satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第172話

~前回までのあらすじ~
バトルが終わってお祭りも三日目後半……花火を残すのみとなりました。
ポチャ「長かったね。ここまで」
ピカ「だね。二年前くらいからやってる?」
あはは。それな。もう少しね、お付き合いくださいね!
ピカ「ここでさらっと終わることも出来るんだよ。作者、分かるね」
うん。うん……そうね。どうなるかは本編ね!
ポチャ「うーん。これは大変なことになりそう」


本部へと足を運ぶと思いの外、ざわざわしていて忙しそうにしている。昨日一昨日はそんなことなかったのに……どうしたんだろう?
その本部には見慣れた姿があった。白くてふわふわの翼を持ち、頭にリボンを結んでいるチルタリス……スカイのチルさんだ。
「チル? 君、午後の担当だっけ?」
「あら、ポチャさんに皆様。お疲れ様です♪ 本来、スカイの担当時間は午前だけだったのですが、実は助っ人を頼まれてしまいまして」
「え、助っ人?」
「大丈夫です。きちんと特別手当てが出るように交渉してあります。タダ働きにはなりません♪」
金銭に関してはしっかりしているようです。きっとピカさんが気にしてるんだろうな。もしかしたら、ピカさんがそう教えているのかも。
「あ、うん。ありがと……じゃなくて! どういうことなの? ソル達も呼び出されたみたいだし」
「このあと、フィナーレに花火がありますでしょう? その花火の時間帯に警備強化を行うことが急遽決まりまして……なんでも、来場者が予想以上に多いらしいのです」
人が多いとなると、何かあったときに対応しなくちゃいけない。トラブルの数も多くなると予想しての対応なのかな。
「幸い、先程までのバトルロイアルのおかげで、名のあるギルドに所属している方々がここに来ていますから、お願いにし回っているのです」
「なるほどね。体制を組み直しているからこうも騒がしいんだ。じゃあ、ぼくも警備に加わるよ。人は多い方がいい……けど、ピカはどうしよう」
周りが騒がしいのにも関わらず、ポチャさんの背中で微動だにすることなく眠り続けている。なんだか動かなすぎて大丈夫なのか心配になってきた。
「近くに救護テントがありますから、そこにお休みになれるよう、手配致します。ポチャさんも寝ているピカさんを基地に一人置いて、警護なんて出来ませんものね」
「う……ごめん。そうしてくれるかな」
救護テントには人がいるからピカさん一人になることはない。ポチャさんも安心して警護に励めるってことか。チルさん、結構手際がいいな。
「少々お待ちください。すぐに戻ります♪」
ふわりと飛び上がるとすぐ近くのテントの中へと入っていった。それを見計らって、すーくんがポチャさんの方を見て首を傾げる。
「ペンギン一人で大丈夫か?」
「うん。むしろ、フォースはイブ達といてあげて。何かあったときに対応出来るでしょ?」
「……了解」
本当ならピカさんが指示出している場面なんだろうな。ポチャさんもピカさんの代わりが出来ちゃうくらい、素質がある人なんだなぁ……
「お、ポチャじゃーん。さっきはお疲れさん」
「? あ、え。レンさん?」
軽い感じで話しかけてきたのはさっきまですーくんと戦っていたフライゴンのレンさん……だったかな。それとポチャさんと一緒に解説していた浅葱さん……?
「さっきぶりね、ポチャくん」
「あ、はい。え、なんで?」
「人手足りないって言うから~? 助っ人だな」
「太陽を連れてきてもよかったんだけど、今はまだ危ないと思って帰ってもらったの。何かあればバッジで駆けつけるから戦力として考えてくれていいわ」
「エレキは申し訳ないから置いてきたわ。俺のせいなんだけどね」
いろんな人に声をかけてるって言っていたけど、本当に手当たり次第に声かけてるのかな……?
レンさんはるーくんに抱かれたままのすーくんを見ると、面白そうに笑った。
「あのバトルのときは大人すぎて疑ってたけど、こうして見てると年相応だな!」
「……うるさいよ、おじさん。あれだけボッコボコにしてあげたのに、元気なんだねぇ? また縛ってあげよっかぁ?」
声の高さが高くなってる……! さっきまでは普通にいつものすーくんの声だったのに、今は声変わり前の高くて愛らしい男の子の声だ。
「やだなぁ。“フレイムチェーン”あっつかったんだもん。願い下げだ」
「ごめんなさいね、フォースくん。レンは適当だから気にしないで」
「それはさっきのバトルで身に染みた。分かる」
「ちょ、浅葱!?」
浅葱さんの発言に反論したそうにしているけど、全く気にしていないみたいで、こちらを向いて話を続ける。
「それと、ここに呼ばれたのは私達だけじゃないわ。ナエくん達もだし、アクアくんのところもみたいだしね」
「そうなんですか?」
「ええ。まとめて話をするのかもね?」
バトルした後なのにお仕事しろって……なかなかブラックなことを言う。もちろん、断ることも出来るんだろうけれど、断るような人達じゃないんだろうな。それはなんとなく、ピカさんの知り合いさん達だからって理由なんだけれど。
「ホノオとそのパートナーは仕事行くって言ってたけど、この事じゃないんだよね?」
「多分、違うわ。単純に依頼をしに行ったんだと思う。……けれど、ヒノくんはスパルタね。この臨時の警備がなくても仕事へ行くってことだもの」
「確かに。よくやるよねぇ……あの笑顔の奥にはいろんな感情があるんだって」
浅葱さんとすーくん、なんかすごく難しい話をしている気がする。私にはよく分かんないや。
「お待たせしました。ポチャさん、話をつけてきましたよ。……あら、皆様、お揃いで。プクリンさんからお話があると思いますので、もう少しお待ちください」
戻ってきたチルさんは、浅葱さん達を見るなり、流れるように優雅な振る舞いでお辞儀をする。話し方といい、作法といい洗練されている。……どう育てばあんな風に振る舞えるのだろうか?
ポチャさんはチルさんに案内されるがまま奥へと行ってしまう。ついでにピカさんのバッグを持っていたすーくんもポチャさんについていく。いつの間に解放されたんだろう?
「……初めまして、でよろしいですか?」
「そう? つい数日前に会わなかった?」
ずっと黙っていたるーくんが浅葱さんと話し始めた。面識でもあるのかな。……なんて思ったけれど、つい最近まで封印されていたるーくんにこの現代に知り合いなんているんだろうか。神様とかなら分かるけど、浅葱さんは普通の人、だよね?
「いいえ。顔を会わせたのはこれが初めてです」
「会わなかったか。そっかそっか。じゃ、初めましてだねぇ」
「貴方のようなお方がこちらにいるとは思いませんでしたわ。……お戯れですか?」
「んふふ。そうだよ。お遊び中なの。相変わらず楽しいね、ここは」
「お気に召しましたのなら、何よりです」
……? 不思議な会話。
私とチコちゃん、それからレンさんを置いていくような会話を二人は続けていく。
「君はこれからお仕事かい? 大変だね」
「これが今の私がやるべきことですので」
「ほーん。頑張って。俺は他のことにとやかく言うことはしないから。本来の仕事をやってくれさえすれば、全然気にしない~♪」
「ありがたき言葉ですわ」
「るーくん……?」
この雰囲気に耐えきれず、るーくんに話しかける。するとパッとこちらを振り向いていつもの笑顔を見せてくれた。
「ごめんごめんっ♪ すっちー達を置いてってたね! もう大丈夫だよ~」
私と目線を合わせて、頭を撫でる。そして、チコちゃんの頭も撫でていく。ごめんねってことなのかな。
こんなことをしていると、チルさんとポチャさん、すーくんの三人が戻ってきた。すーくんはバッグをちゃんと置いてきたみたいで、何も持ってなかった。
「ごめんね、イブ達。付き合ってもらって」
「いえ! 時間もありましたし、大丈夫です」
「後は大丈夫だから、花火楽しんできて。明日にでも感想聞かせてね」
「はいっ♪ それじゃあ、失礼します」
優しいポチャさんに甘えて花火を楽しむことにしようかな! もう少し時間はあるけど、そろそろ会場に向かうべきだろうし、人も多いみたいだから早めに行動して損はない。
私達はポチャさん達と別れて、花火がよく見えるらしい場所まで目指すことにした。



~あとがき~
チルちゃん、久し振りのご登場です。
忘れてるかもだけど、お姫様なんだよ……彼女。

次回、ポチャや浅葱達が集められた理由は?
せっかくイブ視点に戻ったのに……(汗)

浅葱とウィルの関係については追々出てくるのではと思うので、ここでは何も言いません。こうやって謎を残すものありだよね? まあ、察せる人もいるかもですが。情報出しきってないので、予想も難しいかもです。

ではでは!

空と海 第171話

~前回までのあらすじ~
ピカちゃん、現世に復活。
ピカ「さっきまで死んでたみたいに言うな!」
フォース「この三日目でラルは不幸に遭いすぎ」
ピカ「そうだよね。なんでかな?」
日頃の行い?
ピカ「うわぁ……回ってきたの? いや、不真面目になることもあるけど、基本的に真面目に生きてるよ? それが日頃の行いって理由でどうにかなるとでも思ってるのか、作者は……」
さあって、始めるぞー!!
フォース「多分、理由はやりやすいからだと思う」
ピカ「くっそ! 作者くっそ!!」


バトルが終わった後、ピカさん達が勝ったことを私は理解するのに時間がかかった。上から見ていたから分かるんだけど、相手の大将さんよりもピカさんが倒れる方が早かったから。けれど、アナウンスはピカさんのチームの勝ちをしらせている。
意味が分からず、るーくんの方を見てしまったくらいだ。見られたことに気が付いたるーくんはにこっと笑って丁寧に起こったことを説明してくれた。それによって、フィールドで何が起こったのかを私でも理解することが出来たんだ。
本当にピカさんは複雑なことをするなぁ。まあ、アナウンスでも浅葱さんとポチャさんによる解説で大体の人が状況を理解出来たんだと思うけどさ。まさか、観客まで置いてきけぼりになるような作戦を使うなんて……
「ピカちゃんっぽいよね~♪ 我が道を行くって感じ? 勝つためなら何でもやっちゃうところ、俺は好きだよ」
私達は会場を出てすぐ近くの木の下でピカさん達が来るのを待っていた。出入口にいれば会えるだろうと思って。まあ、すーくんがいるわけだから、勝手に見つけてくれるだろうけど。
一緒に見ていたソルさん達は終わってすぐに仕事へと戻って行った。終わってこっちに来たものだと勝手に思っていたけれど、呼び出しでもされたみたいだ。うーん。人手が足りてないのかな? そういえば、本来なら午前中はピカさんが警備についてなきゃいけなかったんだっけ……? シフト移動させたのかな。あ、そういうこと?
「るーくんもそういうところあるよね?」
「えへへ♪ そうだね。というか、俺に限らず神様みーんなに言えることかな。一般人と考え方が違うんだよ、きっと」
ふーん? なんだか難しい話だな。
「価値観の問題だからね。考え出すと終わらない迷宮に入っちゃうかもだから、やめといた方がいいね」
そっか。じゃあ、そういう人もいるんだなってことにしておこう。
「あのザングースさん、すごかったね。それについていくピカさんもすごいけど」
「ほんとに。全然目で追えなかったよ……ピカさん、怪我は大丈夫なのかな?」
「うん。遠目だったけど、してたよね?」
チコちゃんの言う通りだ。遠かったからよく分からないけど、多分していた。あの鋭い爪で全く怪我してませんなんてことはないだろうし。でも、手当てしてくれる人もいるだろうから大丈夫だと思うけど。
「あのザングースくん、懐かしい能力使ってたんだよね。いやぁ、こんなところで見られるなんて思わなかったけど~」
「能力?」
私とチコちゃんは声を揃えて、首を傾げる。見ていた感じ、普通に戦っていただけだな気がする。でも、るーくんの目からは別のものが見えていたってこと?
「まあね。でも、心配しないで? 死ぬようなことはないよ。俺の力を継承してる子も一緒だから、治癒してくれてるさ」
「ん? え? どういうこと??」
「あはは。それを知るにはりっちーはまだまだ経験値が足りないんだな~? だから、今はまだ知らなくていいことだ」
「そ、そうなの?」
「うん。そうなの」
るーくんの言っていることは分からないけど、結論は皆、無事だってことだ。今は帰ってくるのを待っていよう。そして、帰ってきたらお疲れ様って言うんだ。

ピカさん達が帰ってきたのはそこそこ遅かったように思う。会場から出てくる人もまばらになった頃。ポチャさんにおんぶされて、すーくんは小さい姿のまま出てきた。それを見てるーくんが正常でいられるわけもなくて……
「うわあぁぁ!! かーくうぅん!!」
「うげっ!? ばっ……やめっ!?」
小さいすーくんは逃げる暇もなく、るーくんに捕まってだっこされてしまった。こうなることはなんとなく、予想してたけどさ。
「ごめんね? 待たせちゃった?」
「いえ。お仕事の後でお疲れでしょうし、気にしないでください! 私達は平気ですから!」
「ありがとう、チコ」
「ピカさん、大丈夫ですか?」
「うん。今は疲れて寝ちゃってるけど、大丈夫」
ポチャさんの背中ですやすやと寝ているピカさんは……こういっては何だけれど、とっても可愛らしかった。普段、寝顔なんて見ないし見たこともなかったから余計に可愛く見えてきた。こうやって見ると、ピカさんは可愛らしい人なんだなって思う。仕事も出来て、強くってかっこよくて、優しくて。それに加えて可愛い顔だなんて……そんな完璧な人いるんだな。神様は平等じゃないんだ……
「イブ? どうかした?」
「なんでもないよ……ちょっと世界の不平等さに嘆いてただけだから」
「え、国際問題?」
そこまで大それたことじゃない。単純に羨ましいと思っただけだ。
「えっと……ピカがこんなんだから、ぼくらは先に基地に戻ろうかなって思うんだ。イブ達はどうする? このあと、花火が上がるから観ていくのもいいと思うよ」
「そう、ですね。元々、花火目的ではありましたし……すーくん、いいよね?」
るーくんにだっこされたままのすーくんは抵抗しながらも、こちらの質問に答えてくれた。
「……おれは構わない。お前らが観るなら一緒にいてやるよ」
「ってことなので、私達は残ります。ポチャさん一人で大丈夫ですか?」
「そうだな……本部に寄ってメンバーの誰かにこの事話して、ついでにバッグ預けてこなきゃ。……だから、本部まではついてきてくれると助かる」
あ、ピカさんのバッグ、すーくんが持ってるのか。ピカさんを背負って、バッグも持ってなんて難しいか。それならついていこう。どうせ花火までは時間があるし、暇だもんね。場所取りするにも早すぎるし。
「分かりました。行こっか、チコちゃん」
「うん、いいよ!」
「るーくんも。すーくんだっこしたままでもいいけど、ついてきてね?」
「うんっ! しばらくかーくんはだっこしておく!」
「いや、降ろせよ。そろそろ戻りたい……!」
じたばたしても体格差には勝てないようで、るーくんは離そうとしていない。むしろ、そんなすーくんにも愛着が湧くようで、ぬいぐるみを抱き締めるようにぎゅーっとしていた。



~あとがき~
せっかくこの前復活したのにピカのやつめ……すやすやと寝てしまったですよ……まあ、私のせいか。

次回、本部へと足を運んだ一行が見たものは?

ほのぼのに終わってもいいけど、はてさて、ここが決め時ですな。どうしようね!? なんて言って、どうするかなんて決めてるんですけどな。頑張りますぜ。
というか、ピカ側の大将誰なのか話す暇がない(汗)
もう皆さんのご想像にお任せしちゃおうかな……好きな方でいいよ……もう((←

ここ最近、上げるスピード早いのはなんでかって思うと思います。前は月一だったのにね。理由は簡単。気分が乗っているからです! あとバイトのシフトゆるっゆるにしすぎて暇!!((←
バイトに関しては来月もう少し増やすつもりなので、いいんだけどね。気分ノリノリなんだからめっちゃ書くやん……? 出せるやん? みたいな。
後はあれですね。お祭り編終わったら別の話を出すんですけど、それもほぼほぼ終わっているので、それもある。皆楽しみピカとポチャメインの話なのでお楽しみに! まあ、それを公開出来るのもいつになるんですかね……

ではでは!

空と海 第170話

~今までのあらすじ~
解説終わり! まだ分からないことはありますが、それはもう少し後で!
今回はピカちゃんのピンチ、再びって感じです。
ピカ「何度私を殺そうとすれば気がすむのか」
あと三、四回は我慢してくれ。
ピカ「不公平! もっと別の人を不幸にしよ!?」
フォース「回数多くない? お前」
ピカ「それな!? だからもっと分担しよう!?」
それはどうだろう……?
ピカ「あんまりだー!!」
フォース(不幸の分担とは一体)
ではでは、始まります!


浅葱の言葉の真意を聞けるような雰囲気でもなく、言われた通りに二人と控え室に戻った。扉を開けると、ピカがベンチの上……ではなく、床に倒れていた。話していたときはそこそこ余裕があったが、今ではその余裕も感じられない。息苦しそうに息を弾ませていた。その様子を見て、浅葱は一瞬で状況を把握出来たようで、迷うことなくピカの元へと駆け寄る。
ポチャとフォースは入口付近に立ったまま動くことはなかった。単純に何かしようとしている浅葱の邪魔にならぬようにしているだけである。
「落ちたの……?」
「幅が狭いからね。その可能性はありそう」
「……ずっと除外してた可能性があったんだけど、もしかしてそういうことか?」
「“サイレントキラー”って知ってる? 知ってるならそういうことなんだけど」
「まだ使い手がいたんだ。途絶えていたと思った」
ルール説明の中に危険なもの、命を奪いかねない技は禁止するとあった。だからこそ、フォースの中でいくつかの可能性が消えていたのだ。その一つがポチャの言った、“サイレントキラー”である。
これは技というよりは一種の能力のようなものである。簡単な言葉で表すなら、一つの暗殺術といえるだろう。刃物や道具を必要とせず、己の身そのものが武器になってしまうと言っても過言ではないくらいに攻撃力が上がる能力だ。また、使い手に攻撃されたからといってすぐに効果が出るのではなく、時間をおいてじわじわと効果が出てくる。その性質上、誰にやられたのか、やった相手がどこにいるのか等、特定しにくくなるという利点がある。しかし、争いが頻発しなくなった今の世では必要のないためか、使い手も激減したとされていた。
「大昔は領地の争いとか、お偉いさん達の陰謀とかあって、それなりにいたんだけど、今じゃ全然見なくなったな」
「武器も多様化して、わざわざ暗殺術なんて使わなくてもよくなったもんね……ほんとは武器なんてものも滅びちゃえばいいんだけど」
「それはねぇな。武器は傷付ける道具だが同時に守る道具でもある。……それが覆らない限り、なくならないよ」
「そうだね。……浅葱さん、ピカは?」
頃合いを見て浅葱に話しかけた。ピカの容態を確認したらしい浅葱はじっと目を閉じてその状態で話し始めた。
「……大陽の馬鹿のせいで大変なことになっちゃったわね。テンション上がったのかしら。あの駄犬め。だから考えて行動しろって言っているのに……あ、馬鹿だから無理ね」
「ぼかして言う辺り、かなりヤバそうですね」
「とりあえず、治癒すれば問題ないわ。ポチャ君、手を貸してくれる?」
「はい。ぼくでよければ」
ポチャは浅葱の要求に頷くと、傍まで近寄ってその場でしゃがむ。対してフォースは何をするでもなく今の状況をただ眺めていた。
“サイレントキラー”が使われたとすると、普通の治療ではどうにかなるとは思えなかった。となれば、浅葱も何かの能力を使うということになる。治癒系統の能力の継承は生命を司るウィルの管轄だ。そして、ウィルは能力を一般の人々に分け与えるような人ではなかった。理由は生命を左右するような能力は意図しなくとも人の寿命に関わる。寿命を勝手に操作することは禁忌とされ、人が触れていい領域ではないためだ。つまり、浅葱が治癒系統の能力を使えるなら、ウィルの関係者。もっと言ってしまえば、探検隊などしている人材でないと言えよう。
「そういや、兄貴は現世に守護者みたいなの置いてたっけ……今は誰だったかな」
浅葱が探検隊しているなら、別の者ががいるということだ。フォースは見たことも聞いたこともないため、誰なのかさっぱりだ。血縁者なのは確かだが。
「ま、いいか。兄貴が完全復活したのも最近だし、把握してなくて当然か」
フォースが仕えるのは力を司る神で、本来は関わりは全くない。ウィルがファウスの下で動いていたなんて事実がなければ関わりを持つことはなかっただろう。そもそも、ウィルがフォースの継承者をしてなければ今、ここに存在もしていない。
そんな今の状況では全く関係ないことを考えていると、浅葱の治癒が始まった。
浅葱はピカの手を左手に、ポチャの手を右手で繋ぎ、目を閉じて集中する。すると淡く光がふわりといくつも天へと舞い上がっていく。
この光が生命力なのだろうと察した。今していることは、他者へと生命力を受け渡しているのだろうと。生命力を送り込むことで自然治癒を促し、回復力を向上させる力だ。やり過ぎると他者と他者を結ぶ役割の担う能力者は死んでしまうし、生命力を渡す側も危険な状態になる。
「“リレクター”……久しぶりに見た」
ウィルも使うことが出来るため、過去に何度か見たことがあった。ウィル以外の人物が使うのは初めて見るのだが。
少しずつ光が終息していくと、浅葱はゆっくりと目を開ける。ピカを見ると、規則正しく呼吸をして眠っているようだった。
「……はい。これでおしまい。ポチャくん、お疲れ様。気分は悪くないかしら?」
「ぼくは大丈夫です。浅葱さん、ありがとうございました」
礼儀正しく、浅葱に向かって頭を下げる。それを見て、浅葱は頭を横に振った。
「元はと言えば太陽がやったことだもの。むしろ、こちらが謝らなきゃいけないわ。本当にごめんなさい」
「そんな……危険なのはピカも知っていたことです。けどまあ、こんなことは予測してなかったと思いますけど」
「私も予想外だったわ。“サイレントキラー”は第三者からは全く分からない能力。離れていたし、何も感じ取れなかったのもあるとは思うけれど、それはただの言い訳ね。太陽も無意識だったみたい」
「そうでしょうね。……ピカも運が悪い。ともあれ、引き留めてすみませんでした。後はぼくがやっておきます」
「えぇ、任せる。ピカちゃんには……説明は不要かしらね? とにかく、何かあれば連絡してくれて構わないわ。お大事にね」
ポチャに笑顔を見せると、立ち上がって部屋を出て行った。出て行く瞬間、フォースに向かって何かを口にするがそれは声になっておらず、口パクであった。短い一言を読み取るものの、首を傾げる。
「……なんで関係者だってバレてんだ」
「はあぁぁぁ……寿命が縮んだ!!」
ホッとしたのか長い溜め息がポチャの口から漏れる。目の前でパートナーが命の危機にあったのだ。気持ちは分からなくはなかった。
「大丈夫か、お前ら」
「ぼくは元気。……ピカはしばらく寝たまま、なのかな。分かんないや。“サイレントキラー”受けて生きてる人なんて聞いたことないから」
「確かに。でも、こっからは出なきゃな」
「あぁ、うん。そうだよね……ピカの荷物持って早く出ちゃお……フォース、バッグ持ってくれる?」
「いいよ」
近くに置きっぱなしだったトレジャーバッグを持とうとしたが、今の自分の姿が過去の幼き姿だったことを思い出した。戻ることも考えたが、ここを出るまではこのままでいいかと考え直し、バッグの紐を調節して引きずらないようにする。
「準備出来た? 行こっか」
「ほーい」
眠ったままのピカを背負って、ポチャとフォースは部屋を跡にした。



~あとがき~
終わり! いや、終わってないけどな!

次回、イブ達と合流します。久し振りにイブ視点出来そうですね。

新しい能力の登場です。いえーい!
まず一つ目。“サイレントキラー”! 嫌な能力ですね。知らない間に殺されちゃったってのが出来る恐ろしい能力です。やばいね! これについては詳しく話すことはないです。本編にももう出てこないのではと思う。
二つ目。“リレクター”。これは回復系の能力です。他者から他者へと生命力を分け与える能力ですね。実は能力者自身の生命力を分けることも出来ます。出来ますが、これだと能力者の負担がマッハなので浅葱も試したことはないです。ウィルは関係ないと思いますけどね。

もうね。ごめんね? ピカちゃん、マジごめん。この“サイレントキラー”と“リレクター”の説明をしたいがためにこんなことに……というか、浅葱と太陽の能力公開したかっただけなんですよ……ごめんな。ほんと。
ピカ「……」
ポチャ「かなり機嫌悪くなってるよ!」
や、ごめん……大丈夫。今度は大丈夫……
ピカ「今度って何? 生死の境をさ迷う話!? 大丈夫じゃないからな!」
うん! 大丈夫!!!
ポチャ「はっきりしないね?」
ピカ「ほんとにね」

ではでは!

空と海 第169話

~前回のあらすじ~
バトルが終わり、ピカの頭の中で作られていたシナリオを話しています。今回もその続きですね。何を考えてピカはあんな風に動いていたのかって感じです。まあ、作中で語っている通りではあるけど。
ピカ「勝つために手段は選ばない主義~」
フォース「そのために自分が死ぬことになっても?」
ピカ「うーん……必要なら?」
フォース「お前怖いわ」
ホノオ「命大事にが大切だよ、ピカちゃん?」
ピカ「? はい」
もう怖いこと話さないでね……?
では、始めます!


「抜き打ちテストだったかどうかは置いておいて……大将が誰でもいいとなれば、相手を出し抜けると思いまして」
敵側の先入観を利用した作戦。ピカの用意した作戦はそれだったのだ。仲間にも伝えなかった理由としては相手に知られないようにするためである。
「エレキさんとかに悟られるの嫌だったんですよ。あの人、鋭いところあるから……今回に限っては杞憂だったみたいですけど」
「不安要素は減らしたかったってことかよ」
「そういうこと。……私が倒されても終わらないってことに気付いたら、まずは私を疑うと思った。何かしたんじゃないかって。目の前の私は本物なのかって」
「ピカちゃん、“ドール”を使うからそういうことを疑われても仕方ないかもね」
「そこで戸惑いが発生して隙が出来てくれればいいなって。そして、相手はまた考える。大将はどっちなんだと」
考えもしないからこそ、有効な手立てである。ピカだからそこ有効な手。初戦から仲間に指示を飛ばし、試合を思い通りに動かしていた。そんな彼女が大将でないなんて考えるわけがないのだ。
「最初の紹介でも補佐がリーダーだって感じの紹介だったのもある意味洗脳みたいなものですよね。私はそれを利用したまでです」
「駄目だったらどうしてた?」
「駄目なときはフォース君が何とかしてたんじゃない? 私は戦闘不能になることに意味があるわけで、倒れた後のことは知らないでーす」
「くっそ……投げやりだな」
勝つためなら自分をも犠牲にしてしまう。そんなことが出来てしまうのがピカなのだ。こんなパートナーを持つポチャは苦労するなと勝手に考えていた。
「あ、じゃあこっちの大将は誰だったの? 俺? フォースくん?」
「あー……それですか」
ピカは少しだけ考える素振りを見せるが、にこっと笑って返した。
「私は知らないです」
「そっかぁ」
「いやいやいや!? どういうこと?」
ピカの返答に深くまで突っ込まなかったホノオの間に割って入った。彼女は表情を変えることはなくその質問に答えた。
「言葉通りの意味だよ。見ないで選んだから。私を抜いた二人から勝手に選んできました☆」
「ピカちゃんらしいって言えばらしい。そういう作戦好きだね」
「マジか。誰も把握してないってこと?」
「あの場で戦っていた人達に限ればそうだね。運営は知っているから……私はね、少しの不安も残したくなかったの。些細な動作で私が大将じゃないって他の人だってバレる可能性がある。いや、私じゃないってバレるのはいい。特定されるのは困る」
万が一ということを考えての行動なのだろう。しかし、想定外という言葉もある通り、ピカが倒れる前にフォースやホノオが倒れる可能性だってあったはずなのに、そちらの心配はしていない。
なんて風なことをピカに問いかけてみると、苦笑しつつ答えた。
「あの場では誰でもやられる可能性があるんだから、そこら辺の心配はしても仕方ないかなって。まあ、やられる可能性が高いのは私だって思ってたし、ホノオさんやフォース君がやられるなんて想像出来なかったけどね」
「そこまで評価してもらえるのは嬉しいなぁ♪」
「……そういうこと、なのか?」
「ふう。とりあえず、私が答えなきゃいけないのはこんな感じ? もういい?」
一通り答えたと思ったピカはぐでっと再びベンチの上に寝っ転がった。ホノオはもう聞きたいことはないらしく、ありがとうとお礼を言った。フォースはまだ納得いってないようだが、話す雰囲気でもないと思ったのか、特に反対はしなかった。
「ホノオさん、本当にありがとうございました。今度、お礼しますね」
何度目か分からない謝礼にホノオは嫌がる素振りもなく、こちらこそと返す。そして思い出したかのようにぽんっと手を叩いた。
「俺、あいつにお灸を据えに行かなくっちゃ」
「え、あのバトルで十分じゃねぇの?」
「うん。俺ばっかり救助隊の仕事任せるからさ。このまま仕事行っちゃおうって思ってる♪」
「うえぇ? ストイックな……」
「そんなことないよ。真面目さで言うなら、ポチャくんには負けるよ~♪ ピカちゃん、フォースくん、それじゃあね~」
そのまま手を振って出ていくホノオをフォースも同じように手を振って見送った。この控え室にはベンチで寝たままのピカとフォースだけになった。こんなバトルをした後に仕事へと出掛けてしまう元気があるんだと感心してしまう。ホノオにあっても、パートナーにそれがあるのかは謎であるが。
バトルが終わった今、ここに長居する必要はない。そろそろイブ達とも合流しなければならない。ドアの方を向いていた体をくるりとピカの方へと戻した。
「おい。そろそろおれらも出るぞ。すぅ達も待ってるかもしれないし」
「んー」
返事はするものの、動く気はないらしい。寝たまま全く動かない。完全にスイッチが切り替わってしまったのだろうか。そうなってしまえば動かすにはそれなりの労力が必要である。が、フォースは何か違和感を感じる。
「ラル?」
「あぁ……ちょっとヤバイ」
「……どうしたらいい?」
「あさ姉様連れてきて。……多分、近くにいる。まあ、いなくてもフォース君なら分かるでしょ……早くしてくれると助かるな」
「一分だけ時間くれ」
届かないドアノブにもジャンプして器用に開けると、迷うことなく左に進んだ。正直、ピカが浅葱を連れてこいという明確な理由は分からないが、恐らく先程のバトルで何かあったのだろう。それも重大なことが今、起こっている。
「あのザングースに何かされたのか? 見てた訳じゃないから、見当がつかねぇんだよな」
考えをまとめるよりも先に前を歩く浅葱を捉えた。ついでにポチャも一緒にいるらしい。そして、こちらに向かって歩いてきていた。
「あ、いた。ペンギン!」
「フォース! お疲れ様。……ピカは?」
「控え室。浅葱さんだっけ? その人を連れてこいって言われた」
「あら。予想的中みたいよ、ポチャ君」
「……はあ。囮なんてするから」
フォースに名指しされたとき、大して驚きを見せることはなく、むしろ予想が当たって笑みがこぼれた。しかし、その笑みは当たって嬉しいというよりは、困ったような戸惑いが含まれた笑みであった。
「フォース君だったかしら? 早くピカちゃんのところへ戻りましょう。遅くなるとピカちゃんの命に関わるわ」



~あとがき~
一難去ってまた一難。ピカは運がないね。特に本編後半。いや、真面目に悪いと思ってる。(直すつもりはない)

次回、ピカの身に何が……?
大丈夫。死にはしない。(多分)

ピカ側の大将が誰なのかについてはもう少し待ってくださいね~! 運営側だったポチャ君の口から聞けると思いますので。多分。

次の話はやるか永遠と迷った話ですね。けどまあ、せっかくなんでね。やろうと思います。そんな軽い気持ちでピカを危険な目に遭わせているんですがね。仕方ないね! 私がルールですからね!
怒るならこんな目に遭わせた太陽に言ってね。私じゃないよ。
太陽「えー? それは責任転嫁ってやつだよー」
浅葱「転嫁してないわよ。私は正当だと思うのけれど?」
太陽「ん? そう? まあ、ハニーがそう言うならそうなのかもね」

ではでは!

空と海 第168話

~前回までのあらすじ~
雑だったけど終わりましたね。雑だったけど。
フォース「なんか最後までラルにしてやられたって感じだったな……結局、自分自身の力だけってことだろ」
ピカ「え? いや、そんなことはないけど。フォース君も言ってたじゃん。誰かが気付かなかったら意味がないって」
フォース「……そこは自覚してたんだ?」
ピカ「まあね。あ、でも……それが一番いいシナリオって位にしか考えてなかった」
フォース「そういうところだぞ。お前」
ピカ「え……ん? 何が?」
お二人さん? そういう話は本編でしなさい?
では、始めるぜ!


係の人が持ってきた回復道具でようやく目を覚ましたピカはフラフラになりながらも表彰台へと上がらされた。こんなものいつ用意したんだと心の中で突っ込みを入れつつ、また、リムの話を聞き流しながらぼんやりと終わるのを待った。表彰台に上がる前、フォースに軽く睨まれつつあることを耳打ちをされた。
「色々聞きたい。覚悟しとけ」
この言葉で自分の立てた計画をそれなりに理解してくれていたのだと察した。実際、フォースなら分かってくれるかなと期待はしていたのは事実である。ホノオは考えて動くタイプではないため、気付く可能性は低いだろうと踏んでいたのだ。
「……これ、勝ったらいいことってあるんです?」
目の前でにこにこと笑顔を絶やすことのない、我らの親方、プクリンに話しかけた。彼の治める領地で行われた祭りであるため、このイベントのトップも彼なのだろう。そもそも、なぜこのようなイベントを組んだのかも謎ではあるが。
「うんっ♪ 楽しかったでしょ?」
「思い出が『イイモノ』だよっ♪ ってオチかよ。いや、いいんだけど……もうどうでもいいんだけどさ」
「あはは♪ 大丈夫! ピカの喜ぶようなもの、ちゃあんと用意するから♪ だって、頑張ってたもんね! 偉いねぇ」
純粋にプクリンが褒めてくれたことに驚いた。ギルドで修行していたときはそれなりに褒めてもらっていたが、のれん分けをしてギルドを離れてからそういった機会も減っていた。当然、ピカの評価が上がったことも原因の一つである。久し振りに親方に褒めてもらったことが驚きつつも嬉しくもある。
「よく頑張ったね。お疲れ様、ピカ」
「……はい。プクリン親方の弟子ですからこれくらいします。親方の期待に応えるために」
「頼もしい~♪」
話もこれくらいに切り上げなければだらだらと続いてしまう。聞きたいことは聞いたつもりなので、ピカは軽くお辞儀をする。
「優勝おめでとう~♪」
「ありがとうございます」
差し出された小さなトロフィーとメダルを受け取り、仲間達の方へ振り返る。
「そういうの用意してあるんだね~?」
「無駄に力入れるんだな」
二人の反応はそれぞれだったが、どこか達成感はあるようだった。ホノオは目的を達成したようなものであるため、そちらのおかげかもしれない。そして、ピカの目標も達成された。このバトルロイヤルで優勝するという最大目標を。

「はあぁぁ……生きた心地がしなかったよぉ」
会場裏に移動したピカは用意されていた控え室に入るなりベンチに身を預ける。このまま目を閉じてしまえば意識を手放してしまうだろう。道具を使って体力は回復したとはいえ、精神的ダメージ、疲労は時間が必要だ。またしばらく起きることはないかもしれない。
「お疲れ様、ピカちゃん~♪」
「ホノオさん、お付き合いくださりありがとうございました……助かりましたよ」
行儀悪いと思いつつも、顔を上げることも億劫であったために突っ伏したまま返事をした。
「いえいえ♪ 俺も楽しかったよ。あいつのことボッコボコに出来たからね。満足」
「ブイさんのこと、あんなんにしちゃっていいんですか?」
「うん。連絡もなく放浪してたのが悪い」
ホノオはおおらかでポチャのように懐が深いところがある。あるのだが、パートナーには当てはまらないようでなかなか厳しいのである。そこは仕事と割り切っているのか、そちらが本性なのか、ピカには分からなかった。まあ、分かる必要もないかと思っている部分はあるのだが。
「おい。色々弁明したいことはあるか?」
「やぁだぁ……怒ってるのぉ?」
「それなりに。お前の言う通りに動くとは言ったけど、あそこまでするのは聞いてない」
「まあ、言ってないからね」
フォースの苛立ちも当然である。本人の知らないところで自分を大いに関わらせるような作戦を考えていたのだから。勝手に巻き込むなよってところだろうか。
重い体をゆっくりと持ち上げて、フォースと向き合う。ベンチに座っているため、フォースを見下ろす形になってしまっていた。
「色々聞いてあげるよ。ご質問はなんでしょう」
「とりあえず、お前のシナリオを教えろ」
「そうだね。……如何にレンさんを倒せるかどうかに焦点を当てた結果なんだけど。ホノオさんとフォース君で何とかしてもらうのが大前提なの。レンさんを倒すことの大きな障害は太陽さんとレンさんだ」
太陽の強さはホノオとピカは知っていた。相手のペースに乗せると恐ろしいくらい強さを発揮する。仮に二人がかりで大陽に向かっていたとしたら、先程以上に調子を上げていたことが予測出来た。それ故、太陽と戦うのは一人の方がよいと考えていた。
次にレンは強さで言えばなんとかなるレベルではあったが、何よりも空を飛べることが大きい。空中へと逃げてしまえば彼の独壇場だ。こちらからは手が出せず、相手の攻撃を避けるだけになってしまう。そうならないためには飛んだ相手に対抗出来るような手を持つ人が相手するしかない。
「レンさんに対抗出来るのはフォース君だけ。太陽さんは強い相手程、テンションを上げていく。だから、ホノオさんを太陽さんの相手に当てるわけにはいかなかった。太陽さんの相手は私しかいないわけ。でも、大将が私だったらその作戦は実行出来ないと思ってね。……リムに確認したの」
リムに確認した事は二つだ。一つはフォースの技について。もう一つが大将についてだ。
「フォース君の“チェーン”については感謝してよね。色々聞いたんだから。“チェーン”と“フレイムチェーン”は別物ですって言われないように誘導したんだからな!」
「頼んでねぇわ。どこにお得意の話術使ってるんだ。もっと使い道あるだろ」
「いやいや。こういうときに使うべきだから」
「まあまあ……それで、大将の件はどうして聞こうと思ったの? そもそも変更可能だったの?」
「リムの説明を聞いたときです。ルール説明の時に私達の名前を言わなかったでしょう? 大将のピカさんとレンさんを倒せば終わりですよって説明した方が見ている人には伝わりやすいと思いません?」
「言ってなかったね……確かにそう言った方が分かりやすいよね?」
「ですよね。それを聞いたとき、もしかしたら自由に選択出来るのではと思ったんです。……ま、案の定、私以外でもいいって返答が返ってきたんで」
「適当かよ」
「適当、というよりはわざとな気もする。あくまで私の予想だけれど、四天王の見守る中、補佐達が戦うなんて今までに一度もない。何て言うのかな……抜き打ちテスト、みたいな。そういうものだったのかも」
不自然なくらいに曖昧なルール説明で不信に思ったのだ。まるでルールの穴を見つけて相手を出し抜けと言わんばかりに。恐らくだが、これも補佐のリーダーとしての能力を測られたのかもしれない。未来的に四天王として束ねる可能性のある者達である。それ故、この機会に技量を見てみようと思ったのかもしれない。
「これ考えたの誰なんだろう……まあ、誰だろうと遠回しで嫌らしいけどね」
こんなことはこれっきりにして欲しいという思いが強い。お祭りのイベントでほぼ全員が深く考えていなかっただろうが、本気になったらこうはいかないだろう。お遊びの内だからこそ許される範囲だ。ピカは太陽のバトルに関してはお遊びの範囲を越えていたが。



~あとがき~
これで問題解決すればいいなって。

次回、とりあえずまとめは続きますよ。

親方がピカのために用意するご褒美ってなんだろうね。うーん……? ピカは何を貰ったら嬉しいんだろう。なんて、想像して待っていてくれると嬉しいです。本編でいつか出てくると思います!

バトル終盤、全然喋っていなかったピカちゃんが今回喋ってます。なんだか久し振りですね(笑)

ではでは!

空と海 第167話

~前回までのあらすじ~
レンとピカ、両者ダウンしたところですね。
どっちが勝つんでしょーか!?
フォース「語彙力皆無かよ」
もうここまでくると何も言うことはないんじゃよ。わかる? この気持ち!
フォース「全然わからない」
くそうっ!! もう始めてやる!!
フォース「お、お好きにどうぞ……」
引くんじゃない。悲しくなるだろ……


フォースに防がれたと分かると、太陽はすぐに飛び退いて距離を取る。どう仕掛けようか様子を見ているのかもしれない。
「話通じてる? そっちの大将は討ち取ったからこのバトルもする必要ないんだけど」
「俺から楽しみを奪うってこと? そんなのやだな」
「嫌とかそういう話じゃないのでは……?」
ピカとの戦闘でそれなりに消耗はしているはずだが、まだまだ戦い足りないようで、気持ちが高ぶっているようだ。疲労よりも気持ちの方が先立っている。一方、太陽と先程まで戦闘していたピカは立ち上がることもなく、倒れたままだ。フォースもピカ達の方を見ていたわけではないため、どちらが先に倒れたのか判断出来ない。
「今度は君が楽しませてくれよ……♪」
「だから……無駄なことすんなっての!」
太陽の“ブレイククロー”とフォースの“チェーン”がぶつかり合う。当たり所が悪かったのか、力を抑えているのが悪かったのか、フォースの鎖の方が砕けてしまう。
「めんどくさい……“でんこうせっか”」
でんこうせっか”で太陽の攻撃をかわし、背後へと回り込む。そしてもう一度、“チェーン”を出現させて太陽の身柄を拘束する。今度は力を抑えることなく、いつも通りのものを創り出した。
太陽は力任せに解こうとしているが、流石にびくともしない。フォースが自分側へ引っ張ると呆気なく倒れてしまう。
「……ったく。もう終わりなんだって」
「終わりなんてつまんないー! やり足りないんだけどぉぉ!!」
バタバタと駄々っ子のように足をばたつかせ、暴れるがフォースにはなんの意味もない。そもそも敵側の要求を飲む必要もなければ、終わりなのも事実である。
『どうやら決着が着いたみたいです!』
「やっと終わりか」
呆れつつホノオの方を見ると、たった今火柱が落ち着いたようで、倒れているレンのところに歩き出しているところだった。フォースも縛り上げた太陽を引きずりながらピカの元へと向かう。
「生きてる?」
なんて話しかけてみたが、見るからに無事ではないのは分かった。太陽の攻撃で軽い切り傷も出来てしまったようで、出血もしている。回復道具がなければ、目覚めないだろう。そして今、道具は何も持ち合わせていないためしばらくこのままだ。
「過激だな、お前」
「んうぅぅ!! もっと暴れたぃぃ!!」
「アホかこいつ」
ここには変な奴しかいないのかとでも言うように冷めた目を向けた。同時にこんなことに付き合っている自分も自分だと呆れてきた。
「だってぇ……ワンチャンいけるかなぁって」
「はぁ?」
「俺の方が早かったからさぁ……ピカちゃん倒すの。だからワンチャン、君ともいけるかなって?」
「……ふぅん」
太陽がそう言うのならそうなのかもしれない。レンより先にピカが倒れたのだろう。まあ、ある意味今更だが。
『なんだか色々ありましたが……結果だけを端的に申し上げますっ! 優勝したチームは……』
発表前のよく聞くドラムロールが流れ、ジャンッと一際大きな音が鳴った。そして司会を勤めるリムの声が響いた。
『ピカさん率いるチームです! おめでとうございますっ!』
リムの明るい声と会場の歓声。そして、戸惑いの声が混ざり合う。歓声は決着がついたことによるもので、戸惑いは理解出来ていない人がいるのだろう。主にフィールドで戦っていた張本人達である。
「……ほへぇ?」
レンをずるずると引っ張ってこちらに寄ってきたホノオが首を傾げながら不思議そうに呟いた。彼もまた、理解していない人物の一人だ。
「聞いた通りだ。おれたちの勝ちってこと」
「ピカちゃんがやられたのが先だったよね? 太陽くんがそう言ってるんでしょ?」
「そうだな。実際は見てないから知らないが。でも、見ていなくてもおれ達の勝ちは分かってたよ。あいつはチームの大将ではないからな」
「……そうなの?」
「そうなの。そう審判が言ってるんだから。大体、ピカの行動でも察することは出来たんだ。あいつの思考回路からして、自分が重要人物ならば守りに入る。そういう性格だからな」
遊び感覚で勝ちに拘っていなければ、当てはまらないのかもしれない。しかし、今回はピカは本気で勝利することを目指していた。必ず勝てる道筋を通るはずだ。いくつもの策を講ずる彼女なら、そうすることは分かりきったものである。
「自分が倒れたら即終了なのに、単騎で危ない人のところに突っ込むか? 実力も分かっている相手だぞ。無理があるだろ。それに気付いたから、ザングースはこっちに突っ込んできたんだろ?」
「まあねぇ……ピカちゃんが倒れても終わりそうにないからさ~……やられたなーって思って。まあ、君に声かけられて冷静になって考えた結果なんだけどね?」
フォースが声をかけてなかったら、まだ攻撃するつもりでいたのだろうか。何かのトリックでも使って、倒れたフリでもしているとでも考えていたのだろうか。そこら辺の真意を確かめてもよかったのだが、ろくな返答が返ってこなさそうなので何も言わなかった。
「つまり、自分がやられても試合が終わらないと知っていた。だからザングースとも本気になってぶつかったし……囮になったってことだ。ピカは司令塔ではあったが、大将ではない……大将はおれかホノオのどちらかだな」
「二人ともどっちが大将か知らなかったの?」
太陽の質問に二人は同時に頷いた。知っていたらもっと慎重に動いている。
フォースの違和感の正体はここであった。彼女の性格とは違う行動を取っていたこと。大将というポジションにいながらも、自ら危険な立ち回りを請け負っていた。また、ピンチに陥っていたにも関わらず助けを求めることなく、一人で戦っていたこと。これらのことに関して不思議に思っていたのだ。代わることだって出来たし、回復したいのならそれなりの時間を稼ぐことだって出来た。しかし、そうしなかった。否、する必要がなかったのではないかと考えたときに、最初の前提が間違っていると思ったのだ。大将がピカであるという前提。ここが間違いであった可能性だ。そう考えれば、彼女の行動は変ではない。
つまり、ピカは仲間をも騙している可能性に気付いたのである。
「自分が重要人物でなければ、大胆に前に出られる。元々自己犠牲精神高めな奴だし、囮なることだって疑問にも思わない。それに相手はピカが大将だと思っていただろうから適任ではあるし」
「え~……? つまり、俺達は策にはまってたってことぉ?」
「あ、レン。起きたの?」
大の字になっていたレンが目を覚ましたらしい。あんな技を受けたのに話せるくらいには回復したようだ。
「ま。アナウンスも火柱が収まってから流れたし、それも大将がピカではなかったってことの証拠の一つでもあるだろう。きっとピカだったならザングースにやられてすぐに流れていたはずだよ」
「にゃるほどねぇ……敵を騙すなら味方からってね。ピカらしい~」
この場にいるピカ以外のメンバー全員、彼女の筋書き通りの物語を演じたということになる。フォースとホノオはピカが大将だと思っていたし、そう思って行動をしていた。また、敵である三人もそう考えていただろう。
「……賭けが大きすぎる。気付かなかったらどうするつもりだったんだ」
彼女の策は、味方の誰かが気付かない限り利用することは出来ない。今回はフォースが気付いたから、レンを倒すことに本腰入れたわけである。仮に気付かなかったら“チェーン”を使った強行突破なんてしなかった。
「逆に言えば……それくらいしなきゃ勝てないって思ってたのかも」
そこら辺はピカが起きてたから聞いてみてもいいかもしれないとなんとなく思った。



~あとがき~
ごっちゃごちゃやな……
分かりにくくてごめんなさいね。まあ、でも、終わりですよ……

次回、バトルロイヤル締め括りまっす。
ぶっ倒れたままのピカちゃんも起こします。多分。

何が言いたいかってピカちゃんはフォースもホノオも騙してましたってことね。何も聞かされてないんで、二人ともピカが大将だって思ってました。敵側もそうですね。ピカでしょ、やっぱ。みたいな先入観に囚われてたってことです。
最初のルール説明、わざと大まかにしか説明しなかったので色々裏は突けるんですよね。なのでピカは運営側に確認取って今回の策を実行しています。……屁理屈と言われればそれまでですね!((殴

何か聞きたいことあれば次回以降お答えしますよ! バトルの作戦とかもピカが本編で話してくれると思いますよ。あればだけど!

ではでは!

空と海 第166話

~前回までのあらすじ~
ピカちゃん大ピンチ。一方、違和感の答えを見つけたらしいフォースでした!
ピカ「……マジでヤバイなぁ」
フォース「そうだな」
やめて! 主人公のあなたが倒れたら誰がこの小説を引っ張っていくの!?
ピカ「それさぁ、最終的に『次回、ピカ死す』! みたいなネタバレタイトルコールされる奴……?」
デュエルスタn…
フォース「やめろ。悪ノリをするんじゃない」
ピカ「始めまーす」


どう動くかはまだ曖昧にしか考えてないが、第一段階としてはどうするかは決まっていた。レンを見上げながら、ぷくっと頬を膨らませる。
「飛んでるの、ズルいんだよ。ズルいから地面に落としてあげるねっ!」
「落とす? なんかの技でも……でも、イーブイにそんな技ないよな?」
「この戦いではオリ技が使えるんだよ?」
にこりと笑うと、パチンと指を鳴らした。その瞬間、レンはいきなり圧迫感を感じた。何かに縛られているような感覚。そして、そのせいで翼は機能しなくなり地面へと垂直に落下する。
「いだっ!? え、なん……麻痺のわりには痺れを感じないし……? どうなって……」
レンは見える限りの範囲で体を見るものの、何も異常は見当たらない。が、確かに縛られている圧迫感はある。原因がまるで分からないらしい。
「おれの知り合いに似たようなことする子がいるんだよね。面白そうだから真似てみた。まあ、あの子のとは性質はまるで違うし、原理だって違うんだろうけど、効果は似たようなもの創れた」
「……は?」
「その子のは“ファントムチェーン”っつったかな。強度も申し分なくて、尚且、視界に写らないって言う鎖。おれのそれは視界に写らないけど、絶対に壊れないって言い切れない。むしろ、おれの使う中で一番弱いものだ。仕方ないよね。見せないことに力を使えば他が疎かになっちゃう……だけど、他に能力を付けたんだ。他のものにはない、特別な能力」
困惑しているレンに対して淡々と説明をしていく。律儀にする必要もないが、フォースはお構いなしに話を進める。
「一つ目はおれが発動するまで鎖としての役目を果たさないこと。さっき、おれ、おじさんに触ったでしょ? 実はあのときに技を仕掛けてたの。でも、縛られている感覚なんてなかったと思う。まあ、そういう時限装置のような……うん。遅効性の毒みたいなものだと思ってよ。そういう効果」
縛られて動けないレンは黙ってフォースの話に耳を傾けていた。自分の知らない技を使われ、この状況に陥っていることは理解していた。それが一体なんなのか、それが知りたいのである。
「二つ目。その鎖は人の目に見えない。でも、見せることも出来るんだけど、そのときにはもう別物ってことだ。つまり、別の効果を持つ鎖に変化する。全くの別物に変化するってことだ。だから、脆いそれをこうすることも出来る」
フォースが足元から何かを拾う仕草をし、もう一度パチンと指を鳴らした。すると、フォースの手の中に鎖が現れ、レンに巻き付いているものも可視化された。フォースの持っている鎖がレンを縛る鎖と繋がっていることも分かる。
「これ、おれの得意技“チェーン”って技。で、まあ、ただの鎖ではないんだよな。……燃え盛れ“フレイムチェーン”!」
「フレイムってことは……っ!!」
フォースの持つ鎖から導火線のように火がつき、レンを縛る鎖へと燃え移る。“れんごく”の中にいるかのような錯覚を起こすかのような熱さに驚きを隠せなかった。全身を包むほどの火柱が立っているわけでもない。強く燃え上がっているわけでもないのに、かなりの熱さに話すこともままならない。
「見た目以上に熱いんじゃないかな。いやはや、最初は苦労したよ? ひさっしぶりに技の特訓なんてしたし、全然扱えないし。あはは。もうね、落ち込んだわ~…………嘘だけど」
鎖自体が炎へと変化し、本来形なき炎が鎖としてレンの体に巻き付いていた。じわじわとレンの体力を確実に奪っていく。
「おれがペラペラと無駄なこと喋ってるのも理由があるわけよ。単純なんだけどさ、時間稼ぎしてるわけ。ホノオの技をお前にちゃんと当てるための」
「!?」
ホノオの技について心当たりでもあるのだろう。どうにか抜け出そうと無理矢理引っ張ってみるも、ある一定以上離れることが出来ない。フォースをそこから一歩も動かすことが出来ないのだ。
「無駄ついでにもう少し話そうか? “フレイムチェーン”は縛られている以上、相手の自由を奪うだけでなく炎によるダメージが入る。そこそこ頑丈でおれの力加減で炎はどうにでもなるってやつ」
見せた方が早いと思い、持っている一部分だけの炎を弱めてみた。ごうごうと燃えていた炎が落ち着いた暖炉のような静けさを見せる。
「まあ、こういう感じ。……さて、そろそろホノオの準備も終わるだろ。楽しかったよ、一応ね」
持っていた鎖をパッと手離すと、その場から離れた。ホノオの技に巻き込まれないようにするための処置である。何も話せないレンは、フォースのやることすることを黙って見ていることしか出来ない。フォースが何か気づいたのかくるりと振り返る。
「そうそう……一生そのままってことはないから。きっとホノオの技を受ければ壊れてくれるよ」
それだけを言うと、再びレンに背を見せてその場から歩き出した。ここまで時間稼ぎをすれば、問題ないと判断したのである。
「ありがとね、フォースくん。俺の仕事は確実に仕留めることだね~」
集中して、技の精度を高めることに専念していたホノオが両手で強く地面を叩く。それだけで会場全体が揺れ、地震でも起きたのかと錯覚してしまうほどの圧が放たれる。
「”インフェルノ“」
静かにその技名を言い放つ。その瞬間、レンの周りで火柱が立ち始める。一つ二つと囲うように現れては消えを繰り返している。
「地獄の業火、たんと味わってね?」
ホノオはそう言うと、拳を地面に叩きつけた。すると火柱が今までで一番高く、また激しく燃え上がった。これが戦いの場ではなく、パレードのような類いで見世物であれば、間違いなく歓声が上がっていただろう。それほど美しくもあるのだ。
その火柱の中心にはレンの姿がある。フォースの鎖は壊れてしまったが、もう縛る必要もないだろう。

「”インフェルノ“……とんだ大技仕組んでたな。”れんごく“の上位互換の技だったっけ」
被害が飛んでこないところで”インフェルノ“を見上げていたフォースは苦笑を浮かべていた。確実に倒せる技をと言ったものの、ここまでの大技を出すとは思っていなかったのだ。
「炎タイプですら火傷を負うって話だけど、実際はどうなんだろうなぁ……まあ、あり得る話か」
インフェルノ“を繰り出すにはそれなりの鍛練が必要で時間もかかるため、使用する人はあまりいないという。戦闘ではほとんどの場合、咄嗟の判断が必要で迅速な対応が求められる。そのため、溜めが必要な技なんかは必然的に使用者が減る傾向にある。
「とりあえず、これでフライゴンは戦闘不能になるだろ。断定出来ないが、問題はない……?」
ふとここでは感じることがないものを嗅ぎ取る。ものというよりは、気配、臭いと言った方が正しいかもしれない。むしろ今までどうして気づかなかったのか不思議でならないくらいはっきりと感じ取れた。
「……血の臭い? どこから」
臭いの元へ目線を向けると誰かが倒れているのが見えた。そして、その倒れている人物へ向かって攻撃をしようとしているのも見える。それを見たフォースは反射的に”チェーン“を出して、攻撃をしようとしている人物に向かって叫んだ。
「もう決着は着いた! 無駄なことするな!」
この言葉が届いたのか、ピタリと動きが止まる。動きは止まったが攻撃体勢なのは変わらない。ゆっくりこちらに方向転換すると、かなりのスピードで突進してきた。振り上げた腕を”チェーン“で防ぐ。
「あいつは戦闘不能になってるのに攻撃する必要なんてないんじゃないの。ねえ、ザングースさん」



~あとがき~
おかしいぞ……こんなはずじゃなかった……
ピカちゃんをボッコボコにするシーンは面倒なんでないです。多分。

次回、レンとピカが倒れ、勝敗はいかに……?

全体を通して、フォースが保護者ポジションにいますね。指示出したり、考えたりと忙しいね。
フォース繋がりで補足するけど、今回のルールではオリ技は一つだけ使えるって話でした。彼はあくまで“チェーン”を使っているので、“フレイムチェーン”とか透明の鎖は派生技って感じです。つまりノーカンです!!((←暴論

今回はオリ技がいっぱい出ました!
まずはフォースの”チェーン“より、応用ver.に当たるんでしょうかね。透明で見えない鎖と“フレイムチェーン”です。見えない鎖は名前はないんじゃないかと。その場で即席で創った奴なんで(笑)
“フレイムチェーン”は前に登場したマグマラシのアラシ君から伝授してもらったものをフォースが自分で使いやすくするために改造(?)してます。
次にホノオが使っていた“インフェルノ”です。作中でフォースがちらっと言っていますが、“れんごく”の応用技ですね。単純に攻撃範囲が広いのと大ダメージが与えられ、炎タイプだろうがなんだろうが火傷状態にさせちゃう技。代わりにそれなりの溜めはいるし、隙は出来るし避けようと思えば避けられちゃいます。まあ、中途半端に避けようとしても無理そうだけどな!

ではでは!