satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第112話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で過ごす物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、大会不在だったプリン校長が帰ってきたり、仕事終わって何か知らんけど、ティールさんが夢の国行ったりと色々ありました。
今回はギャグ&コメディなんてどっか行ってるかもしれません。そんな日もあるさってことで流してくださるとありがたいですね!!←


私達以外誰もいない静かな医務室で、電気もつけずにぼんやりと相棒の寝顔を見つめていた。
しーくん達の世話は、成人組がいないためにフォース君に投げる他なかったのが痛い。なぜか電話越しなのに、土下座させられそうになるというハプニングに見舞われた。最終的には、土下座はなかったけど、盛大な文句と共に受け入れてくれた。あの文句は、「連日、二人揃ってなんなん? あり得ないんですけど」みたいなやつだと思う。だって、私もそう思うから。
「……気持ち良さそうに寝やがって」
医務室にいくつか設置してあるベッドの一つにティールは寝かされていた。誰が着替えさせたのか分からないが、Tシャツにスエットというラフな格好に変わっている。元々着ていた服は綺麗に畳まれて、近くのチェストの上に置いてあった。鞄も武器も側に置かれたままだ。こんなときに話してくれるのかは謎だけれど、物は試しにと私はティールの武器に呼び掛けてみる。
「ねえ、スイちゃん、セツちゃん。お話しできる?」
『あいっ!』
『るーなら、いーよ!』
いいのか。主でもなんでもないのに。
ティールの愛剣、スイちゃんにセツちゃんは楽しそうな声を聞かせてくれた。本来なら持ち主以外の呼び掛けに答えるのはよくないと思うのだが、これは信用されていると喜ぶべきだろうか。それとも、心を鬼にして、ティールに報告し、叱ってもらうべきなんだろうか。
どちらにせよ、今は関係ないため、この問題はそっと置いておこう。
「どれくらい、ティールは能力使ったの?」
『たぁくさん?』
『いつもいじょー?』
だろうなぁ……
ティールには“あやつり”と呼ばれる能力を保持している。これは複数の能力の総称であり、正確にはあやつりに分類される“水遊び”という能力だ。効果は至極単純で、液体を自在に操る。これだけ。水だろうがジュースだろうが、自由自在。なんなら、血液とかでも問題ないというから、操る液体に際限がない。
一滴の水滴から、その気になれば町一つ飲み込むくらい膨大な量まで操れるらしいその能力は、普通に使うぶんには問題はない。例えば、敵からの液体を用いた攻撃をピタリととめる、自分の技の軌道を変えるくらいなら日常茶飯事で使っている。
問題なのは自分の限界を越えた場合だ。技を出すにも魔法を出すにも限界はある。それと同じで、操れる限界が存在するのだ。まあ、明確に目で確認できる訳ではないし、メーターが視界の端に映るはずもないから、限界値なんて使っている本人ですら、「あ、そろそろ危ないかも?」という曖昧な認識でしかないようだ。
しかも、ティールはこの辺、鈍感なのか、元々の技量が高いのか……理由がなんにせよ、あまり気にしていない節がある。つまり、限界を知らない。知っていても気にしないのだ。
だから、稀に……本当に稀に、今みたいなガス欠状態を起こす。気を失う程度で済むならいいが、下手したら命を落としかねないのだ。ティールの場合、そうなるときはこの世界の海を一度に操る位をしないと消し飛ばなそうだが……それくらい、リスキーな能力だと私は解釈している。私が持つ“時空の叫び”なんて可愛いものだ。発動前の目眩こそしんどいが、あれで死ぬようなことはないんだから。
だから私は、『不用意にたくさんの液体を操らない』という簡単な約束をこいつと交わしている。……はずなのだが。
「……私といるときは無理に使わないくせに。なんなの、約束の意味ないよねぇ?」
『るーといるときは、あれだよー……ひつよーないからだよー』
『ひつよーさいてーげんでいーんだよー』
「それを一人の時も守れって話だよ。なんなんだよ。盛大なブーメランしやがって」
『はわわ。るー、おこらないでー!』
という、スイちゃんの言葉に嘲笑する。
「怒ってない。呆れてるの」
ティールの顔にかかる前髪をそっと払い、小さく息を吐く。
「私はさ、我儘なんだよね。……自分がこうなるならいいんだ。倒れちゃったり、怪我したりとか。私自身なら何も辛くないし、私一人の犠牲でどうにでもなるなら何だってやる。けど……仲間が、ティールがこうなってるのは見てらんないんだよ」
『るー?』
いつだって、私が無茶するときに止めるのはティール。怒ってくれるのもティールで、彼を守るのは私の使命で。
「……いなくなるなら、私だよ。私だけでいいの」
『るーがいないになったら、てぃー、かなしむよ! だめだよ!』
「もしもの話だよ。そんな状況にしないために鍛えてるんだからさ」
でも、そんな場面が目の前に現れたとき、私はきっと迷うことなく自身を捨てるだろう。元々が空っぽだから。
こんな気持ちをスイちゃんとセツちゃんに言えば、何て言われるか分からない。私は本音を隠すように笑った。
「大丈夫。いなくなるようなことにはならないよ。……だから、安心して」
『にゅ~……』
少し不満そうだったけれど、スイちゃんもセツちゃんも何も言わなくなった。
私はそっと目を閉じる。
これまでに色々言われてきて、思うことがないわけではない。きっと私は、ぱっと消えるには色んな人の記憶に残りすぎたんだろう。だから、ティールや皆は私を怒るのだ。
何かあったらどうするのか、と。
失敗していたら、取り返しのつかないことになっていたかもしれない、と。
もうあんなことはするなと。私に言う。
「けどもう、これは性分だもん。どうしようもないよ。私がいなくても世界は回るし、私はきっと、ここにはいらないから。何もなかった私は今、何かある私になっちゃったけど」
それでも、私は。
私は大切な誰かを守るために私を使う。
大切な相棒を。大好きなティールの未来のために。
「だから、その役目は渡さないよ。ティール」
無茶苦茶しでかすのは、私だけで十分だろう?



~あとがき~
きりがいいので、いつもよりは短め。そして、空海本編みたいなシリアスさ。
これ、レイ学です。学パロメインの! レイ学ですよー!!?? 生きてますかー!!←

次回、二人の夜は続きます。
まだギャグ&コメディにはもど……戻れるかな?

ちょこちょこラルの無茶苦茶っぷりはレイ学でも見せてきました。空海と大差ないってことですね。
むしろ、あれですね。明確な目的がない(空海は世界を守るという大きな役割を自覚しているので、一応の歯止めはある)レイ学ラルちゃんの方が危ういのかもしれません。それを繋ぎ止めるのは、ティールやフォースみたいなチームメイト、イグさんやリアさんといった先輩達、ギルドメンバー等々なんでしょう。ですが、彼らに危険が及べば、簡単に『自分』を手離す危うさは、こちらの方が上。よかったね、これがギャグ&コメディメインで……誰も死なない優しい世界でよかったな!! 私!!(笑)

あと、ティールの能力の話も入れました。
ぶっ倒れるくらい使いましたが、今後そんな場面はないと思います。少なくとも、そんな予定はない。

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第111話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でどたばたする物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ラルとヒマワリによる恋愛トーク? ガールズトークしてたね。今回はいなかったティールも加わり、更にあちこちいく気がします……大丈夫か、私……


ティール!」
ギルドの受付で何やら手続きをしているティールに呼び掛けると、私の声はしっかり届いていたらしく、こちらに向かって手を振ってくれた。
私とひまっちはティールと近くまで寄ると、ティールはにこりと笑う。
「ラル、話は終わったの?」
「大分前にね。ティールこそ、仕事は終わったの? 早かったね?」
「まあ、配達依頼だったからさ。討伐ではなかったし……一応は」
一応は?
じっとティールを観察すると、私の視線から逃れるように明後日の方向を見る。
ふむ。これは何かを隠しているな。
「まさかとは思うけど……やりました?」
「な、何を?」
「あら。そこまで私に言わせるかい?」
じとーっとこれでもかと睨み付けてやると、ティールは観念したようにこちらに向き直る。
「……やりました。偶然、討伐対象の群れと遭遇したもんだから……つい」
「あはは! これで私に無茶するなとか言うんだから、滑稽だよなぁ!? このやろぉぉー!! 覚悟しろ!」
「いたぁぁ!?」
油断して……というよりも、注意力散漫になっているティールに回し蹴りを入れる。いつもの彼なら、こんな蹴り、素直に受けるはずもない。
この様子を見ていたひまっちも状況を察したのか、呆れた様子で困り顔になる。
「あらあら、ティールってば。能力使ったんですの? ラルがいないのに?」
「だ、だって、五十体くらいいて、仕方なく……あぁぁ!! ラル、ごめんっ! 痛いってー!」
私は、ぽかぽかと本気でもないパンチをティールの脇腹に当てていく。
私が怒りの鉄槌(お遊び)をしている間にも、ひまっちとティールの会話は続いた。
「そのまま、家に帰ればよろしいのに」
「あ、せっかく倒したし、ドロップ品の換金と討伐したから、なんか報酬あるかなぁって思ったんだよね~」
「ラルも強かですけれど、ティールもちゃっかりしてるわねぇ……」
「貰えるものは欲しいだろ?」
ティールが王子様とは思えない発言をした後、奥からひょっこり現れたのは、今日の受付担当の─ほぼほぼ彼女だが─リンだった。
「お待たせしました、ティールさん。討伐対象の確認がとれました~……と、あら、ラルさんにヒマワリさん! ずっとお話しされてたのに、どうかしました?」
「どうもこうもない! 約束破りの我がパートナーに、怒りの鉄槌を食らわせていたところだよ!」
「いたたっ……ごめんってばー!」
一方的な暴力が目の前で行われているにも関わらず、リンは小さく首を傾げた程度で止めはしなかった。流石、フェアリーギルドの優秀な受付嬢である。
「とりあえず、ティールさんの言う通り、討伐対象として挙げられていた魔物でした。こちらで手続きをして、処理を行いますね♪」
「あ、ほんと? やったね」
「ドロップ品から魔物数も予測できましたから。処理が終わるのは明日以降ですから、また来てもらうことになりますね。……ところで、よくお一人で倒せましたね?」
「そこまで強いやつじゃないし、近くに水辺もあって立地もよかったから」
「だからって能力使うなんて聞いてないっ!! 私のいないとこで使うなぁー!」
「ごめんなさぁあいっ!」
ばしっとチョップをお見舞いしたところで、ようやく腹の虫がとりあえずは治まったので、ふんっと鼻を鳴らし、腰に手を当てる。
「帰るよ、ティール」
私に怒られてしょんぼりしてるティールの手を引き、ギルドの入口へと歩き出そうとした瞬間、ばんっと両開きの扉が大きく開け放たれる。外から差し込む逆光で、大きなリュックを背負ったシルエットだけが映る。
「たっだいまー!」
シルエットだけでは誰だか分からなかったが、今、聞こえてきた声で一瞬のうちに判断できた。
フェアリーギルドの親方、プリン親方である。
「あ、え、ただいま……って?」
「あら、ラル。知らなかったんですの? 親方、一週間くらい探検家としてお仕事行ってましたのよ」
「はあぁぁぁ!?」
親方の次は私とティールの声が辺りに響いた。当然である。つい昨日行われていた剣技大会を欠席した校長が、実は探検行ってましたなんて、誰が信じる。いや、私は信じない。信じたくない!
「え、誰と行ったの。ヒマワリ」
「ミュールさん達ですわ」
「あぁ……チャームズかぁ」
納得するんじゃない。相棒!!
チャームズとは、リーダーでセクシーなミュールさんと、メンバーの清楚系美女のサナさん、肉体派レムさんという女性三人組の探検隊だ。このタイプの違う女性が世の中の男性達のハートをがっちりと射止めているらしく、定期的にモデルの仕事やら何やらが舞い込んでくるとか。その美女達と、なぜか古い付き合いのある親方は、何かと呼び出しを受け、仕事をする。
「やぁ♪ ラル、ティール。いらっしゃい!」
私達の存在に気がついたのだろう。親方はこちらへと挨拶をしながら近寄ってきた。
「いらっしゃい!……じゃないですよ! 親方、剣技大会放置して何してるんですか。探検!?」
「うん。楽しかったよ!」
そうじゃねえ!!
「何か成果はありまして? 親方様」
というひまっちの質問に対し、親方は……
「んー……まあまあかな? ボクは楽しければ何でもいいから、成果は気にしなぁい!」
という返答をした。できれば、成果を気にしてほしいところである。
「まあ、いいです。終わったことを愚痴ってもあなたには何の意味もないですから。……では、私達は帰るとこなので」
「あ、まってまって、ラル~♪ ちょっとお話があるんだけどー」
「明日でもいいですか」
一刻も早く帰りたい私だったが、親方がそれを許すとは思えず、黙って笑顔を向ける。「え~? 親方命令だよ~?」と言わんばかりの圧だ。ここまでくると、言っているのと同義だ。
「行ってきなよ。親方がこう言ってるんだし」
私が渋っていると、ティールが苦笑を浮かべながら提案してきた。
「誰のせいで早く帰りたい欲が出てると思ってるんですかねぇ」
「それは謝るけど……まあ、大丈夫だって」
「……でも」
「ラル、行ってきてください。私が見てますから」
ひまっちにもこう言われてしまうと、私が我儘振り回してるみたいになってくる。
あーもう。なんだかなぁ……
親方の提案というか命令に頷くと、にっこにこ笑顔の親方の後ろをお供することになった。

ギルド二階にある親方部屋へと到着すると、部屋の主はバーンっと扉を開け放ち、中へと入室する。私は一礼し、それに続く。
「剣技大会、お疲れ様だったねー」
「それをあんたが言うか」
「あはは♪ ごめんね? 思いの外、探検が延びちゃって。帰れなかったんだよ~♪ 忘れてた訳じゃないよ?」
よいしょっと背負っていたリュックを下ろし、親方は部屋の正面に置いてある椅子にどっかりと座る。そして、くるくると回し始めた。
「信じられるか。あなたの代わりを理事長が勤めるという申し訳ない展開になってたんだからな。自覚しろ。自分の立場を!」
「話はノウツから聞いたよ~♪」
「あぁ、私の叫びは聞いてくれないのね……」
「ラル、ゲストさんの代わりやったんだって?」
「まあ、はい……それは仕事として請け負ったので、問題はありません」
「あはっ♪ そこは正しい判断だったね! 流石、ラル~♪ 大人~♪」
未練たらしくぐちぐち文句言ってましたけどね。
「んでも、あんまり無茶しちゃダメだよ~? “雷龍”はリスクのある技なんだから。ねー?」
ティールにも怒られたし、反省してますよ」
……一応は。今後使わないなんて約束はしない。必要があれば使うし、それで私に何かあっても自己責任だ。後悔などない。
「ほんとかなー? ま、いいや! これからは気を付けること!」
「はい。……で? 話ってそれだけですか? それのためだけに私を呼び止めたと?」
「んーん? 別件!」
親方はぴたっと椅子の回転を止める。
「まあ、大したことじゃないんだけどね。ラル、夏休みの予定どうなってる?」
「夏休み? 現時点で決まっていることはないですよ。これから予定立てるつもりです。例年通り、長期遠征でしょうね」
候補地はいくつかある。明確な場所や計画はまだないが、普段では遠すぎて行けないような遺跡やダンジョン攻略、魔物討伐をメインに稼ぎまくる激動のお仕事月間となる……予定だ。
「じゃあ、大丈夫だね! ラル、夏休みは空けといて!」
「は?」
「確定じゃないんだけど、ラル達に特別な依頼をしたいって言ってる知り合いがいてねー?」
「はあ?」
「詰め込み厳禁! いいね?」
出たよ!! よくわかんない拘束!
「夏休みは私達学生の稼ぎ時なんですが……」
「特別な依頼だから、報酬あるよ~♪ たぶん?」
たぶん!? そんな言葉信じられるかぁぁ!!
……いや、分かっている。こんな文句を言ったところで、「そう? じゃあ、仕方ないね~」と諦めてくれないのは分かっているのだ。理解している。親方の弟子入りをし、卒業してもなお、彼の下で働き続けているのだ。拠点を移さない限り、いいように使われるのは目に見えているんだ、私。諦めろ。
最後の抵抗として、大きなため息を一つつき、言いたくもないが、分かりました、と小さく答えた。
「ありがと、ラルー! ボクの方から話しとく!」
「はい。お任せします……で、誰なんですか、その人って」
「明確に決まってないから教えちゃダメって言われてるのー」
なんだそりゃ。……変な人じゃなかろうか。
「だいじょーぶ! ボクの知り合いだからっ」
親方はレイ学の校長だけでなく、ここら一帯の地域を取り仕切る人だ。領主とか、町長とか、群れのリーダーとか、なんかそんなニュアンスのお偉い様である。こんなんでも。こんなんでも!!
そのため、「ボクの知り合い」なんて、一口に言っても大勢いるのが現状。多くの探検隊や探検家の知り合いも多いし、地域を取り仕切るが故にできた縁もあるし、他のギルドマスターとの縁だってあるだろう。もう候補なんてたくさんだ。
きっと、親方の人柄も好かれる要因……なんだろうなぁ。
「分かりました。じゃあもう聞きません。詳細が決まってから教えてくださいね」
「もちろん! とりあえず、忘れないうちに伝えたかったの。よろしくね、ラル」
「了解です、親方。では、これで」
軽く一礼して、親方部屋を後にする。部屋を出ると、ひまっちが扉の前で待っていた。困ったような笑顔を見せながら。
そんな彼女の姿を見て、なんとなく状況を察した。
「持たなかったか」
「残念ながら。ティールは一人だと駄目ですわ」
「私も私だけど、ティールもティールってことだよねぇ。……で、医務室?」
「ええ。寝ているだけなので、命に別状はないですわ」
はぁ……これで私に対して文句言うんだから、本当におかしな話よね?



~あとがき~
親方の無茶苦茶命令、健在。

次回、眠るティールを見て、ラルは何を思うのか。
彼の詳しい説明は次回にやりますが、用語集のあるところを見れば、おおよその見当はつくかな。見なくても分かる人は分かる!

私、ここまで親方の容姿の描写してないなぁと思ったんですけど、まあ、考えてないからなんだけどさ。童顔っぽいってのがイメージにありました。
ノウツもしてないけど……口うるさそうな年相応な大人かな……(笑)

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第110話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でのほほんとする物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ギルドメンバーの一部を紹介しました。必要かどうかは分からない。まあ、休日回なので、好き勝手します←?


ギルドが運営するカフェへと行き、二人して好きなドリンクを頼む。ひまっちはミックスジュースで私はアイスティーだ。ついでにと言わんばかりに小さなカップケーキを一つずつ受け取り、席につく。
「はー! ノウツってば、ここぞってときに決められない人だから、あれから夕食までは悩むでしょうね~? その間に手をつけられたらおしまいなのに」
「キーくんの話? あそこではあぁ言ったけど、多分、今はどこも入る気ないよ。キーくんは」
高校生でギルドに入門している人は少なからず存在しているが、学校という教育機関に通っている以上は『学生』である。ある程度の制約は存在するのだ。キーくんの性格上、やるからには思い切りやりたいだろうし、あれはいいけど、これは駄目なんて環境が続くと爆発しかねない。
「卒業後なら来るかもね」
「あら。それなら、卒業後を楽しみにしていようかしら♪」
ほ、保証はしないけど。
「剣技大会もそうですけど、最近、どうですの? 学校は」
「ひまっちは私のお母さんか! 最近ってふっつーよ。……あーでも、イグさんの弟君とお知り合いになったり、理事長の娘様と仲良くしたりと色々あったよ」
「ラルの人間関係がどんどん広がっていきますわね。怖いくらいに広くありません?」
ひまっちの質問にアイスティーを飲みながら考える。……そうでもないと思うのは私だけ、なのだろうか。
「まあ、いいですわ。……ラル」
「んー?」
ひまっちの瞳の奥がキラリと光る。これはあれの話をする合図みたいなものだ。
「ラルももういいお年頃ですわ。……何かありませんの? 恋の一つや二つ!」
恋を二つも三つもやってはいかんだろ。
「そっち方面はなんもないよ。残念ながらね」
「まあ!? ティールと丸四年も一緒に住んでいて、なんにもないのですか!?」
何かあったら事案だろうが。
「何かあってほしかったの?」
「もちろん! 一国の王子様に恋する乙女……しかし、これには身分の差という大きな壁が存在していますの。いけないと思いつつも、二人は愛を深めていくのですわ……キャー!! 青春ですわ! 愛ですわ!!」
うえ。ひまっちの病気が始まったよ……
どこかロマンチックな展開を夢見るひまっちは、こういう、ごくありふれたおとぎ話にときめくのだ。王子様と町娘が結ばれる……みたいなやつ。きっと、いつか白馬の王子様が迎えに来ると信じて疑わない質なのだ。

しばらくの間、ひまっちの王子様談義を黙って聞き、シンプルなプレーンのカップケーキを黙々と食べていた。小さなカップケーキはすぐに食べ終わり、私は仕方なくアイスティーをちびちび飲んでいた。
「……聞いてますの!?」
私のアイスティーが残り四分の一程になったとき、ひまっちの疑うような声が響いてきた。彼女の言う通り、大して聞いてはなかったけれど、それを素直に言うほど、私は馬鹿ではない。
「聞いてるよぉ……言っとくけど、そんな講義されたって意味ないからね? 私とティールはそんな関係じゃないもん」
「本当ですの?」
疑うようなひまっちに、私は少しだけ考える素振りを見せる。はてさて、どう答えようか。
「友達以上恋人未満なの、私達は。それを嘘だとか言われても、嘘じゃない証明はできない。だから、ぶっちゃけどう思ってくれててもいいけど」
私のさっぱりとした答えに、ひまっちはぐっと言葉を詰まらせる。
「で、でも、ティールを思う不届きものはいるかもしれませんよ? ほら、よくあるじゃない。校舎裏に呼び出して~……ってやつ!」
ティールに? 今はあんまり。一国の王子ってのがバレてからそういうのはぐっと減った」
中学の頃、ずっとひた隠しにしてきた『王子様』というステータスが、高校入学してからあっさりバレて─外部入学者やティール自身の公務が若干増えてしまったのが原因─からは、周りの女子の判断は敷居が高いと認定された。その認定のお陰で、下手に告白する女子達はいなくなった。
「んでも、未だにラブレターは貰うみたいよ。どうしようって毎度困ってるから」
「捨てなさいな! フォースは!?」
「フォース君は一回読んで即破棄。呼び出しにもほぼ応じない。待ち伏せされて、ようやく告白受けるけど、即お断り」
「潔いですわ……逆に女の子に同情してしまうくらいには」
まあ、フォース君には可愛い彼女……もとい、奥さま(霊体)がいるからね。事情を知る私からすると、仮に迷うのも男としてどうなのって感じだもん。フォース君みたいな態度の方が鈴流さんも安心するというものだ。
「ラルはないんですの?」
「ラブレター? 告白?」
「両方」
「どっちもあるっちゃあるけど、ラブレターの方が……まあ、頻度高い……かな。今、私の脇をイケメン二人が固めてるからさ。早々ないよ、告白なんて度胸のある行為をする人は」
「ラルって高校入ってからティールかフォースのどちらかは同じクラスにいるんでしたっけ? そりゃあ」
「一年はフォース君、二年はティールとだね。……あ、今はないけど、ある女子達から恨み妬みのこもった愛のメッセージももらった経験はあるね」
「ふぁ!?」
ひまっちの反応に言ってなかったのか、と気づく。言わなきゃよかったかなと思いつつも、言ってしまったものは取り消せない。仕方がないので、最後まで話すとしよう。
「高校入って少し経ってからね。あ、大丈夫だよ。すぐ特定して、彼女らとはかたぁい誓約交わしたから。私個人に攻撃ならともかく、他にも被害いきそうだし? 悪い芽は摘んでおくに越したことないからにゃあ~♪」
「ラル、今、すっごく悪い笑顔してますわよ」
うん。知ってる。
一度、落ち着くためにひまっちはミックスジュースを一口だけ飲んだ。そして、何かに気づいたのか、はっと顔を上げる。
「……私、ラルとティールがくっつけばという話をしていたのに、なぜモテモテな貴方達の話になっているんですの……?」
「さあ。成り行き?」
「羨ましいですわ! 私もほしいわ。彼氏!」
「ドームと付き合えば」
「はあ!? ご冗談を! あんなガサツな適当男のどこがいいの。あり得ませんわ!」
喧嘩するほどなんとやら……なんて、言うとさらにヒートアップしそうだから黙っていよう。
「このギルドにはいい男がいないんですよ」
「じゃあ、うちのティール君あげるよ」
「いりませんわ……私となんて不釣り合いですもの。というか、ティールにはラルがいますもの」
違うっつてんだろ。
速攻でフラれたティールの他には誰かいただろうか。いやまあ、男性はいるにはいるが、きっとひまっちのお眼鏡に叶うお方はいないのだろう。
「イグニースさんみたいな好青年がいいですわ……それか、フォースみたいなクール男子……」
「どっちも相手がいる例を挙げて……好青年ねぇ……ディグとか。クール男子は……クルがいるじゃん。その辺だよ」
ディグはダグの息子くんでギルドメンバー。クルこと、レックルはギルドの道具管理を請け負うメンバーの一人。要は身内だ。
「ディグとは年離れすぎてますし、レックルは何考えてるのか分からないから無理!」
我儘だな。いやまあ、確かに、ディグは冗談だったけれども。
「……あら? あそこにいるの、ティールじゃない?」
ひまっちに言われ、後ろを振り向くとギルドの総合受け付けにティールの姿がある。地味なカーキー色のポンチョをすっぽりと被った、探検隊スタイルその一である。
というか、朝に出掛けたティールが帰って来れるくらい、ここにいたってことになるのか。



~あとがき~
多分、これで半分? いかないくらいかな? 展開的な意味では。

次回、休日回続く。

モテモテな三人。
その中でも二人のイケメンを従える(?)ラルはラルなりの苦労があったみたいですね。彼女からすれば、苦労でも何でもないかもしれませんが。
ちなみに。即特定した理由は彼女の『じくうのさけび』によるものです。ずるいね!←

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第109話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でだらだらとする物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、長かった剣技大会が終わりました!! うおぉぉー!!!
今回は休日回です。だらだらっとしますよー!
特にこれ!! という話はありませんが、ゆるっとご覧くださいな。


剣技大会後、初の休日。晴れた日の午後。そんな日はのんびりお家で過ごし……なんて、そんな休日だったらどんなによかったことだろう。
私は今、フェアリーギルドの二階。関係者専用エリアにある会議室にいた。ギルドメンバーと立ち入りを許可された人が入れる場所だ。
この場には数人のギルドメンバーが集まっていた。全員がこの場にいるわけでもなく、仕事があるとかで堂々と休んだ……いえ、やむなく休まざるを得ないメンバーが多数。まあ、これに全員が集まる必要性はないから、何かと理由をつけて欠席するのが利口かもしれない。
議題は『先日行われた剣技大会でスカウトする人材がいるか否か』である。
ギルドメンバーから卒業したはずの私がこの場にいる理由が謎だと思うが、私自身も理解していない。
今日、ティールと仕事行くつもりだったんだけどな……結局、ティール一人で行かせてしまった。大丈夫だろうか。
「……で、どう思う。お前達」
私が相棒の心配をしている横でノウツが切り出した。この質問に対し、ひまっちが口を開く。
「大会といえば、ラル、珍しく頑張ってましたわね! 剣技大会で真面目に戦ったの、初めてじゃありませんこと?」
ノウツの話はガン無視なひまっちである。
ひまっちこと、ヒマワリはギルドの先輩であり、女性探検家の一人。オレンジがかった明るい黄色の髪をバレッタを使って、綺麗にハーフアップでまとめている。ちなみに、探検に行く際は、髪をお団子にしている。
ひまっちの言葉に私は軽く考える。
出るつもりがなかったのに、なぜかゲスト参加として出場した今年の決勝戦。過去二回、大会自体に出るには出たが、どれもこれも人様に話せるような成績は残していない。そうしたのは私自身でもあるけれど。
「そうだね。ちゃんと戦ったの、初めてかも」
過去はワンパンもいいところだったし。
私の回答にガタイのいい一人の男がため息をつく。
こちらも私の先輩で、名前はドーム。ひまっちと同じく探検家の一人。薄い紫色の短髪に鍛えられた筋肉を見せつけるが如くのタンクトップ姿。彼がギルド内にいるときの仕事は警備員兼、号令係もとい、起床号令(目覚まし時計)係である。
「過去の対戦相手に謝れ、お前さんは」
「うるっせ。一年は途中で会長に捕まって、したくもない仕事させられて! 二年は自分が仕事に追われて試合どころじゃなくなったの! 被害者なの! 基本的にな!?」
「ラルって、他人を振り回す傾向がありますけれど、それ以上に他人に振り回されてますわね……」
「因果応報なのかもしれないな」
この場にいる最後の先輩、ダグ。坊主頭のお父さんで探検家のはずだが、私は彼が仕事に行く姿を見たことはない。基本、ギルドに常駐組として、依頼書の更新や整理を行っている。
「因果応報って、私が損してない? 他人に振り回されてる率が高いんでしょ?」
「そうですわね」
「ガハハ! それくらいがちょうどいいわい!!」
マジかよ。
私を含め、誰も彼もノウツの話は忘れて雑談タイムである。
「お前達ぃぃぃぃ!!! 真面目に話す気があるのか!? これは! 我がギルドの未来に! 関わる話し合いだぞ!?」
私達のいい加減な態度に耐え切れなくなったノウツが机をバンバン叩きながら、軌道修正を図った。無理矢理ではあったが、とりあえず意識が本来の議題に戻る。
私達はお互いの顔を見合わせ、数秒だけ考える。今回の剣技大会において、勧誘したいと思った生徒がいたかどうか。
その答えはすぐに出た。
「そうは言いますが、ノウツ。この会議で誰かを勧誘しようって結論になった記憶がありませんよ。不毛ですわ、この会議」
私も高校に上がり、これに無理矢理参加させられているが、「よし!! ○○を勧誘してみようか!」と、まとまった試しがない。いつもいつも、あーでもない、こーでもないと無駄に時間を費やし、出る結論が「呼ばなくていいんじゃね?」である。これを不毛と呼ばずに何と呼ぶ。
ひまっちの直球な意見に、ドームも頷く。
「そうだそうだ! 勧誘せんでいいって言い出すのはいっつもお前だしな!」
「うぐっ!?」
「それに、今年は親方様が不在のまま大会は実行されただろう。仮に見極めるとして、誰が決めるのだ? ノウツ、お前か?」
「ぬ……」
無理だろう。ノウツは来賓の方々のお世話で右往左往していた。人材探しなどやる暇なかったはずだ。
三人からの総ツッコミにぐうの音も出ないノウツが、ちらりとこちらを見る。それと同時に嫌な予感がした。
「ど、どうなんだい。ラル。今年の生徒は……?」
はい、出ましたー! 去年も見た同じ展開!!
「毎回毎回、私に聞かないでくれる? こうやって出したところで没にするだろ! あれ、結構空しいからな!?」
「ギルドの繁栄のためだ! 意見を聞くことの何が悪い!?」
「繁栄!? 十分すぎるくらいに繁栄しているだろうがぁぁ!! まだするの!? 大儲けしているくせに!?」
フェアリーギルドの収入源は、ギルドメンバーが達成、或いは私のように卒業した探検家、探検隊が達成した依頼報酬の一部が主ではある。が、所属していない探検家、探検隊からは依頼紹介料を少々いただいているし、併設されているカフェの収入もまるっとギルドのもの。ギルド内に完備されている施設も、お金を払えば誰でも利用可能で、ここからの収入もある。さらに、ノウツや親方は教師の給料だってある。
これ以上、何を望むのよ。この音符は……!
「人材育成も立派な優先業務だろうが!!」
「根底にあるのは金儲けでしょ! ノウツから育成されたなんて思ってませんし!? 金の亡者め!」
「そんなわけがあるか!! ええい! いいからさっさと言え!!」
くっそ~……まあ、いい。私が言えることは一つだけなのだから。
「今回は参加人数が多すぎる。私も参加者全員把握していないし。それに、予選ルールも個々の実力が見にくい構造だったからね。会場にいたなら別だけど、生憎、私は裏にいたんで」
会場内の警備をして、上からリングを見下ろしていたティールならもしかしたら見れたかもしれないが、手元に全参加者リストを持っているわけでもあるまい。彼もまた、把握していないだろう。
「それなら、予選通過者は?」
ようやく真面目な話をする気になったらしいドームからの質問が飛んできた。しかし、彼の質問に対しても言えることは一つだけ。
「見込みなし。……実力がないって話じゃない。単純に探検隊に興味のある子がいないってだけ。方向性の違いってやつですねぇ」
私の知る中でも、シエル君はすでにギルドに加入しているらしいし、ユーリ君も進学希望だとか。他メンバーのことは知らないけれど、アラシ君やレオン君も興味があるようには見えない。これはミユルちゃんやアリアちゃん、セジュ君にも言えることで。
「……あぁ、でも、キーくんならワンチャン」
「キーくん?」
ノウツ以外の三人が首を傾げる。誰それ、みたいな反応である。今更だがこの三人、試合を真面目に観てないな。
「イツキ・カグラっていう二年。生徒会役員の一人で探検家志望の男の子」
「イツキ・カグラ……あいつかぁ」
「にひひ。キーくんも問題児だからにゃあ~? んま、通過者の中で唯一の探検家志望の人材よ。まだ二年だけど、実力は私が保証してあげる」
キーくんがどんな人柄なのかはノウツもよく分かっているだろう。なんせ、生徒会役員で、しかも、私が仲良くしている後輩の一人だ。知らないはずがない。
「私から言えるのはそれだけ~! 以上! 解散っ!」
頭を抱えて動かなくなったノウツは放置し、私達四人はさっさと部屋を出る。
恐らく、今年も「誰も呼ばなくていいんじゃね?」という答えに落ち着くことだろう。そうでなくても、私が困るような事態にはならないため、どうでもいいんたけれど。
仕事があるというドームとダグとは別れ、私とひまっちは休憩がてら、─といっても、二人ともこのあとに仕事という仕事はないけれど─ギルドに併設されているカフェへと行くことにした。



~あとがき~
休日回くらいは短く済ませたいなと思いつつも、無理だと悟る私でした。

次回、まだ続きます休日回。

誰が誰なのか分かりますかね。まあ、分からなくても大丈夫。それはそれとして見てくれれば大丈夫なので!

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第108話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でのんびり青春する物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ぱぱーっと閉会式やりました。
今回で本当に終わるんじゃないかと思ってます。
いや、こんなんたらだらしてもしんどいだけですもんね!! さっさと終わらせます!! はい!


リアに起こされ、若干はっきりしない頭を無理矢理動かしながら制服に着替えた。ラルが寝ている間にリアとツバサが手当てをしたため、包帯やガーゼが当てられている。とはいえ、顔に傷はないため、制服のブレザーと黒タイツを着用してしまえば、全く分からないのだが。
「あ~……しんど」
『だから、言うたのじゃ。あそこまでする必要はないと』
呆れ気味の雷姫の声にラルも苦笑する。
彼女自身、あそこまでやるつもりはなかったのだ。少なくとも、フィールド上でミユルと取引をするまでは。
「あの辺はテンション上がってたんだよぉ。手加減もしたし、全力じゃないしって思ってた」
『あの妖精に絆されたか?』
「いんや。……そうじゃなくても、何かしらやってた気はするよ。“雷龍”はやり過ぎだとしてもね。さて、さっさと行かないとティールが殴り込みに来そうだから、早く戻ろう」
探検隊時の服をまとめてバッグにしまうと、それを持って更衣室を出る。そして、耳にイヤホンをつけ、インカムをオンにする。
「もっしー? 聞こえてます?」
『おー……ようやく起きたか。寝坊助~』
フォースの人を馬鹿にしたような冷やかしが聞こえてくる。反論したくなるが、彼の言う通りであるため、ぐっと我慢した。
『おはよ、ラル。ちゃんと起きてる?』
フォースの後に聞こえてきたのは相棒のティールだ。こちらは少し心配そうな声色だった。
「起きてるけど、帰ったら爆睡するわ。……来客の退場は進んでる?」
『まあ、滞りなく、ね。生徒会の三分の一くらいはそっちの見回りに回してる状態だな。で、同じように誘導とゴミ拾いに人員割いてる感じ』
『救護室では十数人くらいで片付けしてる。大がかりな片付けとか細々した清掃は後日やるから、まあ、来場者が全員いなくなった辺りでこっちも切り上げるって感じでいいと思う』
「よし。それでいくかぁ……ティールは私と合流して、学園内の見回り。フォース君は屋台の後始末よろしくぅ」
『了解。救護室出るから、更衣室の前で待ってて』
『へいへい。片付けさっさと終わらせるわ』
二人との通信を切り、全体へと範囲を広げてから再びマイクのスイッチを入れる。
「私からの連絡が遅くなってごめんねぇ。現状は把握した。こちらからの変更はないから、現状維持のまま、各自お仕事よろしく。何かあれば個別に連絡を。……もう一度繰り返すわ。このまま、各自の仕事を続けてね。任せたぞ~」
普段の指示出しよりも気の抜けたものになったが、本人は全く気にしていない。最後だというのもあるが、単純に疲労によるものでもある。
全体の通信が終わり、顔を上げるとティールがこちらに駆け寄るのが見えた。すぐに合流すると、ラルは出口へと向きを変える。
「んじゃ、行くかぁ」
「了解。ま、流石にこんな最後に問題を起こそうとする人もいないよ」
「だよね~」
テンションが上がって問題を起こされそうだが、そこは生徒会の見回りと、誘導が効果を成しているようで、毎年、大きな問題は全くないのが現状だ。しかし、それが今年も大丈夫であるという保証にはならない。だからこそ、二人も外に出て、目を光らせる必要がある。
探検隊という肩書きを有効に活用して。

ラルとティールが見回りへと向かう同時刻。
周辺のゴミ拾いとその分別を行っているユーリ達は、臨時で備え付けられていたゴミ箱の撤去を行っていた。
「ぐあー! 色々しんどぉい! 何これ! めっちゃ帰りてぇ!」
イツキが別のところから回収してきた大きなゴミ袋を両手に抱えて戻ってくる。仕事をしたくないという愚痴ではなく、単純にゴミが多くて嫌だ的なニュアンスの文句をユーリにぶつける。そして、彼から返ってきたのはたった一言。
「一人でやるからじゃん」
ごもっともである。イツキもこれ以上何か言うこともなく、黙ってゴミを地面に下ろす。
ユーリの頭上では尻尾をパタパタとさせながら、辺りを見回す白狐が鎮座している。ミユルとの試合で、重度の麻痺を受けてしまったユーリを治すために、ツバサが呼び出した精霊、“クラルナール”である。通称、くーちゃん。ラルとリリアーナが勝手に言い出した名前である。
「……その、くーちゃん、いつまでいるの?」
「さあ?」
大会中の警備の時もユーリの後ろを懸命についてくる様子は、一部の観客の中で可愛らしいと少しの騒ぎになっていた。しかし、それも決勝のゲストとして登場した、ラルとフォースの話題性に勝てるはずもなく、観客の興味はそちらに移ったようだった。白狐は自分がどう思われていたのか全く興味ないようで、最初から最後までユーリの目が届く範囲に居続けた。
「! こんっ!」
何かを見つけたのか、白狐は一鳴きすると、ぴょんっとユーリの頭から降りる。そして、何かを咥えてすぐに戻ると、ユーリにそれを差し出した。
白狐が持ってきたのは、落ちていた割り箸である。ユーリ達がゴミ拾いをしていたから、気を利かせて持ってきてくれたのだろう。
「おー? くーちゃん、ゴミ拾いできるの? 偉いな~?」
「こんっ」
「普段のイツキよりは真面目に働いてくれてるよ」
「何……俺に対して一回はトゲ刺しとかないと気がすまない? いじめ?」
ユーリは割り箸を袋に入れると、白狐を優しく撫で、手慣れた手つきで肩に乗せる。そして、ちらりとイツキの方を見る。
「こうやって言っておけば、いつか改心するかなぁって」
「改心とか必要なくね? 俺はいつだって真面目ですぅー!」
「……えぇ? どの辺が?」
「なんだよ、その疑いの目!!」
「なら、今度のテストは期待してていいんだね」
「おう。実技はいいぜ! あ、ペーパーテストは期待するなよ!?」
「勉強しろよ。自称、真面目さんなんだろ」
「こん?」
ユーリとイツキの会話に狐は小さく首を傾げるものの、考えるのをやめたのか、甘えるようにユーリにすり寄る。それに、ユーリは首元を優しく撫でることで応えた。
彼女の─と呼称するのが正解なのかは疑問だが─額の宝石が変化しているのに気づく。側に置いておけと渡されたときは黄色だったのに対し、現在は濃いオレンジに変色していた。
「……もう大丈夫ってことなのかな」
「くぅ?」
再び、こてんと首を傾げる。
「色変わってるから?」
「多分ね。粗方吸収したんだと思う」
「ふーん? そういうもんなの? ユーリも似たような精霊、呼び出せるんじゃね? デバフ回収専用精霊!」
「無理だよ。それって裏を返せば治癒魔法の一種だろ。僕には治癒の適正がないから、精霊が呼び掛けに応じない」
精霊は主の適正にあった効果を持つものが呼び出される。ツバサが治癒に長けた白狐を呼び出し、ユーリが幻術やデバフ所持効果に長けた狼を呼び出すのが何よりの証拠である。しかし、『白』のツバサならば、他の精霊も呼び出せるかもしれない。
「ユーリさーん! イツキさーん!!」
手を振りながらパタパタと駆け寄ってきたのは、“クラルナール”の主、ツバサである。主の姿を見た白狐は、ぴんっと耳を立て、ユーリの肩を降りる。そして、嬉しそうに彼女の元へと走り寄った。
「もうそろそろデバフ治ってるかなって思ってくーちゃんの回収に来たんですけど……うん。ちゃあんとオレンジ色ですね!」
白狐を抱き抱えながら、二人に近づく。ユーリの予想通りに色の変化が経過を表していたらしい。
「くーちゃん、戻っていいよ」
「こんっ」
ツバサの言葉に元気よく返事をすると、するりと彼女の腕から抜け出し、ユーリの足元でくるくる一周する。そしてもう一度、元気よく鳴くと、ぽんっと消えてしまった。その代わり、狐の額と同じオレンジ色の小さなひし形の石が地面に落ちていた。
「くーちゃん、なんか落としてったぞ……? 忘れ物?」
「お前じゃないんだからんなわけないだろ」
「これはユーリさんが受けていたデバフ効果を閉じ込めた石ですよ。そうですね~……封じたのは麻痺だから……麻痺石。『パラライズ石』ですかね?」
石を拾ったツバサは、今ここで名付けたパラライズ石をユーリの方へと差し出した。
「原理は魔力石と変わりませんが、麻痺を付加するだけの限定的な石です。封じてるのがあの重度の麻痺なので、効果は絶大だと思いますよ」
「なるほど。じゃあ、それを他の魔法と組み合わせることで幅が広がりそうですね?」
二人の会話についていけていないイツキは途中で考えるのをやめたらしい。一人寂しくゴミの分別を再開していた。
ユーリとツバサの会話は続く。
「はい! その通りですっ!……これ、ユーリさんにあげます。ユーリさん、デバフ専門だから、有効活用してくれると思うので」
「いいんですか?」
「もちろん」
ユーリがツバサから『パラライズ石』を受け取ったところで、二人の魔法談義は一段落する。
お互い、仕事に戻る空気だったが、ある人物が近づいてくるのが見えた。緑色の長い髪を揺らし、魔術科女子制服を着た少女だった。
「? ノフェカさん……?」
「みーちゃん!」
「あら、ツバサちゃんもここにいたのね?」
ふわりと緩やかな笑みを見せるミユルは、ツバサからユーリへと目線を動かした。
「実はユーリくんに用があって探していたの。……少しいいかしら?」
「ええ。構いませんよ」
「渡したいものがあって。……これなんだけれど」
そう言ってミユルが取り出したのは、入賞者に与えられるセラフィーヌ理事長の講演会参加チケットだった。
「これ、アリアちゃんのなんだけれど、彼女、興味ないみたいなの。それで、興味ある人に渡してくれって……でも、行きたがってたシルはもう持ってるし、アラシくんもレオンくんも興味ないみたいで」
「それで、僕、ですか?」
「もらってくれるとありがたいわ」
さっきから貰ってばかりだなと思いつつも、ユーリはチケットを手に取る。なぜ、自分なのか不思議に思うが、大して意味がないと深く考えるのをやめた。
「みーちゃん、みーちゃん! みーちゃんは何してたの?」
「ん? 皆とおんなじよ。校内のゴミ拾い中♪ 途中から、ユーリくん探しに変わっちゃってたけれどね。ちなみに、シルは上よ」
ミユルに言われ、その場にいたユーリ達は空を見上げる。すると、何頭かの竜が頭上を飛び交っていた。
「ゴミ運んだり、機材運んだりしてくれてるんですね。竜族は」
「自由解散だけれど、案外残ってるのよね」
「成績反映されますし、各所のアピールにもなりますから」
ボランティアとして参加する生徒は自主性を買われ、プラスにしてくれるのだ。所謂、内申点というものである。そのような邪推で参加しているのが過半数だろうが、中には善意で参加している生徒ももちろん存在する。
「中途半端な人はそれなりに反映されます。……イツキ、動け」
「動いてますー!! 生徒会に加盟してる時点でプラスだから、その加点方式関係ないし!」
黙々とゴミの分別をしていたイツキが耐えきれずに反論する。しかし、すでにユーリはイツキではなく、ツバサとミユルの方に向き直っていた。
「生徒会だからって、引かれるときは引かれるますので、お気をつけください。ツバサさん」
「はっ! はいっ! じゃあ、あーちゃんのところに戻りますね! アラシとレオンに任せっきりですので……そういえば、ラルさん、大丈夫でしょうか」
ツバサが最後にラルを見たのは、ふらつきながら着替えに行ったのが最後だった。声は先程、通信機を使って聞いたものの、やはり、姿を見ないと心配になってしまう。
「大丈夫でしょう。いつもあんな感じですから」
「ラル先輩、すること大胆だよな~♪ 俺はそういうの好きだな。ほら、噂をすれば」
イツキが指差す方角に制服姿のラルとティールがいた。見回りだからだろうか。ラルの腰には刀、ティールの腰には一つの剣が装備されていた。
そして、ティールの手にはずるずると引きずられている一人の男がいた。
「えーと……何か……したんだろなぁ、あの男の人」
「で、ですね。ラルさんとティールさんで捕まえたんでしょうか?」
「流石、会長と副会長。……僕、あの人受け取ってくる。ここは任せるよ、イツキ。ツバサさんも戻った方がよろしいかと」
「おー……えっ」
戸惑うイツキを放置し、ユーリはラル達の元へと行ってしまった。考えるでもなく、このゴミ仕分けに飽きたのだろう。
「そうですね! じゃあ、イツキさん。また学校で!」
「あら。じゃあ、私も他のところに行こうかしら。それじゃあね、イツキくん♪」
ユーリの言葉を素直に受け取ったツバサと、ユーリの意図を読んだミユルがそれぞれの方向へと行ってしまう。
「…………マジかぁ」
ため息をついても、仕事が減るわけでもない。ユーリの代わりに近くにいた仲間に声をかけ、さっさと仕事を終わらせる他ないのである。
それぞれの仕事が終わる頃には、日も沈みかけ、月と星が主役となる時間帯に差し掛かっていた。



~あとがき~
いい締め方が分からなかったので、誰かいい案教えてください……(笑)

次回、久しぶりです。休日回!
ラル視点でやるぞい。

前回と今回で小ネタ集でした。
出てこなかったフォース(声は出てたけど)やリリアーナ等々はネタがなかったってことですね。
すまぬ。いつかスポットを……!

ユーリがもらったパラライズ石の出番はあると思います。いつかね。
で、セラさんの講演会チケットネタが今後あるのかは謎ですね。……私は特に思い付かないので、ご想像におまかせします的なやつかもしれません((

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第107話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でぼけっとする物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
閉会式始まるまでの繋ぎ……もとい、これからのための伏線ばらまき回でした。
アラシ「ぶっちゃけてんなぁ」
分かりやすいだろ!! いいじゃない!
アラシ「俺は別に……?」
さてさて。今回は小ネタ回収回のつもりなので、視点は決めずにやっていくどー!!


開会式でセラや教師陣が立っていたステージに大会を勝ち抜いてきた……厳密に言えば、準決勝まで勝ち進んだイツキ、シエル、ミユル、アリアの四名の姿があった。
イツキは先程まで生徒会の仕事で走り回っていたのか、腰に剣が装備されたままで、耳から外されたイヤホンが首にかけられていた。
シエルはいつも通りの服装だ。武器もないし、特別に何かを持っているわけでもない。それが普通である。
ミユルもシエルと同様であった。武器はすでにしまってあり、体力の回復も自前のものですませてある。使った魔力までは戻らないが、この先、魔法を使うような事態にもならないため、魔力回復用のアイテムは使っていない。
そして、見事優勝を納めたアリアも、武器はとっくにしまい、ところどころ汚れはあるものの、救護室にお世話になる程の傷はない。それよりも、優勝賞品にウズウズしているため、痛みや疲れなんかも吹き飛んでいるとも言えるかもしれない。
学生四人はステージの端に立ち、出番が来るまで待機していた。ざわつく会場内を静め、最初から最後まで何ら変わらなかったリュウと、最後の最後でようやく慣れてきたキャスの二人によるスムーズな進行で淡々(?)と進められた。
そして、プログラムは表彰式へと移る。
『──では、お待たせしたぜ! 今大会の表彰式といこうか!』
粛々と行われていた閉会式の空気をがらりと変えたのは、やはりリュウだった。堅苦しい空気など知らんぷりである。
『まず始めに! 準優勝、並びに入賞者二名だな! 三人には表彰状とセラフィーヌ理事長の講演会参加チケットの贈呈だ!!』
アリア以外の三名がステージ中央へと進む。そして、ステージにセラと賞状と副賞が入った箱を持った教師も登壇する。
名前が呼ばれ、セラから恭しく受け取っていく三人。理事長直々に手渡してくるとは思っていなかったのだろう。……実のところ、校長の役目をセラが果たしているだけに過ぎないが。
『続きまして……今回の優勝者である、アリア・ディーネ先輩には賞状、講演会のチケット……そして、一年間、我が学園の食堂無料という副賞の贈呈ですっ』
キャスの言葉に待ってましたと言わんばかりにアリアが動く。興奮を隠そうともせず、セラの前に立つ。見知った相手だから許される行為だな、と思いつつ、セラは笑みを絶やすことなくアリアに賞状を手渡した。そして、講演会のチケットと無料券も。
ここが我慢の限界だったのだろう。
アリアは幼い子供のようにキラキラとした目を無料利用者を示すブローチに向け、それを天へと掲げた。
「タダーーー!!!! ごはぁぁんっ!!」
ぶれないアリアに苦笑する幼馴染みであるミユル達。事情を知らないイツキや教師陣は首を傾げているが、この場にいる全員に共通するのは、アリアを困ったように見ていたことだ。しかし、その事実をアリア本人は知るよしもない。
入賞者四人は教師の誘導の下─アリアは引きずられるような形で─、ステージを降りる。
『これで大会のプログラムも全て終了ってことで、閉会式も無事に終わったわけだ! これにて剣技大会は終了だぜ!』
先程までのアリアの大興奮の末の行動に触れることはなく、リュウは式を進めていく。ある意味、最適解である。
『あっ、帰るまでが剣技大会だから観客のみんなはゆっくり帰るんだぞ☆』
『ちょ! なんですか先輩! その「帰るまでが遠足だ」みたいな台詞は!?』
『似たようなもんだろ~♪ それじゃあみんな! see you again!』
最後までリュウらしい進行で締めくくり、会場は拍手で包まれる。流れるように退場のアナウンスを繰り返していた。
これで大会も終わり、大団円である。しかし、裏方に回る生徒会等々の係はこれで終わりではない。
「ラル。仕事の時間」
救護室に設置してある一つのベッドに寝かされていたラルに呼び掛ける。ティールの言葉に少しだけ反応するも、まだ意識は夢の中らしい。
ティールは小さくため息をつき、次は後ろの方でアラシとレオンと共にくつろいでいるフォースへと目を向ける。
「おれは勝手に動く。リーダーが起きたら指示ちょーだい」
ティールの指示を聞く前にふらりと出ていってしまう。どこまでも自由な仲間達に軽く目眩を覚えるが、これはこれでいつもの日常だ。今からそのリーダーを起こすのだから、さっさと出ていく必要があるかは謎である。
「変わらずペース崩さないわね~♪」
リアの同情にも似た呟きにティールも口には出さないものの、内心、同意する。
リアは小さく笑いながら、ラルを優しく揺り起こす。
「ラルちゃ~ん?」
「……ん~」
唸りながらごろりと寝返りを打った。寝起きはいい方であるが、流石にこの短時間で全回復は難しいため、まだ眠そうである。
「閉会式、終わったわよ」
「……まじか……おきる」
「ふふ。そうしてあげて。ティールくんがラルちゃんのこと、待ってるから」
「ふぁあい……きがえてきまぁす……」
「ラル、気を付けてよ? その辺で寝ないでね」
「はーい……だーじょぶよー」
ティールの注意に曖昧に返してきた。そして、大きな欠伸をしながらふらふらと立ち上がり、覚束無い足取りながらも部屋を出ていく。あのまま、道中で二度寝してしまいそうだが、そうなっても最悪、雷姫がどうにかするだろう。否。してもらわなければ困る。
「ラルさん、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫大丈夫。学園なんて、彼女の庭みたいなもんだから」
方向感覚や判断力はずば抜けているラルだ。うっかりドアに頭をぶつけるなんて事故は起こさないだろう。いくら寝惚けていてもだ。
「さて。アラシくんとレオンくんはどうするの? 委員会と生徒会に所属していない一般生徒は、各自解散ってことになっているけれど」
「ツバサの送迎あるし、なんか手伝いますよー! な、アラシ~?」
「ま、そうだな……ぼーっとしてても暇だし」
「じゃあ、会場内のゴミを回収してもらおうかしら。……特にアリアちゃんの。で、大丈夫かしら。副会長さん?」
リアの言葉に、ティールはラルの荷物をまとめていた手を止める。
基本、仕事のない一般生徒は帰宅して構わない。テントの解体等の大仕事は後日、全校生徒で行われるためである。しかし、志願した生徒はボランティアとして、大会の片付けを手伝うのは可能である。実際、様々な理由から自主的に動く生徒は少なくない。
「ボランティアの統率はぼくらじゃなくて、実行委員会です。けどまあ、いいと思いますよ。リア先生の指示ってことで」
「あらあら。私、そこまでの権限はないわよ♪ でも、そういうことなら、二人とも。お願いできる?」
「りょーかいっす!」
「アリア、ねぇ……まさか」
アラシの脳内に嫌な予感が過ったのだろう。アリアをよく知る彼だからこそ、簡単に予測できた。
「そのまさかよ、アラシくん? そうだ。ツバサちゃんも二人のお手伝いしてあげて。救護室の方は大丈夫だから」
「分かりました! 行ってきます、師匠……じゃなかった。リア先生!」

ツバサ、アラシ、レオンが真っ直ぐ向かったのは屋台が密集するエリア。具体的には飲食エリアである。そこには飲食スペースがあり、昼や大会が始まる前は大勢の人でごった返していたが、今はそこまで人はいない。
しかし、別の意味で大忙しに動く生徒達……屋台を運営していた店員の姿があった。生徒達は全員、ある席へと食べ物を次々に運んでいく。
「これでうちは終わり!! 手伝うとこある!?」
「こっち頼むわ!! 焼きの手が足りねぇ!」
昼の掻き入れ時以上に慌ただしいのでは、と思ってしまうくらいにてんやわんやしている。
彼らの手で運ばれた食べ物を美味しそうに食べるのは、ツバサ達の幼馴染みであり、その中でも最年長の少女、アリアである。
「あーちゃん……さっきまで会場内にいたと思ったのに」
「うわぁ……俺、恥ずかしくなってきた」
「そう言ってやるな、アラシ。……あと、あれ、毎年の光景らしいよ」
「ほえ!?」
「さっき大暴れしてたから、大食いすんのは予想ついてたけどさ。……ってか、毎年?」
「おう。ミユルが言ってたから。屋台の残飯処理班ってね」
他の客が買いに来れば、そちらに商品は渡しているようだったが、ほとんどがアリアの胃袋へと吸収されていた。
「へぇ……うーん。ゴミにならないだけいいと納得するのが正解?」
「だな。エコだな♪」
「俺もお前みたいに楽観視すべきなんだろうか」
アリアの大食いっぷりはいつものことだが、この学園内でもその真価を発揮する彼女に、複雑な思いを感じてしまう。屋台を営んでいた生徒や学園からすれば、廃棄分の経費も浮くし、とてもありがたいはずだ。しかし、人目を憚らず、食欲を満たすアリアにそれでいいのかと問いたくなる。言ったところで、一生変わらないのは理解しているが。
「とにかく、あーちゃんのゴミを分別しよ! アラシ、レオン、手伝って?」
「おう。……見ててもゴミは減らないしな」
「よぉし! やるかー!」
心地よく食事を楽しむアリアを刺激しないように気を付けながら、三人は片付けを開始するのだった。



~あとがき~
終わらなかったわ。

次回、小ネタ祭り。(後編)

まとまりがないのは、プロットがないせいです。お互い、大会後にやりたいネタを突っ込んだだけの小ネタ祭りとなっています。
ぶつ切り感凄いですが、それはそれとして、「あ、ここで別ネタ書いてるんだな」と思ってください。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第106話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でほわほわっと物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ようやく決勝戦が終わりました!! 閉会式のネタなんてないからぬるっと終わらせる予定です! はい!!
今回は久しぶりのアラシ君視点です。


《A side》
『Wiener! 勝者はアリア&ラルチーム! よって優勝はアリア・ディィィィィィィネェェェェェ!!』
リュウ先輩の暑苦しくも、よく通る声で試合終了の証として勝者の名前が呼ばれる。
両者の技同士がぶつかったあとに発生した煙のせいで、残念ながら最後の方は何も見えなかった。しかし、最終的にはミユルが倒れ、フォースは場外へと飛ばされている辺り、アリアとラルの技が決まった……とほとんどの人は思っているんだろう。
「ミユルはやられたフリだよな。そこまでダメージ負ってなさそうだし。んでも、フォースはなんでだ?」
レオンの疑問は最もだ。
アリアが勝つというシナリオを完遂させようとミユルは動いているはず─アリアを怒らせていいことがないってのは、幼馴染みの俺達がよく知っている─だから、やられた姿を見せるだけでいいはず。フォースもそれは同じで、その場に倒れるか、最悪、そこに立ってても問題はない。ミユルがやられるってのが重要なのだから。
「師匠。ラルさんの使った技、あーちゃんの龍と似てましたね?」
ツバサはフォースが飛ばされたことよりも、ラルが使った技の方が気になったらしく、リアさんを見上げて質問していた。ツバサの問いにリアさんは明確な答えを持っているようで、間を開けずに口を開く。
「あれは“雷龍”。ラルちゃんが使う技の中で一、二位を争うくらいの強力な技よ。フォースくんを落としたのもラルちゃんの“雷龍”ね。……あれって反動が使い手に結構あるから、ここで使うとは思わなかったけれど。……ティールくん? 大丈夫?」
あ、ラルの技のせいでフォースは落とされたのか……なるほど。
リアさんからの簡単な説明を聞いていた俺達は、ティールの名前が出てきたところで本人を見る。呼び掛けられたティールはにっこりと笑った。……目は笑っていないけど。
「ははっ……大丈夫か? 大丈夫なわけないでしょう。当たり前のことを聞かないでください。リア先生?」
「あらあら」
「ほんっとこっちの気持ちが分かってない。というか、ぼくの寿命をどれくらい削れば気が済むんだよ。あの馬鹿は。これで何度目だ?……あーもう!! 嫌い! そういうところ!! マジで!」
ラルみたいに最後まで捲し立てると、ぐしゃぐしゃと髪の毛を乱暴に掻きむしった。ラルに厳しい発言はいくつかしているが、ここまで声を荒らげるティールは珍しいんじゃないだろうか。少なくとも、ここ数ヶ月接してきて、俺は見たことはない。きっと、レオンもおんなじだろう。
「は、はわわ……ティールさん……!」
……うん。ツバサも初めてみたいだな、この反応からして。
ただ、リアさんだけはよく知っているのか、戸惑いはなくとも、困ったように笑うだけだった。
「ラルちゃん、無茶ばっかりするのも相変わらずね。ダンジョンでも多いのかしら?」
「敵の大群に単身で突っ込みますよ。大型モンスター相手にも」
「それは……全然変わらないわね」
「はい。本当に……自己犠牲中心な考えやめてほしい。胃が辛い。ストレスしんどい」
あ~……心中お察しします……

閉会式が始まるまでの休憩中、唐突に救護室の扉が開けられた。そこから顔を覗かせたのはコートを脱いでタンクトップ姿のフォースだ。水路に落ちたせいで服や髪が体に張り付いてしまっている。
「リア、タオル寄越せ」
「あら、フォースくん。先生は?」
「なんでおれが先生呼びしなきゃなんないの」
お前が生徒でリアさんが先生だからじゃないかな!? ある種の師弟関係だよ!
しかし、こんなことを言ってもフォースが聞くような奴じゃないのは分かっているから、声には出さなかった。
リアさんが取り出したタオルをティールが受け取り、フォースに手渡す。それのついで……というよりは、こちらが本題だろう。ティールがある質問を投げ掛けた。
「フォース、ラルは?」
「ここで力尽きました。いやまあ、頑張ったんじゃない?」
フォースが指差していたのは扉の外。つまり、部屋の外だ。ラルは俺達の死角になるようなところにいるんだろう。力尽きたって言葉からして多分、動けなくなったのか、あるいは動く気がないのかもしれない。
「……そう」
「心配すんな。死ぬわけじゃあるまいし。……着替えてくるわ。すぐ戻る」
フォースが着替えのためにここから離れ、ティールが部屋を出る。そして、すぐにラルを抱えて戻ってきた。フォースの言葉通り、力尽きてしまったらしく、ぴくりとも動かない。また、試合で使っていた刀はすでにしまった後なのか、武器らしき物は何も身に付けていない。が、ラルに貸した雪花という武器はティールの腰に帯剣されていた。
ティールは手慣れた手つきで、綺麗にまとめられているラルのサイドテールをほどき、ベッドに寝かせる。そのほんの数秒だけ、複雑そうな表情を浮かべた。何か後悔しているような、悲しむような。これと言い表せない……そんな表情。でも、それはすぐに消えて、いつものティールに戻っていた。
「リア先生、任せます」
「はぁい♪ 理事長の結界内で負った傷だもの。大したことはないわよ?」
「分かってます」
一言だけ答え、ずっと座っていた席に戻る。
さて、俺達は一連の流れを黙って見ていたわけだが……
レオンはラルの心配というよりは、ティールの行動に興味を持ったみたいだった。つくづく、こういうところで空気を読まない馬鹿である。これが羨ましく思うときもあれば、鬱陶しいときもあるんだけども。
ツバサは当然と言えば当然だが、ラルを気にかけている。我に返り、リアさんの近くへ駆け寄り、できることがないか聞きに行った。
俺もどちらかと言えば、ラルよりもティールが気になった。表情もそうだし、態度もそうだ。
まあ、ラルとティール達と過ごした時間は短いから、俺があの裏側を知る機会はないんだろう。
「俺さ、ずっと思ってたけど」
「あ? なんだよ、レオン。改まって」
ちょいちょいっと耳を貸せ的なジェスチャーをされ、仕方なくそれに従う。レオンはガラにもなく声を潜めた。
ティールとラルの間に恋愛感情は挟まってんの?」
「……それ、今じゃなきゃダメか?」
「ったりめーよ!! 結構前から思ってたんだぞ!?」
一瞬でこそこそ話状態が解除され、普段のレオンに戻った。声をちっさくして話しかけてきたのはなんだったのかと問いたくなる。ティールからの反応はないから、聞こえてないみたいだが。
つか、今じゃなくてもいいよな。絶対。
そう呆れつつも、俺は少しだけ考える。
ラルとティールの関係か。異性の友達としては距離は近い方だと思うけど、仲がいいからという説明で片付いてしまうような感じだ。もちろん、互いに好意がないとは思わないし、単なるビジネスパートナーの関係って感じでもないのは確か。だが、そこに恋愛要素を感じるかと問われると……
「俺にはよくわかんねぇな」
「なんだよ~? 真面目に考えろよな~」
他人の色恋を真面目に捉えられるほど、人ができてねぇわ。
「大体、考察できるほど、仲いい訳じゃないだろ。付き合いとしては俺ら、ツバサ以下だし」
「そうじゃなくって!! アラシは想像力ないのかよぉ」
その想像をするための材料がないって話だろ。
「頼りねぇな、アラシは。ってことで、そこんところどーなの、フォースせんぱ~い!」
「ノーコメント」
「うわ!? びっくりした……!」
いつの間にか帰ってきていたフォースが答える。制服姿……とは言っても、ブレザーはフォースの座る椅子の背もたれにかけてあるし、ネクタイもしていない。ワイシャツのボタンをだらしなく開け、かなりラフな制服の着こなしをしている。なんて言うか、生徒会の一員がそれでいいのかと聞きたくなるくらいには着崩してた。
「高一からの仲だろー?」
「まあな。んでも、初めて会ったときから変わらんよ、奴らは。他人から見れば恋人でしょって思うくらいには距離は近い」
「でも、本人達は否定してんの? ただの友達って?」
レオンの疑問にフォースは黙って頷く。
「……説得力なくなぁい?」
「ないけど。おれとも似たような距離感だし」
まあ、確かに。フォースとも距離は近いかな。
「じゃ、フォースとラルはあり!?」
フォースの言葉にレオンはキラリと目を光らせ、食い気味に質問をぶつけた。とことん、変わらないやつだ。
そして、その問いにフォースは冷めたような目付きになる。元々冷めたやつだけど、それ以上に温度を感じないというか。
「あるわけないだろ。ふざけたこと言ってると殴るぞ」
そ、それだけで殴られるのか……
フォースからも有力な手がかりもなく、悔しそうなレオンにフォースは小さくため息をつく。
「好意はあるよ。互いに、好きだって気持ちはあるんじゃないの。……おれの主観だけどね」
「マジで!?」
「けど、二人して動く気ないから、他人の目から見てじれったくなってる。以上」
なんでそう思うんだ?
俺の疑問にフォースはちらりと俺を見上げる。しかし、それだけで答えは返ってこなかった。
もしかして、以上って言ったから、先を答える気がない……んだろうか。
『お待たせしました! これから、剣技大会閉会式を執り行いたいと思います!!』
『同時に、大会の表彰式も行っていくぞ!』
閉会式が始まるアナウンスが入り、ここで話が半強制的に打ち切られた。
う~ん……レオンじゃないが、もう少し、聞きたかった……かも。



~あとがき~
アラシ君視点、久しぶりすぎて意味が分からない。
うちの子じゃないからか……ただのスランプか。

次回、閉会式ぱーっとやって、小ネタ拾いしていきたいです。

ラルとティールの関係性について触れとこっと思ってやりました。
恋人関係は現時点ではありません。どっかで言った気もしますが。
フォースには二人の気持ちとかどう考えているのか等々全てお見通し状態(能力と長年の経験のおかげで)ですが、手を出す気はありませんし、誰かに語る気もありません。
今回、レオン君に言ったのは気まぐれでしょうね。

ではでは。