satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第30話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でしっちゃかめっちゃかしまくる物語です。本編とは一切関係ありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバックだ!
前回、ラルとフォースの茶番を見せました。あれでもやりたいことを削った方です。
ラル「もう少しツバサちゃんを真似して遊ぶシーンが入る予定でした」
フォース「長いんでカットしてるぞ」
書いてもないけど、やった事実は残ってるんだ。
ラル「まあな!」
最後はラルよりも真面目な彼に任せましょ!


《A side》
ツルギのイタズラ事件の翌日。少しの覚悟をしつつ学校に来たが、それは全くの杞憂だったらしい。昨日よりは騒がれず、平穏な一日を過ごし、すでに放課後だ。考えてみれば、昨日はほとんど落書きをする余裕などはなく、後半は俺達との鬼ごっこをしていた。しかも、ツルギは意識しているのか、いないのかは知らないけど、人通りの少ない場所を敢えて選び、人に見られないようにしていた。見つかりたくないっていう意思の現れ、だったのかもしれない。
「アラシ! 生徒会室行こー!」
いつも通り、ぱたぱた駆け寄るツバサは、明るい笑顔で楽しそうだ。
「おう。……いつにも増して帰り支度早いな」
「昨日、ラルさんとお話出来なかったし、お膝の上にも座らせてもらってないもん」
あ~……どういうことなのかちょっと聞きたい。膝の上?
「う? ラルさんがおいでって言ってくれるから、そこに私が座るんだよ。そのとき、優しく撫でてくれるの♪」
自慢げに話すツバサだが、俺は少しツルギの気持ちが分かった気がした。こんなのを永遠に話されたら、嫌になるというか、どんな反応をすればいいかは困るな。……うん。
「今日は俺も部活に顔出さないと。昨日行けなかったし」
「えと……ごめんね、アラシ。昨日、部活あったのに」
笑顔だったり、自慢げにしていたり。かと思えば、今はしゅんとしている。忙しいやつだな。
「あ~……いや、ツバサが謝る必要はないぞ。俺も……あと、レオンも好きで付き合ってたんだし。これはラル達も同じだと思う。ツバサを助けるつもりでやってたんだと思うよ」
ぽんぽんと頭を優しく撫でてやれば、ツバサはゆっくりと顔を上げる。少し不安の色は拭えないものの、こいつが罪悪感を感じる必要はどこにもない。昨日、ラルが言った通り、誰も悪くないんだから。
「そんな顔してたら、ラル達に心配かけるだろ。ほら、レオンと合流しようぜ?」
「……うん。ラルさんも笑顔がいいって言ってたもんね!」
「そうそう。笑ってた方がいいぞ。……行くか」
「はーいっ♪」

程なくしてレオンと合流し、─そこでも一応、ツバサの件を聞いてみたが、俺と似たような感じだったようだ─そのままの足で生徒会室へと向かった。扉をがらがらっと開けると、すでにラル達はいて、珍しく書類仕事をしているらしい。
「やっほ~♪ なんか、忙しそう?」
「あぁ、いらっしゃい。騒がしくてごめんね?……フォース、計算出来た?」
出迎えてくれたのは、ファイルを片手に持ち、何かを探しているらしいティールだ。そこはいつも通りだけど、普段、読書しているフォースが、何枚もの書類を見て、片手で電卓を叩いている。少なくとも、俺は仕事をしているフォースを見るのは初めてだった。
「まだ。……ん~……おい、ラル。ここ、どうにかなねぇ?」
「その質問、何回目だよ!? ならねぇわ! それが最低ラインだよ!」
そして、ここまでイライラしているラルも珍しい気もする。付き合いの長いティール達には珍しくもないかもしれないが、付き合いの浅い俺達はニコニコしていて、仕事? 何それ~……とふざけているラルの姿の方が見慣れていた。だから、今の状況が不思議で仕方がない。何か急な仕事でも入ったんだろうか?
ティールさん、何かありました……?」
「昨日の件を報告したら、警備体制強化の話になったらしくて、それの資料とか作ってるの。ラルがいきなり校長室から帰ってきたと思ったら、これだもん」
それって、ラルが仕事を持ってきたってことか?
仕事から逃げるのがデフォルトなラルがそんなことをするとは思えないが、ティールが意味もなく嘘をつく訳がない。ってことは、本当にラルから仕事をもらってきたってことになる。
「勉強すればよくね? 私らが考える必要ないよね。お勉強! 大事!」
「魔法式出来ないお前に言えんのか」
「親方に言われたから二つ返事したけどさぁ! 私だって専門外だよ! 魔法なんて知るか!! フォース君、得意なんだから頑張ってよぉ~?」
お、親方……? 誰? 話の流れからして、教師の誰か……なんだろうけど。
「頑張ってますけど、コストがねぇ?」
「みゃあぁぁ……あ、フォース君。美術部への備品補充、どんくらいあった?」
「そっちの数字は出した。……あ? ねぇな。おれ、ティールに渡したっけ?」
「え、あ、ぼくだっけ? えぇっと、待って」
話があちこち行ってるから、何が何だか……
呆然としている俺達をよそに、フォースがこちらを見た。どちらかと言えば、ツバサに目線を合わせていた。
「ツバサ、傷心気味の会長を癒してやれ。朝からあんな調子だからな~」
「ふえ!? は、はいっ!」
呼び掛けられたツバサは、とりあえずフォースに言われた通りにラルのところへ駆け寄り、パッと抱きついた。やられた側のラルは、少し驚いていたものの、そこはすぐに順応してツバサを抱き締めた。
「ツバサちゃぁぁん」
「よ、よく分かりませんが……私もお手伝いします、ラルさん♪」
「うぅっ! 私の天使は今日も優しいよっ!!」
俺ら、出て行ってもいいかな……
一応、黙って……というか、聞く余裕もなく、会話に割り込まずにこのままそっとここを出た方がいい気がしてきた。話を聞いても、内容は分からないし、聞いても仕方ない気もする。
若干カオスな空間を脱出すると、廊下は思いの外静かだった。生徒会室がうるさいだけか。
「なんだったんだろー? 迎えに来るときに聞けるかなぁ?」
「どうだろう。聞いても俺達に出来ることなんてないだろ。多分」
「忙しくなったのは、ティールが言ったので全部なんだけどな」
「うわぁ!? びっくりした! フォース!?」
いつの間にか俺の隣に立っていて、さもこれが当たり前だろうみたいな空気を出していた。全く気配を感じなかったし、音も聞こえなかった。忍者か何かなのか、こいつは!
「今回の落書き事件……って言っていいのか分からんが、あれ、教師の耳にも届いててな。ツバサにあらぬ疑いがかかってたわけよ」
俺の疑問なんて知るはずもないフォースは、どこから聞いていたのか、今の状況になった理由を話してくれた。
疑いって目撃情報のせいか。まあ、白い狐族の女の子なんて、ツバサくらいだから、仕方ないと言えば仕方ないが。……あいつがそんなことするわけないのに。
「その疑いを晴らすには、真犯人を取っ捕まえて、ほら、違うだろって見せるのが一番だったんだが、ラル的にはんなこともしたくなかったらしくてな。……色々あって、ツバサ以外にも出来るってことを証明して、今後、似たような事件を起こさないように対策を練る方針になったんだよ。その土台……モデルだな。それを考えるように頼まれたってのが真相だな」
そ、その色々ってのが重要なんじゃ。
が、色々の部分は言う気がないらしく、話の続きもないのか、そのまま黙ってしまった。それでも、今の状況になった理由はなんとなく察した。
「うちのツルギがご迷惑をおかけしてんなぁ~? フォースも仕事してたもんな?」
「あれは今回使った備品の補充するために予算を練り直してた。うちの備品の中に落書きを消す道具なんて置いてないから、美術部から借りたんだ。借りたものは元通りにして返さないとね」
レオンの言う通り、ツルギが滅茶苦茶迷惑かけてる。これ、ツバサのお母さんは知ってんのかな。
「理事長? どうかな。ラルは言う気ないみたいだけど。まあ、備品については、生徒会の経費として落ちるだろうから、問題はない。……おれの個人的な意見としては、全部知ってる気がするよ。抜け目ないからな、理事長さん」
フォースは会ったことあんだな?
「一応は。だが、片手で足りるくらいしか話した経験はない。ラルの方があるとは思うが、それでも事務的な話くらいだって言っていた」
「ツバサの母さん、忙しい人だもんな? そんな人が今回のことを把握してるのも不思議な気もするけど」
「レオンの言う通りだな。ま、そんなこんなで朝からてんてこ舞いって感じさ。今日は授業も出ずに生徒会室で永遠に書類仕事してる。あの優等生ティールですら、付き合ってるくらいだから。……各担当教師からの許可は貰ってるけど、息が詰まる」
「それは、お疲れ様。本当に」
俺からの労いの言葉にフォースは苦笑で返してきた。それから、思い出したようにあっと小さい声を漏らす。
「ラルから、ツバサには言うなって言われてるんだ。責任を感じて欲しくないんだと。……ってことで、お前らも内密に頼むわ」
「なんかごめんな。ここまで発展するとは俺もアラシも考えてなかった」
「勝手に仕事増やしたのはラルだから、気にするな。それに、きっかけがツルギの一件だっただけで、警備体制に関しては、遅かれ早かれこうなってたと思う。形は違えど、な。んじゃ、部活頑張れよ、お二人さん」
ひらりと手を上げ、生徒会室へと戻っていった。これは、俺達が罪悪感を抱いていても、仕方がないものなのかもしれない。そんなものを感じているなら、別の形で感謝を示すべきなんだろう。
「いい先輩達だな。ツバサも幸せもんだ♪」
「……あぁ。多分、俺達も」
「にしし♪ 確かに。なら、その先輩に言われた通り、いつもの日常を送るべきだよな♪ ってことで、また、後でな~」
レオンがいたずらっ子っぽい笑顔を浮かべたと思ったら、さっさと自分の部活へと向かっていく。俺もレオンに習って、さっさと向かうべきだろう。そして、部活の先輩で生徒会の一人、イツキ先輩にも一言言うべきだよな。俺は見かけなかったけれど、きっと、何らかの形で関わったかもしれないのだから。
「……っよし! 俺も行くか!」



~あとがき~
拙いですが、これにて閉幕とさせていただきます。ツルギ君のお話はこれで終わりです!

次回、女子会します。
再び、私のメインキャラ五人の休日風景をお見せします。女子会します、でなんとなく想像つきますよね。

次回から《〇 side》は取り払います。今後、ころころ入れ替わるような描写をする際はこの表記を使うと思いますけどね! 少なくとも、次回の休日編はいらないですね。

いらないようなごちゃごちゃした回になってしまいましたが、前回のあの回想で締めるわけにもいなかったので、取り付けた次第です。
いや、でも、これでもアラシ君とイツキの話すシーンも考えてあったんですが、カットしました。だって、長いし←

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第29話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で茶番劇を繰り広げる物語です。本編とは一切関係ございません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
とりあえず、犯人を教頭先生に突き出さず、ツバサちゃんではないとお伝え出来ました……って感じかな。今回は私がただ楽しみたいだけの茶番多め蛇足回です。
ラル「今後もたくさんのネタがあるっていうのに無駄に書くんですね」
楽しいのが一番じゃん!?
フォース「おれは楽しくない」
ラル「私は楽しかった」
フォース「だろうね!?」


《L side》
フォース君に女装っぽいことをさせた経緯を説明しよう。時間は少し遡って、校長室へ向かう前だ。
教室で協力を受け入れた彼に、私は「脱げ」と言ったのだが、それを聞いたフォース君は全力で殴ってきた。……いや、避けた。ギリギリ。
「っざけんな! 何が面白くて脱がなきゃなんねぇの!?」
避けた反動で床に尻もちをついて、彼を見上げる体勢になった。クールな彼にしてはそれなりの反応が貰えて満足なのだけれど、手が出るとは思わなんだ。これからは気をつけよう。
スカートの裾を軽く叩きながら立ち上がると、お願い内容の補足をする。
「……言葉足りなかった。ツバサちゃんに変身させるために脱いで欲しかったの」
「おれが? ツバサに?」
「ちっこくなれるじゃん。そこからメイクをすればいけるかなって。ツルギ君は魔法で化けていたけど、私らには出来ないからさ」
「あぁ……なるほど。……おれに女になれと。それっておれにカルマ時代の姿になれってことだよな」
「うん。可愛いあの姿に!」
制御者という特別な立ち位置にいるフォース君は、今まで自分の担当してきた継承者の姿に変化する事が出来る。要は、複数の容姿に変化可能なのだ。その中でも、彼が制御者ではなく、継承者として過ごしていた時期─その頃はカルマという名前を名乗っていたらしい─があり、その姿にもなれるのだ。そこら辺の込み合った話は教えてくれないが、何回か見せて貰った経験はある。あの身長なら、ツバサちゃんよりも少し小さいくらいだろう。一番、近いのはカルマ君ということなのだ。
「男子に女装させるのか……変態が」
「中身は可愛げのない成人男性だろうが!! 文句言うな、年長者!」
姿は子供になっても、フォース君がどこかへ行くなんてのはない。見た目だけが十歳そこらの少年になり、人格はいつも通りの彼だ。
「だからだよ!! え、じゃあ何か。ツバサの声まで模写すんの?」
ふっふっふ~♪ 出来るのは知っているぞ。数ある特技の中に声帯模写があるもんなぁ?
「マジで? 本気なの」
「うん。本気! ほらほら、小さくおなりよ~? そんでもって、お着替えだよぉ~?……真面目な話、実際に他人がツバサちゃんになれるって見せた方が早いからさ。ご協力お願いしますよ」
「……チッ。覚えてろよ」
冷たく鋭い目で睨んだ後、フォース君はパチンと指を鳴らす。すると、一瞬のうちに長身の青年は、幼さの残る可愛らしい少年へと姿を変えた。紅目とさらさらで少し長めの薄いブラウンの髪はそのままだが、流石に着ていた服までは縮まない。床にぐしゃぐしゃに広がってしまっている。辛うじて、インナーとして着ていた黒のシャツだけ着ている状態だ。それでもかなり動きにくそうではある。
「あはっ♪ いつ見ても可愛い~♪ あ、聞きたかったんだけど、服とかってどうにもならないの?」
「なるわけねぇだろ。魔法じゃあるまいし。ん、でも、あっちで着てる服はサイズ変わるかも……」
話しながらも、フォース君は床の制服をてきぱきと畳み、手の届く椅子の上に置いた。机も届かないわけではないが、椅子が目の前にあったから、という理由だろう。
「そいや、ツバサを真似るのはいいけど、服は?」
「あ、それは大丈夫。偶然にも魔術科の制服が手元にあるんだな~♪ サイズも小さいの!」
「なんであんの。趣味? 着ないのに?」
やめろ。憐れんだ目で見るな! 違うから!!
「リムが今後の衣装の参考にしたいからって、うちの学園の制服が見てみたいらしくって余ってる服を借りたんです! なんだろうね。学園もののシナリオでも考えてるのかな」
私が出入りする探検隊ギルドで働いているリムは、基本、明るく礼儀正しい女の子だ。そんな彼女は劇の台本を書いて、それを演出、衣装まで施すという壮大なご趣味をお持ちである。不定期ながら、ギルドの催し物で発表なんかもしていて、これがなかなか好評なのだ。必ずと言っていいくらい、手伝わされるのだが……個人的に、あまりいい思いはしていないのが現状だ。ちなみに、私だけでなく、ティールやフォース君も被害は受けているので、時折、逃げるための作戦会議を開いている。ステラちゃんやリーフちゃんも劇は手伝うけれど、彼女達は楽しんでいるので、逃走作戦には不参加だ。
まあ、今回の話に一切関係のない、どうでもいい話なんだけれど。
「ふーん? 前回はお姫様と敵国の王子の悲恋がテーマじゃなかった?」
「そうそう。よくあるやつだけど、最終的にメインが全員お亡くなりになるんだよね。……とまあ、そんな依頼があったので、手元にあるんだよ。小さいサイズとはいえ、少し大きいかもだけど、そこは何とかしてくれ」
「んー」
制服の入った紙袋を手渡すと、フォース君は躊躇いもなく、シャツに手をかけ、着替えようとしていた。見るのは気まずいので、そっと目を逸らす。別に小さい子の裸なんてしーくんで見慣れている。フォース君とはいえ、見た目が幼い男子なので、仮に見たところで何とも思わない。が、殴られそうなのでやめておいた。ここは安全にいこう。
「んー……ワンピ、大きい。……なあ、リボンとかない? 腰辺りで上げて誤魔化すわ」
「私のでよければ」
「首のチョーカー的な奴? じゃあ、それ貸して」
チョーカーにしているつもりはないけれど、首周りに巻いているから、チョーカーの部類なんだろうか。……リボンをほどき、フォース君に手渡した。器用な彼は、適当な長さに合わせると、くるくると腰にリボンを巻き付けた。ふんわりしたワンピースの出来上がりである。
「うへぇ。ローブもでっかい……」
「そればっかりは我慢してよ。……いやぁ、でも、可愛いな。フォース君、実は女の子なんじゃ」
「……あ?」
いつもなら、咄嗟に謝りたくなるくらいの眼力だけど、今はそうでもない。見た目って大事だな。
「ごめんて。ちょっとくるっと回って。くるっと」
「何の意味があるんだよ」
文句を言いつつも、下手に時間がかかるよりはましだと思ったんだろう。素直にくるりと一回転をしてくれた。ふわりとワンピースが広がり、より彼の可愛さが引き立っている。
「うん! ここからは私の仕事だね! パパっと済ませちゃうね!」
「そうだな。今撮った写真は消そうな」
「そんなことより、ここに座った座った! まあ、フォース君、可愛いし、ウィッグ被って整えたらわりといけそうだなぁ」
端末はそっとポケットにしまい、フォース君の長めの髪をある程度まとめていく。男子にしてはかなり艶のいい髪だ。特に手入れをしている訳ではないんだろうから、彼の体質なのだろう。
「無視すんな! ウィッグなんて持ってるの?」
「流石にない。どうにかして?」
「とことんおれ頼みな作戦。……ほれ」
「便利な力だねぇ。ついでに制服も創っちゃえばいいのに。出来るんでしょ?」
フォース君の能力は力の具現化だ。自分の持つ力そのものに何らかの形を与え、可視化する。制御者の力の一つらしいそれは、結構なんでも創れてしまうのだ。普段は武器を創り、それを用いて戦うという使い方なのだが、必要があれば武器以外も創り出す。例えば、今見せたように、ウィッグを一瞬にして創ってしまうとか。
「やだ。面倒くさい」
まあ、そう言うと思ってた。
時間をかけてやっても、フォース君の機嫌を損ねるだけなので、ここはてきぱきと準備を終わらせた。必要があればメイクで誤魔化そうと思っていたんだけれど、ほぼ必要ないレベルで可愛い。小さい子は皆可愛いんだろうか。それとも、私の周りが完璧なだけなんだろうか。
「……よし! 完成! うん。完璧! ほら~♪」
「うっわ……」
フォース君の前に手鏡を向けると、彼自身はかなり引いていた。が、私的には満足のいく仕上がりになった。ツバサちゃんと比べると、髪のふんわり感が足りないが、それでも、ゆるふわに仕上げてある。これで男の子だって言い当てられないだろう。
「ちょっとツバサちゃんっぽく喋ってみてよ。仕草とか、声の調子とか真似てさ!」
「はあ!? あー……んんっ……『こ、これくらい? えーと、ツバサっぽく。……ラル、さん、私をぎゅってしてください……?』 こんなも……ぐえっ!」
「ひゃあぁぁぁっ!! 可愛い! 天使!!!」
あまりの完成度の高さに、言われた通り思い切り抱き締めた。きらきらの上目遣いでそんなお願いをされてしまったら、お断りなんて出来るはずがない。例え、中身がそこそこ一緒にやって来た男でも! 気心の知れた相手だとしてもだ!
「……“チェーン”」
彼お得意の技の一つ、“チェーン”で体の自由を奪われ、フォース君はひらりと後方へ宙返りをしながら飛び退いて、私から距離を取る。
『うふふ。ラルってば、変態さんなんだから~♪』
ツバサちゃんに絶対に言われないだろう台詞のオンパレードかよ!! レア度高いな!?
「そのまま、お姉ちゃんって言って。ついでに好きって言って欲しい」
『……ラルお姉ちゃんのこと、だーい好き♪ だけど、今はポンコツ過ぎると思う』
呆れつつもリクエストに応えてくれるフォース君、大好き……さて。もう少し楽しみたいところではあるけれど、時間は有限だ。またの機会に置いておこう。
「フォース君、いけそうだね。んじゃあ、最終決戦といこうじゃありませんかー!」
「いきなり真面目になるお前が怖い」
私からすれば、可愛い女の子ボイスからクールな男性ボイスに変化した今に若干の驚きを隠せませんけどね。



~あとがき~
茶番回でした。

次回、後日談といきましょう!

今回、フォースが声を変えているところを分かりやすく示すため、『』を使用しました。
そして、ラルのポンコツ具合が凄まじいです。なんだろう。もうこれ、一種の変態だよね←
ツバサちゃん……というか、可愛い子が絡むと終始こんなもんなんでしょうね。やるときはやりますけど。

ラルとフォースが話していた劇については特に何も考えてません。ラルが主役だったかもしれませんし、別の人だったかもしれません。ご想像にお任せします。

ではでは!

空と海 第210話

~前回までのあらすじ~
ピカが一時離脱し、ポチャメインで今回行きます。頑張るぞい。
ポチャ「頑張るのって、作者じゃなくてぼくだよね?」
ピカ「だね。……というか、このまま寝てれば終わってないかな」
無理だね。さっさと起きなさい!
ピカ「鬼め」
ポチャ「悪魔」
ええええー!!??


ピカから離れ、標的のガオガエンを視界に捉える。セツを強く握ったかと思えば、ふっと手放した。セツは地面に落ちることはなく、空気に溶けるように姿を消した。
「さあ。ぼくが相手してやるよ」
セツが得意とするのは氷を使った攻撃だ。相手は炎タイプで、正直なところ、スイを使った方が有利になる。しかし、無防備なピカに不利なセツを置いておくわけにもいかない。自分の動きで攻撃の得手不得手は操作出来る。
「“ハイドロポンプ”!」
体勢を整えていたガオガエンに有利な水タイプの技をヒットさせる。そこに追い討ちをかけるため、ポチャは水で弓を造り出し、弦を引く。
「……“水弦”!」
狙いを定め、水で造られた矢を三本射る。自身の能力を使い、本来であればあり得ないような軌道でガオガエンを狙っていった。少しでも攻撃の手を緩めると、敵をピカの元へ許してしまう気がして、立て続けに矢を放つ。
ヴァルツとピカが手こずる相手を自分一人でどうにか出来るとは思っていない。ピカも時間稼ぎで十分だと言っていた。それは、ポチャを信じていないわけではなく、それほどの相手であるという判断だ。つまり、あくまでも倒すのではなく、相手の注意を引くめに動く。
「セツ!」
「ウ、ガァ……」
空気に溶かしたセツに合図を送ると、ガオガエンの周りに冷気がまとわりついた。その冷気で相手の動きが鈍っていく。
セツとスイを手元に置いていない今、ポチャの攻撃手段はほぼ遠距離に限られる。銃や能力で作り上げた弓がそれに当たる。ポチャは一度、水の弓矢を消すと、どこからか拳銃を取り出し、足下を狙い撃った。二度の銃声が響き、ふっと息を吐いた。
『てぃー、このひと、まだぴんぴんしてるー!』
「……だろうなぁ」
敵にとって、ポチャは何番目かは不明だが、少なくとも初めてではない。が、それでも力任せに突っ込んできたり、手負いとはいえピカを退ける相手だ。何らかのカラクリはあるだろうと思っていた。そのカラクリについて、ピカから聞いていないから、なんなのかは分からない。それでも、厄介なのは分かる。
「“あやつり”! セツ、凍らせろ!」
『はいなっ!』
再び能力で弓矢を作り、素早く射つ。ガオガエンの周りにある冷気が水の矢を凍らせ、水から氷へと変化させた。氷の矢はガオガエンを射抜いて、微力ながらもダメージを負わせていく。しかし、ガオガエンは何も感じないのか、氷の矢を抜き、地面に投げ捨てる。そして、セツを振り切らんとばかり、ポチャへと剣を構えて突っ込んできた。このままでは突きの一撃にやられるだろう。
「体力ありすぎ……というか、回復? あのお化けみたいな感じなのかな」
それならば、どこかに弱点が存在する。そこを探しだし、攻撃を通せば今まで以上のダメージを負わせられるだろう。
「質より数で勝負するか。……“氷水撃”」
最初に攻撃したものと同じ技を繰り出す。氷と水の矢を一斉に飛ばした。相手の反応を考慮し、水の矢の割合を多めにしている。攻撃がヒットするも、相手を怯ませる程度の効果しかなく、あれだけでは止まらない。彼は冷気のままである、愛剣に語りかけた。
「セツ、戻ってきて」
『あいっ!』
セツを本来の剣の姿に戻すと、ガオガエンの攻撃に備え、腰を落として防御の姿勢を取る。ピカとガオガエンの間に割って入った際は、二振りで受け止めたが、今はセツのみで受けきるしかない。そして、仮に受けきった後、どのように反撃するのかも想像が出来ていない。
「ガアァッ!」
「くぅっ!」
『むー!』
大きな衝撃と共に敵の剣を受け止めた。しかし、ここから指一本も動かせないくらいの重さで、跳ね返すのも、受け流すのも難しい状況である。この均衡を保てるのは今だけで、崩れてしまうのも時間の問題かもしれない。
『てぃー! おもいよー』
「ぼくも、同じ気持ちだよ……っ!」
そもそも何倍も大きな相手の攻撃は重みも段違いであり、弾き返すのも一苦労なのだ。普通は回避に専念するべきなのだが、あの突進を避けて、ピカへ標準を変えてしまったら取り返しのつかないことになってしまう。そのため、ここは何としても攻撃をしのぎ、更なる攻撃の一手を繰り出す必要がある。
『うりゅぅー! こ~わ~れ~る~』
「! “ふぶき”!」
愛剣の叫びを聞いて、咄嗟に“ふぶき”を放つ。接近した状態での“ふぶき”は炎タイプであろうとも、相手の体を足元からみるみる凍らせていく。流石に危険だと感じたのか、ポチャへの攻撃を緩め、退避しようと体をよじらせる。
そこをポチャは見逃さなかった。かなりの圧がかかっていたのに、それが少しだけ緩んだのだ。“ふぶき”を止めると、剣の攻撃へと移る。
「ってやあぁぁあっ!!」
完全に押し切り、瞬時に体を捻らせて、回転斬りを繰り出す。ふらつく相手に休む暇を与えぬよう、片手剣一つで出来る限り斬擊を与え続ける。
「氷華連擊っ!」
突きの攻撃と斬擊を組み合わせ、十連擊技だ。本来、スイとセツの二振りで繰り出すのだが、今、ポチャの手に握られているのは一振りのみ。それでも、どうにか技は全てヒットしていた。ガオガエンを吹き飛ばすほどの技を出したものの、体力の限界なのか、ポチャはその場から動けなかった。
「も、これ、双剣、技、なんだけど……」
『おー! てぃー、すごぉい』
「腕が死ぬ……上がらなくなってきた」
ガオガエンの剣を数十秒受け続け、無理矢理、双剣技を片手剣技として繰り出したせいで、体に相当な負荷がかかってしまったのだ。手が痺れ、上手く剣が握れなくなっている。今はセツを地面に軽く刺してあるため、倒れてこないが、これを今抜くと、地面に落としてしまうだろう。
『あんまし、てごたえなかったにゃぁ』
「言うなって……知ってるから。なんなの、あいつ。死ぬの? あれ」
『うーみゅみゅ……わからにゃいのら』
「ゾンビって頭落とせば止まるかな。……届かないなぁ」
ピカと大して身長が変わらないため、ガオガエンとの身長差もかなりある。踏み台か何かがなければ上へと登れないし、ジャンプも届きもしない。
「! 戻れ、セツ!」
『はわわっ!』
地面に刺していたセツを消し、ポチャは“アクアジェット”でその場から離れた。理由は一つだ。ガオガエンがかなりのスピードで突進してきているのである。
「グアァァア!!」
「怖い怖い怖い!! 待って!? あれでまだそこまで動けるの!? お化けじゃん!」
足で走るよりも技を使って逃げた方が得策であるため、そのまま“アクアジェット”を使って、その場から……というよりは、ガオガエンから離れようと試みていた。幸いにも、ターゲットはポチャに向いているらしく、ピカの方には目もくれない。
「ガアァアッ!!」
「情けないけど! 攻撃手段ないから!」
『てぃー、つっこめー!』
脳内で能天気なセツの声が響く。突っ込んでダメージが与えられるなら、そうしている。が、今までの結果からそれは難しいのは明白だ。直接突っ込むのは悪手だろう。
「してみてもいいけど……多分、あの大剣に斬られて終わりだって。でも、逃げてても仕方ないんだよね」
『ぴーのとこ、いかれちゃうかもよ』
「そうなったら、突っ込むよ……死んでも、ピカは守るって決めてるから」



~あとがき~
そろそろ終わらねぇかなぁ~……(n回目)

次回、まだまだ続くよ。VSガオガエン戦!

ピカとかフォースの影に隠れてますが(多分)、ポチャも強いんだよーって話をしたかった。頑張って一話書きました。さっさとピカ起こして、二人で共闘しろよって思いつつも、ポチャ一人でどうにかこうにかして欲しかったっていう願望だけで作ったけど、これがなかなかの苦行でした。全く書けなかった。

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第28話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で適当に暮らしている物語です。本編とは一切関係ございません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回から、ラルとフォースパートみたいに二人だけで行動しています。最後、脱げとか何とか云ってましたが、フォースの貞操は守られるのでしょうか?
フォース「貞操って女性に使われる言葉じゃ……」
ラル「男女間の関係でも使うよ。確か」
あ。じゃあ、フォースとラルの貞操
フォース「……意味合い変わらないか、それ」
ラル「超えてはいけない一線の話になりそう~♪」
フォース「ねぇから。全年齢対象作品だよ、これ!!」
まあ、冗談はこれくらいにして、始めていきますぞ。
フォース「作者が言い出したのに」
ラル「何もないので安心してご覧くださ~い!」


《L side》
私は校長室の扉をノックし、返事も待たずに入室した。放課後になってそれなりに経つのに、校長はいるし、教頭もいた。いるのを知っていてここに来たのだけれど、こうも一緒にいるのを見ると、いつ仕事をしているのか気になるところだ。
「お話があって来ました。今日の昼に話した件についてです」
こう切り出すと、教頭は渋い表情で私を見つめる。校長は相変わらずの笑顔で、話し始めるのを黙って待ってくれていた。対照的な二人であるが、そんな関係の方が上手くいくかもしれない。今、全く関係ないけれども。
「単刀直入に言います。今回の落書きの件、ツバサ・ケアル……様は犯人ではありません。以上です」
呼び捨てにしようとしたら、滅茶苦茶睨んできた。え、この後も様付けを強要されるの? 適当なところでやめてやる。
「状況から判断した結果、ツバサ様に得がありませんので、別の犯人がいる可能性を提示します」
「損得で動くものではないと思うが? ストレス発散とか、下らない理由の可能性もあるんじゃないのかい」
「教頭先生は、彼女がどういった立場なのか分かっていて発言していますか。理事長の御子女で名家のお嬢様です。そんなお方が名前に傷……母親の顔に泥を塗る行為をするとでも? あなたはそうおっしゃいますか。へ~……理事長様の育て方が悪いってかぁ? そんな風に思ってたんだぁ~?」
「そ、そうは言ってないだろう!? じゃ、じゃあ、仮にお前の言う通り、理事長の御子女ではないとしよう! たが、目撃者がいるんだぞ!?」
はいはい。そう来ると思っていたよ。さて、仮説に乗ってきたが、つくづく、チョロい奴だ。簡単に人の口車に乗ってくれるんだもん。楽でいい。……こんな考えは悪役のするもののような気もするけれど、私からしてみれば、教頭が悪役だし。教頭からすれば、私が悪役なんだろう。論争なんてこんなものだ。教頭は向いていない気もするが。
「では、その目撃情報が信じるに値しないという証拠を見せますよ。……いいよ。入ってきて」
私の合図で入ってきたのは魔術科の女子制服であるローブと白ワンピ姿の、私より十センチ以上も低い女の子だ。白髪のふんわりしたボブカットで愛くるしい笑顔を浮かべている。教頭を視界に捉えると、そちらに顔を向けた。
「こんにちは、教頭先生。校長先生♪」
「え、あ……?」
彼女から発せられたのは紛れもなく、ツバサちゃん本人の声である。戸惑っているのは教頭だけで、校長は笑顔を崩さない。これは私の想像に過ぎないが、校長は最初から結末を知っているんだろう。根拠はないが、まあ、強いて言うなら、校長の性格と観察眼だろうか。見ていないようで見ている人だし。今回は、本当に小さい案件であるし、校長自ら口出ししなくても収束すると考えていたんだろうな。
ただ一人状況を理解していない教頭は慌てた様子で問い詰めてきた。本人だと思っているらしいく、先程の会話を聞かれたとでも思ったのかもしれない。
「おい、ラル!? どういうことだ! 本人が来るなら……」
「本人ではないですよ。ほら、尻尾も耳もないじゃないですか。……普通に喋ってあげなよ。趣味悪いぞ」
「……ははっ。お前の指示だった気がするんだがなぁ?」
あれ、そうだっけ。
「フォースか!?」
「どーも。教頭に見せるためだけに姿変えてやったんだから、感謝しろよ。口で言っても信じないってうちの会長が言うもんで」
可愛いらしい姿とは裏腹に、大人の男性特有の低く落ち着いた声が聞こえてきた。正体を知っていた私ですら、見た目と声にかなりのギャップがあって若干、引き気味である。やってくれと頼んだのは私なんだけれども。
「フォース君のこれは魔法でもないけれど、魔法を使えばツバサちゃんになりきることは可能です。そうすれば、学園内では生徒、教師、教員からツバサ・ケアルとして認識されるし、学園にも侵入可能です。……これを見たんだから、周りからの評判がよく、私達生徒会の仕事もきっちりこなしている彼女がやったと考えるよりも、外部犯を疑う方が現実的だと思いません?」
「言っとくが、ツバサ以外の生徒がする得がないのは分かるよな。ツバサは有名人だし、近くにナイト様もついている。そんな相手に喧嘩なんて売らねえってのが、生徒会としての考えってことだ。……反論あるか?」
ん~……ナイト……あ、アラシ君ね。
「た、確かに、ラル達の言う通りだが……なら、犯人は」
「外から来た侵入者、ですね。あ、でも、すでに解決済みですんで、探り入れる必要はないですよ。解決してやるって言ったでしょう。こんな案件に教頭先生を巻き込む必要はないと思って、こちらで処理をしました。事後報告で申し訳ないです~」
私の報告に教頭はとうとうフリーズしてしまったらしい。パンクしたのかな。
「二人ともご苦労様! 大変だった?」
ずっと黙っていた校長がパッと笑顔を見せながら話しかけてきた。喋るなんて思ってなかったため、少し驚いたが、どうにか反応した。
「い、いえ……そこまでは。それで、校長先生。今回の件は」
「うん。こちらのミスもあった。治安のいいこの国で魔法とか使って、潜り込まれる可能性は考えてなかったからね。対策を考える必要がありそう。……任せていいかな? 魔法は専門外だからさ~」
「はい。こちらでいくつかシステムを考え、理事長に打診します」
「うん♪ 出来たら見せてね~! ノウツ……教頭先生はボクに任せて、二人は帰って大丈夫だよ。気をつけてね!」
じゃあ、お言葉に甘えてここいらで切り上げようかな。
フォース君と目配せをし、校長室を後にした。フォース君の着替えがあるから、生徒会室へ行く前に自分たちのクラスへと戻る必要がある。
「高くつくぞ。これ」
そう言うと、フォース君はワンピースの裾を軽く持ち上げつつ、冷たく紅い目を向けた。ツバサちゃんは青と黒のオッドアイだが、フォース君は完全に両目とも紅。そこだけはカラコンを入れるとかしないとどうにもならなかったのだが、そこまでする必要もないと思ったのだ。ってことで、完璧なツバサちゃんではないけれど、パッと見、ツバサちゃんに見えなくもない。いや、これをするまで苦労したんだよ?



~あとがき~
面白そうなので、フォース君の変身シーン(回想)書きましょう(笑)
次は茶番多めでお送りするですよ。

次回、ラルとフォースの茶番。

この話が終わったら、また日常編と称して休日回やりたいです。男子と女子に分けるか、探検するかの二択ではあるんですけど。探検はもう少し後かな。話をまとめてからやろう……行き当たりばったりはよくない←
日常編でアラシ君達が出てくるのは先になりそう……彼らの休日回をやってもいいけど、私が好き勝手するわけにもいかんのでなぁ……

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第27話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で好き勝手に日常を過ごす物語です。本編とは一切関係ございません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、無事にツルギ君のイタズラを解決しました! 和解出来たな!
アラシ「……でき、た?」
ラル「今回の件は和解したけど、私はツルギ君に嫌われたままなんだよね」
アラシ「……まあ、元気出せよ」
ラル「いや、元気ですけど」
小さい子に嫌われるラルも珍しいね? ドンマイ。
ラル「いや、全く気にしてないんですけど!?」


《L side》
ツバサちゃん達、四人が教室から出て行くのを確認すると、どっと疲れが出てきて、思わず机に突っ伏した。
「っだぁぁ~……はぁ……あぁぁぁ……」
疲れた。いつも以上に仕事をした。近年稀に見るレベルで頑張った。偉いぞ、私……誰か褒めて……
アラシ君達と一緒に帰ってもよかったけれど、ツルギ君はツバサちゃんと話したいだろうし、私がいると邪魔になるだろう。ぶっちゃけ、やり残したことなんて何もないんだけれど、時間を空けてここを出ることにしよう。
私の考えを察したのか不明だがティールとフォース君もこの場に残っていた。ティールは私が残ると言ったからだろうが、フォース君はなぜだろう。帰ると思っていたんだけれど。そんな彼から話しかけられた。
「ラルにしては優しい解決策だったな。要はお咎めなしっつーことだろ」
「あー……さっきも言ったけど、ツルギ君に罪はないよぉ……悪いことはしたって自覚してくれれば問題ない」
根本的な原因は私にある気もするが、今後のツバサちゃんに対する態度が変わるわけではない。そのため、怒りの矛先を私個人に向ければ、周りに迷惑もかからない。今回の件はこれで終わりと見ていいはずだ。
「ラルもフォースも詳しく話してくれないから分からないけど、なんとなく察したよ。……また、こんな解決策出して。ぼくの気も考えてほしいんだけど?」
適当にぼかして話したせいで、ティールのご機嫌が別の意味で悪くなった。多分、ツルギ君が私関係のイタズラしたって認識をしたんだろうけれど、何もかも終わった後で気づいたところで痛くもない。私が行動する間、知らなきゃよかったんだから。
「言ったものは取り消せませ~ん。ティールにご迷惑はかけませんので、ご心配なく」
「そういうことじゃないでしょ!」
「うへぇ……お説教はお家で聞くよ」
「だから、そういうことじゃない!」
もぉ~……無事解決したんだから許してよぉ……
私の頭上でうるさいお小言が降ってきているけど、無視だ。無視。
ティール、色々言いたいのは分かるけど、お前の彼女、借りるぞ。個人的に話がある」
「え、あ、ぼくの彼女じゃないんだけど……?」
フォース君の助け船なのか、ぐいっと腕を引き上げられ、半ば無理矢理立たされた。そして、そのまま歩き出してしまい、私は慌てて背もたれに掛けておいたブレザーを手にした。そして、突然だったから、ティールも止めるに止められないみたいだ。結局、彼の了承が出る前に生徒会室を出てしまう。
「ちょ、フォース君? ティールと仲良くしてたから嫉妬的な感じですか!? 三角関係始まる!?」
「嫉妬してないし、始まりもしない。あそこで話してもいいなら話してたよ」
えー? ってことは、ティールに聞かれると不味いこと? なんだろう。……うーん?
考えている間に自分達のクラスまで─この時間になっても施錠されていないというのは置いておいて─連れて行かれ、夕日に染まる教室に二人きりになった。扉もフォース君に閉められ、恋愛小説なら、男女のラブラブシーンでも始まるようなそんなシチュエーションである。が、私とフォース君はそんな仲ではないし、今後なる予定もない。単純に二人になれる場所がここだったということだ。
「んで? これからどうすんの。教頭に啖呵切ったんだろ」
近くにあった机に軽く腰掛けたフォース君が質問をしてきた。顔がいいから、そのポーズも様になっていて、より恋愛的なシーンを思い浮かべてしまう。イケメンと二人きりとか、どこの世界だ。フォース君ととか、全くあり得ないんだけれど。
「その話か。解決したからいいかなって思ってた」
フォース君にその話をした記憶はないから、どこで仕入れたのか謎だ。彼の話とは、私と教頭の話についてだったみたいだ。確かに、これは内容的にティールに聞かれるのは面倒かもしれない。
「解決はいいけど、それをどう証明すんのって話だよ。簡単なのは犯人ですって連れてくるのが一番だと思ってたんだけど、お前、ふっつーに帰したじゃん?」
あぁ、そういうことね。うん……うん?
「……うわっ!? そうだよね!? 証明方法までは頭になかったわ!」
フォース君から、優しいとかなんだのちょこちょこ言われていた。うっわ! 今更だけど、遠回しにそれでいいのって注意されていたのか。いやいや、よくない! 実際に目にした私達は解決したという認識だが、それを知らない教頭は未だにツバサちゃんの仕業だと疑っているのだ。
「しまった……当初の目的はツバサちゃんの評価改善だったのに、途中からツルギ君の守りに入ってて忘れてた。明日以降、イタズラ起きなかったら終わったんだってならない……ですかね?」
「あ? なると思ってる?」
……思いませんね。解決したとは思われても、ツバサちゃんだったのか、そうではないのかが不明瞭なままだ。それでは教頭の疑いは消えないし、今後、何かある毎に今回の件を引き出されるかもしれない。ねちっこい教頭なら、やりかねないのだ。つまり、ここで何としても、疑いは晴らすべきだ。
「自分を後回しにするからだ。悪い癖だぞ。反省しろ。自己犠牲がお前の美徳かもしれんが、ティールの胃も考えてやれよ」
「え、関係なくないですか……? いや、待って。そんなことはどうでもいいわ。由々しき事態ですよ、これは。……考えるわ」
解決した……のはいい。期間を設け、同じ様なイタズラが出なければ解決したと言い張れる。が、評価はどうにも……ツバサちゃんが犯人でない証拠の提示が必要だ。証拠か……刑事ドラマなら鑑識さんが指紋やら何やら念入りに捜し出し、物的証拠とやらを見つけてれくれる。今回は物的証拠なんて存在するのか知らないが、少なくとも私の手元にそんな手札はない。……いや、待て。ツバサちゃんが犯人でないというよりは、ツバサちゃん以外の可能性の提示をすれば、いけるか? そうすれば、必然的に彼女は被害者であり、上手くいけば話も逸らせるのでは。
「いけるぞ。大丈夫……私なら出来る!」
「作戦、考えた?」
「うん。多分、大丈夫」
ブレザーを再度、着直して、適当に身なりを整えた。フォース君に言われていなければ、このまま忘れて家に帰るところだった。危ない。
彼の話はそれだけだったらしく、私の答えを聞くと教室を出ようと立ち上がる。この先は一人で勝手にやれということなのだろう。しかし、そうはさせない。フォース君の腕を掴み、無言で止める。
「はあ? 何。説得は一人でやれよ」
「……ここまで来たら、協力してもらおうかなって。というか、思い付いたやつ、一人じゃ無理」
「嫌な予感するんで、帰りたいです」
「一蓮托生だ! ついてこい!」
「嫌です! 絶対嫌だ! お前の考えるの、ろくなもんがねぇじゃん!!」
「まあまあ! 私を助け……じゃないね。ツバサちゃんの未来のためにー!!」
私を助けるなんて言葉につられないのは分かっている。お前なんて知るかと一蹴されてお仕舞いだ。しかし、ツバサちゃんなら……それこそ、純心無垢な少女を見捨てるわけがない!
「面倒だから嫌です」
「薄情者! ツバサちゃんの可愛さ、尋常じゃないからな!? それを近くで見ているのに、それが分からないのか! 普段からステラちゃんやリーフちゃんに囲まれているから、ロリっ子に興味ないのか、薄情者!」
「俺の場合、ロリっ子に興味を持つのは犯罪だろ」
「そうだね!」
「華麗な手のひら返し……」
「いや! でも、ほら。ツバサちゃんは天使だから、お助けするのは義務だよね? しないなんて、神に対する冒涜的なそんな感じだよね。罪だよね。重罪だよね!?」
「おれの奉仕先に天使なぞ存在しないんで。つーか、ツバサが絡むとポンコツになるな。お前」
何を言ってもクールな奴め。くっそ。こうなれば、普通にお願いしよう。悪ふざけなしの面白味のないお願いでいこう。
「本当にお願いします。……フォースさん……いや、フォース様。ご面倒をおかけしますが、ご協力をお願いします」
「……いいよって言わないと、離してくれない感じ?」
「離さない感じです」
「あーくそ。めんっどくさい! いいよ! 分かったよ!!」
「ありがとう! フォース君ならそう言ってくれると思ってたよ♪」
その気になれば、私の手なんて振りほどけるだろうが、フォース君はそんなことはしなかった。いやはや、持つべきものは優しくて気の利く友人だよ。
フォース君の腕を離し、彼と向き合った。かなり面倒だと感じているらしく、嫌がっているのが表に出まくっている。露骨過ぎて逆に感心してしまうくらいだ。
「言う通りにしてくれる? すぐ終わらせるから」
「はいはい。……んで、何すればいい?」
「そうだね。とりあえず、脱げ」



~あとがき~
おかしいな。これで終わらせるつもりだったんですけどね。(すっとぼけ)
長くなったので切りました。許して。

次回、ラルの思惑とは。そして、フォース君は無事に家に帰れるのか←

茶番て楽しいです。一生、どうでもいいことをキャラ達にさせる自信あります。でも、それだと一生終わらない迷宮へと進むだけですからね。やめておこう。
こうどうでもいい茶番となると、どうしても自分のキャラの方がやりやすさはあります。イメージぶち壊そうが、キャラ崩壊しようが何しても許されるじゃん? 作者が絶対じゃん?←
友人宅のキャラ様も一応、茶番OKとか、大抵のことなら許しは出ているんですけどね。難しいところです。いつか、どうでもいい話をラルとしてもらいたいですね。
なんでラルとなのかって、茶番の原因はあいつですもん。主犯格です。友人宅なら、ぶっちぎりでレオン&アラシペアです。アラシ君は特定の人と組ませないと茶番にはならないけど、レオン君はわりかし、誰と組んでもやっていけるタイプだと分析しています。うちのラルと似た感じですね。多分。
……ん? 何の話だっけ?

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第26話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわちゃってる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ケアル兄妹による口喧嘩大会が開幕し、閉幕しました。
アラシ「閉幕?」
レオン「終わるの早かったな♪ それでよかったけど。というか、一時休戦とは言わないんだな~?」
少なくとも、あそこの兄妹の喧嘩はラルが止めたので、閉幕したよ。多分。
アラシ「……多分?」
多分!
アラシ「……」


《A side》
一応、止まりはしたがどちらも少しだけ腑に落ちない様子ではあった。言いたいことがあるような顔だ。しかし、何かを言わせる隙は与えず、ラルは続けた。あいつは、笑顔だけど、どこか冷たい雰囲気を漂わせている。怒っている訳でも、イライラしててそんな空気を出している訳ではないんだけど。
「私はさっき、ツルギ君に落ち着いたかって聞いたんだけどな? でも、ツバサちゃんと言い合ってて、落ち着いたって言えるのかな? あんなに感情的なのに?」
「うぐ……」
ド正論でツルギを黙らせた後、次はツバサの方に向き直る。今度は安心させるような雰囲気を見せていた。
……もしかして、場の空気というか、自分の気配みたいなものを使い分けてるのか?
「ツバサちゃんも落ち着いて? まあ、言いたいことは分かるんだけどね。でも、私はいっつも笑顔で可愛いツバサちゃんが好きだな~♪ 私は大丈夫だから、ね?」
「……う。ラルさんがそう言うなら……はい」
悪口の被害者(?)である、本人に大丈夫なんて言われてしまえば、ツバサは黙るしかなかった。元々、ラルの悪口に関して怒っていたんだし、ここで未練たらたらで言い訳をするやつでもない。
二人がどんな形であれ、とりあえずは収まったと見ていいだろう。が、ツルギは不満そうだし、根本的な解決にはなっていないと思う。ここで一時的に帰したとして、ツルギはイタズラをやめないだろう。ツバサに見つかり、俺達にも見つかったとはいえ、簡単に引き下がるやつじゃない。
こっから、どうにか説得してやめさせないと意味がないけど、ラルは何か考えてんのかな。
そんな意味合いを込めつつ、じっとラルを見た。俺の視線に気づいたらしいラルは、軽くウインクを返してきた。その反応は、手があると信じていいんだよな。……信じるぞ!?
「単刀直入に行こう。ツルギ君。今回のイタズラについてだけど、金輪際、やめてもらおうか」
え、あの、はぁ!? まさかの直球勝負!?
やめろの一言で終わるなら苦労はしない。ここからどうなるのか、最悪、ツバサの母親まで呼び出すような大惨事にもなりかねない。……なんて考えている間も、ラルは落ち着き、余裕を見せながら話を進める。
「この二日で君が行った数々、詳しくは問わないよ。それでも、君が多くの人に迷惑をかけた事実があるのは理解して。身近で言うなら……そうだな。ここにいる全員がそう。本来であれば、アラシ君やレオン君は部活に行っている時間だし、ツバサちゃんは生徒会の仕事をしてくれるはずだった。彼らの時間を取らせた……もっと言えば、奪ったと形容してもいい」
子供相手に容赦ない気もしたけど、間違いではない。ツバサは生徒会での大事な用事はないって言っていたけど、来たら来たで仕事はあったはずだ。俺もレオンも何もなければ、いつも通り部活はあったわけだし。言わなかったけど、フォースもティールも……あと、ラルだって、何かやらなきゃいけない仕事があったかもしれない。それを後回しにして、こんなことに付き合ってくれてる。付き合う義理なんてないのに、だ。
「あ、もちろん、ここにいる人達だけじゃないよ。君のやった件について、後始末してくれた私の可愛い後輩達が沢山いた。……つまり、彼らの時間も盗ったわけだ。……ここまではOK?」
あくまで淡々と、ゆっくりと話していくラル。それをツルギは黙って聞いていた。その表情には、ほんの焦りにも似た何かを滲ませている。
ツルギにしてみれば、困らせたかった相手はラルや構ってくれなかったツバサだったかもしれない。他の人達が巻き込まれたのは、副産物というか、気にしなかった部分。ただそれだけだ。しかし、ラルに言葉にされ、言われてしまって、自覚せざるを得ない状況になって。イタズラはあちこちに落書きや悪口を言うっていう些細なもんだったけど、その小さいもので、大変なことをしたんだと思わされた。……いや、理解させられた、と言うべきなんだろうか。
ツルギの様子を見て、ラルが一瞬、思案する。何を考えてんのかさっぱりだけど、多分、ツルギを悪いようにはしない……はず。
「ん~……勘違いしないで欲しいんだけど、責めてる訳じゃない。ツルギ君がこんなことをした理由も、私は理解しているつもりだから。ツルギ君もツバサちゃんもね、何も悪くないから。ちょっとしたすれ違いがあっただけだし」
「あら、優しい。ラルの尋問なんてこんなもんじゃないもんなぁ。聞いてるこっちが恐ろしいくらい問い詰めるのに」
この空気に耐えられなかったのか、単純に思ったものを口に出したのか分からないが、フォースがぽつりと呟いた。内容は触れたくないけど、レオンが面白そうに笑った。
「へぇ~? どんなのか見てみたいかも~♪」
「レオン、興味持たない。フォースも。茶々入れないの」
ここでその話を広げても意味はないし、脱線しかしない。ティールがさっさと止めに入り、二人は素直に黙った。下手すれば、空気を壊しかねないが、ラルはそんな三人を完全に無視したまま、話を続けた。
「……今回、ちょっとしたきっかけでこんなことになったけれど、そこから派生される可能性については考えて欲しい。仮にイタズラを目撃した人達がツバサちゃんを、間違った印象で受け取ってしまったら。印象なんて、落ちるのは早いけど、取り返すのは難しいものなの。そうなって、ここに居づらくなるかもしれないし、嫌な思いをするのはツバサちゃんなんだよ? ツルギ君はツバサちゃんの悲しむ姿なんて見たくないよね」
ツルギは小さく頷いた。ラルに反発していたとしても、ツバサのことは大好きだから、ツバサのこれからに迷惑なんてかけたい訳がない。
ツルギが理解したのを確認すると、ラルは優しく笑った。
「さっき言った、沢山の人達の迷惑をかけたっていう部分も忘れちゃ駄目だよ。……だから、今後は私によろしくね」
「……え?」
「不満があるなら、私が相手になってあげるってこと。それなら、私の仲間にもツバサちゃん達にも迷惑はかからない。……あ、あんな安っぽい悪口だけじゃなくて、試合みたいな攻撃でもいいよ。武器使用ありでも、組み手でも。魔法対決は私に勝ち目ないから、受けないけど……それ以外なら、なんでもどうぞ?」
流石のツルギもこの提案にぽかーんと口を開けていた。いや、この場にいるほとんどが驚いて、ラルの方を見ていた。ティールだけは、またこれか、みたいな反応ではあるけれど。
ラル個人を狙うのはどうかと思うけど、前半の話はその通りだ。後半の発言は、何か考えがあった……そう思っておこう。ラルはこれ以上は何も言わないらしく、俺に視線を移した。この先は任せたって感じか。……よし。
「ツルギ、ラルの言う通りだよ。……最後の方はともかく、周りに迷惑をかけすぎるな。今回、かなりの人が巻き込まれたのは事実だからさ。お前を知ってる俺らはともかく、関係ない人に迷惑をかけるのは不本意だろ?」
「それは……そう、だけど」
「じゃあ、もうこんなことはするな。いいな?」
「……うん」
渋々って感じではあるけど、嫌いなラルに正論を言われたってのもあると思う。ここで分かったと納得するのも難しい話だ。年頃の男子は難しいなぁ……俺も、かもしれないけど。
ツルギはハッと何かに気付いたように、ラルを見た。少し慌てて取り繕うような雰囲気だ。
「い、言っとくけど、お前に言われたからじゃないからな! ツバサがやめろってうるさいし、アラシが言うからやめるんだからな!! お前のためじゃないから!」
あぁ、認めたって思われたくないのか。ほんっと、難しいやつだ。
「うん。分かってるって♪」
ツルギの心情を察したラルが、ふっと笑う。どうせ、可愛いやつめ、なんて思ってるんだろう。
「さて! 今日はもう遅いし、お開きにしようか。やることもないし! ツバサちゃん達も走り回って疲れたでしょ?」
確かに今日はあちこち走り回って疲れ……ん?
「ラル、なんでそんなこと知ってるんだ? 言ったっけ?」
ラルとはツルギを捕まえたあの教室で会ったはずだし、その間に何があったとか話した記憶がないんだけど。
「あは。ただの勘だよ」
勘でそんなこと当てられるもんなのか? う、うーん? 考えたって分からないけど、もう考えるのも面倒になってくるくらい、今日は色々あって、もうどうでもよくなってきた。
「……いいや。帰るか。ツバサ」
「うん。……お兄ちゃん」
「な、何?」
「一緒に帰ろう? お兄ちゃんのことだもん。じいじに黙って来たでしょ」
「うっ……まあ」
ツルギは、ばつの悪そうに答えた。まあ、んなことだろうと思ってたよ。
「じゃあ、俺らは帰るか~♪ あ、ラル達は? 途中まで一緒に帰る?」
「ありがたいお言葉だけど、ちょっとやり残したことあるから、先に帰って大丈夫。ありがと、レオン君。また今度誘って! 気を付けて帰ってね、四人とも」
そう言うラルと、ティール、フォースは生徒会室に残るらしい。三人に見送られながら、教室を出た。
「ちょっとの間だけど、一緒にお話ししようね、ツルギ!」
「……しょうがないな! いいよ!」
ツバサの申し出に満更でもないように返すツルギ。さっきまで口喧嘩していたのが嘘みたいに仲直りしている。兄妹なんてどこもそんなもんだろうけど、一安心だな。
仲良しな双子を見て、俺とレオンも笑い合う。長い一日だったけど、どうにかなってよかった。



~あとがき~
まだ続くんじゃ。

次回、ラル視点に戻し、通常運転です。今回の後始末をしてもらいます。
ある意味、とばっちりとも言う。

ツルギ君についてちろちろっとご紹介しておきましょう! しなくても話を見てくれれば分かったかもしれませんけど!

ツルギ・ケアル(狐族)
ツバサの双子の兄。赤と黒オッドアイ。妹が大好きでかっこいいところを見せたい、ませた男の子。今回、ツバサの話に頻繁に出てきていたラルに嫉妬をし、事件(というほど大事ではなかったかも?)を起こした。
素直ではなく、天邪鬼な性格をしているが、妹と同様、白くてもふもふしている。若干、さらさらしているらしい。(ラル曰く)

今後も! 出てくると思いますので、出てきたときはよろしくしてあげてくださいね!

誰かを説得するラルのやり方はどこも変わりませんね。本編でたまに見る冷静ピカちゃんでした。

ちなみに、友人のプロットはここまでなんですけど、ラルパートで教頭に啖呵切りましたんで、教頭とのお話しするために私オリジナルパート行きます。教頭と会話をするためだけに! お話考えます!! 感謝しろよな、教頭!!!((

ではでは!

空と海 第209話

~前回までのあらすじ~
ソル、チル、コンの三人組の話が終わりました。三人……というか、ソルからの情報提供でピカは今回の事件の把握と黒幕の目星をつけました。誰とは言わない。
ピカ「ヒントも何もないからねぇ」
ないね。全く出てきたことがないとは言わないけど。まあ、ピカがずっと追いかけてる奴らと言えば……分かるかもしれない。
ピカ「かもね。はっきり出てきたことはないけど」
それな。
ポチャ(……意味なくない?)


電撃による拘束も長くは持たず、数分で破ってきた。そもそも、相手は生きてないのだから、痺れるも何もないのかもしれない。
防戦一方な戦いを強いられ、ピカも突破口が見出だせないまま、応戦していた。否、あるにはあるが、それに踏み込めないだけである。
「ガァア!」
「うわっ! あっぶな」
大剣を大きく振り回し、周りの敵を凪ぎ払わんとする勢いで攻撃を繰り返す。大振りな攻撃が多いのは、武器の大きさ故なのだろう。そして、武器の能力でもある超回復のお陰でもある。それがあるから、死んだ体でも朽ちることも脆くもなく、死兵として残れるのだ。これが乱戦の世であれば、大いに活躍し、厄介で禁忌な術として名を残していたであろう。
『マスター、どうする?』
「いやぁ……どうしよう? 手がない訳じゃないけど、最終手段って奴? やりたくないんだよね」
『しかし、このままではマスターが死んでしまうぞ。いや、マスターだけでなく、周りの者、全員を殺すまで止まりはせんだろう』
バーサーカーガオちゃん」
『ふん。可愛いげのない名じゃ』
自分でもセンスがないと思っていたため、これ以上は何も言わない。相手の名前なんてどうでもいいのだ。
「仕方ない。やるしかないか……」
『マスター、来るぞ!』
覚悟を決めた直後。斜めからの突然の斬撃に対応が遅れる。何とか雷姫で受け止めるも、相手の威力に押されてしまい、後方へと飛ばされた。飛ばすだけでは満足しないガオガエンは追い討ちとばかりに、体を捻って再び剣を振るう。幸いにも飛ばされ、若干の距離はあるが、すぐさま対応出来るほどの軽いダメージではない。
「げほっ……! いってぇ」
何もしなければ斬られると他人事のように考えた。その後で生き残れるのかも考えたが、自分の身長以上の刀身からの攻撃を耐えられるはずもない。ダメージを軽減するだけなら、どうにか対応出来そうだと考え、どうにかして雷姫を構えた。限界が近いのは百も承知である。そもそも不調ながら、無謀にも飛び込んだのは自分自身なのだ。最悪の場合も想定はしていた。まあ、そんな最悪を持ち込むのは雷姫が許さないだろうが。
「耐えろよ、雷姫!」
『誰に申しておる。我は神器、雷姫。そして、マスター唯一無二の愛刀じゃろ? マスターの命は我のもの。こんな小童に渡してたまるか』
最後の一言は聞かなかったことにし、敵の攻撃を受け止める。雷姫の能力の一つである肉体強化を使用し、どうにか飛ばされずに踏ん張った。そして、雷姫の発する電気を暴発させ、相手の目眩ましに利用した。ふっとかけられていた圧力が消えて、相手と距離を取る。ゾンビとはいえ、視界が一瞬奪われると怯むらしい。
「隙がないな。もっと速く動きたいんだけど」
『今のマスターでは無理だ。死んでしまう』
「だよなぁ……状態異常もピンキーの前では意味がないから、動きも封じられない。一人じゃどうしようもないな」
体調が万全なら、更に雷姫の力を引き出し、倒すことが出来ただろう。その条件での突破イメージはいくらでもある。しかし、残念ながら今は病み上がりもいいところだ。力を引き出すにも一苦労している状態では、これ以上は望めない。
「ポチャはどこ行ったよ! いっつもタイミング悪いんだから!」
『マスターが置いてきた気がするの~』
「ちっ……まあ、ポチャはポチャで疲弊してるし、無理はさせられないけど……」
スタミナ型のポチャですら、疲れの色が出ていた。本人は何も言ってなかったが、出会ってからずっとチームのリーダーとして、また、パートナーとしてやってきたのだ。それくらいは簡単に見抜ける。
『だからと言って、マスターが無理していいという理屈にはならないぞ?』
「え……あー、私はいいんだよ」
『よくない。そろそろ、マスターは己に何かあれば、周りの者達が悲しむということを学んでおけ』
「う。そんなこっ……! 雷姫!」
雷姫の刀身に電気を溜め、刀を振るうと同時に電気の刃として飛ばした。突然だったが、雷姫は難なく指示通りに動いてくれた。
前からの気配に思わず、牽制のつもりで攻撃を飛ばした。その攻撃はあまり意味はなかったらしい。ガオガエンはピカを斬り殺さんばかりに威力をつけ、襲いかかってきていた。
「ふっざけんなよ……!」
“まもる”で防ぎきれるものではない。しかし、避けようにも体に力が入らないのだ。目の前がチカチカし、視界もぐらついている。その瞬間、身体中に刺されたような鋭い痛みを感じ始めた。
「つぅっ!……こんなときにっ」
“雷龍”を放った代償ダメージがここに来て響いてきたのだ。今まで、雷姫の力で抑えていたり更に、激しいバトル、緊張感の続く戦場を駆け巡っていたため、意識することなく、ここまで来ていた。が、それも通用しなくなるほどに消耗しきってしまったのだろう。パートナーの助けるために放った一撃で自分が危険に晒されては本末転倒であるが、後悔しても遅い。せめて、雷姫を実体化させ、応戦させるしかないだろう。
「させるかぁっ!!」
雷姫に命令しようとした瞬間、ピカとガオガエンのや間に割って入ったのは、パートナーのポチャだ。愛剣二振りを使い、ガオガエンの斬撃を防ぎきった。ガオガエンは力任せに押し込もうとするも、ポチャはびくともしなかった。押し負けるどころか、ガオガエン後ろへと後退させる。
「“氷水擊”!」
瞬時に無数の氷と水で出来た矢を生成し、一斉にガオガエンへ放つ。ガオガエンの苦手とする水を使ったことにより、嫌がる仕草を見せた。その隙にポチャはピカを抱き抱え、ある程度の距離を取る。念のためにセツを防御壁に姿を変え、ピカを地面に下ろした。
「もう! 無茶苦茶ばっかりするから、こんなことになるんだからね! 死んじゃったらどうするのさ!?」
「げほげほっ……うえ。あー……遅かったね? 何かあった?」
仁王立ちで説教姿勢のポチャにピカはなるべく触れないように慎重に話しかける。むすっとした表情は変えないまま、これまでの道中を手短に伝えた。
「向かう途中で逃げ遅れた一般人の保護をしてた。ピカも心配だったけど、優先順位を変えさせてもらったよ。……それで、あれが本命ってことでいいのかな」
「うん。……周りの雑魚と比べれば、あいつがボス級だろうね」
「了解。どうすればいい?」
「……私がどうにかする。そのためにポチャは敵の足止めを。……っと、その前に時間稼ぎをお願いしたいかな」
「時間稼ぎ? どれくらい?」
「五分……あーいや、三分でいい。寝る」
「は、ね、寝るぅ!? この中で!?」
「体力が風前の灯なの。察してくれ。……“ねむる”」
詳しい事情を聞く前にピカは、ぐらりと体をふらつかせる。慌てて手を伸ばし、支えたときには目を閉じて眠ってしまっていた。落ち着いた呼吸ではなく、荒い呼吸のままだった。そっと地面に寝かせると、長いため息をつく。
「だから、戦いが終わるまで寝てろって言ったのに。ほんっとうに君って奴は。……さて。戻れ、セツ!」
『はいな! でも、ぴーはどーするの?』
壁になってくれていたセツを剣の姿に戻す。セツの言葉に答えることはなく、無言でスイを地面に突き立てる。
「スイに守らせる。いいね、スイ」
『うん! ぴーはすいちゃがまもる! まもるけど、てぃーは?』
「セツがいるから大丈夫。……でも、三分か。長いけど、耐えるぞ」
『あい!』
元気よく答えてくれたセツを構え、前に走り出す。ここを抜けられるとスイがいるとはいえ、ピカに被害が及ぶ。彼女の指示通り、三分耐えきるしかないのだ。



~あとがき~
今日で空と海(小説版)丸六年経ちました。七年目突入じゃー! 七年目だけど、小説的にはまだまだ終わりません。こ、これは……倍掛けても終わらないのでは?(恐怖)

次回、ポチャVSガオガエン(ゾンビ)!
あ、ポチャ君。ガオガエンがゾンビみたいって知らなくね? まあ、いいか。

ピカさん、満身創痍で動きも鈍っておりますが、まだまだ頑張るつもりらしいです。いい加減にしないと死んじゃうぜ……ポチャ君が可愛そうになってきたね。彼も彼で満身創痍なんだけどな。

ではでは。