satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

ポケモン盾 プレイ記

今回の更新は久しぶりに近況話として、ゲームの話をば。

先週の金曜日(15日)に発売されましたポケモン最新作、ソード&シールド!
珍しく、発売日前にぎゃーぎゃー騒がなかった私ですが、ちゃんと! 買ってます!!

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↑でぇぇん!!

シールドですね。買いました。
ということで、現在バッジ4つ(遅い)のへっぽこトレーナーな私が、つらつらとここまでの感想を述べるだけとなっています。未発表の情報等々は言わないつもりですが、一応、ネタバレ注意とさせていただきます!
世界には発売日2日後にはさっさと終わらせている猛者もいるとか……すごい…(震え)




はい! ここから、感想を述べていきます!

まず、始まりですね。グラフィックどうした!!
めちゃ綺麗やん! ピカブイにも驚かされましたが、ピカブイはなんかこう……キャラの頭身が低くて、実感ないと言うか、私の中で番外編みたいな感覚が抜けてなかったんですよね。どこまでもマスコットっぽさがあって。
んでも、剣盾は今までのシリーズって感じがすごい。(ピカブイもそうだと思うけども)
まあ、システムが従来通りに戻っているからかもしれませんが。

話がずれてますが、グラフィックがとても綺麗です。ところどころ、粗っぽさは感じる(イベントシーンとか)ものの、基本的には綺麗です。

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↑道路から見える次の町

外国って感じ。のどかな田舎生まれな主人公とライバルホップ君。
始まりの町からすぐの道路です。いやはや、綺麗で感動しました。
他の町も同様で、町並み綺麗やし、広いとこは広いし、探検のしがいがあります。そのせいでストーリー進まないのではと……思ってます…



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↑私がビックリしたやつ

主人公の部屋にSwitch置いてあるんですが、これ、私が使っているSwitchと同機種なんです。ジョイコンがね。同じやつなんですよ。
調べてみたら、使っているジョイコンが適応されるらしく、ゲーフリすげぇってなりました。
全部統一でもいいわけじゃないですか。んでも、そうせずに、使っているジョイコンを読み取って、反映させてくれるなんて……!
残念ながらSwitch Liteではできないらしいです。まあ、一体化してるもんな……その場合、黒一色なのか、赤青なのかは分からないけれど、多分、黒? と勝手に予想してます。



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↑ワイルドエリア

今作の見所であるワイルドエリアです。(私が勝手にそう思ってるだけ)
広い! ただただ広いとしか言えない!!
シンボルエンカウントが可能となっているため、あらゆるところでポケモンがうろうろしてます。進化系ですら、うろうろしてます。怖い。殺される←
レベルが目に見える訳じゃないので、強さとかもわからないけれど、奥に行けば行くほど強くなる仕様だったかな。手前でも、おっきいポケモンや進化後のポケモンはかなりのレベル設定です。序盤の入り口付近にいるのも序盤とは思えないレベルで出てきます。
もちろん、自分が強くなればなんてことない。つまり、世の中、バッジの数がものを言うのさ!!←
今回、捕まえられるポケモンのレベルが決まっていて、強すぎるとボールが投げられないようになってます。まあ、戦うことは可能なので、絶好のレベル上げチャンスとなるわけです。
弱点のつけるポケモンさえいれば、強くてニューゲーム、みたいなこともできるし、エースだけを育てたいなら、立ち回りさえ気を付ければガンガンに上がるのではと。
私は怖くてできないけどな!(笑)

あとは、ポケモンキャンプ。
好きなポケモン達に囲まれるなんてのが可能なんです。ボール投げたり、ポケじゃらしで遊んだり。みんな、かわいい……
このシステムでストーリー進まないのではと。(2回目)

ダイマックスバトル、レイドバトルはね、一人でも楽しめます。NPCが来てくれるので、ランクの低いレイドバトルなら問題ない。
けど、これがランクの高いものだと、どうなのかなって心配はある。まだやってないので、分かりませんが。
ただ、レイドバトル勝利したからと言って、必ずゲットできるわけではない。捕獲チャンスができただけで、そのチャンスも1回しかないですし。
いやこれ、心折れるよな……?



ポケモンとうちの子の話をします!
前情報がないのもあって、色々驚かされてます。誰だ、お前!!!ってのも多い。
おま、え、おまえぇぇぇ!!!!と、いうリージョンフォルムもいますし。はい。ビックリしたぜよ。
旧作のポケモンもちゃんといます。まあ、リストラ問題が結構話題となりましたが……この話はナイーブなので触れないでおこう……

御三家も最終進化、させました。私はメッソン選びました。メッソンのメッツです。理由は語感です。
なんか……あの、化けたね。見た目。
ってのが第一印象。今は「はい、かっこいいー! はい、強いー!」という、うちの子贔屓入ってます。うちのエースだよ☆
他、パーティー
アーマーガア
ウールー
ブラッキー
タンドン
ワタシラガ
ワンパチ……などなど。
となってます。え? 6匹じゃない?? 時々、入れ換えてんだよ! 決められなくて!!(笑)
それでも、固定なのはメッソン。
最終パーティーは追々、決めていこうと思います。だってまだ半分だもの。ストーリー半ばだもの。



その他。色んな話をします。
ライバル達の専用BGM、かっこよくないっすか。ジムのもいいんだけど、町のもいいんだけど。
私はビート君の好きなんですけどね。
マリィちゃん、まだ1回しか戦ってなくて、記憶に残ってないのが申し訳ない。今後、戦うときにじっくり鑑賞しよう(笑)

キャラのあれこれはありますよ。ローズ委員長怪しすぎかよとか。エール団は悪者に見えないとか。今作、悪者いないの?? 過去作みたいに悪いことしないの? とか。

そして1番のライバル枠?な、ホップ君。
実は邪魔なのではと聞きますが……行く町行く町にぽんぽん出てくればまあ、気になるよな……なんちゃって二人旅してる気分?
いやでも、私個人の感覚としては、そこまで邪魔だと思ってません。一つ一つに時間かけて、さっさとストーリー進めてないからだと思いますが。
1回だけ、「構ってちゃんかよ!!」って反応されたときは、評価を改めてやろうかと思いましたが←

最後。着せ替え。
写真でわかるかと思いますが、私、髪型とカラー変えてます。本来はダークブラウンのボブカットなんですよね。早々に髪型変更してしまった。カラーも髪型もメイクも種類豊富で楽しい!
服はね、お金ないので買ってません。クリアしてからばーっと変えようかなって思ってます。
んでもね、可愛いですよ。たくさん種類あって、自分だけの主人公にさせられます。好み爆発しそう。過去作でもがんがんに着せ替え楽しみましたが、今作でも楽しめそうです!
結論、楽しい。



こんなもんか!
ストーリーには突っ込めないので何も言ってませんが、他のことがおろそかになるレベルで楽しんでます! 楽しいよ!!
いや、やることはやってます。大丈夫。だいじょーぶ……
これからものんびりストーリー進めて、楽しみたいと思います!!
クリア後の感想は……多分、1ヶ月後! くらいに!
それくらい経ってれば、情報解禁しても問題ない、かな?
忘れてなければ、全体通した感想をつらつらと書きたいなーと思います。

さて、今週の金曜の更新ではいつも通りに戻して、レイ学の最新話! 出します! 剣技大会トーナメント戦編ですね。お楽しみに~!
……いや、次回のメインはトーナメントじゃないけど(笑)

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第90話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でゆるゆるっと過ごしている物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回からミユルVSユーリ戦がスタートしてます。一話で終わらせると言ったのはなんだったのか……
アラシ「俺とイツキ先輩のときは苦しい言い訳してたけど、あれはあれで二話構成だったよな」
し、知らない! 知らない!! とりあえず! 今回で終わる。終わらせるぞい!!
そして、前回と変わらず、第三者視点。


時はミユルが小さな狼を発見する前まで戻る。
ミユルの視界に入らぬよう、青々とした葉を揺らす木の上で、ユーリはいつも通り偵察部隊である狼達を放っていた。感覚の共有を行い、周りの把握から始めたのだ。それも大した収穫はないのだが。
「きゃうっ!」
「お帰り、ふわ」
ふわと呼ばれた、小さな黒狼は木の影に一度溶け込み、一瞬でユーリの肩へと移動する。すりすりとユーリに甘えるような行動をしてきた。
ふわは偵察部隊の狼と同じ魔法……精霊召喚魔法で呼び出されたが、偵察部隊とは全くの別個体である。ふわの方がほんの少し、力も強く、自我も意思もある。とはいえ、逆らいはしないし、人の言葉を操ることもないが。
精霊召喚魔法は自分の得意属性に属する個体……精霊を呼び出す魔法である。そのため、ユーリが呼び出せば、幻術や妨害を得意とする精霊を呼び出せるのだ。ちなみに、彼の幼馴染みであるリリアーナは、この手の魔法を使わないが、仮に彼女が使えた場合、土属性の精霊が現れる。……特殊な補助魔法の一つである。
「きゃう?」
「呼ばないよ。ノワールはルール違反でしょ」
ノワールもユーリの精霊召喚魔法で呼び出せる精霊である。しかし、普段使う名もなき狼達や、ふわよりもノワールは上位の存在であり、それに見合うだけの強さと能力を兼ね備えているものの、強力故、扱いが難しい。また、リンドウの条件に当てはまるのか微妙なところである。己の力を示すのに、ノワールを放っていいものか、と。
「今回は僕だけで頑張るよ。……さて、死角や地形把握はいいかい?」
この言葉にふわは元気よく頷く。
「いい子だ。勝てるか保証はないけれど、せっかくの機会だ。試す価値はあるよね」
満足な攻撃魔法もないユーリにできるものと言えば、幻術とデバフ魔法……それと、補助魔法だけだ。これらをどうにか組み合わせて、ミユルに立ち向かわなければならない。
「くぅ」
そう言うなら、約束なんて捨ててしまえと言わんばかりの不満そうな声が聞こえてきた。ごもっともな意見である。
「分かるよ。けど、僕はね、イツキの二の舞になりたくない。春時雨、抜いちゃって……」
春時雨は、アラシを場外へと追いやった際に使用した武器のことだ。詳しくはユーリにも分からないのだが、リンドウ曰く、一族に伝わる名刀であり、業物であるらしい。そんな刀を持っていた理由は戦場に触れさせるためとか、イツキに慣れさせるためとかなんとか。色々、複雑な事情があるらしいのだ。しかしまあ、余程のことがない限り、抜いてはいけないため、今回の試合でも使うなと釘を刺されていた……はずなのだが。
「……ま、イツキは知らない。今日帰ってお仕置きコースだね」
「あ、あう……」
「さて、やろうか」
するりと木から降りると、決して大きくない魔法陣を発現させる。すると、そこから何匹かの小さな狼が現れ、狼達に一言命令した。
「僕の幻術でお前達を隠す。ふわの合図でノフェカさんに気付かれ、攻撃を受けろ。そうすれば、僕のかけた魔法……呪いが発動するから」
「あうっ!!」
頼もしい返事を聞き、ユーリはそっと微笑む。肩に乗るふわから受け取った情報も甘味し、呼び出した狼達を配置した。最後に乗せていたふわを地面に下ろし、首に巻かれたリボンと予備の魔力糸の確認をしつつ、そっと一撫でする。
「頼める?」
「きゃう」
小さく一鳴きすると、ふわは木々の影の中へと消える。ふわへと合図はユーリがしなければならない。全体の配置が終わらなければ、意味がない。それをタイミングを計るため、放ったままの偵察部隊の視覚情報を回収していく。
「……配置が終わったら、偵察隊を消して……よし。頑張る」
そして、この数分後、ユーリはふわへ合図をし、自身はミユルに近づくために移動を開始したのだった。

そして、時は今。
彼の考えた作戦は概ね成功したと言ってもいいだろう。ユーリの思惑通りに事が進み……順調に進みすぎて、逆に何か恐怖を感じつつも、ミユルを見下ろした。『混乱』と『毒』を仕掛けるというユーリの魔法は成功しているようだ。
「……あの狼達に仕掛けたのね。呪いを」
「えぇ、倒した相手を状態異常にするように。デバフなんて呪いみたいなものですから」
「流石ね、デバフ特化の黒の魔法使いさん。高校生で……ここまでの効果は出せないわ」
「お褒めいただき光栄です。……さて、どうしますか? 続けるならお付き合いします」
しかし、ミユルにかけたデバフはとてもではないが、戦闘するには難しいだろう。混乱で視界は上手く機能しないし、目眩も引き起こす。毒も時間が経てば経つ程に威力を増していく。長期戦には向かないはずだ。ミユルに回復する手段があり、治せるのなら話は別だ。その場合は、遠距離でどうにかできる相手ではなくなるため、どうにかして接近戦に持ち込むしかないが。
「……どうする、ですって? うふふ。もちろん、続けるわ。……だって」
ミユルがゆっくりと立ち上がり、ユーリの方を見据える。にっこりと、笑みを浮かべながら。
その笑みに何か引っ掛かるものを感じた。何がとは言えない。言えないが、何か忘れている。重要な何かを忘れている。……そんな感覚をユーリは感じていた。その思考の海から無理矢理引き戻してくれたのは、草むらの影に隠れたままのふわの声だ。
「がううっ!!」
「……! しまった! そういうことか!」
黙って微笑み続けるミユルに向かって、ユーリは回転を加え、回し蹴りを繰り出す。ミユルはその攻撃を避けもせず、受け身も取らぬままに吹き飛ばされた。文字通り、跡形もなく吹き飛ばされる。
……否。ミユルだったものが、吹き飛ばされたに過ぎなかったのだ。
「まだ、戦えるもの♪」
ユーリの背後から聞こえてきたのは、穏やかな少女の声。そちらをゆっくりと振り向けば、目を閉じ、変わらぬ笑みを浮かべるミユルがいた。
「……樹妖精の能力を疑うべきだったか」
「ご明察。私が森を造った時点で警戒すべきだったのよ、ユーリくん?」
先程、ユーリが攻撃したものは、ミユルの偽物。彼女が操る植物で作り出した人形だったのだ。魔法でも、術でもなく、ドライアドのミユルだからできたことであった。
樹妖精は植物と会話し、交流が可能だ。しかし、ごく稀に、森と感覚共有を行う能力を持った樹妖精が産まれるという。ユーリはそれを知識として知っていたのだが、その稀な存在であるのがミユルなのは知らなかったし、その可能性すら考える余裕もなかった。
「例え、自分が産み出した一時的な森……『ツクリモノ』でも、『森』には違いない。だから、ユーリくんのデバフも効果がない……なんて、言えたらかっこよかったんだけれど、感覚を繋いでいるから、全くではないのよ。毒は防げたけれど、混乱までは無理だった」
目を閉じて会話するのは、視界が狂ったままでは、歩くのもままならないからなのだろう。そう考えると、ユーリの作戦はあながち失敗したとは言い切れなかった。しかし、半分以上を防がれたのは事実である。
「そういう……っぁ!」
全身に痺れを感じた途端、手足の感覚がなくなり、ふらりと体を揺らす。どうにか無抵抗に倒れるのだけは阻止するものの、地面に膝をつけてしまった。
「ふふ。そろそろ効いてきたかしら?」
「……はめ、られたって、ことか」
ユーリの足元には黄色い花を咲かした植物が風に揺れていた。痺れで口を開くのにも一苦労な彼に代わり、ミユルが口を開いた。
「ユーリくんも知っているよね? それはパリラ草。別名、『麻痺草』……基本生息地は風のない洞窟内部。麻痺直しの薬草だけれど、ほんの少しの風でも見えない花粉が飛びやすく、その花粉には……」
「重度の、麻痺を……ひき、おこす」
ユーリの答えにミユルはにこりと笑う。
植物は扱いを違えば薬にも毒にもなりうる。パリラ草もその一種である。授業で習う、誰でも知っているような常識だった。
「今度は私が言う番ね。……どうする? 続けるならお付き合いするわ」
続ける選択肢はあるにはあった。ふわを通じて、ノワールを呼ぶ。この状況なら念じさえすれば、闘争心の強いノワールは引き寄せられるように現れるだろう。また、ふわの糸を利用すれば、何かしらの隙を窺えるかもしれない。
しかし、そこまでして勝ちたいとは思っていないのが本音だ。元々、勝ちには拘っていなかった。その結果がこれなのだろう。
言うことを効かなくなってきた身体に鞭打って、不安定ながらもどうにか立ち上がって見せる。ただの意地だったが、ミユルは少し驚いたようだ。
「……こーさん。むり、ですもん」
「はい。……分かりました」
ミユルはぱちんと指を鳴らすと、二人を覆っていた森は跡形もなく消えていく。それと同時に歓声も大きくなり、実況の声が会場中に響き渡った。
『デバフ対決の末、勝利したのはミユル・ノフェカァァァァ!!』
ミユルの勝利を告げる声を聞いた瞬間、ユーリは支えを失ったかのように無抵抗に後ろ向きで倒れる。受け身も取らずに地面に倒れたが、皮肉にも麻痺のおかげで痛みはない。
「試合とはいえ、手荒な真似をしてごめんなさい!……ユーリくん、これ、食べて」
ミユルは倒れているユーリに慌てて駆け寄り、口に何かを突っ込んだ。そして、ミユル自身も同じ様に何かを口にする。
「っ……ん」
口の中に広がるのはほんのり甘いものだった。それも、人工的な甘さではなく、自然の優しい甘さである。
「安心して。ナーレっていう白いお花で、状態異常を和らげる薬草なの。完全には治せないんだけれど、救護室に行くまでなら、お互いこれで大丈夫だと思うわ」
ミユルの言う通り、少しではあるが、体の自由が戻ってきた。手や口が動くのを確認し、体を起こす。
「……えっと、ナーレなんてどこから? 試合中、回復等のアイテム所持は禁止されているはず」
「大丈夫。試合中から持っていた訳じゃないから。“インベントリ”よ♪」
“インベントリ”とは別空間に物を収納できるという異次元収納魔法の一つである。手荷物要らずではあるが、かなり高度な魔法に分類される。また、世の中には異次元収納を可能とした鞄─探検隊等が使用するトレジャーバックがいい例─があるために、使い手はあまりいない。
「……無限収納、ですか。よくもまあ、そんな高度な魔法を……才能を恨みますよ。ほんと。……あぁ、忘れるところだった。ふわ、いるかい?」
「ふわ?」
ふわの存在は知らなかったのだろうか。ミユルが首を傾げる。対して、呼ばれたふわは、ユーリの影から現れ、肩に乗る……のではなく、早く立つように促していた。ナーレの効果が切れる前に移動しろと言っているのだろう。
「あの、ふわ? ごめっ……」
「きゃうっ!」
「あ、はい。行きます」
「あらあら……可愛い♪」
ミユルは、ふわが目の前の小さな狼であると理解したらしい。ユーリとふわのやり取りをくすくすと笑っていた。
それに突っ込む気にもなれないユーリは、ふわに促されるまま、足早にリングを後にするのだった。



~あとがき~
このミユルVSユーリ戦、色んな意味で難産でした。心折れかけたわ。……いや、折れてました。

次回、一回戦ラスト! シエルVSセジュ……と言いたいところですが、別カメラでお送りします~!
察しろ。消化試合だ。

前話に引き続き、こちらは丸々っと書き直ししております。しゃーなし。私個人としては、直す前の展開もむっちゃ好きやったんですよ。直す前はノワールが出てきてて、ミユルVSノワール戦をちらりとやってました。ミユル(偽物)破壊もノワールの役目。
とまあ、ノワールのお披露目はまだまだ先の話ですね。この剣技大会では出てきません。いつかは出てくるんじゃないかなぁ……きっとね。

あ、精霊召喚魔法は話の通りです。精霊召喚は大雑把な分類上、補助になるのかなぁ……と。攻撃にも防御にも補助にもなるけれど、要は助っ人召喚ですから。(謎理論)
現状、作中で使用したのはユーリしかいませんが、私の知る限りだと、リアさんとツバサちゃんも使用できるらしい。(友人談)
リアさんは分かりませんが、ツバサちゃんは近いうちにお見せできるかと。本当に。すぐにな!!

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第89話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でお気楽に過ごす物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、綺麗に一撃でアリアちゃんに負けたレオン氏! 一言!!
レオン「できる限りは尽くしたのですがっ……勝てる自信はありませんでした……っ!!」
アラシ「茶番ノリノリだな」
レオン「こうでもしないと心折れそうなんだよね」
アラシ「あ、そう」
レオン「冷たぁい」
ってことで、一回戦も後半戦! ミユルVSユーリ戦です。視点は久しぶりのユーリ中心の第三者視点。たまにはね。第三者視点も練習が必要なんやで……
アラシ「それで苦労しなきゃいいけど」
レオン「だなー」


ミユル・ノフェカが次の対戦相手だと知らされたときに思ったのは、「苦手な相手に当たった」である。彼女が出ていた予選を見て、苦手だなと感じたのだった。
ユーリが今回、参加した主な理由は「行け」と言われたからであった。当初、そこまで関心もなく、参加を深く考えてはいなかったのだ。また、戦いという行為に興味がなくなったのも、大きな要因かもしれない。しかし、ほんの少し前に剣の師である、リンドウにせっかくだからと言われてしまったのだ。
「今の自分を確かめてみるいい機会さ。同年代との差というものを知るにはね」
という勧めもあり、参加を決めたのだった。そこで出された条件なるものがあった。予選での個人ルールは、得意である糸とデバフ魔法を使わないことであった。とはいえ、糸は最終手段として張り巡らせてはいたのだが、昼休み中にあっさりリンドウにバレたのだ。咎められはしなかったものの、肝が冷えた。
それを思い出してしまったユーリは一人、フィールドに繋がる廊下で、ふるふると首を振った。
「……来てるなら来てるって言えばいいのに。先生は悪趣味だな」
そして、トーナメントに出るに辺り、出された個人ルールは糸と剣の使用不可。つまり、今、自分の使える魔法だけで立ち回れと言われたのと同義である。まあ、使えないとはいえ、腰に装備はしてあるし、糸を使うためのグローブだって着用済みだ。
「……僕の魔法だけで、どうにかなる相手だと思えないんだけれど。まあ、経験して何とやらってね」
一度、深呼吸をし、フィールドへと繋がる入口を見据える。これを潜ったら最後、勝つか負けるかの世界へと変わっていくのだ。

『一回戦も後半戦!! 第三試合を盛り上げてくれる選手の入場だぁぁ!!!』
第一、第二試合と変わらず、リュウのハイテンションなアナウンスと共にユーリとミユルが姿を現す。そして、相も変わらず、即興で作り上げている選手紹介が始まった。
『生徒会三年達からは、優秀な部下と慕われており、実は密かに女子達から人気もあるかも? 毒舌黒狼王子! ユーリ・ケイィィィン!!』
アラシ、イツキ、レオン、アリアとおかしな説明ではあったから、一応の心構えはあった。あったのだが、何も言わずにスルーできるか否かはまた話が違うわけで。
「……なんですか、その呼び名。初めて聞きましたけれど」
「そういえば、前にリリィちゃんが『ゆっちゃんは怒るとすっごく口が悪くなるんだよ!』って言っていたけど……もしかして、それってユーリくんのことかしら?」
幼馴染みは自分の友人に対して、そんなことを話しているのかと困惑する反面、それをリュウは知っているのだろうかとの疑問が浮かぶ。
「リリア情報からの創作あだ名なの……?」
「うふふ。さあ……?」
ユーリだけで終わるはずもなく、次はミユルの紹介が入る。
『続きまして! 現在は園芸部副部長の地位についているが、部長よりも強かったりするのか? 植物のことならお任せあれ♪ ミユル・ノフェカァァァァ!!』
「うふふ♪ 今までの紹介もそうでしたけど、司会をやっている三年の先輩は面白い方ですね~♪」
部活の権力についての否定はない辺り、事実なんだろうなと推測してしまう。が、それを聞けるほどの度胸も余裕もユーリにはないので、突っ込みはしなかった。しかしまあ、笑って何も言わないのが、ミユルの性格かもしれないのだが。
『さあ! これからどんなバトルを見せてくれるのか!! 開始のゴングを鳴らさせてもらうぜ!』
鐘の鳴るほんの一瞬、ユーリとミユルはお互いを見る。警戒を込めた視線ではなく、互いの健闘を祈る意を込めて。
「……よろしくお願いします、ノフェカさん」
「ええ。こうして戦うのは初めてかもしれないわね? よろしくね♪ ユーリくん」
微笑を浮かべるミユルに、ユーリは一礼で応える。顔を上げた瞬間にゴングが鳴った。
「ユーリくんは、真正面から勝てる相手ではない……だから、私に有利な環境にさせてもらうわね?」
試合が始まった瞬間、ミユルの手が腰の鞭へと伸び、素早い動作で振り上げた。鞭の攻撃が来るのかと警戒するものの、それは杞憂だったらしい。鞭は地面に打ち付けられ、バシンと大きな音を立てる。すると、淡い緑色に光る巨大な魔法陣が出現した。
「発現せよ。“グリーン・フィールド”!」
「……! フィールド変化か」
頑丈な石を加工し、造られているはずのリングから植物の芽がいつくも生え、それらは一秒毎に成長していく。数秒のうちにユーリは青々と生い茂る森の中へと誘われていた。辺りをぐるりと見回してみても、観客も人工的な建物すら見えてこない。正真正銘の自然界へと連れてこられたと錯覚してしまう。
「あ、アリアちゃんみたいな魔法じゃないから、ちゃんと試合後には元に戻るわ。安心してね?」
これは、関係者に向けられたものなのか、ユーリ自身に向けられたものなのか、判断できなかった。現状、判断する必要もないが。
それはともかくとして。
一瞬のうちに何もなかったフィールドを小さな森へと変化させたミユルに、単純に感心し、舌を巻いた。予選で見たものとはまた規模の違う魔法に、ユーリは思った通りの感想を述べる。
「流石、植物系魔法特化の樹妖精、と言ったところですかね」
「うふふ。褒め言葉として受けとるわね。……さぁって、植物さん達。お願いします♪」
その言葉を合図に、周りを囲う木々が揺れ、はらはらと葉が落ちる。その落ちてくる葉が鋭い刄かのようにユーリに襲いかかった。
「うっわ! マジか」
思わず、細剣の柄に手が伸びるものの、あと少しのところで思い止まる。バックステップで一撃を避け、二撃目以降を近くの木の幹に隠れることで難を逃れた。
ミユルの魔法で出現したこの植物ら全てがユーリの敵となる。身を隠しているこの木も、今は何もしてこないが、一秒後もそうであるとは限らない。
「……厄介だな。……あれ。実質、全方向から攻撃されるってことなんじゃ……?」
ミユルの様子を窺うべく、ちらりと影から顔を覗かせると、彼女は試合が始まってから変わらない笑顔を浮かべたまま。しかし、攻撃の手は止んでいた。
「視界にさえ入らなければ、セーフって認識でいいのかな」
ユーリの予測は当たっているようで、いくら待っても何かされることはなかった。とは言え、このままでいるわけにもいかない。今は何もなくても、別の手段で攻撃される可能性はゼロではないのだ。つまり、この間にこれからどうするか、何らかの手を考える必要がある。
「……とりあえず、いつも通りいこう」
気持ちを切り替えるようにふっと短く息を吐くと、ある行動に出た。

「私は攻撃魔法が得意ではないから、植物達の力を借りて、あぁしたのだけれど……やっぱり簡単にはいかないわね」
フィールドを有利に作り替え、ユーリに先制攻撃を仕掛けたのが試合始まってすぐの話。しかしそれは、彼の反応速度の適応内だったらしく、あっさりと避けられてしまう。現在、木の影に隠れてしまったために攻撃も通らなくなってしまった。植物による攻撃は、ミユルが視認していなければならないからだ。
このまま隠れた状態が続くとも思えないが、この硬直状態もなかなかに辛いものがあった。焦る気持ちをぐっと堪え、ミユルは目を閉じる。ユーリがすぐに何らかの行動を見せると信じて。
「……だって、ここは私の庭だもの」
どれくらいの時間が経ったのだろう。まだ一分も経っていない気もするし、十分以上経った気もする。それほど、戦闘中とは思えない程の静けさがここにはあった。しかし、ミユルには何ら関係ない。
研ぎ澄まされた感覚の中で、明確な気配を感じ取り、ミユルはその方向に向かって鞭を放った。その気配に当たりはしなかったものの、鞭が放った破裂音に驚いたのか、茂みを揺らしながら姿を現した。
ミユルの目の前に現れたのは、よく見なければ猫や子犬と間違えそうなくらい小さく黒い狼だった。長毛のため、分かりにくいが首元にリボンのようなものが巻かれているらしかった。
「ユーリくんの……?」
「きゃうっ」
愛らしく一鳴きすると、再び、茂みの中へと戻ってしまう。そこへすかさず、鞭の攻撃を試みた。すると今度は、一匹ではなく複数体が飛び出し、ミユルの周りを走り回る。この狼達が音に驚いたのか、これが彼の作戦なのかまでは検討もつかない。それでも、彼女がする行為は一つであった。
「ごめんなさい。……相手が誰であろうと、負けるわけにはいかないの!」
幸いにも、小さな狼達の動きは統率の取れた動きではなく、適当に逃げ惑うような動きだ。これならば、狙いもつけやすいというものである。
鞭で横に凪ぎ払うように小さな狼達を攻撃した。狼達にヒットし、呆気なく黒い霧となって霧散する……はずだった。本来ならば。
「なっ!?」
倒したはずの狼達は霧となっても、まるで意思を持ったかのようにミユルにまとわりつく。その瞬間、ミユルの視界がぐにゃりと歪んで、立っていられなくなった。思わずしゃがみ、自分がどうなったのか、頭を巡らせようとするも、それすらもできなくなるような強い目眩に襲われた。
「……こ、れは」
「意外と上手く行くものですね。実は半信半疑だったんですよ」
声の聞こえる方を向こうとしても、方向感覚すら狂わされたのか、そちらを見ることは叶わなかった。声の主、ユーリは続ける。
「申し訳ありません。僕の使える魔法はこれくらいなもので、卑屈な手段ではありましたが。……他にもやりようはあったんですけれど、僕はイツキみたいに割り切れませんので」


~あとがき~
これの作成時に色々ありましたが、これだけ一つ。
いいか、私!! 打ち合わせを怠るな!?(戒め)

次回、まさかの後編へ! ミユルVSユーリ!
二話構成ってなんだ……

今まで以上に書き直しをしていて、仮タイトルに二版改訂とか書いてしまう始末。意味合いとしては、ちょっとした手直しをした上で、がらっと改訂してますってことだ! なんかもう何を編集するのか分からなくなってきて、このタイトルを裏で入れていたという小話でした。あほみたいにどうでもいいわぁ……(笑)

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第88話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でのんきに過ごす物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、まさかの二話構成になったけど……よくよく考えたら、前半は説明とか挟んだし、バトル自体は一話完結だよね。←!?
とまあ、なんやかんやありましたが、アラシVSイツキ戦はイツキの勝利で終わりました。今回はレオンVSアリア戦……なのですが、ラル視点でお送りします。察して!
ラル「まさかのしゅん……」
アラシ「俺が言うのもあれだけど、やめろ」


《L side》
お昼休憩のときにリアさんからお願いされたのもあり、私は生徒会に割り振られた控え室……ではなくて、救護室にいた。場所が変わっても、やる仕事は大して変わらない。部屋の隅でパソコン広げて、現状把握と指示出しが主である。午前中と変化なしだ。
「ラルさん! 第一試合、終わったみたいですよ」
「え? あー……あー」
ツバサちゃんに言われて、モニターを見るとキーくんが地面に落ちた刀を拾って、鞘に納めているところだった。
「いっちゃーん! おー!!」
「アラシ、あんまり使い慣れてない大剣だったけど……イツキさん、すっごく速かったです」
「いっちゃんはやればできる子なんだよ!」
「はい! すごかったです!」
リリちゃんはキーくんの何なんだろう。
私のテンションがいまいちなのは、リアさんに救護室待機をお願いされたから……ではなく、イグさんからゲストのピンチヒッターを頼まれたからである。それがずっと引っ掛かっていた。ピンチヒッター自体が嫌だとかではなく、生徒会の仕事の再編成が、である。
ティールに全体統括を任せるのはいいとして、フォース君とティールがやっていた各現場は誰にやらせるよ……」
ティールに全て投げても構わないと言えば、構わない。できる素質はあるんだけれど、王子様スイッチ入って、色々と面倒臭そうなんだよな……
「はぁ~……」
「ラルさん? 元気出してください! 私、ラルさんのバトル、楽しみにしてますから!」
「あぁ……うん。ありがとう……頑張るね……」
ツバサちゃんの励ましはとっても嬉しいものなのに、心は沈んでいくなんて……
「会長様、そこまで嫌ならキッパリとお断りすればよかったのでは? いつもの会長様ならそうしていたと思うのですが……」
「知人くらいなら、無理矢理にでもあれこれ並べて蹴られるけど、イグさんは知らない仲じゃないし……私の苦手を知っているから、無理」
「イグ兄、おしゃべりが上手ですもんね~♪」
それもあるんだろうな。やれやれ、良くも悪くもいい性格をしていらっしゃる。普段は誰にでも接しやすく、好青年な雰囲気なのに、あんな場面で攻めてくるときは容赦がない。精神的にも物理的にも攻撃をしてくるものだから、侮れないお方である。味方にすれば、大変頼もしいんだけれど。
「敵に回ると嫌な人だよ」
「先生なのに、敵って……」
リリちゃんの言いたいことは分かる。けど、あえてこの言い方をするぞ、私は。
「あ、ティールさんはいつこっちに? お仕事の引き継ぎあるんですよね?」
「ん? あぁ……多分、一回戦の後半始まる前には来るんじゃない? こっちはこっちで引き継ぎしないとだから」
誰に何をやらせるかはともかく、全体統括はしてもらわないと困る。早めにこちらに来て欲しいものだけれど。
「すんません。タオルありますか~……って、ほぼ知った顔しかいない」
そんなこんなで、下らない話をしていると、救護室の扉が開けられた。やってきたのは、第一試合に出ていたアラシ君だった。魔術科の制服を着ているものの、びっしょりと濡れてしまっている。先程の試合で、場外へと飛ばされていたから、そのせいで水路に落ちたのだろう。
「わわっ! アラシ、びちょびちょ!! 待ってて、すぐにタオル持ってくるね!」
「あ、別にそこまで焦らなくても……って、聞いてねぇや」
タオルが置いてあるところまでダッシュするツバサちゃんを少しの呆れ顔で見送るアラシ君。短髪ながらも、滴る水滴が邪魔なのか、手で髪を掻き上げるような仕草をしていた。かっこいい仕草ではあったけれど、それよりも先に浮かんだフレーズを口にする。
「なんか、捨てられた子犬って感じだね」
「誰が子犬だ! 狼だから!!」
「つまり、ワイルドな子犬ですね!」
「え、ちょ、リリアーナ先輩まで!?」
「えへへ。ごめんね、アラシ君。でも、会長様のお言葉は絶対だから!」
「え、えぇ……?」
私の絶対的な味方がいるのって頼もしいな。ティールなら、注意していたところだろう。
「お待たせ! これ、タオルね。あと、こっちは着替え! 隣が更衣室になってるから、そこで着替えてきて」
「おう。サンキューな、ツバサ」
タオルとなぜか着替えのジャージを持ってきたツバサちゃんは、アラシ君にてきぱきと備品を手渡した。それらを受け取った彼は、言われるがままに部屋を出ていく。
「タオルはいいとして、ジャージなんてあったんだ?」
「はい! リア先生が水路に落ちた人のために着替えをご用意してくれたのですよ~♪」
あ、リアさんか。流石っす。
「師匠がたっくさん用意したので、まだまだありますよ♪」
えーっと、もう後半戦だから、そこまではいらないかもなぁ……?
とりあえず、滑らないようにと床の水滴を拭き取るようにリリちゃんにお願いし、私は再び椅子に座る。そこで、毎度お馴染みの声が聞こえてきた。
『続いて第二試合! 予選ではまさかの無双!? 「屋台のブラックホール」と密かに呼ばれているのにも関わらず早くも優勝候補となっている……アリア・ディィィネェェェ!!』
『……』
リュウ君のアナウンスと共に映し出されたアリアちゃんは特に何かを話すでもなく、黙りだった。また、観客に手を振る等のアクションもない。いたって落ち着いている、教室で見るようなアリアちゃんだ。……少なくとも、見た目では。
「屋台のブラックホールかー……前々から屋台の早仕舞い騒動があったけれど……もしかして」
……まさか、ね。いやいや、信じません。きっと、大盛況だったんですよ。うんうん!!
「ふー……なあ、ちょっと聞きたいんだけど」
どうやら、着替え終わったらしいアラシ君が、タオルで髪を拭きながらこちらへと戻ってきた。なぜか、怪訝な表情を浮かべながら。
「あの先輩の選手紹介って台本通りなのか?」
「ん? 少なくとも、私の台本にはないよ。リュウ君、テンション上がるとあんな感じだから、誰にも止められない。ここは諦めて、ツバサちゃんのナイトとして、これからの学園生活を謳歌してね♪」
「なっ!? 茶化すな!!」
いいじゃない。あの紹介文、嫌いじゃないよ。白狐姫の騎手様……ってね。
「やめろ!! 思い出しただけで恥ずかしい!」
「しばらくは、あのネタでいじられるのを覚悟しておいた方がいいんじゃないかにゃ~?」
「うっせ!!!」
顔を赤くして反論してあるけれど、ある意味、まんざらでもないのかもしれない。ふむふむ。
青春だねぇ~♪ 私は恋の迷路に迷える子羊の味方だぞ!
「はあ!? な、何を……!!!」
「ラルさん! 次はレオンみたいですよ~♪」
ツバサちゃんの声に私とアラシ君はモニターに注目する。アリアちゃんを映していたカメラは、相手であるレオン君を捉えていた。
『続いて! そんなブラックホールに打ち勝てるのか!? こちらも一年にして予選突破! 考古学専門の教授を親に持ち、自身も考古学バカ! レオン・エクレェェェル!!』
『にゃは♪ 考古学バカは、俺にとって誉め言葉だぞ~♪ でも、アリアに勝てる自信がねぇ……』
笑ったり、落ち込んだり、レオン君の感情の起伏が激しい。大丈夫なんだろうか。
「ツバサちゃん、ツバサちゃん。そんなにディーネ先輩はお強いのです?」
「あーちゃんは強いですよ~♪ でも、今日のあーちゃんは食べ物が絡んでいるので、もっともっと強いです」
なんだそりゃ。
「普段のアリア相手なら、レオンもワンチャンあったんだろうけど……今のアリアには勝てねぇだろうな」
「得意属性が雷のレオン君でも?」
「俊敏な猫族のレオンでも無理」
ありゃりゃ。個性全部潰されてますがな……
『そんじゃあ、試合開始ぃぃぃぃ!!!』
カーン! というゴングの音が聞こえたと思うと、今まで大人しかったアリアちゃんの目が変わった。キラリと目を輝かせ、一気に好戦的な表情になる。
『“氷双龍”』
そう唱えた瞬間、淡い青色の魔法陣が出現するも、すぐに消滅し、二つの水柱が現れる。アリアちゃんの周りを螺旋を描きながら水柱は天へと登りながら、水を氷へと変化させていく。そして、二頭の氷の龍……言わば、氷龍を出現させたアリアちゃんは、ふっと笑った。
『……行って』
その合図を受けた龍達は一直線にレオン君へと突撃する。そんな龍の攻撃にレオン君は猫族特有である俊敏さを生かして大きく真上にジャンプし、一頭の龍の体当たりを間一髪で避ける。しかし、龍は二頭いるのだ。
『おわっ!?』
避けた先でもう一頭の氷龍に体当たりされてしまい、Bブロック予選の人達のように全身氷漬け─一応、頭は氷を免れてはいる─となってしまった。あの状態から復活手段があるなら、試合は続けられるが、レオン君の諦めたような表情からして、ここまでなのは明白だ。
「レオンは脱出手段ないから、これで終わりだな」
「うん。……でも、お昼にたくさん食べたからあーちゃん、予選よりは落ち着いてたね?」
……あれでか。
「ほえ~……全く手加減なんてなかったけど……ディーネ先輩はそういう人なの?」
「いやぁ……基本、容赦ないっす。それにも加減っつーか、段階みたいのはありますね」
「何も食べてなかったら、予選以上の被害があったかもです」
いやいやいや!? やめてくれ!? あれはあれで相当迷惑だったよ!!
慌てる私に、アラシ君はにやりと笑う。
「会場全体凍るとかあったかもな」
「やめて!? 洒落にならん!!」
「だ、大丈夫ですよ、ラルさん! 今回はお母さんの結界がありますから! 最悪、お客さんの一部が凍るとか……それくらいです!」
それも安心できないんですけどぉぉぉ!?
予選で分かってはいたが、思いがけない爆弾が投下された気分である。それを知ったからアリアちゃん辞退してくださいなんて、言えたものでないが。
第二試合はアリアちゃんの勝利で幕を閉じた。今後を考えて、できれば勝ち進んで欲しくはないのだけれど、この世の中、全く持って優しくないのを知っている。ついでに言えば、アリアちゃんが負けた先を想像したくもない。
だって、食欲のためにあそこまで本気になっているんだよ? 食べ物の恨みって怖いじゃない?



~あとがき~
書けば書くほど、本文が長くなっていく不思議。

次回、一回戦、第三試合! ミユルVSユーリ!
どうなることやら……

すんなりレオン君が負けてしまいましたが、予定通りです。私が「無理! もうバトルなんて書きたくないんだぁぁぁ!!!」と、土下座して展開を変えてもらったわけじゃないです。はい。
前回が普通にバトルしていたので、あれですが。レオン君には申し訳ないけどね!

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第87話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でどたばたしている物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
一回戦(第一試合)が開始する手前でした。終わりまでいくと思ってたんですけどね! おっかしいなぁ。
アラシ「ずっと言ってる」
イツキ「だねぇ」
メインの決勝はともかく、他の試合は、一話完結だと思ってたからね。私。だからなんか……おかしいなぁって?
アラシ「適当に茶番入れるからだろ」
イツキ「視点を三者すれば終わってかもね!」
アラシ「そうっすね」
やめろー!! どっちもそう思ってたんだからー!!
アラシ「思ってたのかよ」


《A side》
『よぉし! そろそろ準備完了だな!? それでは、試合を開始するぜ!!』
カメラワークとやらの調整も終わったらしく、こここら試合開始となるようだ。俺は背中にある大剣の柄を握り、体勢を整える。イツキ先輩も腰にある剣の柄へと手を伸ばす。
……ん? あれって、本当に剣、か?
俺の疑問とスピーカーからのゴングの鐘は同時だった。そして、イツキ先輩の動き出しも、同時で。
少し離れたところにいたはずなのに、今は俺の目の前にまで迫っていた。
いや、これは……速すぎる!?
俺は柄から手を離し、後ろに大きく飛び退いた。辛うじて、先輩の斬撃から逃れる。
「いきなりっすね……! 先輩!」
「ははっ♪ 先手必勝ってね。大剣は威力高いから、さっさとケリつけたいじゃん?」
予選の武器と変わらないと勝手に判断していたが、それは間違いだったらしい。片手剣の二刀流から刀の二刀流に変わっている。背中の竹刀袋は変化ないけれど。下手すると、三本目が出てくるのかもしれない。
そして、油断していた訳じゃないが、先輩の抜刀が見えなかった。今はもう鞘に納められ、かなり手慣れている。
「予選じゃ、剣じゃありませんでした?」
「じいちゃんからの指令なんで……ねっ!」
再び、一気に間合いを詰め、同じような抜刀術を使ってくるつもりなんだろう。高速の居合いは一振りで行っているはずだ。それなら、まだ防ぎようはある。
俺は大剣を抜き、一瞬の間を置いて横に振るう。刀よりも大剣の方が攻撃範囲が広いため、これを避けるには後ろへと下がるしかない。
「あっぶなっ!」
俺の予想通り、イツキ先輩は攻撃を中断し、俺から離れている。刀は抜かれていない。ここで俺が一気に詰めれば、いける!
俺が先輩へ向かって走り出した瞬間、足元に何か引っ掛かる感覚がした。しまったと思ったときには、すでに遅く、俺は急停止をさせられていた。
「“草結び”」
「技か……! でも、俺の得意属性、知らない訳じゃないでしょう……先輩!」
俺の足に絡み付いている植物を炎で燃やし、疾走を再開。その勢いのまま、先輩に斬りかかる。それを二振りの刀で受け止められる。
「んもぉ! 植物ちゃん燃やすなんて最低だよー! 自然破壊だー!」
「どういう理屈っすか!?」
「魔法も狡いわぁ! 反対!!」
「いやいや、先に仕掛けたのは先輩だし……っ!」
つばぜり合い中にこんな会話をしている間も力は込めているが、一向に押し込められない。威力、重量は大剣の方が上なのに。
「全然足りない。……もっと本気で来いよ」
「……へっ!?」
「縛れ」
イツキ先輩の一言で後ろから植物のツルが俺に巻き付く。それのせいで、前に押し込む力が弱まり、先輩を逃がしてしまった。
「こんな試合、じいちゃんに殺されるんだけど。アラシ、大剣は扱いにくいんだろうけれど、だからって、お前の本気はそんなもんなんて、言わないよなぁ?」
なんか、雰囲気変わってるな……けど、先輩の言っているのは間違いない。手は抜いている。大剣使っている時点で、だ。それはイツキ先輩は知らないことだけど、どこか滲み出てたのかもしれない。
「……そりゃ、そうっすよ。炎は俺の得意分野っす。……先輩との属性相性は、さいっこうなんですからねっ!」
“草結び”を燃やしたときよりも激しく燃え盛る炎で巻き付いていたツルを全て燃やした。そして、俺は大剣の柄を強く握り締める。
「“ブースト”!!」
負けるつもりなのは変わらないけれど、ここで力を出しておかないと、先輩に申し訳ないもんな。……あと、先輩が本気出してくれてないのも分かるし、ちょっと本気にならないと怒られる!
“ブースト”で移動速度を上げ、その勢いを乗せた斬撃を先輩に食らわす。刀で受け止めてはいたけれど、威力を完全に殺せる訳がない。勢いに負けて、先輩は後方へと飛ばされた。このままだと、場外に出てしまうかもしれないリスクも知った上で、俺はこの選択を取った。
……イツキ先輩なら、場外で終わりにさせない。そうですよね?
「そうこなくっちゃなぁ! 顕現しろ、植物達!」
そう叫ぶイツキ先輩は、ブレスレットを淡く光らせ、大量の草木を出現させる。その草木に突っ込む形になったものの、それらがクッション代わりになったようで、自然の緑の中から顔を出した。
「あっはは! そう! そういうことだよ! いやぁ、いいね! この感じ。やっぱ好きだわ」
「……防ぐと思ってました。先輩なら」
「あ~……その信頼は喜んでいいやつ?」
「もちろん。まだ終わりにさせない……そうっすよね?」
「そりゃあね。後輩とこんなのできるの、そうそうないだろ? なら、楽しまないと♪」
ぱちんと指を鳴らして植物を消したイツキ先輩。そして、キラリと目の奥が光り、刀二振りによる連撃が繰り出される。集中して対峙している今なら、目で追えない速さではない。が、今の武器では対応しきれなかった。いつもの武器なら……双剣ならさばけていただろう。
分かっているのに、防げないってのも、結構もどかしい……!
「……っ!」
「ふっ!」
短い息遣いの後、更にスピードを上げてくる。
まだ、速くなるのか……!?
一つ一つの動作が大きくなってしまう大剣では、自分の急所を辛うじて守るのが精一杯だった。この空間ではそんな必要もないんだけど、全てを防御できるはずもない。少しずつ、押されてきていた。
きっと……この辺が頃合い、だな。
「“閃光”」
「!」
怒濤の連撃の最中、先輩は両手に持っていた刀を手放し、背中の竹刀袋から別の武器を取り出そうとしていた。……俺に見えたのはそれだけだ。
「わぶっ……!」
そこそこの位置から落とされたのもあり、大きな水飛沫を上げながら、水の中に落とされた。
恐らくではあるが、突きの攻撃を食らい、その威力を相殺できずに、そのまま飛ばされてしまった。相殺しようと動かなかったってのもあるが。
「ぷはっ!」
『Winner……イツキ・カグラァァァ!!!』
俺が顔を上げるのと先輩の勝利を告げるアナウンスは同時だった。とりあえず、目的は達成されたと言っていいだろう。……アリアの氷漬けから回避するという目的は。
にしても、最後、俺はどんな武器でやられたんだ……? 角度のせいか見えなかったんだけど。
「ごめーん! そこまで飛ばされるとは思わなかった! 大丈夫!?」
リングの上から、イツキ先輩が手を合わせて申し訳なさそうに謝っていた。このあと謝るのは俺なんだけれども……
「大丈夫っす! 先輩、準決勝進出おめでとうございます」
「ん……お、おぉ! ありがとう~♪」
一瞬、何か考えるような表情になるも、すぐにいつもの先輩に戻った。
先輩の腰には投げ捨てた刀が納められていて、手に持っているわけでもなさそうだった。俺を突き飛ばした武器はすでにしまったのだろうか。
……機会があれば、聞いてみるか。
何にせよ、俺の初となる剣技大会はこれにて幕引きというやつだ。締まらない最後ではあるが、イツキ先輩とはなかなかに楽しかった……かもしれない。



~あとがき~
終わってみたら、こちらも3000字越え。分割して正解ですね。

次回、レオンVSアリア!
これは一話で収められるだろ。

いつものアラシ君ではないにせよ、イツキはなかなか強かったみたいですね。まあ、双剣使いver.のアラシ君にはそれなりに立ち向かえても、結局はあしらわれるのでしょうが。本来はそれくらいの差はある……のかな? どちらにせよ、アラシ君が本気を出せばの話でしょう。アラシ君の親じゃないんでハッキリとしたことは言えませんが。
イツキの創造者として彼の話をすると、ラルに見込まれるくらいの強さはあると思ってくれれば。それはユーリも同じですね。二人の戦い方に差はありますが、純粋な力比べというか、総合力は同じくらいかなぁと。
武道一家の血を継ぐイツキのポテンシャルは、西洋武器より、東洋武器の方が発揮する。それだけのことです。剣より刀の方が彼には合っているのです。普段使いはしてませんけどね。「剣の方がなんかカッコいいよな!」みたいなお馬鹿丸出しな理由で、片手剣(片方に刃がついているのではなく、両面についているやつ)を使用しています。
まあ、武器に関しての才能はある方なので、どれ使ってもそれなりに使える子なんだけどね。この話はどこかでしましたね。

ではでは。

空と海 第228話

~前回までのあらすじ~
トレジャータウンにて、何やら不穏(?)な噂が漂っていますが、何事もなく済むのでしょうか……?
フォース「逆に聞くけど、済ませる気はある?」
……(目線逸らしーの)
イブ「作者さん……」
チコ「なんかこの三人でのお話ってあんまりないから、ちょっと楽しみだけどね」
チコちゃん……! いい子!!
フォース「誤魔化されんなよ、チコ。作者のノリに合わせると、とんでもないことにしか巻き込まれないぞ」
イブ「そうだよ。気を許したら最後、ぱくっと食べられちゃうよ!」
チコ「え!?」
あ、あの……私って一体……?


ギルド近くにある十字路に集合した私達とすーくんは、ここまでの情報を整理することにした。とは言っても、大したものはないんだけれどね。
「なんか、色んな噂があるみたいなんだけど、すーくんは親方さんから何か聞いた?」
ギルドから出てきたすーくんは淡い空色のマフラーを緩く巻いて、白のリボンで目隠し状態。前みたいに目の色を変えればいいのにって思うんだけれど、それはそれで疲れる、らしい。目隠ししても動きに衰えはなく、戦力としては申し分ないから、どっちでもいいけど。私的にすーくんの目が見えないのは、いつも以上に表情が読めなくて、何を考えているのかが分からなくて困る。
そんなすーくんは、私からの質問に一言だけ返した。
「うんにゃ」
「……ほんとにぃ?」
「ほんとに。ま、おれ的には興味ないからどうでもいいけどな。お前らの聞いたって言う悪魔とか幽霊とか、いてもいなくても、関係ないし?」
ふぎゃー!! 言うな! 何で言うかな!?
にやりと面白そうに笑うすーくんは確信犯だ。面白がって発言してる。そりゃ、私と繋がっているから、手に入れた情報なんて筒抜けだ。仮にそんな関係でなくとも、心を読めてしまうため、どっちにしろ筒抜けですけど。
ぐぬぬ!! もうっ!
「とりあえず、入口近くまではバッジで移動しよう。ラル達、行ったことあるっぽいんだよな」
マフラーに着けておいたのだろう、探検隊バッジを取り出した。すーくんの持つそれは、スカイの探検隊バッジだ。今までに行ったことがあるところは転送装置を使って、一瞬で移動できる。ピカさん達以外にも、ソルさん達の情報もまとめてあるようで、それだけで行ける場所はかなりある。もちろん、ダンジョン内には飛べないし、ある程度の座標軸を把握していないと上手く機能しないようで、使うにはコツと慣れが必要らしい。また、チームメンバー以外には使えないようになっている。それがどんな仕組みなのかは私には理解できなさそうなので、質問していない。
そして、チームの人が承認すれば任意の人を飛ばすことはできるらしいので、私とチコちゃんも恩恵を受けられるというわけ。
「歩いてもいいけど、そこそこ距離あるしな。使えるもんは使おうぜ」
「ピカさん達に感謝して、それで行こっか。フォース、お願いっ!」
「あいよ~……んじゃまあ、行きますかね」
手慣れた動作ですーくんはバッジを操作すると、一瞬で私達は光に包まれた。その光に思わず、目を閉じる。
少し経ってから、恐る恐る、まぶたを開くと、山の入口へと移動していた。岩山ではなく、森。木々に囲まれた山林地帯だ。青々とした木々に囲まれ、夏とはいえ、そこそこ涼しい。木陰の下でお昼寝はさぞかし気持ちいいんだろうなと思うくらい、空気も澄んでいて、心地よい。
地名の名前からそうだろうとは思っていたけれど、岩山登りだったらどうしようと思っていた節はある。いや本当に、森でよかった……のかな。
すーくんはバッジをマフラーの内側へと着け直しながら、敵がいないか周りの気配を探っているらしい。探りつつ、少しの感心が含まれた声で一言。
「これ、ラルが組んだらしいんだけど、意味分かんねぇわ。探検隊連盟かなんかに売れば相当な金になるよな。一生食ってけるくらいの大金になると思うんだけど」
転送機能の話なのは一目瞭然だ。確かに、私のバッジにも転送機能はあるけれど、仲間がいった場所を共有して、他の人も行けるようにする機能みたいなものは備わっていない。そもそも、ハイテクな機能、リーダー以外の持つバッジに存在しない。
確かに、この共有機能は便利だから、これが他の探検隊達にも適応されれば、移動で時間を取られるなんてのはなくなる。もしかすれば、他の探検隊が行ったところを私達も行ける、なんてことも可能かもしれない。それはピカさんも分かっているはずだけれど、公開するつもりはないと思う。それが何でなのかは、私には分からないけれど。少なくとも、ピカさんはこの機能を作って、お金儲けしようとは思っていないのは絶対だと思う。思うんだけど……すーくんという人は。
「ゆ、夢のないことを……大金て」
「夢だけじゃ生きてけないんだぞ、若者よ」
「おじいちゃんみたいなこと言わないでよ。すーくん、見た目は若いんだから!」
「……見た目はって言ってくる辺り、心にグサッと来るよね。間違ってねぇけど」
ふふん♪ 私だってやられっぱなしじゃないんだよ!? 成長してるからね!
「あ、その主張はアホっぽい。いつものすぅだわ」
にゃ、にゃんだと……!?
私が固まっている間、チコちゃんは山道の入口だろうところへ駆け寄って、先の方を覗いていた。そして、私達を振り返り、小さく首を傾げる。
「フォース、この先に目的地あるの?」
「おう。一応、頂上に向けての看板とかあるんだけど、当てにならんらしい。ま、おれ達は、中間地点にある集落を目指すから、看板は見ないけど」
「ふうん。……なんか、色んな話聞いたけど、変な感じはないもしないよね。もっと恐ろしい雰囲気なのかって思ってたけど、自然もきれいだし、空気も澄んでるもん」
草タイプで自然が大好きなチコちゃんだからこそ、何か感じるものがあるんだろう。私には分からないが、言いたいことはなんとなく分かる。確かに嫌な空気は感じない。そこはすーくんも同感らしく、小さく頷いた。
「そうだな。敵意のある奴は感じない。……けど、少しだけ……」
すーくんはそこで言葉を止めると、ぐるっと辺りを見渡す。見えてないとは思うけれど、それで周りの空気を感じ取っているんだろう。
「……いや、なんでもない。これも関係のない話だ。さっさと行こうか」
き、気になるけど……多分、言うつもりがないものは言わないだろうから、聞いても仕方がない。今は親方さんからのお仕事を済ませよう。
「行こっか、チコちゃん。すーくん」
「おー!」
「へーい」
……なんて、言ってみたけれど、道は知らないからすーくん先頭でお願いしまーす!
てへっと愛らしくお願いをしてみたけれど、返答は呆れ混じりのため息と無言だった。すたすたと黙って先頭を歩くすーくんの背中を見て、心で一応、謝っておく。
調子乗ってごめんね……?



~あとがき~
これの月一更新を忘れていた……
そして、いつもよりちょい短め? そんな中でもフォースとイブのやり取りは好きです。

次回、ついに『シキやま』へと足を踏み入れる三人。噂の真相は分かるのか……?
いや、別に噂の追求は頼まれてないけどね!?

探検隊バッジについて、どっかで説明した方がいいのかなーと思うんですけど、ゆーて、あれですよ。ピカが色んな機能を付与しているだけで、特別なものではありません。本来は、ダンジョン内で機能するものばかりなのを、外でも使えるようにしているのがピカ自作のシステムみたいなもんですね。
それに通信機能とか便利そうなのを付け足したりもしてますね。また、複数を所有しているのは、ピカの趣味の範囲です。夏祭り編で、通信機能に特化した探検隊バッジを使うシーンがありましたが、あれもピカ自作ですね。仲間に探知されない通信機ってやつです。
いつか、まとめた方が……いやでも、必要ないか?
物語に絡むことないもんなぁ……

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第86話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわちゃわちゃっとしている物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、組み合わせが発表されました。なんか、あれですね。レオン君が災難ですね。
レオン「そう思うなら、慈悲を!」
いやぁ……君ら、幼馴染み組の参加人数多いから結局は誰かが犠牲にならなきゃじゃないですか。仕方ないんじゃないかな……
レオン「(´・ω・`)
アリアちゃん担当はレオン君なんだと思います。
レオン「う、うえぇ!?」
なんて、レオンVSアリアの話をしているけれど、今回はアラシVSイツキ戦です。視点はせっかくなのでアラシ君。


《A side》
放送にあった通りフィールドに向かうため、俺はその場で立ち上がる。とりあえず、準備時間があるから、武器を取りに行く必要がある。俺もレオンみたいに瞬時に取り出せなくはないが、他の奴らと比べて魔力量に自信がないため、無駄に消費したくないのだ。抑えられるところは抑えなければ。
「よっしゃー! んじゃ、頑張りますかね! 見てろよ、ユーリ! 勝ったらやきとり買って♪」
「え……優勝したら考えなくはないけど」
「それ、絶対に買わない人のセリフだよな。つか、優勝はもっと豪勢なもん買え!……まあ、いいや。また後でな。アラシー!」
魔法を使わないイツキ先輩は近くにあった自分の武器─恐らく、予選で見たもの─を素早く手に取ると、部屋を出ていく。
「……アラシくん、どうするの?」
ミユルの質問に俺は答えられなかった。俺はちらりとアリアを見る。変わらず、興奮した様子で……事情を知らない人から見れば、大会を楽しんでいるようにも映るかもしれないけれど、ウキウキしているらしかった。
……さて、俺はどうすべき……なんだろうな?

準備時間も終わり、放送部によるアナウンスが聞こえてくる。放送部から案内があるまでは、出入口付近で待機しておけと言われたから、俺は一人で言われた通りに待機していた。そのせいで、会場の雰囲気だとか、そういうもんは伝わってこないけれど、観客の歓声は聞こえてくる。盛り上がってんだろうな~……なんて、判断はできるくらいに。
『さあさ! 大会も後半戦突入だ! ここで、トーナメントの詳しいルール説明をしていくぜ!! 相棒!』
『ひゃい! えっと、予選の時とほぼルールは変わりません! 戦闘フィールドは会場中央のリングです。制限時間は三十分! 武器使用と技使用者は魔道具使用はOK……ですが、他の道具は不可能です。片方が戦闘不能、あるいは降参宣言。または、場外に出てしまうと試合終了で、そこで勝敗がつきます』
一対一になった以外はルールに変更点はなさそうだな。
『さっきも言ったが、後半は素敵なゲストが参加予定だからお楽しみに~♪ いやぁ♪ 俺としてはトーナメントもさることながら、ゲスト登場が待ちきれねぇや!』
あ~……ラルとフォースのことだな。ま、これはその場にいた俺達しか知らない情報だし、それを知らないだろうミユル達にも言わないようにしておこう。
『さぁって! そろそろ本題に入るぜ! 一回戦、第一試合の選手の入場だあぁぁ!!』
……よし!
軽く深呼吸をし、しっかりと前を見据える。そして、戦場へと歩を進めた。
視界が明るくなり、俺の耳には直に観客からの歓声が響いた。そして、目の前には楽しそう笑うイツキ先輩。
先輩とは、部活内で乱闘の練習することもあるが、こんな風な試合は初めてだ。乱闘のルールの一つに魔法や技の使用は禁じているから、今回は普段と違う戦闘ができるだろう。
周りに手を振っていたイツキ先輩と目があった。互いに、目線を合わせ、小さく頷く。いい試合にしようという意志が伝わってきた。
そんなやり取りの中、テンション高いリュウ先輩の声が聞こえてきた。
『初参加でのまさかの予選突破! 我らがイグニース先生の弟であり、剣術部期待の次期エース! そして何より、学園で噂の愛しの白狐姫の騎士! 魔術科一年! アラシ・フェルドォォォォ!!』
「って、なんだその紹介はぁぁ!? 人がせっかくいい感じな雰囲気出してるときに! ってか、し、白狐!? ナイトって何!!!」
選手同士、士気を高め合っているときに何言い出してんだ、あの放送部!? いや、部長の独断か!? ある意味、間違ったことは言ってはいないけども、どこ情報なんだよ。おい!?
『続きましてー!』
「聞こえてんだろ、こっちの声! 無視してんじゃねぇ!!!」
しかし、この呼び掛けにも答えることはなく、さっさと進めてしまう。この流れでいくと、次はイツキ先輩……?
『我らの生徒会のメンバーであり、こちらも剣術部所属! 昨年の剣術部大会では舞の部、審査員特別賞を受賞! ある人物から「あいつは頑丈だから容赦なく叩きのめしてもいい」という伝言も預かっているぞ! 冒険科二年! イツキ・カグラァァァァ!!』
いつだったか、幼馴染みがどーのって先輩達がやり取りしていたのを聞いた記憶がある。……その幼馴染み、ユーリ先輩、かな。ツバサと同じようなほんわかリリアーナ先輩が言うようには思えないし。
「よろしく~……って、その伝言! いつ聞いたんすか!?」
『ちょっと前に選手紹介の参考になればと思って、色んな人にアンケートしてたんだぜ☆』
「ユーリの馬鹿ー!!! ってか、俺はアンケートされてない!! ユーリのあれこれ教えるのに!」
そこなんだ……って!
「なんでイツキ先輩の呼び掛けには答えるんだ!? 俺も言いたいことあるんすけど!! おい!? 聞け、放送部部長!!」
『さあ、開始のゴングまであと少しだぜ!! カメラワークの調整中だから、ちょっと待っててな!』
「無視すんなーー!! ここまで来るとわざとだろ! そうしろとか言われてるだろ!? レオンか!? あいつか!!」
身辺にアンケートなんて取ってたら、そうとしか考えられないんだけど。くっそ。なんだよ……!
「……そいやぁ、アラシ、今回は大剣なんだね?」
「へあ!? あ、あー……実はこれを機に練習しよっかなって。こう実戦に近い試合なんて早々ないですし……相手も知り合いだから、いいかなぁ……なんて」
先輩の言う通り、俺のベルトには普段使う双剣の類いはなく、代わりに背中に大剣を背負っていた。
「ほーん? ま、練習は大切だもんね!」
「なんかすんません」
「いいよ。俺も大剣の相手なんてあんまりしたことないし、いい経験になるから♪」
心優しく許してくれたイツキ先輩に向かって、俺はやんわりと微笑む。
……イツキ先輩に言った内容は嘘ではない。が、一番は、この勝負に勝つつもりがないのが大きい。俺の得意なのは双剣。普段使うのも、部活で使ってるのもそれだ。もちろん、他の剣の類いも兄貴や親父に習ってはいるから、扱えなくはない。大剣もその一つではあるのだが、俺にはどうにも扱いにくいのだ。
つまり、程よく試合運びを行えて俺の負けられる武器がこれだろう……という判断だった。で、なんでそんな考えになったかと言えば、言わずもがな。アリアのせいだ。
これに勝ってしまえば、次はアリアと当たる可能性が高い。……いや、絶対にアリアは上がってくる。絶対にだ。そして、俺は奴の餌食にはなりたくない。それだけだ。
普通に双剣使って、先輩に勝ち、アリアとの勝負に望むか、大剣の練習として先輩と戦うか……そんなの後者を選ぶ方が有意義だ。当たり前だ。何が楽しくて、負けの分かっている勝負に挑まねばならないんだ。嫌だよ。俺は! 予選でもあれだったんだし!!
しかし、こうなると先輩をアリアに差し出すような形になってしまい、罪悪感がないわけではなかった。結局のところ、先輩を身代わりにしているのは変わらないからだ。それでも、予選みたいな気苦労を俺はもう味わいたくなかった。
大会終わったら、謝ろう……誠心誠意、謝罪しよう。うん。
「トーナメント前、レオンがうわーってなってたけど、どうかしたの?」
「あ、えー……まあ、一回戦の相手が苦手なやつなんで、嘆いてただけっすよ。今はもう復活してると思います」
嘆いてもアリアなのは変わらないしな。この試合中、ずっとメソメソするような奴じゃない。今頃、自分への被害を抑えるための算段でも立てている……だろう。多分。即降参が一番、被害ない気もするけれど、トーナメント進んでそれはないだろうな。
「ま、いい試合にしよ! お互い、悔いなくね」
「うっす!」
元気よく挨拶はしたけれど……俺、負ける気満々なんだよな……すんません。ほんと。



~あとがき~
まさか、二話いくとは……始まるまでが長かったか。

次回、アラシVSイツキ!

本当は一話に収めるつもりだったんですけど、バトル描写だけで2000字越えしてしまい、泣く泣く二つに分けました。申し訳ない。バトル入るまでに3000字越えなんすよ。おかしいなぁ……?
アラシ君視点でやっているので、仕方ないのかもしれません。

リュウ君の前口上というか、選手紹介のやつは全員分やるらしいです。他の人達のお楽しみに。
つっても、モブさんのはないけどな……慈悲なんてなかった……(笑)

ではでは!