軟に対応出来ますね。戦えるし、推理も出来るし、万能スキル持ちです。

次回、調査前夜。平和な夜をお届けします((

特に言うことはないですね。
本題にすら入れてませんし……(遠い目)

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第20話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界ではちゃめちゃやってる物語です。本編とは一切関係ありません。また、擬人化した前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
落書きの犯人の目星つけたラルサイドでしたが、もう一人の被害者と言えるツバサちゃん達に視点を置きます! 時間はラルが考えを言っている最中くらいだと思ってくれればいいです。
やりやすいだろうあの方にお願いします。


《A side》
今日も長い授業が終わり、ぐっと背伸びをした。二、三秒伸ばした後、力を抜いて帰り支度を進める。つっても、俺はこれから部活だし、その前にツバサを生徒会室へと送り届ける必要があるけど。
「アーラシ! 早く行こー!!」
「はっや! もう終わったのかよ」
「だって、早くラルさんに会いたいんだもん。昨日は早く帰っちゃってお話出来なかった!」
さっさと支度を終わらせたツバサが待ちきれずに、俺の目の前まで駆け寄ってくる。出来なかったとは言うけど、一時間くらいはいたはずなんだけど。それくらいあれば十分だろ。どんだけ、あいつになついてるんだ。どこがいいのか未だに謎。
「あーはいはい。もう終わっから、待ってろ」
「はーい♪」
やれやれ。本当に意味わからん。
教科書等々を鞄に入れ、立ち上がる。そんな俺を見たツバサは、分かりやすいほどに笑顔になった。この後、生徒会室に向かう道すがらレオンと合流し、ツバサを送って、お互いに部活に行く……なんでもないいつもの日常だ。
「あ、ツバサちゃん!」
「はい! どうしましたか~? パノさん」
教室を出ようとした矢先、後ろからクラスメイトの女子に話しかけられた。明るい茶髪に緩くウェーブする髪。長さは大体、肩につくくらいの長さだ。相手は少しだけ言いにくそうに口ごもるが、やがて意を決したように話し始めた。
「あのね。昨日の放課後、ツバサちゃん、中等部の校舎の方に行った?」
「中等部の校舎? いえ、行ってないですよ?」
「そ、そうだよね」
相手のホッとした様子が不思議で、黙っているつもりが、思わず口を開いた。
「……昨日? なんかあったわけ?」
「あ、実は、昨日、いくつか落書きがあったって話があって。……今は生徒会の人達が消して、もう残ってないんだけどね。その落書きをしているところを見たって人がいて……その、ツバサちゃんみたいな容姿だったって」
ツバサみたいってことは、白くて垂れ耳の狐族?
俺が言うと、こくっと頷いた。彼女はあくまで聞いた話だからと前置きし、話を続ける。
「落書きの内容がね……『高等部の生徒会長はサボり魔!!』って内容で。でも、ツバサちゃん、会長さんと仲いいし、とっても楽しそうにお話ししてるから、あり得ないって分かってたんだけどね」
「ふえっ!?」
わざわざ、ねぇ……?
話しかけてきた相手は、ツバサではないと確認が取れるとスッキリしたようだ。引き留めたことを謝罪して教室を出ていく。俺とツバサはなんとも言えない気持ちになっていた。
ティールやフォースから話を聞く限り、ラルはサボり魔らしいし、嘘は書いてない……んだろう。が、こんなことをする意味が分からなかった。
「むぅ」
ツバサはツバサで、大好きなラルを悪く言われたせいで、少しむくれている。さっきの笑顔はどこへやら、だな。気持ちは分からんでもなかった。好きなものを馬鹿にされるのって嫌になるしな。
さっさとレオンと合流して、何か対策を考えないとまずいかもしれない。悪口を言われているラル辺りに……あ、でも、ほっとけほっとけーとか言って興味を示さないかも?
なんてことを考えつつ、冒険科一年の教室へと辿り着く。暇そうに座っている腐れ縁の猫族に呼び掛ける。
「レオン」
「お、来た来た~♪ っと、ツバサはなんかご機嫌ななめなのか? どしたどした!?」
「実は……」
今さっき聞いてきたものをレオンに説明しようとしたところで再び、誰か話しかけられた。今度は見知らぬ男子生徒だ。
「ねえねえ! 君、昨日……」
あーくそ! まただよ!!

レオンと合流した後も何度か話しかけられ、その度にツバサの機嫌は悪くなっていく。内容はどれも似たようなものだが、落書きの場所が違ったり、内容が違ったり。そもそも書いてないけど、言い触らしていたりと、なかなかの悪さをしているらしい。
ツバサは、自分が勝手な罪を着せられたことに対する怒りではなく、ラルを悪く言う犯人に怒っている。犯人に怒るのは間違ってないけど、理由はラルなんだよな。
「んー……」
風船みたいに膨らむツバサのほっぺをちらりと見て、考える。いよいよ、大事になってきている。真面目に対策しないと……
「ツバサ、今日は大切な仕事ってあるのか?」
「ほ、ほえ? ううん。ないよ? どうしたの、アラシ」
「よーし! なら、サボっても問題ないなっ!」
「ふえ!?」
どうやら、俺とレオンの考えていることは同じらしい。シャクだけど。
「ツバサのそっくりさん、俺達で捕まえるんだよ」
「そっくりさんつーか、アイツだろうけどなぁ♪ そうと決まれば善は急げ! お、ティール!」
レオンの言っているのは少し違う気もするが、突っ込むのも面倒だから黙っていよう。レオンが手を振る先には、あいつの言う通り、ラルの相棒であるティールがいた。ティールは両手にファイルを何冊も抱えているが、涼しい顔をしている。見かけによらず、力持ちだ。
「三人とも、どうかしたの?」
「今日、急用が出来たから、生徒会業務を休むって言いに行こうって思っててさ! ナイスタイミングだぜ、ティール! な?」
「え、あ、う、うん!!」
いやいや、吃り過ぎだろ……
しかし、ティールは深く考えていないのか、ツバサの日頃の行いなのかは分からないけど、そっか、と笑顔で返事を返す。
「別にいいよ。ぼくもまだ生徒会室に行ってないけど、ラルにも伝えとく」
珍しい。さっさと顔出しそうなもんだけど。
「いつもならね。フォースが忘れた資料とかがあるって言うから、手分けして取りに行っててこれから教室に運ぶところなんだ。……と、引き留めてごめん。それじゃあね」
ふーん? フォースも案外、忘れっぽい、のか? ま、今は気にすることじゃねぇか。ティールの了承も得たことだし、こっちはこっちでやらねぇとな。
「まずは情報集めだよな~……というか、ツバサ、アイツにラルの話した?」
「アイツ……?」
ピンと来ていないツバサは首を傾げる。ここまで来て、気付かないのか。
「こんなことして得するの、ツルギだけだろ?」
高等部に入学して分かったのは、生徒会長としてのラルはかなりの支持数を得ているということ。先生からの評価はまちまちだったけど、生徒からは絶大な人気があると言ってもいいと思う。色々、聞いていると、人数合わせに様々な部活の助っ人をしたり、困ったことがあれば親身になって話を聞くなど、生徒の手助けをしているらしい。そんなあいつの悪口を言うような生徒はきっといない。なら、誰がやったのかって話だけど、ツバサに成り代われる外部犯で、ラルに嫉妬するような奴ってことだ。
そんな風に考えると、ツルギの顔が一番に浮かんだ。
「え! ツルギ? 確かに、何回かしたことあるけど……これ、ツルギのイタズラなの?」
恐らくだけどな。
ツルギはツバサの双子の兄貴。今は訳あって離れて暮らしているが、間違っても夫婦の問題とかそういうのではない。だって、ツバサの両親、今でも仲良しだし。そんなツルギはツバサのことが好きだ。恋愛的意味合いは全くなく、兄妹愛としてだが。何より兄妹だし、下を大事にしない上はいない……と思う。少なくとも、俺の周りはそうだ。俺も兄貴がいるけど、多分、そう。大事にはされてる、と思う。面向かって言われた記憶はないが、大切にされてると感じることはある。……いや、俺は何の話をしてるんだ? これ。
「こんなことした理由は、本人に聞かなきゃわかんねぇけど、十中八九、ツルギだな」
「だなー! んじゃまあ、目星もついたし、探索開始だな~♪」
レオンのやつが妙に楽しそうだなって思うのは俺だけか?



~あとがき~
アラシ君視点です。

次回、ど、どっち視点にしよう(困惑)
アラシ君かな。よし、アラシ君です!

私の中のアラシ君のイメージはラルに弄ばれるようなイメージ(←酷い)なのですが、彼女が関わっていないところでは、普通にリーダーみたいに先導してくれるはずなのです。ティールと同じ(?)常識人枠。
ってことで、彼視点なのだけれど、どうかな。これで大丈夫なのかドキドキしてます。
そして、いつか、アラシ君のお兄さんも出したいなと。理由? 私が好きなんです、アラシ君のお兄さんのことが!!←

最初の方で話しかけてきた女の子は同級生のパノちゃんです。貰ったプロットには名前とかなかったけれど、同じクラスメイトなら、名前も顔も知っていて当然だよなと思い、適当にぱぱっと書きました。イメージはふんわりした女の子です。ケモ耳さんがあるかまでは考えてないけど、どうなんだろうね。あるなら、熊とか、リスとかそこら辺の森の動物……?

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第19話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわいわいする物語です。本編とは一切関係はありません。また、擬人化した前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
仕事に無頓着であるはずのラルさんが本気モードです。お仕事モード!
ラル「わーい」
落書きの犯人は見つけられるのでしょうか~?
どう動くのか、そして視点移動はいつなのか! お楽しみに!
ラル「あれ、ここはあとがきだったっけ?」


《L side》
所持していた鍵で生徒会室の扉を解錠し、すぐに内側から鍵をかけた。誰にも邪魔をされずに使える部屋なんて限られている。私物化している気もするが、こんな時間にサボって生徒会室へやってくる生徒もいなければ、勝手に入ってくる先生もいない。ある意味、集中出来る場所の一つだ。
私は会議に使うホワイトボードを引っ張り出して、今、自分が把握しているだけの情報を書き出す。知らないことは端末でキーくんとユーリ君に連絡し、確認を取りながらである。
今回の落書きがあった場所を書き、次にツバサちゃんの情報を書き出す。最後に現状、明確になっている情報を全て書き終わると、ボードを一目で見られるところに座る。そして、それをじっと見ながら、頭の中で整理していく。
落書きされた場所の範囲はバラバラで、一見すると統一感はない。しかし、共通点と言えば、どこも人気が全くないとは言い難い場所だ。だからといって、多いとも言えないけれど。
「大勢には見られたくはないが、全く見られないのも困る……遠目でもいいから見つけてもらいたい? いや、見られたい、が正しいのか」
見られることに意味がある。ツバサちゃんの姿で悪さをするのにどんな意味がある……? いや、違う気がする。考え直せ。
とんとんとゆったりとしたリズムで机を人差し指で叩いていく。
「相手に得があるからやるはず。でなければ、意味がない。苛立ち、不満……誰でもいい……? でも、ツバサちゃんの名前は有名で、理事長の後ろ楯もある。それは全校生徒が知っている。つまり、敵に回す理由がない」
ここから考えられるのは、無差別にツバサちゃんを選ばない。となれば、ツバサちゃんでなければならない理由がある。ツバサちゃんを嫌う人……そんな人、いるのだろうか。彼女は反感を買う行動はしていない。良家の娘だからと言って、周りの偏見すらない。ツバサちゃんから聞くクラスの話は全てが楽しいとかよかったとか、プラスものばかりで、反応を見ていればそこに嘘はないのは明白。そして、アラシ君やレオン君からそんな話を聞いたこともない。
「別々に考えては駄目か。……私の悪口とツバサちゃんを選ぶ理由は……ここから得られる利益はなんだ」
椅子から立ち上がり、私が普段使っている席へと移動する。そこにはやりかけの仕事やペン立て、デスクトップ型のパソコン等が置かれている。パソコンに電源を入れ、立ち上がるのを待つ。
「……仮に私が何も知らず、ツバサちゃんの素行を知ったらどうする? いや、信じないんだけど。……普通なら、避けるか? 普段通りには接しなくなる……のが、通常の反応。……そこか」
引き出しからメモリーを出し、差し込み口に挿入。そして、キーボードを叩いていく。しばらくはそれに集中し、それに伴って思考も止まる。が、すぐにお目当てのものを見つけ、再開された。
私の目の前にはいくつもの映像が流れる。本当はよくないけれど、こんな些細な件で許可取りも面倒臭い。つまるところ、私が今見ているのは昨日の監視カメラの記録映像だ。
「見られる範囲には~……っと。いたいた」
一つの映像を大きく拡大し、じっと観察する。時間帯的には放課後に入って間もない頃の正門の映像。内部犯である可能性が低い今、犯人は外部犯だ。
客観的に考えれば、一番現実的なのは、ツバサちゃん本人が犯人であると仮定するべきだ。が、昨日はさっさと家に帰ったし、物理的に難しい。嘘だったという可能性に関しては、ほぼ無視している状態だ。理由としては、ツバサちゃんは性格的に嘘がつけない。思ったことがほぼ顔に出るタイプでとても分かりやすい。そこが愛らしい部分ではあるが。
「わぁ~……来たよ。偽物ツバサちゃん! 魔法かぁ……幻術だな、これ」
カメラの画質的に若干粗いが、狙いの人物はどうどうと正門から来た。警備員も止めることはなく、通してしまっている。ツバサちゃんの姿の理由はこれもあるということか。
「……こんなことが出来るのは私の知る限りでは一人だけ。……ってなると、ツバサちゃんの姿の理由は……」
色々考えてはいたけれど、犯行の理由は……案外、恨み妬みも間違いではないのかもしれない。いや、知らないけれど。

「ちわっす! 先輩!」
「こんにちは、会長」
「んー……ごめんね。呼び出して」
「いえいえ。それで何か分かりましたか?」
放課後になり、すぐ昨日の二人を呼び出した。今回の落書き事件、さっさと解決するために、聞いてもらおうか。
「単刀直入に言おう。昨日の件、私はツバサちゃんの犯行ではないと考えている」
「え、あ、見たという目撃情報は……?」
「他人の見たものなんて信用出来るかぁ!! ここは魔法と科学が入り交じる学園だ。不思議現象も簡単に起こりうるんだよ」
ぐちゃぐちゃ論法ではあるんだけれど。知ってるんだけど! 本当のことだから仕方がない。
「ユーリ君、魔法には幻術があるよね?」
「は、はい。……あ、そうか! ツバサさんに化ければいいんだ」
「うっわ。そんなん出来るの? ユーリも?」
「一応は出来る。姿形、全てコピー出来る……とは思うけど、術者の技量次第でどうとでもなるよ。確かに、高位ともなれば、ほぼ気付かれない」
「そう。言ってしまえば誰にでも出来るって訳。幻術魔法を使える人ならいいんだよ」
いやぁ、まほーっていだいですね……今回に限って厄介の何物でもないけれど。
「じゃあ、ツバサちゃんの犯行ではないという根拠を述べよう。ツバサちゃ……あー、ツバサは理事長の娘である。そして、今は生徒会の一員でもある。彼女は責任感があって、人の期待には応えようとする力を見せる。……そんな彼女が周りの評判を落とすようなことをすると思う?」
名前連呼していたら、ちゃん付けも面倒に感じてきた。鬱陶しいから今だけ呼び捨てにしよう。
「確かに……せっかくの学園生活が台無しですよね。ツバサは名前が知れ渡ってるし」
「それに、彼女は家族のこと、大好きなんだよね。お母さんを悲しませるような行為はしない。素直だし……ここら辺はツバサの人物像からやらないっていう、想像みたいなものだが」
そして、これは内部の人ならほぼ知っている。理事長の娘、生徒会の一員。それらを敵に回してまで落書きなんてやることではない。
「内部は可能性が低い、ということですね? それなら、会長は外部犯だと?」
「そう。そして、外部犯であると仮定したとき、かなり絞られるはずだ。相手は私のことを知っている。でも、内容は学園の生徒でなければ知らないようなもの……誰かが私の性格なり普段の様子を話し、ツバサに擬態出来る人物とは?」
「ツバサさんと親しい人物……会長のことは、ツバサさんから聞いた?」
「ん!? ツバサの身内!? え、誰かいるんすか!?」
「それがいるんだよ。一人だけね。……ツバサ・ケアルには兄がいる。……犯人はツバサの兄上様である可能性が高いってことだよ。何らかの事情で私とツバサの仲を引き裂きたいから、ツバサの姿で私の悪口を書いた。そう考えると、昨日だけでは終わらない。今日も動くはずだ。……捕獲するぞ」



~あとがき~
やっぱ、がんがんに考えるラルはかっこいいね。

次回、視点移動しまっす! やっとだよ!!
さんざん騒がれているツバサちゃん達になります! イメージ壊れないように頑張るぞ!

ごっちゃごちゃになりましたが、大丈夫かな?
ラルの頭の中はぐるぐるしてるんですね。フル回転……ではないかもですな。

次回からようやく視点が変わるのですが、人様のキャラを中心に動かすのは恐ろしい話ではありますが、楽しみでもあります。普段、私がラル視点なので、ある意味好き勝手してるんですよね(笑)
よ、よし、頑張るぞ~

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第18話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で面白おかしくやってく物語です。一切本編とは関係がありません。また、擬人化された設定で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回は、子どもの落書きを発見でんでんしました。
ラル「作者のテンションがおかしい」
フォース「いつものことだろ」
ラル「え、あ……そうね?」
ん!? そうね!? 納得なの!?


《L side》
落書き事件……敢えてそう呼称するが、その事件の次の日。私の周りは案外、いつも通りで落書きについて問われるような事態にはならなかった。いや、いつも以上にちらちらと様子は窺われていたが、追及されず、比較的平和であった。本当か嘘か分からないし、私に聞くのも気不味い的なそんな理由だろうが。
思ったより、噂が出回っている。やったと思われている人が人なだけに、特にそんな気がした。
「ラルちゃん、教頭先生が呼んでたよー?」
「お、ありがとう♪ りょーかーい! んー……今からか。面倒くさ……」
教えてくれた同級生にお礼を言い、教室にかけてある時計をちらりと見上げる。今は昼休み。午後の授業が終わってから考えるつもりでいたのだけれど、呼ばれてしまったものは仕方がない。行かないという選択肢もあるにはある。しかし、結局、行かなかったら直接呼びに来るだろう。
「ラル、何したの?」
「呼び出しはいつものことだもんな~」
昼休みなので、ティールとフォース君とご飯を食べていた。ちなみに、今日は三人とも教室でお弁当である。たまに食堂行ったり、普段、生徒には解放されていない屋上に行ったりしている。
ティールはまだ噂を知らない。フォース君は勘づいてて何も言わない。そんな感じだろうな。とりあえず、いつものようにしておくか。
「なんだろねぇ? 心当りが多すぎてつらーい♪ 今から行ってきまーす。……あ、授業までに戻らなかったら適当に言っといて」
「どんだけ長引かせるつもり!? まあ、分かった。適当に誤魔化しておくよ」
「短く済むといいな?」
フォース君をちらっと見ると、その視線に気付いたのか、ウインクをしながらふっと笑う。
あぁ、噂は把握済みなのね。じゃあ、そのままティールには内緒にしてくれ。バレないようにフォローしといて。
心の中でそう呟くと、フォース君は鬱陶しそうに早く行けと促す。それは了承したと取っていいんだろうか。聴こえていたからこその反応だと、私は信じるしかないのだけれど。
手早くお弁当を片付け、教室を出る。どこにいるなんて話はなかったけれど、どうせ校長室にいるに決まっている。校長の右腕的存在故に、職員室にいなければ、そこにいるはずだ。そして、今回の呼び出し、昨日の落書きの件で十中八九間違いない。思ったより早く、耳に入ったらしい。適当に切り上げるつもりではいるが、長くなりそうな気がする。
校長室を目の前にし、建前ではあるが、二回ノックをする。
「失礼します。ラルです」
「い~よ~♪」
あ、校長の声だ。
いないのかなんて思いつつも、ノックした以上、教頭の居場所でも聞いてやれと扉を開ける。すると、そこにはニコニコ笑顔のプリン校長と、頭から火が出ているのでは勘違いするレベルに怒っているノウツ教頭がいた。
「やあ、ラル♪ いらっしゃーい」
「ラル、なぜ呼ばれたのか分かるな」
何この温度差。風邪引くんだけど。
私は教頭ではなく、校長に向かって軽く頭を下げる。本来、校長は関係ないはずなのだ。まあ、いてもいなくても変わらないが、恐らくこれからうるさくするだろうし、あらかじめ謝っておくに越したことはない。
「校長先生、お昼の時間に失礼します」
「うんうん。いいよ~♪ あ、ラルに任せたいお仕事があるの。近いうちにギルドに顔出して、詳しい話を聞いといてね~♪」
「え、あ。はい! 了解です。親方」
相変わらず、校長スイッチなのか、親方スイッチなのか分からないな。見分けがつかない。
「ラル! 無視をするな!」
さあって、お相手してあげますか。
「してないですぅ~……で、なんでしたっけ」
「惚けるんじゃないよ! 聞いているんだからな! 理事長の御子女の件!」
あっはは~……やっぱりな。
とりあえず、笑顔を浮かべつつ、反論はしない。全て聞いてから反論しよう。人の話は最後まで聞く。というか、教頭の場合、遮ったとしても話は聞いてくれないし、むしろ逆上するため、聞くしかないが正しい。
「入学前に言ったはずだぞ! お前が関わるとロクなことにならないと。それなのになんだ! この低堕落は!?」
「私のせいってことっすか」
「それ以外に考えられない。お前が関わったから理事長の御子女である、ツバサ様の素行が悪くなったのだろう。しかも、ラル、お前の悪口を言い触らし、書き残すという所業……お前に不満を持っているってことだ! 反省しろ!!」
おっと? 言い触らすのは初めて聞いた。落書きの他にもやっているらしい。落書きだけなら、見間違いだろうと一蹴出来るし、それに納得もさせられる。何よりツバサちゃんは、素直で優しいというイメージがある。イメージは相手を作り上げる重要なもの。そのイメージがある限り、余程のことがなければ悪い方向へはいかないだろう。噂が立ったとしても、本人が否定すれば「やっぱりね」となるのだから。が、ツバサちゃんの姿、声のセットで、私の悪口をするのはまずい。姿だけならまだしも、声は似ているだけだという言い訳がたたないのだ。本人が否定しても、見たもの、聞いたものを人は信じ、それが広がれば……
思ったより、深刻化している……?
「落書きだけなら、私が被害を受けるだけで済むものを……いや、もしかして……」
相手の目的はそこなのか? ツバサちゃんを標的……いや、状況的にあり得ないか。
「聞いているか!?」
「ええ。聞いてるわよ。つまり、ツバサちゃんがやっていないことを証明すればいいんでしょう? 簡単だわ。私だけならまだしも、天使……いや、ツバサちゃんを巻き込むのは許さない。……今日中に解決してあげるわよ! 黙って見てろ、この鳥頭!! ツバサちゃんの評価、改めさせてやる!」
「とっ!? そ、それは関係ないだろう!? ラル! 待ちな! 話はまだ終わっていない!」
「がーんばってねー! ラル~♪」
啖呵切ったには、有言実行しなければ。まずは状況整理をし、ツバサちゃんには反抗不可能であると証明してやる! 
校長室を出ると、真っ直ぐ教室に戻る。教室に帰ると、他のクラスメイト達は午後からの各専門分野の移動教室の準備をし、すでに半分は教室にいない。この学園は午前中と午後でカリキュラムが切り替わる。が、そこら辺の話は今はいらない。
「お、戻ってきた。……けど、授業を受ける気はないみたいだな?」
私に話しかけてきたのはフォース君だ。ティールは優等生らしく、すでに移動しているみたいだった。フォース君も移動のはずだけれど、私のことを待っていたのか、サボるつもりなのかは定かではない。
「受けない。フォース君、引き続き頼んだ」
「あいよ。ラルがそこまでやる気なの久々に見た」
「ふふん♪ やるときはやる子なの、私っ」
「天使のため?」
「そ。愛する天使様のため」
カーディガンを脱ぎ、代わりに椅子の背もたれに掛けっぱなしのブレザーを羽織る。そして、鞄から連絡用の端末と生徒会室の鍵を取り出した。
「……お仕事、しますかね」
「行ってらっしゃい。会長」



~あとがき~
視点変えるのはいつになるんだ……?

次回、仕事モードのラル。ツバサちゃんではないと明確に証明出来るのか!

校長の名前、さらっとここで初公開。つっても、元がプクリン親方なのでプリン。本編のあだ名をそのままつけてます。この世界のプリンもあだ名なんだろうなと思います。

ラルさんが自らブレザー着用しました。分かる方もいると思いますが、気持ちの切り替えの意味も込めてます。今後もそういうシーンはある……のかな。分からないけれど、あればね! あ、仕事モードなのかなって思ってね! 嫌々着せられるのはよくありますが、あれは気持ち切り替え激しいやつね。したくない気持ちとちゃんとやるところとコロコロするやつです。面倒くさいやつだなぁ!!←

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第17話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で好き勝手遊ぶ物語です。一切本編とは関係ありません! また、擬人化した前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
二話ほど休日を挟みました。本編よりのんびり好き勝手している五人でしたね。
今回からは再び学園に戻りますよ! やってることは何も変わらないけどな!
ラル「そして、また中等部組はお休みか」
大丈夫! この後! この後ちゃんと出てくるから! 安心してね!
ステラ「むー」
リーフ「……あはは~」
今回の話、特殊な進め方をしますので、ついてきてくださいねー!


《L side》
ツバサちゃんも生徒会メンバーの一員として馴染んできた頃。今日も今日とて、世界は平和です。生徒会室には、私とティール、ツバサちゃんの三人だけだ。大した仕事もないし、フォース君は帰りのHR後、さっさと出ていったきり。大した仕事もないし、私達もいるし、帰ったのかもしれない。
集まってから一時間。ツバサちゃんを膝の上で楽しんでいると、申し訳なさそうにこちらを振り返る。
「ラルさん、今日は……」
「分かってるよ。家の用事があるんだよね? 仕事も大したことしないし、大丈夫だよ~」
「毎度毎度……ツバサの仕事はなくても、君の仕事はあるんだけど?」
ティールうるさーい」
むぎゅっとツバサちゃんを抱き締める。これ以上聞きたくないアピールだけど、ティールは気にせずに机の上にいくつか紙を並べた。
「ツバサは帰るって言ってるんだから、離してあげなさい」
あ、はい……
ツバサちゃんを下ろし、頭を撫でる。気持ち良さそうに笑う彼女を再び抱き締めたくなる感情を押し殺しつつ、手を振って見送る。扉の方へ愛らしく駆け寄っていく。
「また明日です! ラルさんっ♪ ティールさん!」
「ばいばい、ツバサちゃ~ん」
「お疲れ様ー」
ツバサちゃんが帰宅し、姿が見えなくなると、私はくるくると椅子を回す。この幸せ一杯な気持ちのまま、黙って仕事なんてしていられない。とりあえず、発散せねば!
「ほんっと可愛いかよぉぉ!! 天使じゃん!」
「会長」
「……はい」
渋々、回る椅子を止め、目の前のお仕事に戻る。
内容は大したものではない。今後の行事に関する書類だ。近いものだと剣技大会だ。詳しい説明は省くが、簡単に言えば、運動会の簡易版……? いや、なんか違う気がする。が、体育会系の行事とだけ言っておこう。
そんな行事の進行も教師と共に行う。もちろん、生徒会全員、生徒としても参加はするけれど、プラスで仕事があると思ってくれていい。これがまた面倒なものだ。人一倍忙しいものだから、去年、私は後半辺りに逃げに逃げ回った記憶しかない。
「ラル、ちょっと職員室に行ってくるから、留守番よろしく。すぐ戻るつもりではいるけど、教頭に捕まったらあれかも」
しばらく沈黙が続いていたが、それを破ったのはティールだった。何かしらの用事でも思い出したのだろう。椅子から立ち上がり、いくつかの書類を手にしている。
「んふふ。お小言言われてこ~い」
「主に会長の愚痴なんだけど……いってきまーす」
知らなぁい……
一人になった後もティールに差し出された紙を読んでいたが、それも読み終わると、暇になり外をぼんやりと見ていた。校庭では部活動に勤しむ生徒達で賑わっている。それなのに私は教室に籠って何をしているのだろう。意味が分からない。
「ノックもなしに失礼します、ラル先輩!」
「いいよぉ……正式な場じゃないしね。んで、どぉした、キーくんにユーリ君。二人揃って珍しい」
ふんわりくせっ毛に剣術部の練習着姿のイツキ君が入ってくる。部活の途中でこちらにやって来たらしい。イツキ君に続き、制服姿のユーリ君もいる。彼は文化系の部活だったっけ。
「今、お時間よろしいでしょうか。会長」
「うん。大丈夫。どうぞ~」
「本日の放課後より、いくつかの落書き事件が報告されています。その落書きは手の空いている生徒会メンバーで消している最中ですが」
「落書き……ちっさいイタズラだこと。ご苦労様だねぇ。それで? わざわざ言いに来るってことはそれなりの訳があるんだよね?」
キー君はこくりと頷き、半歩前に出る。急いで来たにも関わらず、礼儀は忘れていないようで、背筋を伸ばして口を開いた。
「はい。その落書きの内容がラル先輩を侮辱するような物でして。……侮辱なんて堅苦しい言葉を使いましたが、その~……何て言うんすかねぇ? 子供の悪口? みたいな?」
「子供の……語彙力低めの。よくあるやつか」
「あ、そんな感じです。一応、実物見ますか? 一つだけ手をつけずに残してはあるんですけど」
「せっかくだし見てみたぁい♪ 暇だし! ユーリ君、ここの留守は頼んでいいかな? ティールが帰ってくるかもだから、あー……呼び出されたって誤魔化しといて!」
「了解です。イツキ、残りの報告も忘れないで」
「まっかせとけー! 行きましょう、先輩」
キーくんを先頭にその落書きとやらを拝みに行くことにした。どうやら、報告はまだ終わりではなかったらしく、歩きつつもキー君は続ける。
「その落書き、目撃情報もあるんです。……んでも、内容が少し、あれで」
その後は言いにくいのか、言葉に詰まる。急かしはしなかったが、結局、言葉の続きを聞くことなく、落書き現場にたどり着いてしまった。
そこは高等部が使う別棟であり、専門教室が多く配置される建物の裏だった。普段の人通りはあまりなく、確かにイタズラするにはもってこいである。今は、落書きを消すために集まったであろう生徒会の子達が何人かいる。彼らに挨拶しつつ、例の場所へと足を踏み入れた。別棟の壁には『会長は不真面目だ! 会長を辞めるべき!』と大きく書かれていた。数秒、黙ってそれを読んでいた。何かを考えるわけでもなく、ただじっと繰り返し読み直す。どう読んだところで、内容が私を褒めるものに変わるわけではないのだけれど。
「……キーくん、聞いていいかな」
「はい。なんでしょう?」
「意味、あるのかな。これに」
「ないです」
「私が不真面目なのは皆知ってるよね」
「知ってます。周知の事実です。先輩、良くも悪くも有名なので。だからと言って、先輩の人気は落ちませんけどね! 会長を辞してくれとも思われてないのではと」
「ありがとう。……じゃあ、なんでこれをここに? ボイコット? 私に?」
「……意味、なくないっすかね」
ないね。全くない。するなら、学園にしろ。そして、勝手に一人でやってくれ。
となると、ただの突っ込みしか頭に浮かばないわけで。落書きを指差しつつ、キーくんに向かって叫んだ。
「私が会長になってそこそこ経つんですけど!? 何!? 今更不満ぶつけるの!? 遅いよ!」
「そ、そうなんですよね~? あ、で、その、書いた奴を見たって人が何人かいましてね」
あぁ、そんな話をさっきしてたね。
「あんまり驚かないでくださいね? 何人かの証言から、その犯人は白く垂れ耳の狐族だったそうで」
白い狐族……? なんか身近にいる気がする。
「で、魔術科の制服を来た女の子……って」
「あー……ツバサちゃん?」
「はい。ツバサの特徴と完全一致なんですよ~……どういうことなんでしょ」
あっはは~♪
……はぁ。それはこっちのセリフだ。
「俺達も完全に信じてはなくて、半信半疑って奴なんですが、こうもツバサの特徴をばんばん挙げられちゃうと……」
「ないなーい。ツバサちゃんがこんなことするわけない。どうせ、日頃の鬱憤を晴らしたい人の反抗でしょ。キーくん、お片付け、よろしくね~」
あんな素直で可愛い天使様が、こんな卑屈なことするわけがない。悪口って言葉も知らないような、純粋な女の子だ。……うん。ない! 今日もあんな可愛らしい笑顔を向けて、生徒会室に来たし、帰りも同様だった。うん。ないな!
ティールには内緒にしてて。こういうのうるさいからさ。ついでにフォース君にも内緒にしておこうかなぁ」
まあ、フォース君は面白がるから、内緒にしたいだけだ。ティールは本気で犯人探しをしかねない。見つけたら見つけたで、鬼のように怒り、犯人を罰するだろう。仕事が増えるし、何より、ティールの機嫌も悪くなるしでいいことがない。こんな小さいイタズラに構ってられるかって話だ。
「それはもちろん! また何か進展があれば報告しましょうか?」
「んー……一応、お願いしようかな。その場合、私個人によろしくね?」
「了解っす!」
壁に使われているのは、比較的簡単に落ちるタイプの塗料だ。綺麗に消えるだろうし、痕は残らない。どうでもいいが、何の目的を持ってあのような行為をしたのかは謎であるし、ツバサちゃんの目撃情報があるのも謎である。大きくならなければいいが。



~あとがき~
さあ、始まるぞ。

次回、ラルはこの事件(?)をどうするのか!

今回のこの話……章? 編?……は二つの視点を交互に書いていこうかと思っています。時系列を揃えるため、一話ずつとは言いませんが、視点が切り替わることをご了承ください。本文前に誰の支点なのか書いておきますので、そちらを確認した上で読んでいただければと。
今回はラル視点でした。ラルって名前、英語だとLがRが頭文字になるよなーと思いつつ、名前の由来となった言葉の頭文字を取ってきました。《L side》でラル視点ってことになります。今後もそんな使い方するかは知らぬ……

ではでは!

空と海 第208話

~前回までのあらすじ~
ソルとジュペッタとゾンビパニック。
ピカ「説明雑か」
ソル「でも、間違ってませんね」
コン「じゅーよーなキーワードだけぬいたって感じだね!」
チル「もっと説明しなければならないことはないのでしょうか?」
どうだろ? まあ、いいじゃない!
始めるぞー!
ピカ「話が尽きてるからってさっさと締めに入ったぞ」


ソルの目の前に帰って来たジュペッタを見るにソルの予想通りであったらしい。わなわなと体を震わせ、怒り狂っている……というよりは、信じられないという恐怖に似た感情に包まれているようだった。
「僕の言った通りだろう? あんなので止められる彼女達じゃないって」
「くっ……セめて、オ前だけでも!」
再び拳銃を構え、ソルに銃口を向ける。安全装置を外し、引き金を引けば簡単に弾が出る状態だ。体の自由が利かない今、この至近距離で撃たれてしまえば確実に致命傷である。しかし、ソルはあくまでも余裕の表情を見せ、慌てることなく冷静であった。
「さっきも言ったろう。お前の負けなんだよ。僕を見つけてすぐに攻撃しなかったのが敗因だって話もした。……悪足掻きだってね」
「ふん! 余裕ぶっていらレるのも今のうちダ。この状態からどうやって勝つっテ? 聞かせてホしいナ」
「僕はアブソル。災いを察知するポケモンだ。自分に降りかかる災いを感知出来ないわけがないだろ?」
ここに来て初めて、明確に殺意を感じたジュペッタはソルから離れた。それを感じたのは、体の自由を奪った相手からだった。
「……舞え。風の刃達よ」
その一言で風の刃が四方からジュペッタ目掛けて飛んでいく。刃に発砲してみても、相手は風……実体のない刃物だ。対抗出来るはずもなく、ジュペッタの体を切り裂いていく。刃は深く傷つけるようなことはないが、何分手数が多い。
「ギャアァァァ!!」
ジュペッタが攻撃され、ソルに掛けていた能力も弱まったらしい。少しずつ、体の自由が戻ってきた。ゆっくり体を起こし、そしてジュペッタを見下ろした。
「安心しろ。お前を殺すようなことはしない。重要参考人として確保する」
器用にジュペッタだけを狙った彼の瞳もまた、刃のように鋭く冷淡なものであった。ジュペッタに彼の言葉が聞こえていたかは定かではない。

ジュペッタが逃げ出さないように適当なロープで縛り上げ、念のためにとピカから受け取っていた道具で相手の自由を奪った。
「しばられのタネを改造……いや、改良? したって言ってたけど、僕はこれ、試したことないんだよなぁ」
ピカは実験感覚で様々なものを生み出す。それが失敗作でも成功でもとりあえず試してみるのが彼女のモットーである。これも貰ったときも、試したから大丈夫と言われたのだが、ソル自身、使ったのは初めてであった。
彼女の場合、試したのは相手なのか自分なのか微妙なときがあるのが難点ではある。
「おー! ソル! 終わったなら終わったー! って言わなきゃダメだぞー!?」
「今言うところだったよ。終わったって」
入ってきたのは、大暴れしたであろう、相方のコンだ。コンに続いてチルも入ってくる。チルには目配せをし、簡単な意思疏通を済ます。これが通じる相手は楽でいいと考えている中、コンが隣で話し始めた。
「ねえ、この人は?」
動かないジュペッタを指差し、小さく首を傾げて聞いてきた。チルも気になるらしく、じっと見つめていた。
「多分、ここを使ってた黒幕側の敵かな」
「こいつに黒幕の場所、吐かせるの?」
「……してもいいけど、きっといい情報は出ない」
「幹部クラスならそう易々とやられませんからね。それに、重要人物なら黒幕さんが乗り込んできそうですわ」
「あ、なるほど~♪ つまり、ただのたーいんってことだねっ?」
「一言で済ませるならそうなるな。……さて。当初の目的通り、ここを脱出して燃やすぞ」
待ってましたと言わんばかりにコンがソルの目の前で、ぴょんぴょん跳ねながら主張する。
「分かってるって。チルさん、お願いします」
「はい。もちろんですわ♪」
ソルとコンを背中に乗せ、足でジュペッタを掴むと、飛びながらも器用に部屋を出ていく。一度、地下から抜け出してしまえば、コンが空けた穴を目指して一直線である。
その道中、コンがやったであろう元ゾンビ達を見て、派手にやっているなと思った。ソルが下を見ていることに気がついたらしく、コンが状況説明をし始める。
「みぃんな、こーやっておそってきたんだよ! びっくりしたー!」
「動きは俊敏じゃないだろうけど。……何か理由でもあるのかは分からないけれど」
「そういえば、“あやつり”の能力みたいですよね? 私は空気、ポチャさんは液体ですけれど。人を操っていて……そう、洗脳みたいですね」
「でも、“あやつり”って、王家に伝わる能力ですよね?」
「ええ。私はそう聞いてますわ。ポチャさんも同じ認識だと思います」
「えーでも、陸の国には王様いないじゃん。似てるだけっしょー?」
勉強嫌いなコンにしては、よく覚えているなと感心した。しかし、本当に偶然なのかまではハッキリしなかった。
「まあ、考えても分からないものは分からないな。……コン、いける?」
「おお! もちのろんだー! いっくよー! ていっ!」
アジト上空まで来ていたが、コンは躊躇なく飛び降りる。空中で何度か回転し、回転する度に体の奥に力を込めるイメージをした。そして、込めた力を一気に吐き出す。
「“絶火豪炎”!」
絶えることのない青色の炎を吐き出し、アジトだった建物を一気に燃やす。対象物が燃え尽きるまで永遠に灯り続ける炎。例え、生物でも同じことだ。仮に生き残りがいたとしても、これで根絶出来る。
「綺麗ですね~♪」
「確かに綺麗ですけど、あまり近付くと僕らまで燃えます」
「うふふ、大丈夫ですよ。私が囲ってますから。さて! コンさんを回収しに行きましょうか」
飛び火を受けないところまで移動し、コンが来るのを待った。彼女はすぐ二人の下に帰ってきた。自信満々な表情を携えて。
「えっへん! ほめてくれてもいいんだよ!?」
「偉い偉い」
「あー!! 心こもってなーい! もう一回! やり直し!」
「何度やっても同じなんだけれど。……よくやりましたねー?」
「むがー! あたしをバカにしてるだろー!」
「まあまあ♪ 私達のお仕事は終わりましたし、戻りましょう。あちらはまだ戦場となっていることでしょうし」
「そうですね。うかうかしていられない。……行くよ、コン」
「むー……わかったよぅ! ほめてもらうの、後にする!」
今でも後でも変化はないとは言わなかった。どうせ、すぐに忘れているだろうと思ったからだ。
再びコンが乗ると、チルは大きなもこもこの翼を広げ、あっという間に高度を上昇させた。この調子だと、祭り会場までそこまでかからないだろう。とはいえ、ソル達三人が戻ったところで、状況がよくなるのかは不明である。ピカの考えがどう動いているのかにもよりそうだった。しかし、ソル達は自分のリーダーを信頼している。あの状況を打破してくれると確信しているのだ。
そしてソル達は、確実に敵の数を減らしている仲間達の姿を目にするのだった。



~あとがき~
はい! スカイの三人の話は終わり! やれば出来る子、コンちゃんです!

次回、ピカ視点に戻してラストスパートじゃあ!!

コンの使った技の説明です。
絶火豪炎(ぜっかごうえん)と読みます。そのままです。絶対に絶えることない青色の炎。ちらっと書きましたが、対象物を(その気になれば使用者以外の奴も)燃やし尽くすまで燃え続けます。なので、火の粉に当たっただけでもたちまち火が強まり、燃えちゃいます。怖いね。
今回はチルの能力と組み合わせて屋敷だけを燃やすように範囲を狭めていますので、大丈夫です。多分。

本来なら、今日出すつもりはなかったんですけど、空と海の連載開始(うごメモ時代含む)記念日なのを思い出して、投稿しました。お絵描きはしてなかったので、小説をば。いやはや、今日で九周年だって。ヤバイね! ん? ということは、来年は十周年……?

ではでは!