satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第148話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で頑張る物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ユーリとアリシャの父、レイフィードが出てきたり、なぜか研究所に入ろうとしないリランとの攻防が始まったり色々ありました。
今回はそんな攻防から続けてやって参りますよ。


手伝える身内は皆参加しているにも関わらず、リランはびくともしない。後ろへ下がらなくなっただけまだましなのかもしれないけれど。
「そんなにこの前のトラウマなのかぁ~」
「な、何したの、父さん」
「色々あってねぇ……えへ」
可愛くないからっ!
しかし、このままではこちらもリランも消耗戦。こちらがスタミナ勝ちするならいいが、リランが勝ってしまったら、どこかへ走り出してしまうかも。
……仕方ない。
「僕、ちょっと抜ける。……あの、頑張って」
「え、あ、ユーリ先輩!?」
握っていたリードを離し、傍観し続けていたノワールの元へと近寄る。ご主人が頑張っていたというのに、こいつは他人面である。
ノワール
「……」
「命令だ。リランを捕獲しろ。ただし、傷付けたり、状態異常にするのは禁止。できるな?」
「……がう」
当たり前だと一言返され、やれやれと言わんばかりにゆっくりと立ち上がる。体の大きさを多少大きく変化させ、のそのそリランに近づく。そして、リランを繋ぐリードを前足で押さえ、リランの動きを制限した。
「せんせー! やるなら! 早く!」
「がう」
「……! レオンさん達はリランから離れても大丈夫です!」
レオンさん達が離れる瞬間、ノワールはリランの頭を前足で押さえつけ、その隙に首根っこを咥える。そして、意図も容易く持ち上げてしまった。
ノワール! お前、神様だな!!」
「ノワー! お手柄だよー!」
レオンさんとアイの称賛には耳を貸さず、のそのそと僕のところまで戻ってきた。
「よくやった。ノワール
「…………わふ。あんっ!?」
自分がどうなっているのかようやく理解したらしいリランがバタバタと暴れだすものの、ノワールの拘束から逃れることはできない。びくともしないノワールだが、暴れられるのは不快だったのか、キッと表情が変わる。
「ぐぅ……がぁぁっ!!」
「わふっ!? くぅん~……」
ノワールの一喝に流石のリランも大人しくなった。しょんぼりしつつ、ノワールに身を任せることにしたらしい。
「あ、ありがとうございます、ユーリさん。ノワールも、ありがとうね」
ツバサさんに優しく撫でられ、ノワールは顔には出さないが、尻尾はぱたぱた動いている。ツバサさんに撫でられたのが嬉しいのだろう。
「いえ。……それで、リランはどうすれば? 父さん、どこのエリアに行くの?」
「んーとねぇ……第四までお願いしてもいい?」
第四エリアと呼ばれるそこは、一般的に立ち入り禁止区域だったはずだ。僕は父さんに会いに何度もここへ来ているけれど、第四エリアには足を踏み入れたことはない。
「ツバサちゃんと一緒に来たのなら、他言無用という話も聞いてるんだよね~? ユリくんだし!」
え、何その信頼?
「お願いします、ユーリさん。リランを運ぶの、手伝ってもらえませんか……?」
「父さんもそう言うなら、僕は構いませんよ。……ノワール、中まで頼む」
「ぐぅ」
「くぅ~……ん」
リランの悲しそうな声に罪悪感を抱かないわけじゃないけれど、飼い主のツバサさんに言われちゃうと、下手なことはできない。
ごめんね、リラン。

この魔術研究所には第一エリアから第五エリアが存在する。各エリアで研究している分野が違い、今回向かうエリアは主に精霊を扱うところだったはずだ。
父さんの研究分野、精霊じゃなかったと思うんだけれど……んでも、この人、分野がころころ変わるから、僕の知らないところで配置代えでもあった可能性はある。
「第四はね、一部の研究者と関係者以外立ち入り禁止なの~♪ だから、パパがいてもアイちゃんもユリくんもほんとは入っちゃ駄目なんだぁ」
「パパの研究室、そこなの?」
「違うよ~? ここ何年かは変わってな~い」
じゃあ、石の研究か。
「そそ。変わらず魔力石を眺める日々だよ。……あ、この前のユリくんが言ってた石ね、測定と鑑定、終わったよ。加工はまた今度やるから待っててね~」
あぁ、うん。
この会話だけで何のことだか分かったのはイツキだけだったらしく、ぽんっと手を叩いた。
「あ、あのクーちゃんの?」
「クーちゃんの。せっかくだし、試したくて」
「……俺でか」
「お前でだ。リリアも一緒だから辛いのは一瞬」
「いいけどさぁ……毎回俺を実験台にするのよくないよ? 端から見たらいじめだからね!」
人聞きの悪いことを言わないでほしい。ちゃんと試合形式で行っているし、僕もイツキの技は受けてるんだ。おあいこだよ。
クーちゃんの名前が出て、アラシさんやレオンさんも思い出したらしく、「あ~……」と呟いていた。
「クーちゃんって、あれか~? ツバサの精霊の……あの、ちっこい狐?」
「うん。そだよ。大会でユーリさんの麻痺を治してた精霊さん。クーちゃんが結晶化させた石をユーリさんにあげたの。……レイさん、魔力石でもないあの石を分析したんですか?」
「俺の専門分野だかんね~♪」
……精霊。
「精霊の研究エリアへ行くということは、リランは犬ではなく精霊なのか?」
「ツバサの精霊? えーでも、この前は狐だったろ? ってことは、実はツバサじゃない誰か……お前か、アラシー!」
「見た目で判断してませんか、イツキ先輩!? 確かに、俺が呼び出したんなら犬っつーか、狼ですけど! んでも、属性は火属性。白はないです」
精霊は術者の属性に合わせたやつが呼び出される。だから、見た目がそれっぽいからといって、アラシさんが呼び出したとは考えにくい。
「んお。そっか……え、んじゃあ、ツバサの精霊って考えはあってるのか~……?」
「そうですね。……完全とは言えないんですけど」
「うーん? よくわかんな~い」
「リランは普通じゃないってことだよ、アイちゃん。ま、詳しいことはまたあとでね」
雑談混じりに話をしている間に、目的地である第四エリアの入口へと到着していた。僕らの話に何ら興味のないノワールはとっくに到着していて、「おっせぇよ」みたいな顔をしていた。
「ありがとね、ノワール。さっすが、ユリくんの相棒精霊だ~」
「えらいえらーい!」
父さんとアイの言葉に満更でもない様子のノワール。その証拠に尻尾がぱたぱたと動いている。
父さんが扉近くに設置してあった認証システムを軽く操作し、扉を開ける。
「ほらほら、ユリくん達も入って入って~」
父さんに言われるがまま、中に入る。エリア移動しただけだから、何か景色が変わるわけではない。侵入禁止区域という雰囲気はなかった。
「んと、その扉だ。そこ入ったらノワールはリラン降ろしていいからね。ツバサちゃんも、魔法解いてだいじょぶだかんね~」
「がぅ」
「はーいっ」
端末を操作して、入ってきた扉にロックをかけた父さんは、近くの部屋の扉を潜り、ちょいちょいっと手招きをする。それに素直に応じたノワールは、言われた通りにリランを優しく地面に下ろした。
「ここまで来て逃げるのはないと思うけど、もしものときは、ノワール、頼んだよ~♪」
「……がう」
「にゃはは♪ ユーリ先輩の精霊なのに、レイフィードさんの精霊みたいっすよ~?」
「えへへ♪ 仲良しだから」
「ぐ、ぐるぅ……がう」
昔、研究だーとかなんとか言われて、色々とやらされたからだろうか。ノワールは父さんの言葉に、案外素直に従うのだ。不服そうではあるけども。
皆と一緒に入った部屋は検査室というか、動物病院の診察室みたいなところだった。僕ら全員が入っても広さには余裕があり、周りにはいかにも高価ですと言わんばかりの最新機器が所狭しと揃っている。
「イツキ、壊すなよ」
「触りません。だいじょーぶ」
流石の馬鹿もこれらがとてつもなく高価であると判断できたらしく、両手を上げて、触りませんアピールをする。その辺はアホっぽいが。
「イツキ先輩、ユーリ先輩からの信頼なさすぎじゃないっすか?」
「いつものことですよ、アラシさん」
「よし! じゃあ、解除しますね♪」
と、ツバサさんが扉付近でじっとしているリランに近づき、そっと頭を触ると、光に包まれた。次の瞬間、優しく暖かな光に包まれたリランが、犬からドラゴンへと変化していた。
ドラゴンになったリランは無理矢理連れ込まれたのが相当嫌だったのか、かなりいじけてしまっている。そんないじけるリランを見ても、ドラゴンには代わりはないので……
「ドラゴン!! かっこいー!!」
「わあー! 犬じゃなくってももふもふなんだね、リラン、かわいいー!」
という、二人の反応はある意味、間違ってないのだろう。
しかし、ドラゴンはドラゴンでも……白竜か。
「ねえ、父さん。リランって父さんの持ってる文献にあった……白竜なの?」
「んふふ。ユリくんは勉強熱心だねぇ~♪ そだよ。その白竜さんだろうって言われてる。まあ、まだ色々と研究中ではあるけれど……さぁて、リラン。検査の時間だよ~♪」
「わうぅぅん!!」
……あの、全力で嫌がってますが?



~あとがき~
レイフィード、パッパに思えなくなってきた。

次回、検査を嫌がるリランVS検査したいレイフィード! どうなる!?←

白竜の説明は以前しましたので、ここでは省略します。まあ、ユーリはすでに知っているみたいですね。イツキとアイは知らなくても、気にしないでしょう。ドラゴン!! すげー!! となってるだけですからね!(笑)

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第147話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわいわいしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回からまた新しいお話が始まってます!
リランとノワールの話です。前回言い忘れたけど、ノワールはお初キャラでした。名前だけなら大会で出てたんだけどね。お姿はここが初めてですね!
よろしくな! 今後、出番があるのか知らないがな!


リラン自体は何度か生徒会室で見かけていた。リランとの初対面は、この子が会長にお腹を見せてブラッシングされているところで、多少なりとも驚きはしたけれど。
「ユーリさんはいても、ノワールはいないことが多かったですもんね~……仲良くなれるといいんですけれど」
「うーん……どうでしょ。ノワール次第かな」
今のところ、吠えたり前足で押さえ込んだり、凪ぎ払ったり等々、乱暴にしていないから大丈夫かな? 分からないけど。
「真っ白! にぃ、リランもふもふだよ~♪」
「ちょ、お前、勝手に」
「あ、大丈夫ですよ、ユーリさん。アイちゃん、リランはここ撫でると喜ぶんだ~♪」
元々、人懐っこいリランは初対面のアイにわしゃわしゃされてても、全く気にしていないみたいだった。むしろ、構われて嬉しそうですらある。
「そいや、三人で散歩か? それとも、どっか行くんか~?」
「あ、えーっと……まあ、色々と……」
イツキの質問にアラシさんは戸惑いつつ、ちらりとリラン達の様子を窺う。リラン達はこちらを気にする様子はなさそうだ。それを確認したアラシさんは、声を潜めつつ、教えてくれる。
「……トイブロ大学の近くに研究所あるじゃないっすか。ちょっとその辺まで行く用事があって」
研究所ってあの魔術研究所、ですかね?
「そうなんすよ。あと、『研究所』ってフレーズをここでは、あんまり言わないでくれると助かります」
「? おう! よく分かんないけど、分かった! んでも、そこって確か……」
だよな……多分。
そこは僕の父が働いている研究所だ。そこにツバサさん達がどんな用なのだろう?
ツバサさんは魔術に精通するケアルの血筋。それ関連だろうか。優秀な人って色々とやってそうだもん。その辺、僕には分からないが。
アラシさんとレオンさんと話していると、後ろから何かに引っ張られる感覚がした。アイかノワールだろうと思いつつ振り返ると、いつの間にか大型犬くらいの大きさに戻ったノワールがいた。
「? どうした、ノワール?」
「がぁう。がう」
……? ノワールの言葉に僕はリランを見る。そして、再びノワールに視線を戻した。
「僕には犬にしか見えないけど?」
「……わふ」
「うるっさいなぁ。……仮にお前の言う通りだとしても、僕に見破る力なんてないよ」
「ユーリ先輩? ノワールがなんて……?」
「えっと、リランは本当に犬なのかと聞いてきたんです」
「「「…………えっ!?」」」
「すみません。ノワールが変なこと……? 皆さん?」
三人で声を揃えて驚いたあと、僕にくるりと背を向けてひそひそ話を始める。聞こうと思えば聞こえるんだろうけれど、きっと聞かれたくない話なのだろう。ここは知らないふりをしておこう。
一方のイツキはツバサさん達の様子を気にするでもなく、アイに遊ばれるリランを見て、ノワールを見る。
「せんせーと同じ犬っしょ!」
あ、それは禁句……
「がぁうっ!」
イツキの犬扱いが気に入らなかったのか、ノワールは容赦なく飛びかかる。それを危なげなく避けるも、ノワールは果敢にイツキに飛びかかっていく。
「ぎゃー! ごめんって! せんせ、狼だよなー! 分かってるってばー!」
「うがぁぁうっ!」
「ひぃ! そんなに怒らんでもー! というか、あれだぞ、アイちゃんと遊んでるときの先生は犬の中の犬……」
「ばうっ!」
なんで自分から地雷を踏みに行くのだろう。本当に馬鹿だな。
ノワールとのおいかけっこを見ていると、なぜかそこにリランとアイも参戦してくる。一人と一匹が楽しそうに見えたのかもしれない。結果、イツキを一人と二匹が追いかけるという展開に発展した。
「あ、あの、ユーリさん! このあとお時間ありますか?」
秘密の会議を終えたツバサさんから、突然の質問が飛んでくる。その理由を聞く前に、彼女は更に続ける。
「もし、よろしければ私達と一緒に研究所へ行きませんか? そこで見たものは他言無用でお願いしたいんですけれど……その代わりと言ってしまうのは変かもしれませんが、ノワールの疑問を解決できるんです」
ノワールの?
仮にここで断ったとして、やることと言えば、イツキの勉強を見るくらいだ。それならば、ついてった方が有意義かもしれない。
それに、もしかしたら、父さんにも会えるかもしれない。せっかくだし、様子を見に行ってみよう。
「分かりました。お付き合いいたします。……ノワール! 戻れ!」
一方的なおいかけっこをしていたノワールを呼び戻す。不服そうではあるが、一応、素直に戻ってくる。ついでに、アイとリラン、イツキもその後ろを歩いてきていた。
「もー、せんせー、容赦なーい」
「ノワもリランも速いね!」
「あんっ!」
アイに褒められ、嬉しそうにしている。もう仲良しになったみたいだ。

ツバサさん達が向かっていたトイブロ大学は公園から出て、徒歩十五分ほどの距離にある。トイブロ大学はこの辺では有名な私立大学で、多くの学部学科があり、ここで専門的知識を学べるのだ。そして、そこから徒歩十分圏内に魔術研究所は建てられている。この距離だからか、トイブロ大学と研究所の共同研究も盛んに行われていた。
……そんな研究所の入り口に僕らは来ていた。
大きな建物を守るように塀と門、そして警備員。いつ来てみても、厳重な警備だ。
「パパがお仕事するとこだ。にぃ、今からパパに会いに行くの?」
「ん~……もしかしたら会えるかもね」
「俺も久しぶりに会いたいな~? と、それはいいとして。アラシ達は何してんのー? 綱引き?」
僕らの後ろで二人と一匹の攻防戦が繰り広げられていた。一匹は研究所からどうにかして離れようとし、二人はどうにかして研究所へ近付こうとしていた。子供とはいえ、男子二人の力をものともしないリランは何者なのだろう。ノワールが言うには、犬ではないらしいけれど。
ちなみに、ツバサさんは研究所へ入るための手続きに行ってしまい、この場にはいない。
「み、見ての通りっす……! こら、リラーン! 嫌がってんじゃねぇよ!」
「ぐうぅぅっ!!」
嫌々しながら、低い唸り声を上げ、ずるずると研究所から後退していく。後退するということは、アラシさんが引っ張られていくということで。
「レオン! 踏ん張ってくれよっ!」
「やってるっつーの! んでも、重すぎるんだって! テコでも動く気ねぇぞー!?」
レオンさんが押し負けているということになるわけだ。
「と、とりあえず手伝う!」
「イツキ先輩……あ、ありがとうございます!」
後輩二人を手助けすべく、アラシさん側にイツキが加わるものの、リランの力には押し負けてしまっている。男子三人でも無理なのか。
「ユーリ! お前も手伝えー!」
え、あぁ……うん。
イツキに言われるがまま、同じようにリードを引っ張る側へと加勢する。ここでようやくリランの後退を引き留められた。だからって、こっち側に引っ張られるわけではない。あくまで、釣り合いがとれるようになっただけのようだ。
「こ、このまんまでいーから、聞いちゃうけどー! なんでこんなことになってんのー!」
「じ、実は、前にリランを連れてきたときに、嫌いになるような出来事みたいなのがあってですね……だあぁぁ! リラン! いい加減にしてくれ!」
「あうーーーん!!」
アラシさんの叫びにもリランは嫌々と首を振る。何をしたら、こんなに嫌があるようになるんだ。
「な、なるほど……んでも、なんでリランをここに?」
「んと、それはっすねぇ~……っあ! ツバサ! ようやく戻ってきたー!」
「ごめん! 遅くなっちゃった! こら、リラーン! わがままダメー!」
レオンさんの言葉に、僕とイツキはどうにかして後ろを振り返る。すると、こちらに駆け寄るツバサさんの姿と、少し遅れて白衣姿の男性が追いかけてきているのが見えた。
その男性は僕やアイ、アラシさんと同じ牙狼族で、無造作に伸びる髪の色は紺色。
「あれれ? アイちゃんだ~♪ ユリくんやイツキ君まで。何ヵ月ぶり? やっほ~♪」
ひらひらと手を振る僕とアイの父、レイフィードはのんびり近づいてきたと思ったら、ノワールと待機していたアイの頭を撫で始める。
「パパー!」
「父さん……! 僕らにそんな余裕ないの分かるでしょ! あと! 最後に会ったの一、二ヶ月前くらいだから!」
「おじさんじゃん! おじさんも手伝えー!」
父さんに対しての反応はそれぞれあるが、僕とイツキに関しては、こっちをどうにかしてほしい気持ちでいっぱいだった。
だが、ツバサさんがこてんと首を傾げた。
「ほえ? レイさん、ユーリさん達とお知り合いですか?」
……あ、まだこののんびりな会話続くの?
「ありゃ。言わなかった? 俺にもアラシ君達やツバサちゃんくらいの子供がいるって話~」
「んと、そう言われると、聞いた気もしますね~」
「そお? んで、その子供がゆりく……ユーリとアリシャってわけでして~」
「ほえー! そうなんですね♪」
「ツバサ! 世間話はあとにして、リランをどうにかしてくれ!」
アラシさんの言葉でようやく二人はリランをどうにかこうにか動かすために、レオンさん側へと加勢する。そして、ずっと下がらせていたアイも僕ら側に加勢するも、事態は好転しなかった。
いや、どんだけ行きたくないんだ。リランは。



~あとがき~
私事ですが、この話、一回データが消えるという事件が発生し、途中で心折れました。保存ボタン。ちゃんと押そう……な?

次回、嫌がるリランをどう攻略(?)するのか!

また新しいキャラがしれっと出てきましたね。
ユーリ、アリシャの父、レイフィードこと、レイです。研究馬鹿で家にはあまり帰ってきません。んでも、家族仲は普通です。
お父さんって感じのしない人ではありますが、見た目も若いイメージ。実年齢より若く見られがち的なね。そんな方です。

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第146話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でのんびりしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、生徒会室の愉快なメンバー(?)として、リランが追加されました! しれっといたりいなかったりすると思います。よろしくね!
リラン「わんっ!」
そして、今回もリランが出てきます。よろしくね!
まあ、視点は関係ないところから始めるけどな!


「ユーリ、ここ教えて~」
「その公式使ってください」
「どれー! たくさんあるー! 見分けつかん!」
馬鹿なのかな、こいつ。
期末テストまで一週間をきり、イツキは珍しく僕の部屋でテスト勉強に励んでいた。理由は単純。補習を受けたくないだけだ。高校一年から補習組常連と化しているイツキは、今年こそは回避したいらしい。無理な気がするけど。
ほんとはリリアも来る予定だったんだけれど、家の都合で来れなくなってしまった。僕としては教える相手が一人減っただけなので、大した違いはない。
ちなみに、僕ら三人のペーパーテスト成績順は僕、リリア、イツキの順。実技になると、イツキ、僕、リリアという順番になる。もちろん、上からの並べてだ。
「ユーリ~」
「今度は何?」
「もう、俺、何にも頭に入りません……へ、へるぷ……」
「いっぺん気絶しておく? スッキリするかもよ」
「多分、今やったことが全部出てくよ? お前のそれは乱暴な眠らせ方だろ!?」
そんなことないよ。ちゃんとデバフ魔法だから。大丈夫、だいじょーぶ。
「どこが!!」
「ユーリ? イツキくーん? ちょっと降りてきて~?」
適当な言い合いをしていると、下から母さんの呼ぶ声が聞こえてきた。僕らは互いに顔を見合わせ、母さんの呼び掛けに素直に従うことにした。
「どうしたんすか、おばさん?」
「お使い、頼んでいいかしら? アイちゃんが帰ってこないのよ~」
アイ? そういえば、遊べ遊べうるさいからノワールに投げて任せてたな。散歩行っているのか。
「せんせーいるし、大丈夫なんじゃぁ……はっ! 行きます行きます!! 気分転換のお散歩じゃいー!」
……なるほど。そういうこと。
母さん、イツキの集中力が切れる頃だろうと思って、わざと連れ出そうとしているらしい。僕の親友をよく分かっていらっしゃる。
「じゃ、行ってくる。そんなに遅くはならないと思うけど、晩ご飯までには戻るね」
「ええ。お願いね、ユーリ、イツキくん」
「任せてください! 行こーぜ、ユーリ!」
はいはい。全く、調子いいんだから。

ノワールは僕が呼び出す精霊の中で一番の上位精霊だ。その場の思いつきで出すような精霊とはわけが違う。また、僕の精霊達はサポート要員が多い中、ノワールは唯一の攻撃特化型の精霊。まあ、固有能力も使うんだけど、それがなくとも素で強い。だからこそ、僕は無暗に呼び出さないようにしている。ノワールばかりに頼る戦い方にしないために。
……それはさておき。
アイとノワールの散歩コースは決まっている。近くの広い公園でのびのびと遊んでいるはずだ。
「アリシャ! ノワール!」
「アイちゃ~ん? せんせー!! 返事くれ~!」
「あ、にぃだ! いーにぃだ! お~い!」
案外、早くに見つかったな。
広い原っぱで休憩中だったのか、座ってこちらへ手を振っていた。肝心のノワールはちらりとこちらを見るものの、すぐにそっぽを向く。
ノワールは真っ黒な大型犬くらいの大きさで─本来はもっと大きい─尻尾をゆらゆらさせていた。
「帰ってこないから、母さんが心配してたよ?」
「そなの? じゃあ、ノワ、そろそろ帰る……?」
「……」
ノワールは何も言わず、じっとアイを見ていた。
お前が決めろみたいな目だな。やれやれ。
「アイ、何か飲む? ずっと外にいたんでしょ」
「にぃ、買ってくれんの!? いいの!」
「いいよ。ノワールはいらな……」
「がぁう?」
……ごめんなさい。はい。お水買います。はい。
近くの自動販売機で適当にジュースと水を買い、ジュースをアイに渡し、水は蓋を開けて……までをして、ふと考える。
こいつ、どうやって水飲むつもりなんだ。皿なんて持ってないんですけど。
ノワール、これ、本当に飲む気ある?」
「ばふん」
ねぇよ、じゃないわ!! 無駄に買わせたな、お前! あ、その顔ムカつく。
「先生、さいっこうだよ。流石だよー!」
「イツキの頭に全部ぶっかけてやりたい」
「やだ、怖い!」
嘘だよ。もったいないからそんなことしないよ。
買ってしまったものは仕方がないので、自分で飲むことにしよう。今から帰るところだけど。
「にぃ、ジュースありがと! ノワ、帰ろ。乗せて乗せてー!」
このアイの発言に嫌な顔をするも、僕の方を見上げる。今のサイズではアイを乗せられないからだろう。
「いいよ。やってあげて」
「……がう」
ぶるりと体を震わせると、足元に魔法陣が現れる。そして、ノワールの体が二回りほど大きくなると、魔法陣は跡形もなく消えていた。これでもまだ大きくなる。最大で僕と同じくらいの目線になるし。
「わーい! おっきーノワだ!」
アイが乗りやすいように伏せてあげる辺り、お前にも良心は存在するんだなと思う。
「先生って女の子には無条件で優しいよね。アイちゃんはもちろんだけどさ~? リリィとか……ラル先輩とかツバサとか。あ、でも、フォース先輩にも服従してる?」
「あの先輩の場合、例外的な気もするけど。強さで服従させてるよね、あの人は」
基本、誰に対しても強気なノワールだが、初めて先輩を目の前にしたとき、何も言わずに伏せのポーズをしていた。あの人から何かを感じ取ったのだろう。僕にはよく分からないけれど。
少しのコーヒーブレイク─誰もコーヒーなんて飲んでないけれど─を終え、僕らは家に帰るために歩を進める。僕とイツキの歩幅に合わせ、ノワールもゆったりと歩いてくれていた。
「これ、家帰ったらまた勉強会再開か」
「イツキがやりたくないなら、やめたっていいよ。僕はどっちでも」
「くそー! やるよ! 今回こそは補習から抜け出すんだよ!」
だから、今のまんまだと無理だって。基礎を理解してないんだもん。
「いーにぃ、ずっと前からテストやだーってなってるよねー」
「そーだぞ! テストはな、アイちゃんが先生と遊ぶ時間だったり、ユーリにぃちゃんと遊ぶ時間だったりを奪う悪いやつなんだぞ!」
「でも、学校はお勉強するところだもん。いつもお勉強してたら、悪い点数はとらないよ~? ね、にぃ」
「そだね」
ガリ勉兄妹か!? 勉強大好きなの!?」
「わたしはふつーかなぁ?」
ぐぬぬ。勉強なんてなくなってしまえ……んお? なにやら見知った顔発見!」
相変わらず、切り替え早いな。見知った顔見つけたとしても、話しかけは……
「アラシ達じゃーん! やっほー!!」
「普通、話しかけないよな。あっちはあっちの休日過ごしてるわけで……」
「そお? 俺は挨拶すっけどな?」
あ、うん。そぉね。お前はそういうやつだ。
「にぃ、だれ?」
「僕らの後輩さん達だよ」
イツキが手を振る方向にアラシさん、レオンさん、ツバサさんの三人が歩いていた。そして、ツバサさんの手にはリードが握られ、真っ白な犬、リランも一緒だった。きっと、散歩中なのだろう。
めちゃくちゃアピールするイツキに三人も気づいたらしく、こちらに来てくれた。無視してもよかったのに。
「ちわっす、イツキ先輩。ユーリ先輩」
「おー! ノワールじゃん! 久しぶり~」
丁寧に挨拶をしてくれるアラシさんに、ノワールにも挨拶をしてくれるレオンさん。ノワールは完全に無視してるけど。そして、ツバサさんもペコッと頭を下げて、笑顔を見せてくれた。
「こんにちは! それからえっと……?」
「僕の妹ですよ。……アイ」
僕の声にこくんと頷き、ノワールの背から降りる。
「初めまして! アリシャ・ケインです! 皆からはアイって呼ばれてますっ」
猫被ってんなぁ~……
「がう」
「にぃ! ノワ! めっ!」
「はいはい……めって、僕は犬か何かなの?」
「わふ」
間違ってない、ね。まあ、そうなんだけど。お前には言われたくはないよね?
「アイちゃん……私はツバサ・ケアルです! ツバサって呼んで。私もアイちゃんって呼ぶから!」
「わかった! ツバサちゃん!」
「アラシ。アラシ・フェルドだ。イツキ先輩とは同じ部活でお世話になってる」
「俺はレオン・エクレール! 特にユーリ先輩達とは被ってないけど、何かと縁はあるぜ!」
「そうですね。別に同じ部活でもないのに……まあ、ツバサさんのお友達ですし、間接的に関係はあるということなんでしょう」
「ほわ。にぃ、めっちゃ敬語~」
「うるっせ」
「お前のその温度差に風邪引くわぁ」
勝手に引いてろ。
ここで初めて会うリランとノワールは互いの様子を窺っているのか、じっと見つめあったまま動こうとしない。が、先に動いたのはリランだった。遠慮がちに近づいたかと思うと、ノワールの匂いを嗅ぎ始める。ノワールが邪険に扱うのかと思ったが、意外とじっとしていた。まるで、リランを観察するように、目を離さない。
……珍しいこともあるもんだね。



~あとがき~
もふもふアイランドがはっじまるぞ~

次回、白と黒の獣を連れて、一年トリオと二年コンビ(+α)が向かう先は?

お久しぶりです。ユーリ&イツキコンビ!
イツキは前回のお風邪編で、ちろっと出てましたが、ユーリは大会以来です。アリシャは二年トリオの休日回以来です。アリシャはメインでもなければ、サブでもないので、また出せるとは思いませんでした。今回はがっつり出てきてもらいますよ~(多分)

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第145話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界できゃっきゃっしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
リランが石を降らせて、ティールに被害がいきました。まあ、軽いらしいし、なによりファンタジーなので実際どうなのよってとこはあれだよ。放置でお願いします←


ティール以外に石とごっつんこした人は誰もいないのを確認して、私達はカルタムさんやメアリーさん達に混じって、そこら中に散らばる石の回収を手伝うことにした。石を拾いながら、カルタムさんはさっきの続きを話してくれた。
「アラシ様達が申されたように、リランは現在、本当に白竜か、否かは不明。つまり、謎の存在のドラゴンでございます。そのため、月に数回、研究のために、お嬢様がリランを連れて魔術研究所へと伺うのですが、それでも不明な点は多いのが現状でして」
「白竜がこの時代にいるという事実すら不可解ですからね。……探検隊をやる身としてはそんな不可解もまた、楽しいんですけど」
ティールのそれはほぼ病気だよ……?
集めた石をメアリーさんが用意してくれた袋に移していく。もちろん、ティールの頭に直撃したそれも袋の中だ。見た感じ、気持ち黄色の石が多いのは、直前に雷姫の力を吸収したからだろうか。
ティールの言葉にカルタムさんは静かに頷き、話を続けた。
「そして、今回の件についてはまだ、研究所と連絡を取り合ってないため、詳しいころは分かりません。そのため、これは我々の憶測となります」
と、前置きした上でカルタムさんが教えてくれた。それを簡潔にまとめてしまうと、魔力風邪で放出されたツバサちゃんの魔力と空気中の魔素の二つを吸収。限界値を越えたときに、魔力石のような何かとして置き換えている。……とのことだった。
「本来、魔力石は魔素の濃い自然界……森や洞窟みたいなとこで見つかるのに……人の多い町中で作れるもんなのかな」
ティール様の仰る通りでございます。我々もこの予想は半信半疑なのです。この現象については、後日、研究所と協力して解明できればと考えております」
なるほど。そのためのサンプルってことだ。
研究のためのサンプルを全てかき集め、回収したところで、私達はそろそろ帰ろうかという話になった。きりもいいし、何より思った以上に長居してしまった。途中からいつもの受け答えをしてくれていたツバサちゃんだったけれど、またぽやぽやし始めたので、さっさと帰るに限る。
ついでに、リランとのおいかけっこも疲れたし。
「今日はお見舞いに来てくれてありがとうございます。もうすぐ学校に行けると思いますので~♪」
「無理しちゃダメだよ、ツバサちゃん! ちゃあんと治さないとダメだからね!」
「そうそう。今日は早めに寝なよ~?」
「分かってる! ありがとね、ステラちゃん、リーフちゃん♪」
リランに乗ってお見送りしてくれたツバサちゃんは、二人の言葉にちゃんと頷いていた。リランもお見送りのつもりなのか、元気よく「あんっ!」と鳴いた。
あれ、何て言ったんだろう?
『ふん! 二度と遊ばぬわ!』
……また遊ぼう的なやつだったらしい。
ケアル邸を出て、すぐにアラシ君とレオン君とも別れ、今日のところはお開きとなった。

ツバサちゃんのお見舞い……もとい、リラン騒動から二、三日後。今日も今日とて、学園は平和です。あったことと言えば、衣替えくらいだ。薄着の季節であるが、あまり変化はないように思う。私はカーディガンが薄手の七分袖パーカーになり、タイツが黒のニーハイになるくらいだし。ティールは規定通りのYシャツにサマーニット姿になるだけだ。
「あ、フォース君やん。なんか久しぶり~」
「……やっぱ帰るわ」
休日明けから今の今まで、なぜか学校に姿を見せなかったフォース君がようやくのお出ましである。まあ、何かを感じたのか、Uターンして帰ろうとしてるんだけれど。
彼のスタイルはほぼ変化はない。長袖パーカーのまんま。ただ、Yシャツじゃなくて、黒のインナー着てるけど。あと、少し長めの髪を後ろでハーフアップにちょこんと結んでいる。前から見るとやっぱりあんま変わらない。
「まーまー!! 聞きたいことあるんだって! まあ、入れよ。歓迎するわ。ティール! 捕獲!」
「ん? ほかく……?」
「お前んちじゃねぇだろ。……いいよ。素直に入るよ。何?」
「休日。何してたの? 私、仕事入れた記憶がなくってさ」
予測では制御者としての仕事かなと思っているのだけれど、気になるし。
「マスターじゃなくて、兄貴の方だな。やることやって、上に顔出したら、帰るに帰れなくなりました」
「フォースの仕事増えたってこと?」
「うんにゃ。仲間に捕まったり、他の神様と猫に捕まったり? 挙げ句の果てにマスターの部屋の大掃除してたね」
なんか、里帰りした実家で、親戚一同にいいように使われてる気がする。というか、猫?
「おれもそう思う。猫は……まあ、猫。毛玉みたいにもっふもふしてるやつ」
何それ、かわいい。
「こんにちは! 今日からまたよろしくお願いします~♪ ラルさん、ティールさん、フォースさん!」
無垢な笑顔を浮かべ、入ってきたのはツバサちゃんだ。こちらも、夏服仕様になっている。透明感のあるマントを重ね、涼しげなスタイルだ。流石、魔術科。可愛らしいデザインである。
「ツバサちゃーん! おいで!」
「はーいっ!」
ぱっと両手を広げ、駆け寄るツバサちゃんを抱き締める。うん! これだよこれ!! これを待ってたんだよ!
「よかったな。これで元通りだよ」
「仕事、捗るといいんだけど」
それとこれとは話は別だね!!
「全くラルは。……ツバサ、元から魔法たくさん使えてたけど、魔力風邪を経て、習得したやつとかあるの?」
「ありますよ~♪ あ! せっかくですし、お見せしますっ!」
明るく質問に答えたツバサちゃんは、私から離れ、静かに目を閉じて祈りのポーズをする。ぽわっと優しい光に包まれたツバサちゃんは、ぱちっと目を開ける。
「出ておいで、リラン!」
……リラン!? え、あの!?
「リラン……?」
まだリランに会ったことがないフォース君だけ首を傾げているが、私とティールは戸惑いを隠せなかった。あんなに世間から隠しているドラゴンを呼ぶのだ。慌てない方がおかしい。
「わんっ!」
……と、思ったんだけれど。
リランと呼ばれて出てきたのは犬だ。どこからどう見ても、犬。真っ白で毛の長い中型犬。
「実は変身魔法が普通に使えるようになったんですよ~♪ だから、こうしてリランを堂々と学校に連れていけるようになりました!」
「変身魔法か。高度な魔法だよね、確か」
「流石、ティールさん。知ってましたか~♪ そうなんですよ~♪」
変身魔法……とは?
自然とフォース君に目がいく。ばっちり目があって、盛大なため息と共に、ホワイトボードに向かう。
「幻術の上位互換の魔法が変身。幻術はあくまで隠すだけだろ。あるもんを消したり、ないもんを見せたり」
ボードの近くに置いてあったマーカーを手に取る。それで図解するのかと思いきや、マーカーをくるりと回すとぱっと手元から消えてしまった。かと思えば、パーカーのフードから出てきた。
これは、多分、手品か。
「わふ~ん!」
「フォースさん、すごいですー!」
「変身は姿形そのものを変えちまう。だから、触られたとしても、それだと認識する。仮にお前を猫にして、触られたとしても人だとバレないのが変身魔法のいいところだよね。その分、力の消費も激しいけど。……で、あってますかね、ツバサ先生?」
「はいっ! 私、元々変身魔法は習得はしてたんですが、魔力消費おっきくてネックだったんです。でも、今はご覧の通りです♪」
ドラゴンから犬に変えちゃったってことか。
リランは手品を見せたフォース君に興味があるのか、足元をぐるぐる回っている。
フォース君にドラゴンって言ってないな。そういえば。けど、多分……
「変身魔法を使うってことは、元々は違うんだな。お前」
「あんっ」
一鳴きして、ぴたりと回転を止める。そして、じっとフォース君を見つめ始めた。
「はーん……難儀な時代に出てきちゃったんだ。お前の同胞はいないのに」
「あん?」
「……おれはフォース。よろしくね、チビッ子白竜さん。……色的にも今は少し違うみたいだけど」
他者の心を読む力に加え、魂の色を視るフォース君に隠し事なんてできるわけがない。
大人しくお座りをしているリランの頭を優しく撫でながら、ちらりとツバサちゃんを見つめる。
「誰にも言わんよ。面倒は嫌いなんで」
「はい♪ お願いします、フォースさん」
「くう?」
「……ん? 雷姫のばーさんはあっちだぞ。リラン、ラルに突進だ。いけー」
「! あんあんっ!」
うえ!? ちょ、ばっ……!
勢いよく走り、飛び付いてきたリラン。今回は犬だし、中型犬だしで、避けずにしっかりと受け止める。それが嬉しかったのか、大きく尻尾を振りながら、思い切りじゃれてきた。
「きゃあ~! くすぐったいよ、リラン! んでも、まあ、このお犬体型なら、たまに遊んであげる~」
「あん! あんあんっ!」
『あの裏切り者め! 斬り殺してやろうか!!』
私の中で雷姫がうるさい。感情を露にしている分、フォース君にも聴こえているだろう。んでも、リランのもふもふするので、私は大して気にならない。好きにしてくれ。
「何とでも言え。おれはリランにぶん回されるババァが見たいだけだよ。無様だな、雷姫様?」
『なぜそれを! 表に出ろ、小僧!!』
「リランが教えてくれました」
『駄犬がっ!!!』
雷姫の声が聞こえていないツバサちゃんとティールは不思議そうにしているけれど、ティールは何となく察したみたいだ。小さくため息をつくと、ツバサちゃんに向かってにこっと笑う。
「……ツバサ、お仕事手伝ってくれるかい? リランはラルとフォースに任せよう」
「はい! 分かりました~♪ リラン、ラルさんとフォースさんに迷惑のないようにね?」
「あん!」
んふふ。また一段と賑やかになりそうな予感♪



~あとがき~
ちょっぴり長いけど、きりがいいので。

次回、新しいお話! やります!
ちょっぴりご無沙汰なコンビと+αやで。

リランには優しく接してるのに、雷姫をいじるときのフォースのはっちゃけが好きです。というか、誰かをいじるときのフォースが楽しそうで酷いやつだなと思いながら、私は楽しく書いてます。
今回は全体を通してリラン回でしたね。それのおまけとしてラルだったりティールだったり、ケアル邸の使用人さん達だったり。色んなこと書きましたわ。楽しかったぜ!

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第144話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわーわーしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、雷姫に続き、ラルとティールがリランの餌食(?)となりかけました。なんとかしのぎきった二人。
ラル「怖かった……色んな意味で」
ティール「スイとセツのありがたみを知った……」
視点は戻って、ラルです。


ティールが狙われていたとき、自分の安全第一に考え、木の上から降りずに待機していた。ステラちゃんとリーフちゃんから「もう大丈夫です」という言葉を聞いて、ようやく木の上から飛び降りた。もちろん、着地の衝撃は雷姫を使って相殺する。
『……今日は厄日じゃな』
リランに悪気がないのは分かるが、正直なところ、体がついていかないので遠慮願いたい。
そんなリランは、雷姫、私と来てティールのとおいかけっこに満足したのか、ぱたぱたと尻尾と翼を揺らして上機嫌である。
私達とは違い、最後まで相手をしてあげた心優しい─というか、逃れる術がなかっただけだと思う─ティールは、ジャケットを脱ぎつつ、私に近寄ってきた。
「お疲れ様……その、色々と。ラル、大丈夫?」
「大丈夫。あれくらいの“身体強化”でへばるような作りはしてないよ。ティールこそ、大丈夫?」
「大丈夫だよ。……子供とはいえ、ドラゴンに迫られるのは危機感があるねぇ」
そりゃあ、人のおいかけっことドラゴンとのおいかけっこでは訳が違う。例えるなら、しーくんに追いかけられるか、親方に追いかけられるか……くらいの差はあると思う。ちなみに、リランは後者に分類される。
そもそも、人様のお家で全力で逃げるなんて思いもしませんでしたよ。
「ほんとだね……あとで謝らないと」
それな。途中からツバサちゃんのお家の中だという意識は消えていた。よくないんだけども。
雷姫を消してから二人で皆のところに戻ると、ツバサちゃんが申し訳なさそうにペコッと頭を下げた。
「ラルさん、ティールさん、ごめんなさい。リランがたくさん追いかけ回しちゃって……」
「いやいや! こちらこそ、全力で逃げ回ってごめんね? なんか壊れたりしてないかな?」
「それは大丈夫ですよ~♪」
大丈夫ならよかった。こんな豪邸の物を壊したらお金なんていくらあっても足りないよ……?
「ツバサちゃん、リランが~」
「ほえ?」
ステラちゃんの声で私達はリランに注目する。さっきまでは楽しそう尻尾を揺らしていたのだが、今はじっと地面を見つめたまま動こうとしない。額の石が白に戻ったり黄色になったりを繰り返している。
まさかとは思うが、今更ながら雷姫が何かしたのでは?
『我は何もしとらんぞ』
……そうだよね。何も感じなかったもんな。そりゃそうや。
リランは地面を見つめたまま、その場で踏ん張るような仕草をし始める。少なからず、唸り声も聞こえてくるから、フリでもなんでもなく、本当に力を込めて何かをしようとしているのだ。
「なんだ、リランのやつ……?」
「あれだな。この世に生きる以上、避けて通れないもんな……にしても、こんなとこで大は駄目だぞ、リラ~ン?」
「ちょ……レオン、時と場合を考えよう? それっぽいけど、もう少し包もうよ……?」
「えー……? じゃあ何て表現しよう~?」
そこは心底どうでもいいと思う。
どうでもいい会話をする男子をよそに、ツバサちゃんはほんの少しだけリランの様子を観察していた。そして、何かに気づいたのか慌ててカルタムさんの方を振り返る。
「カルタム! リランがまたあれを出すよ~!」
「! 皆様、リランから離れてくださいまし! 頭をぶつける恐れがございます!」
は、あ、頭!?
リランを昔から知るアラシ君やレオン君ですら今の状況がどうなっているのかは分からないみたいだ。カルタムさんに言われるがまま、リランから離れる。
「メアリー! 袋を!」
「は、はいっ!」
近くにいたメアリーさんに素早く指示を飛ばすカルタムさん。頭に気を付けろと言ったり、袋を持ってこさせたり、今から何が起こるのだろうか。はっきりしていることは、何かあるということだけだ。
「ツバサ、一体なんなんだ? こんなの、俺もレオンも見たことないぞ」
「え、えっとね……」
「アラシ様。それは私からご説明いたします」
戸惑い気味だったツバサちゃんの間に入るようにカルタムさんが話を引き継いだ。
「この現象はお嬢様が魔力風邪にかかってから起き始めました。リランがお嬢様の魔力とリンクしているのはご存知かと」
つまり、ツバサちゃんに変化が起きるようにリランにも変化が起きてる……?
「左様でございます。それが今のリランなのです」
「あの踏ん張ってるのが……? 変には見えないっすけど」
レオン君の言葉はごもっともだ。それだけなら、ある意味、日常茶飯事というか、普通なような気がする。
「先程、ラル様の刀の電撃を吸収したように、リランには属性攻撃を吸収する能力がございます。……その、私共も理解しがたいのですが、リランは魔力石のようなものを生み出すようになりまして。……恐らく、お嬢様の魔力風邪が続く期間のみだと思いますが」
「…………え?」
カルタムさんの言葉にツバサちゃん以外は困惑した。言うなれば、武器が石を生み出しているわけだ。リランはツバサちゃんの武器なのだから。いや、こうして動き回っているけれどもだ!
「うぅ~……わおぉぉぉんっ!!」
ずっと踏ん張りの我慢状態だったリランが天に向かって遠吠えを上げる。やっぱり、ドラゴンじゃなくて犬なんじゃね? みたいな仕草を呆然と見届けたあと、突然、辺りが眩い光に包まれる。目が開けていられず、思わず目を閉じた。
目は見えなかったがその間、小さくパラパラと何かが落ちるような音が聞こえてくる。雨なんて降っていなかったのに。現に、服や肌が濡れるような不快感もない。
『む。パートナーよ、頭上に気ぃつけい』
え、ティール……?
「いっったぁぁ!?」
「なっ! ティール!? 雷姫、忠告おっそい!」
『ちと数が多いからな。判断が遅れてしまった』
ティールの叫び声と光が収まるのはほぼ同時であった。視界が元に戻り、私は慌てて、頭を押さえてうずくまるティールの傍にしゃがみこんだ。
「大丈夫? 何があったの」
「う、うん……ごめん。びっくりしたのと、突然の痛みでなんか大袈裟に声が出ちゃった。……そこまで痛くはないんだけど……多分、それのせい」
ティールが示した方に転がっていたのは、握り拳よりも半分の大きさしかない青い石だった。手に取ってみると、予想以上に軽く、小さい子供が遊ぶようなボールくらいの軽さしかない。ボールプールのボールみたいな、そんな軽さだ。
これがカルタムさんの言う魔力石なのだろうか? しかし、私が知っている魔力石とは何かが違う。石から感じる力が違う気がした。
「見え方や聞こえ方に変なとこはないから、大丈夫。心配かけてごめ……ん?」
「? 何、急に黙って─」
「ほわー!? なんですか、これー! 石がたっくさん!?」
ステラちゃんの声に私は後ろを振り返る。そこには大小様々なカラフルな石が大量に散らばり、その中心で「どんなもんだ!」と自信満々なリランがいた。
「わふんっ!」
「あー……と、カルタムさん、まさかとは思うんすけど、さっきの話ってこういうこと?」
「……左様でございます」
「今回もたくさん作っちゃったね~? リラン~」
「え、作っちゃったね~……って、え? これ、毎回なのか!? やっべーな、リラン!」
「す、すごい……ドラゴンが、というか、リランがすごい……?」
突然の光景に三者三様な反応を見せる私達。
そんな私達は気にせず、リランはわんっと楽しそうに鳴いた。呑気な……!



~あとがき~
なんか適当になってない? 大丈夫か?

次回、お掃除。

ここ最近、ついてないティール。
まあ、なんとかなる。なんとかなる。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第143話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で頑張る話です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
ぶんぶん振り回された雷姫を救出したラルでしたが、今度は自分が標的になりました。まだリランのターンです。
というか、ずっとリランのターンやわ。


《Te side》
雷姫さんの“身体強化”を巧みに使い、ラルはリランからの突進を上手くかわしている。こちらには配慮しつつも、中庭の色んなところに飛び回っているみたいだ。雷姫さんの力を見せるのはこれが初めて出はないと思うけれど、こんな近くで見せるのは初めてかもしれない。
「ほ、ほえ~? どうなってるんですか~」
「神器には特殊な能力が備わっているんだ。武器の形を変えたり、回復力を底上げしたりする神器もあるんだって。なんかもう、やりたい放題でさ。……その中でも雷姫さんは雷の力を操る。電気だね」
使用者の体内に微弱な電流を流し込み、筋力を底上げしているのだ。たから、通常ではあり得ないほどの力を発揮している。普通の技や魔法のバフ効果でも似たような効果は得られるものの、あそこまで超人的な動きは無理だと思う。
「今やってるのは……跳躍力を上げてるのかな? もちろん、筋肉を無理矢理動かしているのと変わらないから、長時間の使用はご法度なんだけれど。……ラルの場合、雷姫さんとの波長がよく合うから、流したり止めたりを繰り返して負担を最小限に抑えているんだよね」
タイミングが少しでもずれてしまうと意味のないこのやり方をラルは短期間でマスターしていた。いやはや、戦闘のこととなると、天才的というか……何と言いますか。
「他にもあんのか? 雷姫を使った超人芸」
ここまでの説明で納得をしてくれたらしく、アラシが別の質問を投げ掛けてきた。それにぼくは一回だけ頷く。
「色々と。けど、ラルが頻繁に使うのは“身体強化”と自分の雷属性の技補正くらいかな」
ラルが得意な属性が雷で、雷姫さんも同じ。ならば、二人の力を合わせてしまえばいいじゃないという、とんでも掛け算を平気でやる。その力を使って、“雷龍”を陣なしで発動させてみたり、簡単な技の威力を倍増させてみたり。
「毎回思いますけど、無茶苦茶ですよね~……? 雷姫さんを使うすーくんやラルさんもだけど、雷姫さんの力の凄さを感じますよ」
「フォースさんも使うの?」
「んとね、私は一回しか見たことないよ。……ティールさんはどうですか?」
「片手で足りるくらいの回数かな」
二人の気まぐれが合わさらない限りはあり得ないようで、基本的にはいがみ合うのがデフォルトだ。「うっせババァ」「黙れ小僧」という生粋の仲の悪さを生徒会室でも、プライベートでも、仕事中でも繰り広げるくらい。水と油なのだ。犬猿の仲とも言う。
それでも、フォースは制御者。力を操るという分野においてはエキスパートだ。加えて、ラル以上の共鳴率で雷姫さんの力を最大限にまで引き出してしまう。そして、基本、不老不死という力のお陰で、代償という代償もない。まさしく、最強の使い手と言えるだろう。
……本人達にその気があるなら、だけども。
「もお、やだぁ! ティール、助けてー!」
と、悲痛な叫びを露にしつつ、ぼくの目の前にぽっと現れる。リランから逃れるために“身体強化”で逃げていたはずだけれど、息一つ乱していないのは、流石だ。この辺はまだ許容範囲。
ってか、君がこっちに来たらリランもこっちに突進してくるんじゃあ……? ほら、こっち見てるよ?
「手短にすませる。ティール、私がここを離れて五カウントでいいか。そこからアシストよろ」
と、それだけ話すと、ラルは雷姫さんをパチッと小さく放電させ、また遠くの地面へと降り立つ。
五カウント……ねぇ?
「ラルのやつ、なんか秘策でもあんのか~?」
「ここまでよくリランから逃げてるけどな……」
ラルの不思議な行動にレオンやアラシは首を傾げるばかり。ツバサも似たようなものだし、三人よりも付き合いのあるステラやリーフすらも分かっていないように見える。
「どうするんだよ~……まあ、いいや。ラル! スイもセツもいないから、期待しないでよ!?」
「ういーっす!!」
軽い返事だなぁ……もう。どうなっても知らないからな?
ぼくは懐から懐中時計を取り出し、少しだけ意識を集中させる。いつもはスイやセツを通した攻撃が多いから、こっちの魔具を使うのは久し振りだ。
技の発動に問題なさそうなのを確認し、次に目をつけたのは噴水だ。厳密に言えば、噴水から吹き上げている水の方だけど。
大変心苦しいんだけれど、あれを利用させていただきます。ごめんなさい!
「よし。……“水遊び”!」
少しの水を自在に操るようなイメージをしながら、能力を発動させた。ふわりと水の玉を浮かせ、ぼくの目の前まで持ってくる。大きさは大体、一メートルくらいだろうか。
リランがラルに突っ込もうとする瞬間、ラルが真上へと大きくジャンプした。
「……! そういうこと」
彼女のやりたいことを察し、ぼくは一つの玉を素早く複数個に分け、ラルが空中の足場にできるように配置していく。とはいえ、ふよふよ浮かせたところで、実際はただの水だ。ラルが足をかけたとしても、支えにはならない。だから、次にしなくてはいけないのは、液体を固体にすること。一瞬でもいいから、ラルが着地できる物に変えるのだ。
「……セツが恋しくなるときが来るとは思わなかった!! えいっ!」
懐中時計を通じて冷気を作り出すと、タイミングに合わせて、一つ一つ足場を凍らせていく。液体ではなくなって、ぼくの支配からは外れてしまうけれど、落ちる前にラルが渡ってしまえば問題はない。バランス感覚もよくて、運動神経もいいラルのことだ。この辺りは簡単にやってしまうんだろう。
ぼくの作った足場と雷姫さんのアシストもあって、ラルはこの中庭で一番背の高い木のてっぺんへと逃げてしまった。リランはもちろん、その木の根もとへと走っていくものの、そこまで飛べないのか、じーっと上を見つめたまま動こうとはしなかった。
「ラルさん、すごーい! ティールさんも!」
「はー……つっかれる……」
ここ最近、能力連発してるなぁ……? まあ、度の越えた使い方はこの前倒れた以降、していないから大丈夫だけど。……正直、水を操るよりも冷気のタイミングを計るのに疲れた。
「魔法みたいだったな! あれって、ティールの能力?」
「そ。液体を操れる能力。……限度はあるけどね」
「色々と隠し芸持ってんなー……お、リラン、ラルを諦めたみたいだな!」
レオンの言葉にラルが逃げた木を見た。すると、木の根もとからリランが渋々離れていくところだった。そりゃあ、遊びたい相手が降りてこないのでは話にならないもんね。
……と、思っていたら。
「わふーーん!!」
「えっ」
なんか、ぼく目掛けて突進してませんか……?
「あー……今度はお前っぽいぞ。ティール?」
「にしし~♪ ファイトー!」
え、えっ……なんで?
「ん~……リランは鼻がいいからな! なんか感じたんだろ~♪」
「なんかって何!? うわっ!」
リランの突進を辛うじて避ける。ぼくはラルと違ってスピード型ではない。こんなに何度も迫られると避けられなくなってしまう。かといって、技を当てたところで何の意味もないのは、雷姫さんが証明してくれた。
……いや、本当に。スイとセツを持ってくるべきだったと後悔してる。スイとセツなら、リランと楽しく遊んでくれるだろうし、そうなれば、ぼくからの興味だってなくなっただろうに。
「助けてー!! スイ! セツー!」
マジで! 子供の頃以外にここまであいつらを求めたことはないよ! 今、心の底から求めまくってる!
「あんっ! あん!」
「ぼ、ぼく、なんも面白くないよ! なんでー!」
ラルみたいな脱出方法が思い浮かぶでもなく、逃げ切った相棒が助けてくれるはずもなく、ぼくはぼくで、リランとのおいかけっこをする羽目になった。
一応、捕まって舐められるなんてことはなかったけれど、結構ひやひやしたのは内緒の話。



~あとがき~
ドラゴンに振り回される現役探検隊の二人。

次回、おいかけっこを終えたリランがとある行動に……?
もうそろそろおわ……おわら……終わらないですね。もうちょいかかります。

ラルが雷姫の力を使ったり、ティールとのコンビ技やってみたり、ティールが愛剣の名前叫んだりと色々とやれて楽しかったです。
そして、おいかけっこをきちんとやりとげたのは、ティールだけでしたね。雷姫とラルは逃亡しましたんで(笑)

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第142話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でばたばたしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
雷姫、振り回されました。
ラル「色んな意味でぶんぶんされてました」
雷姫「いつか首を落としてやる」
ラル「駄目だよ。ツバサちゃんの武器の弁償できないし、貴重なドラゴンを殺したら私、社会的に破滅だもん~」
雷姫「ぐぬぬ……」
さてさて、淡々と進めておりますが、もうすぐ150話が目の前……だと。
ラル「まだ夏にも差し掛かってないですが」
それな……


適当にぶんぶん振り回すリランになす術もない私達はやきもきしながらその様子を眺めていた。
まあ、慌ててるのはツバサちゃんやステラちゃんだけで、他の人達は案外冷静というか、呆れていたり、どうにもできないから手も出さなかったりと色々だが。
持ち主である私は笑いが止まらないしね。だってあんなに慌てる雷姫、初めてだもん。おかしくて仕方がない。
『マスター!!』
「ご、ごめ……許して~!! 一旦落ち着こう! な、雷姫!」
『落ち着けるかぁぁあ!!』
分かるよ。当事者だもんな。
「うわぁ……ラル、酷い」
ティール、あれがスイちゃんやセツちゃんならどうよ。普段、振り回してくる子達が反対に振り回される光景を目の前にするのよ? 想像して?」
「え…………うん。ごめん。笑う」
「お前ら自分の武器は大切にしろよな!?」
「リラ~ン! 雷姫さんをラルさんに返しなさーい!」
「わふっ!」
ツバサちゃんの言葉にイヤイヤするように激しく首を振る。私には鳴き声にしか聞こえないけれど、雷姫にはちゃんとした言葉に聞こえたようだ。
『我は貴様と遊ぶつもりはない!!』
と、一喝し、雷姫が強く雷を帯びる。そして、一気に放出し、辺りは閃光と轟音に包まれた。
「雷姫!」
「リラン!」
光が落ち着き、私とツバサちゃんはお互いの相棒を呼ぶ。
土煙の中から現れたのは、雷姫の電撃を受けたにも関わらず、無傷の─流石にぽかんとはしているが─リランと、そんなドラゴンに未だ咥えられたままの刀の雷姫の姿がある。
「……わふ♪ あんあんっ♪」
『はあぁ!? 楽しい? もっとだと!? ふざけるのも大概にしろ、駄犬!』
「わう?」
『阿呆。貴様のことだ』
「雷姫の電撃を受けて無事なのね。とりあえずはよかった……けど、結構、あっけらかんとしてないですか、リランさん?」
「で、ですね~……」
とりあえずは無事なリランにほっとした様子のツバサちゃん。しかし、疑問は残る。
「えーっと、ドラゴンさんは神器の力も防いじゃうんですかね……?」
「んなことはないと思うけど……流石に。……ティール、過去のドラゴンで雷姫の電撃を無傷で耐えたやつっているの?」
レオン君の質問にティールはふるふると首を振る。
「いや。まあ、ドラゴンの装甲は固いから、通りにくさはあるけど、全く効かないなんてあり得ない……はず」
よくよく見てみると、額の石が白から黄色へと変色している。……ん? 変色?
「黄色って雷属性の色だよね……ってことは」
「リランの魔力石が……雷姫さんの電撃を吸収、しちゃった……んでしょうか?」
それはありですか。チートじゃないですかね。君達、どこまでチート街道を駆け抜けるおつもりで……?
「流石に無限ってことはないだろうな。魔力石にも限度はあるし……うん、多分。それでもとんだチートドラゴンだな、リランのやつ」
本当だよ!! アラシ君の言う通りだよ!?
武力行使でどうにもならないなら……雷姫、実体化しろ!」
『! その手があった!!』
え、忘れてたの!?
雷姫を出現させたときみたいに全身に電流を帯びると、バチンッと弾けた。そして、刀姿ではなく、私そっくりな人型の雷姫が現れる。赤を基調とした花魁のような着物姿でふわりと体を浮かせた。地面につきそうなくらい長く伸びる金色の髪を揺らし、不満げにリランを見下ろしていた。
「全く……これだから躾のなっとらん犬は嫌いなのじゃ」
「わー! 雷姫さん、ラルさんみたいです~!!」
「さっきも言った通り、雷姫は所有者の心に住んでるからね。人型になるときは主の姿を模して現れるの。今の主は私だから、私に似るんだって」
とはいえ、私よりも見た目も大人びている。しかも、妖艶な雰囲気を纏う彼女を見ていると、気恥ずかしさが込み上げてきて、未だに慣れない。
刀から人へと変貌した雷姫にリランも驚いたように見上げていたが、すぐに切り替えたのか楽しそうに鳴いた。そして、ぴょんぴょん飛び始め、雷姫にじゃれようと飛び付いた。そんなリランをさっと避け、冷やかな目を向ける。
「遊ばぬと申したはずだが?」
「あん! あうーん!」
「知らん。我は楽しくはない。飛び付くな!」
宙を舞う雷姫とそれを追いかけるリランのおいかけっこが始まってしまう。実体化させても遊んでもらえると思われてしまったのか。もう、こちらに呼び戻すしかないのではないだろうか。
「雷姫~……戻っといで~」
「む。もうよいのか、マスター?」
律儀だな。いいよ。もう雷姫をじっくり見せられそうにもないもの。またの機会にお願いするよ。
「ふむ。ならば、我は退散しよう。……じゃあな、駄犬よ」
「わふっ!? あんあんっ!」
「ふん。貴様の名など、死んでも呼んでやらん」
ちろりと舌を出し、リランを完全拒否したところで雷姫は姿を消した。そして、刀の状態で私の手元に収まる。
『全く。酷い目に遭った』
「ご、ごめんなさい、雷姫さん。リランが好き勝手しちゃって……」
申し訳なさそうにツバサちゃんがぺこりと頭を下げる。そんなツバサちゃんに雷姫はぐっと言葉を詰まらせ、小さくぶっきらぼうに答えた。
『……まあ、今まだ何も知らぬ幼子の竜よ。仕方あるまい』
あはは。素直じゃないな。
「雷姫は怒ってないって。だから、ツバサちゃんは気にしなくていいよ」
「! ありがとうございます、雷姫さんっ♪」
私は鞘も出現させ、ぱちんっと雷姫を納めた。そして、その雷姫自身も消そうとしたとき。リランの視線がこちらへと注がれる。
「お~あれは……ラル、逃げた方がいいんじゃないか~?」
『……マスター、逃げよ。来るぞ』
レオン君からのありがたいアドバイスと、雷姫の忠告に戸惑いを隠せない。今度は私なのか?
「あうーーん!」
ダッシュでこちらに駆け寄ってくるリラン。遊んでと叫びながらこちらに来ているように思えた。いや、そんな感情しかないのだろう。
『我がマスターに馴れ馴れしいぞ!! 貴様も竜の端くれならば、古来より威厳のある出で立ちを学ばんか!!』
「誰に学ぶのよ、その威厳!! つか、言ってる場合か!? あーもう! 雷姫、“身体強化”!」
『承知』
「ラル! これ!」
ティールは私の席に置いてあった鞄から素早くベルトを取り出し、こちらに投げて寄越した。それを腰に巻き付け雷姫を帯刀した。
「さんくっ! 加速するよ、雷姫!」
『いつでもよいぞ』
パチッと雷姫が火花を散らした瞬間、私は軽く時点を蹴る。それだけで瞬間移動したように皆から、リランから大きく離れた。しかし、それだけでリランが諦めるはずもなく、方向をこちらへと変えてくる。
「……んと、いつ終わるのかな」
『あの子竜の気が別に向けば……あるいは満足すればよいのでは?』
あんなに雷姫をがんがん振り回してもなお、納得しなかったお茶目なリランちゃんを満足させるだと? 無理なんじゃない?
『健闘を祈るぞ、マスター』
「他人行儀!? 最後まで付き合え、雷姫!」
こんなはずじゃなかったのにー!!



~あとがき~
弄られていた雷姫を笑った罰かな?

次回、まだまだやらかしますリランさん。

雷姫はリランの言葉を理解し、きちんと会話していますね。雷姫はリランに限らず、精霊とかの言葉を理解する力? があります。なので、ユーリの精霊(ふわやノワール)やツバサちゃんの精霊(クーちゃん)の言葉も分かる。通訳するような場面があるかは謎ですけどね!
まあ、似たようなスイセツにもできそうですね。けど、通訳者にはならなそうです。

ではでは!