satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第178話

~前回までのあらすじ~
ポチャが連絡を取り合ったり、なんかしているときのイブ達でした。
ポチャ「だから、適当すぎる!」
イブ「ごちゃごちゃしそうですよね。……読んでくれている方々を置いていかないか心配です」
ポチャ「もう置いていってる気がするよね」
そ、そんなことないです!!!
……そんなことないですよね?
ポチャ、イブ(心配になってる……)


浅葱、レンが配属されたのは言わずもがな、自分の親方であるシアのところであった。説明の場にはいなかったものの、指揮するつもりはあるようで、夏の蒸し暑い中、白いマフラーと黒いマントを身に纏っている。救護テント前で、医療に精通するものが集められているようだった。求められる能力が限られているせいか、他の所よりもかなり人材は少ないように思える。
「んー……シア、暑くね?」
「別に」
厚着にも関わらず、汗一つかいていないシアの言葉に嘘はないのだろう。何か特殊な効果でもついているのかと疑いたくはなるが、ファンタジーではないのだから、そんなことはない。と、レンは思うのだが、実際のところ、真相は闇の中である。
「見てるこっちは暑いんだけど……まあ、いいや。俺らは何するんだ?」
「いつもと変わらないわ。怪我した人の手当てをしてちょうだい。ギルドには連絡しておいたから、重傷者はバンバン転送しちゃって」
ぶっきらぼうな言い方に、浅葱はクスクス楽しそうに笑う。元来、血生臭い世界で駆け回るために、逆境というものは嫌いではなかった。不利になればなるほど、闘志に火が着くタイプだ。
「待機組、損な役回りになったわねぇ♪」
「エレキはギルドに戻ったんだろ? あっち行っても仕事なのか。かわいそう……太陽は?」
「エレキに関しては、あなたのせいだけれど。あいつは手当てなんてまともに出来ないわよ。……こっちに呼ぼうかしら。用心棒くらいにはなるわ」
そう言ってバッジを取り出し、一言二言話す。連絡を切った途端、浅葱の横には嬉々として顔を輝かせた太陽の姿があった。
「おー……楽しそうだな」
「うん! やりたりないから!!」
「やるなんて一言も言ってない。許可もしてない」
「分かってるよ。君のためならなんだってしてあげるっ! 盾にも剣にもなるよ?」
「あぁ、そう。……ガンバッテ」
全く感情がなく、冷たく、平淡な発音ではあったが、太陽にはそう聞こえなかったらしい。感動したように目を潤ませ、声にならない歓喜を味わっている。そんな太陽に浅葱は溜め息をついた。
「ほんっと、気持ち悪い……死んでほしい」
「お前ら、結婚する気あんのか? 俺、時々不安になる」
「誠に残念ながら、するわよ。人生最大の汚点よね。一族の恥」
「破棄すればいいのに、義理堅いわよね。浅葱」
「うふふ。相手のいないシアよりはましでしょ? 近いうちに、寿退社しますわ♪」
「あんたムカつくわねぇ!」
突っかかりそうになるシアを押さえつつ、レンは澄まし顔の浅葱を見る。
「近いうちっていつなわけ」
「さあ? 私個人の事情が片付いたらかしら」
「ほーん。そんなの初耳」
「当たり前でしょう? そんなこと、誰にも言ったことないもの。……太陽は知ってるけれど、幼馴染みだし、ノーカンよ」
「ねえ! そんな話より、いつから動けばいいの? 周り、変なのばっかうろうろしてるんだけど? やっていい?」
太陽の明るい声で三人は気づいた。ほんのわずか、何かに囲まれている嫌な気配。言われなければ気付かないし、言われたところで気付く者は少ないだろう。
「鼻いいな、お前」
「もっと褒めてくれてもいいよ? 褒められて伸びるタイプだかんね!」
「太陽。ここを一人で死守出来る?」
「ハニーのためなら、やってみせる! って言いたいけど、無理。結構な数だ」
彼がそう言うなら、そうなのだ。浅葱に対して嘘なんてつくはずがないのだから。
「じゃあ、私と二人なら?」
「いいね♪ 不可能から超絶激むずくらいにはランクダウンしたんじゃないかなぁ?」
「ふうん。……シア、いい?」
浅葱の目に迷いはなかった。ここを任された人材は少ない。周りの守りに避けるほどの人はいないのだ。他から呼ぶにしても、時間稼ぎは必要である。シアがじっと考えていると、またもや浅葱の楽しそうな声が聞こえる。
「囲まれているんじゃ、他のところも手一杯だろうから、援軍は望めないわね。絶望的な状況。敵にそんなことが出来たのか疑問は残るけれど……楽しそうじゃない?」
「あんたのそういうところは、太陽と波長が合うわよ。……行きなさい、チーム・リュード」
浅葱と太陽がお互いの顔を見合わせて、シアに向かい直すと強く頷いた。素早く走り出す太陽の肩に浅葱が乗り、その場から離れていく。
「よかったのか? 浅葱をここに残さなくて。あいつの能力は必要になるかも知れなかったのに」
「いいわよ。裏方に回るようなタマじゃない。……二人ともね、誰かとどんぱちしてる方が合ってるの。それが、うちの特攻隊でしょ?」
ふっと笑うシアに、レンは肩をすくめた。ギルドの長はメンバーのことをきちんと理解しているとでも言いたげである。
「……ま、そうだなぁ♪ んじゃ、俺達はお医者さんしますかねぇ?」
「そうね。必要ない方がありがたいけれど、そうも言ってられないわ。ちゃんと働きなさいよ、レン」
「へいへーい」
シアは他のメンバーに指示を出すためにこの場から離れる。レンは静かに息を吐く。
何かが動いている。しかし、それが何かが分からない。本当に『ヴァンガル』の仕業なのか、怪しく思えてきた。
「頭脳派じゃないから、おにーさんには無理だわ。ピーカーさーん? お前さんの出番だぞー……なんてね」
救護テントで寝ているピカが、こんなにも必要になるとは思わなかった。先程まで敵として戦っていたときは恐ろしくも感じたが、それが今は必要なのだと改めて思う。四天王が事足りない訳ではない。それは、他の補佐も同じことが言える。ただ、得意分野が違うだけで、ピカは考えることに関しては、群を抜いているとレンは以前から思っていた。
他にも得意なやつがいるのを二人、知っている。一人はブイことナイトだ。もう一人はヴァルツ。しかし、両者ともこの場にはいない。ヴァルツに関しては、ナエから呼び出しを受けて来ているかもしれないが、それでももえぎといるはずだ。
「浅葱も分析力に長けるけど、考えるより動くタイプだし。ピカみたく、推測したり、推理したりなんてことはしないもんな」
やれやれと頭をゆっくりと振る。
ないものを考えるより、これからのことを考えるべきだ。きっとこれから忙しくなるのだから。



~あとがき~
シア率いるメンバーでした。
敵討伐には浅葱と太陽。裏方にレンやシアが入ることになりそうですね。

次回、他のメンバーに視点を置きます!
誰にしよ……アクア達にしよっか……うん。

浅葱と太陽のチーム名、というか、コンビ名ですかね。それが初出かな? リュードと言います。よろしくね! リュードってのは、竜胆って花の名前をいじったものになります。なんか別物が出来上がりましたけどね。なんで竜胆にしたかってのは……まあ、うん。花言葉からですね。確か。気になる方は調べてみると面白いかも……?

ではでは!