satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第89話

~前回までのあらすじ~
フォース君と裏くんの話で終わった。
色々言いました。色々わかっちゃいましたね。
裏くん「そだね~♪」
フォース「…………全部真実なんだよな」
裏くん「そうなるね。あの状況で嘘ついても面白くもないでしょ?」
フォース「まあ……そうだけど」
もうそろそろ、イブたちが追いかけるところを書きたいんだけど……早く話を終わらせてくれませんか。
裏くん「努力する☆」
フォース「それ、書く意味あるの?」
うん、ある!
では、スタート!


目の前の自分には聞き流せ、と言われたが、この状況では無理なことだと感じた。ただでさえ、自分が知らなかったことが浮き彫りになってきたのだ。今から、彼の言うことにも何かあるかもしれないと思うと、気を張らずにはいられない。
「んー……そんな真剣な目をされても……そんなに面白くないぞ?」
「いや、だって……今までのことを考えると…」
「あはは♪ んまあ、落ち着けって。とりあえず、持ってる槍、消そ? 向けられてるみたいで怖い」
「わ…悪い。忘れてた」
フォースが慌てて持っていた槍を消すと、改めて正面を見た。
「何言おうかな……ま、適当でいいか。まず最初に……フォース」
「はっ…はい?!」
久しぶりに名前で呼ばれ、驚きと戸惑いで若干声が裏返ってしまう。恥ずかしさでうつ向いたが、ちらりと相手の様子をうかがった。案の定というべきか、にやりと笑っており、更に恥ずかしくなった。
「相変わらず可愛いとこあるな、フォース」
「いきなり名前なんかで呼ぶからだ! 馬鹿! つか、そこまで長い付き合いでもないだろ?!」
「悪い悪い。本名がよかった?」
「よくない! 大体、おれの本名知らないだろ」
「え、知ってるよ? 言わないけど」
「んもう、何なんだよ……!」
「にゃはっ♪ なんか、グダグダになっちったな。……やり直すか!」
そう言うと、何度か深呼吸をし、改めてフォースを見つめた。真剣な顔つきになり、話を始めた。
「フォース、なんつーか……ごめん、お前の人生変えちゃってさ。元々継承者として生を受けたのに、無理矢理変えて……ごめんな」
「何でお前が謝るんだよ? 関係ないだろ?」
「これがあるんだよ~……ま、覚えてないだろうけど。でも、今のフォース見てたら、心配してる俺がアホらしくなってきてな。……成長したなって思った」
先程の下らない話のときとは違い、少しだけ寂しそうな表情になった。フォースは、なぜそんな表情になるのか理解できずに、首をかしげた。
「………何を言って…」
「単純に嬉しかった。そんなフォースを見れて、すっごく嬉しかったんだ。俺には出来なかったことだから」
「待って。もっと詳しく…………?! っあ…」
突然頭に激しい痛みを感じ、思わず膝をついた。それを見ていた彼は苦笑ぎみに続ける。
「無理に思い出そうとするからだよー?」
「ま…いか…な……」
「もうそろ、時間かな~……最後になるかな。んー……そうだなぁ……あ、あんときは少しの間だったけど、滅茶苦茶楽しかった。ありがとうな」
フォースは痛みを堪えながら、彼を見上げた。そして、昔、自分の命がつきる前に見た顔を思い出す。そのときに見た、泣きそうで悲しそうな笑顔と重なる。
「行かないで……置いてかないでよ、にぃ…」
「……! 最後の最後でそりゃねぇよ……けど、うん……やっぱ、思い出してくれて嬉しいわ。………じゃあ、ばいばいだな。もう…かーくんの前には姿見せないから」
「嫌だ……待って。一人にしないって言った……待って、おれの話を聞いて!」
「元気にやれよ。………じゃあな、カルマ」
「っ……ウィルにぃ!!」
やっとの思いで出てきた彼の名前を叫び、手を伸ばした。しかし、すでに目の前からいなくなっていた。
もう一人の自分がウィルだった、という事実を受け入れることはできず、その場に崩れる。ポタポタと涙が落ちた。
「なんで…おれは……ずっとわすれ……なんで…」
なぜか、という理由などとうに知れていた。ウィルが自分で言っていたはずだ。
途切れ途切れの思考を無理矢理動かし、声に出して呟いていく。
「……きおく…かい…ざ……でも…だれ…が……いや……しってる…わかって……るんだ」
フォースを従え、制御者たちを従える、自分達のマスター…力を司るビクティニ
「マスターが…………ファウス……様…がやったんだ。なんで……ウィルにぃのきお…く………」
そこまで考えて、すぅと意識が遠退く感じがした。その場に倒れこみ、閉じたくもないのに、瞼が重くなり、視界が狭くなっていく。眠気に似た感覚を覚えつつも、何とか逆らおうとした。しかし、その感覚に勝てるはずもなく、どんどん意識は遠退いていく。
「………っんで……なんで……!」
マスター…ファウスに対する怒りと自分に対する怒りが込み上げてくるものの、逆らうことは出来ず、完全に瞳を閉じてしまった。

フォースが次に目を覚ましたのは、鈴流がいる花畑の中にある、木の下だった。いまいち意識がはっきりしていなかったが、先程まで何があったのかは、しっかりと覚えていた。
「………力…前より感じる……ってことは」
四つん這いで、近くにある小さな池に近づき、覗きこんだ。その水面に映るのは自分の顔。しかし、確認したいのは自分の顔ではない。
「目……両目とも…紅くなってる……」
ぺたん、と座り、両手を見つめる。そして自分の顔を撫で回し、最後に頬をつねった。
「……痛い」
今の行動で夢じゃないことを確認し、立ち上がった。池から少し離れ、無言で手元に槍を出現させる。目の前に持っていき、くるりと回してみせる。
いつもより自然な流れで出来たことに内心驚きつつ、そのまま技に移る。
「………“水羅”」
足に力をこめ、一直線に走り出す。目の前に敵がいると仮定しつつ、頭の中で思い描いた次の行動をする。
「技を受け流し、その力を打ち消す………!」
槍を半回転させ、すぐさま力強く突いた。フォースによって放たれた槍の突きが風を貫く。技が決まり、構えを解く。
「出来た……力も抜けてる。流れも自然だった」
いつもなら、どこかで槍が手から抜けて、失敗するか、つまずいて転んで終わるのどちらかだった。成功すること自体、あり得なかったのだが、今、ここで成功した。
しかし、それが意味することは自分自身の成長ではない。
槍を地面に落とし、また座りこむ。地に手をつき、また涙が溢れた。同時に今までの思いが全て外に出てきた。
「…………でも…それは……本当にいなくなったってことだよな。ウィルにぃがいなくなっちゃった……その証明に……なっちゃった…」
ウィルと別れる直前に思い出した彼に対する記憶が浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返していた。
どうして忘れていたのか。ずっと気づかなかったのか。自分自身に対する怒りや後悔、悔しさが一気に表に表れた。
「っ………あぁぁぁ…うわあぁぁぁ!!!!」
しばらく、昔の感情に身を任せ、大声で泣きじゃくる。同時にフォースの泣き声に同調するかのように、花畑の花々の花びらが舞い上がった。



~あとがき~
いやー……ウィルって、大して物語に出てなくて、フォースとの関連も詳しく紹介していないのに……なぜこうなった!
ウィルさ~ん……どこいくの~……?
ウィル「ちょっと遠いとこ?」
フォース「一生帰ってこないパターン……」
ウィル「マジか……んま、しゃーないな~♪」
………どうなる、ウィルさん!

次回、ピカと雷姫と鈴流に戻ります。

ほんと、ウィルとフォースの関係性わかったかな……? 本編だけでわかった人凄いです……
まあ、説明というか、ざっと言うと、ウィルはフォースの継承者時代の制御者だったんです。で、そこで色々あって、フォースの中に入ることになり、フォースは今の今まで気づかなかったって感じです。
気づかなかった理由としては、フォースが継承者時のウィルに対する記憶が改ざんされ、ウィルに関する記憶がなかったためです。ただ、継承者だった、という情報しか覚えていないんですね。
ま、ここら辺は改めて記事でまとめたいと思っています。今回の章に限っては、ごちゃごちゃなもので……はい。

フォースの本名とマスターさんの名前公開しました!
フォースがカルマ、マスターはファウスです。
意図してなかったのですが、名前が似ている、フォースとファウス……字面だけな。
ウィルがフォースのことを「かーくん」と呼ぶのは、本名である「カルマ」からなんですね。
マスターさんの名前、出したけど、これからもマスターさんでいくつもりです(笑)

ではでは!