satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第100話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でバトっちゃう物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回から本格的にバトルを始めましたが……ついに今回で百話です。なんか、きり悪いね。どうせなら、今回からどんぱちすればよかった……
ミユル「ふふっ♪ 心配しなくてもしばらくどんぱちしっぱなしですよ?」
確かにな……


試合開始前に設けられた僅かな打ち合わせ時間にて、互いの得意なことや苦手なことから、どのような立ち回りをするのか。ミユルはその辺の話をしようと思ったとき、先輩のフォースの第一声は……
「お前、勝つ気ないだろ」
という、ミユルの本心を見透かしたような一言を発したのだった。そして、温度を感じさせない口調で続ける。
「んでも、一発でやられるのはこちらとしても、不利益だし、リーダーが望まん。それに、お前も心外だろ。策があるなら任せる」
「それは……ある程度、試合をする策ですか?」
「そう聞こえなかった?」
一線引いているような冷たい対応である。普段からこんなものなのかもしれないと思いつつ、ミユルは気にした様子もなく、にこりと笑う。
「ありますよ。先輩の言う通り、簡単に終わってしまってはお客様にも悪いですし、つまりませんから。……ですが、アリアちゃんは初手で広範囲魔法を使いますよ。会長さんや先輩は耐えられますか?」
「ラルを馬鹿にするな。耐えるよ。が、まあ、耐えなかったとしても、ルール上、十中八九問題はないと予想してるけど。……おれも問題ない」
「ルール……?」
詳しいルール説明はマルから何もなかった。ゲストとのタッグ戦であるとしか聞かされていない。試合開始前にアナウンスはあるだろうが。
不思議そうにしているミユルに、フォースは肩をすくめる。
「単なる予想。読み間違えたら、おれが別の手段を考えるさ……話をラルに戻すと、あいつが広範囲魔法とやらの策しないなんてあり得ないから、心配はいらない」
「分かりました。それでは、先輩にはアリアちゃんの第一波を防いでもらって、そのあとの第二波も任せます。その間に、会長さんとお話しする時間をくれませんか?」
今度はフォースが不思議そうにミユルを見下ろす。が、あまり興味はないようで、すぐに目線は逸れる。
「いいよ。その間、ディーネの相手はおれがしよう。……他の指示があればどうぞ」
「そうですね。……私、戦うのはあまり得意じゃないんです。後ろでサポートしているのが基本スタイルなんですよね」
「だから? 守れって?」
「二人でいるときはなるべくお願いしたいです」
「……了解。でも、何があるか分からない。ラルがどんな手で来るかもさっぱりだしな。んー……やりたくはないんだけど、保険かけとこう」
フォースはパーカーのポケットから白いリボンを取り出すと、何を思ったのか軽くキスをした。少し驚いたミユルをよそに、フォースはそっと口を開く。
「いるだろう、出てこい。力は分け与えるから」
「ふぁ~……ん。はぁい♪ なんだか可視化状態は久しぶりだね!」
小さく欠伸を漏らしつつ現れた少女に、ミユルは戸惑いを隠せなかった。フォースから魔力を感じないのに、精霊を呼び出したからだ。フォースを後ろから抱き締めるように腕を回し、にこにこと笑う少女を見ながら、ミユルは首を傾げる。
「この方は……?」
「鈴流。元人間で今はおれの守護者みたいな……ん? 恋人……か?」
「恋人にはてなはいらないかなっ! 初めまして、妖精さん。私は鈴流。あのね、フォースは難しいところもあるけれど、いい子なの! 嫌いにならないであげてね!」
緩やかにウェーブしている黄色の髪をふわりと揺らし、ミユルに満面の笑みを見せる。勝手に話し始める鈴流だが、フォースは意に介さず、話を進める。
「ある程度はこいつに守らせる。いいよな」
「無視!? けど、分かった。妖精さんを守るんだね」
「そう。そんくらいはできるだろ。あと、妖精さんじゃなくて、ミユル・ノフェカだから」
「はーい! 頑張るっ!」
「鈴流はそれなりに戦えるから、適当に指示出してくれていい。言うこと聞けよ」
「分かってるよ。雷姫さんじゃないから、素直に聞くもん! 女の子同士、仲良くできますー!」
ぷくっと頬を膨らませ、フォースから離れると、ミユルの傍へと寄り添う。
「じゃ、出番あるまで出てくんなよ」
「うんっ♪ それじゃあ、まったねー! 妖精さ……ミユルちゃんっ!」
「はい。よろしくお願いします、鈴流さん」
思いがけない対面をしつつも、ミユルは一応、笑顔は絶やさなかった。そして、これからのプランについて、フォースにレクチャーし、─きちんと聞いていたかは定かではないが─本番を迎えたのだった。

そして、今。
雷姫を装備したラルの素早い剣術に舌を巻きつつも、鈴流の手助けも借りてどうにか避けている状況だった。フォースの方まで気が回らないのである。
「ここまでの力があるなんて……!」
「まだまだだよー! ラルちゃんは全力じゃないもんっ! うりゃっ!」
「妨害がウザいですねぇ……でも、電撃は無意味です。雷姫、吸収!」
目眩まし程度の電撃を鈴流は放つものの、ラルにとってはその程度にすらならないらしい。バチンと弾ける電撃を瞬く間に刀が食べてしまう。
ミユルはラルの戦いを見たことはない。以前の剣技大会でシエルを負かしたのは知っているが、そのときの彼女に武器はなかった。そもそも、あの試合自体、一瞬で終わっているから、参考にもならないが。
ラルが強いだろうというのは予想できる。学生の身でありながら、探検隊を率いて、それなりに名を通しているからだ。こうして、ゲストに呼ばれるくらいである。実力が申し分ないのも簡単に想像できた。が、ここまで好戦的に攻められるとは思ってなかったのだ。
「ほらほらほらー! もう、邪魔しないでください、鈴流さんっ!」
「するよ! フォースの指示だもんねっ!」
鈴流が手を横に振ると、いくつものナイフが出現する。それを指一本触れることなく、ラルめがけて飛ばしていく。しかし、ラルは雷姫を巧みに操り、全て落としていく。
「あっは! 手応えないですね~?」
ぐぬぬ……本当は戦闘要員じゃないんだよ! ラルちゃん、強すぎっ!」
「元“赤の継承者”がそれを言いますか?」
「油断大敵ですよ、会長さん! お願い、植物さんっ!」
鈴流がラルを引き付けている間に、ミユルは魔法で植物を急激に成長させていた。そして、ラルの足元で発芽させる。しゅるりと伸びる蔦に絡め取られ、ラルは体の自由を奪われてしまった。
「おやおや……全くもう。二対一って狡いです。委員会に訴えまーす」
奪われたにも関わらず、ラルは余裕であった。軽口を叩けるくらいには。警戒を解かずに、ミユルはラルに話しかけた。
「……余裕ですね?」
「そりゃあ、方程式はできてますから。勝つのはアリアちゃん、でしょ?」
「むー? そこにラルちゃんはいないのかな」
「いなくても問題はないですよ。これの勝利条件は、アリアちゃんかミユルちゃんの決着がつけばいいんですから」
ラルの言っているのは正しい。ルール上、先に落ちてしまったとしても、何ら問題はない。しかし、それと今の状況を余裕でいられるのは、また別問題である。
鞭を構え、ミユルは恐る恐る尋ねる。
「……あなた、会長さんじゃ、ない?」
それに対する彼女の解答は……
「あはっ……さあ。どうでしょう? 当ててみてよ、ミユルちゃん。例えば、この蔦を使って、私を気絶させてみる? 好きにどうぞ」
不敵に笑い、挑発するのみであった。

一方のラルとそれに対峙するフォースは。
「……てめぇ、ほんもんか?」
「さぁてね? ま、どっちでも同じだよ」
雪花を剣に、冷気に、氷にと器用に変化させて、フォースを翻弄していた。その一つ一つは大したことはないのだが、複雑に組み合わせ、時に不意をつく辺りが、ドールではないと思う要因でもあった。
しかし、雷姫を操るのがドールなのも疑問である。雷姫は神器と呼ばれる武器であるのと同時に、妖刀としても恐れられてきた曰く付きの刀。主以外の者が簡単に操れるとは思えなかった。
「ややこしいなぁ」
「正体を躍起になって明かそうとするからじゃない? ほらっ!」
剣の姿をした雪花の斬撃を紙一重でかわしながら、思考を巡らせる。
未だ、アリアからのアクションはない。視界がまだ晴れないのが原因なのか、別の何かがあるからなのか、それをフォースが知る権利はない。どちらにせよ、このまま適当にいなしていても、アリアの第二波にやられるだけ……
と、考えて、フォースは冷や汗を感じ、体温がすっと下がる感覚がした。否。元から、ここの気温は低い。雪花の能力だけ、ではない。
「時間稼ぎだろうとは思ったけど……お前……いや、お前らは囮か?」
「……ほらね。私が本物だろうと、偽物だろうと、結果は同じだった。違う?」
アリアの氷魔法もだった。
慌ててアリアの方を見ると、開始直後以上の力の流れを感じた。それに伴い、周りの気温すらも支配していく。嵐のような攻撃がピタリと止み、ラルがにこりと悪魔が如く笑う。
「私の目的は時間稼ぎ。と、君らの分断だ。ほらほら、間に合うかい? 今回、君の姫君はステラちゃんでもリーフちゃんでも、ましてや私でもない。……ミユル・ノフェカだろう?」
「……ラル、やってくれるじゃねぇの」
フォースは目の前のラルが本物であると確信した。司令塔は雪花を持つ、ラルであると。
彼女に遊ばれたと思うのにも、大して時間はかからなかった。
「んふふ……分かってたでしょ? ここいらで負けてくれても構わないよ。早ければ早い程、面倒にならなくていいじゃない? さあ、戻っておいで、ドール! 雷姫!」
雪花を鞘にしまい、本来の相棒の名を呼ぶ。その先をフォースは見届けなかった。ラルに狂わされたものの、フォースの目的は、やることは決まっていたからだ。
離れたところで戦っているはずの、ミユルの元へ駆け出した。



~あとがき~
百話なのに話が進まね。
そして、今年最後のレイ学でした。きりいいね。話数的な話で。

次回、まだまだ続くよ。決勝戦

バトル描写嫌すぎて、フォース&ミユルの打ち合わせ風景を書きました。まあ、ミユルちゃんが鈴流を見ても驚かなかった理由はここです。先に見て、顔合わせをしていたから、です。
あと、フォースなら、ミユルちゃんの本心というか、気持ちを読み取ってるよなぁと思い、あんな感じに書いたけど、ぶっきらぼうな嫌なやつになりましたね。まあ、間違ってないか。
あと、これは私の偏見ですが、ミユルちゃんが時折残酷な少女に見えて仕方がない。やってることがあれなのか、口調があれなのか……もっとふわっとした女の子……のはずなのですが。

さてさて。ラルがどちらか分かりましたね。ぬるっと。予想と言うか、皆様の希望は当たりましたかな?

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第99話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でどんぱちする物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
なかなか始まらない決勝戦ですが、今回からばーっと入って、わーっと終わってくれる……はず。そんなだらだらとやるつもりはない……つもりはない、です……!
ラル「果たして、その言葉は守られるのか」
フォース「審議だ。しんぎー」
まだ始まってもないのに……!?


キャスの合図で場の空気が一気に張り積めたものへと変化をする。理由は単純。ラルの隣に立っているアリアから、膨大な魔力……広範囲魔法の前兆を感じたからだ。それは、ラルが予想していたものではあるが、『約束事』からは少し離れるものではあった。
ラルがアリアにお願いした約束は一つ。開始の合図後の攻撃は一定時間の間隔を空け、広範囲の魔法を連続して行わない。それだけだ。開始の合図ですぐさま攻撃するなと頼んだのは、単純にラルが距離を取る時間が欲しかったからで、何か作戦があったわけではない。が、テンションが上がってしまっているアリアは、この約束を忘れられたらしい。
「話聞いてたぁぁ!? あーくそ!!」

慌ててアリアの近くを離れるラルに対し、フォースとミユルはすでに十分な距離を取っている。少し離れたところで、フォースは若干、呆れ気味に呟く。
「早速来るかぁ」
「ふふっ♪ テンション上がってますね、アリアちゃん。タダ券が目前だからかしら」
「贈呈されるの、券じゃなくてピンバッジというかブローチですけどねぇ……?」
「ご飯を無料で食べられるなら、同じことですよ。……フォース先輩、打ち合わせ通りにお願いしますね?」
「本当にやるのか?……ま、了承した以上、尽力しますけど」
フォースはこの大会中、話には聞けど、試合自体は一切観戦していない。そのため、アリアがどのようなことをやらかしたのか、実力がどれ程なのかをこの目で見たわけではなかった。しかし、空気の流れや肌にピリピリくる気迫だけで、かなりの大技がくるのだと予測立ては容易である。
サポートメインと宣言するミユルに代わり、この一撃を防ぐのがフォースの仕事であり、ミユルの頼まれ事の一つだった。フォースがこの大会中、ミユルに何かを進言するつもりはなかった。このようにした方が勝てるとか、何がいいとか、言ったところで結果は目に見えているのだから。
「はぁ~……やだやだ。あれ、でかすぎないか?」
「アリアちゃん、やる気満々ねぇ」
フォースとミユルの眼前に現れたのは、巨大な津波。しかし、その津波は水ではなく氷であり、所謂、雪雪崩である。それに飲まれてしまえば、アリア以外の一発場外も夢ではなかった。
「おい、ちゃんと制御しろよ、リーダー」
いつの間にか近くまで逃げてきていたラルに問いかける。こちらもここまでのは予想外だったのか、かなり慌てた様子である。
「うっちゃい! 食べ物は恐ろしいんだよ! そういうことだよ! あーもー! どうにかして、フォースくーん!」
「おれ、お前の敵なんだよなぁ」
と、返すものの、ラルの目線はアリアが作り出した雪崩を見ているし、伸ばした手の先には雪花がいる。彼女は彼女で防ぐつもりらしい。
「ま、いーわ。……おれの後ろから出るなよ。助けられる保証がない」
「分かりました♪」
ミユルはにこっと笑い、フォースの後ろへと隠れる。それを確認し、フォースは右手を前へと掲げ、そっと文言を唱える。
「……我を護りし者よ。その力を守護へと変換し、姿を現せ。……来い、“鈴流”!」
「はぁい♪」
鈴流と呼ばれたその者はまばゆい光に包まれて現れる。明るい黄色の髪を揺らし、真っ白なドレスに身を包んでいて、妖精のような出で立ちだ。
体が少し透けている彼女は、扱い的には精霊と立場はそう変わらない。しかし、一番の相違点は彼女が魔力で作られた存在ではなく、フォースの持つ白いリボンに宿る思念体であるという点だ。簡単に言ってしまえば、幽霊のようなものである。
「行けるか?」
「もっちろん! お茶の子さいさい!」
「……それ、多分死語」
「にゃんですと!!」
かつて、フォースと鈴流は主従関係……つまり、“強き力”で結ばれた関係であった。本来であれば、役目を終えれば、一切の関係をなくしてしまうのが普通。しかし、鈴流がフォースを愛し、その愛をフォースが受け入れた。様々な苦楽がありながらも、二人の愛は潰えなかった。だからこそ、今の二人の関係性になったといえよう。
「防御!」
「りょーかいだ! いっくよー!」
フォースの隣にふわりと並び、迫る雪雪崩と対峙する。過去に“強き力”を所有していた鈴流にとって、強大な力を操るのは専売特許である。……それは、フォースにもいえるのだが。
鈴流は力の限り、電気を発生させ、強大な雷へと変化させると、それを思い切り雪崩にぶつける。雷と氷がぶつかり、互いの威力を相殺した代わりに白い煙が辺りを包み込んだ。視界が悪くなったが、アリア本人にはダメージはないだろう。そして、こちらもダメージはない。第一波を防ぐという目的は概ね達成したと言えよう。
「前方から攻撃来るよ! 武器攻撃!」
「はいよ。……恐らく、ラルだな」
鈴流の忠告にフォースは手元に鎖を作り出す。武器となれば、雷姫か雪花だが、そのどちらできても防ぐ自信はある。が、ミユルから告げられた内容に一瞬にして考えを改めなければならなくなった。
「フォース先輩、後ろからも来ます」
「あぁ!? 誰だよ。面倒くせぇなぁ!」
この質問に答えたのはミユルではなく、鈴流だった。前方から目を離さず、口を開く。
「ラルちゃん!」
「……前は?」
「ラルちゃん」
「なるほど。……どっちかは“ドール”だなっ!」
前から雪花で斬りかかってきたラルの攻撃を鎖で防ぎ、そこから遅れて後ろから、雷姫を持つラルの攻撃を鈴流が同じように鎖で弾く。二人のラルに挟まれる形になるというなんとも奇妙な光景である。魔法で幻術を使い、見た目を変えることは可能だが、ラルは魔法使用者ではない。簡単に姿を変えたり、幻を出したりという芸当はできないはずなのだ。
「会長さんが……二人?」
“ドール”を初めて見たらしいミユルの戸惑った呟きが耳に入るも、フォースにそれを説明する余裕はなかった。
フォースは制御者とは別の力の一つである霊視能力を使うものの、二人の発する魂のオーラは同じものである。本来、オーラが全く同じになるのはあり得ない。例え、自身をコピーした“ドール”だとしても、“ドール”には自我を植え付ける行程が必要不可欠。そのため、自我を与えられた時点で個性が生まれ、色に現れるはずなのだ。それなのに、同じに見える。その理由はすぐに思い付いた。
「くそ。……雷姫、邪魔すんな」
『ふふん♪ 今は敵だからのぉ~♪』
後ろの刀から返事がくる。その声はとても楽しそうで、彼の神経を逆撫でするようなものであった。
所有者の魂に巣食う妖刀ならば、気配も心の声もオーラも隠せてしまうだろう。普段から、何もしていなくともラルの心だけは聞き取りにくい。普段からそれなのに、雷姫がしっかりと隠そうとしてしまえば、これである。
「使ってくると思ってたけど、反則だよ!? その“目”は!」
「うるせぇ。どっちだ、お前」
「どっちも何も、私は私! セツちゃん!」
『あいっさー!』
雪花を装備したラルがフォースに突進する。仮にフォースが相手ではなく、ティールだったのなら、簡単に判別できたのかもしれない。ティール相手にこの作戦に出たかはまた別の話だが。
どうでもいい話題を頭から追い出し、意識を少し集中させた。次は制御者の能力……というよりは、スキルである『力』の流れを感知、それを辿るものの、アリアからの攻撃は感じられない。少しの間は、ラルだけに集中できそうであった。
鎖から剣に作り変え、雪花の斬撃を受け止めた。そして、様子を伺うようにちらりと後ろを振り返る。
「鈴流、後輩の援護に徹しろ」
「分かった!」
「フォース先輩」
「問題ない。目の前に集中しとけ」
短い返答にミユルは小さく頷き、雷姫を持つラルをフォースから引き離すために走り出し、その後ろに鈴流が続く。それを横目で見つつも、彼女はもう一人の自分に向かってウインクする。
「フォース君の相手は任せたよ~♪ 二人は任せてねっ♪」
それだけを言い残すと、彼女の高い敏捷性を駆使して二人を追いかけていく。つばぜり合いをしているラルは特に反応はなかった。冷静にフォースを見据えている。
ひやりと冷たい空気がフォースの頬を撫でるも、体は、頭はフル回転していた。周りの冷たい空気が体の熱を冷ましていくが、テンションまでは冷めることはない。
「どうせ目的は時間稼ぎだろ。攻撃の要はディーネにある。お前、元々、パワータイプじゃねぇもんなぁ!」
力任せに剣を弾き、ラルを退ける。単純な力比べなら、ドールだろうがラル本人だろうが負ける気はさらさらないのだ。
バックステップでフォースと距離を取り、ラルはニヤリと笑う。それを見る限り、本物はこちらのような気もするが、断定はできなかった。
「やっぱり、フォース君は敵に回すと怖いにゃあ? 我が隊一の実力者さんだもんねぇ? よく特攻隊長してくれるし」
「好きで特攻仕掛けてねぇわ」
「あっはは! いいね。久々に楽しくなってきたよ! 大会に出るの、心底嫌だったけど、君と本気になれるなら悪くないわ」
雪花を構えるラルに対し、フォースは自分で作り出した剣を一度消し、素手のままで構える。
「本気? お前がこんなところで? 嘘つくな。その気なんてないくせに」
「あっは! 確かに……でもまあ、そこはお互い様でしょ」
不敵な笑みを浮かべ、ラルは再びフォースへ斬りかかる。その連続斬りを完全に見切り、冷静に対処していく。彼女の真意を読み取るため、しばし、目の前のラルに集中することにした。



~あとがき~
フォース視点の第三者視点だから、雷姫の声もセツの声も筒抜け(描写しました)です。

次回、ラル&ドールVSフォース&ミユル!
どっちがラル本人なのかは次で分かる。そこまで引っ張れない(笑)

こちらでは初登場です。鈴流。空海を知っている方にはお久しぶりかもしれません。こっちでも残念ながら生きてませんねー……
あっちじゃ、可哀想なことをしているので、こちらでは和気あいあいとフォースの傍で暮らしてもらってます。幽体だけど。雑な説明しかしてないけど。空海じゃバトルなんてしなかった鈴流がバトルしてますけど!!
追々と説明する暇も機会もないと思うので、ここでさらっと言います。

空海同様、赤の力を持った鈴流とそれを守護するフォース。なんやかんやあって、恋人してました。
お別れシーンも大体、空海と変わらない。満足に任務全うできず、死に別れしてる。

神様の配慮で、鈴流の形見であるリボンに鈴流自身の思念、魂を乗せる。これをフォースは知らずにずっと所持。

時は流れて現在。ステラ達の付き添いと「行け」という命令に従い、学校へ入学。そこで出会ったラルやティールの協力(という名のお節介)により、なんやかんやで鈴流と再会。

こんなんです。で、なんやかんやあって、今です。え、なんやかんやが知りたい? ま、また今度な……(絶対やらない)

今回、フォースが目立って少し影が薄かったミユルちゃんも次回以降から頑張るし、見せ場はある。……大丈夫!!

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第98話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でどたばたしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
勝戦でのルール開示がちろっとだけありましたね。今回はもう少し詳しくお話しできるかと思います! 始まるよ!!
ラル「大丈夫なんだろうか」
フォース「それな」
……それな!!


裏のあれこれなど知らない観客達のボルテージは最高潮。なぜなら、待ちに待った決勝戦の開始時刻を迎えたのだ。そして、長い間、秘密にされていたゲストのヴェールが解かれ、ようやく正体が明かされる。
それに拍車をかけるかのように、放送部の実況にも今まで以上に熱が籠る。
『さぁ!! ついに始めるぜ決勝戦! もう観客の皆も今か今かと待っているだろうから、早速、決勝まで勝ち進んだ選手に登場してもらうぜ!』
『ま、まずは、魔術科二年! 得意の状態異常魔法で相手を錯乱できるか!? ミユル・ノフェカ先輩です!』
決勝まできてようやく慣れ始めたのか、すらすらと台本通りにアナウンスをしていくキャス。それでも、隣の先輩のように盛り上がる紹介にはほど遠かった。
『そしてそして! 決勝でもお得意の氷魔法で相手を氷漬けにできるか!? 冒険科三年! アァァリア・ディィィィネェェェ!!』
この合図で、アリアとミユルが観客の前に姿を見せる。流石に三回目で変な紹介も挟まれず、一般人が普通だと感じる紹介へと変わる。
「テンションは今まで以上って感じね~」
単純に思ったことを口にするミユルの横で、アリアの目はギラつき始めた。あと一勝というところまできたからか、或いは元から存在しないのか、自制心という言葉はないようだ。

まだ会場入りしていないラルとフォースは、盛り上がる会場から、気分的には一歩後ろに下がった状態でリング入口付近でじっとしていた。
ラルは下ろしていた髪をサイドテールでまとめ、空色のスカーフをリボンのように結んでいた。そして、ロンググローブをはめて、右手にはティールの愛剣の雪花が握られている。
一方のフォースは至ってシンプルで、淡い空色のマフラーに紺色のロングコート姿だ。これ以上の装飾は何もなく、武器の装備もなかった。強いて言うなら、季節感は全くない。
「テンション爆上げだね~」
「くそうるせぇ」
フィールドから近いとはいえ、一応は少し離れた廊下にたっているというのに、リュウの声はクリアにそして、盛大に聞こえてきていた。
『さ~て! それでは皆さんお待ちかね! 昼休憩から、のばしにのばしたゲストの紹介と行こうかぁぁぁぁ!!』
『ちょ! 先輩!? 急に大声出さないでくださいよ!?』
キャスの注意が入るが、普段からスピーカー越しに聞いているラル達には違いが全く分からない。
「……え? それは今更なのでは?」
リュウと一緒に居すぎて、通常の大声に慣れてるんじゃねぇの? メーター吹っ切れてんだろ、あの一年」
「いや、通常の大声ってなんだよ。でかいことに変わりはないじゃん」
通常の大声とはという、心底どうでもいい議論が繰り広げられる中、会場では話が進んでいく。
『みんなは知っているだろうか。あの有名な探検隊を……』
リュウの説明が始まると共に、なぜか、会場がしんと静まり返る。それに当事者である二人は互いの顔を見合わさずにはいられなかった。「そこまでハードルあげなくてもいいのでは」と。
『いや、知っているはず……知らないはずがない! 学園でファンクラブもできているあの有名探検隊を……! 騒動を解決した数は星の数にも上るが、受けた感謝はそれ以上! チーム『スカイ』から! リーダーとそのメンバーの登場だぁぁぁ!!』
本日一と思われる歓声が聞こえる中、それに混じって黄色い声援も聞こえてくる。主に女子の声だろう。本来なら、ここで二人は会場入りしなくてはならないのだが、どちらもその場に留まったまま。フォースは若干、引きつった笑顔を浮かべている。
「え……何? 今の甲高い歓声……?」
「何って……君のファンクラブのメンバーの声でしょ。当たり前じゃないですか」
「何それ怖い……完全に大人のお姉さまの声も聞こえてたよ? おれ、そんな年上知らない」
「大丈夫だ。この世の中で、お前よりも年上な女性は神様くらいだから! みぃんな可愛い少女だから。ほら、行くよ」
今にも逃げ出しそうなフォースの手を掴み、ぐいぐいと引っ張っていく。本気で抵抗されると、ラルではどうしようもないのだが、一応は行かねばならないという意思があるのだろう。ずるずると引きずられる形ではあるものの、ようやく観客の前に姿を見せられた。
ラル達が使用した入口は今まで生徒達が出入りしてきたところとは別だった。ミユル達のところを左右とするなら、ラル達は正面と言えるだろう。
「やだやだやだ……公衆の面前に出たくない。めっちゃ帰りたい。や、無理……!」
「うるっせ! チームのためだと思え!」
ぐいっと引っ張り、無理矢理中央へと進ませる。姿を見せたことで、リュウによるお得意の紹介文が読まれ始めた。
スペシャルゲストは、我が学園の生徒会メンバーでもあり! ファンクラブもあるという噂もあるチーム『スカイ』のリーダー! 雷の女王! ラァァァル・フィラディィィィィィネェェェェェ!』
「はぁ!? ちょい待て。い、いか……? 『雷の女王』? とか初めて聞く異名なんですけど!?」
探検隊として活動する中、悲しいかな二つ名というものはつけられてしまうらしく、ラルも例外ではなかった。よく呼ばれるのは『雷獣』。その次に『空の策士』である。が、間違ってもリュウが呼称した『雷の女王』とは呼ばれた経験はないし、聞いた記憶もない。
ラルの突っ込みはリュウには届かなかった─聞こえていたとしても、答える気はない─のだろう。続けて、フォースへと標的を変える。
『そして! その『スカイ』メンバーであり、生徒会屈指のイケメン! 学園生活では授業を気ままに受け、普段からサボり癖はあるが、その頭は秀才! クールな態度で女子たちのハートを掴み取るクール王子! フォォォォォス・ブロォォォウ!』
「あ? 王子? 何言ってんだ、あの小僧」
「抑えろ。褒め言葉だよ、紅眼の悪魔さん」
「褒められてねぇわ」
フォースもラル達と共に探検隊活動をする最中、同様に二つ名は存在していた。少なくとも、王子などと可愛いものではなく、『紅眼の悪魔』やら『赤目』等と呼称されている。本人は大して気にしてはないのだが。
二人の名前が開示され、観客からは割れんばかりの歓声が届いていた。やはり、フォースに向ける歓声はちょっとした熱い視線も混じっているように思える。観客の声に応えるため、軽く手を振るラルとは違い、ガン無視のフォースだが、またそこがいいのだろう。ところどころで、「格好いい」だの「イケメン」だのと聞こえてくる。
「モッテモテ~♪」
「いらねぇ」
『ふぃ~……ちょっと熱くなりすぎたぜ☆ ということで相棒! 俺がクールダウンしている間に説明よろしく!』
『ふぁ!? は、はい!! 決勝へと駒を進めたお二人には、スカイとそれぞれタッグを組んで、タッグ戦をしてもらいます! 細かなルールは今までのトーナメント戦と変更はありません!』
つまり、時間制限つきの試合であり、使用できる道具は武器と魔道具のみという大まかなルールに変更はないということだ。
『ただ、タッグ戦とはいえ、勝敗を決めるのはミユル先輩とアリア先輩なので、この二人のどちらかが倒れた方の負け、となります。仮にゲストのお二人が先に戦闘不能あるいは、場外へとなってしまい、失格扱いになっても、試合は続行されます』
「ふうん? 私らがやられる分には試合に影響しないってことだね」
「お? 速攻でやられても怒られない……?」
「あっはは! 任せて。私が怒るから」
『な、なお、タッグ決めについては、先程の休憩時間中に大会実行委員長立ち合いの元、決めてもらっています! そして、その結果が……こちらになります!』
キャスの合図で会場内にある巨大モニターには、アリア&ラルVSミユル&フォースの表示が出る。それだけで、再び歓声が上がった。
ラル達も名前が表示されたことで、お互いのパートナーの側へと近づく。ラルはアリアに、フォースはミユルに。
「フォース先輩、打ち合わせ通りに」
「へいへい」
「アリアちゃん、約束守ってね」
「優勝……もうすぐ、タダ券……優勝♪」
「うぅ……聞いてるのかな」
ラルは呆れつつも、手に持っていた雪花を腰のベルトに帯剣する。しっかり装着できたことを確認し、フォースとミユルを見る。どちらも落ち着いていて、余裕の貫禄といったところだ。
『それでは、試合……開始ですっ!!』



~あとがき~
え、なかなか始まらないね……?

次回、アリア&ラルVSミユル&フォース!
今回で入れると思っていた私がいました。

どうやって試合運びをしようか悩んでます。大丈夫なんだろうか、私。
というか、私のメインキャラがここで本格的にバトルするのはお初ですね。ずっと相方のキャラかレイ学オリジナルキャラだけだったからな……
前にフォースが戦闘してる(53話)けど、あんなんお遊び程度ですわ。ほぼ描写ないもの!←

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第97話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわーわーしてる話です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
長かった……遂に決勝ですよ!!
ラル「そこじゃなくて、別のこと突っ込んでいい?」
はい。なんすか!
ラル「あなたのメインである空海の話数に近づきつつありますが、それについて一言」
……空と海はそれとして進めるさ!
ラル「約七年かけて二百越えなのに、こちらは約一年程で百です」
いやぁぁぁ!!! あれっすね! 二人で作ると違うね!!
ラル「おい」
今回の決勝戦は第三者目線! それぞれに焦点は当たるとは思いますが、ラル多めかな? 分からん!


大会が始まってからずっと着けていた通信機を耳から外し、机の上に置く。そして、手早く学生服から探検隊の仕事着へと着替えた。ラルはいくつか仕事用の服は持っている。理由としては用途によって使い分けているのと、彼女なりのスイッチの切り替えのためだ。しかし、今回は仲間であるクラウセレクトである。デザートイエローを思わせる少しくすんだ黄色のベストにVネックの黒のインナー。そして、カーキーのホットパンツに身を包み、膝上ほどまである編み上げのロングブーツを黒タイツの上からしっかりと身につける。……これが今回のスタイルだ。
一部だけ結ってある髪もほどき、完全に下ろした状態にする。たまたま部屋にあった鏡で全身をチェックするも、若干の違和感は否定できなかった。
「もっと地味なのでよかったのでは……?」
ここまで目立つような格好をする必要があったのか、と。
しかし、時間はもうない。ここは潔く諦めて、これでいくしかない。残りの装飾品を身につけて、ティールから拝借したセツを装備しようとしたところでその手は止まった。
これから行くのは対戦相手となりうる人物達が集まる部屋。そんなところで見せるように武器を構える必要性はない。もちろん、見えないようにマントを被るのも考えたが、フォースに読まれては同じことである。バレたくなければ連れていかないのが一番なのだ。
「セツちゃん、ちょっとお留守番しててもらっていい? 変な人についていかないでね。一応、ここの鍵閉めるけど」
『あいあいっ! らいじょーぶよ! るーとてぃーいがいのひと、きたらやっつけちゃうから!』
それはそれで別の案件が発生しているのだが、やめろとは言わなかった。それくらいの気持ちでいてもらった方が頼もしいと言うものである。
しかし、ラルは念には念をと魔道具を使い、自分の分身とも言える“ドール”を呼び出した。今の自分と瓜二つの姿をするドールはぴしっと敬礼ポーズで登場する。
「はぁい! お呼ばれしたので飛び出してきました! 何かご用ですか、マスター!」
「ここを留守にするから、セツちゃんと留守番しててくれる? 万が一、盗られでもしないようにね」
「わっかりました! マスターのご命令とあらば、なんでもやっちゃいますよー! 安心して行ってきてくださいっ♪」
『またあとでねー! るー!』
元気な二人─『人』で数え方が合っているかは分からないが─を部屋に残し、ラルは集合場所へと向かう。バックヤードである通路に人気はなく、誰ともすれ違わずに、目的地へと到着した。一応の礼儀としてノックをする。
「あ、ラルさん。待ってたよ」
ラルを出迎えたのは、今年の大会実行委員長であるマルだ。ふわっと笑い、中へと通してくれる。部屋には先程、試合を終えたばかりのミユルと焼きそばを頬張るアリアがすでに待機している。また、離れたところに制服姿だが、フォースも部屋の隅で椅子に座っていた。
「なんでお前は制服なんじゃ……」
「着替えとか一秒で事足りるだろ?」
ニヤリと笑うフォースは、お得意の創造の力を使い、着替えるつもりらしい。なんとも狡い手ではあるが、彼の力はそれくらい何とも思わないのだ。
ラルは、これ以上は何も聞かず、離れているフォースの腕を掴む。そして、無理矢理集合させた上で、マルに向かって頷いた。
「えっと……説明しても大丈夫、かな?」
この疑問は最もだろう。これは主にアリアに向けられたものだが。それに答えず、ただただマイペースに焼きそばを食すアリアに代わり、ミユルが笑顔で答える。
「大丈夫ですよ、先輩。アリアちゃん、ちゃんと聞いてると思いますから♪」
「ならいいけれど……それなら、話、始めちゃうね?」
静かな部屋に場違いな生活音が響く中、マルは二枚のカードを取り出した。右のカードに『ラル』、左のカードに『フォース』と手書きで書いてある。
「このカードを今から決勝に勝ち進んだ二人に引いてもらうね。そこに書いてあった相手とコンビを組んで、決勝で戦ってもらう……相手は完全に運任せってことになるね」
つまり、この場にいる誰もがこの先どうなるのか分からない。ラルのパートナーがアリアかもしれないし、ミユルかもしれない。分かっていることといえば、ラルとフォースは対立するし、ミユルとアリアも同様であるという点くらいだろう。
ラルとしては、広範囲魔法を感情に任せて使っているアリアとはあまり組みたくはないのが本音である。使っている属性的には、ティールとほぼ変わらないので、やりやすさはあるのかもしれない。が、それとこれとは話が別というものだ。
「おれ的にはどっちも嫌だからどうでも」
「誤解を生む。大会が嫌だと言え」
「大会が嫌です」
自分に素直なのか適当な奴なのか、フォースは大した感情も込めないまま、言葉を紡ぐ。しかしまあ、本心のところ、人が嫌というよりは、現状が嫌なのだろう。それはラルも同じである。
やる気のないゲスト二人は放置したまま、マルは二枚のカードを裏返しにした状態で適度に切っていく。そして、どちらが誰なのか分からないくらいになるまで繰り返し、ミユルとアリアの前に裏返しのままで差し出した。
「好きな方を選んでください」
「はぁい♪ さて、と。……どっちを選ぼうかしらね~? どうする? アリアちゃん」
じっとカードを見た後、笑顔でアリアに呼び掛ける。変わらず焼きそばから手は離れないものの、目線はカードへと向いている。一応、選ぼうとする意思はあるらしい。
一方のゲスト枠の二人はすることがないので、カードを引く光景を会話をしながら見ていた。
「フォース君がアリアちゃんと組めばいいんだよ」
「あ? まあ、おれはどうでもいいけどよ。誰だろうと、やることは一緒だし」
「協力プレイって知ってる?」
「今の今まで交流がなかったのに、協力なんて無理。おれの性格知ってんだろ」
「そぉだけどさぁ」
「あんまりなりたくないとか考えてると、ディーネさんと組むことになりますわよ、奥さん」
楽しむような笑みにラルは一瞬だけ言葉に詰まる。普段から個性豊かなメンバーを取り仕切るラルだが、好き好んでやりたいとは思わない。
「フラグはへし折るもんだから……」
「回収するもんだよ」
下らない話をしている間に、ミユルとアリアはカードを選び終わったらしい。それぞれには一枚のカードが手に渡っていた。二人の「せーの」という声でカードが表になり、名前が開示される。
「……あら、フォース先輩は私とですね♪ よろしくお願いします」
ミユルが見せるカードにはフォースの名前が書かれていた。となると、必然的にアリアのパートナーはラルになるわけである。
「あはっ♪……つーことだ。よろしくねぇ、リーダー?」
「……は、はあぁぁぁぁ!? へし折れよ! フラグ!! 私、どんだけ厄日なんだよ!?」
これぞお約束と言わんばかりの展開である。
驚愕するラルに、マルは戸惑いつつも励ましの言葉をかける。
「だ、大丈夫だよ。ラルさんなら、アリアさんとも上手くできるって」
「そーそー! おれらのリーダーなら、大丈夫だよぉ? ま、頑張れ。おれは平和的に終わらせる」
フォースから、励ましにもならない煽りの意がこもった言葉を投げ掛けられるものの、それに突っ込む元気すらなかった。……というよりは、これからどうしようという考えが頭を支配し、反応できなかったのだが。
「アリアちゃん、フィールドに上がったら確実に暴走すると思いますが、よろしくお願いしますね? 会長さん」
と言う、ミユルの忠告も上の空である。
ラルがちらりとアリアを見ると、未だにご飯中であり、このあとに戦う気迫すらない。
「……どうするかな」
ラルの呟きは誰に届くものでもなく、話は進んでいく。アリアとミユルからカードを回収したマルは、扉の方へと近づき、こちらを振り返る。
「じゃあ、試合が始まるまでの残り時間で軽い打ち合わせをお願い。ないならないで構わないけれど……それじゃあ、僕はリュウ達にこの結果伝えてくるね」
それだけを言い残し、部屋を出ていった。残されたのは試合にて戦う四人のみ。
「おれとラルの入口はお前らとは別だからな。作戦会議したいなら、今しかないぞ。やる必要があるなら、だが」
「なら、少しお話ししましょう♪ ちょっと出てくるわね、アリアちゃん」
聞かれないようにか、部屋の外で話をするらしい。ミユルとフォースが出ていったあと、ラルは小さくため息をつく。
自由人の如く暴れると予想されるアリアの手綱をどう操るべきなのか。そもそも、それが自分にできるのか。不安は尽きない。
「……アリアちゃん、私達も少し話をしよう。なんて、聞かないんでしょうけれど。一応の忠告はしておく」
食事の手は止めないものの、視線はラルへと向けられている。最低限、話を聞く姿勢はあるようだ。これならば、まだ通じるものがあるはずだ。
「初っぱなからの広範囲魔法を止めるつもりはないけど、それだけで勝てるとは思えない。アリアちゃんが相手をするなら、きっとフォース君が来る……あいつのやる気はないと思うけどね。それでも、注意するのをお勧めするよ」
「……」
「それと、少し約束してほしい。難しいことじゃないけれど、これを守ってもらわないと優勝……いや、ご飯のタダ券はないと思って」
アリアはラルの言葉にこくりと頷く。今のアリアにタダ券というフレーズは何かと便利な機能を果たすらしかった。内心ほっとしつつも、ラルは一つだけ条件を提示したのだった。
その条件を聞き、アリアが納得したところでラルは、部屋を出ていく。フォースの言う通り、ラルはアリアと同じ入り口から入場するわけではない。また、着替えで使った部屋にドールと雪花を放置したままである。どちらにせよ、あの辺で解散となっていただろう。
「あの言葉がどれだけの意味を成すのか……かなり不安だ」
『ふふん♪ 何やら酔狂なことをしておるの、マスター? 我も交ぜとくれ』
自身の背後から雷姫の気配を感じとる。ラルと見た目が似る雷姫だが、ドールのように瓜二つではない。髪も雷姫の方が長く、妖艶な笑みを浮かべている。それを視れるのはラルしかいないのだが。
雷姫はゆらりとラルにまとわりつくが、主である彼女は大して気にせずに歩を緩めなかった。
「もちろん。全面的に協力してもらうわよ」
『ほほう? それは楽しみじゃ』
チーム一の実力を持つフォースと、魔法によるサポートを得意とするミユル相手にどこまでできるのか……否、アリアをどれだけコントロールし、観客に満足してもらえるのか。ラルの課題はそこである。
「いいところまで引き延ばす。これが今回の最大ミッションよねぇ」



~あとがき~
嵐の前の静けさと言うか、まだバトルにはならないですね。

次回、アリア&ラルVSミユル&フォース!
どうでもいいけど、フォース、ハーレムみたいですね←

特に言いたいことはないですね……(笑)
あれかな。ラルの探検隊衣装。本当にいくつかパターンがありまして、まあ、それぞれの用途によってって感じではあります。
どんなやつなんだ!? ってイラストは例の記念イラストにて描ければと思ってます。フォースとあわせて描くよ~!(多分)

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第96話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわーわーしてる話です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ぬるっと準決勝一試合終わりました。ぬるっと。いやぁ……あっけないですね!
ラル「賭けは私の勝ちだね!」
レオン「ちぇ~」
ティール「今更だけど、後輩に集る先輩ってどうなの?」
ラル「これは勝負の世界! 先輩も後輩も関係なぁぁい!」
ティール「うわぁ……」
アラシ「大人げない気もするけど、それに乗ったレオンもレオンだ。自業自得」
ティール「手厳しいね、アラシは」


《A side》
話をしていた間に休憩時間、準備時間が終わったらしく、再びモニターから選手紹介が聞こえてくる。先程と変わっていなければ、リュウ先輩ではなく、キャスのおどおどした紹介が始まるはずだ。
『つ、続いて準決勝、だ、第二試合! こちらは従姉弟同士での対決になりましゅ! まずは、トーナメント戦では鮮やかにゃ、技を決めてくれました! 体術の達人! 今回も鮮やかな技を見しぇてくれるのでしょうか!?』
……と、予想通りの紹介で、ここまでキャスが喋った。すると、割り込む形でリュウ先輩の声が響く。
『シィィエル・シルフゥゥゥゥゥ!!』
『…………つ、続いてこちりぁはどうでしょう! 片や体術でこちらは植物の達人! ミ─』
『ミユゥゥゥゥル・ノフェカァァァァァ!!』
こちらも、最後までキャスが紹介できなかった。結局、美味しいところは先輩の総取りである。これにはキャスも納得がいかなかったのか、不満げな声が流れた。
『せんぱぁぁい! せめて名前までは言わせてくださいよぉぉぉぉ!!』
『すまんな☆』
……これ、会場にいる全員に聞こえちゃってるんだけど、その辺はどうなんだろう?
「あの二人、実力的にはどっこいどっこいな気がするんだけれど、実際はどうなのかなぁ? パワー系のシエル君が勝つと思う? 知的なミユルちゃん?」
ラルの疑問に俺達は黙ってしまう。ラル的には何でもない単純な疑問だったんだろうが。
「みーちゃ……え、シエル? どう、なんだろ。アラシはどう思う?」
「シエル……か? 接近戦を考えるとさ。いやぁ、でもアリア相手にシエル来るかぁ?」
「ミユルの方が対応力はあるだろ。俺はミユルかなぁ……いざってときに何とかしそうな……?」
幼馴染み三人による憶測が飛び交う中、いまいち理解していない先輩二人は首を傾げる。そりゃ、そうか。
単純な力比べなら、そちら方面が得意なシエルに軍配が上がることが多い。が、今回の目的はそこではない。二人が大会に参加したのは、セラおばさんの講演会のチケット欲しさ。つまり、優勝しなくてもいいのだ。
「副賞目当ての二人がわざわざ真剣勝負して勝ち上がるかって言われると、微妙なんだよな。多分、分からないように手を抜くと思う」
「にしし。相談したりとかな~」
「なるほど。どっちがアリア相手にするのか、したとして、どう終わらせればいいのかって話をするんだ?」
「そゆこと! ティール、分かってる~♪」
ミユルの武器は知識とそれを上手く使う技術、シエルは竜族特有の身体強化による己の力が武器だ。性格や実力なんかは似ている二人だが、得意分野は全く違う。だからこそ、この試合の行く末は俺達にも見当がつかない。
憶測が飛び交う中、準決勝の開始を告げる鐘が鳴る。
画面に映るシエルに武器の類は見受けられない。対するミユルの手にはお得意の鞭……ではなく、数本の投げナイフだった。二人、各々のスタイルを掲げ、同時に動き出す。ミユルは構えたナイフを投げるも、腕を竜化させたシエルに弾かれた。が、これは一種の目くらましだったらしく、ミユルは別のナイフを構え直し、シエルとの距離をつめて接近戦へと持ち込んでいく。
「おりょ? ミユルちゃん、鞭じゃないんだ~」
「あ、多分、逆鱗対策だと思いますよ?」
竜族の首の根本辺りに逆鱗と呼ばれる箇所があり、そこに触れてしまうと、暴走状態へと変化してしまうのだ。そうなってしまうと、誰も手が付けられなくなってしまう。しかし、長年の付き合いがあり、いとこ同士の二人だ。そんな事態になんてならないだろう。
「なぁんか、二人とも楽しそうだよな~」
レオンの指摘に俺はもう一度モニター越しに二人を見る。
鬼気迫る接近戦にも関わらず、ちらちら映る二人の口元には笑みが零れていた。楽しくて仕方がないとでも言うように。その理由はすぐに思い当たった。
「そういえば、二人が戦うのは久々なんじゃないか?」
「ん~……あ、確かに。前に戦ったのって高校入る前の模擬戦以来じゃね?」
「そっか! じゃあ、楽しくなっちゃうのも仕方ないね♪」
一応、参加者は真剣勝負を望んで挑んでいた思うのだが……ま、強者が第一ってことで。
「ラルちゃん」
「? なんですか、リアさん。今、いいところですよ?」
このあとのこともあってか、思いの外真剣にモニターで観戦していたラルにリアさんが肩を叩く。
「ラルちゃんもそろそろ準備した方がいいと思うわ。あの二人、いいところで決着つけると思うし……その後にラルちゃんとフォースくんにはやることがあるよね?」
「…………行かなきゃ、駄目?」
「ふふ♪ お姉ちゃんと約束したでしょ?」
ニコッと笑いかけるリアさんにラルは観念したようにゆっくりと立ち上がる。それに合わせて、座っていたティールも立ち上がる。
「フォースには連絡しておいた。投げ出すことはないと思うよ。こっちは任せて」
「うん……」
いまいち元気のないラルにティールは首を傾げる。この期に及んで、「やっぱり嫌です!」と言い出すのだろうか。結構、ギリギリまで嫌がっていたから、あり得ない話ではないが。
……なんて思っていたのもつかの間。
何を思ったのか、ラルはティールに抱き着いたのだ。さっきみたいな悪ふざけの雰囲気は全くなく、だ。そんなラルに呆れる様子もなく、ティールは優しく頭を撫でる。
「…………大丈夫。頑張っておいで」
「足りない」
「え~……そうだな。ラルはぼくの大切なパートナーで、自慢の親友。……じゃ、駄目?」
「もっと」
「欲張り。……ぼくは君の傍にちゃんといるから。…………で、どう?」
「妥協しよう」
「偉そうだな。……ま、嘘じゃないよ」
と、そこでお互いにぎゅっと強く抱きしめ、パッと離れる。ティールから離れた後のラルはいつも通りの自信に溢れる笑顔を見せていた。トートバッグとセツを手にし、ドアノブに手をかける。そこで俺達の方を振り返り、ウインクして見せた。
「うっしゃ! 見てろよ! 華麗なラルちゃんを見せてやんよ!」
「はいはい。頑張って~」
ラルが去った後、リアさんを除いた三人はティールの方を見る。俺達の反応は当然と言えよう。いきなり目の前であんなの見せられたら、問い詰めたくもなるだろ!
「な、なんだったんだ!?」
ティール! ラルとデキてんのか! そういうことか!?」
「私もぎゅっとしたかったです!」
あ~……一人だけ、なんか違う気もするが、スルーだ。
「彼女は自信過剰な性格じゃないってことだよ」
レオンのいじりにも反応を見せず、ティールはそれだけを答える。
意味が分からす、詳しく聞こうとするも、モニターが騒がしくなり、そちらに意識がいってしまう。丁度、準決勝第二試合の勝敗がついたところだったようだ。
そして、勝者として映ったのは、深緑の髪をなびかせた少女─ミユルだった。
『しょ、勝者! ミユル・ノフェカ先輩です! そして、十分間の休憩後、次はいよいよ決勝戦です!』
『そして! ここでいよいよ決勝戦で登場するゲストについての説明をしていくぜ!』
ぐっ……あの二人の行動も気になるが、今は決勝だ。ゲストが誰なのかは知っていても、ルールは全く知らないからな。
『ま、まず……休憩の間に決勝進出者のお二人には、くじを引いてもらいます!』
『そのくじには、ゲストの二人の名前が書いてある。決勝では引いたくじに書いている名前のゲストとタッグを組んで、決勝に挑んでもらうぜ!』
つまり、ラルかフォースと組んで、アリアとミユルは戦う、のか。だから、ラルは助っ人と呼称したということか。
『な、なお、観客の皆様には決勝戦開始にて、ゲストの紹介をさせてもらいますので、もう少しお待ちくださいね……?』
『でも、ノーヒントってのもつまんないから、こっそり情報を教えるぜ!』
『え……ちょ……先輩、そんなのは台本には全く─』
先輩のアドリブ病がここで発動し、キャスの言葉を遮って勝手に進めていく。答えを知る俺達にはあまり関係ないが。
『ヒ・ン・トは~~~……ファンクラブもできているあの有名な探検隊のメンバーだぜ! 誰なのかは色々と想像してくれよな!』
『ちょ! 先輩!? それ言っちゃいますか!?』
ほぼ答えにも聞こえるようなヒントを言ってしまう。まあ、何も知らない人からすれば、あれこれ想像できる……のかもしれない。
『ということでこれから休憩に入るぜ! みんな! トイレは今のうちに済ましておけよな! ということで! しばしのお別れだ!』
『ちょ! せんぱぁぁい!』
なんつーか、じ、自由だな……やっぱり。



~あとがき~
ようやく決勝だ。

次回、決勝戦! アリア、ミユルはどちらと組むことになるのか……?
うし。正念場です。

最後ら辺のラルのティールの行動に意味があるか聞かれてもあれです。困ります……(笑)
一応、ラルにはラルなりの事情がありますが、特に語らずにいこうかと思います。今回の解答になりそうな理由は前にちろっと言ってますし。答えはこれ! とはなってないので、分からないかもですが。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第95話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で楽しんでる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
適当な回を皆様に見せてしまった……なんか、申し訳ない……(後悔)
ラル「するくらいなら、やらなきゃいいのに」
んでも、ウィル兄さんは出したかったからね。ええねん! 自己満足!
ラル「……」
とまあ、前回に引き続き、アラシ君視点でお送りしまーす!


《A side》
今までの展開からして……あと、アリアと馴染みである俺から見ても、残念ながらイツキ先輩に勝機はない。それは救護室のメンバーも理解しているらしく、ラルがモニターを見つつ、ニッと笑う。
「レオン君よりは長く戦えるに一票! 百ゴールドかける!」
「じゃあ、俺はその逆に百かける~♪ イツキ先輩の実力知らねぇけど♪」
お前、同じ予選グループだっただろ。
「そーだけどさ、別に剣を交えたわけじゃないし? 俺はイツキ先輩の戦いっぷり見てねぇもん。アラシとの試合も自分のことでいっぱいいっぱいで、観戦してなかったしー」
こいつ……!
「イツキ先輩は強いよ。その辺の高校生よりはな。……けど、今日のアリアには誰も勝てねぇわ」
トーナメントで交えたとき、部活での練習試合とは違う気迫を感じた。あの人の引き出しは多いし、何かと器用だ。きっと、才能と多くの練習が実を結んでいるんだろう。
「耐えろよ、キーくん。褒美がかかってるぞー」
「ほんとに叶える気あるんだね、ラルは」
「もち! 私が見込んだ子だよぉ? 約束は守ってもらわないと、ね?」
俺の知らないところで、ラルとイツキ先輩とで何か話があったらしい。それが何なのか予測はできないけど。
『それではー!!! 試合開始!!』
リュウ先輩の掛け声とゴングの音が鳴り響く。
それと同時に、アリアはレオンのときと同様、大きな魔法陣を出現させ、二頭の龍を思わせる氷……“氷双龍”を繰り出す。螺旋状に天へと登り、イツキ先輩めがけて突進をした。レオンは避けきれなくて、あえなく全身凍結という秒殺コースだったが、イツキ先輩は、二本の片手剣を使って上手く滑らせて、龍の突進攻撃を避ける。
「お、一撃避けた」
「イツキさん! すごいですっ!!」
しかし、まだ龍の攻撃は終わっていない。アリアは氷龍を操り、イツキ先輩へと攻撃を仕掛けるつもりらしい。
『…………斬らせてもらいますっ!!』
しかし、それも予測済みだったのか、先輩は二本の剣を横平行に構え、体の捻りを利用した斬撃……所謂、回転斬りを放つ。その攻撃で一頭の龍は破壊され、素早いステップで体勢を整えてから、立て続けにもう一頭の龍も連続斬りで破壊する。目にも止まらぬ、斬撃。イツキ先輩の武器はスピード……?
「へぇ……いいね、キーくん。それは予想外だよ」
破壊された“氷双龍”の氷達がばらばらと雨のように降ってくる中、イツキ先輩は剣を構えたまま、アリアを見据える。そこに油断はない。……ない、が。
『……♪』
フッとアリアが小さく笑みを見せる。
その瞬間、イツキ先輩の背後から新たな魔法陣が出現する。その魔法陣から、氷でできた獅子が飛び出し、イツキ先輩に飛びかかった。背後からの不意打ちにも関わらず、イツキ先輩は即座に反応した。ライオンの方を向くところまではよかったものの、流石に反撃までは間に合わず、ライオンに突進され、その追加効果として氷漬けという結果となった。試合続行不可と見なされ、アリアの勝利で終わる。
『準決勝、第一試合を勝ち上がったのは……アリア・ディーネ! 予選、一回戦と変わらずに相手を圧倒する氷の刃を見せてくれたぜ!!』
「まあ、知ってたよね。番狂わせなんて起きないと、誰もが予想してたよ。キーくん、お疲れ。……ツバサちゃん、キーくんを頼んだよ」
「は、はい……」
レオンのように全身氷漬け状態で運ばれてくるためか、ラルはその解除をツバサにお願いする。また、流石に、この一日だけで同じようなものを見ているツバサも少しだけ苦笑を浮かべて返事をした。
「なんか、ハードル上がらない? 決勝もどうせアリアが勝つんでしょーって思われてるってことだもんね。ラル、大変だねぇ」
ティールのその他人事はムカつくけど……確かに、決勝で瞬殺展開はあかん……どうにかする」
いかにして引き延ばし、もしかして……? と思わせられるか、そんな高等テクが必要になるのか。生徒側のミユルにはあまり関係ないが、ゲスト参加であり、生徒会のラルには難しい課題なのかもしれない。
「そーいや、結局、ゲストってどういう扱いな訳? って、これは聞いてもいいやつ?」
レオンが首を傾げ、問うた後に少し戸惑ったように笑う。俺達は関係者ではないから、聞くのはマナー違反というか、よくはないんだろうが、確かに気になるところではある。
「……ゲストはゲスト。決勝でのお助け要員みたいなもんだよ」
ラルが少しだけ考え、その結果、大雑把に答える。分かったような、分からないような答えだ。そして、ラルは更に詳しく答えることはなく、隣に座るティールへと目を向けた。
「ねえ、ティール。この話の流れで言うけど、セツちゃんを貸してほしい。私、まだ死にたくないんだよね」
「……狡くない?」
「お前は私が死んでもいいと」
「そうは言ってない」
「なら、差し出せ。献上しろ。私が死んでしまう前に貸せ!!」
「なんで脅迫してんの!?……ま、ぼくは構わないけどさ。セツもラルにならちゃんと従うから」
「えへ~♪ ティール、だいすきー!」
冷めた表情から一転、ぱっと笑顔を咲かせ、ティールに抱きつく。突然の行動にも関わらず、ティールは特に動じずに目の前のノートパソコンを眺めていた。この一連の流れをレオンがニヨニヨと眺めているが、俺は特に突っ込まない。巻き込み事故はごめんだ。
「はいはい、ありがとう。……ってことだから、出てき……あ、駄目。パソコン壊れる。ラル、ちょっと離れて」
ティールに言われ、ラルはティールから離れる。
話からすれば、セツとやらはなんからの武器か何かなんだろう。
セツという正体を知っているらしいリアさんがくすりと笑う。
「ラルちゃん、考えたわね~♪」
「いやぁ……実のところ、ゲスト参加って話を聞いた辺りから考えてましたよ。アリアちゃん来るなら必須かなぁって。雷姫だけでもいいけど、保険はほしい」
「ふふ♪ まあ、まだどうなるか分からないけれどね?」
「どっちに転んでも必須です。死にたくないんですって!」
おばさんの結界内で死ぬなんてないと思うけど?
俺の疑問が聞こえたのか、表情に出ていたのか。理由は定かではないが、ラルが不機嫌そうにこちらを見る。
「私、寒いの駄目なの!」
あ、そっち……?
突然、ふわりと冷気を感じ、そちらに目を向けると、ティールがどこから取り出したのか一つの剣を握っていた。全体的に透き通った水色をしており、氷を思わせるような剣。宝飾品のようにも思える美しいそれを、持ち主であるティールは無造作にラルに差し出した。
「はい。どうぞ」
「やったー! よろしくね、セツちゃん!」
ラルは大事そうに両手で抱え、剣ににこやかに話しかける。その様子を冷ややかな目で見ていたティールだったが、驚いたように体を震わせた。
「え?……あ、いや。お前はるすば……やめろ! うるっさい!! 黙れ。まずは範囲を絞れ」
「ありゃあ……ごめんねー? スイちゃんは応援隊長として見ててくれると……あ、そーね。しりとりね……これはしりとり関係ないかなぁ……?」
な、なんだぁ?
呆然とする俺達をよそに、二人だけの会話が始まってしまう。リアさんだけは理解しているみたいで、楽しそうに笑っていた。
「あらあら。喧嘩が始まっちゃったかしら?」
「リアさ……先生、ラル達は……?」
「そっか。アラシ君には聞こえないのね。今、二人が話しているのはスイちゃんとセツちゃんっていう剣なの。セツちゃんはラルちゃんが持っている剣で、スイちゃんは……ティールくんの傍に立て掛けてあるあれね」
リアさんが指差す方向に一つの剣がある。深い青色の鞘に納められたこちらも綺麗な剣だった。あの二つがティールの武器ってことなんだろうか。
というか、剣が喋る……?
「正式名称は水の聖剣、水泉。氷の聖剣、雪花よ。各聖剣の固有能力は色々あるけれど、全体の特徴として、聖剣は波長の合う人に声を届け、意思を伝える能力があるの。まあ、言ってしまえば、長年使い込まれて道具に意思が宿ったみたいなものよ♪ 聖剣は激レアの武器で、探検家や探検隊からすれば相当なお宝よね~」
そ、それを二本も持ってるティールって……!?
「あれはティールくんの持ち物っていうよりは、ティールくんのお家が所有してる物ね。現状の持ち主は……ティールくんのお父さんだったかしら?」
確か、ティールは海の国の王子……ってことは、国の所有物? それを易々と他人に渡していいのか!?
「だ、大丈夫だよ……ラルだから。スイもセツもラルはお気に入りだからね。こいつらは単純だけど、人を見極めるのは得意だよ」
「私は本来の持ち主ではないからね。ティールに呼び戻されれば、私の手元からいなくなるよ」
そ、そういうこと……なのか?
「ほへー! ティールってなんか凄い人なんだな! よく分からんけど~♪ よろしくな、スイ、セツ! 今度、面白い話聞かせてくれ~♪」
レオンのあっけらかんとしか感想にティールは困ったように笑う。
「ぼくは普通だよ……というか、レオンには聞こえていたの?」
「まあな! 楽しそうな二人の声、ちゃあんと聞こえてたぜ~? てぃーのばかーって」
「私も聞こえましたよ~♪ 聖剣さんの声、初めて聞きました! とっても可愛いですね♪」
レオンだけじゃなく、ツバサにも聞こえているらしい。俺とは相性が悪いのか、全くだ。水と氷なんて、炎とは相性最悪だし、そんなもんなのかもしれない。
「嘘!? だから、範囲絞ってって言ったのに!」
「いや、しまえば? スイちゃん。そうすれば周りは遮断できるよ」
「それだ。……いや、それじゃないよ。ぼくだけしんどいじゃん」
「じゃあ、このままティールの恥ずかしエピソード公開となりそうなこの空気に耐える?」
「無理! 戻れ、スイ!」
ティールの一言に、スイと呼ばれた水の聖剣は泡のように消える。俺も聖剣なんて初めて見たけど、喋ったり、煙のように姿を消したりと不思議なものだ。
「セツは喋るな。言葉発したら即戻すぞ」
「戻さないでよ。私の命に関わるー!」
「ギリギリまで戻すって話」
「じゃあ、いいか……」
……凄いんだろうけど、ラルやティールの接し方見るに、凄さを感じねぇな。悪いけど。



~あとがき~
とりあえず、茶番八割、本筋二割って感じでしたね。

次回、シエルVSミユル!
これは……どう進めようかな(汗)
と、投稿してからのお楽しみで!!

スイとセツ、ついにアラシ君達の目の前にも出てきましたね。何度も説明している気もしますが、復習だと思ってお聞きいただければと。ちなみに、これからもちょこちょこ出てくると思います。
リアさんにはスイとセツの声は届きません。届きませんが、リアさんの操る精霊(ゴーレム)を通じて意思を汲み取ることは可能です。精霊万能説。
今回はリアさんとアラシ君には聞こえてませんね。けどまあ、聞こえなくても問題ないような話をしているので、問題ないです。

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第94話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわやわやする物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
長かった一回戦が終わりました。今回からは準決勝。ぱぱっとやって、決勝で長く楽しみたいものですね……
ラル「長くやりたくないんじゃないの?」
……まあ、本音はな…バトル苦手だから(笑)
でもまあ、頑張りますよ!!


《A side》
つい成り行きで滞在していた救護室をいつものメンバーと共に出て、食べ物の屋台が密集しているエリアへとやってきた。
「あーちゃんはーっと……?」
制服の白ワンピを揺らしてキョロキョロと辺りを見回すツバサ。手分けして捜してもいいが、アリアのことだ。どうせ、気に入った屋台のご飯を買って食べてるはずだ。その辺の屋台を見て回ればすぐに見つかるだろう。
「んお? あれ、フォースじゃね? 誰かと一緒だけど……アリア、か?」
レオンが示すところには確かにフォースがいた。生徒会の腕章をつけてはいるものの、規定のブレザーは肩にかけるだけというスタイルだ。
ついでに捜し人だったアリアと、知らない男性がいる。アリアはフォースとその男に囲まれているものの、自分のペースを崩さずに焼きそばを頬張っていた。いや、大会終わってないし、次はお前の番なんだけどね?
「よお、いつもの。お前らのお仲間連れてけ」
「フォースさん! どーして……?」
「そりゃ、選手で次が出番なのにのんびりしてる奴を見たら、生徒会としては確保しておくだろ。最悪、鎖で連行するつもりだったよ」
フォースならやりかねん……アリア相手にそれが通用するのかは分からないが。
「なあなあ! フォース、その人は?」
「……あ? あー……シラナイヒト」
「かーくん!? 俺とかーくんの仲でしょ! もー! 他人行儀なんてひどぉい! 初めまして! かーくんのお兄ちゃんでっす☆」
え、何……この底抜けにテンション高い人……? フォースの兄貴?
お兄ちゃんと名乗る男は確かに見た目はフォースに似ている。髪型も目の色も。ついでに背格好もだ。服なんかはラフな格好ではあるが。しかし、髪の色だけは乳白色だ。ツバサみたいに真っ白ではないが、この人が魔法使用者ならツバサみたいに白に分類されてもおかしくはない。それくらいの髪色だった。
「かーくんも早くラルちゃんとこ行きなよ~? 出番あるのはかーくんも一緒だよ?」
「現地集合で事足りる。さっさと持ち場つけ。おれの傍じゃねぇだろ。すぅんとこ行けや、くそ兄貴」
「酷いなぁ? お兄ちゃん、泣いちゃう」
「男泣きとか見苦しいから知らないとこで泣いて。じゃ、そゆことで」
「泣き虫かーくん時代あったでしょぉぉ!! でも、そんなかーくんも好きだよ!」
「うるっせ! いつの話だ! こちとら、仕事あんだよ!! 帰れ!! ハウス!」
それだけを言い残して、フォースは人混みの中へと消えてしまった。嵐のような時間が経ったけれど、この間、ほんの一、二分くらいだったではなかろうか……?
「あ、えーと、フォースのお兄さん?」
「うん。かーくんのお兄ちゃんだよ?」
……突っ込まねぇぞ。
「フォースには言えなかったけど、アリア見つけてくれてありがとうございました。……アリア、飯食ってないで、さっさと行くぞ」
「……」
全く動じねぇな。分かってるのか、ここで不戦敗なんてことになったら、食べ放題どころじゃないんだが。
俺が無理矢理、立たせようとすると、アリアの目がキラリと光る。ヤバイと思ったが、すでに時遅し。アリアの拳をもろに受け止めて、空を舞っているところでした。
「わあぁあ!? アラシ!!」
「ありゃあ……ま、かーくんにもフックかましてたからにゃあ~♪ 血気盛んだね」
お兄さんが言うには、フォースも洗礼は受けていたらしいが、あいつに傷一つなかった。つまり、全部、避けたんだろう。……マジか。
顔面着地とはいかないまでも、全身で着地するはめに。そして、レオンが笑いを堪えているのは忘れない。覚えていろ。
「いってぇ……な、なんで、俺が……」
「やり方の問題じゃないかしら? 任せて♪」
パチッとウインクを見せ、ミユルがアリアに近づく。ミユルの方をちらりと見るも、気にせず、たこ焼きを食べ始めている。本当にマイペース。
「アリアちゃん、さっき、シルと先輩の試合が終わったの。だから、今度は準決勝。つまり、アリアちゃんの出番なの」
「そーだよ、あーちゃん! 急がないと、あーちゃん負けちゃうよ! 優勝賞品! もらえなくなっちゃう!」
「……!! タダ券!!」
バッと立ち上がり、ダッシュで会場方面へと走っていく。迎えに来た俺達は放置だ。残された俺達はアリアの後ろ姿を呆然と眺めていた。
ミユルとツバサの言葉でスイッチ入ったから、あのまま試合には出てくれるはず。一応、準決勝で不戦敗という最悪な事態は免れたわけだ。それにしても、だ。
「アリアのやろー……!」
「いいじゃん♪ 未来は守られたってことで♪」
お前、なんもしてねぇだろ。
「フォース先輩のお兄さん、アリアちゃんがご迷惑をおかけしました。ごめんなさい」
一連の流れを興味深そうに眺めていた、フォースの兄さんに、ミユルはぺこりと頭を下げた。そんなミユルに、兄さんは、ニコッと柔らかな笑顔を返した。
「ううん。俺はすっちーの頼まれ事ついでに、かーくんに絡んでただけ。……まあ、ケアルちゃん達に会えたのは嬉しい偶然だったけど。……大会、頑張ってね、ノフェカちゃん♪ それと、シルフくんもね」
ずっと大会を見ていたのか、ミユル達のファミリーネームを口にする。フォースの兄さんなら、知っててもおかしくはないが。
「それと……ナイスファイト♪ フェルドくん」
ぽんぽんっと頭を叩かれ、お兄さんとやらは屋台方面へと消えていく。すっちー……─フォースがすぅって呼んでいたから、多分─ステラに頼まれたというものを買いに行くんだろう。
「不思議な人だな……あり? アラシ……お前」
「え? あ、え……治ってる?」
アリアのパンチで受けた傷が綺麗さっぱりなくなっていた。疲労感は流石にそのままだが。
「ツバサ……?」
俺がツバサを見ると、驚いたように首を横に振る。
「私は何もしてないよ! それに魔力は感じなかった……けど、技って感じも……なかった、と思う」
……後で、ラル達に聞いてみるか。ラルの名前を出したってことは、少なくとも正体は分かるはずだ。

アリアの次に試合があるミユルとは会場入口で別れ、俺とツバサ、レオンの三人は救護室へと戻ってきた。中に入れば、変わらずラルとティールがモニターを見ながら談笑をしているようだったが、そこに新たに一人加わっていた。
「ししょー! おかえりなさい!」
「あら、ツバサちゃん♪ ただいま。それに、アラシくんとレオンくんも。大会お疲れ様」
本来のゲストであったヒナギクに付き添っていたはずのリアさんが救護室へと戻ってきたようだ。笑顔で俺達を出迎えてくれる。
「なんかすいません。成り行きでここに居座って」
「ふふっ♪ いいのよ。もう大会もトーナメント。大勢の怪我人なんて来ないから。それに、そこに生徒会の二人も居座っていることだし、私は気にしないわ」
「嫌味ですか、リアさーん? そんなに私とラブラブできゃっきゃっできる話をしたいんですか? 付き合いますよ? ネタはたっくさんありますよぉ」
おおう……リアさん相手に恐れないな。
ラルの意地悪な笑みにリアさんは何を思ったのか、顔を赤くする。
「もうっ! ラルちゃんは少し黙っていなさいっ!」
「はぁい♪」
「……ねえ、この編成、どうなってるの?」
「ん?……初期メンツの大部分が休憩エリア付近の警備隊と合体してる」
「あー……なるほど」
仕事はするんだな……
「全く……皆、好きなところ座っていいわよ。ゆっくりしてってね」
「ありがとうございます。……そいや、先輩達は」
俺が思わず呟いた疑問に、聞こえていたのか、ラルがちらりとこちらを見て、口を開いた。
「ユーリ君は会場警備、リリちゃんは会場外アシストに行かせた。激動の予選も終わったからね。もうここも大量の人は必要ないから、休憩させるか、別動隊に再編させてる」
「……仕事はできるんだから。ラルちゃん」
「へへぇ♪ もぉっと褒めていいですよ! リーアーさんっ♪」
せ・ん・せ・い! いつもリア先生って呼びなさいって言っているのに。……ま、今更かしらね」
「イグさんもリアさんも諦め悪いですねぇ……どうせ、この関係もあと一年もないんですから、いいでしょう?」
「よくないだろ。先生つけなよ、ラル」
ため息混じりに注意するティール。それに顔色一つ変えず、ニヤリと笑って答えた。
「なんか、気持ち悪い……急に呼び名変わるって気持ち悪くないですか、ティール様~」
「様言うな。今呼ばれると、別のスイッチ入る」
「入った方が有能説あるぞー」
ラルとティールの会話中にツバサがラルの肩を控えめにとんとんっと叩いた。それに気づいたラルがツバサを見る。
「どしたの? ツバサちゃん?」
「あの、全く関係ないんですけど、ラルさんに聞きたいことがありまして……お邪魔じゃなければ、いいですか?」
上目遣いにお願いされ、ラルの表情はふにゃっと柔らかくなる。
「いいよー! ツバサちゃんのお話なら、いつでも大歓迎だよー!」
「さっき、あーちゃんを捜しにいったとき、フォースさんとそのお兄さんに会ったんです」
それを聞いた瞬間にラルとティールの表情が固まる。
「なぜ……何ゆえ?」
「知らない……ステラ達の保護者役?」
「あ、なるほど……なるほどぉ!? 人使い荒くねぇ!?」
「君に言えた義理じゃないよ……?」
「……それはそれ! えっと、そのお兄さんはウィルさんって人。フォース君のお兄さん……みたいな人だよ。血は繋がってない」
へえ? あんなに似てたのにか?
「え、ウィルさん、どんな見た目してたの」
「どんなって……ほぼフォースと見た目一緒だったぞ? 髪の色が違うくらい? なあ?」
レオンの言葉に俺とツバサは頷く。ざっくりした説明だったが、二人には伝わったらしく、納得したように「あ~」と呟いた。
「それに、フォースのことをかーくんって」
「それは……まあ、愛称みたいなもんだよ。フォースって名前に由来してないだけさ。かーくん呼びするのは、ウィルさんだけ。ぼくらは一度も呼んだことないよ」
ふうん?
納得したような、していないような。他にも聞きたいことはあるが、ラルがふとモニターを見上げる。
「……っと。さてさて、そろそろ準決勝だね」
そう言われて、モニターを見上げてみる。丁度、イツキ先輩とアリアが入ってきたところのようで、恒例の放送部による選手紹介だ。もう、必要ない気がしているのは、俺だけだろうか。
『えっと……まずは冒険科三年! よしぇ……予選では秒しゃ、秒殺!……トーナメントでは、相手を瞬しゃす!……瞬殺してきたブラックホール! アリア・ディーネ先輩です!』
『おいおい、相棒~? そこは、アァァリア・ディィィィネェェェ! だろ!』
『はう! それは無理だってさっき話したじゃないですかぁぁ!!』
一回戦のハイテンションとは変わり、キャスが紹介をしているらしい。たどたどしいものの、言いたいことは分からなくはなかった。リュウ先輩とのどうでもいい話が入ってしまっているが。
『つ、続いて! 予選では奇跡的に生存! トーニャ……トーナメントでは、後輩を打ち負かした獰猛? な……剣術師……?』
『イィィィツキ・カグラァァァァ!』
『ちょ! 先輩! 勝手に僕の台本変えないでくだないよ~!! なんですかこの前口上! イツキ先輩に失礼じゃないですか!?』
『問題ない! なぜなら考えたのは上級生の俺だからな!』
『えぇぇぇ!!』
とんでもない前口上を言われているイツキ先輩だが、大して気にしていないらしい。一回戦のあれで抵抗しても仕方ないと思ったのかもしれない。
「相方、リュウ先輩に対してたじたじじゃねぇか」
「にゃは♪ でも、客受けは良いっぽいからこのままでもいいんじゃないのか?」
……なのかなぁ?



~あとがき~
決勝前でだれにだれまくってる!
やばい!! 頑張るよ!!

次回、アリアVSイツキ!
予定では、今回に捩じ込むつもりでした。無理でした。

わーい! ウィルお兄ちゃん(人ver.)登場です!
本来の見た目はまた違います。具体的には、髪が長いです。(大雑把)
ここでも神様してます! よろしく!!
今後、出てくるかは知らないです!((
今回出した理由は、フォースとウィルのくっだらない会話をしたかったから。それだけです。
裏の目的とはないです。(多分。)

ではでは!