satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第72話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわやわやする物語です。本編とは一切関係ありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
予選の箸休め、氷山解体は終了しました! Cブロックをね! やっていこうと思いますよ!! はい!
また苦手なバトル描写。単調なものになりそうですが、気晴らしにでも見てってくださいな。わちゃわちゃっとしたのは次回にね……きっと、うん。あるから……(笑)


セラとツバサが全ての花を配り終え、観客に向かって頭を下げる。鳴り止まない拍手の中、セラは顔を上げたツバサにそっと呟く。
「お母さん、ある人のおもてなししないといけないの。イグくんと会長さんのところに一人で戻れる?」
「うん。お仕事、頑張ってね、お母さん♪」
笑顔で頷くツバサの髪をふわりと撫で、セラは入ってきた方と反対側へと歩いて行った。ツバサもセラに背を向けると、周りの観客に手を振りながら別の出口からフィールドを離れた。

二人が出ていった後、お馴染みになりつつある、放送部二人の声が聞こえてきた。相も変わらず、ハイテンションなリュウの声が会場を包み込んだ。
『言葉に表現するのが難しいくらい美しく、可憐なショーだったな! いやぁ……こんなショーは二度と見られないかもだぜ!?』
『そ、そうですね! 二人のお陰で大会も続行できそうですし……』
『だなっ!! つーことで、予定通りCブロック開始するぞぉ!!』
『ひゃ……!? Cブロックしゅちゅ、出場者は、こちらのリングへとお集まりくださいっ!!』
キャスの言葉に被さるように話し出したリュウに驚いたのか、キャスの声が若干裏返る。最後は何とか持ち直したものの、噛んでしまった事実は消えてはくれない。熱くなる顔を手で押さえながら、モニターを見た。
すでに通路近くで待機している生徒達がいたのだろう。ばらばらとフィールド上に移動しているところだった。
予選も残るはあと二つ。Bブロックでは予期せぬトラブルに見舞われたが、残りのブロックは平和に終わって欲しい。これは、キャスだけが考えている訳ではないだろう。取り仕切る生徒会も、大会実行委員会も同じように思っているはずだ。
隣ではリュウが涼しい顔で台本をチェックしている。とはいえ、チェックなんてせずとも、次の予定は頭に入っているはずだ。手持無沙汰なだけで、なんとなく近くにあった台本をペラペラと捲っているだけに見える。キャスにとって、鬱陶しいくらいに構ってくる先輩ではあるが、それと同時に頼りになる人でもあった。
最後までリュウ程ではないにしろ、努めて明るく振る舞い、来てくれている人々に楽しんでもらいたいと気持ちを入れ直すのであった。

Cブロックに割り振られたミユルを含めた百名の生徒達がフィールドへと集まっていた。ミユルが周りを見渡せば、知った顔よりも知らない顔の方が多く、彼女のような女子生徒は少ない。先に行われた二つも、傾向的には男子生徒が多かった気がする。元より、このような戦いを楽しめるのは好戦的な人達に限るのだろう。友人であるアラシ、レオンが賞品に興味がなく、自らの力試しのために参加しているのがいい例だった。対するミユルは、今回が初参加。そして、優勝賞品ではなく、入賞賞品に興味があり、セラの講習会がなければ、参加してなかったかもしれない。つまるところ、ミユルは優勝をしたいわけでなく、四位入賞……準決勝まで駒を進められれば目的達成であった。
『色々あったが、これから予選! Cブロックを始めていくぞ!! このブロックは魔法使用者が少し多いようだな? どんな魔法が炸裂するのか! 見物だぜ!!』
『そ、それでは、試合、開始ですっ!!』
甲高いゴングの鐘が鳴り響き、フィールドは一気に戦場化していく。リュウの紹介通り、魔法使用者が多いのか、あちこちに魔法陣が浮かび上がっては、何らかの魔法が発動していた。もちろん、参加者各々が持つ、武器同士のやり合いも勃発している。
「確実に決めていかないと、ね♪」
ミユルは自分のメイン武器である鞭を構え、周りの生徒達から距離を取る。アリアやレオンのような攻撃的な魔法はあまり得意ではないし、アラシのように力強い武器の扱いもシエルのような体術だって不馴れだ。そもそも、戦闘自体、好きではない。
そんな彼女がこの戦闘を生き残るには、なるべく相手の攻撃を受けないように立ち回り、かつ、短時間で終わらせるのだ。長時間続いてしまえば、攻撃手段に乏しいミユルの勝ち目はなくなってしまうからである。
しかし、先に述べたように、戦闘は好まない。では、どのようにして戦闘を終わらせるのか。
それに関しては、ミユルの中でしっかりと考えてあった。それを実行するため、鞭にあらかじめセットしてあった植物の種を取り出すと、そっと地面に埋め込む。これを何度か繰り返せば、ミユルは勝てると確信していた。
この単純な作業は、何もなければ数分で全てが完了するのだが、現状、そんな楽にいくはずもない。地面に種を蒔く姿が無防備に映ったのだろう。ある生徒が武器を振り上げた状態でミユルに向かって来た。彼の持つ武器は、何の変哲もない片手剣だ。彼の間合いまではあと数歩と言ったところだろう。
……あくまで、彼の、だが。
「そこはもう、私のテリトリーです」
そう呟き、鞭を振るう。鞭が吸い込まれるようにガードが緩くなっていた脇を打つ。バシンと痛々しい音が響き、打たれた生徒は無抵抗に吹っ飛ばされた。呆気なく場外へと……とまではならないものの、地面に力なく倒れているところを見ると、一撃でノックアウトできたようだ。
「ごめんなさいね。これでも、勝ちを狙っているものだから」
年上なのか、下なのか、はたまた、同い年なのかは分からないものの、ミユルはぺこりと頭を下げてから、深緑の髪を揺らしながら、その場を離れた。別の場所に種子を植え付けるために。
それを使うには端ばかり植えるのでは、あまり意味はない。ランダムに植えてこそ、勝率が上がるというもの。そのために、混戦している中央付近にもいくつかは埋め込みたいのである。
それには戦闘が不可欠なのだが、相手との間合いを上手く見極め、相手の武器を取り上げて、峰打ちを決め込んでいく。そして、少しの暇を見つけては勝利の鍵となる種を植えていく。
ある程度、時間が経った頃。ミユルは中央を抜け出し、戦場の端へと移動していた。戦闘によって汚れてしまったワンピースの裾を軽く叩く。
「……私、あまり、戦闘は得意じゃないの」
バシンッ!
ミユル自身が持つ鞭で地面に叩きつける。誰かがいて、牽制するために打ったわけでも、攻撃のために打ったわけでもなかった。
「だから、ごめんなさい。……少し、卑怯な手を使わせてもらいますね?」
申し訳なさそうな言動とは対照的に、彼女はもう一度、鞭を打ち鳴らした。バシンと地面に鞭が当たる音が響く度に、ミユルを勝ちへと誘う花が咲きつつあった。風に乗り、それを運んでいく。
異変に気付いた生徒はどれだけいたのだろう。そして、異変に気付いた生徒の中で、瞬時に対策できたのはどれだけいたのか。
「な、なんだ……か……ねむ、く」
「は、花? いった、い……だれ、が……」
バタバタと倒れていく参加者達。彼らが倒れる瞬間、瞳に映るのは、鞭を持ち、笑みを浮かべる一人の少女。
ミユルが仕掛けたのは、強制的に睡眠状態へとさせる花粉を撒き散らす植物の種だった。その花粉を少しでも吸ってしまえば、対策していない人は瞬時に眠ってしまう。
植物を愛し、操るミユルだからこそ、使える手段でもあった。
『勝負あったー!! このCブロックを勝ち上がったのは……』
『魔術科二年、ミユル・ノフェカ先輩と、魔術科三年、セジュ・クルール先輩です!』
どうやら残れたのは、たった一人だったらしい。そして、なぜ残れたのかもミユルには理解した。
「同じ部活の先輩なら、私の植えた植物の判断できて当然……ってことね♪」
要するに、ミユル同様に植物に精通する人物であった、ということである。とはいえ、知識の面で言えば、ミユルの方が何十倍もあるのだが。
小さく笑みを溢すと、周りの観客に向かって一礼をした。そして、近くの出口からフィールドを後にする。



~あとがき~
頑張ったな……私……(笑)

次回、一方その頃は~……ってやつです。
別名、バトル休憩回!←

ここら辺のミユルちゃん戦闘描写は私オリジナルなんです。相方が「戦闘……思い付かねぇ……」ってなってたので、ミユルちゃんの戦い方を聞いて、私がてっきとうに練り上げました。ほんわかミユルちゃんのかっこいい一面が出ていれば……いいなって……私、そう、思ってる……うん……
話を戻しますと……多分、このCブロックで大きな出来事がなかったので、創造神の相方も頭を悩ませたのだと思います。私もこれを書き上げるのに珍しく、一週間くらいは放置していました。レイ学の放置ってほぼないんですけどね。ほら、シナリオが送られてくるから、「書けない!!」ってなることが少ないのでね。本編は細かくプロットを書き上げてないので、何ヵ月放置も不思議ではないんですけど、これは作り手の違いですね(笑)

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第71話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界ではっちゃけてる物語です。本編とは一切関係ありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、大会の箸休めと言っても過言ではない氷山解体ショーをしているんだけども……なかなか本題に入りませんね。なんででしょう。
ラル「前置きが長い」
それな……
今回は第三者視点でやっていきます。一話で収まるやろ……いや、長くなろうと収めてやります。


生徒会の準備、並びに教師陣の対応の時間を稼いでいたリュウにラルからのゴーサインが出た。その連絡を受け取ると、今までの話を切り上げ、本題へと移る。
「おおっと? 今、運営側から連絡が来たぜ! どうやら、普通に解体するだけじゃかなりの時間を要するらしいっ!!」
と、ここまで言い切ると、隣に座るキャスに目配りをする。それと同時に、今の状況を簡潔にまとめたメモを見せた。一年生でこれが初仕事の彼には、原稿のないこの状況下は、少し酷な仕事かもしれない。しかし、普段からリュウに手解きでも受けているのか、或いは、無茶ぶりを受けるからだろうか。そのメモを頼りに上手くアドリブを交えつつ、アナウンスしていく。
「で、ですので、急遽、この氷山を使った解体ショーを行います! 出演者はこの学園の理事長、セラフィーヌ・ケアル先生です」
「更に更に~? 高等部魔術科に所属し、理事長の娘であるツバサ・ケアルとのコラボレーションだ! 実質、親子によるショーになるなっ」
二人のアナウンスに、観客の下がり気味だったボルテージが戻りつつあった。そして、ツバサとセラのスタンバイ完了を確認して、リュウは締め括りの言葉を紡ぐ。
「そんじゃあ、ここからは理事長にバトンタッチだ!」
マイクを切り替え、自分達ではなく、セラの声を聞こえるように設定を変えた。ここからは司会進行役は一旦お休みである。
段取りにはないアクシデントを一つ乗り越えたからか、ほっと一息つくキャスに、リュウは嬉しそうに笑った。
「ちゃんと話せてたぜ、相棒!」
「う、うぅー……もう、びっくりしましたよぉ……急にメモだけ見せてきて……」
「生にアクシデントはつきものだ! 覚えておけ!」
「は、はい」
戸惑いつつも成長を見せてくれる後輩を頼もしく感じつつ、リュウは放送室に備え付けてあるモニターに目を移した。飛び回るカメラを魔法で隠しているため、カメラ自体は観客に見えていない。そんな隠しカメラから送られる映像を見る。
そこにはBブロックで作られた氷山と、アラシが自身を守るための魔法によって偶発的に氷ができなかった空間に立つ一人の女性を映し出していた。その女性はまさしく、キャスが紹介したセラフィーヌ・ケアルであった。

放送部からの短くも分かりやすい説明により、これから起こることを理解してくれた観客に向かって、セラは恭しく一礼をする。
「この度はBブロックでできてしまった氷山の解体に時間がかかり、皆様に多大なるご迷惑をおかけして申し訳ございません。そこで急遽、私自らこの氷山を使った美しいショーを披露することにいたしました。どうぞ、心からお楽しみください」
謝罪の言葉も手短に切り上げ、そっと目を閉じる。心の中で魔法の詠唱を開始しつつ、レイピアを抜く。すると、セラの周囲には赤い魔法陣が展開された。炎属性の魔法陣は淡く光りつつ、炎の渦を作り出し、その渦はセラを囲うように出現。その炎を氷山にぶつけるのではなく、彼女の持つレイピアに吸収されるように集まっていくと、刃先周辺で炎が渦巻いていた。
そこでセラは閉じていた目を開けると、炎を纏わせたレイピアをキープしつつ、氷山の前に立つ。そして、目の前の空気を断ち斬るかのようにレイピアを素早く操る。その動作が終わる頃には、レイピアの周りに出現していた炎はなく、くるりと氷山を背にしながら、レイピアを鞘に納めた。
その瞬間、背後の氷山が大小様々な形で崩れ始めた。目にも止まらぬ速さの斬撃がそれを成したのだが、それを見極めきれなかった者が大半のようで、観客からどよめきが起こる。しかし、それに留まらず、鞘に納めたレイピアの柄に手を当て、剣に嵌め込まれている薄黄緑色の魔力石から風属性の術を発動させる。そうして、自ら崩した氷の塊を重力に逆らって浮かび上がらせた。全ての塊が宙に浮かせると、満足したように笑う。
『ピィィィィ!!』
甲高い音が会場中に響き渡る。その音が合図だったのだろう。空中からいきなり現れたツバサが、パーカーを風になびかせながら、ゆっくりと地へと降り立った。その姿はさながら、天使のような儚さを持ち合わせている。
実際のところ、ツバサの操る幻術と風魔法によるもので、それを察した者が何人いたのかは定かではないが。
地面に降り立ったのもつかの間、ツバサはちらりとセラと目配せをする。そして、母の笑みに小さく頷くと、愛用の武器である両剣を握りしめて、宙に浮かんだままの氷塊へとジャンプした。先程、空を浮かんでいたときと同様に風魔法を操りつつ、氷塊から氷塊へと飛び乗って移動していった。それなりの高さがあるものの、それに臆することなく次々と上へ上へと上っていった。
「……よっと♪」
浮かび上がる氷達の半分くらいまで来る頃には、両剣の両刃を赤く光らせていた。ツバサの武器は、使おうとする属性魔法と呼応するように様々な色へと変化する特徴がある。『白』である、ツバサだからこそとも言えた。
始めにセラが発動させた魔法と同じ赤色を解き放つ……前に、ツバサは誰にも悟られぬよう、そっと会場を見回した。幸運にも、少女の捜しものは簡単に見つかり、パッと表情が和らぐ。
「いたっ! ステラちゃんとリーフちゃん♪」
ショーの真っ最中に勝手なことはできないものの、満面の笑みを送るくらいは許されるだろう。そう考え、二人のいる方向に飛びきりの笑顔を見せると、それに気づいたのか、或いは偶然なのかは分からないが、二人が応えるように、笑顔で手を降ってくれているのが見えた。それが「頑張って」と言ってくれているみたいで、心がほかほかしてくる。
「……うんっ! 頑張るねっ!」
母の期待とは別に、ステラとリーフの思いを胸にツバサは浮かんでいる塊たちの天辺を目指した。軽々と頂上まで上り切ると、待機させていた魔法を発動させる。そして、今度は氷塊から氷塊へとランダムに移動し始めた。上っていたときと違うのは、ツバサが発動させた炎属性の魔法が、移動に使った塊に印をつけている点である。その印はツバサを追いかけ、炎によるラインを作り上げていく。
見てくれている観客にアピールをしつつも、ある程度の移動を終えたツバサは、自分の辿ってきた氷塊の道を目で追った。正確には、自分がつけて回った炎の印だが、それらは、思い描いた通りに配置できているらしかった。炎が浮かぶ氷を丸く覆い、氷が炎の檻に囚われているかのように映った。その光景に嬉しそうに頷くと、ツバサはセラのいる地面へと一気に降りる。
そして、ツバサの作り上げた作品を地で見ていたセラは、氷塊を浮かせている風属性の術とは別のものを発動させた。その風は、娘の炎魔法をも吹き飛ばすのではと感じる程の強風であるものの、そんな風の中でも炎たちは氷を覆い隠し、豪快に動き回っていた。風に乗った炎はやがて、花火のように大きな音を立てながら弾ける。昼間であり、火薬を使っていないために、色とりどりの光の花を咲かしはしなかったものの、氷山の塊が炎と風によって、溶かされ、削られたのだろう。日の光を浴び、きらきらと輝く無数の氷の花たちへと姿を変えた。
先程まで、巨大な氷の塊だったそれが、小さく愛らしい花へと変貌する。そんな一連の出来事を目の当たりにしていた観客達から、大きな歓声と拍手が二人へと注がれた。セラは慣れたものだが、ツバサはここまでの反応は想像してなかったために、少し驚きつつも観客を見回す。見てくれていた人達全員が笑顔で楽しそうな表現を浮かべているのを見て、ほっとした。そして、関係者席近くで小さく手を振るティールを見つけ、更に嬉しくなった。いつも仕事を教えてくれる先輩も、優しく見守ってくれていたことに。同時に、この場にはいないらしいフォースや、通路付近にいるであろうラル……そして、何より大会に参加している友人達は、これを見て楽しんでくれただろうか、と思ってしまう。
「ツバサ」
「は、はい!」
セラに呼び掛けられ、慌てて思考を現実に引き戻し、当初の打ち合わせ通りに、二人で風魔法を使って、氷の花を観客達へとプレゼントしていく。風に乗った氷の花は幻想的な風景を生み出し、これにも観客から感嘆の声が漏れていた。
残念ながら、花の数と観客の数は後者の方が多い。風を操っているとはいえ、ツバサからすれば、名前も顔を知らない相手ばかりで、仮に知った顔がいてもどこにいるのか瞬時に判断はできない。先程、ステラ達を見つけられたのは、ツバサ自身が高いところへ上っていたから。そして、ティールに関しては、彼が高い位置で警護していたからで、下に立つツバサの位置でもたまたま見えただけだ。そのため、花は完全にランダムに配っている。しかし、どうしてもステラ達には自分が作った花をプレゼントしたくて、そっと風の方向を操り、彼女達の近くへと運ばせた。ちゃんと届きますようにと心の中で願いながら。



~あとがき~
いえぇぇえい!!! 一話に収まったぁぁあ!! 
説明が多かったので、思いの外、短くまとめました。もうちょい表現を頑張れよって感じですね……

次回、Cブロック開幕!

一応、ここまで書きましたが、これ、伝わってるかなぁ……自分の引き出しが浅すぎて悲しくなってきます……会話文がないので、より単調な感じになってしまいました。すみません!!
いつか、私の文章能力がアップして、手直しできればいい感じにしたいですね。どうやればいいのかさっぱりですが。
プロットに書かれていた表現をほぼまるっと写し、プラス詳しくしたり、ちょっと心情っぽい何かを書き加えたりはしましたが……半分以上は相方の表現をまるっとしてますんでね……いや、私なりに書き換えてはありますが。書き換えない方がよかった説もある……ひぇ……
まあ、あれです。理解してほしいのは、巨大な氷山が小さな花に変わりましたよってところですね。それだけでいいです……
花がステラ、リーフに(もしかしたら、ティールにも)届いていたかはまあ、ご想像にお任せ……いや、描写するまでお待ちくださいね!! するところあるだろ! 作るんで! へい!!
答えが出るまではお待ちくださいなーと。

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第70話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で無茶苦茶やってる物語です。本編とは一切関係ありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバックです。
前回、救護室のお手伝い(と書いて、『おサボり』と読む)していたラルの元に、なんだか色々と緊急のお仕事が……ってことで、大会(氷山解体編)やります。大会とは関係はないけれど、まあ、箸休めとしてね? 楽しんでってくださいな。


《L side》
全員への伝達が終わり、通信機を切ると、私はふっと息を吐いた。安心するにはまだ早いけれど、とりあえず、一仕事終えた気分である。いや、厳密には何一つとして終わってないんだけれども。
「なぁんか、久しぶりに真面目に仕事してるラルを見たな」
イグさんのその言葉に私は首を傾げた。確かに真面目に仕事をする方ではないと自覚しているつもりだが、一応、人前に出なければならない式典等々では、それなりにやっていると思っていたのだけれど。それに、言うほど久しぶりでもない。
「? 入学式でもちゃんとしたご挨拶したつもりですが?」
「いやぁ、そうじゃなくって。生き生きしてるって言うの? そんな感じ」
「えぇっと……楽しそうってこと?」
「簡単に言えばな♪ ラル、ちまちま書類とかやってるよりも、動いている方が様になってるぞ」
……うーん? 褒め言葉? 受け取っていいのか、これは。悩ましいところだ。
「お待たせしました!」
準備を終えたらしいツバサちゃんが部屋に帰ってきた。普段の制服姿……ではなく、少し薄い黄緑色のパーカー、水色のTシャツにショートパンツといったいわゆる、普段着姿。私服姿だ。そして、そんな彼女の手には槍のように長く、両端に刃がキラリと光る、両剣が握られていた。そして、魔力石も埋め込まれている。
魔力石とは、まあ、読んで字のごとくではあるのだが、魔力の込められた石である。色によって使えるものは異なり、石の秘める魔力量にもよるが、魔法にも似た術を繰り出すことが可能だ。ここら辺は魔法使用者の髪の色と同じである。そして、ツバサちゃんの武器には白い魔力石がつけられており、白い石は大変珍しいのも、魔法使用者の特徴と全く同じで、大変覚えやすい。
つまり、青い魔力石なら、水系統だし、赤い魔力石なら、炎系統の術が出せる。ただし、純粋に魔法で攻撃した方が威力は高く、魔力石にも容量があるために、必要以上の攻撃は期待できない。あくまで、サブとして、あるいは自身の弱点を補うためのアシストとして考えた方がいい。ちなみに、私のメイン武器の雷姫に魔力石はついていない。雷姫を手に入れる前に使っていた短剣には、一応ついていたが、ほぼ使った記憶はない。
武器自体の話をすると、─私個人の感想だけども─両剣なるものは扱いが難しいので、槍とか薙刀で事足りてしまう……と、考えてはいる。まあ、近くに使い手もいなかったのが原因ではあるが。
そんな中距離武器の一つをメインにするらしい、ツバサちゃんはいつも通りの笑顔を輝かせていた。
「ツバサちゃん、会長様からもらった服、着替えたの?」
「はい。あのお洋服とってもかわいいし、せっかく
ラルさんが用意してくれたので。汚したくないですもん」
汚れてもいいからこそのナース服では……あーいや、そういう話はいいか。
制服姿や先程のナース服はふわっとしたスカートだったからか、今のショートパンツ姿は、いつもと違う印象を感じる。大人しそうな少女から、活発な少女へ変化した。
うん。可愛い女の子は正義ですね!
「よっしゃ、行くか! リア、魔力回復ポーション、もらってくぞ?」
「ええ、もちろんいいわよ♪」
「ツバサ、ラル。行くぞ~」
「はーい!」
「ラジャーです」
前を先導して歩いてくれるイグさんを追いかけつつ、耳につけたままのインカムから絶えず情報収集をしていく。聞いている限り、特に問題なく人員の配置と結界の補填は行われているようだった。来場者が多い割にはトラブルも少なく、円滑と言えば円滑に進んでいると思われる。
……理事長様の一言が効いたのかな。そうだとすれば、やはりと言うべきか。侮れない人物である。
リングへと繋がる橋の手前の通路までやって来ると、開会式と服装は変わらないものの、そこにプラスするようにレイピアを帯剣したセラフィーヌ理事長が待機していた。
「お母さん!」
セラさんに気付いたツバサちゃんは無邪気に駆け寄る。ツバサちゃんからすれば、理事長である前に実の母親であるから、その反応は間違っていない。が、私としては、母である前に理事長という大きな肩書きが頭を過り、少しヒヤッとはしたけれど。
ツバサちゃんに少し遅れ、イグさんと私が追い付くと、イグさんが一歩前に出て、─非常勤とはいえ教師だから当たり前だけど─理事長に報告していく。
「理事長、お待たせしました。指示通り、二人を連れてきましたが……もしかして、お待たせしましたかね?」
イグさんの貴重な敬語を使うところを拝んでいると、理事長はふわりと笑う。
時折、理事長を『セラおばさん』と呼ぶ辺り、昔からの知り合いとかそんなんだろう。というか、イグさんがおばさんと呼ぶってことは、イグさんより年上……なんて、当たり前か。二児の母ですもんね。……いや、私が知らないだけでまだ何人もいる……いや、終わらない推測はするべきではない。なぜなら、終わりのない迷宮だから。はい。終わり!
「いいえ。今来たばかりだから大丈夫。それと、イグくん。ここには他の先生方もいらっしゃらないから、いつも通りに話してくれて構わないわ♪」
「そうっすか? そんじゃ、お言葉に甘えて」
イグさんの顔からふっと緊張の色が消える。昔からの慣れを今すぐ変えるのは容易ではない。私がイグさんやリアさんを先生と呼べないのと同じ。私に関しては、意図的にそうしているところもあるけれど、あと一年足らずで先生と生徒関係もなくなるわけだし、呼び方なんて些細なものだ。
理事長はイグさんの一歩後ろに立っていた私にも目を向ける。一人、勝手に思考を巡らせていた意識を現実に引き戻しつつ、姿勢を正してイグさんの隣に立つ。
「会場周辺、並びに会場内の警備強化もすでに完了しています。あと、余計かもしれませんが、観客に被害が出ないよう、会場周辺に理事長のとは別の結界も張らせました。……即席ですので、長くは持たないと推測されますが、最低でも三十分は私が保証します」
……私の相棒もいるから。……とは言わず。
私の報告に理事長は少しの感心を含ませるような優しい笑みを浮かべた。
「短時間でそこまで……流石、会長さんね。ありがとう♪」
「えっ!? あ、いえ……感謝されるようなことでは。これが仕事ですので、できて当然です」
素直に感心されるなんて思っていなかったから、若干、挙動不審になった。基本的に、お前ならできて当然だろと思われる方が多いからかもしれない。そう思わせてるのは、あの教頭だけどな……!
「あらあら♪ 謙遜なんてしなくてもいいのに」
面白そうに笑う理事長に、どこかプリン校長と同じ雰囲気を感じ取った。何度か話した経験はあるが、時折、理事長と校長は似ていると思っていた。口にはしない。絶対に。
と、理事長とは別の方向から小さな笑い声が聞こえる。そちらを見ることなく、近くの腕をつねってやった。
「いててっ!? ごめんって! 変な意味じゃないから~♪」
「どの口が言ってるんですか。楽しそうに笑ってましたよ、イグせんっぱいっ!」
彼の実力なら、私につねられるなんてあり得ない。イグさんなら、さらりと避けてしまえるはずなのだ。つまり、これはわざと受けている。その辺りも大変腹立たしいので、嫌味も込め、先輩呼びしてるものの、それを察してくれる程、イグさんは優しくはない。口では痛いとか言っている割には、イグさんの表情は穏やかで笑っている。
「昔から褒め慣れてないよなぁ、ラルは♪」
「腕だけじゃなくて、次はほっぺたを思いっきりつねってやりましょうか、先輩?」
「それは流石に痛いからパス♪」
「そう言われると、やりたくなりますねぇ」
「あはは♪ いやいや、やめてくれ」
やれるもんならやってみろ……って、顔に書いてあるな。覚えてろよ。いつかやってやる……!
話は変わるが、私とイグさんのやり取りを変わらずに楽しそうに見ている理事長は大物である。イグさんは有名な探検家で、そんな有名人に楯突いているんだから。まあ、私とイグさんの関係を知らない人から見れば、生意気な生徒が先生に歯向かっているようにしか見えないだろう。
「そうだ。ツバサ、ちゃんと武器は持ってきた?」
「うんっ! ほら♪」
世間話はそこそこに、理事長はツバサちゃんに向き直る。話しかけられたツバサちゃんは、自分の背丈ほどある両剣を理事長に見せた。言いつけ通りにしっかり武器を持ってきたツバサちゃんに、理事長はにっこりと笑う。
「よろしい♪ それじゃあ、アリアちゃんが作った氷山を解体するために、お母さんからツバサに一つのテーマを出します」
「テーマ?」
こてんと首を傾げるツバサちゃん。
そう言えば、普通に解体するだけじゃつまらないと、解体ショーにすると言っていた。ショーは見せ物。それのためのテーマ、か。
「難しく考えなくていいわ。今から言うことは、あくまで『できたら』の話。失敗したり、危ないことしたりしなければ、お母さんは怒らないから」
「うん……?」
「テーマは『氷と炎』。これを意識しながら、観客をあっと言わせつつも、ツバサ自身が楽しめるようなショーを行いなさい。お母さんも手伝うから……ね?」
「お母さんと!? 分かった!! 頑張るね!」
テーマを課せられた意味について不思議そうにしていたツバサちゃんだったけれど、お母さんと一緒にできると知ると、その疑問も吹っ飛んでしまったらしい。パッと顔を輝かせて尻尾をパタパタさせていた。
かなり微笑ましいシーンで、心がほかほかするところである。が、悲しいかな。私の脳内では、ツバサちゃんが疑問に思った問いの回答を考えていた。
テーマを与えたのは、ツバサちゃんを試すためだろう。ある意味、修行の一種なんだろう。解体するだけなら、適当な魔法を一つや二つぶつけてしまえば終わること。アラシ君の魔法で一部は防げているのだから、似たような炎系統の魔法を使えば終わる。しかし、そこにテーマ、ショーであると条件付けるとそうはいかない。如何にして魅せるか、そのための技術、魔力操作、どんな魔法を使うかが変わってくる。要は、単純に壊すのとは訳が違うということだ。
「ふふ。よろしい♪ それじゃあ、頑張ろっか?」
「はーいっ♪」
ツバサちゃんは、無邪気な笑顔を見せつつも、母親の期待に応えようと気合い十分だ。
一方のじゃれあっていた私とイグさんは、すでに取っ組み合い─私の一方的なものだが─は終わりにしていて、黙って親子二人を観察していた。
「……お母さんって感じですね」
「そりゃ、ツバサのお母さんだからな~♪」
「でも、仕事のときは上の人って感じです」
「そりゃ、理事長だからしっかりしてないと、学園の経営なんて成り立たない。それにあの若さで上に立つのも、相当な苦労があるはずだぜ。威厳って大切だしな。それは、お前が一番分かってるだろ?」
「探検隊のリーダーと理事長並べないでくださいよ……ん? あの若さって……?」
「ん? セラおばさん、三十五だから。理事長やるにはまだ若いだろ?」
あぁ、そういうことか。女性の年齢をさらりと言ってしまうイグさんには突っ込まず、スルーしておこう。
セラ理事長が今の立場に就任したのは、確か五年前……私がここの中等部に来た頃だったはずだ。ということは、三十で学園経営と教育者の立場にあるという計算になる。まあ、もしかしたら教育者の立場は三十歳前からやっていた可能性はあるが。
「……あんまり関係ないんですけど、ツバサちゃんとツルギ君の他にお子さんは?」
「いないぞ。双子だけだが……どした?」
「いえ。私の中の可能性を潰したかっただけです」
「ふーん? まぁた変に頭働かせてんのか~? 物好きだなー!」
なんて言いながら、イグさんは私の頭をぐしゃぐしゃっと撫で回した。力加減はギリギリしてあるけれど、痛いものは痛い。叫ぶほどではないけれど。
「……さて、そろそろ始めましょう♪」
親子ショーの打ち合わせが終わったのか、ぱちんと手を叩くと、理事長は私達の方を振り返り、にっこり笑う。
「会長さん、警備等々はお願いしますね? イグくんも」
「承知しました」
「了解っす♪」
「ツバサ、行こうか?」
「はいっ!」
イグさんに撫で回され、乱れた髪を整える。ついでにインカムを使い、警備班全員にこれから解体を開始することも伝える。
できれば、会場、あるいはモニター越しで全体を見てみたかったが……致し方ない。これもお仕事。ここから見学させてもらおうか。



~あとがき~
長いなぁ……まあ、しゃーなし。え? 途中の茶番?? 知らない人ですね……(目を逸らし)

次回、氷山を解体するぞー!! 親子ショーだぞー!! 多分、三人称視点!

ラルは途中編入組です。ティールは一年からいるけど。ラルが学校に通うことになった経緯とか二人の出会いとか、同居するきっかけとかその他もろもろ考えてはあるけれど、考えておこう……くらいの気持ちなので、日の目を見ることはないでしょう。
裏設定を考えるって楽しいよね……(笑)

いやぁ……必要以上にラルとイグさんの絡みを入れました。半分は私の欲望のままに書きましたが、もう半分は二人の関係性をお見せしたかったのです。探検隊として、色々教えてもらっていたので、ラルはラルでなついている……? いや、なついているって表現は違うか。フランクに接しているみたいなところを見せられたらと。
伝わればいいなぁ……!!(笑)

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第69話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわやわやする物語です。本編とは一切関係ありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、Aブロック、Bブロックと予選の半分が終わった……終わったけど、ここからちょっと予選は休憩タイム? ですね。
できちゃった氷山の解体をします。消しましたで終わらせろって? それじゃあつまらんだろ!!??
ラル「首絞めてる~」
アラシ「言ってやるなって」
いけるいける!! 私ならできるー!!
ラル「詰まらないことを祈るばかりですね」
アラシ「本心丸見えだぞ、ラル会長」


《L side》
部屋に設置されている小さなモニターに映し出されるのは、一人の少女によって作り出された氷山。そんな状況でも、司会進行のお仕事を全うするリュウ君には感心する。流石に一年生のキャス君はびっくりしすぎて話せないらしく、トーナメントへ進む二人を紹介したのはリュウ君だった。あるいは、ここの場面はリュウ君の担当なのかもしれない。台本を知らない私からすると、どっちとも取れるので、推測するしかない。
『Bブロックからトーナメント進出権を得たのは、冒険科三年、アリア・ディーネと魔術科一年、アラシ・フェルドだ!! 続けてCブロック……と、いきたいが、流石にこのままじゃあ試合続行は難しいな? 係りの人がどうにかするから、観客の皆は、その場で待機しててくれよな~♪ にしても、凄かったな、相棒!』
『ひゃ! は、はいぃ……そう、ですねっ!』
『まだまだ大会始まったばっかりなのに、胸を熱くさせる展開だらけだぜ~!! 相棒もこれくらいで驚いてちゃ、まだまだだぜ?』
とまあ、何気ないトークで場を繋ぐリュウ君。これもいつまで持つのやら……いや、こいつなら永遠と持たせられる気もするけど、観客のボルテージは下がってしまう。さっさと対応した方がよさそうだ。
「あらあら。アリアちゃん、随分と張り切ってるわね~?」
「……リアさん」
備品整理をしているのか、私の背後で救急箱を抱えて頬笑む女性……養護教諭のリア先生だ。いつものようにクリーム色の髪を三つ編みにまとめ、優しく落ち着いた笑みを浮かべていた。
リアさんは、この学園の養護教諭であり、私とティールにとっては、探検隊のいろはを教えてくれた一人。また、ここの卒業生でもあるため、─代はかすりもしなかったが─私達の先輩でもある。そんな少しややこしい関係性を持つリアさんを「先生」と呼ぶのはかなりの違和感がある。「リアさん」と呼んできた時間の方が長いため、私は基本的にはさん付けだ。ティールは徹底してるけども。
閑話休題
私が今いるのは、生徒会が使っていた控え室……ではなく、救護室だ。あの広い控え室にたった一人なのも寂しくて、─ぶっちゃけ、寂しいとかではなく、控え室で永遠とノートパソコンを見ながら指示出しに飽きただけ─適当に歩き回っていたのだ。まあ、言ってしまえば、仕事放棄である。とは言え、私に繋がるインカムは装備しているし、時折かかってくる連絡には対応しているから、完全職務放棄ではない。半分くらいだ。半分。
「あれ、どうなってるんですかね」
「うぅん。一言で表すなら、有り余る魔力を放出した、かしら?」
「だよなぁ……力の爆発って感じだったもん」
リアさんは救急箱を机の上に起き、私の隣に座った。ある程度、Aブロックに出ていた生徒達の手当ては落ち着いたのだ。ちなみに、一人の控え室から逃げてきた私をリアさんが呼び、入ってみれば手当ての手伝いをさせられた。私は寛大なので……いや、この人にはかなりの恩があるので、それくらいのお手伝いは喜んでします。……はい。
「あの氷の処理、誰がするんだか。普通に考えれば、実行委員なんですけどね」
「誰というか……そもそも、準備と休憩時間を合わせて十分間よね? そんな短時間でどうにかできるのかしら」
「解体だけなら人員を割けばまあ……でも、会場の準備込みの十分はちょっと……時間押すかなぁ」
「ちょっと?」
「……かなり、かもですね。見積もりは出しません。悲しくなる」
会場の整備は生徒会ではなく、実行委員の仕事だ。が、実行委員全員をかき集めたとして、どうにかなるはずもない。
「ラルさん、どうかしたんですか?」
「ひゃあ! おっきい氷!」
手当てを終わらせてきたツバサちゃんとリリちゃんがこちらに近付いてきて、モニターを見る。そこに映るのは変わらず、氷の世界のまま。
「一面、氷ですね! え、何があったんですか!? 師匠?」
「アリアちゃんがやっちゃったみたいなのよね」
「あ、あーちゃん……」
ツバサちゃんとリアさんはどうやら師弟関係らしく、ツバサちゃんはリアさんを時折、師匠と呼んでいる。リアさんはリアさんで、ツバサちゃんを妹のように思っているらしい。
「会長様、これは……どうするのですか?」
「ははっ……不測の事態でも迅速に対応せよとは言ったけどねぇ……これは想定外過ぎるでしょ」
「ここは会長さんの出番かしら?」
リアさんが少し、面白がるように笑う。私の仕事嫌いを知っているからこその反応だろう。
「くっ……行きたくないけど、行ってきます……現場を見て、策を練ってどうにか……いや、これ、めんどくっさいなぁ。思った以上に」
「あらあら。本音が漏れてるわよ、生徒会長さん」
わざとです!!
私が立ち上がるのと同時に、後ろの救護室の扉が開く気配がした。振り返ると、男性にしてはかなり長い赤い髪を後ろで一つにまとめ、シンプルなYシャツを着た牙狼族が立っていた。
「それなら、ツバサも連れてってやってくれないか? 生徒会長」
「あら。あなたがここに来るなんて珍しいわね。あなたの担当はここじゃなかったと思うんだけれど、イグニース先生?」
イグニース・フェルド先生。名前から察してくれるかもしれないが、アラシ君のお兄さんで、冒険科の非常勤講師の一人。そして、この人は名の通った冒険家という一面を持つ。以前はリアさんとコンビを組んでいたのだが、今はソロで活躍中。そこら辺は結構ごちゃごちゃしているので、今は省略しよう。
まあ、リアさんとコンビを組んでいた時代に親交を深めていた私とティールなので、関係性としてはリアさんと全く同じである。ここの先生で、探検隊の先輩で、学園の卒業生。以上。
「ははっ♪ ここでお前に会いに来た~なんて言える状況ならよかったんだけどな~♪」
「ちょ!? もう! イグったら!」
あぁ、言い忘れた。イグニース先生こと、イグさんとリアさんは、この学園に通う生徒なら知らない人がいないレベルの、ラブラブカップルとして学園に名を馳せている。新入生は知らないかもしれないけれど、やがて知る運命。とりあえず、今ここにいる実行委員の一年生は知ったはずだ。
「駄目ですよ、リアさん。ここは『実は私も会いたかったの、イグ♪』くらい言えないと」
「きゃあぁっ!? ラ、ラルちゃん!?」
「で、なんでツバサちゃんを? というか、リアさんの言う通り、イグさんの担当は現場監督。つまり、会場でしょう?」
あわあわしているリアさんには触れずに、私は話を進める。できることならもう少し可愛らしい反応を見せてくれるリアさんと戯れたいのだけれど、如何せん時間がない。残念である。
「ったく、校内では先生をつけろって毎回言ってるだろ~? まあ、いいけどな」
じゃあ、私はこれからもイグさんと呼んでいくもんね~……というか、このやり取り、飽きる程してきたんだけれどね。
イグさんがアラシ君のお兄さんなら、アラシ君と幼馴染みのツバサちゃんが、イグさんを知らないはずもなく。イグさんを見上げると、年上相手にも関わらず、友人と接するときの砕けた口調で話し始めた。
「そうだよ、イグ兄。私の担当は救護だよ?」
「全く。ツバサもここじゃ先生をつけろよ~?」
「えへへ。ごめんなさい」
「でも、気にしないんでしょ? イグせんせー?」
「ははっ♪ まあな。んでも、体裁は必要だからな。……ラルに言ったって無駄なのは痛い程に理解してるけど」
にひひ。ご理解、感謝いたします~♪
魔術科所属のリリちゃんは、イグさんを見かける機会はほぼないだろう。私達のやり取りを黙って見ていた。リアさんの彼氏さんなのは知っているとは思うが、実際に対面するのは初めてかもしれない。
「あ、あの、イグニース先生? ツバサちゃんを連れていくって話はよろしいのです……?」
「ん? あぁ! そうだった。実はセラおば……っと、理事長から伝言を預かったんだよ」
「お母さん?」
「あの映像からも分かるとは思うんだが、現場の生徒だけじゃどうにもならないって判断でな。セラ理事長自ら解体に着手するってさ」
理事長が出てこなきゃいけないレベルの氷山を生み出すアリアちゃんとは……一体何者なんだ。
「それにツバサも手伝ってほしいって話らしい。ただ、単純に解体作業を見せるのもつまらないから、ショーみたいに観客も楽しませる方向性になった。ってことだから、ツバサ、武器を忘れずに持ってこいって理事長からのお達しだ♪」
「はーいっ! それじゃあ、準備してくるから、イグにぃ……イグ先生、ちょっと待ってて?」
そう言って、ツバサちゃんはぱたぱたと部屋を出ていく。武器を取り出すのに出ていく必要があるのかはよく分からないけれど、他にも何か準備したいのかもしれない。
「……で、ラルには周囲の警備強化をお願いしたい。中に人が入らないようにしてほしいんだってさ。なんか、派手にやるらしくって♪」
笑顔でなんでもないように、しかし、内容はとんでもないことを言ってきた。
「あっはは~♪ ただでさえ、色んなところに人員を割いているのに、警備を手厚くしろと? かっつかつなんですよ、こちらも」
「そりゃ分かるけど、理事長直々のご命令だ」
「……はあ。一分、時間ください。警備体勢の再編成しますので」
表面上は至って冷静に返すものの、内心は荒れに荒れまくっていた。持ち出していたシンプルな肩掛け鞄からノートパソコンと今回の人員名簿を取り出して、部屋の隅っこへ移動。移動した理由はリアさんがとんでもなく機械音痴だから。側にいるだけで壊す恐れのあるお人なのだ。
あーあーあー!! 班の組み直しかよ!! 今から!? 上等よ。やってやろうじゃない。私を誰だと思ってるのよ……!
やらなければならないのは、各担当から数人を抜き出し、会場周辺の警備をさせること。それを臨機応変に行えるのは、普段からこういった事態に慣れている生徒会役員のみ。そこに焦点を絞り、担当区域と照らし合わせて……ついでに、人数の少なくなった班を統合させ、指揮を執らせて……会場周辺に術を展開させる必要もあるか? 観客に何かあるのも否定できない。……となると……
「こちら、本部。応答して」
『聞こえてます』
『はぁい……聞こえてまーす』
私はインカムを通じて、馴染み深い二人を呼び出した。この二人なら詳しい説明がなくても思い通りに動いてくれるからだ。
ティール、現場の教師から説明は」
『聞いてる』
「フォースは?」
『大方は。会場外の全体指揮は任してくれていい』
「了解。フォースには会場外にも目を配り、私の代わりを一時的に任せる。ティール、魔法使える人達を集めて、観客に被害が出ないような結界を張ってくれる?」
二人に細かい指示を出しつつ、パソコンには現在の生徒会役員や実行委員の位置を表示させていた。画面では再編成を行い、口ではこれからのことを話していく。
『んと、今いる人達だけで?』
「そうね。それでできるなら。無理そうなら、できる人をそちらに寄越す。私も今からそちらに向かうけど、私はフィールドに繋がる通路付近にいるから、会場内周辺の警備は引き続き任せるよ」
『了解。まあ、今こっちにいる人達だけでも、結界を生成するのは問題ないと思うよ。最悪、不完全で何かあっても、氷ならぼくがどうにかしてみせる』
あぁ……確かに。
「……よしっ! 再編終了! 私から全体に連絡かけて、移動するように指示をするから、細かいことは二人からよろしく」
『了解だよ、会長』
『はいよ』
これでとりあえずはいいだろう。あとは現場行って対応すれば……うん。大丈夫。
ノートパソコンを閉じ、名簿と一緒に鞄へ突っ込む。再びイグさんの方を振り返ると、妙に感心しているというか、納得したような表情で微笑んでいた。それはリアさんも同じ。
「? なんですか、二人して」
「いやぁ? こういうときのラルは頼もしいなって思ってただけだぜ?」
「うふふ♪ そうね」
うーむ。……褒められている気がしないのは私だけだろうか。なんて、考えている暇はないか。さっさと全体連絡を回して配置につかせよう。
インカムの範囲を広げ、全体に聞こえるように設定をする。繋がっていることを確認すると、私は一気に指示を出した。
「各班に告ぐ! 現在、大会会場にて巨大な氷山が出現している。それの解体作業に伴い、会場付近、及び内部の警備強化命令が出た。今から名と配属先を言い渡す。該当者は直ちに持ち場につけ! 詳しい内容は指定時刻にティール及びフォースから説明がある。呼ばれなかった者は引き続き、担当している持ち場にて仕事を全うするように。……これから、名前と配属先を告げる。名を呼ばれた者は直ちに行動せよ!」
……や、ほんと、これ、軍隊だよね。私が悪いのかな?



~あとがき~
変に茶番を挟んだせいで長い?
いや! そんなことはない! 通常です! 通常!

次回、氷山解体ショー準備かな。
多分、ショーまでは……いかないっすね……(白目)

はぁぁぁぁ!!! 出したかったお二方をようやく! ようやく出せましたよ!! やったね!
リアさんとイグさんです。
私、イグさん大好きなんですね! 相方のオリキャラの中で一番と言ってもいいくらいに! 好きです。お兄ちゃんが好きなのかもしれない……
まあ、フォースみたいなクールキャラも大好きなんですけどね?(笑)
ってことで、リアさんとイグさんですが、ここでは書き表せないくらい設定がもりもりです。大丈夫でしたかね? ラル視点なので書きましたが、大丈夫だったかな。
二人はレイ学の教師で、OBOGで、ラルとティールにとっては、探検隊とはなんぞや! を教えてくれた先生でもあります。もちろん、二人だけがラルとティールに教えたわけではありませんが、何かと面倒を見てくれていた過去があります。
イグさんとリアさんは過去に色々あったキャラなのですが……(コンビ組んでたのに、解散してるところとか。その辺のごちゃごちゃっとした理由とか)それを今後出していくのか、語る日が来るのかは謎ですね。裏設定のまま、表に出ない可能性も大いにありますし、いつか過去編として書く日が来るかもしれません。それはそれで私はやる気満々ですけどね←
……とまあ、過去現在とお世話になっている相手にラルは適当な態度で接してますが……この、失礼な奴め……!!(笑)

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第68話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわちゃわちゃしてる物語です。本編とは一切関係ありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック。
前回から予選が始まってます。Aブロック終わりましたね。本当は二話に分けようかと思ったんですけど、中途半端になりそうだったので、長くなりましたが、一話に収めました。無理矢理。
今回は順当にBブロックのお話です!
アラシ君視点でいきます。なんでかって? そりゃあ、そっちの方が面白いから(訳:一人称視点の方がやりやすいから)です。


《A side》
「……うわぁ」
モニター越しに見ても、かなりの威力のある攻撃魔法だと思った。魔力のコントロールが下手なレオンらしいと言えば、らしいんだが。いやでも、あそこまでする必要性ってなんだ。
『おおっと!? いきなり雷が落ちたと思ったら、二人を残して、残りはノックダウンだ!』
『ト、トーナメント出場権を獲得したのは……冒険科二年、イツキ・カグラ先輩と、冒険科一年のレオン・エクレール、です!』
リュウ先輩とキャスの実況で、残ったのは術者のレオンとそれを回避したイツキ先輩の二人がトーナメント進出を決めたことを告げる。
へらへら笑うレオンと、あまり事態を理解していないらしいイツキ先輩の顔が映し出された。音声は流れないものの、二人が何か会話しているのが分かる。まあ、世間話か何かだろう。
レオンの攻撃は強力だったが、心配はいらないだろう。おばさ……セラ理事長のかけた特殊効果付きのフィールドもあるし、何より救護班が何とかするはずだ。大きな怪我にはならない。少なくとも、俺が見てきた中で、大怪我したなんて話は聞いたことがないからだ。
『十分の休憩、及び準備時間を経て、Bブロックを開始するぞ! 該当選手はフィールドに集まってくれよな!!』
……始まってしまうのか。ある意味、地獄の始まりとも言える、予選が……いや、アリアがいなければ、地獄でも何でもなく、ある程度は楽しいと思う。こいつがいるからモチベーションも上がらないし、テンションも底辺なのだ。
「……はぁ。行くぞ、アリア」
壁に立て掛けてあった武器、双剣を手に取りつつ、近くで観戦していた─しっかりと見ていたかは怪しいところだが─アリアに呼び掛ける。アリアは俺の言葉に直ぐ様反応し、普段のクールさはどこへやらと言った具合に、元気よく答えた。
「タダ券っ!」
アァ……ハイ。イイオヘンジデスネ……
ふんすふんすと鼻を鳴らして興奮しているアリアを連れ、フィールドへと繋がる通路を歩く。この瞬間もある意味恐怖を感じているんだけれど、これを誰とも共有できないのが残念でならない。
できることなら、ユーリ先輩とは別のブロックでありますように……イツキ先輩は終わったし、知り合いでブロックを知らないのはユーリ先輩だけ。なるべく、被害は最小限の方がいいに決まっている。それに、知り合いが巻き込まれるのを見るのはちょっと……ね。いやまあ、レオンとかは別だし、仮に自分に何かあるなら、知り合いでも差し出しちゃうけど。……ま、差し出す人は選ぶけどな。

フィールドに出ると、俺達よりも先に到着した人達がたくさんいた。各々、軽い準備運動をしている。舞台に立つと、観客の声援というか、声が結構聞こえてきてて、臨場感がある。モニター越しよりも何倍にも、今、大会に参加しているという実感が湧いてきた。
「タダ券……優勝……!」
この場に立って、更に興奮してきたのか、嬉しくなってきたのか知らないが、アリアのテンションはてっぺんを知らない。普段がローテンションなだけに、ギャップが凄いだけかもしれない。
あの様子を見るに、俺は攻撃姿勢を取るよりも防御姿勢に力を入れる方が得策な気がしてきた。一応、釘差しておこう。
「アリア、俺はあっち行くけど……お前、本気なんか出すなよ? ぜーったいに、だぞ!?」
「優勝……♪」
頷いてはいるものの、本当に分かってるのかはさっぱりだ。タダ券のことで頭がいっぱいになって、適当に返している可能性もなくはない。ええい。話を盛ってでも、言い聞かせないと今後に関わる。
「……くれぐれも、最大出力で魔法なんか使うなよ!? どうなるか分かったもんじゃないし……下手したら、大会中止もあり得るからな! タダ券もなくなるかもしれないからな!!」
「分かった。優勝、タダ券。頑張る」
……大丈夫、かなぁ。本当なら近くで見張っていたいが、そんなことをして、俺が予選敗退するのはいただけない。できる限り、アリアからは離れて対策を練りたいのだ。開始のゴングがなる前にアリアから離れ、どうするか……というか、アリアからの攻撃をいかに食らわずに生き残るかを考えなくては。あぁ、もう! なんでこんなことになってんだよ!? 俺はアリアと同じブロックなんて望んでませんけど!? 願い下げだよ、くっそ。
自分の運を呪いつつ、アリアのいる位置とは反対側まで移動したところで、リュウ先輩の声が聞こえてきた。ここまでにユーリ先輩を見かけていないし、恐らく、別のブロック……ってことにしておこう。
『さぁ! いよいよ予選、Bブロックの試合開始だ! このブロックは他よりも三年生が固まってるために、Aブロック以上の激戦が予想されるぜ! 相棒! 開始のゴングを頼んだ!』
『へあ!? あ……はい! それではBブロック! スタートです!』
試合のゴングが鳴り響くのと同時にフィールド上にいる生徒達の激しい攻防戦が始まる。……が、それも急に周辺の気温が下がり始めたことで、ほぼ全員が攻撃の手を止める。
「……な、なんだ。誰かの魔法か技か?」
「それにしたって寒すぎだろ……霧まで出てきてるし」
俺を含めた周りの人達をドライアイスのような霧が辺りを包み始める。発生源を探している人もいるが、俺からすればそんなことをしたところで止められるものではないと知っている。
あんのやろぉ……!! 俺の言葉理解してねぇだろ! あの大食いバカは話をちゃんと聞いてたのか!?
恐らく、普通の防御魔法なんかでは間に合わないだろう。ここは先人のありがたいお言葉、『攻撃は最大の防御』に倣うしかない。
俺は構えていた剣をその場で地面に突き刺し、防御姿勢を取った。取っただけで、これで防げるなんて思っていない。
「“紅炎舞”!」
本来、炎属性の広範囲攻撃魔法である“紅炎舞”を発動させる。その瞬間、俺の体を包むように……この場合は守るように火柱が上がった。その瞬間、周りの人達から悲鳴が数多く聞こえてくる。
……やりやがりましたね、あいつ。
ある程度、落ち着いたところを見計らって、魔法を解除。すると、俺の目の前には氷の壁がある。でも、多分これ、壁じゃなくて……
『フィールドに突如として現れた巨大氷山! ほとんどの生徒がこれに飲まれてしまったようだぁぁ!!』
「……デスヨネ」
地面に差した剣を抜き、鞘に納める。俺の立つ場所以外はこの氷山に覆われているのだろう。こんな芸当をするなと忠告したはず。俺の言葉は届いていなかったのだろうか。それとも、これは彼女なりの手加減……なわけない。これを認めてしまえば、世の中のあらゆる魔法や技が手加減の範疇になりかねない。
パキパキと音が鳴っている氷山の上から滑り降りてきた、ことの原因に俺は怒りを抑えられなかった。あれほど言ったのに。言ったのに!
「……アリアァァァァ!!!」
「タダ券っ!」
誇るな!! 褒めてねぇわ!!
この氷山、何か名のついた魔法と言うよりは、気持ちが抑えられなかったアリアによる産物だ。簡単に言えば、とりあえず、興奮したから目一杯の魔力をぶつけてみたよ☆ 的なやつだ。迷惑極まりない。
「俺、始まる前に言ったよな!? 手加減! て・か・げ・ん! 知ってる!? この言葉!」
「優勝……♪」
「聞けよ!!?? さっきまで返事してくれてたよな! アリア! アリアさぁぁあん!?」
「……ご飯。優勝、タダ券」
「もうやだ。……俺、こいつのこと分かんない」
これに巻き込まれた先輩や同級生には同情しかないが、これも運の尽きだと諦めてもらうしかない。こいつの友人として、心の中で謝るわ……すみません。こんなやつで……
それにしても、このあとも試合が続くし、トーナメントだってここでやるはずなのに、フィールドをこんな風にしてしまって、大丈夫なんだろうか? これ、実行委員や生徒会にも迷惑が……あー……ごめん、ラル会長……ごめん。本当に。
……なんで俺がアリアのやらかしたことに罪悪感を感じなきゃなんねぇんだよ。意味分からん。



~あとがき~
Bブロックはアラシ君による一人劇場だと思ってる。一人で怒ったり、嘆いたり忙しいね……(哀れみ)

次回、アリアちゃんが作り出してしまった氷山をどうするのか! 
また別視点に切り替えますよっと~♪

特に言いたいことないですね。
もう少し、描写のお勉強したい。
似たような言葉ばかりを使ってしまいますが、お許しを……キャパがねぇんだ……(泣)

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第67話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で日常っぽい非日常を楽しむ物語です。本編とは一切関係ありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ようやく開会式が終わりました。やったね。今回から、大会(予選編)です! このあと、トーナメント編なんかもお待ちしてるんで……ちゃっちゃといきたいね。無理かな。
そして、今回は誰の視点とも決めず、第三者視点でいきますよ。中心人物はいますがね!


開会式も終わり、待ち望んだ大会予選が開始される。観客の熱狂も出場する生徒達にも伝わってきていた。
大会のルールとして、戦闘不能、あるいは場外……厳密にはその下にある水路へ落ちてしまうと失格扱いである。これは勝ち残り戦であるため、自ら落ちてしまっても何かペナルティーがあるわけではない。が、そのようなことをする生徒がいるとは思えなかった。なぜなら、ここにいる全員、志願して出場しているからだ。こんな人数になるとは予想してなかったにしろ、激戦なのは想像に難くない。
あるとすれば、勝てないと実感し、痛い思いをするくらいならばと考えるくらいしか思い付かない。そのような考えで、戦場に立つとも思えないのだが。
『Aブロック出場者は全員揃ったぞ! ここはまんべんなく割り振られてるっぽいけど、若干冒険科が目立つな!』
試合を始める前の前口上なのだろう。さっとAブロック出場者の傾向を伝えているらしかった。司会兼解説者のリュウの声が響いていた。
『大会始まって一番手を飾る、Aブロックの諸君に敬意を表して! 早速、開始のゴングを鳴らすぜ!! 相棒!』
『ひゃ!? は、はいっ!! それでは、Aブロック、試合開始、ですっ!!』
リュウの相方、キャスの合図で試合が始まった。狭いとは言い切れないフィールドではあったが、百人もいると、一概に広いとも言えない。周りは手当たり次第に、近くにいる相手を攻撃しているようだ。属性はごちゃ混ぜ状態で、色鮮やかな光やら魔法やらが見えている。外から見れば綺麗なのかもしれないが、当事者達はそのような気分になれる程、余裕はなかった。……一部を除いて。
「さて。やりますかね!」
その例外の一人であるレオンは、冷静に素早くフィールド端へと移動する。その間、狙われない訳でないが、身軽なフットワークで攻撃を避け、無事に端へと到着。直ぐ様、胸の高さで手を合わせると、レオンの周囲に電撃が走る。レオンがそれに気を取られることはなく、何もない空間から出現させた長刀を手に取った。
レオンの使った魔法は、別空間から持ち物を取り出す魔法である。しかし、出すだけでいいものを、魔力の加減を忘れ、電撃が周囲に飛んでしまったのだ。その余波を受けてしまった不運な生徒がいたようで、何名かは電撃に痺れ、場外へと落ちてしまった。
「ぶはっ! おい、一年! 武器出すだけにどんだけの魔力使ってんだよ!! アホか!」
「いやぁ~……先輩方、すんませーん」
落ちてしまった魔術科の先輩─もちろん、レオンと面識はないが─からのお叱りを、詫びる素振りもなく、けろっとした様子で返答した。
この場で謝る必要なんてない。これは勝ち残り戦。油断し、対応できなければ負けていくのだ。この場合、レオンが思った以上の魔力を注ぎ、電撃が発生したのを、他の生徒達は対応できなかった。それだけである。運がなかったとも言えるし、意識が低かったとも言える。
そしてこれは、レオン自身にも言える。対応できなければ、終わり、なのだから。
「隙あり!」
落ちた先輩数人を見下ろしていたレオンの背後からの物理攻撃。小回りの利く短剣によるものだ。対応しなければ、状況は違えど、先に落ちてしまった先輩達の二の舞である。しかし、狙われた本人は至って冷静だった。
「ははっ! 人が礼儀を尽くしてるってのに、いい趣味してんな~♪」
この状況にレオンは振り返ることはなく、先程取り出したばかりの長刀を鞘から出さずに相手の攻撃を防いだ。
「なっ!?」
「まあ? ここは戦場ですし? そういう手もありだよな。けど、やるなら徹底的に……なっ!!」
振り返るのと同時に、長刀を器用に扱い、相手の短剣を宙へと飛ばす。相手の表情から、一瞬ではあるが、武器を手放してしまったという焦りが見える。その隙をレオンは見逃さなかった。
気配を殺して相手の背後に回り込むと、躊躇なく背中を蹴り飛ばして場外へと落とした。
「にしし♪ 猫ってのは音も立てずに近付くもんだぜ~?」
にやりと猫らしくいたずらっ子な笑顔を浮かべているものの、場外へ落ちた相手にその言葉が聞こえているかは定かではない。実際問題、聞こえていなかったとしても、レオンには何ら関係はないのだが。
レオンは、場外から目を離し、フィールド中央へと移した。今現在、近くには誰もいないのを確認し、そっと地面に触れる。それは長い時間ではなく、ほんの数秒だけで、すぐに地面から手を離した。
「よしっと。このまま準備すっかね~」
にこやかな笑顔のまま、そして、手に長刀を持ったまま、フィールドの端を沿うように走り出した。

レオン同様にフィールド端で応戦する生徒が一人。生徒会所属のイツキだ。
イツキは腰に二振りの剣を差し、背には竹刀袋のような物を背負っている。しかし、装備している剣を抜かず、体術のみで相手からの攻撃をあしらっていた。気絶させたり、場外へ飛ばしたり、時には意識を逸らして、戦闘を回避していた。
「ひゃ~……みーんな、脳筋プレイ大好きかよ~」
イツキ自身、何かと力任せに解決しようとする節はあるが、今回の場合、それでは体力が持たないと悟ったのだ。……否、悟ったのはイツキの相棒、ユーリであり、試合前にあまり体力を使わない方が得策だとアドバイスされた。頭を使うのが苦手なイツキは、向かう敵、全員相手にした方がシンプルで楽だと思っていた。しかし、この激戦を体験するとそうも言ってられない。
「親友の忠告をありがたーく受け取った俺、偉い」
端にいる理由としては、相手が突っ込んできた勢いを利用して、外へと飛ばせるからで、それ以外の理由はない。また、単純に得意な剣を使って戦うのなら、中央の広い場所で乱闘する方がいい。しかし、それだと、場外失格を恐れた生徒達の猛攻を受けることになり、ユーリの言う無駄な体力を使うはめになる。要は端の方が楽だと知ったのだ。
「……?」
右から何か向かってくる気配を感じるものの、イツキを狙っている訳ではなさそうである。ぶつからないように中央寄りへ避けるか、攻撃を仕掛けるかの二択が頭に浮かぶ。そして、答えを出す前にイツキの体は中央へと向かっていた。ほぼ、直感。言わば、なんとなくである。そして、気紛れで後ろの様子を窺った。そこで見えた生徒に、どこか見覚えがあった。
「あり、あの子。……アラシとツバサの友達……だっけか?」
ちらりと見えたぴこぴこ跳ねた癖っ毛の金髪にオレンジの猫耳の少年。それは、イツキの後輩の友人によく似ていた。
「ん~と……レオン、だっけ」
レオンはイツキに気付いていないようだったが、彼はフィールドの端をぐるりと回っているように見えた。何かをしているのか、逃げているだけなのか。
前者だとすると、レオンは何かを仕掛けている途中であると予想できる。が、後者だとすると、この状況下にはありがちな光景だ。気に留める必要もない。レオンがどちらの立場なのか、イツキには判断材料がなさすぎて、さっぱりであった。
「余所見するなよ、二年!」
「はぁい。してませんよ~? 三年の先輩さん!」
中央寄りへ移動したからか、どこを見ても乱闘騒ぎである。イツキの前に斧を振り上げた男子生徒が現れた。流石のこれには、剣を抜かない訳にもいかないだろう。左に差してある片手剣を素早く抜くと、振り下ろされた斧を受け止める。
「ぐへぇ。おっも」
「重量級の武器だしなぁ! お前みたいなひょろいやつなんて、一撃だぜ」
「……あ、そ。まあ、せいぜい吠えてればいいよ。そういうの、慣れてるから」
イツキの言動に怒りのスイッチが入ったのだろう。表情が一変し、見るからに怒りを露にしていた。
「余裕ぶっこいてんのも今のうちだぞ、二年……!」
「そっくりそのままお返ししますよっと!」
イツキは剣を斜めに倒して剣の刃と斧の刃を滑らせると、対面から脱出すると相手の背後へと回る。そこで攻撃を仕掛けるのかと、相手は身構えるものの、そこにイツキの姿はなく、周りを見渡しても見つけられなかった。
次の瞬間、上からの衝撃に耐えきれずに前のめりに倒れた。倒れた生徒の上にはイツキが剣を鞘に納める姿が。
「どこ見てるんですか、先輩。俺は上にいたんすけどねぇ……なぁんて、もう聞こえてないか」
近くで乱闘していた人の肩を勝手に拝借し、空高くジャンプしていたのだ。そこから勢いをつけ、斧使いの背中めがけて膝蹴りならぬ、膝落としをお見舞いしたのだった。
イツキは生徒の上から飛び降りると、イツキを更なる獲物と捉えたらしい数人がが走ってくるのが見えた。
数は減っているとはいえ、裏を返せば、残った人達はここまで残れるくらいの実力を持っていると言えるだろう。納めたばかりの剣を再度抜くと、イツキは無意識にため息をついた。
団体戦になると、ユーリの妨害魔法のありがたみを感じる~……なんでブロック違うんだろ」
運よくと言うべきなのか、彼とは全く別のブロックに振り分けられたのである。ユーリには、イツキのお守りなくて楽とかなんとか言われてしまったのだが。個人戦とはいえ、こういうときに協力した方がさっさと終わると言うもの。そっちの方が効率よく、且つ、確実だった気もするのだ。
しかし、この場にいない友人を嘆いても仕方がない。イツキにできるのは、襲ってくる相手をねじ伏せるだけだ。
「ふっふっふ~……一対多は慣れてるよん♪」
襲ってきた数人を器用にさばいていると、フィールド端で見かけたレオンを遠くで見つける。いつの間にか中央付近へと移動してきていたらしい。
「……ふーむ?」
なぜ今になってこちら側へと移動してきたのか、その理由は分からない。しかし、イツキは考えなしに突っ込むようなことをしないだろうと思った。根拠があるわけではないが、ただそんな風に思った。所謂、勘である。
そして、その勘は見事的中したらしかった。
リング端、六ヶ所から電気が発生し、その電流は中心に立つレオンへと向かっていた。それと同時に、地面に巨大な魔法陣が現れる。魔法知識に乏しいイツキに、魔法陣を見たところでこれだと明確に分かるはずもない。巨大な攻撃魔法らしいのは雰囲気で察せなくはないが。
「……こういうときって、使ってる本人の近くが安地……だよね?」
仮にレオンを中心に強力な電撃でも放たれてしまえば、近くよりも遠くにいた方が防ぎようがあるのだが、イツキはその可能性を検討する暇もなく、レオンの近くまで寄っていく。
レオンが発生させている電気を受け、倒れてしまっている人達もいるが、しっかり避けている人もいた。イツキの接近に攻撃を仕掛ける人もいるものの、一撃で黙らせ、スピードを落とさずに近寄った。レオンの声が聞こえる範囲まで近付くと、あと少しで魔法を放つところであった。
「そんじゃまあ……御同輩、先輩方。この勝負、俺がもらいますね!!」
レオンに集まる電気がバチンと一際大きな音をたてて弾けると、イツキは勢いに任せて、レオンの上空に浮いていた魔法陣の範囲へと飛び込んだ。ここまでほぼ勢いにしか任せておらず、どう転ぶかなんてさっぱりであった。
「“雷龍波”!!」
イツキが飛び込んだ瞬間とレオンが魔法を放つ瞬間はほぼ同時であった。
フィールド上に大きな雷が落ちたかと思うと、電流がフィールドそのものを飲み込んでいく。しかし、上空に現れていた小さな魔法陣は避け、レオンとイツキにはダメージはない。フィールドを飲み込んだ電撃はやがて、龍へ姿を変える。まさに雷龍となったそれは、天へと登り、地上には静寂が訪れた。
「ありり? なーんか思ったより威力強かったなぁ……ま、いっか♪」
レオンの呟きに、なんとも恐ろしいことを口にするものだと若干の呆れと冷や汗をイツキは隠せない。いつだったか、相棒も似たようなことを言っていた気がすると思いつつ、片手に構えたままだった剣を納める。
「あ、イツキ先輩! 先輩も残ったんすね~♪」
ようやくイツキの存在に気付いたらしい、レオンが地面に刺さっている長刀を抜き、鞘に納めながら話しかけてきた。どう対応したものかと一瞬考えるが、繕うのも誤魔化すのもどうにも違うと思い、いつも通りの自分でいることにした。
「いやいや。俺はレオンのおこぼれをもらえただけさ。いやぁ、魔法って怖いねぇ」
「にゃはは♪ そんな謙遜を~♪ 先輩が残れたのも、俺の魔法をかわせたのも、自分の実力ですって。まあ、あれはちょーっと加減を間違えただけっす。ま、死んだ訳じゃないんで大丈夫ですよ」
「救護班もいるし、理事長のかけてる魔法もあるし。あとはプロに任せとこ」
「そうっすね♪」
逆に言えば、このフィールドの効果がなければどうなっていたのだろうか、と考えが過るも、答えを出すのは精神的にも教育的にもよろしくない。浮かんでしまった疑問をゴミ箱に捨てながら、イツキとレオンのトーナメント進出のアナウンスを聞いていた。



~あとがき~
強引に収めてやったぜ……

次回、Bブロック!
こちらも一話で終わらせます! 予定!

レオン君のメイン武器は長刀です。長いやつ。
リアルで長い刀なんて操れねぇわ! って思うけど、創作の中だと無限大ですね!! 前は三刀流とかしてたけど、ここでもやるんでしょうかね? 聞いてないですけど……どうなんだろね。
イツキは意外となんでもござれ状態です。戦いの場においては、器用なんですよね。ここでは片手剣二つと背中に竹刀袋に突っ込んだ刀を持ち出してますが、それ以外も扱えるやつです。つっても、フォースみたいな万能さはない。あくまで、ある程度使えちゃう。プロ級ではない。くらいです。ラルと似たようなタイプです。
まあ、言うて、近距離武器、剣や刀といった斬撃を与えるタイプの武器に限ります。例外はあるけど。

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第66話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわいわいする物語です。本編とは一切関係ありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、開会式が行われる中、ラルのポンコツっぷりが露骨に現れてました。
今回で……終わらせるぞ……開会式……!!
ラル「はよしろ」
それな。
フォース「変な茶番挟みやがって」
それな!
ラル、フォース「自覚してるならどうにかしろ」
あい……


《L side》
本来であればここで校長が出てきて、ありがたいお話の一つや二つするところだったんだろう。しかし、ここに入学してから、あの人のありがた~い話を拝聴したかどうか覚えがないんだけれど。
「お母さんだ!」
モニターにはツバサちゃんの母親にして、この学園の理事長を務める、セラフィーヌさんが映し出される。薄いピンク色の髪を後ろでお団子にまとめ、ジャケットにシンプルなロング丈のスカートという姿だ。
観客席の後ろに設置されている関係者席付近に、小さなステージがあり、そこにセラ理事長は立っている。その後ろには高等部の教師陣が並んでいた。その中を探しても、教頭は見つけられるものの、校長の姿はない。
「プリンの奴、どこ行ったんだ」
「さあ? まあ、いたとしても有意義なお話は聞けなかったでしょ。こういうときは大抵、ぐうぐうしか言わない」
「それもそうか」
「そうなんですか? でも、入学式はちゃんとお話ししてましたよ?」
「ふーん。……そうなの?」
私は覚えてないな。ほぼ聞いてなかったし、自分の出番が終わったらさっさと出ていったし。
「知らん。つーか、おれが真面目に教師の話を聞くと思うか?」
「そういえばそうか。……校長の貴重な話を逃したのは惜しかったかな」
「次の式典にでも期待すれば?」
「そっすね」
なんて、二人して気持ちのこもっていない会話をしていると、セラ理事長の話が始まってしまった。
『来賓の皆様、保護者の皆様、また、外部からのお客様。本日はレイディアント学園主催、剣技大会へとお越しくださりありがとうございます』
ここで一度、言葉を切り、浅く一礼。優しそうな笑顔を浮かべたまま、話を続けていく。
『先ほどの実行委員長と挨拶が被りますが、遥々遠方からのお客様もいらっしゃいますので、私から再度お礼申し上げます。この剣技大会は元々、下級生、上級生達の間にある壁を無くすため、また親交を深めようと設立された大会です。参加生徒の皆様は存分に己の力を振るい、来賓、観客の皆様は我が生徒たちの実力をどうぞご覧くださいませ』
これがしっかりしたご挨拶の一例だ。いやぁ……どっかの誰かさんも見習って欲しいよねぇ! なんでいないんだろうね、あの校長は。
いない人を考えても仕方がないため、私は別の話題を切り出した。考えを放棄したとも言うが。
「理事長、笑ってるところとか、ツバサちゃんそっくりだよね。似てるって言われる?」
「う~ん……私はどちらかと言えば、お父さんに似てるねって言われます」
まあ、セラ理事長は兎族の特徴である長い耳垂れていて、狐族であるツバサちゃんと瓜二つとはいかないけれど。性格や内面を総合すると、お母さんよりもお父さん、なのかもしれない。
「……ってことは、お母さんがウサギなら、お父さんが狐族?」
「そうですよ♪ お父さんは私みたいに耳は垂れてませんけどね」
「結局、子供なんて両親の遺伝子を持ってんだから、どっちにも似ててもおかしくねぇけどな」
「フォース君のそういうところ、嫌いでーす」
「ははっ」
笑ってごまかすな、この野郎。
ぽかぽかとフォース君に攻撃を仕掛けている─が、簡単にあしらわれているのが気に食わない─と、理事長の話も終盤のようだ。
『最後になりますが、この会場に来ている来賓の方々は、様々な招待を受けてここにいらっしゃいます。私は来賓の皆様、全員信用における方だと思っております。……セキュリティの高いこの学園内で誘拐などの犯罪が起きないと思っておりますが……念のため、申し上げておきますわ。くれぐれも皆様は己の発言等に注意してくださいね』
笑顔を絶やさなかったが、最後の言葉のところだけは目が笑っていない。そりゃあ、選りすぐりの若者集まる学園ですし、そういう考えを持っている人が全くいないとは言い切れない。犯罪とか誘拐は言い過ぎにしても、悪どいやり方で勧誘はあり得なくはないのだ。それを防ぐのがこちらの仕事ではあるけれど。しかし、理事長様直々にあのようなお言葉が出てくるとなると、下手なことは起きないだろう。事実、カメラに少しだけ映る一部のお偉いさん達の顔色ががらりと変わった。単純に驚いただけなのか、はたまた図星だったのかは判断できないが。
『……では、私からの言葉は以上でございます♪ 引き続き、本大会をお楽しみください♪』
理事長が一歩後ろへ下がってから礼をする。そして、そのまま小さなステージから降り、関係者席へと移動……したんだろう。そこまでカメラは追ってないから分からないけれど。
「……ティール、聞こえる?」
『はい。感度良好』
「合ってるのかなぁ……まあ、いいや。で、一応、頼むね」
『あはは。分かってる。ちゃあんと楽しんでもらうために、来賓の方々のお側に付いてるから』
うわ、こいつも本心では笑ってないぞ。怖いわ~
「ん……なんか、王子が護衛って変な話だよね。……ともかく、よろしく」
『えぇ? 最初の余計だろ。三年以上君の相棒やってるんだから、今更だ。……まあ、任せて』
必要ない気しかしないけど、念には念をってね。
ティールとの短いやり取りを終え、モニターに意識を移した。モニターにはこれから行われる大会のルールについて、説明をしているらしかった。リュウ君から促され、キャス君の戸惑いつつも、よく通る声が聞こえてくる。
『ままま……まず、大会全体のルール説明です! 会場内には、セラフィーヌ理事長直々の特殊な結界が張られている為、軽度のかすり傷、打撲はあるものの、致命傷になるような怪我を負うことはありません。斬撃などは全て、打撲程度の打撃ダメージに変換されます。なので、使用武器は自由! 魔法使用もOKとなっております!』
『サンキュー! 相棒! フィールドの周りには水が張ってあるから、ここに落ちても失格扱いだ! つまり、戦闘不能になるか、フィールド外の水に落ちるかすると、失格ってことを忘れないでくれよな!? 一応、制限時間も設けてるが……タイムアウトになったときはそんときに説明するってことで! まずは参加生徒四百人から八人に減らすため、各ブロックの勝ち残り戦だぁぁ!! 十分後、Aブロックの試合開始するから、該当生徒は準備をして、フィールドに集合してくれ!!』
ふむ。……特殊な効果を持ったフィールドでの蹴落とし戦。このフィールドと観客の間には大きな水路が存在する。この構造から考えるに、上手く立ち回れば、自分の力を出すことなく生き残れるはずだ。
「四百から八、か。……結構、減らすんですね~」
「参加人数多いから、振るいにかけるんだよ。これ、実力と運も絡んでくるね。……というか、運が大切な気がする」
「運ですか?」
「ブロック分けはくじだったからさ、偏りもありそうじゃない? 強豪だらけのブロックなんてのも考えられなくはないよね。三年ばっかりとか?」
総合的に見れば、三年生の出場者が多いわけだから、必然的に多くはなるだろう。それでも、多少の偏りは発生する。それこそ、試合を一発で決めてしまうような範囲攻撃を持っている人と当たってしまえば、一瞬で試合が終わる……なんてことも考えられるし、その逆も然り。全体の実力を見て、ブロックを割り振った訳ではないため、ここら辺は運任せである。
「運は抜きにしても、お前が得意そうなルールだな」
「ふふん♪ 自慢じゃないけど、武器も技も出さすに勝ち残る自信しかないね。なんて、フォース君もおんなじじゃなぁい?」
嫌味増し増しで吹っ掛けてみるも、フォース君から返ってきたのは、にやりと馬鹿にしたような笑みだった。
「どさくさに紛れて初戦敗退できるなんてラッキーだなとかしか。おれが出たときもそんなルールがよかった」
「つまらんやつめ……仕事行け!」
これには嫌だと反発されるかと思いきや、案外素直に椅子から立ち上がった。ふわりとあくびを噛み殺しながら、気だるそうに扉のドアノブに手をかける。
「へーい。見回り行ってきます。……つーか、さっきから連絡来てて、うっさいんだよねぇ」
出てやれよ。かわいそうに……あ、そだ。
「フォース君、行く前に一つ頼みが……」
「嫌でーす」
頼みを聞く前に出ていこうとするフォース君の後頭部目掛け、手近にあったファイルを投げつける。それが綺麗に当たる……なんてことはなく、華麗にキャッチされた。当たれば面白いのに。
「ツバサちゃんと写真撮って欲しいだけなんだけど、なんで逃げようとするかなぁ」
「それを早く言えばいいじゃん」
「言う前に出ていこうとしたのはフォース君ですけどね!」
振り返ってこちらに戻ってきたフォース君に半ば、端末を投げるように渡し、ツバサちゃんの背丈に合わせて中腰になる。
「……ってことで、いい?」
「はわ……もちろんです! あ、あの、あとでそのお写真、もらってもいいですか?」
「いいよ。家帰って印刷してくるよ」
「やったぁ~♪」
ん~……もうっ! 可愛いんだから!
抱き締めたいところだが、時間がない。さっさと終わらせるために、ここは我慢だ。
「ツバサちゃん、これ以上ないってくらい、笑ってね~♪」
「はーいっ!」
「フォース、ミスったら殺す」
「うえ。会長スイッチ怖いよ~……いや、探検隊スイッチの方か?……撮るぞ」
何回かシャッターの切る音が聞こえ、私に端末を返してきた。そして、そのまま出ていこうとするフォース君の腕を掴み、私の方に引き寄せた。
「え、何。処刑?」
「んなことしないって。綺麗に撮れてましたよ! ツバサちゃんこっちに近づいて~? はい、笑って!」
戸惑うフォース君と私の意図を汲んで、満面の笑みを見せてくれたツバサちゃん。一回だけ、シャッターを切って、フォース君を解放した。
「え、あ、はあ!?」
「えへへ! フォースさんとも撮れちゃいました!」
「……ティールがかわいそうだな」
ティールはいいの。最後に撮ればいいもん。フォース君の場合、閉会式には消えてる可能性もあるじゃん?」
「ソ、ソンナコトナイデス」
あるわ。絶対。わざとらしいぞ。
「引き留めてごめんね、二人とも。お互い、任された仕事はこなすように。何かあったら連絡して」
「はいっ! 分かりました!」
「ラジャー」
さてさて……今年の大会はどうなることやら。



~あとがき~
やっと終わった。ここまでくるまでがなっげ。

次回、Aブロック開始! 
誰が出てくるかな~♪

アラシ君視点も一応、あったんですけど、視点移動が面倒なので、ごめんなさいしました。相方には了承済みです。
アラシよりもツバサの方がいいね!! みたいな感じだったんで。ツバサちゃんとラルの絡みを+αしてます。とっちらかった気もしますが、満足。

セラさん、初登場です。ラル視点だと画面越しですが。ツバサちゃんの母にして、レイ学のトップのセラフィーヌ様です。このあともちょいちょい出てくる? と思うので、よろしくな!

ではでは!