satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第97話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわーわーしてる話です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
長かった……遂に決勝ですよ!!
ラル「そこじゃなくて、別のこと突っ込んでいい?」
はい。なんすか!
ラル「あなたのメインである空海の話数に近づきつつありますが、それについて一言」
……空と海はそれとして進めるさ!
ラル「約七年かけて二百越えなのに、こちらは約一年程で百です」
いやぁぁぁ!!! あれっすね! 二人で作ると違うね!!
ラル「おい」
今回の決勝戦は第三者目線! それぞれに焦点は当たるとは思いますが、ラル多めかな? 分からん!


大会が始まってからずっと着けていた通信機を耳から外し、机の上に置く。そして、手早く学生服から探検隊の仕事着へと着替えた。ラルはいくつか仕事用の服は持っている。理由としては用途によって使い分けているのと、彼女なりのスイッチの切り替えのためだ。しかし、今回は仲間であるクラウセレクトである。デザートイエローを思わせる少しくすんだ黄色のベストにVネックの黒のインナー。そして、カーキーのホットパンツに身を包み、膝上ほどまである編み上げのロングブーツを黒タイツの上からしっかりと身につける。……これが今回のスタイルだ。
一部だけ結ってある髪もほどき、完全に下ろした状態にする。たまたま部屋にあった鏡で全身をチェックするも、若干の違和感は否定できなかった。
「もっと地味なのでよかったのでは……?」
ここまで目立つような格好をする必要があったのか、と。
しかし、時間はもうない。ここは潔く諦めて、これでいくしかない。残りの装飾品を身につけて、ティールから拝借したセツを装備しようとしたところでその手は止まった。
これから行くのは対戦相手となりうる人物達が集まる部屋。そんなところで見せるように武器を構える必要性はない。もちろん、見えないようにマントを被るのも考えたが、フォースに読まれては同じことである。バレたくなければ連れていかないのが一番なのだ。
「セツちゃん、ちょっとお留守番しててもらっていい? 変な人についていかないでね。一応、ここの鍵閉めるけど」
『あいあいっ! らいじょーぶよ! るーとてぃーいがいのひと、きたらやっつけちゃうから!』
それはそれで別の案件が発生しているのだが、やめろとは言わなかった。それくらいの気持ちでいてもらった方が頼もしいと言うものである。
しかし、ラルは念には念をと魔道具を使い、自分の分身とも言える“ドール”を呼び出した。今の自分と瓜二つの姿をするドールはぴしっと敬礼ポーズで登場する。
「はぁい! お呼ばれしたので飛び出してきました! 何かご用ですか、マスター!」
「ここを留守にするから、セツちゃんと留守番しててくれる? 万が一、盗られでもしないようにね」
「わっかりました! マスターのご命令とあらば、なんでもやっちゃいますよー! 安心して行ってきてくださいっ♪」
『またあとでねー! るー!』
元気な二人─『人』で数え方が合っているかは分からないが─を部屋に残し、ラルは集合場所へと向かう。バックヤードである通路に人気はなく、誰ともすれ違わずに、目的地へと到着した。一応の礼儀としてノックをする。
「あ、ラルさん。待ってたよ」
ラルを出迎えたのは、今年の大会実行委員長であるマルだ。ふわっと笑い、中へと通してくれる。部屋には先程、試合を終えたばかりのミユルと焼きそばを頬張るアリアがすでに待機している。また、離れたところに制服姿だが、フォースも部屋の隅で椅子に座っていた。
「なんでお前は制服なんじゃ……」
「着替えとか一秒で事足りるだろ?」
ニヤリと笑うフォースは、お得意の創造の力を使い、着替えるつもりらしい。なんとも狡い手ではあるが、彼の力はそれくらい何とも思わないのだ。
ラルは、これ以上は何も聞かず、離れているフォースの腕を掴む。そして、無理矢理集合させた上で、マルに向かって頷いた。
「えっと……説明しても大丈夫、かな?」
この疑問は最もだろう。これは主にアリアに向けられたものだが。それに答えず、ただただマイペースに焼きそばを食すアリアに代わり、ミユルが笑顔で答える。
「大丈夫ですよ、先輩。アリアちゃん、ちゃんと聞いてると思いますから♪」
「ならいいけれど……それなら、話、始めちゃうね?」
静かな部屋に場違いな生活音が響く中、マルは二枚のカードを取り出した。右のカードに『ラル』、左のカードに『フォース』と手書きで書いてある。
「このカードを今から決勝に勝ち進んだ二人に引いてもらうね。そこに書いてあった相手とコンビを組んで、決勝で戦ってもらう……相手は完全に運任せってことになるね」
つまり、この場にいる誰もがこの先どうなるのか分からない。ラルのパートナーがアリアかもしれないし、ミユルかもしれない。分かっていることといえば、ラルとフォースは対立するし、ミユルとアリアも同様であるという点くらいだろう。
ラルとしては、広範囲魔法を感情に任せて使っているアリアとはあまり組みたくはないのが本音である。使っている属性的には、ティールとほぼ変わらないので、やりやすさはあるのかもしれない。が、それとこれとは話が別というものだ。
「おれ的にはどっちも嫌だからどうでも」
「誤解を生む。大会が嫌だと言え」
「大会が嫌です」
自分に素直なのか適当な奴なのか、フォースは大した感情も込めないまま、言葉を紡ぐ。しかしまあ、本心のところ、人が嫌というよりは、現状が嫌なのだろう。それはラルも同じである。
やる気のないゲスト二人は放置したまま、マルは二枚のカードを裏返しにした状態で適度に切っていく。そして、どちらが誰なのか分からないくらいになるまで繰り返し、ミユルとアリアの前に裏返しのままで差し出した。
「好きな方を選んでください」
「はぁい♪ さて、と。……どっちを選ぼうかしらね~? どうする? アリアちゃん」
じっとカードを見た後、笑顔でアリアに呼び掛ける。変わらず焼きそばから手は離れないものの、目線はカードへと向いている。一応、選ぼうとする意思はあるらしい。
一方のゲスト枠の二人はすることがないので、カードを引く光景を会話をしながら見ていた。
「フォース君がアリアちゃんと組めばいいんだよ」
「あ? まあ、おれはどうでもいいけどよ。誰だろうと、やることは一緒だし」
「協力プレイって知ってる?」
「今の今まで交流がなかったのに、協力なんて無理。おれの性格知ってんだろ」
「そぉだけどさぁ」
「あんまりなりたくないとか考えてると、ディーネさんと組むことになりますわよ、奥さん」
楽しむような笑みにラルは一瞬だけ言葉に詰まる。普段から個性豊かなメンバーを取り仕切るラルだが、好き好んでやりたいとは思わない。
「フラグはへし折るもんだから……」
「回収するもんだよ」
下らない話をしている間に、ミユルとアリアはカードを選び終わったらしい。それぞれには一枚のカードが手に渡っていた。二人の「せーの」という声でカードが表になり、名前が開示される。
「……あら、フォース先輩は私とですね♪ よろしくお願いします」
ミユルが見せるカードにはフォースの名前が書かれていた。となると、必然的にアリアのパートナーはラルになるわけである。
「あはっ♪……つーことだ。よろしくねぇ、リーダー?」
「……は、はあぁぁぁぁ!? へし折れよ! フラグ!! 私、どんだけ厄日なんだよ!?」
これぞお約束と言わんばかりの展開である。
驚愕するラルに、マルは戸惑いつつも励ましの言葉をかける。
「だ、大丈夫だよ。ラルさんなら、アリアさんとも上手くできるって」
「そーそー! おれらのリーダーなら、大丈夫だよぉ? ま、頑張れ。おれは平和的に終わらせる」
フォースから、励ましにもならない煽りの意がこもった言葉を投げ掛けられるものの、それに突っ込む元気すらなかった。……というよりは、これからどうしようという考えが頭を支配し、反応できなかったのだが。
「アリアちゃん、フィールドに上がったら確実に暴走すると思いますが、よろしくお願いしますね? 会長さん」
と言う、ミユルの忠告も上の空である。
ラルがちらりとアリアを見ると、未だにご飯中であり、このあとに戦う気迫すらない。
「……どうするかな」
ラルの呟きは誰に届くものでもなく、話は進んでいく。アリアとミユルからカードを回収したマルは、扉の方へと近づき、こちらを振り返る。
「じゃあ、試合が始まるまでの残り時間で軽い打ち合わせをお願い。ないならないで構わないけれど……それじゃあ、僕はリュウ達にこの結果伝えてくるね」
それだけを言い残し、部屋を出ていった。残されたのは試合にて戦う四人のみ。
「おれとラルの入口はお前らとは別だからな。作戦会議したいなら、今しかないぞ。やる必要があるなら、だが」
「なら、少しお話ししましょう♪ ちょっと出てくるわね、アリアちゃん」
聞かれないようにか、部屋の外で話をするらしい。ミユルとフォースが出ていったあと、ラルは小さくため息をつく。
自由人の如く暴れると予想されるアリアの手綱をどう操るべきなのか。そもそも、それが自分にできるのか。不安は尽きない。
「……アリアちゃん、私達も少し話をしよう。なんて、聞かないんでしょうけれど。一応の忠告はしておく」
食事の手は止めないものの、視線はラルへと向けられている。最低限、話を聞く姿勢はあるようだ。これならば、まだ通じるものがあるはずだ。
「初っぱなからの広範囲魔法を止めるつもりはないけど、それだけで勝てるとは思えない。アリアちゃんが相手をするなら、きっとフォース君が来る……あいつのやる気はないと思うけどね。それでも、注意するのをお勧めするよ」
「……」
「それと、少し約束してほしい。難しいことじゃないけれど、これを守ってもらわないと優勝……いや、ご飯のタダ券はないと思って」
アリアはラルの言葉にこくりと頷く。今のアリアにタダ券というフレーズは何かと便利な機能を果たすらしかった。内心ほっとしつつも、ラルは一つだけ条件を提示したのだった。
その条件を聞き、アリアが納得したところでラルは、部屋を出ていく。フォースの言う通り、ラルはアリアと同じ入り口から入場するわけではない。また、着替えで使った部屋にドールと雪花を放置したままである。どちらにせよ、あの辺で解散となっていただろう。
「あの言葉がどれだけの意味を成すのか……かなり不安だ」
『ふふん♪ 何やら酔狂なことをしておるの、マスター? 我も交ぜとくれ』
自身の背後から雷姫の気配を感じとる。ラルと見た目が似る雷姫だが、ドールのように瓜二つではない。髪も雷姫の方が長く、妖艶な笑みを浮かべている。それを視れるのはラルしかいないのだが。
雷姫はゆらりとラルにまとわりつくが、主である彼女は大して気にせずに歩を緩めなかった。
「もちろん。全面的に協力してもらうわよ」
『ほほう? それは楽しみじゃ』
チーム一の実力を持つフォースと、魔法によるサポートを得意とするミユル相手にどこまでできるのか……否、アリアをどれだけコントロールし、観客に満足してもらえるのか。ラルの課題はそこである。
「いいところまで引き延ばす。これが今回の最大ミッションよねぇ」



~あとがき~
嵐の前の静けさと言うか、まだバトルにはならないですね。

次回、アリア&ラルVSミユル&フォース!
どうでもいいけど、フォース、ハーレムみたいですね←

特に言いたいことはないですね……(笑)
あれかな。ラルの探検隊衣装。本当にいくつかパターンがありまして、まあ、それぞれの用途によってって感じではあります。
どんなやつなんだ!? ってイラストは例の記念イラストにて描ければと思ってます。フォースとあわせて描くよ~!(多分)

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第96話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわーわーしてる話です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ぬるっと準決勝一試合終わりました。ぬるっと。いやぁ……あっけないですね!
ラル「賭けは私の勝ちだね!」
レオン「ちぇ~」
ティール「今更だけど、後輩に集る先輩ってどうなの?」
ラル「これは勝負の世界! 先輩も後輩も関係なぁぁい!」
ティール「うわぁ……」
アラシ「大人げない気もするけど、それに乗ったレオンもレオンだ。自業自得」
ティール「手厳しいね、アラシは」


《A side》
話をしていた間に休憩時間、準備時間が終わったらしく、再びモニターから選手紹介が聞こえてくる。先程と変わっていなければ、リュウ先輩ではなく、キャスのおどおどした紹介が始まるはずだ。
『つ、続いて準決勝、だ、第二試合! こちらは従姉弟同士での対決になりましゅ! まずは、トーナメント戦では鮮やかにゃ、技を決めてくれました! 体術の達人! 今回も鮮やかな技を見しぇてくれるのでしょうか!?』
……と、予想通りの紹介で、ここまでキャスが喋った。すると、割り込む形でリュウ先輩の声が響く。
『シィィエル・シルフゥゥゥゥゥ!!』
『…………つ、続いてこちりぁはどうでしょう! 片や体術でこちらは植物の達人! ミ─』
『ミユゥゥゥゥル・ノフェカァァァァァ!!』
こちらも、最後までキャスが紹介できなかった。結局、美味しいところは先輩の総取りである。これにはキャスも納得がいかなかったのか、不満げな声が流れた。
『せんぱぁぁい! せめて名前までは言わせてくださいよぉぉぉぉ!!』
『すまんな☆』
……これ、会場にいる全員に聞こえちゃってるんだけど、その辺はどうなんだろう?
「あの二人、実力的にはどっこいどっこいな気がするんだけれど、実際はどうなのかなぁ? パワー系のシエル君が勝つと思う? 知的なミユルちゃん?」
ラルの疑問に俺達は黙ってしまう。ラル的には何でもない単純な疑問だったんだろうが。
「みーちゃ……え、シエル? どう、なんだろ。アラシはどう思う?」
「シエル……か? 接近戦を考えるとさ。いやぁ、でもアリア相手にシエル来るかぁ?」
「ミユルの方が対応力はあるだろ。俺はミユルかなぁ……いざってときに何とかしそうな……?」
幼馴染み三人による憶測が飛び交う中、いまいち理解していない先輩二人は首を傾げる。そりゃ、そうか。
単純な力比べなら、そちら方面が得意なシエルに軍配が上がることが多い。が、今回の目的はそこではない。二人が大会に参加したのは、セラおばさんの講演会のチケット欲しさ。つまり、優勝しなくてもいいのだ。
「副賞目当ての二人がわざわざ真剣勝負して勝ち上がるかって言われると、微妙なんだよな。多分、分からないように手を抜くと思う」
「にしし。相談したりとかな~」
「なるほど。どっちがアリア相手にするのか、したとして、どう終わらせればいいのかって話をするんだ?」
「そゆこと! ティール、分かってる~♪」
ミユルの武器は知識とそれを上手く使う技術、シエルは竜族特有の身体強化による己の力が武器だ。性格や実力なんかは似ている二人だが、得意分野は全く違う。だからこそ、この試合の行く末は俺達にも見当がつかない。
憶測が飛び交う中、準決勝の開始を告げる鐘が鳴る。
画面に映るシエルに武器の類は見受けられない。対するミユルの手にはお得意の鞭……ではなく、数本の投げナイフだった。二人、各々のスタイルを掲げ、同時に動き出す。ミユルは構えたナイフを投げるも、腕を竜化させたシエルに弾かれた。が、これは一種の目くらましだったらしく、ミユルは別のナイフを構え直し、シエルとの距離をつめて接近戦へと持ち込んでいく。
「おりょ? ミユルちゃん、鞭じゃないんだ~」
「あ、多分、逆鱗対策だと思いますよ?」
竜族の首の根本辺りに逆鱗と呼ばれる箇所があり、そこに触れてしまうと、暴走状態へと変化してしまうのだ。そうなってしまうと、誰も手が付けられなくなってしまう。しかし、長年の付き合いがあり、いとこ同士の二人だ。そんな事態になんてならないだろう。
「なぁんか、二人とも楽しそうだよな~」
レオンの指摘に俺はもう一度モニター越しに二人を見る。
鬼気迫る接近戦にも関わらず、ちらちら映る二人の口元には笑みが零れていた。楽しくて仕方がないとでも言うように。その理由はすぐに思い当たった。
「そういえば、二人が戦うのは久々なんじゃないか?」
「ん~……あ、確かに。前に戦ったのって高校入る前の模擬戦以来じゃね?」
「そっか! じゃあ、楽しくなっちゃうのも仕方ないね♪」
一応、参加者は真剣勝負を望んで挑んでいた思うのだが……ま、強者が第一ってことで。
「ラルちゃん」
「? なんですか、リアさん。今、いいところですよ?」
このあとのこともあってか、思いの外真剣にモニターで観戦していたラルにリアさんが肩を叩く。
「ラルちゃんもそろそろ準備した方がいいと思うわ。あの二人、いいところで決着つけると思うし……その後にラルちゃんとフォースくんにはやることがあるよね?」
「…………行かなきゃ、駄目?」
「ふふ♪ お姉ちゃんと約束したでしょ?」
ニコッと笑いかけるリアさんにラルは観念したようにゆっくりと立ち上がる。それに合わせて、座っていたティールも立ち上がる。
「フォースには連絡しておいた。投げ出すことはないと思うよ。こっちは任せて」
「うん……」
いまいち元気のないラルにティールは首を傾げる。この期に及んで、「やっぱり嫌です!」と言い出すのだろうか。結構、ギリギリまで嫌がっていたから、あり得ない話ではないが。
……なんて思っていたのもつかの間。
何を思ったのか、ラルはティールに抱き着いたのだ。さっきみたいな悪ふざけの雰囲気は全くなく、だ。そんなラルに呆れる様子もなく、ティールは優しく頭を撫でる。
「…………大丈夫。頑張っておいで」
「足りない」
「え~……そうだな。ラルはぼくの大切なパートナーで、自慢の親友。……じゃ、駄目?」
「もっと」
「欲張り。……ぼくは君の傍にちゃんといるから。…………で、どう?」
「妥協しよう」
「偉そうだな。……ま、嘘じゃないよ」
と、そこでお互いにぎゅっと強く抱きしめ、パッと離れる。ティールから離れた後のラルはいつも通りの自信に溢れる笑顔を見せていた。トートバッグとセツを手にし、ドアノブに手をかける。そこで俺達の方を振り返り、ウインクして見せた。
「うっしゃ! 見てろよ! 華麗なラルちゃんを見せてやんよ!」
「はいはい。頑張って~」
ラルが去った後、リアさんを除いた三人はティールの方を見る。俺達の反応は当然と言えよう。いきなり目の前であんなの見せられたら、問い詰めたくもなるだろ!
「な、なんだったんだ!?」
ティール! ラルとデキてんのか! そういうことか!?」
「私もぎゅっとしたかったです!」
あ~……一人だけ、なんか違う気もするが、スルーだ。
「彼女は自信過剰な性格じゃないってことだよ」
レオンのいじりにも反応を見せず、ティールはそれだけを答える。
意味が分からす、詳しく聞こうとするも、モニターが騒がしくなり、そちらに意識がいってしまう。丁度、準決勝第二試合の勝敗がついたところだったようだ。
そして、勝者として映ったのは、深緑の髪をなびかせた少女─ミユルだった。
『しょ、勝者! ミユル・ノフェカ先輩です! そして、十分間の休憩後、次はいよいよ決勝戦です!』
『そして! ここでいよいよ決勝戦で登場するゲストについての説明をしていくぜ!』
ぐっ……あの二人の行動も気になるが、今は決勝だ。ゲストが誰なのかは知っていても、ルールは全く知らないからな。
『ま、まず……休憩の間に決勝進出者のお二人には、くじを引いてもらいます!』
『そのくじには、ゲストの二人の名前が書いてある。決勝では引いたくじに書いている名前のゲストとタッグを組んで、決勝に挑んでもらうぜ!』
つまり、ラルかフォースと組んで、アリアとミユルは戦う、のか。だから、ラルは助っ人と呼称したということか。
『な、なお、観客の皆様には決勝戦開始にて、ゲストの紹介をさせてもらいますので、もう少しお待ちくださいね……?』
『でも、ノーヒントってのもつまんないから、こっそり情報を教えるぜ!』
『え……ちょ……先輩、そんなのは台本には全く─』
先輩のアドリブ病がここで発動し、キャスの言葉を遮って勝手に進めていく。答えを知る俺達にはあまり関係ないが。
『ヒ・ン・トは~~~……ファンクラブもできているあの有名な探検隊のメンバーだぜ! 誰なのかは色々と想像してくれよな!』
『ちょ! 先輩!? それ言っちゃいますか!?』
ほぼ答えにも聞こえるようなヒントを言ってしまう。まあ、何も知らない人からすれば、あれこれ想像できる……のかもしれない。
『ということでこれから休憩に入るぜ! みんな! トイレは今のうちに済ましておけよな! ということで! しばしのお別れだ!』
『ちょ! せんぱぁぁい!』
なんつーか、じ、自由だな……やっぱり。



~あとがき~
ようやく決勝だ。

次回、決勝戦! アリア、ミユルはどちらと組むことになるのか……?
うし。正念場です。

最後ら辺のラルのティールの行動に意味があるか聞かれてもあれです。困ります……(笑)
一応、ラルにはラルなりの事情がありますが、特に語らずにいこうかと思います。今回の解答になりそうな理由は前にちろっと言ってますし。答えはこれ! とはなってないので、分からないかもですが。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第95話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で楽しんでる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
適当な回を皆様に見せてしまった……なんか、申し訳ない……(後悔)
ラル「するくらいなら、やらなきゃいいのに」
んでも、ウィル兄さんは出したかったからね。ええねん! 自己満足!
ラル「……」
とまあ、前回に引き続き、アラシ君視点でお送りしまーす!


《A side》
今までの展開からして……あと、アリアと馴染みである俺から見ても、残念ながらイツキ先輩に勝機はない。それは救護室のメンバーも理解しているらしく、ラルがモニターを見つつ、ニッと笑う。
「レオン君よりは長く戦えるに一票! 百ゴールドかける!」
「じゃあ、俺はその逆に百かける~♪ イツキ先輩の実力知らねぇけど♪」
お前、同じ予選グループだっただろ。
「そーだけどさ、別に剣を交えたわけじゃないし? 俺はイツキ先輩の戦いっぷり見てねぇもん。アラシとの試合も自分のことでいっぱいいっぱいで、観戦してなかったしー」
こいつ……!
「イツキ先輩は強いよ。その辺の高校生よりはな。……けど、今日のアリアには誰も勝てねぇわ」
トーナメントで交えたとき、部活での練習試合とは違う気迫を感じた。あの人の引き出しは多いし、何かと器用だ。きっと、才能と多くの練習が実を結んでいるんだろう。
「耐えろよ、キーくん。褒美がかかってるぞー」
「ほんとに叶える気あるんだね、ラルは」
「もち! 私が見込んだ子だよぉ? 約束は守ってもらわないと、ね?」
俺の知らないところで、ラルとイツキ先輩とで何か話があったらしい。それが何なのか予測はできないけど。
『それではー!!! 試合開始!!』
リュウ先輩の掛け声とゴングの音が鳴り響く。
それと同時に、アリアはレオンのときと同様、大きな魔法陣を出現させ、二頭の龍を思わせる氷……“氷双龍”を繰り出す。螺旋状に天へと登り、イツキ先輩めがけて突進をした。レオンは避けきれなくて、あえなく全身凍結という秒殺コースだったが、イツキ先輩は、二本の片手剣を使って上手く滑らせて、龍の突進攻撃を避ける。
「お、一撃避けた」
「イツキさん! すごいですっ!!」
しかし、まだ龍の攻撃は終わっていない。アリアは氷龍を操り、イツキ先輩へと攻撃を仕掛けるつもりらしい。
『…………斬らせてもらいますっ!!』
しかし、それも予測済みだったのか、先輩は二本の剣を横平行に構え、体の捻りを利用した斬撃……所謂、回転斬りを放つ。その攻撃で一頭の龍は破壊され、素早いステップで体勢を整えてから、立て続けにもう一頭の龍も連続斬りで破壊する。目にも止まらぬ、斬撃。イツキ先輩の武器はスピード……?
「へぇ……いいね、キーくん。それは予想外だよ」
破壊された“氷双龍”の氷達がばらばらと雨のように降ってくる中、イツキ先輩は剣を構えたまま、アリアを見据える。そこに油断はない。……ない、が。
『……♪』
フッとアリアが小さく笑みを見せる。
その瞬間、イツキ先輩の背後から新たな魔法陣が出現する。その魔法陣から、氷でできた獅子が飛び出し、イツキ先輩に飛びかかった。背後からの不意打ちにも関わらず、イツキ先輩は即座に反応した。ライオンの方を向くところまではよかったものの、流石に反撃までは間に合わず、ライオンに突進され、その追加効果として氷漬けという結果となった。試合続行不可と見なされ、アリアの勝利で終わる。
『準決勝、第一試合を勝ち上がったのは……アリア・ディーネ! 予選、一回戦と変わらずに相手を圧倒する氷の刃を見せてくれたぜ!!』
「まあ、知ってたよね。番狂わせなんて起きないと、誰もが予想してたよ。キーくん、お疲れ。……ツバサちゃん、キーくんを頼んだよ」
「は、はい……」
レオンのように全身氷漬け状態で運ばれてくるためか、ラルはその解除をツバサにお願いする。また、流石に、この一日だけで同じようなものを見ているツバサも少しだけ苦笑を浮かべて返事をした。
「なんか、ハードル上がらない? 決勝もどうせアリアが勝つんでしょーって思われてるってことだもんね。ラル、大変だねぇ」
ティールのその他人事はムカつくけど……確かに、決勝で瞬殺展開はあかん……どうにかする」
いかにして引き延ばし、もしかして……? と思わせられるか、そんな高等テクが必要になるのか。生徒側のミユルにはあまり関係ないが、ゲスト参加であり、生徒会のラルには難しい課題なのかもしれない。
「そーいや、結局、ゲストってどういう扱いな訳? って、これは聞いてもいいやつ?」
レオンが首を傾げ、問うた後に少し戸惑ったように笑う。俺達は関係者ではないから、聞くのはマナー違反というか、よくはないんだろうが、確かに気になるところではある。
「……ゲストはゲスト。決勝でのお助け要員みたいなもんだよ」
ラルが少しだけ考え、その結果、大雑把に答える。分かったような、分からないような答えだ。そして、ラルは更に詳しく答えることはなく、隣に座るティールへと目を向けた。
「ねえ、ティール。この話の流れで言うけど、セツちゃんを貸してほしい。私、まだ死にたくないんだよね」
「……狡くない?」
「お前は私が死んでもいいと」
「そうは言ってない」
「なら、差し出せ。献上しろ。私が死んでしまう前に貸せ!!」
「なんで脅迫してんの!?……ま、ぼくは構わないけどさ。セツもラルにならちゃんと従うから」
「えへ~♪ ティール、だいすきー!」
冷めた表情から一転、ぱっと笑顔を咲かせ、ティールに抱きつく。突然の行動にも関わらず、ティールは特に動じずに目の前のノートパソコンを眺めていた。この一連の流れをレオンがニヨニヨと眺めているが、俺は特に突っ込まない。巻き込み事故はごめんだ。
「はいはい、ありがとう。……ってことだから、出てき……あ、駄目。パソコン壊れる。ラル、ちょっと離れて」
ティールに言われ、ラルはティールから離れる。
話からすれば、セツとやらはなんからの武器か何かなんだろう。
セツという正体を知っているらしいリアさんがくすりと笑う。
「ラルちゃん、考えたわね~♪」
「いやぁ……実のところ、ゲスト参加って話を聞いた辺りから考えてましたよ。アリアちゃん来るなら必須かなぁって。雷姫だけでもいいけど、保険はほしい」
「ふふ♪ まあ、まだどうなるか分からないけれどね?」
「どっちに転んでも必須です。死にたくないんですって!」
おばさんの結界内で死ぬなんてないと思うけど?
俺の疑問が聞こえたのか、表情に出ていたのか。理由は定かではないが、ラルが不機嫌そうにこちらを見る。
「私、寒いの駄目なの!」
あ、そっち……?
突然、ふわりと冷気を感じ、そちらに目を向けると、ティールがどこから取り出したのか一つの剣を握っていた。全体的に透き通った水色をしており、氷を思わせるような剣。宝飾品のようにも思える美しいそれを、持ち主であるティールは無造作にラルに差し出した。
「はい。どうぞ」
「やったー! よろしくね、セツちゃん!」
ラルは大事そうに両手で抱え、剣ににこやかに話しかける。その様子を冷ややかな目で見ていたティールだったが、驚いたように体を震わせた。
「え?……あ、いや。お前はるすば……やめろ! うるっさい!! 黙れ。まずは範囲を絞れ」
「ありゃあ……ごめんねー? スイちゃんは応援隊長として見ててくれると……あ、そーね。しりとりね……これはしりとり関係ないかなぁ……?」
な、なんだぁ?
呆然とする俺達をよそに、二人だけの会話が始まってしまう。リアさんだけは理解しているみたいで、楽しそうに笑っていた。
「あらあら。喧嘩が始まっちゃったかしら?」
「リアさ……先生、ラル達は……?」
「そっか。アラシ君には聞こえないのね。今、二人が話しているのはスイちゃんとセツちゃんっていう剣なの。セツちゃんはラルちゃんが持っている剣で、スイちゃんは……ティールくんの傍に立て掛けてあるあれね」
リアさんが指差す方向に一つの剣がある。深い青色の鞘に納められたこちらも綺麗な剣だった。あの二つがティールの武器ってことなんだろうか。
というか、剣が喋る……?
「正式名称は水の聖剣、水泉。氷の聖剣、雪花よ。各聖剣の固有能力は色々あるけれど、全体の特徴として、聖剣は波長の合う人に声を届け、意思を伝える能力があるの。まあ、言ってしまえば、長年使い込まれて道具に意思が宿ったみたいなものよ♪ 聖剣は激レアの武器で、探検家や探検隊からすれば相当なお宝よね~」
そ、それを二本も持ってるティールって……!?
「あれはティールくんの持ち物っていうよりは、ティールくんのお家が所有してる物ね。現状の持ち主は……ティールくんのお父さんだったかしら?」
確か、ティールは海の国の王子……ってことは、国の所有物? それを易々と他人に渡していいのか!?
「だ、大丈夫だよ……ラルだから。スイもセツもラルはお気に入りだからね。こいつらは単純だけど、人を見極めるのは得意だよ」
「私は本来の持ち主ではないからね。ティールに呼び戻されれば、私の手元からいなくなるよ」
そ、そういうこと……なのか?
「ほへー! ティールってなんか凄い人なんだな! よく分からんけど~♪ よろしくな、スイ、セツ! 今度、面白い話聞かせてくれ~♪」
レオンのあっけらかんとしか感想にティールは困ったように笑う。
「ぼくは普通だよ……というか、レオンには聞こえていたの?」
「まあな! 楽しそうな二人の声、ちゃあんと聞こえてたぜ~? てぃーのばかーって」
「私も聞こえましたよ~♪ 聖剣さんの声、初めて聞きました! とっても可愛いですね♪」
レオンだけじゃなく、ツバサにも聞こえているらしい。俺とは相性が悪いのか、全くだ。水と氷なんて、炎とは相性最悪だし、そんなもんなのかもしれない。
「嘘!? だから、範囲絞ってって言ったのに!」
「いや、しまえば? スイちゃん。そうすれば周りは遮断できるよ」
「それだ。……いや、それじゃないよ。ぼくだけしんどいじゃん」
「じゃあ、このままティールの恥ずかしエピソード公開となりそうなこの空気に耐える?」
「無理! 戻れ、スイ!」
ティールの一言に、スイと呼ばれた水の聖剣は泡のように消える。俺も聖剣なんて初めて見たけど、喋ったり、煙のように姿を消したりと不思議なものだ。
「セツは喋るな。言葉発したら即戻すぞ」
「戻さないでよ。私の命に関わるー!」
「ギリギリまで戻すって話」
「じゃあ、いいか……」
……凄いんだろうけど、ラルやティールの接し方見るに、凄さを感じねぇな。悪いけど。



~あとがき~
とりあえず、茶番八割、本筋二割って感じでしたね。

次回、シエルVSミユル!
これは……どう進めようかな(汗)
と、投稿してからのお楽しみで!!

スイとセツ、ついにアラシ君達の目の前にも出てきましたね。何度も説明している気もしますが、復習だと思ってお聞きいただければと。ちなみに、これからもちょこちょこ出てくると思います。
リアさんにはスイとセツの声は届きません。届きませんが、リアさんの操る精霊(ゴーレム)を通じて意思を汲み取ることは可能です。精霊万能説。
今回はリアさんとアラシ君には聞こえてませんね。けどまあ、聞こえなくても問題ないような話をしているので、問題ないです。

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第94話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわやわやする物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
長かった一回戦が終わりました。今回からは準決勝。ぱぱっとやって、決勝で長く楽しみたいものですね……
ラル「長くやりたくないんじゃないの?」
……まあ、本音はな…バトル苦手だから(笑)
でもまあ、頑張りますよ!!


《A side》
つい成り行きで滞在していた救護室をいつものメンバーと共に出て、食べ物の屋台が密集しているエリアへとやってきた。
「あーちゃんはーっと……?」
制服の白ワンピを揺らしてキョロキョロと辺りを見回すツバサ。手分けして捜してもいいが、アリアのことだ。どうせ、気に入った屋台のご飯を買って食べてるはずだ。その辺の屋台を見て回ればすぐに見つかるだろう。
「んお? あれ、フォースじゃね? 誰かと一緒だけど……アリア、か?」
レオンが示すところには確かにフォースがいた。生徒会の腕章をつけてはいるものの、規定のブレザーは肩にかけるだけというスタイルだ。
ついでに捜し人だったアリアと、知らない男性がいる。アリアはフォースとその男に囲まれているものの、自分のペースを崩さずに焼きそばを頬張っていた。いや、大会終わってないし、次はお前の番なんだけどね?
「よお、いつもの。お前らのお仲間連れてけ」
「フォースさん! どーして……?」
「そりゃ、選手で次が出番なのにのんびりしてる奴を見たら、生徒会としては確保しておくだろ。最悪、鎖で連行するつもりだったよ」
フォースならやりかねん……アリア相手にそれが通用するのかは分からないが。
「なあなあ! フォース、その人は?」
「……あ? あー……シラナイヒト」
「かーくん!? 俺とかーくんの仲でしょ! もー! 他人行儀なんてひどぉい! 初めまして! かーくんのお兄ちゃんでっす☆」
え、何……この底抜けにテンション高い人……? フォースの兄貴?
お兄ちゃんと名乗る男は確かに見た目はフォースに似ている。髪型も目の色も。ついでに背格好もだ。服なんかはラフな格好ではあるが。しかし、髪の色だけは乳白色だ。ツバサみたいに真っ白ではないが、この人が魔法使用者ならツバサみたいに白に分類されてもおかしくはない。それくらいの髪色だった。
「かーくんも早くラルちゃんとこ行きなよ~? 出番あるのはかーくんも一緒だよ?」
「現地集合で事足りる。さっさと持ち場つけ。おれの傍じゃねぇだろ。すぅんとこ行けや、くそ兄貴」
「酷いなぁ? お兄ちゃん、泣いちゃう」
「男泣きとか見苦しいから知らないとこで泣いて。じゃ、そゆことで」
「泣き虫かーくん時代あったでしょぉぉ!! でも、そんなかーくんも好きだよ!」
「うるっせ! いつの話だ! こちとら、仕事あんだよ!! 帰れ!! ハウス!」
それだけを言い残して、フォースは人混みの中へと消えてしまった。嵐のような時間が経ったけれど、この間、ほんの一、二分くらいだったではなかろうか……?
「あ、えーと、フォースのお兄さん?」
「うん。かーくんのお兄ちゃんだよ?」
……突っ込まねぇぞ。
「フォースには言えなかったけど、アリア見つけてくれてありがとうございました。……アリア、飯食ってないで、さっさと行くぞ」
「……」
全く動じねぇな。分かってるのか、ここで不戦敗なんてことになったら、食べ放題どころじゃないんだが。
俺が無理矢理、立たせようとすると、アリアの目がキラリと光る。ヤバイと思ったが、すでに時遅し。アリアの拳をもろに受け止めて、空を舞っているところでした。
「わあぁあ!? アラシ!!」
「ありゃあ……ま、かーくんにもフックかましてたからにゃあ~♪ 血気盛んだね」
お兄さんが言うには、フォースも洗礼は受けていたらしいが、あいつに傷一つなかった。つまり、全部、避けたんだろう。……マジか。
顔面着地とはいかないまでも、全身で着地するはめに。そして、レオンが笑いを堪えているのは忘れない。覚えていろ。
「いってぇ……な、なんで、俺が……」
「やり方の問題じゃないかしら? 任せて♪」
パチッとウインクを見せ、ミユルがアリアに近づく。ミユルの方をちらりと見るも、気にせず、たこ焼きを食べ始めている。本当にマイペース。
「アリアちゃん、さっき、シルと先輩の試合が終わったの。だから、今度は準決勝。つまり、アリアちゃんの出番なの」
「そーだよ、あーちゃん! 急がないと、あーちゃん負けちゃうよ! 優勝賞品! もらえなくなっちゃう!」
「……!! タダ券!!」
バッと立ち上がり、ダッシュで会場方面へと走っていく。迎えに来た俺達は放置だ。残された俺達はアリアの後ろ姿を呆然と眺めていた。
ミユルとツバサの言葉でスイッチ入ったから、あのまま試合には出てくれるはず。一応、準決勝で不戦敗という最悪な事態は免れたわけだ。それにしても、だ。
「アリアのやろー……!」
「いいじゃん♪ 未来は守られたってことで♪」
お前、なんもしてねぇだろ。
「フォース先輩のお兄さん、アリアちゃんがご迷惑をおかけしました。ごめんなさい」
一連の流れを興味深そうに眺めていた、フォースの兄さんに、ミユルはぺこりと頭を下げた。そんなミユルに、兄さんは、ニコッと柔らかな笑顔を返した。
「ううん。俺はすっちーの頼まれ事ついでに、かーくんに絡んでただけ。……まあ、ケアルちゃん達に会えたのは嬉しい偶然だったけど。……大会、頑張ってね、ノフェカちゃん♪ それと、シルフくんもね」
ずっと大会を見ていたのか、ミユル達のファミリーネームを口にする。フォースの兄さんなら、知っててもおかしくはないが。
「それと……ナイスファイト♪ フェルドくん」
ぽんぽんっと頭を叩かれ、お兄さんとやらは屋台方面へと消えていく。すっちー……─フォースがすぅって呼んでいたから、多分─ステラに頼まれたというものを買いに行くんだろう。
「不思議な人だな……あり? アラシ……お前」
「え? あ、え……治ってる?」
アリアのパンチで受けた傷が綺麗さっぱりなくなっていた。疲労感は流石にそのままだが。
「ツバサ……?」
俺がツバサを見ると、驚いたように首を横に振る。
「私は何もしてないよ! それに魔力は感じなかった……けど、技って感じも……なかった、と思う」
……後で、ラル達に聞いてみるか。ラルの名前を出したってことは、少なくとも正体は分かるはずだ。

アリアの次に試合があるミユルとは会場入口で別れ、俺とツバサ、レオンの三人は救護室へと戻ってきた。中に入れば、変わらずラルとティールがモニターを見ながら談笑をしているようだったが、そこに新たに一人加わっていた。
「ししょー! おかえりなさい!」
「あら、ツバサちゃん♪ ただいま。それに、アラシくんとレオンくんも。大会お疲れ様」
本来のゲストであったヒナギクに付き添っていたはずのリアさんが救護室へと戻ってきたようだ。笑顔で俺達を出迎えてくれる。
「なんかすいません。成り行きでここに居座って」
「ふふっ♪ いいのよ。もう大会もトーナメント。大勢の怪我人なんて来ないから。それに、そこに生徒会の二人も居座っていることだし、私は気にしないわ」
「嫌味ですか、リアさーん? そんなに私とラブラブできゃっきゃっできる話をしたいんですか? 付き合いますよ? ネタはたっくさんありますよぉ」
おおう……リアさん相手に恐れないな。
ラルの意地悪な笑みにリアさんは何を思ったのか、顔を赤くする。
「もうっ! ラルちゃんは少し黙っていなさいっ!」
「はぁい♪」
「……ねえ、この編成、どうなってるの?」
「ん?……初期メンツの大部分が休憩エリア付近の警備隊と合体してる」
「あー……なるほど」
仕事はするんだな……
「全く……皆、好きなところ座っていいわよ。ゆっくりしてってね」
「ありがとうございます。……そいや、先輩達は」
俺が思わず呟いた疑問に、聞こえていたのか、ラルがちらりとこちらを見て、口を開いた。
「ユーリ君は会場警備、リリちゃんは会場外アシストに行かせた。激動の予選も終わったからね。もうここも大量の人は必要ないから、休憩させるか、別動隊に再編させてる」
「……仕事はできるんだから。ラルちゃん」
「へへぇ♪ もぉっと褒めていいですよ! リーアーさんっ♪」
せ・ん・せ・い! いつもリア先生って呼びなさいって言っているのに。……ま、今更かしらね」
「イグさんもリアさんも諦め悪いですねぇ……どうせ、この関係もあと一年もないんですから、いいでしょう?」
「よくないだろ。先生つけなよ、ラル」
ため息混じりに注意するティール。それに顔色一つ変えず、ニヤリと笑って答えた。
「なんか、気持ち悪い……急に呼び名変わるって気持ち悪くないですか、ティール様~」
「様言うな。今呼ばれると、別のスイッチ入る」
「入った方が有能説あるぞー」
ラルとティールの会話中にツバサがラルの肩を控えめにとんとんっと叩いた。それに気づいたラルがツバサを見る。
「どしたの? ツバサちゃん?」
「あの、全く関係ないんですけど、ラルさんに聞きたいことがありまして……お邪魔じゃなければ、いいですか?」
上目遣いにお願いされ、ラルの表情はふにゃっと柔らかくなる。
「いいよー! ツバサちゃんのお話なら、いつでも大歓迎だよー!」
「さっき、あーちゃんを捜しにいったとき、フォースさんとそのお兄さんに会ったんです」
それを聞いた瞬間にラルとティールの表情が固まる。
「なぜ……何ゆえ?」
「知らない……ステラ達の保護者役?」
「あ、なるほど……なるほどぉ!? 人使い荒くねぇ!?」
「君に言えた義理じゃないよ……?」
「……それはそれ! えっと、そのお兄さんはウィルさんって人。フォース君のお兄さん……みたいな人だよ。血は繋がってない」
へえ? あんなに似てたのにか?
「え、ウィルさん、どんな見た目してたの」
「どんなって……ほぼフォースと見た目一緒だったぞ? 髪の色が違うくらい? なあ?」
レオンの言葉に俺とツバサは頷く。ざっくりした説明だったが、二人には伝わったらしく、納得したように「あ~」と呟いた。
「それに、フォースのことをかーくんって」
「それは……まあ、愛称みたいなもんだよ。フォースって名前に由来してないだけさ。かーくん呼びするのは、ウィルさんだけ。ぼくらは一度も呼んだことないよ」
ふうん?
納得したような、していないような。他にも聞きたいことはあるが、ラルがふとモニターを見上げる。
「……っと。さてさて、そろそろ準決勝だね」
そう言われて、モニターを見上げてみる。丁度、イツキ先輩とアリアが入ってきたところのようで、恒例の放送部による選手紹介だ。もう、必要ない気がしているのは、俺だけだろうか。
『えっと……まずは冒険科三年! よしぇ……予選では秒しゃ、秒殺!……トーナメントでは、相手を瞬しゃす!……瞬殺してきたブラックホール! アリア・ディーネ先輩です!』
『おいおい、相棒~? そこは、アァァリア・ディィィィネェェェ! だろ!』
『はう! それは無理だってさっき話したじゃないですかぁぁ!!』
一回戦のハイテンションとは変わり、キャスが紹介をしているらしい。たどたどしいものの、言いたいことは分からなくはなかった。リュウ先輩とのどうでもいい話が入ってしまっているが。
『つ、続いて! 予選では奇跡的に生存! トーニャ……トーナメントでは、後輩を打ち負かした獰猛? な……剣術師……?』
『イィィィツキ・カグラァァァァ!』
『ちょ! 先輩! 勝手に僕の台本変えないでくだないよ~!! なんですかこの前口上! イツキ先輩に失礼じゃないですか!?』
『問題ない! なぜなら考えたのは上級生の俺だからな!』
『えぇぇぇ!!』
とんでもない前口上を言われているイツキ先輩だが、大して気にしていないらしい。一回戦のあれで抵抗しても仕方ないと思ったのかもしれない。
「相方、リュウ先輩に対してたじたじじゃねぇか」
「にゃは♪ でも、客受けは良いっぽいからこのままでもいいんじゃないのか?」
……なのかなぁ?



~あとがき~
決勝前でだれにだれまくってる!
やばい!! 頑張るよ!!

次回、アリアVSイツキ!
予定では、今回に捩じ込むつもりでした。無理でした。

わーい! ウィルお兄ちゃん(人ver.)登場です!
本来の見た目はまた違います。具体的には、髪が長いです。(大雑把)
ここでも神様してます! よろしく!!
今後、出てくるかは知らないです!((
今回出した理由は、フォースとウィルのくっだらない会話をしたかったから。それだけです。
裏の目的とはないです。(多分。)

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第93話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で楽しく暮らす物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
なかなか終わらない裏側の話。救護室のあれこれをお見せしています~♪ ぶっちゃけ、しばらくはこんなもんですけどね!
ってことで、変わらず、ラル視点の救護室風景をお見せしていきますね~♪


《L side》
「ごめんなさい、ツバサちゃん。本当は私が治すべきだったんだけれど、薬草を切らしていて」
私とリリちゃんでくーちゃんを愛でている間、ミユルちゃん達は別の話をしているらしい。
「ううんっ! 大丈夫だよ、みーちゃん。これが私のお仕事だもん。気にしないで」
「でも、ツバサ。今回で色々と魔法使ってるんだろ。魔力は大丈夫か?」
アラシ君の言う通り、この大会中にツバサちゃんは大活躍だ。ツバサちゃんの騎士様としては、そこら辺の心配は尽きないのだろう。
「大丈夫だよ、アラシ。確かに魔法は使ってるけど……氷山のパフォーマンスで消費した魔力はポーションで回復したし、そのあとの魔法だってちゃんと考えてるもん♪」
「そーそー! 心配しすぎるのも毒だぞ~♪」
どこから聞いていたのか分からないが、扉を開けながらレオン君が帰ってきた。一年生のジャージ姿で、ニッと笑った。
「それにツバサの魔力の多さは俺らが一番知ってるだろ? 何かあればツバサは言ってくれるって♪ な?」
心配するアラシ君を落ち着かせるようにレオン君が背中をぽんっと叩く。それに続くように、ミユルちゃんも口を開いた。
「そうね。アラシくんは魔力風邪も心配しているんでしょうけれど、今のツバサちゃんを見るに、そんな心配はいらないと思うわよ? 何かあってもここにはリア先生や会長さんもいるもの」
……そこに私が入る訳を知りたいなぁ?
なんて、友人だけの和やかな雰囲気の中にずけずけと入れるはずもなく、私の疑問は自身の胸の中に消えていく。
周りの友人の説得染みた話を聞き、アラシくんは腑に落ちないにしても、無理矢理納得することにしたらしい。アラシ君は、笑顔を浮かべるツバサちゃんの頭を優しく撫でる。
「……何かあれば、ちゃんと言えよ」
「うんっ♪」
……優しく、友人思いだことで。
本当にツバサちゃんは恵まれている。羨ましいくらいだ。
「それ比べて私の相棒は」
「優しいだろ?」
「……優しくなぁい」
そんな意地悪な笑顔を浮かべるティールは優しくないよぅ……
「大丈夫ですっ! 会長様! 私が優しくよしよししますよー!」
「会長を撫でるの?……恐れ多いことするね」
「あっはは! ラル先輩には俺らがついてますよー!」
頼もしい後輩達だねぇ……優しくない相棒より全然いい……
「なんなの、ラルは。優しくされたければ普段の行いを見直したらどう?」
か、返す言葉もねぇ……!
「?」
私達の言葉を理解しているかは分からないが、くーちゃんが小首を傾げ、ちろりと控えめに私の頬をなめる。
「くーちゃん! 慰めてるの!? 可愛いっ!」
「♪」
嬉しそうに尻尾を振るくーちゃんが可愛すぎる! うちに欲しい!
「会長は人でも動物でも本当に何にでも好かれますね……」
「んふふ~♪ 今度、ノワールとかモフモフさせてねぇ♪ 久し振りにブラッシングしてあげるっ」
「分かりました。お時間のあるときに生徒会室へ出向きます」
よっろしくっ!
怪我人の訪れるはずの救護室がわいわいと騒がしい空間となっているのもつかの間、モニターから流れる音声と映像に目をやると、丁度、第四試合が終了したところのようだった。
「すっかり忘れてた。シエル君とセジュ君って子の試合だよね? セジュ君とは面識ないなぁ」
私の言葉に、アラシ君達も思い出したかのようにモニターへと目を向けた。
「ぼくらと同じ三年だけど、学科が違うからね。面識なくても仕方ないさ。シエルにとっては、学年的に上級生だけど」
「大丈夫ですよ、副会長さん。シルだもの」
小さく笑うミユルちゃんの言葉の先を代弁するようにリュウ君のアナウンスが入る。
『準決勝に駒を進めたのは……シエル・シルフゥゥ!!』
「余程の相手でない限り、負けませんわ♪」
絶対の信頼があるなぁ……このあと戦う相手だと言うのに。いや、だからこそ、なのかもしれない。
それはともかくとして、この試合をもって、準決勝のカードが揃った。第一試合の勝者である、キーくん。第二試合を勝ち進んだアリアちゃん。第三試合はミユルちゃん。そして、今、勝利を納めたシエル君。この中から、二人……か。
準決勝は今まで通り、十分後に行われる。キーくんも移動しなければならないが、会場内だ。焦る必要はないだろう。
「悪いんだけど、ツバサ……」
「うん。分かってる。……リリアーナさん、ラルさん、ティールさん。申し訳ないんですが、少しここを離れてもいいですか?」
リリちゃんが黙って私の方を見る。リアさんのいない今、一応の責任者が私になってしまっているからだ。別にリリちゃんが答えてくれてもいいのだけれど、彼女は答えるつもりがなさそうなので、私が答えよう。
「私は構わないよ。……で、想像はつくんだけれど、一応、聞こうかな。どうして?」
「あーちゃんのお迎えに行ってきます。第二試合から時間が経っているので……」
「外で食いもん探しに出てる可能性大だからな」
ツバサちゃんの言葉の後に、呆れ顔のアラシ君が続く。レオン君もミユルちゃんも困り顔で頷いている。
恒例なのだろうか。こういうの。
「次の準決勝、アリアちゃんからだもの。今回に限って、遅れるようなことはないと思うんだけれど、一応ね」
「ま、目星はついてるからさ。さっさと見つけて帰ってくるわ♪」
「なんか、大変だね? 心中お察しってやつだよ。何かあれば連絡ちょーだい。……あ、いや、フォース君に連絡して。あいつなら即解決すると保証しよう」
「ありがとうございます、ラルさん! いってきますね♪」
フォース君の出番がないことを祈ってまーす……何かしたら、私に見返り求めてくるもん……やだ。
ツバサちゃん達が出ていったあと、残された私達はなんとなく、お互いを見合っていた。
沈黙を破ったのは案の定と言うべきか、キーくんだった。
「アリア先輩ってそんなに凄いの? いやまあ、予選とか、さっきの試合……レオンを瞬殺してたけどさ。いまいち、よく分かんない」
「いっちゃん、瞬殺だよぉ」
「僕は戦いたくない。勝てっこないし……レオンさんを瞬殺した魔法を避けたとして、攻撃に入れるかは微妙なところ。僕なら……幻術を何重か掛ければワンチャン……あるかないか? いや、ないに七、八割くらいだな」
「あー……そんな感じかぁ。うーん。どしよ……ラルせんぱーい!」
私かよ!! そうだな……
「……体感していないから分からないけれど、防ぎきるのは不可能じゃない。あの氷も予選で分かる通り、破壊不可能ではないからね。いくつか手はあると思う。でもさ、あれだよ。食べ物の恨みは恐ろしいじゃない? 食欲は人を豹変させる……つまりだ。覚悟して死になさい、キーくん」
「死ぬこと前提!? ティール先輩は!?」
「ぼ、ぼく!? ご、ごめん……ぼくならセツの能力である程度防げるから……」
そりゃそうだ。私とティールのコンビであれに挑むなら、セツちゃんである程度操れるはずだ。それが破られたとしても、雷姫で斬り伏せてみせる。単騎戦だとしても、やることは同じ。私なら雷姫で、ティールならセツちゃんで対応するだろう。しかし、これはあくまで私達の場合だ。キーくんの場合だと、的確なアドバイスは難しい。
「ぐぅ……防いで見せます! あの一撃は! 防いだら褒めてくださいよ!?」
高らかに宣言するキーくんに、リリちゃんはパッと笑顔を見せた。
「なでなでしたげるよ、いっちゃん!」
「僕も撫でてあげる」
「リリィはともかく、ユーリのそれは、悪意が込められてる気がするから却下」
「我儘かよ……じゃあ、あれだ。今度、手合わせする。純粋に。剣術で」
「マジか! セコい手なし!?」
「うん。魔法も体術も使いませ~ん」
「やったぜ! 約束なっ!」
……普段、どんなやられ方しているんだろう?
そして、期待の目をこちらにも向けるキーくん。おっと。私らもか。
「ん~……何して欲しいのよ。私も撫でようか?」
「嫌です! ラル先輩達には、仕事風景見せてほしいっすよ! 探検隊の!」
「えー? 何でもいいの? 私ら大したことしてないよ?」
「いいっすよ。一回でいいから見てみたいんですよね、先輩達の仕事姿ってやつ」
それなら、これから見せてあげられると思うんだけれど……ま、いいか。
「いいよ。時間のあるときに簡単な依頼に同行させてあげる。……防げたらの話だけどね? いいよね、ティール」
「ぼくは構わないよ。リーダーがいいって判断したのならね」
はい。交渉成立。
この場にいる全員との約束を取り付けたキーくんのやる気はMAXのようだ。いきいきとした表情で、ぐっと拳を握る。
「そんじゃ、頑張ってきます! 勝ちは諦めませんけど、目標は攻撃を一つ防ぐこと!」
ひっくいなぁ……ま、でも、それくらいの方が達成できるかもね。それくらいアリアちゃんの気迫は恐ろしいだろうから。
準決勝が始まる前にキーくんは移動するらしく、一足早く、救護室を出ていく。そろそろ、こちらも動いた方がよさそうだ。
「ユーリ君、仕事できそう?」
「問題ありません。ツバサさんの狐……くーちゃんと離れなければ大丈夫なので。それで、僕はどうすれば?」
ベッドの上で座ったままだったユーリ君は、そのベッドから降り、くーちゃんを肩に乗せる。普段、黒い狼を乗せるその定位置に、白がいるのがなんだか不思議であるけれど、逆にしっくりときた。何か乗っているのがちょうどいいのかもしれない。
「ユーリ君にはティールの代わりに会場内の警備を任せる。リリちゃんはフォース君の代わりを」
「了解です、会長」
「わ、分かりました! 私も移動しますね!」
「よっしゃ! よろしくね!」
「……では、行って参ります」
手渡した通信機をしっかりと装備し、生徒会の腕章もつけたユーリ君は、軽く一礼をして部屋を出ていく。
「会長様が任せてくれたお仕事! 頑張ってきますね!」
と、言い残し、部屋を出ていった。不安そうではあったものの、リリちゃんなら大丈夫だ。
「色々とあったけど、終わりが見えてきたね」
「最後に大仕事が残ってるけどねぇ……ある意味、この準決勝は見逃せないよ。私的には、ね」
「……そうだね。決勝のルールがあるからな」
さてさて、長かった大会も残す試合はあと三つ。どうなることやら、だ。



~あとがき~
はー!!!! 終わった!!!
あとは準決勝に決勝じゃい!! 決勝長そうだなぁ!←

次回、ちょっとした休憩回。
まだ休憩? と思うでしょう? まだ休むよ←

特に言いたいことはないです。
茶番って楽しいね。以上。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第92話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で好き勝手する物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、凍結状態だったレオン君が救われたところで終わりました。
レオン「アラシの優しさが身に沁みましたー!!」
アラシ「根に持ってんな、こいつ」
ま、普段からアラシ君にちょっかいを出していたつけが回ってきたんでしょうね。致し方なし。
レオン「悲しい」
今回も変わらず、救護室でのお話です~!


《L side》
レオン君が部屋を出ていくのと同時にモニターからは選手紹介が入る。これから一回戦最後となる試合が始まるようだ。
『一回戦ラスト! 第四試合を飾るのは……普段は温厚だが、逆鱗に触れたときや、やる気があるときは容赦なし! 彼と戦う場合は体の関節に気を付けろ! 体術の伝道師! シィィエル・シルフゥゥ!!』
というリュウ君の紹介に戸惑い気味なシエル君が映し出される。それを見つつ、ティールがぽつりと呟いた。
「今年で終わりなんだよね。リュウのこれ」
「そうだねぇ……この選手紹介が代々に受け継がれても面白いけれど、リュウ君みたいなアドリブ効かせた口上は見納め……聞き納めか」
「だね。……まあ、リュウの後輩がどかーんと進化でもすれば話は変わるんじゃない?」
キャス君かぁ……どうなんだろう。リュウ君は才能を感じているご様子だけれど。
「また参加したときに恥ずかしい紹介がなければなんでもいいよ……」
ナイト様紹介が未だに忘れられないらしいアラシ君が難しい顔をしていた。よくよく考えれば、あの会場には一般人もいるわけで、そこで大々的にお知らせされちゃったわけで。
うん。恥ずかしいな。
「ラルやティールは餌食になってないわけ?」
「餌食って……ぼくは言われたことあるけれど、ラルやフォースは回避してるよ。大会には参加しても、本戦にはいないからね」
「ラルさん、前回は負けちゃったんですか?」
「いんや。途中棄権」
多人数戦で蹴散らすのが目的の予選はともかく、一対一の少人数制の見せ物感が好きじゃない。それに、去年はどれくらいの人を一撃でやれるのか……みたいな挑戦というか、実験を兼ねて参加した。要するに、予選にしか興味がなかったのだ。
「強力な雷属性の技を一つ繰り出して、ラルの出てたブロックは終わり。で、すぐに本部に出向いて、あれこれ理由つけて棄権したってのが去年の話」
「ラル……お前……」
呆れ顔のアラシ君が見つめてくるけれど、無視する。何を言われても私は私だ。やりたいようにやるのが、私なのだ。
「だから、ぼくは少し楽しみだけどね。ラルがこの大会でどう立ち回るのか」
「む……どうもしないよ。いつも通りだよ」
「ぼくもフォースもいないからさ」
「うっ……いつも、通りだよ……っ!」
このあとの決勝がどうなろうと、私のやることは変わらない。ま、相手によって策は変わるだろうけれど。
「テンション上げまくってるリュウの選手紹介……ゲスト紹介も興味深いよね」
珍しく面白がるような笑顔を浮かべるティール。ここぞとばかりにいじってきている。日頃のお返しのつもりなのか。
「あると思うのですよ。会長様とフォース先輩を観客の皆様にご紹介しないとです♪」
「今からでもやめさせよう……悪趣味な選手紹介……普通が一番ってことで」
「おまっ……ずっるいな! 自分のときだけ!」
リュウのあれが普通だろう?」
ぐっ……確かに……あれがあいつの通常運転だ……!
なんて下らない話をしていると、救護室の扉が開けられる。入室してきたのは、一回戦第三試合に出ていたミユルちゃんとユーリ君。そして、キーくんだった。しかし、ユーリ君は力なくキーくんにおぶられた状態だけれど。
「ゆっちゃん!」
「ユーリさん! あ、そっか。みーちゃんの……」
リリちゃんが慌ててキーくんのところへ駆け寄り、ツバサちゃんのところへはミユルちゃんが近寄ってきた。その表情は少し浮かない様子だった。
「ツバサちゃん、ごめんなさい。手を貸してもらってもいいかしら? 一応、ナーレで進行は遅らせてたんだけど、ここに来る途中で効果が切れちゃったみたいなの」
試合で仕方なくとはいえ、罪悪感は感じているみたいだ。試合なんて、何されても自己責任ではある。ミユルちゃんが何かを思う必要はない……なんてのは、残酷か。試合が終われば、相手を気にかける優しさがあるのだから。
「ま、パリラはなぁ……滅多にならないけど、危険な部類ではあるよね。ぼくはなったことないな」
状態異常を引き起こす要因はいくつかある。魔力石を使用した術の場合。技や魔法を使用したデバフ攻撃。そして、自然界に存在する生き物や植物の効果。一口に状態異常と言っても、深刻さでいえば、術が一番弱く、技や魔法ときて、その他が強い。……自然のものに抗うのは難しいということだ。もちろん、そのための対策は星の数ほど存在するだが。
「イツキ先輩がユーリ先輩をおぶってるのはなんでっすか? こういうの、係りの人がいるんじゃ」
「親友の一大事は俺の一大事だからな!」
心配で駆けつけたってところかな。重度の麻痺状態中のユーリ君が口を開くことはないけれど、不服そうな気配はする。これ、治ったら真っ先にキーくんにパンチでも飛ぶのではなかろうか。
「ゆっちゃ~ん! 最近のゆっちゃん、運なさすぎだよー!」
「それな~」
うん。今はそこじゃないと思うよ、親友二人。
「イツキさん。とりあえず、そこのベッドに寝かせてもらえますか? 今、治療すればちゃんと治りますので!」
「OK! 大人しくしてろよ、ユーリ」
ツバサちゃんの指示でキーくんが手近なベッドへユーリ君を寝かせる。さっとユーリ君を見たツバサちゃんは、私達の方に振り向いた。
「症状的にポーション作っている時間もないので、魔法で治しちゃいますね♪」
にこっとこちらに笑いかけ、再びユーリ君へ視線を落とす。そっと両手を前に出して目を閉じる。
「おいで……“クラルナール”!」
ぽわっと白く暖かな光が一瞬だけ輝き、消えたと思ったら、ツバサちゃんの足元には小さな子狐が現れる。白い毛並みを持ち、額に黄色い宝石がついていた。
子狐はツバサちゃんの足元を何周かした後、ユーリ君の寝ているベッドへと飛び移った。お行儀よくお座りをし、こちらを向く。
「コン?」
何あの生物……可愛い……!
「生物って……精霊の一種でしょ。元々は魔素……」
「夢がないことを言うな、このお馬鹿!」
「なんでぼくが罵倒されるんだろう……?」
夢のない発言をするからだ。
「ユーリさん、気分はどうですか?」
ツバサちゃんは閉じていた目を開け、ユーリ君に話しかける。ここに来てから全く動く様子がなかったユーリ君だったが、自力で起き上がり、少し不思議そうにしていた。しかし、狐とツバサちゃんを見て、どこか納得したらしく、ふわりと笑う。
「問題ありません。ありがとうございます、ツバサさん」
「……いえ! これが私のお仕事ですからっ♪」
「コンッ!」
ツバサちゃんと合わせるように返事をする子狐。その子狐は甘えるようにユーリにすり寄る。そんな狐をユーリ君は抱き上げ、首を傾げる。
「見たところ、精霊魔法の一種でしょうか。状態異常の回復を手助けをしてくれるような……」
「はいっ♪ 今、この子がユーリさんの麻痺を肩代わりしてくれているんですよ。なので、一定の距離を離れてしまうと、ユーリさんに麻痺が戻ってしまいますが……大体、半径三メートルくらいなら大丈夫だと思います」
「へぇ……流石、光魔法を元にした精霊。凄いなぁ、お前」
「コンッ♪」
よく分からないけれど、あの可愛い狐のお陰でユーリ君の麻痺は大丈夫になったってことかな。
「私も覚えたいっ! 光魔法!」
狐に熱烈な視線を向けていたリリちゃんが食い気味に話を切り出した。それを聞いたユーリ君とキーくんは難色を見せるが、ツバサちゃんは無垢な笑顔を見せる。
「はいっ! 大会終わったら、一緒に練習しましょう! リリアーナさんっ♪」
「おー!」
「あ~……リリアに何かを教えるのは根気がいりますよ、ツバサさん」
「そーだよ、ツバサ。気をつけなー?」
「にゃにおー!! できるもん! 頑張るもんっ!」
……過去に何かあったんだろうな。長い付き合いのあるユーリ君とキーくんだから、知っているんだろうけれど、止められないってのも知っているのか、やめろとは言わなかった。
「あ、その子は優しくしてくれれば、誰が触っても大丈夫ですよ♪」
思い出したように“クラルナール”の説明に付け加えるツバサちゃんに、リリちゃんはすぐさま反応した。ぱっとユーリ君を見て、飛び付く勢いで近寄り─というか、完全にユーリ君に飛び付いているが─捲し立てた。
「わあ! ゆっちゃん! 触りたい!! だっこしたいー!!」
「わ、分かった! 分かったから、離れて!」
「はーやーくー!!」
ユーリ君の手からリリちゃんの手に渡り、早速、狐をモフモフし始めた。ふわっとした毛並みの狐の触り心地は大変よろしいだろうと推測ができる。その証拠に、リリちゃんの表情はふにゃんとしてきていた。
「えへへ~♪ 可愛い~♪ 私も精霊召喚魔法、覚えよーかなー♪」
「土属性に適正のある人が呼ぶ精霊は基本、ゴーレムらしいよ。リリア」
「やだー! 小動物がいいー!!」
……頑張れ、リリちゃん!
「そういえば……ツバサちゃん、あの狐に名前あるの? 狐ちゃんとは呼ばないよね?」
「あ、いえ。特に名前はないです」
「ふーん。……じゃ、私は勝手にくーちゃんって呼ぶね。“クラルナール”って魔法名みたいだし」
リリちゃんの抱く白狐ちゃん改め、くーちゃんの頭を撫でると、嬉しそうに目を細める。いつか、この子をブラッシングして手懐けてやろう。そうしよう。
「いいですね、会長様! 私もそう呼びます~♪ くーちゃん!」
「君達は勝手に名付けて……ツバサの魔法だろう?」
「いいですよ、ティールさん! くーちゃん、可愛いですし、ラルさんがつけてくれたんですもん♪」
主様の許可も得たし、正式にくーちゃんだねぇ♪
『くーちゃん』と呼んでみると、嬉しそうに一鳴きする。名前をつけられて嬉しいみたいだった。



~あとがき~
一つのおっきなイベントがいくつもあるな、この救護室……(震え)

次回、流石に! 一回戦終わらせます!! はい!
今回で終わらせる気満々だったんだけどねぇ……

無駄話を突っ込んだせいで終わりませんでした。申し訳ない……!
とまあ、少し前に言った精霊召喚魔法、ツバサちゃんver.でした。“クラルナール”という魔法で、名前はくーちゃん(ラル命名)です。いいのか、ラル命名で……(笑)

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第91話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でのんべんだらりと過ごす物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、一回戦、第三試合まで終わりました。一回戦っていうか、準々決勝(?)ですね。一回戦って言ってるけども。まあ、いいや。
その、一回戦ラストなんですが……ラル視点です。シエル君とセジュのバトルはない←!?
ラル「扱いざっつ」
仕方ない。セジュって名前あるけれども、モブ様なんだもん。
ラル「ぶっちゃけるなぁ」


《L side》
ユーリ君とミユルちゃんのバトルが終わる少し前。現場の生徒達への状況説明やら、諸々を終えたティールが救護室へと顔を出した。腰には変わらず愛剣が装備してある。
「今回は逃げ回ってないんだね、ラル?」
「毎回、私が逃げているみたいな表現をやめていただきたいね。私だって真面目なの」
「……ごめん。ちょっとよく分からないなぁ」
分かれ。その耳は飾りか!?
ティールさん! お疲れ様ですっ♪」
「まだ終わってないんだけれどね。でも、ありがとう。ツバサ」
ツバサちゃんに向かって柔らかな笑顔を浮かべ─私にはそんなの一切なかったのだが─、部屋に入ってくる。そして、ずいっとトートバッグを私に差し出した。
「これ、預かりもの」
「えっと。何だろ……はっ!? もうこれ以上の仕事は嫌だよ!?」
「その考えはある意味間違ってないね。うちの運び屋が持ってきてた」
……あぁ、着替えか。
先程、メンバーの一人であるクラウに連絡したら、「そういうことなら持っていきますよ~♪」と快諾してくれたのだ。思ったより早かった。
「連絡くれれば、こっちに入れたのに」
「そんなことしたら、居座るだろ」
そんなことないと思いますけど……多分。きっと……恐らく……くっ……断言ができない!
いや! 知らない人がいる手前、クラウは立場を弁える。というか、仕事があるだろう。すぐに帰っていたよ。
「どうだかね……?」
「信用ないなぁ。まあ、いいや」
ちらりと中身を確認したが、普段使っているもので問題なさそうだ。今はまだ必要ないため、元々持っていた鞄近くに置いておこう。
ティールを出迎えていたツバサちゃんが私の近くに寄ってきて、小さく首を傾げる。
「ラルさん、それを着るんですか?」
「ん? うん。生徒として出る訳じゃないからねぇ……ツバサちゃんがパフォーマンスしたときに私服に着替えたのと同じ理由だよぉ」
片割れがどうするのか知らないけれど、あいつの場合、最悪、無からでも作り出すだろう。私は知らん。
私とツバサちゃんが話しているところで、アラシ君とティールはまた別の話をしているらしい。
ティールがこのあと、ラルの仕事をやるのか」
「まあね。本当はぼくよりもラルの方が頼りになるんだけれど、流石に試合しながら、見えない外の指示までは無理だから。で、どうするの? ぼくらの代わり」
私の代わりをするのは、ティール。しかし、ティールのポジションとフォース君のポジションが空いたままなのだ。ここまで来ると、ティールのポジションは空いていても問題はないけれど……念のためという言葉がある。そして、私はそれなりに慎重派なのだ。
「あー……それなんだけどね、リリちゃんに片方投げちゃおうかなぁと」
「ほわっ!? 私ですか?」
突然の指名に第三試合の結果をモニターで見ていたリリちゃんは、ぴゃっと飛び上がる。こういう場面で、リリちゃんが救護室を離れるなんてあまりなかった事態だからだ。それ以外の仕事をさせられるなんて思ってもいないのだろう。
「ユーリ君とミユルちゃん次第だったんだけど、ミユルちゃんの勝利で終わったみたいだから、ティールのとこにユーリ君。フォース君のところにリリちゃんって感じ。そのために、編成も組み直した」
一応、フォース君の管轄は三年生の生徒会メンバーを多めに配置している。じゃあ、三年にやらせろよって感じではあるのだが、二年生にも経験を積ませておきたいのだ。三年生なんて、あと半年位すれば、ほぼ生徒会を抜けてしまうんだし。
「大丈夫大丈夫。大したことしないから」
「は、はうぅ……会長様がそう仰るなら」
少し困り顔なリリちゃんだけれど、芯はしっかりしている。きちんと仕事をこなしてくれるはずだ。キーくんとユーリ君の友達だからね。
「失礼します! 氷漬けになった彼を運んできました。治療をお願いします」
会場内警備係の生徒に荷車で運ばれてきたのは、ガタガタ震えるレオン君だった。そういえば、第二試合時にアリアちゃんが凍らせていたな。
「わぁ……なんか凄いね」
感想が適当なティールだが、きっとそれしか出てこないのだろう。氷山になったり、ツバサちゃんの手で花になったり。かと思えば、人を氷漬けにしたり。アリアちゃんの実力……もとい、食欲は恐ろしい。
「大丈夫か? レオン」
見るからに大丈夫じゃない相手にそれはないだろうという質問を投げ掛ける、アラシ君。そして、彼は分かってて言っているんだろう。
「だ、だいじょーぶじゃ、ねぇ」
そりゃそうだ。絶対に寒いし、辛い。
「はわわ~……ツバサちゃん、ポーションお願い!」
「はーい!」
リリちゃんの指示でツバサちゃんがポーション関係のものが置かれているテーブルまでパタパタと駆け寄っていく。Bブロック時にポーションを大量に作ったとはいえ、それらはツバサちゃんの魔法の媒体として使いきってしまった。だからといって、ポーションの材料もなくなった……訳ではないので、作ろうと思えば作れる。
「それにしても、レオンを運ぶの遅かったね」
「まあ、人一人が凍って身動きとれねぇし。……係の人に同情するわ」
そこは、やられたレオン君ではないのね。
本来であれば、突っ込むところなんだろうけれど、そんな元気は今のレオン君にはないようで、アラシ君の意地悪発言にも睨むだけで反応はない。いや、睨んでいる時点で反応はあるのか。
「ゆっちゃん負けちゃいました~……ぐぬぬ。尻尾、引っ張りの刑ですっ!」
「……予選前に先輩達に言ってたあれっすか」
ぷくっと頬を膨らませるリリちゃん。ユーリ君の負けが悔しいみたいだけれど、なぜ尻尾を引っ張るのかは謎である。どこかの場面でリリちゃん達の会話でも聞いていたのか、アラシ君は理由を知ってるみたいだが、それを聞き出す程の興味はないので、そのままスルーさせてもらおう。
「ユーリ君、尻尾の毛を抜かれるのか~」
「いやいや、リリアーナは抜くとか一言も言ってなかったからね?」
「ま、あれでも全力ではなかったっぽいけどねぇ……それに、ユーリ君の真価は単騎戦じゃなくて、裏方だから! 勘弁してあげて、リリちゃん」
「いくら会長様の頼みでも、これは譲れないのですっ! のっち出していれば……でも、おじ様のご命令で駄目だったんだっけ? のっちも違反対象なのでしょうか?」
いや、知らないけど……?
リリちゃんの言う、おじ様は、キーくんのお祖父ちゃんで、のっちはユーリ君が従わせているノワールという上位精霊だ。精霊とかそこら辺の話は、今のところあまり関係がないので省略するとして。
「できたー! アラシ!」
状態異常回復用のポーションを作り終えたツバサちゃんは、レオン君に飲ませるのではなく、一度、アラシ君に手渡した。それを素直に受け取ったアラシ君は、レオン君の口にポーションを突っ込んだ。
無言で。無理矢理。重要だから、もう一度言うが、無言である。それに動じないはずもなく、ポーションを嫌そうに見ていたレオン君が驚いたように目を見開いた。
「んぐぅっ!?」
「アラシ君の容赦ない一撃なのです~っ!」
「レオン、アシン草の苦味が嫌いなんです。昔から、全部飲むのにも時間かけちゃうくらいで……早く治したかったら、ああするのが一番なんですよ」
まあ、苦手なものは誰にでもあるけれども、アラシ君も予告なしに無慈悲である。
「そのままよりポーションの方がましだけど、独特な苦味は残るよね……ラルも苦戦してるもんね?」
ティールは、私があれこれオリジナルポーションを作るのを知っている。そのため、どう頑張っても消えない苦味消しに挑戦しまくる私を知っているのだ。
「どれを混ぜてもねぇ……後味がねぇ」
世に出回っているレシピよりは消えているとは思うけれど、全くしないとは言い切れない。なんとも難しい話である。やり過ぎると、ポーション自体の効果が変わるから、無闇に手を出せないってのもあるが。
「それはともかく。友人にも容赦なく嫌なことをやってのけるアラシ君、いいぞ~♪」
「はあ!? な、何の話だ……?」
アラシ君の強行手段によって、氷から解放されたレオン君は、ポーションの苦味に咳き込みつつも、元気を取り戻したらしい。すぐに立ち上がり、アラシ君に反発し始める。
「身動き取れない俺に、あんな仕打ちねぇだろ! もう少し優しくしてくれたっていいだろー!」
「アリアの魔法を正面から受けた報いだろ」
この一言に論破されたレオン君は、矛先をツバサちゃんに変更した。
「……ツバサもツバサだ。よりにもよって、アラシに渡さなくっても」
「あう。ご、ごめんね? でも、レオン、すっごく寒そうにしてたから、早くていいかなって」
ツバサちゃんの優しさにレオン君、何も言えなくなったらしい。言葉に詰り、がくっと肩を落とした。
「自業自得。立ち回り次第で直撃は回避できただろ? そうすれば、ポーションも回避できたんだよ」
「……くっそ! アラシの癖に正論言いやがって! アラシの癖に!!」
「あ!? なんだよ! アラシの癖にって!」
「風邪引かないうちにお洋服、着替えた方がいいよ? アラシ君みたいに落ちた訳じゃないけれど、氷漬けで濡れちゃったでしょ? はいっ♪」
男子二人の会話に割り込んだリリちゃんは、レオン君にジャージを押し付けて、着替えるように促した。リリちゃんは間違ったことは言っていない。無垢な先輩の笑顔に毒気を削がれた後輩二人は、口喧嘩をやめる。レオン君は言われた通りに着替えを持って、部屋を一時退出した。
「リリちゃん、強いねぇ」
「? そうなのです? えへへ~♪」
形は違えど、キーくんとユーリ君に挟まれているから、喧嘩を止めるのはお手のもの……なのかもしれない。



~あとがき~
終わりませんでした。

次回、続けて救護室風景です。
救護室送りになったあの子が出てくる話。

レオン君に容赦ないアラシ君。嫌いじゃありませんが、アラシ君って時々、酷くない??
どこでとは言わないですが、そこでそう動いちゃうんだ~!! うわ~! って思うのは、私がアラシ君に夢を見すぎているのか……期待しているのか……?
ま、私もそんな行動知らずに取らせている可能性はあるので、なんとも言えません。ユーリとかがらっと変わるし、フォースも物事に無関心過ぎて、読者に「は??」って思わせっているかもしれませんしね。いやはや、創作って難しいね?
……何の話だ。これ。

ではでは。