satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第273話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で相談してる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ルーメンおじいちゃんに言われた課題を二人で考えるシーンでした。考えるだけなのに、別方向に行ってた気がするね? なんでだろうね?
ということで、今回もその続きみたいな感じっすかね。ラルと二人の人物の話。


《L side》
ルーメンさんに勧誘された次の日。
部屋でぐでっとしているティールをそのままに、私は街へと出掛けていた。明確な目的地があるわけではないが、なんとなく出てきてしまった。
午後にアラシ君と女神祭での仕事話があるので、それまでにはギルドに戻るつもりだ。
「……今なら、出てくれるかなぁ」
木陰に移動した私は、手元の端末を操作し、とある人物に連絡してみた。大して期待せずにかけたのだが、思いの外早くに返事が来る。
『やあ! まだ、おはようの時間かな? 珍しいね、こんな時間に連絡なんて!』
「おはようございます。プリン親方」
電話越しでもやかましいくらい元気なのが伝わってくる。親方は普段通りの声色で、雑談でもするような雰囲気のまま、返答する。
『どうかしたの? ラル、今はルーメンさんのところでお仕事中だよね~?』
「えぇ、まあ。その、親方に折り入ってご相談があって、連絡しました。……今、お時間よろしいですか?」
私がそう切り出した瞬間、ぴたりと時間が止まったように静かになる。そして、数秒遅れてバサバサと何かが落ちる音が聞こえると、ノウツの叫び声が聞こえた気がした。
いや、あいつはなんで叫んでるんだ。
『ほ~……珍しいね。ラルがボクに相談なんて。びっくりして、ノウツが引っくり返っちゃった♪』
書類を引っくり返したんじゃなく、ノウツ自身が引っくり返ったの!? いや、待て。そんなことよりもだ。
「これ、スピーカーにしてんのか? 切れ! スピーカーを切れ!!」
『えー? でも、ボク、色々と書類? やんないと駄目なんだって~♪ 大丈夫。話は聞けるから! あ、ノウツ追い出す? いいよいいよー!』
親方と書類仕事なんて似合わなすぎるだろ。いや、あれでもギルドの親方であり、あの地域一帯を任せられた人である。それなりに多忙……な、はず。
多分。きっと。恐らく……そうであってほしいと思う。
遠くの方で何か聞こえた気がするが、流石に電話越しで何が行われているかまでは分からない。だが、小さいながらもドアの閉まる音が聞こえたから、ノウツが出ていったのだと思われる。もしくは、無理矢理追い出されたか。
『よし。これでボクだけになったよ! で、相談って? あ、仕事失敗しちゃったとか? 大丈夫、そういうときもあるよね!』
「話を聞け。順調だわ。順調に進んでるわ! でもまあ、ルーメンさんに勧誘されるまでは問題はなかったですよ」
『あ、ついに勧誘されたか~♪ おめでとー!』
……おめでとう、か。
そういうと言うことは、親方は知っていたんだろう。私達がルーメンさんに勧誘されるって。
「こうなるって分かってたんですね」
『うん。うちの子のことだからね』
「その言い方はちょっとあれだな」
『えー? でも、ラルはボクの娘だよ?』
うん、そうだね! 書類上はそうだね!? 不服だけど!
「当時はそれ以外の道がなかったからあれですけど、今は滅茶苦茶、後悔してますよ」
『なんでなんでー? ボクは何とも思ってないのに~』
「授業参観の悲劇を忘れんなよ、お前……っ!」
ギルドメンバーで押し掛けて、大騒ぎになった件! 私は今でも恨んでるからね! 今ままでの人生の中でトップレベルに恥ずかしかったんだからね!?
『親だもん。授業参観は特大イベントの一つだよ!』
「知るか! じゃなくて、今回はそういう話じゃなくて! 相談に乗れよ!! 勧誘された話をしたでしょ!? それに関して話を聞いて欲しいんですけど!?」
『なんだ。昔話に花を咲かせたいわけじゃないのか~』
そんな理由であんたに連絡なんてしねぇわ……っ! というか、直接会って話してもないのに、いつもみたいなやり取りしてるのはなぜだ。なんでこうも話が逸れる? おかしくない?
私がモヤモヤしているのをよそに、親方はやっぱりいつも通りの調子のまま、話を続ける。
『でも、勧誘されたんでしょ? 何に悩んでるの?』
「話を飲むか反るかでしょ。それ以外に何かあります?」
『ふーん? でもでも、ラルがそれを反る理由、ある?』
……今度は私が黙る番だった。
『ラルは賢い。どの選択が自分のためになるか、なんて、分かりきってるんじゃないかな? でも、そうだね。ラルだもんね。……もしかして、ボク達のこと、気にしてくれてる?』
「親方はなんて、いつもそう核心をつくんでしょうね」
『ふふ~ん♪ ボクはみんなの親方だから。みんなの、おとーさんなのだ~♪ なんでも分かるよ?』
そんなことを平気で断言する親方。もし、親方が目の前にいたら、得意気な表情を浮かべているのだろう。
『だから、そうだねー……ラルはラルのしたいようにすればいいと思う! ラルの人生だから。ラルが進みたい道に進むべきだ』
「フェアリーギルドで受けた恩を返せなくても、ですか」
『恩返しをして欲しくて、ギルドにいてもらっていたわけじゃない。それにたくさん返されたよ。いつだって、ラルはボク達を助けてくれてたよ。だからね、ラル。ボク達を気にしなくていいよ。どこにいても、ラルはフェアリーギルドの一員だから! 仲間だからね~♪ その仲間の門出だよ? 応援しないわけないじゃない! 協力しないわけ、ないんだよ?』
「親方」
なんで、貴方はそう簡単に割り切れるんですか。……と、続けるつもりだったが、親方のすっとんきょうな声に阻まれてしまった。
『あっ! でもでもー……さっきは断る理由なんてないでしょ、なんて言ったけど、ラルがいーっぱい考えた答え、ボクもティールは受け入れるからね。それきっと、ルーメンさんもおんなじだと思うんだ。だから、いっぱいいーっぱい、考えてね。ラルにとって、どの選択が後悔しないのかを』
私がどうしたいか、か。
どうしたいんだろうなぁ……それを親方に聞いてみたかったんだけれど、結局のところ、自分で答えを出せってことなのだろうか。
『ボクから言えるのはそれくらい! いい話だと思うから、焦らずゆーっくり答えを出すといいよ』
「はい、ありがとうございます。親方」
『うんっ! また、何かあったら連絡していーよ! ばいばーい!』
と、元気な声を最後に電話は切れる。なんだか、好きなだけ言って、どこかへ行ってしまった気分だけれど。
どんな答えでも受け入れてくれる、か。
「いいお父さんだな、きっと」

親方との電話の後、私は近くのカフェへと足を運ぶ。空調の効いた店内でほっと一息をつくと、ぐるりと見回してみた。そして、見慣れた後ろ姿を見つけ、思わず声が漏れた。
「……うわ。もういる」
「いらっしゃいませ、何名様ですか?」
清楚な店員のお姉さんがにこやかに話しかけてくる。そんな彼女に私もにこやかに返す。
「実は待ち合わせをしているんです」
「かしこまりました。ご案内いたします」
手慣れた動作でとある席へと案内したお姉さんは「メニューが決まりましたら~」というテンプレ文句を残し、仕事へと戻っていく。
残された私は彼を見下ろしながら、小さく笑った。
「久し振り、フォース君」
「夏の間は会わないだろうって思ってたんだがな。……久し振り」
私の方を見向きもせず、手元の本のページを捲りながら、ぶっきらぼうに答える。
「で、話って何」
「……まずは座れよ。とか、何か頼めば。とか、目の前のレディを気遣えないかなぁ? つか、こっち見ろ!」
「は? お前を気遣う? そもそも、そっちが呼び出したんだろう。わざわざ来てやったおれを気遣え」
「暴論が過ぎるわっ! くっそが。そういうことなら、こちらも考えがあるわよ? あの、すみませ~ん。アイスティーと真夏のひんやり雪遊び一つずつお願いします!」
「は? 何その、得体の知れないメニュー」
流石のフォース君も謎メニューに疑問を持ち、私を見る。が、彼の質問には答えず、私は向かいの席に座る。そして、頬杖をつき、にっこりと─客観的に言うなれば、にやりと、かもしれないが─笑う。
「私のおもてなしの心だよ。奢ってやるから、たんとお食べなさい?」
「……その笑顔は嫌な予感しかしねぇ」
ふふん♪ 大丈夫。不味いものは出てこないから。
「さぁて。頼んだものが来るまでの間、私の話を聞いてもらえるかな、フォース君?」



~あとがき~
一話で終わらせる気満々だったのに……あれ。あれ??

次回、ラルとフォース。

本編出てくるの、一年ぶり? いや、もっとかな? まあ、久し振りだなぁ、フォース。けど、特別編に出てるから、半年強ぶりって感じかな。多分。
何かあれば、こいつ出したくなる病にかかってる私です。えへえへ。

ではでは。