satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第272話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で話してる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ようやくルーメンおじいちゃんとのお話しが終わりました。しかし、そこで新たな課題(?)が与えられることに。
その課題に対し、ラルとティール、二人が思うこととは。
ってな具合でやって参ります!


《L side》
「ゆっくり考えて答えを出して構わんよ」というルーメンさんの言葉を背に、私達は親方部屋を後にした。
会話もなく、無言で廊下を歩き、中庭まで差し掛かった頃、沈黙を破るようにティールが問いかけてきた。
「ラルは、どう思ったの?」
「……何が」
「このタイミングで何が、はないと思うよ。分かってるだろ?」
そうだね。分かってる。
「……あれを聞かされて、客観的視点で見れば、断る理由はないと理解はしてる。でも、それを受け入れられるかは、また別問題だよ。……ティールは?」
「ラルと似たような感じかな。……ねぇ、部屋に戻る前に少し話さない? ルーメンさんのところでは、二人で相談できる雰囲気じゃなかったろう?」
そだね。そうしようか。
私達は誰もいない中庭のベンチに座り、そっと空を見上げる。空を支配する黒。そればかりが広がる、何もない空。なぜか、今日は星すらも見えなくて。
「……今回、提示されたメリットって言うのかな。基本、ラルに関係するものばかりだったろ? だから、ぼくは実感がないのが本音。もう一度、どこかのギルドに入るなんて、考えてなかった。漠然と……そうだな。君とチームの皆と続けていくんだって思ってたから」
「そう……うん。そう、だね。私もそう。学校を卒業した後は、探検隊を続けていくつもりはあった。けど、そこに別のギルドに入るなんて考えてなかったよ。フリーの探検隊として、本格的に動くんだろうなって」
それだけはぼんやりと考えていた。
それなのに、こんなことになるなんて。将来を考えていない訳じゃなかったけど、いきなり別の道を示され、どうしたら分からなくなったのも本音で。
「あのさ。今回の件とは関係ないけど、ティールは学校を卒業しても、私と探検隊やるの? ううん。やってくれる、の……?」
ずっと避けてきた問い。彼の進路の話。
でも、今日は聞かないと駄目だと思った。私達の将来に関係する話を聞かされたから。
ティールは深く考え込むように、沈黙してしまう。まだ聞いてはいけない質問だったかと後悔し、謝ろうとした瞬間、彼の乾いた笑いが響いた。
「っ……ごめん。どうなるか分かんない。親との約束では、ここにいれるのは高校卒業までだから。……でも、ぼくの……ただのティールとしての気持ちは、君と一緒にやりたい、と思ってる。だから、その前提で話を進めてくれると……えっと、助かります」
驚いた。心底、驚いた。
ティールは責任感が強い。だからこそ、王子である責任から逃げないと思っていた。例え、それが自分の意思と反するものでもだ。
それを知っていたから、彼が親との約束を破るようなことも、親の期待を破るようなこともしないと思っていた。
そんな彼から、自分勝手な我儘を聞くとは思わなかった。
「それで……いいの?」
「うん。あっちに帰る予定もあるし、そのときに交渉してみる。あ、でも、あんまり、期待しないで欲しいな。……その、むしろ、君は……ラルは、いいの? 探検隊続けても」
不安そうに問いかけてきた彼の手を取る。そして、きちんと伝わるようにしっかり強く握る。
「嫌なわけないじゃん。そもそも、探検隊の夢はティールのだよ? それを私は手伝ってるだけ。それに言ったでしょ? 私の相棒はティールだけだよ。だから、手伝うの」
「うん。……そだね。ぼくもだよ。ぼくの相棒はラルだけだ」
そう言って、ティールも私の手を強く握り返してきた。これからも、繋がっていることを確かめるように、ぎゅっと。
これが恋人なら、次は見つめ合ってキスでもするシーンなのかもしれない。生憎、私達はそういう関係ではないが。
変な妄想を払拭するべく、私は彼から視線を外し、パッと手も離した。これ以上、雰囲気に飲まれるといらないことまで話してしまいそうだったからだ。
「……じゃ、今後も二人で探検隊するって方向で、今回の件を考えよう。ティールはどうしたい?」
「そ……そう、だね。さっきも言ったけど、実感がないからな。正直、どっちでも構わないと思ってる。だからって訳じゃないけど、ラルの判断に任せる。あ、もちろん、一緒に考えるよ? でも、ラルがしたいようにしてくれていい」
「私の?」
「うん。どっちを選んでもぼくは構わない。君に従うし、ついていくし、傍で支える。その覚悟はとっくの昔から……ラルのパートナーとして探検隊になったときからしてるから。まあ、君がぼくに決めろって言うなら、ぼくが決めるけどね」
冗談っぽく笑い、ティールは立ち上がる。そして、私の正面にそっと跪くと、今度は優しく笑う。
「でも、それはきっとぼくの役目ではないだろ。いつだって、チームのことはラルが一番知ってるし、考えてくれてるの知ってる」
ティール」
「だから、君に任せてもいいかな? どんな答えが出ても、ぼくはラルを肯定する」
酷いなぁ。私が困ってるの見てて、そんなに楽しいのかな。日頃の恨みかよ。……まあ、ティールがいてくれるなら、いいんだけど。安心できる。私は迷わずにいられる。
「……ん。わかった。任されたよ。だから、ティールはそこにいて。絶対に」
「うん。リーダーの仰せのままに」
ふわりと笑い、そっと私の手のひらにキスを落とす。
愛する人に愛を誓うように。
騎士が姫に忠誠を誓うように。
王子が姫に寵愛を誓うように。
この目の前の王子様はすんなりとやってしまうから、心臓に悪い。
ほーんと、心臓に悪いよ。全く、人の気も知らないで。
……大好きだよ、全く。
「もー、分かってないなぁ」
「? 何が?」
ティールが大胆で女の子を弄ぶのが上手だってことっ! ほら、帰ろう。この件はゆっくり考えることにしたから」
「え、あの、弄んでないけど? 弄んでないけど!?」
だろうなぁ。ティールにとってあれは、深い意味はないんだろうし。
「しーらない! ほら、あんなことしたんだし、最後までエスコートしてよ、王子様」
「うぇぇ? どういうことなの……?」
私の言葉に困惑しながらも、差し出された手を素直に取ってくれた。
今が誰もいない夜でよかった。
ふと空を見上げると、ほんの少しではあるけれど、星の輝きが見えた気がした。
少しは晴れたんだろうか。それだったら、いいな。

私達は部屋に戻り、しーくんと留守番してくれていた雷姫に陳謝すると共に、しーくんもなでなでした。そして、説明もそこそこにティールはしーくんと一緒に寝てしまった。探検の仕事に加え、いつもより長く話したし、流石の彼も限界だったんだろう。私と違って、仮眠も取ってなかったし。
ま、仮眠なしでここまで起きてる彼の体力は素直に感心するけどね。私もそれくらい元気だったらなぁ。もう少し体力欲しいなぁ。……ずっと思ってるけど、なかなかどうしてか、体力つかないんだよな。ぐぬぬ
なんてことを考えながら就寝支度を整えた私は、二人を起こさないように廊下へと出る。そして、とある人物に連絡してみた。
こんな時間だが、出てくれるかは五分五分だ。気まぐれでも起こして、出てくれるといいんだけれど。
数回のコールの後、ぶっきらぼうな返事が聞こえてくる。
「……ごめん。こんな時間に……その、明日、会って話したいなって。相談があって……できれば、聞いてくれると嬉しいなって。……お願いできないかな」
『………………』
電話越しの彼は何を考えているのか数秒の沈黙後、盛大なため息と共に、
『わぁったよ』
という言葉を最後に勝手に切ってしまった。
「……あはは。優しいなぁ」
初手で断られると思ってたから、ごねる準備をしていたのだが……必要なかったらしい。
こういうときだけは素直で、本当に優しい。
あと、もう一人話したい人がいるのだが……まあ、その人は明日でいいや。多分、今、電話しても起きないだろうから。
私はぐっと背伸びをしながら、部屋へと戻る。
期限はスプランドゥール滞在中。あと、一週間程。それまでに答えを出さなければならない。



~あとがき~
なんか知らんけど、ラブコメっぽい雰囲気あったな? いや、気のせいか。気のせいです。はい。

次回、ラルと二人の人物。
二人と話せるかは知らん。無理かもしれない。

言うことなし。ええ、ありませんとも。
この二人が……というか、ラルがどんな選択をするのか、しばしお待ちくだされ。

ではでは!