satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第25話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で楽しく暮らしているお話です。本編とは一切関係ありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバックだ!
前回、ツルギ君がお目見え。ラルに対する嫉妬を訴えた後は大泣き状態です。
ラル「誘惑魔ってフレーズで笑ってましたよね」
笑いましたね。プロットにあって、笑いました。
アラシ「笑うな笑うな。……あいつにとっちゃ、一大事……多分だけど」
ラル「フォローするならもっとしてやれよ! 薄情者!」
そーだそーだ!
アラシ「なんで俺が責められてんの?」


《A side》
どうにか生徒会室に到着すると、ラルは迷いもなく扉を開けた。そこには廊下ですれ違ったティールと、ラルと何か電話をしていたフォースがいた。ティールは棚の近くで探し物しているらしく、フォースは俺らをちらりと見るも、すぐに本に視線を戻す。
「ただいま戻りました~っと! ほら、さっさと入って」
ラルに促され、俺達は生徒会室へと入室した。本当ならちゃんとノックして入るのが礼儀なんだろうけど、ほぼ毎日出入りする俺とレオンにそんな考えはない。というか、いらないなんて言われたのも結構早かった。しないで入ってくる方が見分けがつくとかなんとか言われた。……しない方が関係者だと判断しやすいってことなのだろう。多分。
「おかえり、ラル。……と、アラシ達も?」
あ、ティールに急用で来れないなんて話をしたんだっけ……? 忘れてた!
「用事が済んだには済んだんだけど、別の問題的なのが発生してな~? 偶然会ったラルに生徒会室にくればって言われたんだ! ってことで、来たぜ!」
口が達者なレオンがさらさらっと適当な理由を話した。ティールも大して気にしていないみたいで、笑ってゆっくりしてって、と言ってくれた。
こんな人とラルがパートナー同士なの、未だに疑ってるんだけど……
「やれやれ。……ブレザー返してね~?」
ツルギに被せていたブレザーを取り、ラルはそそくさと自分の席に行ってしまう。現状の説明はするつもりがないのか、椅子の背もたれにブレザーを掛け、すとんと座ってしまう。ツバサも仕事をするときの定位置である、フォースの隣に座り、レオンはその向かいに座る。俺だけツルギを背負ったままでなんだか取り残された感がある。
「わっ!? その子、誰? ツバサそっくり~」
「……アラシ、髪ボッサボサだな」
単純に驚いているティールと、どうでもいいことに突っ込みを入れるフォース。こいつらは通常運転だな。うん。
「察してくれ。で、こいつは……」
「……ぐすっ。……ひくっ……ツバサは、僕のなのに……このっ!……ラルの誘惑魔!!」
ツルギ、こいつ! 説明する前にとんでもないセリフ吐きやがった!!
「えっ!? ラルが、誘惑……!?」
「……ふふっ……マジかよ。……ラルの肩書きがどんどん増えてくんだけど。ウケる」
「増やしたくて増やしてませーん。その子はツルギ君。ツバサちゃんのお兄さんで色々あって、私が罵倒されてまーす」
かなり説明を省いている気がするけど、そんな説明でいいのか?
とりあえず、近かったレオンの隣にツルギを座らせ、その隣に俺が座った。ツバサの近くではないのが不満っぽいけど、移動はしなかった。
「また何かしたの。程々にしないと夜道で刺されるんじゃない? 気を付けたら?」
生徒会室にある冷蔵庫から人数分の飲み物を準備しながら、ティールが呆れ声で物騒なことを言う。俺達には優しく接してくれるのに、ラルに対しては長年の付き合いからくる、独特な雰囲気がたまにある。散々な言われようだが、ラルは何とも思っていないらしく、ニコニコで答えた。
「大丈夫。刺されても死にません。雷姫ちゃんが何とかしますぅ~♪」
「あのババァに治癒能力はないぞ」
フォースは、ぱたんと読んでいた本を閉じ、頬杖を付きながら会話に参加した。ババァってのは、雷姫のことなんだろうけど、そんな風に呼んでるのは初めて聞いた。
「いや、犯人に報復という意味で」
「そんなことは……あー……あいつならやりかねないか。そして結局、お前は死ぬのか?」
「ふふん。死んでもただでは死なないよ。だって、それが私だからねっ!」
「にしし! ラルならあり得そうだな♪」
「でっしょ~? もっとほめていいんだよ、レオン君!」
「……そんなんだから、こんなチビッ子に恨まれて、刺されるんだぞ。……で、なんだっけ。ツルギだっけ。お前?」
フォースが会話の軌道修正を入れたところで、ツルギの話題に戻ってきた。本当にどうでもいい話しかしない。……それが心地いいこともあるけどさ。
「あ、そだ。ティール、ツルギ君が入校許可忘れてきちゃったから、取ってきて~」
ふと思い出したようで、ラルが飲み物準備中のティールに話しかけた。
「なんでぼくが!? というか、許可なしでよく入れたね……?」
「あは。察して?」
「……ラル」
「なんだその反応。どう察した!? 無実! 私は無実だから! ほらほら、行ってきて。校長辺りに頼めば一発でしょ」
じとっと睨んだまま、ティールは部屋を出た。ラルの言う通り、入校許可申請をしに行ったんだろうけど、どうやってするんだろう。
出ていったティールの代わりにフォースが仕事を受け継いだ。とはいっても、用意出来た飲み物を配るだけだ。全員に行き渡った後、ラルが口を開いた。さっきまでふざけていたのに、今はおふざけなしの冷静なあいつだった。
「……さて。後始末はこれでどうにかなるとして。とりあえず、落ち着いたかな? ツルギ君」
大声で泣き叫ぶようなことはなくなったけど、時々ポロポロと涙は溢れ落ちている。それでもまあ、わんわん泣くのは、ピークが過ぎたっぽい。が、ラルに話しかけられたツルギはぶすっとし、目も合わせない。
「……うるさい。お前に言われなくたって、落ち着いてるもん。……僕に話しかけるな。誘惑魔」
「話は出来る位にはなったって判断するね。よかったよかった」
「話しかけるなって言ってるじゃん。誘惑魔め」
誘惑魔って言葉が出る度にフォースが笑っているけど、見なかったことにしよ。
言われまくっているラル本人は、何やら考え事をしているのか、これ以上は何か言うことはなく、椅子を回してこちらに背を向けてしまった。それをツルギは反論なしと捉えたのか、再びキッと睨み付けた。
「ツバサを返せ! 悪魔! 知ってるんだぞ。仕事もしなくて、ぐーたらばっかやってるって! そんなヤツにツバサは渡さないからな!」
ここまで言われても、ラルは黙ったままだ。というか、こちらを見ようともしないし、動きもしない。もしかしたら、どこで話を始めるのか考えてるのかもしれない。この場で長くラルと関わってきたフォースは、ツルギの言葉に笑いを堪えていた。何かを言うなんてのはないけど、その反応だけで、ツルギが的外れなことは言ってないんだなって分かる。
このままツルギが捲し立てると思ったが、それを遮るようにバンッと何かを叩く音が響いた。ラルがやったわけではなく、フォースの隣にいたツバサがツルギを見ていた。目を釣り上げ、完全にお怒りモードのツバサ。
「さっきからずーっと悪口ばっかり!……そんなにラルさんの悪口を言わなくてもいいじゃんっ!」
わあ……マジで怒っていらっしゃる……
ツバサの反論は予想してなかったのか、あるいは気になったのか、ラルの椅子が半分だけ動いて、ツバサの方を見ていた。俺の座る位置だと、ラルがどんな表情なのか、全く分からない。レオンの位置なら見えるかもしれない。
「ツバサだって悪いんだぞ! 毎回、あいつの話を聞かされる僕の身にもなってよ! 聞きたくもない話を聞かされるんだぞ!?」
「じゃあ、その場で止めればいいじゃん。嫌だなんて言われたこと、なかったよ!」
「止めたら止めたで理由を話さなきゃだろ!? そんなの嫌に決まってるし! その人が嫌いだから、聞きたくないなんて言ったら、ツバサ、怒るじゃんか!」
「当たり前だよ。誰だって好きな人を否定されたら怒るもんっ!! なんでって聞きたくもなるよ」
「そ・れ・が! 嫌だって言ってんの! 聞かれたくないの!」
「ツルギ、ワガママばっかり!」
「はあ!? ツバサに言われたくないよ!」
かなりヒートアップしてきたぞ。そして、止まる気配もない。別に家でもなんでもないんだけど、他人の家で大喧嘩始めた感じになってる。流石にこれは迷惑だよな。フォースもラルも何も言わないが、ここで止めないと更に激しい喧嘩になりかねない。
ツルギを挟み、レオンと目配せする。目の合ったレオンは小さく頷くと、ツルギを落ち着かせに入る。とはいっても、ツルギは全く気にしてない。
「声の音量落とせよ、二人とも~?」
「レオンうるさい! 僕はツバサと話してるの! 邪魔しないで!!」
「アラシもだよ! 私、ツルギと話してるから! 入ってきちゃダメだからねっ」
「あ、はい……」
ツバサに話しかける前に止められた。二人の気迫に、俺達も手が出なかった。
「ただいま」
止める前に入校許可を取りに行っていたティールが帰ってきた。ツバサとツルギはティールの方を見たけど、止まる様子はない。対して、止まらない二人を気にしないティールは、丁寧に扉を閉めると、手に持っていた紙をラルに手渡す。ティールとラルは一言二言会話を交わすも、声が小さいのか俺には聞こえなかった。
「ツバサの分からず屋! あいつのどこがいいんだよ!!」
「分からず屋なのはツルギだもん! ラルさんは優しくてかっこいい、いい人だもんっ!」
これ、放っておいたらどこまで続くんだろう。どうでもいいところまで言い合いになりそうな気もする。止めたいけど、さっき入るなって言われたし、なだめるだけじゃ、駄目なんだろうな。どうしたらいいんだ……?
どうにかして欲しいと他力本願な考えなのは分かっていたけど、俺じゃあどうしようもなくて、反対側に座っていたフォースを見た。なんでかってのは、年上ならどうにかしてくれるかもみたいな単純な理由だ。でも、フォースはツバサ達を見ていなくて、ラルの方を見ていた。そして、見られているラルもフォースを見ている。……多分、アイコンタクトでお互いの意思を汲み取っている……のか?
どんな感じのやり取りなのか分からないまま、目だけの会話は終わったらしく、フォースがふいっと目線を外した。ラルは一瞬天井を見上げ、すぐに正面を向いた。
「二人とも私のためにそこまで言い合いをする必要はないんだよー? いや、嬉しいけどねっ! 天使達が私を取り合ってるってことだもんね!?」
「そこじゃねぇだろ! つーか、天使って?」
思わず突っ込んじまったけど、ラルは気にせずふざけたように笑う。真面目になったり、ふざけたりその切り替えはどこでやっているんだ。
「ツバサちゃんが天使級に可愛いなら、そのお兄ちゃんも同じかなーって?」
どういう理屈だよ。
いきなりのラルの乱入で二人とも、思考停止したらしい。ぽかんとラルを見ていた。そして、ラルの後ろに立っていたティールは呆れ顔。
「他にも止め方あったよね、ラル」
それな。ティールの言う通りだ。
しかしまあ、どんな形にせよ、二人の喧嘩は止まってくれた。ツルギは天使呼びされてかなりご立腹ではあるみたいだけど、ツバサはラルに止められたってのが効いたのか、大人しくなった。



~あとがき~
ラルとフォースは黙ってても会話可能。(←は)

次回、ラルさんの演説会(?)始まります。

ティールは今回の件、半分も本質を理解していません。ラルやフォースが大雑把にはぐらかしたので、全体を見れないんですね。意図的に隠されてます。理由としては……うん。ラルがバレると面倒だのなんだのと言ってたので、それですね。(適当)
昔に似たようなことがあって、心底面倒だったんだと思います。ティールはラルを大切に思ってるってことなんですけど……あ、そこは本編と変わりませんね。
ま、ティールも馬鹿ではないので、話を聞いて察しはするだろうけど、それでも全ては把握しないでしょう。

ツバサちゃんとツルギ君の口喧嘩、本当に内容が出てこなくて困りました。いやね? ツバサちゃんが誰かと喧嘩するなんてのが想像つかなくて、悪口なんて言わないだろうから、どう反論するんだろうなって? そんな感じです。イメージ壊れないといいなぁ……ツルギ君はこんな感じだと思います。はい。

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第24話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で好き勝手わちゃわちゃする物語です。本編とは一切関係ございません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、犯人と思われるツルギ君を捕まえました。今回からアラシ君視点で頑張るぞい。
アラシ「理由は?……俺でやりたいだけ?」
そう。やりたいだけ。
アラシ「……」


《A side》
ほぼ廊下の端まで転がってしまった二人は仲良く目を回していた。レイディアント学園、魔術科女子制服姿のツバサと明らかにうちの学園制服でもない男子服のツルギ。ツルギ自身が目を回した影響で、幻術が解けたらしい。普段の私服である、コートや少年らしい短パンにTシャツという格好だ。
「う~……」
「あうぅ……」
「そっくりだけど、ツバサちゃんじゃない」
「そこじゃねぇだろ!?……つーか、なんであんなところにいたんだ?」
ずっと気になっていた疑問を口にすると、ラルはくすりと小さく笑う。答えるつもりはないみたいだ。偶然ってことなのか。
「まあ、いいや。えっと、こいつはツルギ。ツバサの双子の兄貴だ」
「えっ……お兄さんがいるって話は聞いてたけど、双子は初耳。だから、こんなにそっくりなんだね。毛並みは違うけど」
よくもまあ、触っただけで分かるよな。どっかに感知センサーでもつけてんのか、この人。
内心呆れていると、特に自信満々に言う必要もないのに、誇らしげな表情を俺に見せた。
「伊達に毎日、なでなでしてないからね!」
「威張ることじゃないぞ」
「むぅ。アラシ君の意地悪」
とりあえず、目が覚めるまでは放置……も、よくないか。どこかに座らせておいた方がいいかもしれない。人通りは少ないが、全くないとは言えない。さっき、ラルが出てきた教室とかで休ませるべきかもしれないな。
「うぅ……」
「あ、ツルギ君起きた。大丈夫~?」
ふらつきつつも、体を起こしてきたのはツルギだった。俺達を見回した後、今の状況を理解したみたいで、目も合わせずに顔を伏せる。
「全く、なんでこんなことしたんだ?」
「それは……」
ツルギの視線の先には、遅れて体を起こすツバサがいる。見られているとは知らないツバサは、ラルに大丈夫か聞かれているところだった。笑顔で答えるツバサの姿を見たツルギはふいっと目線を外す。表情はどこか不満げで不機嫌になっていく。
「むっ。……だって……だって、ツバサが悪いんだもんっ!!」
「ふえっ!?」
突然の名指しに呼ばれた本人はビックリしていた。俺とレオンはなんとなく、そんな気はしていたから、大した驚きはなかった。が、ラルも案外平然としていて、ツルギを見つめている。
「せっかく学園がお休みの日に会っても、学校の話やそこにいるサボり魔の話ばっかりなんだもん! 僕はツバサと遊びたいの! それなのに、ツバサは……!」
サボり魔と言ったときにしっかりラルを指差し、ツバサに対して訴えた。指されたラルは通常なのか、笑顔のままで、ツバサはきょとんとしていた。ツルギは更に続ける。キッとラルを睨み付け、潤んだ目で叫ぶ。
「僕からツバサを取るな! ツバサは僕の妹で、僕のなんだ! この、誘惑魔ー!!」
「ゆーわ……誘惑!? え、私が……え、ツバサちゃんを!?」
「ほう?」
「はいぃ!?」
流石のラルも驚いたようで、何度も確認を取る。俺も驚いたが、レオンはこんなときに面白いネタみっけ! みたいな顔してやがるし、ツバサはまだ首を傾げていた。純粋なツバサに誘惑なんてピンと来てないんだろう。誘惑魔と叫んだツルギがどんどんヒートアップしていき、それに比例し、目のうるうるも溜まっていく。
これは、もしかして……もしかしなくても……
「あくまー!! ゆーわくまぁ!! この、この、サボりまめぇぇ!! 僕から、ツバサをとるなぁぁ!!!」
ラルへの悪口を吐きながら、ツルギの目からは涙が溢れていく。それは次第に量が増え、声も大きくなり、静かな校舎の中で響いていく。こんな状態のこいつに何て言えばいいのか、何をすればいいのかなんて考えは浮かばず、この場にいるメンバーは、ただただツルギを見るしかなかった。静かで、人もいないはずなのに、どこで嗅ぎ付けたのか人の気配を感じ始めていた。そして、これは流石と言うべきだと思う。初めに動いたのはラルだった。着ていたブレザーを脱ぐと、ツルギの上から被せた。鬱陶しそうにブレザーを取ろうと暴れるツルギだったが、ラルが上手く抑えているようで、姿は隠れたままだ。
「ここで騒がれるのはまずいし、ついでに部外者を関係者に見られるのもまずいな。……生徒会室に移動するよ」
「生徒会室なら騒いでもいいのか?」
「そんなことはないけど、ある程度の言い訳は立つよ。私のテリトリーでもあるからね」
いつものおちゃらけた雰囲気はどこへ行ったのか、真面目で冷静なラルがそこにいた。入学式のときのあいつそのもので、少しだけ驚いた。
「そっか。んじゃ、お言葉に甘えようぜ♪ アラシ、頼んだ!」
あ、運ぶ役は俺なのね……知ってたけど。
ブレザーを被せられても泣き続けるツルギを背負うと、ぽかぽかと後ろから叩かれた。
「らるのばかぁ! あくまぁ!!」
泣きすぎて、呂律が回らなくなってきたけど、俺に八つ当たりをしまくる。ブレザーの影で髪を引っ張ったり、叩いたりとなかなかの暴力行動をしてくれちゃっている。暴れても尚、ブレザーが落ちないのは、俺の隣で落ちないようにレオンが抑えているからだった。ラルの部外者を見られるとまずいという言葉を聞いて、的確に動いた結果だけど、副産物としてあれこれ八つ当たりを受けるのは俺なんだけど。
「いってぇ! ツルギ、八つ当たりもいい加減にしろ! 声の音量も下げろ!」
「うぅっ……ばかぁ」
素直に下げる辺り、まだ可愛いげはある。まだ。
俺の前を歩くラルは、連絡用の端末だろう。それを使って、どこかに連絡をしているみたいだ。そんなラルの隣にはツバサがいる。ちらちらとこちらを見ているが、特に何かを言うわけではない。時折、聞こえてくる悪口に反応しているんだと思う。
「……あぁ、うん。……えぇ、と。そうだね。うん、説明ぃ? 私がぁ? それはそっちで……それとなぁく……うん。……お願いしますよ、フォース様ぁぁ! 面倒なんて言わず! 一生のお願い! 前にも使ったけど! 一生のお願いなのぉ~なんて、永遠に使い続けるワードだけど!」
相手はフォースみたいだけど、何を頼んでいるんだ? 会話からじゃ、推測は出来なさそうだけど。
その後も会話は続いていたけど、それもすぐに終わり電話を切った。ワンピースのポケットに端末をしまうと、次は別の小さな機械が出てきた。
「……ごめん。邪魔だった?……あ、ううん。……そう。それじゃあ、念のため見回りを。……えぇ。……お願いね」
フォースと結構テンションに違いがあったけど、これはこれで何かの連絡だろうか。見回りなんて言っているから、生徒会の人達に対するの指示なんだろうな。
こうしてみると、ラルは言うほどサボってはないし、やるときはやるヤツなんだなって思う。普段からそうしろってティールなんかは思ってるんだろうけど、それでも、生徒の信頼をなんで持っているのかってのは少し分かった気がした。……口には出さないし、出したところでって気もするな。
俺はそんなことを考えつつ、他のやつらと一緒に足早に生徒会室へ向かった。



~あとがき~
ぷんぷんツバサちゃんから黙りツバサちゃんに進化しましたね。いや、反応はしてるけど。

次回、生徒会室でひと悶着……?

ツルギ君があれこれしていたのは、妹であるツバサちゃんの会話に出まくっているらしい、ラルに対する嫉妬からでした。可愛らしいですね。(末期)

アラシ君視点だから、ラルがどんな会話をして、どんな指示をしているのかなんてのが出てきません。言わなくても分かるでしょ! 私的にはそんな感じです。

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第23話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界ではちゃめちゃパーティーなことをしている物語です。本編とは一切関係ございません。また、擬人化した前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回はラル視点で色々やってた。
ラル「もうそろそろ折り返しかなぁ」
そうだね。展開的には多分、折り返したはず。
ラル「作者の多分はあてにならない」
……それな!!


《L side》
ツバサちゃんの兄、ツルギ君はどうにかしてツバサちゃん達の追跡を振り切りたいはず。あちこち回るか、外に逃げるため、出口に近付くかの二択だ。私ならどうするだろう。……恐らく、敵をやり過ごしてから、外へと出る。外は障害物が少ないため、隠れて移動は出来ない。そんなところで姿を見つけられてしまえば、逃げ切るのも至難の技だ。
どこかでやり過ごす、か。
「外には出てないかな」
『はい。室内ですね。……えと、ツバサさん達と鬼ごっこみたいにあちこち逃げているようです』
インカムからユーリ君の声が聞こえてくる。ユーリ君がカメラと狼さんから得られた情報を私に伝え、それを元に位置情報を割り出す。一階にいるもんだと思っていたが、二階、三階と本当にあちこち行っているらしい。しかし、最終的には一階へと降りてくるだろう。階段で待ち伏せ……しかし、階段も何ヵ所かあるため、特定するのも難しい。いくら、誘導しようとしているとはいえ、不測の事態は大いにあり得る。
「今はどこにいる?」
『二階の空き教室です。この教室の近くに階段はないので、すぐに別の階へ移動はないと思います』
なるほど。それじゃあ、一階に来てもらおうかな。
「ユーリ、対象を一階へと誘導するよ。三階に行かせなければ問題ない。……どこの階段へ行ったかだけ教えて」
『了解』
私はどちらに来てもいいように待機しておこう。スピードなら負けないし、いざってときは雷姫を使って、加速する。こんなしょうもないことで呼び出すなと怒られそうだが、私の中では一大事である。何てたって、ツバサちゃんの評価に関わるのだ。教頭の機嫌を損ねると、せっかく取り付けた、ツバサちゃんの生徒会へと加入も撤回される。それだけは勘弁! 私の心の癒しがなくなる! 私情ではなく、事務的なものを上げるならば、仕事効率も全体的に落ちることが予測される。私のではなく、生徒会がこなす仕事効率が、だ。
『会長。中央階段を降りていきます』
真ん中か。端に移動するかとも思っていたけれど、概ね予想通り。
「OK。捕獲に移る」
中央階段から降りれば、左右に廊下が続いている。正面玄関は西で、裏口は東にある。どちらに行っても外には出られるだろう。しかし、正面は校庭と面しているため、横切らなければ学園の外へは出られない。裏口の存在を知っていれば、東へと向かう。知らなければ、西へと向かうだろう。
神経を研ぎ澄まし、相手の気配を探る。流石にここまで近付けば、知らない相手とはいえ、気配は辿れる。相手は東方面へと向かうらしい。
「私から逃げられるなんて思わないでよね」
私はどういうスタンスでいようか。問い詰めてもいい……が、ツバサちゃん達が追いかけてきているんなら、私がとやかく言う必要もないかもしれない。それならば、私は惚けようか。
視界に黒いローブを身にまとい、白のワンピース姿を捉える。魔術科の制服だ。ふわふわした白い髪にぺたっと倒れた耳。……ここから見ても、ツバサちゃんである。これで本人でした、なんてことになったら、恥ずかしすぎる。……これまでの情報からもそんなことはないと断言出来るけれどね。
「ツーバサちゃんっ!」
「ひゃあっ!? えっ!?」
後ろから半ば飛び付くようにツバサちゃん……いや、ツルギ君を抱き締めた。髪をわしゃわしゃと撫で回してみると、髪のふわふわ感が足りない気がする。……どちらかと言えば、さらさらしてる。いや、これはこれでありなんだけど。
廊下の真ん中ですることでもないが、どうせ、すぐにツバサちゃん達がここへ到着する。それまではツルギ君をもふもふしていようか。暇だし。
「仕事が嫌でここまで来ちゃったよ~♪ そこまで急ぎじゃないし、ティールも追いかけてこないんだけどさ。そういえば、ツバサちゃん、どうしてこんなところにいるの? 今日はまだ生徒会室に来てないよね?」
「あ、えっと……散歩……」
「……アラシ君もなしで?」
「だ、誰にだって、一人になりたいときってあるじゃないですか~? そういう気分なの!」
ところどころ、敬語じゃないツバサちゃんもいいなぁ。可愛い。
「散歩ってことは暇ってこと? じゃあ、付き合って! 最近、教頭のお小言がうるさくてぇ」
逃げようとするツルギ君を完全にホールドし、軽々と抱き上げる。そんな私に驚いているが、気付かないフリを貫く。近くの教室の扉を開けると、出口付近の机に軽く腰かける。膝の上にはツルギ君を乗せ、右手で落ちないようにツルギ君を固定する。左手でブレザーに着けたマイクへ手を持っていく。
「でもでも、ツバサちゃんを見つけて、捕まえちゃったら、嫌な気持ちなんて飛んでったよ~♪ 今日の任務達成した気分っ!」
「は、はぁ……?」
戸惑うツルギ君。どう振り切るのか考えているかもしれないけれど、逃がす気は全くない。マイクをオンにしていたため、会話を聞いていたユーリ君の苦笑が聞こえてきた。
『……流石です、会長。後処理に移ります』
あの言葉で察してくれた彼は、この後、キー君に連絡するだろうし、二人が中心になって後処理も進めてくれる。今回の件も終息に向かうだろう。この子が改まってくれれば、だが。
それにしても、膝に乗せた感じ、背丈はほぼツバサちゃんと同じくらいだろう。体つきはまあ、男の子かなって気もしないでもないが、筋肉質ってほどでもないか。これは偽者と気付ける人なんてそうはいないな。よくツバサちゃんを撫でる私ですら、疑うレベルだ。しかし、話し方や反応等の細部に違いが出てしまっている。そのため、私が今、抱いているこの子はツルギ君だと思える。
「ツルギ! お前いい加減にし……ろ? え、ラル!?」
やっと来てくれた。
「お、アラシ君!」
飛び込んできたのはアラシ君だ。ツルギ君を抱いたまま廊下に出ると、レオン君とツバサちゃんもいる。
「レオン君にツバサちゃん……? はっ! これが噂のドッペルゲンガー?」
「!?」
三人の姿を認識したツルギ君は、私に抱き着かれたとき以上に体を震わせた。ツバサちゃん達に追い付かれ、ビックリしているのかもしれないし、この後どうなるのか考え、想像したために震えたのかもしれない。
「あぁ、でも、こっちよりあっちの方が毛並みの艶はいいな。この子は偽者ってこと?」
「毛並みの艶で判断するのかよ!?」
アラシ君の突っ込みは最もかもしれないけれど、実際、その通りなのだから仕方がない。触っていて、もふもふ感はツバサちゃんの方が上だった。
……よし。この後のことは御兄妹でどうぞ。こんな状況で逃げられるわけがない。万が一があれば、私が再び確保してやろう。
そっとツルギ君を地面に降ろすと、ツバサちゃんがツルギ君に詰め寄った。視覚情報としては、ツバサちゃんがツバサちゃんを追い詰めると言う謎の光景となっている。映像でもそうだったけど、目の前でされると本当にややこしい。
「ツルギ!!」
「っ!」
ツバサちゃんに名前を呼ばれると、ツルギ君はくるりと後ろを振り向き、裏口方面へと駆け出した。しかし、そこにはレオン君が待ち構えていた。後ろにはアラシ君と私がいるし、目の前にはレオン君。そして、じりじりと詰め寄るツバサちゃん。
これぞまさしく、四面楚歌である。
「ど、どいてよ! レオン!」
ツバサちゃんの声でレオン君に迫る。かなり焦っているが、一応、ツバサちゃんを演じるつもりはあるらしい。が、レオン君がそんなことで退くはずもなく、少しの呆れた表情を見せた。
「ツバサの口調で言われても退けねぇかなぁ? それより、後ろに気を付けた方がいいぞ」
「えっ……っ!!」
「ツ~ル~ギ~!!」
ツルギ君が後ろを振り返った瞬間、ツバサちゃんが勢いよく飛び付き、二人はゴロゴロと廊下を転がっていく。レオン君は巻き込まれる前に、ちゃっかりと廊下の端っこに避けていた。
「白い毛玉が転がっていく……ふふっ」
「そこに反応するのかよ」
「お、止まったみたいだぞ~♪ ダブル毛玉!」
「レオン、お前もか!?」
あそこまで転がってしまうと目を回しそうだ。私達三人は半ば駆け足になりつつ、兄妹の後を追いかけた。



~あとがき~
捕まえました。

次回、アラシ君視点だぞー! ツルギ君のイタズラ行動の動機とは!
アラシ君視点が少なかったので、この話の終わりまではアラシ君でやろうかなぁ……?

美術室辺りからアラシ君視点をやってもいいんですけど、ツバサちゃんがぷんぷんするくらいしか展開が思い付かないので、省略します。ラルと合流前は、ツバサちゃんがぷんぷんしながら、学園内を駆け回るイメージでお願いしますね。それを男子二人は黙ってついていく……みたいな?

ここまで来るのに色々なパターンを考えていたんです。ユーリ君を連れたまま追いかけるとか、こっちの方が早いとかなんとか言って、お姫様されるユーリ君とか(笑)
ツルギ君もラルが離すんじゃなくて、無理矢理逃げ出すとかそんなん。まあ、そんなの些細な違いなので、結末は変わりませんけどね。

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第22話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で奔放に遊ぶ物語です。本編とは一切関係ありません。また、擬人化された前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
ぷんぷんツバサちゃん。
アラシ「前回のあとがきとほぼ同じこと言ってる」
レオン「気に入ったのかな~?」
アラシ「んなあほな……」
ツバサ「ぷんぷんっ!」
アラシ「今のお前、笑顔じゃん」
レオン「こういうのはサービス精神って言うんだぞ!」
今回はラルいきます。ラル視点の続きだと考えてくれれば間違いないですね!


《L side》
さて、捕獲とは言ったものの、どうするかまでは考えていない。私は魔法に詳しい訳ではない。かといって、後手に回るのも癪だ。私に出来るのは考えることだけ。
「そろそろ、ティール達が来るか。ん~……イツキ!」
「はい!」
「ここに残ってティールの監視を。フォース君がいるから問題ないと思うけど。私はそうだな……別件でどっか行ったってことにしといて。場所は知らないって言っていい」
「了解です」
「ユーリは私についてきて」
「はい」
拠点を移して犯人探しをしよう。さて、どこに行こうか……まあ、いくつか隠れ家はあるし、そこでいいか。いや、でも、今現在の監視カメラ映像が見たいし、どうするか。
そんなことを考えつつ、先程までつけていたパソコンのデータ履歴を整理し、電源を落とす。カメラの映像をここで見ていたなんて誰かに知られたらと言い訳が立たない。痕跡を消しておかねば。
「よし。行くぞ、ユーリ」
「はい。会長」
ユーリ君を連れ、生徒会室を出た。その間もどこに出没するのかを考える。昨日の傾向を考えれば、候補は絞られるが、それでも学園内は広すぎる。どうにか追跡出来ないだろうか。
「……魔法で探せない?」
「難しいと思います。ツバサさんのお兄様となれば、それなりの実力者だと思われるため、僕なんかでは感知なんて」
「あーいや、本人か、そうじゃないかなんてどうでもいい。疑わしい現場に監視を置けないかって話。誰かが近づいたかってのを知りたいだけだから」
「そういうことなら……少し考えてみます」
「ふむ。……分かった。任せる」
「はい。分かりました」
録画映像ならデータをネット上に残しているからハッキングでもいいけれど、現在の映像を見るなら、監視室行く必要がある。そっちに向かうか。
本校舎にある警備室に赴き、部屋をノック。入室を促す返事が来たところで扉を開ける。
「ユーリ君、今からあることは内緒の方向だよ☆」
「……いつものですね」
そうそう。いつもの。
「失礼します。生徒会の者なのですが、本日、魔法を使用し校内へ侵入した部外者がいるとの情報を得ました。そのために監視カメラの映像を見せていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
「は、はあ……?」
営業スマイルと部屋を出てくる前につけてきた腕章を見せつつ、警備員さんに頼んでみる。警備員は怪しい者を見るような目を私に向けていた。それが正しい。それが仕事である。生徒会とはいえ、生徒には代わりないし、誰かを探すためにカメラを見せろなんて早々ない。が、見せてもらうぞ。
「昨日から追っている事件の犯人なんです。解決にご協力お願いします。警備員さんっ」
ブレザーのポケットから探検隊バッジをちらりと覗かせる。本来の使い方ではないが、これがなかなかの効果があるのは経験済みである。生徒ではなくなるのだから、ある意味最強の手ではある。これが教頭なんかにバレるのはまずい話だけれど、手出しするなとは言ってあるし、言いくるめは得意だ。あいつ、チョロいし。
探検隊バッジを見ると、案の定警備員も表情が変わり、疑いの目はどこかへ消えた。丁寧な対応に変わり、部屋の中に案内される。私達の目の前には監視カメラの映像が一面に映し出されている。ある程度、ここで把握出来そうだ。それ以外のところをユーリ君に見てもらえればいいか。
「ユーリ」
「はい。僕の方で死角をカバーします」
小さく呪文のようなものを呟くと、手のひらサイズの狼みたいな四つ足動物が何体も現れる。そのミニ狼達は壁をすり抜け、どこかへと走り出してしまった。
「なにそれ。可愛い」
「まあ、本当は探知じゃなくて、追跡に使うんです。話からして、ツバサさんになっているなら、彼女か、それに似た人物を探した方がいいかと。見るだけならこっちの方が量産出来るので」
まあ、探知でなくても、動きを把握出来るなら何でもいいわけだが。というか、量産型のミニ狼さん……可愛い。
映像にはユーリ君の狼は映らないが、術者のユーリ君にはどこにいるか分かるんだろう。そちらは彼に任せてしまおう。私は後ろに立っている警備員に振り返ることなく話しかけた。
「本日、ツバサ・ケアルの入校は確認しましたか?」
「は、はい! 朝に一度……」
名前だけで誰なのか思い浮かべられるのは、ツバサちゃんの知名度の高さ故か。理事長の名前は相当だな。何かあったときのため、かもしれないけれど。
「午後は?」
「え、あっと……確認してきます!」
校門の警備員に連絡を取りに行ったのだろう。監視カメラ映像の映し出す部屋の隣にある事務室へ消えていったらしい。なんだか、申し訳ない気持ちになってきた。
「会長、柔道場の裏手に落書きされています」
「あら~……ま、やめる意味がないもんね。想定内だよ。昨日と同じように対応しちゃって」
「はい。イツキにそのように連絡を……あ、ツバサさんだ。他に二人いますね」
「うん? ってことは、三人が今回のことを聞き付けて、解決するために動いているのか」
仲のいい三人なら、犯人がお兄さんだって想定し、動くのも早いだろう。持っている事前情報の差である。
カメラは屋外まで映すようなものはない。ほぼ室内の映像で画面は埋め尽くされている。残念ながら、ツバサちゃん達を映しているカメラはない。
「三人に気付かれるかな?」
「いえ。微力な魔力でしか操っていないので、本気で探さないと気付かれない……あ、走った。対象、美術室に行くそうです」
え。なぜ、美術室? いや、考えなくていいか。……あ、あった。
教室の中を映さないが、その廊下付近はある。ユーリ君の言う通り、ツバサちゃんに似た子が美術室方面へと走る姿が映された。
「美術室の理由は分からないけど、書くものを補充するつもりなのか、逃げただけなのか……あ、動いた」
滞在時間は思いの外短く、すぐに美術室から出てきた。手には何も持っていないように見えるが、実際は異空間に道具を溜め込むなんてのもあるらしいし、見たものなんてここでは信じられない。
ツバサ(偽物)が飛び出した数分後、ツバサ(本物)が美術室へと入っていく。視界がややこしいな! 画面で見てると、どっちも同じじゃん。
「生徒会長さん、警備の者に確認したところ、一度、見かけたとのことでした」
連絡が終わったらしい、警備員からの報告を聞き、予測していた返答が返ってきた。
「うちの警備員も魔術に関する勉学を励むべきですね。それとも、探知するためのシステムでも開発しましょうか」
「ははっ……両方かな。後日、理事長に申し立ててみるよ。とはいえ、今は犯人をどうにかして捕まえよう。……ユーリ君、あのミニ狼って相手に見せることは可能?」
「はい。可能です」
「お兄さんが誰かに気付かれたと知れば、次は逃げるためにこの学園内を走り回る。……外に出られたら、追跡は不可能だし、狼さんで誘導しよう。お兄さんの場所は分かるね」
「場所は分かりますが……そ、そんな風に使ったことなんて……いえ。善処します」
いいね。流石、私が率いる生徒会メンバーだ。
「さてさて。お兄さんを捕まえてくるよ。ユーリはここに残って映像と狼さんを使って、私に情報を」
「やってみます」
「警備員さん、ご協力、感謝します。私はここを離れますが、信頼出来る後輩を置いていくので、よろしくお願いしますね」
「は、はいっ!」
ユーリ君に通信機を渡し、敬礼する警備員に会釈をした。この後向かうべき場所は美術室のある校舎だ。本校舎にはないから、早く移動しなければ。
ツバサちゃんに知られたとすれば、どうにかして外に出るために考え、動くだろう。正面玄関から出る可能性もあるが、裏口も存在するし、そもそも魔法なんて使われたらどうにもならない。お兄さんの使う魔法を私は知らないのだ。少なくとも幻術は使うけれど、他はどうなんだろう。
「テレポート的な魔法は~……学園内じゃ使えないんだっけ? 忘れた。……ユーリ! 相手を警戒させるため、わざと見せろ。今の心理状態からすれば、効果的なはずだ」
『はい。……ツバサさん達にも気付かれる可能性がありますが』
「構わない。どう思うかは本人達次第だけれどね」
『了解』
さて、どう動く?



~あとがき~
ふいー……最後はどうなるんだ……どっち視点で書くべきなんだ……?

次回、アラシ君視点でもいいんだけど、短そうなので、ラル君視点で犯人を追跡するぞ!

使えるもんは使う主義のラルさんです。
そして、これは通常運転です。常習手段です。基本的に、一人で暗躍するときはあの手この手使うラルですが、ティールの目があると、幾分か自重しますよ。幾分か。
後輩には止める権利はありません。まあ、ラルの味方をする後輩の目の前でしか、あんなの見せてないけどな! つまり、ユーリとイツキはラルからの信頼を得ているのです。信頼があるという点ではフォースもそうだけど、彼はティールの監視役が多いので、直接、彼女のやることなすことを目にするのは少ないかな。
ティールの前で悪いことをしないのは、彼が規律を大切にする性格だからです。色々面倒なので隠せるもんは隠して、バレたときは言えるものは言って、ヤバいのはのらりくらりとかわします。ここら辺は本編と変わらないですね。

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第21話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で奔放に遊ぶ物語です。本編とは一切関係ありません。また、擬人化された前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回は、初のアラシ君視点です。新入生組三人も別で犯人(ツルギ)君を追います。
アラシ君は人様のキャラ様なので、色々難しいけど……ほら、好き勝手出来ないじゃない!?
アラシ「そこかよ!?」
レオン「でも、俺達にも出番来たな! いえーい」
アラシ「お、おお……」
ツバサ「解決するぞー♪」
アラシ「おぉ……?」


《A side》
しかし、捕まえると決めたのはいいけど、実際の居所はさっぱりなのが現状だ。どこに現れるとかも分からないし、しらみ潰しに探すのも骨が折れる。ここは莫大な敷地を持つ学園。何も考えずに特定の人物を探せるほど、楽ではない。楽ではないんだけど、その場でじっとしているわけにもいかず、とりあえず、校内を歩きながら作戦会議をする。その間にも何人かに話しかけられたけど、適当にあしらっていた。
「今までの話って全部、昨日の話っぽいよな?」
「あぁ。だけど、アイツのことだから今日も来るだろ。……イタズラしに」
「にゃはは~♪ だよなぁ~? でも、手がかりもなし、か。ツバサ、ツルギの気配とか感知出来ないのか?」
レオンが聞くと、ツバサはふるふると首を振った。分かっていた反応だったけど、なかなか厳しいところだな。
「私の格好してるってことは、多分、幻術を使ってると思うの。そうなると、結構近づかないと分かんないかなって」
ツルギの得意分野だからなぁ。幻系の魔法。流石のツバサでも、分からないか。
幻術は文字通り、幻を見せる魔法。ないものを見せるそんな魔法だ。解くには術者以上の力を持った人が解除魔法をかけるか、かけた本人が解くしか方法はない。幻なんて聞くと何でもないように聞こえるが、高度になると、本物と偽物の区別がつかなくなり、バトルとかでも妨害としてもよく使われる。もちろん、高性能な幻だとしても、実際には存在しない。触ってしまえばないことに気づくし、今回もツルギ本人に触れば、ツバサではないって分かる……はずだ。本来なら。
なんせ、ツルギはツバサの双子の兄。背丈も見た目もほぼそっくりだ。仮に触れられても気付かれないんだろうな。
「双子ってこういうときに使えるってことだよな」
「成り代わりか~……イタズラの幅が広がるぜ♪」
ツバサはそんな性格じゃないから、よかったけど、レオンにいたら周りを困らせていそうだな。関わりたくねぇわ。
「んなこというなよ、アラシ~♪」
「うるっせ! 来んな!」
悪ふざけで抱きつこうとするな! 気持ち悪い! 昔から、俺の嫌がることを的確にしてきて、本当にムカつく! まあ、それで縁を切らない俺も俺。腐れ縁なんて、そんなものかもしれない。
「手がかりないなぁー! ミユル達に聞いてみっか? 望み薄いけど」
そうするか。見かけたかどうかだけでも聞いて、足取りを追った方がいい。なんでもいいから、情報が欲しいな。
「ん~……ツルギ、なんでこんなこと?」
「いや、多分だけど、嫉妬だろ~?  ラルのことを羨ましいっていうか……なんていうか?」
俺もそう思ってる。確実なことは分からんけど、何て説明すればいいかは難しい。言葉を間違えると、ツバサの機嫌を損ねるだろう。そうなったら、面倒だし……ツルギの身のためだ。
「嫉妬? ツルギが? どして?」
いや、どうしてって……ねぇ?
どうオブラートに包んでやろうかとレオンと考えていると、ジャージ姿の男子生徒二人とすれ違った。オレンジの髪と桜色の髪色。背丈からして先輩で、どっかの部活に所属してる人だろう。肩にスポーツバッグをかけて、どこかに移動する最中らしい。そして、オレンジ髪の先輩はちらっとこちらを見た。
「あれ? あの子、柔道場方面に向かってた子っぽくない?」
「いやいや。こっから距離あるから、見間違いに一票~」
「そーだよなぁ」
柔道場……!?
「あの! それ、本当っすか!?」
咄嗟に叫んでしまい、二人を驚かせてしまった。変に思われるかもと後悔したが、幸いにも先輩達は立ち止まってくれた。
「えっ? あ、おう。なぁ?」
「さっきだったよな。俺らは見かけただけなんだけど」
ツルギだ!
柔道場っていうと、運動系の部活動が集まるエリアか……!
「そいつ、まだ柔道場にいるんすかね? 俺達、そいつのこと、探してて~♪」
いきなり話しかけた俺とは違い、レオンは答えやすいように理由まで並べる。口が達者なレオンらしい。
「さあ? 向かうところを見かけただけだし。でも、周辺にはいるんじゃないか?」
「そんなに前じゃないから、多分だけど」
「ありがとーございます! 時間とらせてすんませんでした!」
レオンが軽く頭を下げ、俺も慌てて頭を下げる。少しの間があった後、二人の先輩の笑い声が聞こえて、頭を上げる。
「別にいいよ。会えるといーな」
俺達に軽く手を上げ、そのままどこかへ行ってしまった。ふぅ、親切な人達でよかった。
さて、気持ちを切り替えて、俺達も追った方がいいな。勘づかれたら鬼ごっこになりかねない。そうなったら、気配を辿れない俺らは後手に回っちまう。

急いで柔道場へ向かう。落書きをしたなら、多分外だろう。落書きを中に入ってまでしない。かなり目立つし、見つかりやすくなる。それはツルギも望まないはず。三人で辺り周辺をぐるっと探してみるも、犯人らしき人物は見当たらない。
一足遅かったか……!
「くっそ、いない……次はどこに行くんだよ」
「こっちもいないわ! 別んとこ行ったって感じかね~? まぁた、目撃者を探すところからかよ~」
別のところを探していたレオンが髪を掻きむしりながら、こちらに近寄ってくる。ツバサはどこ探しているんだろう。柔道場の裏手かな。
「そいや、レオン。お前はラルの悪口の落書きは見つけた?」
「いんや。表の方見てたし、そんな目立つ場所に落書きしなくね? アラシは?」
「柔道場から少し離れたとこを見てて、そこにはなかった……あ」
数秒の沈黙の後、たらりと冷や汗が俺達の頬を伝う。これはまずいのではないだろうか。ないのだろうか!!
「……ツバサ、見つけちゃった系? ダイレクトに御対面かな」
「やばいかも。ツバサ!?」
二人で柔道場の裏手に回る。俺達が見ていない場所はここだけだったからだ。すると、柔道場の壁を見つめて動かないツバサの姿があった。壁を見てみれば、そこには予想通りというか、話の流れで予測出来ていたが、『高等部の会長は仕事しないバカ会長』と書いてある。内容はまあ、間違っていない……けど。ティールとかも仕事しないとよく言っているし。バカまでは言ってないけども。
「バカ会長……子どもの悪口って感じ。こう……ストレートなところが特に子どもっぽい気がする~♪」
「ツバサと同い年の十二だ。これが普通なんじゃ……ツバサ?」
「ふ、ふふ……」
わなわなと肩を震わせ、狂ったように小さく笑っている。いつかも似たような状況を何年か前に見た。
これはキレる前兆だ。
「ツバ……ツバサちゃ~ん? いや、ツバサさん!? 落ち着いて!」
レオンの態度が変になっているが、慌てるのも分かる。俺も似たような気持ちだ。ツバサはゆっくりとこちらを振り返る。にっこりと笑っているが、目は全く笑っていない。寒気を感じると共にツバサの口が開く。
「やだなあ……レオン、私は落ち着ているよ?」
「あ、そうですね……」
え、怖いんだけど。落ち着きすぎて怖い!
「アラシ! レオン! 絶対に犯人……お兄ちゃんを捕まえるよ! 次の目的地は美術室!! 行くよ!」
感情的に動く辺り、落ち着いてるなんて言えないのではと頭の片隅で考えながら、バッと走り出すツバサを後ろから追いかける。なぜ美術室なのかは謎だけど、兄妹の勘……なのか。そこら辺は俺とレオンは分からない。黙ってついて行った方がよさそう。



~あとがき~
ぷんぷんツバサ様……

次回、ラル視点に戻し、アラシ君達とは違う方法で犯人を追います。

ラルの悪口とかどうしようとか考えて、バカ会長にしておきました。複雑なものではなく、単純でいいと言われていたので……はい。見せなくてもいいかなとも思ったけどね。

たまーにあるレオン君とアラシ君の馬鹿みたいな絡みは私の趣味です。楽しい。
主にレオン君がアラシ君を馬鹿にしています。

ではでは!

未熟な新芽が華開くとき

~前回までのあらすじ~
《この物語は死ネタ、暴力表現等の過激な表現が含まれます。閲覧する際はご注意ください》

前回はまさかのピカ登場でしたね。私もびっくり。
ヴァルツ「だな」
もえぎ「はうぅ」
今回はあれです。事件についてお話ししていく……つもりです! はい! 多分!!
ヴァルツ「こっからどう話に繋がるんだろうな」
もえぎ「えと、私がトリスさんを持つ……そんな話でしたね……」
そのはずなんだけどな。


待ち合わせているという場所はギルドからそこまで遠くありませんでした。場所は私もたまに行くカフェでした。テラス席でピカさんとそのパートナーさんだと思われるポッチャマさんが座っています。ピカさんが私達に気が付くと、にこりと笑ってくれました。
「さっきぶりですね~♪ こんなに早く再会するとは思いませんでしたよぉ」
「俺もだ。……悪いな、時間をとらせて」
最後の一言はピカさんにではなく、その隣のポッチャマさんに言っていました。ポッチャマさんは優しそうな笑顔で応えます。
「大丈夫です。きっと、大切な話ですよね? ぼく、席を外しましょうか?」
「いや。そこまでしなくていい。……ピカが聞かれると不味い話をするなら話は変わるがな」
「えへへ~♪ まあ、ものによりますけど、さっきミーさんに聞かれた話なら問題ないですよ。このまま話しましょう」
店員さんに断りを入れ、私とヴァルさん、ピカさんとそのパートナーさんの四人でお話をすることになりました。とはいえ、私は話すことなんて何もありませんから、黙っているだけだと思いますけれど。
「まずは改めて自己紹介を。私は探検隊スカイのリーダーのピカでーす。ランクは一応、マスターランク手前……だったかな? まあ、ランクなんてこの際、どうでもいいですけど!」
探検隊のランクはよく分かりませんが、それが凄いことなのは理解出来ます。というか、親方様が頼る相手ですから、実力者なのだという認識はありました。
「同じく、スカイ所属のポチャです。基本的にはピカのパートナーとして、アシストするのが仕事。あとはスケジュール管理とか……そんな感じ?」
……あ、私も自己紹介しなくちゃですね。そもそも、私のために自己紹介してくれてるんですもん。
「えと、ヴァルさんのパートナーの……もえぎ、です。普段はえっと……ギルドのお仕事をやってて、ヴァルさんとお仕事をしてます……です。はい」
「……終わった?」
「ここはヴァルツさんもする流れですよー!」
黙って聞いていたヴァルさんが飲んでいたコーヒーをソーサーに置いて、私達に向かって問いかけました。そんなヴァルさんにピカさんはにこにこと笑顔で茶化しました。……私にはそんなこと出来ません。
「必要か、それ」
「もう。ノリ悪いなぁ? いいですけれどね。さて、何を知りたいんですか?」
「ピカはどこまで把握しているのかを」
「噂程度です。ぶっちゃけ、探検隊の中でも色々と流れてきてるんですよね。それくらいの知識です」
「ふむ」
明日向かうとなると、今日、大方の情報収集をする必要があります。やることは多いです。
「ミーさんが言ってたかもですが、『神殺し』はあくまで通称。私は一連の事件を起こしている犯人を指す言葉だと思います。由来は、犯人の通り名か能力か。……あるいは、犯人の狙いに意味があるのかもしれませんけど」
「ぼく、初めて聞いたけど、そんな話あった?」
「私達の大陸は平和だからね。物騒な話とは縁がない。アンテナ張ってる私でさえ、そこまで入ってきてないんだもん」
本来、こちらの仕事を請け負うような仕事をしていないピカさん達を引き留める理由はないです。マスターも無理に受けさせるわけにはいかないですから。
「……私の主観でお話すると、何か目的があると思うんです。だって、殺りたいだけなら、どんどん移動すればいいし、自ら動くべきです。でも、相手は動かない。場所に意味があるのか、誰かが来るのを待っているのか、とかね?」
「人物に意味がある、と?」
「人物だとするなら、お目当てじゃないし、顔見られたから殺す。……今の状況はそんな感じかもですね~……あとは、能力の場合か。“神殺し”……パッと思い付くのは神と呼ばれるポケモンを殺したって線ですけど、彼らは基本、不老不死なのでないです」
私とあんまり歳が変わらなそうなのに、ぽんぽん思い付くようです。ヴァルさんが頼るくらいですから、ある程度予想はしていました。ピカさん、頭の回転がとっても早い人なんですね。
「じゃあ、他に神ってつくものは何かってことになります。私は身近にあるので、“神器”を思い浮かべました。神器……正確には神霊かもですけど、どちらにせよ、無力化してしまうみたいな。そうなると、神器を身に宿らせる使い手にも影響が出る……かもしれません」
笑顔で恐ろしいことを言います。どれも可能性の話ですが、共通して言えることは、相手がどれだけ危険なのかということです。こちらの人員を簡単に切り抜けられるくらいですから、一筋縄ではいかないでしょう。
「全てを総合して考えたとき、自分の身を取りました。自分に危険が及ぶなら、同行する仲間にも被害が及ぶし、結果的に周りに被害が飛ぶ恐れもある。二つ返事で了承出来る話ではなかったので、私はお断りした所存です」
「時間があれば受けていた?」
「下調べする時間があれば、考えなくはなかったですよ。まあ、したところで、受けるかは五分五分でした。今の噂だけで予測出来る可能性が危険すぎますから。本業が探検隊の半端な私達が、首を突っ込める話ではない」
探検隊のリーダーという肩書きを持っているピカさんは、周りの影響と自身の力を見極めて、今回の判断をしました。全てが推測に過ぎませんが、それだけでも力が及ばないと考え抜いた結果と言えます。大陸も違うし、職業も私達とは違うので、お断りしたのは大正解なのかもしれません。
「確証がない話とはいえ、可能性はある。……しかし、今回送り込まれた者達は言うほど弱くはないと思うんだが」
冷めてしまった紅茶に口をつけていたピカさんは、ヴァルさんの言葉にぴくんと耳を動かしました。そして、にこりと笑います。その笑顔はとっても嘘っぽくって、わざとそんな表情をしているように感じてしまいました。
「あっは♪ ヴァルツさん、分かってるくせに」
「……まあ、そうだな」
「あ、あのさ。ピカの言う通りだとして、“神殺し”って呼ばれるなら、神器……神霊がやられた事実があるってことになるよね? そんなのあり得るの?」
今の話で気になったらしい、ポチャさんが遠慮がちに質問を投げ掛けました。確かにポチャさんの言う通りです。神霊が最低でも一つはやられていないと、その名はつかないでしょう。神器はとっても珍しい武器。この世にいくつあるかも知られていないくらいに珍しいものだと聞きます。そんな武器が簡単にやられるのでしょうか?
「そう言われるとそうだね。じゃあ、この線はないかも~」
ピカさんはさらっと自身の答えを捨て、あっけらかんと答えました。ここまで真剣に話したのに。
「適当な奴」
「言ったでしょ? 私の主観で話すって。私にとっての最悪を話したまでですよ。どうせ、現地に行って下調べするんだから、私の考えなんてなくても同じでしょうに。ヴァルツさんは慎重派なんだから」
「こんな仕事をしていれば、慎重にもなるさ。お前も似たようなものだろう?」
「あ~……そうですね。そうかもです。……なので、主観的な意見としてもう一つ。神霊がやられたとすれば、一筋縄ではいかない。神器の強さにもよりますけど、ヴァルツさんでも敵わない可能性すらあり得ますからね。……お気をつけて」
「あぁ。生きて帰れるように頑張るよ」
適当な返事をすると、ピカさんは椅子から立ち上がると、ヴァルさんに何かを手渡しました。何なのかは私からでは見えませんでした。
「餞別です。役に立つかは知りませんけど」
「……お前の餞別は別の意味で恐怖しかないんだが、有り難く貰い受けるよ。……手間かけさせたお詫びにここは俺が払うよ」
「お、やったぜ! ありがとうございますっ♪ あ、例の件はよろしくです~」
「あぁ。続けておく」
二人にしか分からない会話を手短に済ませると、ピカさんとポチャさんは帰っていきました。帰り際に、「今度、ゆっくり話しましょうね」と明るい笑顔で話しかけてくれました。ほぼ喋ることも動くこともしていなかった置物のような私を気にかけてくれていたようです。ピカさん、いい人ですね。
「ヴァルさん、ピカさんに何をいただいたのですか?」
「何だろうな」
すでにウエストポーチに仕舞ったみたいで、手元には何も持っていませんでした。残ったコーヒーを飲み干すと、伝票を持って、会計を済ませに行ってしまいました。私も慌てて、アイスティーを飲み、席を立ちます。
今回の事件と言いますか、お仕事は一筋縄ではいかない。……そんな気がします。元々、仲間が何人もやられているので、初めから簡単なんて思ってなかったんですけれど、よりそう感じたと言いますか。……なんて言うんでしょう? こんなに不安にさせられるお仕事は初めてです。
私は、ヴァルさんのお役に立てるのでしょうか?



~あとがき~
ピカはどんなときでも柔軟に対応出来ますね。戦えるし、推理も出来るし、万能スキル持ちです。

次回、調査前夜。平和な夜をお届けします((

特に言うことはないですね。
本題にすら入れてませんし……(遠い目)

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第20話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界ではちゃめちゃやってる物語です。本編とは一切関係ありません。また、擬人化した前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
落書きの犯人の目星つけたラルサイドでしたが、もう一人の被害者と言えるツバサちゃん達に視点を置きます! 時間はラルが考えを言っている最中くらいだと思ってくれればいいです。
やりやすいだろうあの方にお願いします。


《A side》
今日も長い授業が終わり、ぐっと背伸びをした。二、三秒伸ばした後、力を抜いて帰り支度を進める。つっても、俺はこれから部活だし、その前にツバサを生徒会室へと送り届ける必要があるけど。
「アーラシ! 早く行こー!!」
「はっや! もう終わったのかよ」
「だって、早くラルさんに会いたいんだもん。昨日は早く帰っちゃってお話出来なかった!」
さっさと支度を終わらせたツバサが待ちきれずに、俺の目の前まで駆け寄ってくる。出来なかったとは言うけど、一時間くらいはいたはずなんだけど。それくらいあれば十分だろ。どんだけ、あいつになついてるんだ。どこがいいのか未だに謎。
「あーはいはい。もう終わっから、待ってろ」
「はーい♪」
やれやれ。本当に意味わからん。
教科書等々を鞄に入れ、立ち上がる。そんな俺を見たツバサは、分かりやすいほどに笑顔になった。この後、生徒会室に向かう道すがらレオンと合流し、ツバサを送って、お互いに部活に行く……なんでもないいつもの日常だ。
「あ、ツバサちゃん!」
「はい! どうしましたか~? パノさん」
教室を出ようとした矢先、後ろからクラスメイトの女子に話しかけられた。明るい茶髪に緩くウェーブする髪。長さは大体、肩につくくらいの長さだ。相手は少しだけ言いにくそうに口ごもるが、やがて意を決したように話し始めた。
「あのね。昨日の放課後、ツバサちゃん、中等部の校舎の方に行った?」
「中等部の校舎? いえ、行ってないですよ?」
「そ、そうだよね」
相手のホッとした様子が不思議で、黙っているつもりが、思わず口を開いた。
「……昨日? なんかあったわけ?」
「あ、実は、昨日、いくつか落書きがあったって話があって。……今は生徒会の人達が消して、もう残ってないんだけどね。その落書きをしているところを見たって人がいて……その、ツバサちゃんみたいな容姿だったって」
ツバサみたいってことは、白くて垂れ耳の狐族?
俺が言うと、こくっと頷いた。彼女はあくまで聞いた話だからと前置きし、話を続ける。
「落書きの内容がね……『高等部の生徒会長はサボり魔!!』って内容で。でも、ツバサちゃん、会長さんと仲いいし、とっても楽しそうにお話ししてるから、あり得ないって分かってたんだけどね」
「ふえっ!?」
わざわざ、ねぇ……?
話しかけてきた相手は、ツバサではないと確認が取れるとスッキリしたようだ。引き留めたことを謝罪して教室を出ていく。俺とツバサはなんとも言えない気持ちになっていた。
ティールやフォースから話を聞く限り、ラルはサボり魔らしいし、嘘は書いてない……んだろう。が、こんなことをする意味が分からなかった。
「むぅ」
ツバサはツバサで、大好きなラルを悪く言われたせいで、少しむくれている。さっきの笑顔はどこへやら、だな。気持ちは分からんでもなかった。好きなものを馬鹿にされるのって嫌になるしな。
さっさとレオンと合流して、何か対策を考えないとまずいかもしれない。悪口を言われているラル辺りに……あ、でも、ほっとけほっとけーとか言って興味を示さないかも?
なんてことを考えつつ、冒険科一年の教室へと辿り着く。暇そうに座っている腐れ縁の猫族に呼び掛ける。
「レオン」
「お、来た来た~♪ っと、ツバサはなんかご機嫌ななめなのか? どしたどした!?」
「実は……」
今さっき聞いてきたものをレオンに説明しようとしたところで再び、誰か話しかけられた。今度は見知らぬ男子生徒だ。
「ねえねえ! 君、昨日……」
あーくそ! まただよ!!

レオンと合流した後も何度か話しかけられ、その度にツバサの機嫌は悪くなっていく。内容はどれも似たようなものだが、落書きの場所が違ったり、内容が違ったり。そもそも書いてないけど、言い触らしていたりと、なかなかの悪さをしているらしい。
ツバサは、自分が勝手な罪を着せられたことに対する怒りではなく、ラルを悪く言う犯人に怒っている。犯人に怒るのは間違ってないけど、理由はラルなんだよな。
「んー……」
風船みたいに膨らむツバサのほっぺをちらりと見て、考える。いよいよ、大事になってきている。真面目に対策しないと……
「ツバサ、今日は大切な仕事ってあるのか?」
「ほ、ほえ? ううん。ないよ? どうしたの、アラシ」
「よーし! なら、サボっても問題ないなっ!」
「ふえ!?」
どうやら、俺とレオンの考えていることは同じらしい。シャクだけど。
「ツバサのそっくりさん、俺達で捕まえるんだよ」
「そっくりさんつーか、アイツだろうけどなぁ♪ そうと決まれば善は急げ! お、ティール!」
レオンの言っているのは少し違う気もするが、突っ込むのも面倒だから黙っていよう。レオンが手を振る先には、あいつの言う通り、ラルの相棒であるティールがいた。ティールは両手にファイルを何冊も抱えているが、涼しい顔をしている。見かけによらず、力持ちだ。
「三人とも、どうかしたの?」
「今日、急用が出来たから、生徒会業務を休むって言いに行こうって思っててさ! ナイスタイミングだぜ、ティール! な?」
「え、あ、う、うん!!」
いやいや、吃り過ぎだろ……
しかし、ティールは深く考えていないのか、ツバサの日頃の行いなのかは分からないけど、そっか、と笑顔で返事を返す。
「別にいいよ。ぼくもまだ生徒会室に行ってないけど、ラルにも伝えとく」
珍しい。さっさと顔出しそうなもんだけど。
「いつもならね。フォースが忘れた資料とかがあるって言うから、手分けして取りに行っててこれから教室に運ぶところなんだ。……と、引き留めてごめん。それじゃあね」
ふーん? フォースも案外、忘れっぽい、のか? ま、今は気にすることじゃねぇか。ティールの了承も得たことだし、こっちはこっちでやらねぇとな。
「まずは情報集めだよな~……というか、ツバサ、アイツにラルの話した?」
「アイツ……?」
ピンと来ていないツバサは首を傾げる。ここまで来て、気付かないのか。
「こんなことして得するの、ツルギだけだろ?」
高等部に入学して分かったのは、生徒会長としてのラルはかなりの支持数を得ているということ。先生からの評価はまちまちだったけど、生徒からは絶大な人気があると言ってもいいと思う。色々、聞いていると、人数合わせに様々な部活の助っ人をしたり、困ったことがあれば親身になって話を聞くなど、生徒の手助けをしているらしい。そんなあいつの悪口を言うような生徒はきっといない。なら、誰がやったのかって話だけど、ツバサに成り代われる外部犯で、ラルに嫉妬するような奴ってことだ。
そんな風に考えると、ツルギの顔が一番に浮かんだ。
「え! ツルギ? 確かに、何回かしたことあるけど……これ、ツルギのイタズラなの?」
恐らくだけどな。
ツルギはツバサの双子の兄貴。今は訳あって離れて暮らしているが、間違っても夫婦の問題とかそういうのではない。だって、ツバサの両親、今でも仲良しだし。そんなツルギはツバサのことが好きだ。恋愛的意味合いは全くなく、兄妹愛としてだが。何より兄妹だし、下を大事にしない上はいない……と思う。少なくとも、俺の周りはそうだ。俺も兄貴がいるけど、多分、そう。大事にはされてる、と思う。面向かって言われた記憶はないが、大切にされてると感じることはある。……いや、俺は何の話をしてるんだ? これ。
「こんなことした理由は、本人に聞かなきゃわかんねぇけど、十中八九、ツルギだな」
「だなー! んじゃまあ、目星もついたし、探索開始だな~♪」
レオンのやつが妙に楽しそうだなって思うのは俺だけか?



~あとがき~
アラシ君視点です。

次回、ど、どっち視点にしよう(困惑)
アラシ君かな。よし、アラシ君です!

私の中のアラシ君のイメージはラルに弄ばれるようなイメージ(←酷い)なのですが、彼女が関わっていないところでは、普通にリーダーみたいに先導してくれるはずなのです。ティールと同じ(?)常識人枠。
ってことで、彼視点なのだけれど、どうかな。これで大丈夫なのかドキドキしてます。
そして、いつか、アラシ君のお兄さんも出したいなと。理由? 私が好きなんです、アラシ君のお兄さんのことが!!←

最初の方で話しかけてきた女の子は同級生のパノちゃんです。貰ったプロットには名前とかなかったけれど、同じクラスメイトなら、名前も顔も知っていて当然だよなと思い、適当にぱぱっと書きました。イメージはふんわりした女の子です。ケモ耳さんがあるかまでは考えてないけど、どうなんだろうね。あるなら、熊とか、リスとかそこら辺の森の動物……?

ではでは!