satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第74話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で好き放題している物語です。本編とは一切関係ありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック。
前回、切りどころが分からなくて、かなり長くなりましたが……まあ、そんな日もあるよね。ってことで、ツバサちゃんの父、アルフォースさんこと、アルさんの登場回でした。他にも色々あったけどね。重要なのはここだけです←
今回はラル視点は一度、放置してDブロック行きまーす!


前の三ブロックと同様に放送部からの案内で百人の生徒達が集められる。予選最終ブロック、Dブロックである。
『これが泣いても笑っても最後の予選ブロック! 結構、バランスよく学年も学科も配置されてるって感じだな~♪ さあさあ! 観客のみんなも、待ちきれないよなぁ!? 相棒!!』
『ひゃい!! そ、それでは、Dブロック開始でしゅっ!!』
語尾を最大に噛んでしまっていたが、試合開始の鐘は綺麗に鳴り響いた。
屈伸やストレッチをしていたシエルは、鐘の音と共に、両頬を気合いを入れるかのように強く叩く。
「……僕以外の皆は、この先に勝ち進んだ。負けてられないよね!」
シエルと仲のいいアラシ達は─その中でも色々あった人物はいるものの─順調に、トーナメントへ駒を進めていた。この流れに乗りたいものだが、レオンやアリア……そして、ミユルのような、大型、あるいは範囲魔法を使用する手立てはシエルにはなかった。魔法が不得意というわけでないが、一発で形勢逆転できるようなものは持ち合わせていない。
そんな彼がここで勝ち残るには、至極単純な方法しか残されていなかった。
「せやあぁぁっ!!」
「おっと!」
接近戦で地道に倒していく。それだけである。
シエルは腕を竜化させると、襲いかかってきた相手を片手で受け止める。腕力の上がった彼に捕まった生徒は抜け出せず、場外へと投げ飛ばされた。
竜族である彼は、身体の一部を竜化させることで、身体強化を行える。今は、腕を硬い鱗に覆われた竜の腕に変化させたが、他にも足や尻尾を変化させることで、自身を強力な武器へと変化させられるのだ。もちろん、飛ぶための翼だけを出現させ、空中戦も可能である。しかし、空に逃げている生徒はいない。シエル以外にも飛行手段を持つ者はいるはずなのに、だ。
「無策に飛ぶのは……的になりやすいか」
何も考えずに空へと逃げてしまえば、地上から遠距離攻撃を受けたり、武器による攻撃をされたりと、何かと狙われやすい。それならば、初めから地上戦として対策を練っていた方が気も楽というものだ。シエル自身、空中戦なんてこれっぽっちも考えていなかった。
完全に竜化し、人の姿から完全なるドラゴンになって、この場にいる全員を蹴散らすことも可能ではあった。しかし、それは大会のルールとして……それ以前に、学園のルールとして許されていない。
つまり、シエルができるのは一部の強化のみ。
気の遠くなる話だが、愚直に進むしか道はないのだ。……誰かが強力な範囲魔法や範囲技を使用しない限りは、だが。今現在、会場の雰囲気を見るに、そのような動きをしている人はいない。
去年の今頃、シエルは半ば興味本位で─自分の中では記念のつもりで─参加した大会では、予選敗退という結果に終わっていた。当時は数人の乱闘が行われ、最後まで残っていた人が最終ブロックの乱闘へと駒を進められるルールだった。どのようになるのか楽しみ半分、緊張半分だったシエルが割り当てられたブロックは、透き通るようなブロンドの少女が一瞬で勝負を終わらせてしまった。身構えずに、更には武器も構えず、技一つで。
……その少女が二年生にして、生徒会長を任されていたラルであったのは、試合が終わってから気がついたのだ。
今回参加したのは、その結果を不満に思っていたから……ではなく、ミユルと似たような理由だった。入賞賞品目当てである。ほんの少し、リベンジも兼ねてはいるが、ほぼセラの講習会目当てだった。
着実に向かってくる相手を倒しながら、そのような戦いにあまり関係のないことを浮かべていた。それくらいの余裕が自分にあるのかもしれない。昔の自分の記録は更新していると感じていると、後ろから気配を感じる。その気配の居所めがけて、尻尾で凪ぎ払うように振り回すが、手応えはなかった。しかし、気配はぱたりと消えている。
「……?」
どうなっているのかさっぱりだったが、答えを探すにも情報がなさすぎた。気のせいだったと済ませる方がずっと楽に思えるくらいに。

シエルが地道に相手を倒している同時刻。
同じブロックに割り当てられたユーリは、リング端で両足を水路側に投げ出した状態で座っていた。彼の目の前には戦いを見守る観客が大勢いるが、その誰一人として、戦意の欠片もない彼を見ようともしていなかった。
「混戦してるなぁ……」
黒いグローブをはめた両手で、何もない空間から、くるくると糸を巻き取るような動作をしながらぽつりと呟く。
自身に幻術魔法をかけて、気配と姿を隠し、更にフィールド上にばら撒いた監視用の小狼達を通して、しばらくの間、情報を集めていた。この狼達も極力、微量の魔力で生成し、気付かれないように配慮させている。
今現状の情報をまとめると、今までのブロックとは違い、誰かが大技を仕掛けている様子もなく、単純な力比べとなっているらしい。ある意味、平和な予選かもしれない。
考えるよりも行動派な幼馴染みとは違い、完全に頭脳派のユーリは無闇に戦闘へと赴きたくはなかった。まずは周りの状況把握、そこから自身の打てる最善を、がデフォルトである。いつも、ユーリの側には無鉄砲なイツキがいるからだろう。
「あいつを動かすだけでどうにかなるなら、そっちの方が楽だったかなぁ」
と、そこまで考えて、イツキの力に依存した立ち回りを普段からしているんだなと、他人事のように考えた。一人でも戦えるはずなのに。
パッと手を手を広げ、空を見上げる。何の変哲もない空だが、所々、日の光を浴びてキラキラしているところがある。それを確認して、大きなため息をついた。
「はー……そんな自分が嫌になる」
一言漏らし、横に置いてあった細剣を持って立ち上がる。剣を腰に装備させてから、服についた砂埃を払い、くるりと後ろを振り返った。
変わらず、ごちゃついた戦場を見据え、どこを狙うか目星をつける。この際、誰でもいいので近場の男子生徒にした。
「……狼達はまだ放った状態で、僕の魔法を解く」
左手を剣に添えてから、地面を蹴って一気に加速する。相手の懐へ潜り込んだのと同時に幻術魔法も解いた。相手からして見れば、いきなり見知らぬ相手が、目の前に現れたように錯覚する。ユーリの姿を捉え、かなり驚いているのがはっきりと見えた。
状況を理解していない相手をそのまま峰打ちで黙らせ、再び近くにいる生徒に狙いを定める。
「こいつ、いつの間に……!」
「僕一人では、遠距離戦に不向きですけど、接近戦は得意なので」
幻術魔法を解いた後は、単純な身体能力勝負だった。遠距離攻撃を使われる前に距離を詰め、体術、若しくは、手元にある細剣で仕留める。事前に仕掛けた魔法以外は使わずに、次々と倒していく。
「くっそ……!」
「すみません。もうそろそろ、終わりにしたいんですよね。……っ!?」
ある生徒を倒した後、ユーリはばちんと何かが弾けたような感覚に襲われる。それが、誰かからの攻撃……ではなく、自分が仕掛けた狼が一つ消えてしまったのが原因だった。こちらから切るのではなく、一方的に切られたために起こったのだ。
消された狼が映していたのは、竜族の少年だった。彼をずっとマークしていたわけでもなく、たまたま捉えたに過ぎない。参加者が減り、それに合わせて狼を減らしていたユーリは、特定されるのを防ぐために、一人に留まらせずに絶えず移動させていたのだ。それなのに、少しの気配を察知し、本能的に攻撃してきたのだろう。
「最後に見えたのは……シエル……えっと、シルフ、さん……だっけ? よく気付いたな」
やられたという苛立ちや悔しさよりも、単純な感心を抱く。様々な魔法や技が飛び交う中、ユーリの魔力なんて微々たるものであったからだ。
「奥の手を使うような場面だけは避けたいですね」
剣を構え直し、飛んでくる風魔法を縦に真っ二つに斬り伏せると、その術者めがけて走り出した。

『そこまで!! Dブロックを勝ち残った二名が決定だあぁぁ!!』
後半は無我夢中で戦っていたシエルは、リュウのストップがかかって、竜化を解いた。強化していたとはいえ、武器相手にも素手で戦っていたいたために、あちこち擦り傷や切り傷でボロボロだった。とはいえ、シエルにとってはほんの掠り傷程度で、特に問題はないし、想定内の範囲だった。竜族の固有能力として、自己再生能力があるからだ。時間はかかるが、トーナメント時には問題なく戦えるまで回復する。
『トーナメント進出を決めたのは、魔術科二年のシエル・シルフ先輩と……同じく、魔術科二年のユーリ・ケイン先輩……ですっ!』
自分の名前を聞き、今回は残れたのだと安堵した。今までのブロックよりは時間がかかった気がするが、制限時間内には終われたらしく、それに関してもホッとした。
シエルと共に勝ち上がった相手を探してみると、すぐには見つけられない。しかし、よく見てみると、その場にしゃがみ、倒れた生徒達に紛れてしまっているらしい。なんとなく近づいてみると、彼は何体かの小さな狼に囲まれていた。場違いな光景ではあるが、ユーリは対して気にしていないのか、狼の頭を撫でていた。シエルと比べ、目立った怪我もなく、息も上がっていない。
近づくシエルに気づいたのかまでは定かではないが、ユーリはその場から立ち上がると、ぱちんと指を鳴らした。すると、ぷつんと何かが切れたように、張り詰めたフィールドの空気ががらりと変わる。
……否。変わったというよりは、元に戻ったと言うべきだろう。今まで、戦場だから変に思わなかっただけだ。この変化に気付いている人は果たして、どれだけいるのだろう。それくらい、高度であり練度の高いものだった。これを作り出したのは、もちろん、シエルではない。この戦いで魔法は一切使ってこなかったのだから。となると、これを引き起こしていた人物は一人。
「……魔力に囲われていた、の? これ、君が?」
「僕の奥の手です。使わなくてすみました」
「君のメインは剣じゃなくて、糸……それも、魔力で紡がれた糸を、フィールド全体に張っていたんだね。でも、それを使えば一瞬で終わっていたんじゃないの?」
具体的な使用方法は分からないが、糸が届く範囲であれば、ユーリの状態異常魔法……デバフ魔法も簡単に広げられたはずだ。ミユルとは手段が違うが、似たようなものである。
「そうでしょうね。それくらいの自信はありますが……まあ、先生に極力使うなと言われていたので、本当に死にそうなときにと」
「先生……?」
「友人と僕の剣の師匠です」
魔法を使う者の中には、サポートメインになる黒を蔑む輩は少なからず存在する。攻撃魔法を使えないからと舐めてかかるのだろう。それを補う方法はいくらでもあるが、純粋な魔法対決となると、分が悪いのは確かだ。シエルに黒が劣勢だとか、そんな偏見は一切ないが、ユーリの周りがどうだったのか想像もつかない。
それに、シエルとユーリは面識があるわけではなかった。というのも、中高通して、同じクラスになった経験がない。そのため、ユーリが現在、ミユルと同じクラスで、生徒会役員というくらいしか知らないのだ。そんな浅い関係しかないシエルが、彼の気持ちを計り知るのは不可能というものである。
「トーナメントは昼休憩後に始まります。もし、当たったらよろしくお願いしますね。シルフさん」
ユーリは数匹の狼を肩や頭の上に乗せてるものの、器用に小さくお辞儀をする。同年代からファミリーネームで呼ばれる機会がないためか、むず痒い気分になる。
「シエルでいいよ。……その代わりって言うとおかしいけれど、僕も君のこと、ユーリって呼んでも構わないかな?」
「構いません。お好きなように」
「それじゃあ……よろしくね、ユーリ」
差し出した右手をユーリは一瞬見つめると、はめていたグローブを取り、シエルの手を握り返した。



~あとがき~
途中まではすらすらだったのに、最後でつまずくとは……予想外……

次回、ラル視点に戻し、一方その頃やります!
それが終われば、剣技大会も半分終わったと思える……気分的な話ね。話数じゃなくてね?

シエル君の戦い方もほぼ捏造ですよ……どう戦うのか聞いて、私がましまししてます。何も語れない←
身体の一部を竜にさせて、筋力やらなにやらを強くさせてるって感じです。体術です。それだけです……!
あ、あとは、去年の大会も参加した経験ありとのことなんで、過去も捏造させていただきました……ラルだけ過去の大会でどうしていたのか出してなかったんでね。それも兼ねて。

ユーリはイツキ程ではないにしろ、ある程度、武器の扱いは器用です。まあ、だからってほいほい色んなものに手は出してませんけど。
そんな彼のメインは糸ですね。今回使用したのは、自分の魔力を練って、見えない糸を作り出し、張り巡らせることで、本来、威力の低い or 範囲の狭い魔法も遠くへと届かせることができます。ユーリを介せば攻撃魔法も運べるかもね。知らんけど((
ただ、既存の糸ではなく、いちいち練らないといけないので、手間はかかりますがね。
まあ、普通の武器としての糸も扱えますので、持ってはいると思います。メイン武器とは言っているものの、普段はサポート入ったり、体術で黙らせたり、武器あっても剣使ったり、出番はあまりないですけどね(笑)

ではでは!