satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

初めての人

―いなくなれ!―
―そーだ! 鬼の子!! 消えた方がいいんだよ!―
―こんな子……いなければよかったのに!―
―産むんじゃなかった……あなたを……産むんじゃなかった!―

……う……また、この夢……
「うぅ……いらない子……なの?」
わたしだってほしくてもってるチカラじゃないのに……
う……うぁぁぁあん!!
わたしが泣いていると、ガサッと上の木が音をたてた。そして、その木から声が。
「お前かぁ……? ステラ・フォレスってのは……うわ、本当に子どもだ」
「だれ?……わたしをころしにきたの?」
見上げると、イーブイ。声からすると男の子だった。
「おれが? お前を?……ないない。規則違反だし、死刑だな……おれ」
言ってる意味がわからない。
「わからなくてよし。もう一度聞く。ステラ・フォレスってのは、お前か?」
わたしは無言でうなずく。うなずいてよかったのかは、わからなかった。それでも、うなずいた。
「よし……お前の力、貰うから。違うな……預かる……だな」
意味がわからない。そんなこと、できるわけがない。
きっとこの人も……わたしのことをつかまえにきたんだ……
ふぅ……とため息の音。また、ガサッと音がしたと思ったら、目の前に降りてきていた。これで、逃げられなくなった……
「疑うのもわからんでもないがな……この歳から、こんなことされてたらなぁ……同情する。流石に」
「……なんでわたしのこと、いっぱい知ってるの?」
「調べた。おれじゃないけど……まぁ、信じなくてもいいよ。今は……な。早速だけど……!」
いきなり、辺りを見回し始めた。そして、すごく嫌そうな顔をする。
「……ったく……どいつもこいつも……だから、嫌いなんだよ……」
………あ……くる………
「逃げて、お兄さん」
「は? いや、お前こそ逃げた方がいいぞ?……誰か来る」
ちがう……だめ、はやく。
「おい……?………まさか……まて、ここではまずいって!!」
「ごめんなさい……お兄さん」
「……“力の暴発”……タイミイグ悪すぎるじゃねぇか……っ!!」

その一言を聞いた後の記憶はなく、わたしがなにをやったのかも、覚えていない。きっと、いつもと同じだ。
けれど、珍しく覚えていることがあった。
あのイーブイのお兄さんが言っていたんだ。
『これで最後にしてやる。だから、おれを信じろ』
すごく近くから聞いた気がするその声は、なぜか安心できた。
そして、目が覚めるともう夜になっていた。

「う……ううん……?」
「あぁ……おはよう……って時間でもないが……とりあえず、あっちで自分の顔見てみ……」
なんで元気ないんだろう? 座りこんでうつむいたままだし……どうかしたのかな?
それでもわたしは、言われた通り、近くにあった湖をのぞきこんだ。
「………あれ!? なんで?」
「あー……よかった。成功したんだ……正直、自信なくってさ……今まで、お前クラスの制御したことなくって……あぁ……言い訳だな……悪い」
意味がわからない。けれど……
わたしの目が紅から、黒になっていた。普通のイーブイの目だ……
「お兄さんが……やったの?」
「うん……おれ。ごめんな?」
ゆっくりと顔をあげた、お兄さんの目は片方だけ紅くなっていた。
…………あの。
「あー気にすんなよ? これが本来あるべきもんなんだからよ。しかし、強かったなぁ……痛かった……」
「ごめんなさいっ! わたしのせいで……その……傷つけちゃって……」
どうしよう……わたしのせいだ。
でも、お兄さんは笑っていた。
「いいよ。おれも油断してた……本当にごめんな。大変だったろ? あれがいつ来るかわかんねぇもんな? 不安定でさ……ほんと、ごめん」
お兄さんがなんで、あやまるんだろう? 悪いことなにもしてないよ。
お兄さんは、わたしの方まで歩いてきて、頭をなでてくれた。
「優しいんだな?……もう、あんなことは起きないから……おれが護るからな。この力からも……あいつらからも」
「お兄さん……知ってるの?」
お兄さんはだまって笑うだけで、なにも教えてくれなかった。
「さて……難しいことを今言ってもわかんないだろうから、言わないけど。おれとお前は、切っても切れない縁になったわけで……離れろと言われても無理だからな?」
うん。
「仕事なんで、本来ならば全てを話すところだが……わかんないよな? てか、今、何が起こっているのかも理解してないだろ」
うん、してない。
「ですよね。じゃあこれだけ、覚えとけ」
うん?
「おれは制御者でお前は継承者。おれはお前の命令は、基本的に全て聞く」
………?
「お前は主人でおれは使用人ってところかな。まぁ、なんでも聞くわけじゃないからな? そこは勘違いするな」
しようにんってなに?
「………とにかく、明日はここから逃げるからな。あいつらから、逃げるために。だから、今日はもう寝ろ」
「あ……あの……」
「なんだ?」
「名前……教えて?」
「あ……そうか。おれは……フォース……でいいや。前からそう呼ばれてたから」
「フォース……?」
うーん……あの。
「今度はなんだ」
「すーくんって呼んでもいい? わたしのことは……あだ名つけて」
「すーくん……!?……あぁ……いいけど……あだ名?……すぅ……とか?」
すぅ! それがいい!
「じゃあ、すぅ。今日はもう寝ろ。明日から忙しくなるからな」
わかった!……すーくん。
「何?」
「ありがとう……おやすみ!」

「………ありがとう……ね」
湖の近くに座っていた、フォースが呟いた。そして、どこからか声が聞こえた。
『もっしー? 起きてるー?』
「………マスター、女子みたいなノリやめてくれないか。キモい。あと、テレパシーもやめろ」
『テレパシーしなきゃ、どう連絡とるのさ!……じゃなくって、どうよ?』
どうって……と考えこむ。そして、ずっと思っていたことをぶつけてる。
「なんでおれなんです? 本来、おれのランクでは釣り合わない……でしょう?」
『しゃーないやん。いなかったんだもん』
「いなかった……? で、五年もほったらかしですか? 馬鹿ですか、馬鹿なんですね。前からそう思っていたけど」
うぐっ……と答えに詰まる。フォースはたたみかけるように一気に話した。
「それに、境遇が悪すぎるだろうが。こうなる前に送りこめただろう。大体な、仕事しなさすぎなんだよ。あんたは」
『だって、だってぇ……わかんなかったのぉ……反応見つけたのだって最近だったしぃ……』
「女子か、あんたは。おかげで、死ぬところだったんだぞ。暴発に巻き込まれるわ、あいつの親に攻撃されるわ……」
『親? なんでさ』
知ってるくせに……と呟き、とりあえず、伝える。
「殺そうとしてたんだよ。実の娘である、ステラをな。調べたら……あいつが、三歳のころから、狙われてやがる。つまり、その頃には、反応があったということだろ?」
うーん?とうなるマスターに、苛立ちを覚えるフォース。これが初めてでもないのだが。
『…………あ、ほんとだ。全然、見てなかった……ごめん』
「ごめんですまねぇよ……空白の五年はなんだ……サボりか。五年間もサボりか?」
『違うよぉ……と言いたいが、お前のランクあげであっぷあっぷしてました』
「馬鹿だろ。馬鹿だな、馬鹿」
うわーん! と泣き始めた、マスター。フォースは、はぁとため息をもらす。また、始まったよ……と思った。
「今回は手伝ってもらうぞ。マスター」
『あ……あい……どうすればよろしいですか……?』
「エレルを貸せ。嫌とは言わせないからな。あっちは、言わねぇだろう?」
『了解……なぁ……』
「なんだよ。拒否権はないぞ」
違うって。とフォースの言葉を否定した。
『飲まれるなよ? “赤”とはまた違うんだからな。ま、わかってると思うけどな』
「わかってるよ。だから、力の半分は封印状態で、もう半分も目隠しするからまた半分。結果、四分の一しか使わない。取ったとしても、二分の一……それでも十分過ぎるしな……」
『だよね? んじゃあ、エレルちゃんを送っとくから……フォース』
「なんだよ」
『二の舞を踏むなよ?……俺からは以上! じゃーね♪』
ぷつりと声が途絶えた。フォースは最後の言葉を小さく呟き、空を見上げた。空はとてもきれいな星空。
「二の舞……か………なぁ、おれはちゃんとやっていけるかな? この世界でさ……鈴流」
そう言ったところで答えが返ってくるわけでもなく……
フォースは、ステラの寝ているところへ戻って行った。



~あとがき~
イブの過去編♪
はい、続きます! ごめんなさい!!
なんで、このイーブイ達は長いんだぁ……
泣きたいよぉ……(´;ω;`)
展開早すぎる……ごめんなさい。
次回は逃げます。

ちなみに、イブは大体、八歳の設定です。 その割には幼すぎる気もしますね。まあ、いいか。
では!(T▽T;)ノ
イブ「泣いてんじゃん( ̄▽ ̄;)」
フォース「触れてやるな……(;・ω・)」