satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第194話

~前回までのあらすじ~
限界突破なヴァルツです。
このあと、死ぬフラグ立ってない? 大丈夫?
ヴァルツ「…………」
もえぎ「あうぅ」
そういえば、ヴァルツに使われてるときのトリスの姿はどっちなの……?
トリス「もえぎベースだよん」
ヴァルツ「ブラッキーよりリーフィアの方が似合ってるよ、お前」
マリー「そのまま帰ってこなくてよろしいですわ、兄様?」
トリス「あは。うっざぁい♪」
神器同士が争う前に始めますかね。


マリーからの指示を聞き、トリスを使って敵の弱点を突く。ふっと短く息を吐き、体勢を整えた。
「どれくらい持つ?」
『そうね。三分』
「……十分だな」
『強気~♪ ほーんと、飽きないよ。いいよぉ? ちゃんと調整してやる。三分は任せてくれていいよ? マリーに出来なくても、僕には出来るもんね!』
調整とは、所有者の体調等を意図的に変えてしまうことだ。主の心に住み、魂に住む神霊……神器であるために出来る芸当である。上手く使えば、肉体強化にも使用出来るが、それをするには深いところまで干渉する必要があるため、やり過ぎれば死に直結しかねない。つまるところ、諸刃の剣である。
それゆえ、マリーはヴァルツにそれを行うことはしない。自分がそこまでの代償を必要としていないのも関係はしているが、そもそも、調整が得意でないのだ。反対に遠慮のないトリスは主でない相手でも簡単に調整してしまう節がある。
『愛し子、この腹立たしい程の屑をいかがいたしますか? 燃やしますか? 灰にしましょうか?』
『出来るもんならやってみてよ。ほらほらー!』
案の定と言うべきか、二人の言い争いが始まってしまった。敵の攻撃を受け流しつつ、ヴァルツは冷めた目を二人に向ける。
「……トリス、形状変化。マリー、探れ」
『うっわ。久し振りにそんな目で見られた気がする。……はいはーい』
『前方、左胸。直径十センチです』
少し離れた相手の弱点を探る。その間にトリスは剣から弓へと姿を変えた。ヴァルツが弦を引き、狙いを定める。そこに矢はないが、構わず狙いをつける。
『ヴァルツ、うるさい。もっと静めて』
「お前の方がうるさい」
とは言ったものの、自分の中でいくつもの音が邪魔をしていた。うるさいくらいに打ち鳴らす心臓。もう限界だと訴えるように響く痛み。それらをうるさいとトリスは指摘したのである。そんなもの、ヴァルツにはどうしようもないが、一点を狙うように集中する。止まってくれるはずもない的を射るのは容易でない。しかし、気に留めることはなく、彼はすっと息を止めた。
『やれば出来るじゃん。いつでもいーよ』
上から目線のトリスに内心、苛つきつつも、黙って弦を放した。空気が震えると、どこからともなく、光の矢が現れた。その矢は吸い込まれるように敵の胸を射る。
「次」
『敵が近い。距離を取るか別の武器に変えるべき』
「じゃあ、変化。マリー、残りは?」
『半分になってます。五体ですね』
「なるほど。……了解。同じように弱点を探れ」
『はい。愛し子よ』
ポーチのベルトにマリーを差し込み、弓から片手剣へと変化したトリスを構えた。そして、一気に走り出す。まずは近場の敵から狙いを定めた。マリーに言われた箇所を的確に斬る。更にその敵の近くにいた奴に狙いを変え、牽制の太刀を何回か振るう。マリーが探るための時間稼ぎである。
『見えました。右手首です。切り落とせば必然と倒せます』
「あぁ」
『いっつも思うけど、無駄な動きなくて綺麗だよねぇ。失敗した方が面白いのにねぇ』
右手首を落としながら、トリスの文句を受け流す。こんなものに言い返していてはきりがない。そして、次の狙いをつけるために自分から近付いた。
『右から後頭部に十二センチ。うなじに四センチ。心臓に八センチです』
「了解」
言われた順番に近付いていった。確かな敵意を向けられ、意思のないであろう作られた敵はヴァルツに向かって反撃を試みる。とはいえ、触手のような腕を伸ばす物理攻撃だ。剣を握るヴァルツにとっては、攻撃を受け流すに難くない。標準から外れ、剣を振り下ろせば綺麗に斬れてしまう。
思考力のない物であるが故の弱点なのかもしれない。複雑な攻撃や作戦、仲間と協力する等の戦法が取れないのだろう。動きが素早くなり、初回よりはましな動きだろうが、ヴァルツから見れば全てが同じに見えた。
「甘い」
瞬き一つしてしまったら終わっていた。そんな感覚に陥る程、手際よく終わらせていた。蒸発していく敵だったものを見つめながら、ふっと息を吐いた。
「これで全部か」
『はい。この辺のは全て』
『お疲れ、ヴァルツ。久し振りに楽しかったよ?』
「……そうか」
ふと、もえぎの方に目を向けた。離れてしまったため、確実なことは言えないが、気を失っているらしかった。ほとんどをもえぎが倒したと言っても過言ではないくらいに動いてくれていたのだ。これもまた仕方ないかもしれないと勝手に納得をする。
「本来なら、この足で本部まで戻りたい……ところ、なんだが」
それが出来るほどの体力は到底残っていない。倒れそうになる体をトリスを使って、無理矢理立たせている状態だ。それでもずるずると膝が落ち、地面についてしまう。こうなったら、立ち上がれるわけがない。
「トリス、ふぃーが起きるまで、見張っていろ……それくらい、出来るだろ」
『はあ?……まあ、うん。いいよ。今の僕は機嫌がいいからねっ♪』
剣からリーフィアへと姿を変えると、僅かな支えを失ったヴァルツは地面に倒れる。何度か咳き込み、苦しそうに無理矢理しているような呼吸をした。
「生きてる? ヴァルツ」
「……一応、は」
「それはよかった。まだまだ死なれちゃ困るよ」
にこにこと楽しそうに笑っているんだろうなと思いつつも、何かを返す余裕はあまりない。
意識して、ゆっくりと深呼吸をするように息を吸い、ゆっくり吐く。これを何度か繰り返していると、呼吸の方は落ち着いてきた。だからといって、すぐに立ち上がれるはずもない。そもそも、今日は体調がよかったわけでもないのだ。ぼんやりしていると、発熱しているなと今更ながらに気付いた。
『兄様』
「なあにぃ? マリーちゃん?」
『愛し子をもえぎ様の元へ運んでくださいませ。監視するにしても、両者が離れていますもの』
「ま、そうか。仕方ないなぁ」
『優しく! お願いしますよ!』
「はいはい……うっさいな。本人じゃないくせに」
軽々とヴァルツを持ち上げ、これまた軽い足取りでもえぎの元へと歩み寄った。ヴァルツは意識はあったものの、されるがままである。
もえぎのところまで戻ると、すぐ傍にヴァルツを降ろす。これもマリーの呼び掛けにより、比較的優しく降ろされる。
「にしても、こんな物好きもいるもんだよね。何がしたいんだろ。神への冒涜じゃない?」
『まあ、そうともと……? 兄様』
「今度は何よぉ」
「げほっ……何か、来る……?」
マリーが何かを感じ取ったのだろう。マリーを伝ってヴァルツも気配に気が付く。上半身だけ起こし、もえぎを庇うような位置へと動く。二人の様子を見たトリスも集中して辺りを探った。そして、気付いてしまう。
「……これ、は。ヤバいかも。ヴァルツ。もう少し、動けるかい?」
思いがけない提案に咄嗟に答えることが出来なかった。その代わりにマリーが叫ぶ。
『駄目です! これ以上は!』
「じゃあ、僕にも無理だよ。神器一つ……いや、神霊一人じゃあ、抑えられない」
『ここから逃げるべきです。相手にしてはいけません。愛し子よ、撤退しましょう。今から来るのは、私達と同じものです。……少し、状況が芳しくないようですが』
この言葉で何となく察した。神器の使い手がここに来るのだと。そして、状況がよくないと言えば、神器に体を乗っ取られでもしたのだろう。そうなれば、武器であるトリスとマリーだけでは太刀打ちが出来ない。だからといって、ヴァルツともえぎは動ける状態にない。が、ヴァルツは慌てたようにトリスに指示をする。
「……トリス! 形状変化!!」
ヴァルツが思い描いたのは盾だ。二人を隠すだけの盾を作ったのと同時に勢いよく何かが当たる。
『うっわ。人が飛んできた~……これ、死んでない? 大丈夫ぅ?』
「っ!?……げほっげほっ!」
トリスの力を引き出してしまったため、整えた息が乱れてしまう。息が出来なくなるくらい激しく咳き込んだ。しかし、それもすぐに治め、ゆっくり話し始める。
「けほっ……はぁはぁ……ふぅ……はー……それ、暴走者にやられたんだろう。……俺達も、標的にされたんじゃないか?」
『……愛し子』
「ここで死ぬ気はない。そこに、嘘はない……が、絶望的なのも、分かっている」
『どーすんの?』
トリスの影から様子を窺えば、ゆらりゆらりと背中を丸めながら歩いてくる人物を見つけた。種族はガオガエンだろうか。自分より大きい相手である。そしてそのガオガエンの手に剣が握られ、ずるずると引きずっている。ガオガエンで引きずっているのだから、物は大剣だろうか。
「……トリス、これはどれくらい持つ?」
『何されるかにもよる。まあ、五分は持たせてみせるよ。……何する気?』
「逃げる。マリー、ふぃーを連れて本部の方に」
『……それはよろしいのですが、愛し子よ、貴方は?』
「やることがある。……終わったら、トリスに担いでもらうから、心配するな」
『はあ? いや、了承した覚えは……』
『かしこまりましたわ。兄様、分かりましたね。優しく! 丁寧に! お願いします!』
そう言うと、マリーはブラッキーに姿を変える。もえぎを抱き抱えると、振り返ることなくこの場から離れていく。それを確認すると、正面を見る。ゆっくりながらもこちらに向かってきていた。マリーともえぎには目もくれず、ヴァルツとトリスだけを見据えているように。
『ヴァルツ』
「……やるぞ、トリス」
『あは。悪い子だねぇ……いいよ。従ってあげる』
「時間稼ぎでいい。こいつは俺には倒せないからな。……適任が来るまで、粘る」
『了解。まだ、三分の時間は残ってたしね……ギリギリまでこき使ってあげるよ』
「あぁ、任せる」
ヴァルツはポーチから連絡用のバッジを取り出し、ある人物に連絡をする。どうせ近くにいるんだろうと勝手な想像したものであった。何度かのコールの後、予想通り、繋がった。
『はぁい……誰ですかぁ』
「分かっていてその態度か? これ、お前にしか繋がらないコードなんだが」
間の抜けた返事にヴァルツは冷たくあしらう。相手はそれも分かった上での対応だったらしく、場違いにくすくすと笑った。
『……ですねぇ。それで?』
「神器の使い手が目の前にいる。……相手側の計画の一つとしてあったのは記憶していたが、目の前に現れると何とも言えない気持ちになる」
『そっちで来ましたか。……じゃあ、そっち向かいます。粘ってくださいね、ヴァルツさん』
「俺が言うのもなんだが、手酷くやられたそうだな。……ピカ?」
バッジの向こう側の相手……ピカは至極当たり前のことように淡々と述べた。
『今、関係あります? 仮にそれで私が駄目になってても、行くしかないでしょ? そう思って私にかけてきてるんだもん。……期待を裏切るようなことはしませんよ』
そこで通信が切れた。ピカが切ったのだろう。もえぎの話では救護テントで寝かされていたという話であったが、大人しく寝ている性格でないことはヴァルツも把握していた。どうせ、どこかに隠れて動いているに違いないと。また、敵の気配や物事に敏感で勘のいい彼女のことだ。パートナーに見つかることなく動くことも可能だろうと思ったのだ。
『雷姫のあの子だよね? こっわ~♪ それくらいにならないと、雷姫なんて武器、扱えないのかな』
「かもしれないな。さあ、トリス。久し振りに二人だけのコンビだ。……何か言うことは?」
『そうだね。ヴァルツを殺さないよう、調整頑張りますくらい?』
「そうか。……嘘にするなよ」
『善処するよ』



~あとがき~
何話ぶりなんですかね? 分かんないけど、ピカの登場(声だけ)です。

次回、久し振りにポチャの方をやります。

ヴァルツとピカ、面識あります。というか、ピカがひいきにしてる情報源の一人です。何人か抱えているので、そのうちの一人って感じですね。
チームにも情報担当いますし、ライブのところのも行きますし……他にも色々手段は使いますからね。
ヴァルツはヴァルツでピカのことを利用している部分はあるんでしょうね。ピカはピカでヴァルツを利用しているかと。

いつもより長くなってしまいました。申し訳ねえ! きりがよかった! ってか、ここまで書きたかったんです! 申し訳ねえ!!

ではでは!