satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第259話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で回想する物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ベヒーモス(ゴーレム)を倒した二人の前にユウアちゃんが出てきました。で、色々(?)教えてくれたわけですが。
はてさて、まだまだ謎は多いです。解明したいところですな!
ラル「今回で解明するとは言っていないんだよなぁ」
ティール「はは……そだね」


《L side》
“時空の叫び”で浮かび上がってきたのは、二人の人物が話している光景だ。地面に両膝をつき、花を愛でるミルティアとそのミルティアに向かって、何かを訴えるマント男。
両者とも私に背を向け、顔は見えない。どうやら、どうしても私に顔を見せるつもりはないらしい。
何度も発動しているのだから、一度くらいは顔を見せてくれればいいものを……!
「お前は『贖罪』と言ったが、それは、お前だけが背負う罪じゃない! この罪は俺にだって責任があるだろう!?」
男の訴えにミルティアは答えない。全てを聞くまでは、話すつもりはないのだろうか?
彼の訴えは続く。
「この花が咲き乱れるまでの時間稼ぎは、何もお前の命と引き換えにしなくてもいいはずだろ! 他に方法はあるはずだ!」
命と引き換え……あの昔話の通りだ。
「なんなら、民に慕われているお前より、俺の方が適任だろ!? 俺の命を─」
「アルマ!!」
男の話を遮るように、ミルティアは叫びながら振り返った。
と、ここでマント男の名前が「アルマ」であること。ようやく、ミルティアの顔を拝めることに気づいた。
……ん? あの、顔は……?
ミルティアは私の知る人物によく似ていた。もちろん、所々に違いはある。赤と青のオッドアイだとか、髪の長さだとか。
それでも、ミルティアの顔立ちはツバサちゃんによく似ていた。
私が驚いている間にも、話は続いていく。
「民に慕われているのは、あなたも一緒でしょ?」
ミルティアに問われ、マント男改め、アルマは押し黙る。思い当たる節でもあるのか、反論できないでいるらしかった。
「それに……あなたには、今度こそ幸せになって欲しいの。人として……父親として」
今度こそ……?
今まで、アルマという人物の境遇はよくなったのだろうか。それをミルティアは知っているから、彼を犠牲にする選択肢は考えられなかった、のだろうか。
……それもあるのだろう。けれど、一番の理由は違う気がした。
「俺の、幸せ……」
「うん。上のおじさま達に嫌われているあなたがやっと手に入れる幸せ。だから、私はあなたに幸せになって欲しいの。……私の分まで、幸せになって欲しい」
どうやら、アルマは上に住む……天界に住む他の神々に嫌われているらしい。理由は分からないが、彼は上で対等の存在として扱われていなかったのかもしれない。
「もちろん、死ぬのが怖くないってわけじゃない。……けど、この国の民や自然……そして、一番大好きなあなたの幸せのためなら……怖くないよ」
優しく微笑むミルティア。とても、悲しそうに笑う彼女にアルマは何を思うのだろう。
アルマはずっとミルティアに対し、彼女がやろうとしていることに反対していた。そんな、彼は、今をどう感じるのか。
彼女の意思の固さを痛感しているのだろうか。
彼女を守れない自分の無力さに怒りすら覚えているかもしれない。
「万が一、《女神》である私と《死神》であるあなたとの子供の存在が上にばれてしまっても、子供達より力の強い私が先に世界のための礎になれば、今は少なくなっている魔素も増えてくるはず。魔素が増えてくれば、おじさま達も何も言えないはずだよ」
ミルティアは立ち上がり、アルマの傍へと歩み寄る。変わらず、優しい微笑みを携えて。
「だからね、アルマ」
ほんの少し背伸びをして、両手で包み込むようにアルマの頬に触れる。
私からは、後ろ姿な上にフードをすっぽり被ってしまっているアルマの表情は窺えない。それでも、酷く哀しそうに笑うミルティアが伸ばした手に彼の手は重なるように置かれていた。まるで、彼女の体温を確かめるように。
「私の分まで、子供達のことをお願い。ルークくんも全て事情は知っているから、協力してくれる」
「ルーク……? なんで、人間のあいつも知っているんだ」
「それが交換条件だから。ルークくんが本当に愛してる人と結ばれるように私が協力して……反対に、私とあなたが結ばれるように彼に協力してもらったの。……他にも約束してることはあるけどね?」
ここに来て、新たな人物が出てくるとは。誰よ、ルークって。名前や口振りからして、神様関係者ではなく、人間の男性みたいだけれど。
ミルティアからの告白はアルマは知らなかったらしく、彼からは小さなため息が漏れる。
「……最近、やたらあいつと一緒にいると思ったら……そういうことかよ」
「えへへ♪」
先程まで深刻そうな顔をしていたミルティアだったが、一転して無邪気に笑っていた。アルマの反応が嬉しかったのだろう。いたずらっ子のような笑みで、楽しそうに問い掛ける。
「もしかして、嫉妬した? 嫉妬してくれたっ?」
「……ったく」
「ねぇ、アルマってば~……? って……きゃっ!?」
自身の頬に添えられていたミルティアの手を退けたと思ったら、アルマはミルティアを抱き締めた。これにはミルティアも驚いたようで、戸惑ったようにアルマを見た。
「ア、アルマ……?」
「…………時間はまだ、あるだろ」
「へ?」
「お前が……ティアがその命を世界に捧げるまでの時間。……それまでの時間はまだあるはずだろ? だから、今は……納得することにした」
「アルマ」
「けど、これだけは忘れんな」
彼は、強くミルティアを抱き締める。
彼女の存在を確かめるように。
まだ、そこにいると確認するように。
「俺の一番の幸せはお前の傍にいることだ」
「……っ!」
「それだけは……絶対に忘れんなよ。絶対に、他の方法だってあるはずなんだから」
「うん。ありがと。……ごめんね」
強く強く抱き締めるアルマに応えるように、ミルティアも彼を強く抱き締め返した。
歴史を見れば……あの昔話の通りなら、彼の願いは叶わなかったのだろう。
この国は、ミルティアが作り、壊しかけ……そして、自分自身を犠牲にして成り立っていた国なのだろう。
そのとき、彼は、アルマは何を思ったのだろう。
……私には分からない。分かるはずもない。
これが、女神の罪。
これが、物語の真実。
「──そう。これが、私の『罪』。そして、この国の真実」
え……?



~あとがき~
いつもより短いけど、これ以上は長くなる予感しかしないので、終わります。

次回、読者であるはずのラルに話しかけてきたのは何者なのか……!

ちょこちょこ出しではありますが、色々出てきてます。ついてきてますかー!!??
私ですか? 怪しいところっすね!!←

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第258話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でお話ししてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、残っていたベヒーモス(ゴーレム)をティールが倒してくれました!
やったね!!
そんでもって、今回は消えてたあの妖精ちゃんが帰ってきます。


《L side》
「お二人とも、お疲れさまでした~♪ 凄かったです~!」
私の問い掛けを聞いていたのか、はたまた単純にタイミングがよかったのか。……何れにせよ、ユウアちゃんは激励と共に再び、私達の前に現れた。
「あっ!? ユウア! 戦闘があるって前もって言ってくれてもよかったんじゃないの!?」
「それについては、謝罪します。しかし、ルーメン様から、ここでの戦闘に関して口止めされてましたので、言えませんでした♪」
ティールの抗議も笑って受け流すユウアちゃん。過ぎたことではあるが、まあ、言うだけならタダだ。
とはいえ、ルーメンさんはここで戦闘があると知っていた。そして、最後の試練という言葉。……これは恐らく、私の考えるもので間違いないだろう。
「……で? 最後の試練に私達は合格なの?」
私はティールからそっと離れ、頭上にいる妖精を見上げ、問い掛けた。
ユウアちゃんは私の問いににこっと笑う。
「はいっ! 戦闘面では、合格ですっ!」
戦闘面では、か。
私達は試されていた。この依頼を通じ、強さと謎を解く力、思考力があるか否か。
それが何を意味するのかはまだ、分からないけれど。
「ユウアには色々聞きたいんだけど……そろそろ、この場所について聞いてもいい? さっきはベヒーモス……じゃなくて、ゴーレムに邪魔されて何にも聞けてないから」
「はい。ここ……『奇跡の洞窟』の全てをお話しします」
ユウアちゃんに連れられ、色とりどりの『女神の涙』が咲く部屋へと戻ってきた。そして、適当なところに腰を下ろすと、ユウアちゃんはそっと口を開いた。
「最初に『女神の涙』について、まだお話ししていないことを伝えます。私はあの花を魔力石だって話しましたよね?」
中間地点でそんな話を聞いた気がする。しかし、それを今更話すのはなぜだろう?
あの花に何か別の役割があったとして、それを開示する理由とはなんだろう?
「女神の涙は、魔素を放出する役割もあるのです」
「えぇっと……放出ってことは、花が魔素を出してるってこと?」
ティールの問い掛けにユウアちゃんはゆっくり頷く。
「本来、魔力石は魔素が魔力へと変化し、結晶化した物です。しかし、女神の涙はその逆もできるのです」
「逆、ねぇ……? ってことは、結晶化した魔力を魔素へと変換し、空気中へ放出する?」
「その通りです、ラル様。かつて、女神……ミルティア様が花を咲かせる際に自身の魔力を使って、そういう性質へ変えたと言われています」
なるほど。時空の叫びで視た魔素を増やすとは、これのことだったのか……そして、この花が咲くまでの間の時間稼ぎにミルティアは自身の魂を捧げたのだろう。
「変わった性質だなぁ。なんで、わざわざそんな性質にしたんだろう? 場所で差はあるけど、魔素なんてどこにでもあるじゃないか」
「それは平和な今だからでしょ。……昔はそうじゃなかったのよ。もっと言えば、ミルティアが存在していた時代では、ね」
「……あっ。昔話にある……?」
あれが事実なら、ミルティアが魔素を放出する花を作った理由も分かる。
魔素が尽き、争いを始めた人々を仲裁するためだったから。……まあ、実際のところ、争いがあったかは分からないけれど、少なくとも、魔素の枯渇はあったのだろう。でなければ、女神の涙が存在する理由が分からない。
「ちなみに……女神の涙は近日、行われる女神祭でも利用されるんですよ? ここまで言えば、私がなぜ、こんな話をするのかもお分かりでしょう?」
まぁねぇ……ある程度は予測している。
ティールはあまりピンとこないのか、小さく首を傾げる。もう少し、考えてほしいものだけれど、考える役目は私だ。答えを言ってしまうか。
「依頼にある緑の石の採取が『女神の涙』の採取だった……で、OK?」
「えっ!?」
「薄々、気づいてはいたんだよ。わざわざ、こんなところを指定したってことは、ここにしかない何かが欲しい。で、石は色々あったけど、壁のそれはここでなくとも手に入るものばかり。じゃあ、他に石はないかと考えれば、答えは見えてくるもん」
まあ、奥地に来るまではあくまで可能性の一つでしかなかったのだけれど。ここで他の色の女神の涙を見てから、予想から、確信に変わったのだ。
「流石、ラル様。察しがよくて助かります♪ お話が終わったあと、お二人には花の採取をしていただきますね」
採取はいいが、壊さないようにするのは神経を使いそうだ。
「ユウアちゃん、あんまり期待はしてないけど……緑多めの理由は教えてくれない?」
「え~っと……それは私の口からは何とも♪」
……ぐぬぬ。この調子だと、ルーメンさんに問い掛けたところで、当日まで内緒にされそうだな。考えるだけ無駄なのかもしれない。
「では、女神の涙のお話はここまで。……では、この場所についてお話ししましょう」
奇跡の洞窟そのものについて、か。
しかし、それに関してはある程度、能力で見聞きしたような。
「女神の涙と呼ばれる花……女神が作り出したゴーレム……ここは女神にとって、大切な場所って解釈は間違ってないよね」
「はい。……ラル様はこの件に関して、既に確信めいた思いでいらっしゃるのですね。それなら、私から話せることはありません。それに、ラル様の考えているものは、私ではなくルーメン様にお伝えする方が適切かと」
……ふむ。
「そうね。そうさせてもらうわ」
とはいえ、だ。
今まで視てきたものだけでは、まだ足りない。謎が解けそうにない。
想像だけで補うにも、ルーメンさん相手にそれは通じないだろう。ある程度、事実は必要だ。
マント男の正体も分からない。何より、ミルティアが口にしていた「贖罪」という言葉の意味も不明なままだ。
マント男との関係性そのものが悪なのか。
この地に干渉しすぎて、咎められてしまったのか。
誰かと子を成したことが悪なのか。
……それとも、私の想像つかないような何かがあるのか。
その辺りがあやふやなままでは、ルーメンさんに話すに話せない。大体、ルーメンさんがミルティアの謎の解明を試練としていた場合、あやふやなのはアウトだ。不合格と言われてしまう可能性が高い。
何をどう試されているか分からない以上、分からないをそのままにしておくのは得策ではない。
もっと、何かないか……?
今まで視てきたものにヒントはなかったか? 話の中にヒントは……?
「……ラル様、ご案内したい場所があります。場所というか、お見せしたいが正しいでしょうか」
見せたいもの?
「はい。ラル様なら、それに触れれば視えるのではないでしょうか?」
ユウアちゃんの提案に私とティールは互いに様子を窺った。
ティールは少しだけ悩んでいたように見えたが、小さなため息をつき、ふわりと笑う。
「ここまで来たら、とことん付き合うさ。君が倒れても面倒見る。……気になるんだろ? 一緒に行こうか」
「うん。……ありがと、ティール」
「あはは。お礼を言うのは、能力が発動したらにしよう。もしかしたら、不発に終わるかもだし」
それは……考えたくはないが、可能性がなくはないのも事実である。悲しいかな、女神の涙に触れても不発に終わったのは、何度かあるわけで。
いやいや。失敗のビジョンを浮かべてどうする。視てやるという気持ちでいなければ。何事も気持ちが大切だ。そんな気がする!
「では、ご案内します」
と、ユウアちゃんに案内された先にあったのは、今まで通り、女神の涙だった。色も白。これまでに見てきたものと大して違いはない。しかし、今まで見てきた中では、一番大きな花であった。大きいといっても、一回り二回りくらいなので、滅茶苦茶大きいわけでもないが、それでも周りに咲く女神の涙の中では、一際、目立っていた。
「この中で一番、魔力を備えているんだろうな。……どう? いけそう?」
彼の問いに、小さく頷く。
普段、こんなことを思うことはない。例え、直感だとしても、感じたことはない。
けれど、今……はっきりと感じる。
……この花に触れたら、“時空の叫び”が発動する。
そんな、直感。
花の傍にしゃがみ、触れる……前にティールを見上げる。私の視線に気づいた彼は、優しく笑って頷いてくれた。
心配はいらないと、安心させるような笑顔に私もつられて笑う。
……覚悟を決めよう。これが、きっと最後になる。ここで私の知りたいことを知る最後のチャンスだ。
私はそっと手を伸ばし、大きな『女神の涙』に触れる。
その瞬間、ぐらりと目眩に似たそれを感じ、能力の発動を察した。
さぁ……視せて。ミルティアの過去を。そして、彼女が犯した罪とやらを。



~あとがき~
もうそろそろ、奇跡の洞窟編は終わりそうか……?

次回、時空の叫びで視たミルティアの過去。
そして、贖罪とは……?
ってのが、分かればエエな! エエな!!

特に語りたいことはない……ぶっちゃけ、いいところで切ってしまった感ありますし(汗)
次回に回しましょう。はい。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第257話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で戦闘してる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ラルの手によって一体のベヒーモスことゴーレムさんが葬られました! 残るはあと一体!


《Te side》
ラルの放った“雷槍”によって、コアだけでなく、その体ごと貫かれたベヒーモス……ゴーレムは活動不能になり、跡形もなく崩れていった。
コアを破壊するだけなのに、あそこまで派手な大技を仕掛ける必要があったのかは分からない。まあ、彼女のことだ。一発で仕留めようと高火力な技を選んだに過ぎないのだろう。
「ラルと雷姫さんが組むとどうしても派手になるよなぁ」
『ひめちゃ、おつよいのら!』
そういうことなのかな……?
ラルは地面に突き刺さった雷姫さんを抜き、こちらを振り返る。いつものラルではなく、探検隊ver.の真面目顔で。
あぁ、こんなときにこんなことを考えるのは変だけど、滅茶苦茶格好いいなぁ……っていうのは、女の子に失礼かな。
雷姫さんを鞘に納め、足止めにと呼び出したドールも帰すと、ぼくの方へと戻ってきた。そして、ラルは小さく首を傾げる。きっと、ぼくが黙って見ていたから、不思議に思ったのだろう。
「どうかした?」
「何でもないよ。あの一体はどうする? ラルが片付ける?」
「ん~……そうしたいけど」
と、ちらりとぼくが捕まえている残り一体を見つめる。仮にラルが倒す場合、スイによる拘束を解く必要がある。
「……せっかく大人しく捕まってくれてるのに、それを解くのはちょっとね。心なしか、怒ってるような気もするし。ということで、ティールに任せて、私はサポートに回るわ」
そりゃあ、相方を倒されたのだ。怒らないわけがない。まあ、ゴーレムにそういう感情みたいなものがあるのかは分からないけど。
精霊のゴーレム……というか、リアさんの精霊であるソイルにはあるみたいだけど、こういう場所にいる敵のゴーレムはどうなんだろう?
パートナーを殺されて、激怒しているのだろうか?
うぅん……そういうのを考えると、ちょっと申し訳ない気がしてくるけど、ユウアは倒してくれって言ってたし、倒される前提なんだよな。なら、気にしても仕方がないか。
やらなきゃ、こちらがやられるだけ。そういう世界。
あいつが片割れを大切に……思っていたかは分からないけど、少なくとも仲間意識はあったはずだ。番なら、尚更。
けど、ぼくだって、同じだ。
ぼくは装備を銃からセツへと変更し、隣に立つラルに笑ってみせる。
「じゃ、サクッと倒してくるね」
「お~……サクッと?」
「うん。一思いに。ほら、あいつだって、相方のところに早く行きたいかもしれないし」
「……ティールって時々、怖いこと言うよねぇ。無自覚?」
ん~……怖いかな?
誰だって痛いのは嫌だろうし、それなら、できる限り早く終わらせるのがせめてもの優しさみたいなものだと思うのだけれど……?
「ま、相手がモンスターだから、まだいいけどさ。それ、対人戦でも思ってないよね。思ってても口にしないでよ?」
「う、うん? 分かった……?」
ラルの謎の忠告にとりあえず頷き、意識を目の前のベヒーモスモドキへと向ける。
さっきはラルの大技に驚いていたけど、あれくらいの方が倒せるのかもしれない。コアの硬さが分からない以上、こちらはできる限りの火力をぶつけた方が確実ではある。
今のぼくにできる、最大火力、か。
「ねぇ、ラル?」
「ん?」
「三十……いや、十秒でいいや。時間くれない? 白雪、呼びたい」
「そこまでする!? あ、いや、うん……やりたいなら、止めないけど……なんで?」
ぼくはラルみたいに強い一撃を与える技をあまり使えない。どちらかと言えば、手数勝負を仕掛ける方が得意だから。
まあ、使えなくはないけど、それは能力を併用するからできるのであって、その能力を発揮させるには水がいる。そして、その水はぼくが作るんじゃなくて、自然にあるものがいい。力の温存ができるから。
でも、ここにはそういうのが見当たらない。じゃあ、もう白雪で仕留めた方が早いってもんだ。ちなみに、普段はあまりしない。なぜなら、ラルがそういうことの担当だから。
「火力勝負をするため、かな。白雪でやる方がいいなって」
「確かに白雪ちゃんの火力凄いけど」
「それに試したいって思ってた。白雪で真っ二つ作戦」
「……あは。どっかの兄さんみたいなことするのねぇ」
あはは……もちろん、やるからにはコアごと真っ二つだけど。
「了解。ティールの言う通りにしよう。けど、あんまり時間かけないでよ? 私、さっきので結構やりきったんだから」
「いやいや、余力は残そうよ。この後もあるかもしんないだろ?」
「残してるよ。一応、あいつも倒そうと思えば倒せるくらいはね」
疑わしい……これは早く終わらせるに限るな。
「三秒後、スイを呼び戻すね」
「了解」
ラルは納めたばかりの雷姫さんを再び抜刀すると、一直線に敵の方へと駆け出していく。ぼくは宣言通り、スイを手元へと呼び寄せた。それは同時に敵の束縛を解くという意味でもある。
「グオォォォ!!!」
ようやく自由を得た敵の雄叫びは凄まじかった。自由になった喜びからなのか、相方を失った悲しみからなのかは、分からないけど。
しかし、接近してきたラルに対し、どこか怒りのこもった鉤爪攻撃を仕掛けている辺り、後者のような気もしてならない。
そんな怒りの鉤爪攻撃をラルは軽々と避け、飛び回るように敵を翻弄し続ける。
「っと……ラルを見てるばっかじゃ、駄目だよね。やることやらないと」
『すいちゃ、いつでもじゅんび、おけー!』
『せっちゃも! いーよ!』
「了解。いやぁ、でも、戦闘の場に呼び出すのは久々かも」
基本、スイやセツで事足りるし、なんなら銃や弓なんかを使用する方も多い。つまり、大剣の白雪なんて、そう使用する場面にないのだ。
雷姫さんじゃないけど、久々の戦闘だーって張り切りすぎないだろうか。いや、白雪はそういうタイプでもないが。
「……重なれ、水泉! 雪花!」
剣であるスイとセツを水と冷気に変換、それを元に白雪を呼び出す。
宝石のようで、それでいて氷のような透明感を持つ、大剣が出現する。ぼくが柄を握り、横へ大きく振り抜いてみる。久々に振るうけれど、普段から持っていたように手に馴染んでいた。
大剣自体、戦闘で持つの久々だったが……これなら、問題なさそうだ。
『あら、戦闘の場に私を呼ぶなんて。……なぁに? そんなに手強い相手なのかしら』
「ん~……そういうことかな。白雪、力を貸してくれ」
『えぇ。私は構わないわ……あら? 我らが王は、珍しい相手をしているのね』
白雪はベヒーモスを見て─剣の癖にどう視認してるかは知らないけど─けらけらと、楽しそうに笑う。
『もしかして、過去の因縁でも断ち切りたいの? そのための私?』
「……そうかもね」
『うふふ。そう。そんなときに私を選んでくれるのね。……いつも大切な場面で私を頼ってくれるところ、大好きよ?』
こいつ、茶化してるな。確かに否定できないけど!
「う、えっと……は、話は後! 行くぞ!」
『えぇ、いつでもどうぞ』
白雪を構え、敵の方へと走る。
ぼくが近づくのが見えたのか、ラルが敵から離れるのが視界の端で見える。合図をしようと思ってたけれど、その必要はなかったらしい。
『敵の弱点はあの小さな核ね……まあ、貴方の腕なら捉えられるでしょうけれど。それに……ふふ、ラルも置き土産、してくれているみたいよ』
置き土産?
白雪に言われて気づいた。敵の動きが若干、鈍くなっているのだ。全く動かないわけではないが、どこか動きにくそうにしている。
きっと、雷姫さんの電気を敵に流し込んだのだろう。それを雷姫さんが操り、動きを妨害してくれているのだ。
「……流石、ぼくの相棒だ」
なら、ぼくはその期待に応えないとね。
地面を強く蹴り、ゴーレムを越えるくらいに大きく飛び上がる。そして、白雪を上段で構えた。
「これで仕留める!」
『えぇ。終わらせましょう』
白雪を握る手にひやりと冷気が纏わりつくのを感じる。寒さに耐性があるぼくですら、冷たいと思ってしまうくらいに。
それはつまり、白雪の力が強まっているという証拠であり、白雪の言葉通り、全てを終わらせる力。
「凍てつかせ、その時を止めろ! 白雪!!」
『“絶対氷華”』
剣を振り下ろし、落下に任せてゴーレムを斬る感覚と白雪の力が発動した感覚は同時だった。
地面に着いたと気づいたときには、宣言通り、ゴーレムを真っ二つにしていた。
ついでにゴーレムの周りの地面は凍り、氷の花をあちこちに咲かせていた。そして、ゴーレム自体も崩壊することなく、凍ってしまっていた。
え、もしかして、コアの破壊は失敗してる……? あんな大技しておいて、失敗は恥ずかしいよ!?
『うふふ。久しぶりだから、つい、張り切ってしまったわね。だぁいじょうぶ。きちんと破壊しているわ。氷が溶ければ、自然と崩れ去る』
あぁ、つまり、ゴーレムを凍らせてしまったから、崩れず残っているのか。よかったのか、よくなかったのか……
「……お前は違うって思ってたけど、雷姫さんと同じこと言ってるな」
『あら、やだ。あんな戦闘狂のお姫様と一緒にしないでくれる?』
ある意味、似たようなものなんじゃ?
いや、言わないでおこう。後が恐ろしい。
「ありがとう、白雪。助かったよ」
『貴方に助けを求められたんだもの。拒む理由はないわ。……ねぇ、ティール』
「なんだい?」
『過去は断ち切れたかしら?』
……さぁ、どうだろう。
ラルではないけれど、過去にベヒーモスにやられた痛みはきっと忘れられない。でも、多分、忘れる必要もない気がする。確かにあれは嫌な思い出だけど、あれがあったから、ラルを守るために……ラルと一緒に強くなると決めたんだ。
ぼくは白雪の疑問には答えず、大剣を二つの剣へと戻した。
「これで、討伐完りょ─」
ティール!」
うわっ!?
突然、ラルが駆け寄ってきて、思い切りぼくに抱きついてきた。本当にいきなりだったけど、倒れそうになるのをぎりぎり踏ん張って、抱き止める。
「あ、危ないなぁ……いきなりなんなのさ」
「やったよ! ようやく倒せましたー! もう戦闘はないよねー!!」
はっちゃけた様子でラルが楽しそうに笑う。それは、どこか吹っ切れたようにも見えた。
ずっと戦闘続きで、気を張っていたんだろう。それでなくても、難しい顔をして考え事をしていたのだ。戦闘は一段落したと安心しているのかもしれない。
「ここが奥地だから、普通に考えれば最後だよ。あれで最後じゃなかったら、流石にしんどいよ、ぼくは」
「私も! あははっ! なぁんであんなやつを二体も相手してんだろぉ~? めちゃ強いし、ゴーレムだって気づかなかったらやられてたよねぇ~? ま、それを加味して仕掛けてたのかもしれないけど」
……仕掛け?
いつもの楽しそうな笑顔を浮かべていたラルだったけれど、その視線はぼくではなく、それよりも上に向けられていた。
「あは。これも、ルーメンさんの目論見なのかな。……ねぇ、ユウアちゃん?」



~あとがき~
戦闘はいつでも難産。
そして、ラルの戦闘よりも長くなってしまった……!?

次回、答え合わせ。
できないこともあるけど、ある程度、やっていける……はず!

白雪の技、“絶対氷華”。
対象の全てを凍らせ、発生したエネルギーを氷の花に変換させ、地面やら対象やらに咲かせる技。その後、花を操り、他の敵に追撃も可。
簡単に説明するとそんな感じです。
単体攻撃からのフィールド変化をして、広範囲技へと変わる感じのやつ。
これを作中で話せればいいんですが、できなかったんで! ここで補足です(汗)

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第256話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で戦闘してる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ラル視点によるソロの戦いを見てもらいました。そして、ティールと合流し、目の前の敵はベヒーモスではなく、ゴーレムではないかと推測した辺りで終わりました!
今回からは、真面目(?)に討伐していきますよ。はい。
ラル「今までも真面目だけど」
ティール「作者のボキャブラリーが少なすぎるんじゃあ」
んなこたぁねぇぞ!!(滝汗)


《L side》
「……あれが、ゴーレムだって?」
私の言葉に信じられないとでも言いたそうなティール。彼の言いたいことは分かる。見た目や攻撃パターンは完全にベヒーモスで、ゴーレムとは全く異なる。それをゴーレムと言われても信じられないだろう。
それを詳しく説明してあげたいが、そろそろ私の相手をしていたベヒーモスもとい、ゴーレムが攻撃してくる可能性がある。時間を稼がねば。
「……出てきて、“ドール”」
「はぁい! お呼びですか、マスター!」
私は自分と瓜二つの分身、“ドール”を呼び出し、目の前の敵を指差した。
「ドール、あれの相手をしてきてくれる? 倒す必要はない。私とティールが話す時間を稼いできて」
「畏まりました! では、今後の事も考え……そうですね。三分程、私がお相手してきます!」
三分……まあ、そんなもんか。
“ドール”を呼び出すには、私の体力と精神力を使う。この後の戦闘もあるし、長時間ドールに戦わせるわけにもいかない。
「それでいい。行って」
「はい! マスターの命により敵の足止めをしてきますね」
自分と同じ顔だとは思えないくらい、弾ける笑顔を見せ、ドールは角なしベヒーモスのいる方へと走っていく。
「じゃ、ドールが時間稼ぎしてくれてる間に私の考えを話すよ。……その前にティールの相手してたベヒーモスもどきは?」
「スイに足止めさせてる。余程の事がない限り、こっちには来ない」
OK……んじゃまあ、手短に作戦会議といこうか。
「私がゴーレムであると考えた根拠はいくつかあるんだけどね。……ここに来てから、ティールはゴーレム以外の敵を見かけた?」
「それは……見てない」
「私も。それに、『時空の叫び』でもミルティアがゴーレム以外を呼び出すところは視ていない」
まあ……そもそもの話、ここがミルティアが呼び出したのゴーレムに守護されているのなら、他のモンスターがいる可能性自体が低いとも言えるだろう。永い年月を経て、環境ががらりと変わり、ベヒーモスが住み着いた可能性もなくはないだろうが……それでも、神の作り出したゴーレムがそれを許すとは思えないのだ。
ここのゴーレムに与えられた命令はここを守ること。……つまり、侵入者の排除。そして、宝石を守ることの二つ。
その命令がある限り、外部からはぐれモンスターが来て、住み着くとは思えない。
そして、ベヒーモスに攻撃してもダメージを与えられない事。
「ゴーレムはコアさえ無事なら復活するよね? 傷も元通りにしてしまう。それがどんなに強力な攻撃でも、ね」
「た、確かにそうだけど」
ティール、コアを探して。本来、ベヒーモスに存在しないそれが見つかれば、私の仮説は立証される」
「分かった」
ティールはバッグからライフルを取り出し、ドールが相手しているベヒーモスへと向けると、そっとスコープを覗く。
数十秒の沈黙が続いたあと、ティールがスコープから目を離し、私の方を見てきた。
「……あった。胸の位置にベヒーモスにはない宝石みたいな石が……あれがコアか」
「ビンゴ♪……じゃあ、それを破壊すれば私達の勝ちだ」
倒し方が分かってしまえばこちらのものだ。コアの破壊をすれば、私達の勝ちなのだから。
ティールが注意を引き付けてくれている間に私があの角なしのコアを破壊するわ」
「了解」
……ところで、ずっと気になっていたのだが。
「角ありとなし……違いって何?」
「え? 角がある方が雄で、ない方が雌だったかな」
ふぅん……奴らはカップル?
「なのかな。番っぽいから、カップルというよりは、夫婦? かもね?」
……ほう?
ゴーレムのくせに、そういう見た目にする必要性を感じないのだが……何か理由でもあるんだろうか?
「ど、どうだろう」
「私達が苦労してここまでやってきたのに、あいつらは呑気にラブラブしてたってこと? リア充ならぬリア獣ってか!?」
「……ラル? 疲れてるの? テンションが謎ベクトルに向いてない?」
「向いてない! 正当な主張だと思ってる!」
「ごめん! どの辺りが!?」
そもそも、ゴーレムって性別という概念があるのだろうか? 無機物から作り出されているやつらに性別なんて必要か? いやまあ、コアを持った時点で意思を持つのだから、そこから性別が産まれるのかもしれないが……
まあ、その辺を考えたところで、これからに関係ないのだが。
「……ふざけすぎた。そろそろ終わりにするか」
「うん。ふざけてたの、君だけなんだけどね? まあ、いいよ。目的を思い出したみたいで……で? どうするの?」
「根本的な作戦に変更はない……ティールが援護にして私が攻撃するかな」
「……了解」
どこか不満そうなティールだが、反論するつもりはないらしい。ティールが捕まえてる一体は彼の能力で即死できるだろう……が、私が相手していたやつは一応、元気に動き回っている。あれに関しては、二人がかりで倒した方が早いだろう。
「じゃ、掩護射撃メインで狙っていくよ」
「その辺の方針は任せるわ。……やるぞ、雷姫」
『うむ♪ あれ程の巨体な人形の核の破壊……我、興奮してくるぞ♪』
うん。お手柔らかにね……?
ゴーレムの強さとコアの硬さは比例する……つまり、強いゴーレムならコアも強いという単純な構造になっている。
だからまあ、雷姫が久々に─ルーメンさん相手にも楽しそうにしていた気もするが─力を振るえると興奮するのも分からなくはない。分からなくはないが、必要以上に力を使われるのは、私が辛いのでやめてほしいんだけど。
しかし、中途半端に力を緩め、壊れませんでしたってのは、格好つかないのもまた事実。……それに、ここは奥地なのだし、戦闘も最後のはず。なら、思い切りやってしまっても問題はないだろう。最悪、ぶっ倒れてもティールが拾ってくれる。
そう腹を括り、雷姫を握る手に力を込めた。それに反応するように、バチンと赤い火花が散る。
ティール、なんかあったら、骨だけは拾えよ!!」
「はあ!? なんつー捨て台詞だよっ!? なんにも起こさせない!」
ははっ……そういうところ、大好きだよ。
私の後ろでティールがでたらめに……否、私に当たらない絶妙な狙いで銃撃していく。ベヒーモスはドールの攻撃とティールの攻撃に翻弄されて、私の接近にまで気を配れない様子だ。
「さあ、雷姫。派手にぶちかますよ!」
『当然っ!』
足にぐっと力を入れ、一気に踏み込んだ。その瞬間、“身体強化”による効果で俊敏性と単純に筋力のパラメーターを何十倍にも引き上げる。
「前足も~らいっ!」
「グオォォォ!!!」
ベヒーモスの懐に飛び込み、右前足を切断する。突然、支えを失ったベヒーモスの体は大きく揺らいだ。まあ、ゴーレムなのだから、足を切断されたくらい、なんとも思わないのだろう。時間が経てば、その足すらも再生するのだろうし。
まあ、そんなのはどうだっていいのだ。
私がしたかったのは、ベヒーモスのバランスを崩させ、隙を生み出すことなのだから。
「雷姫!」
『うむ。いつでもよいが……奴の咆哮攻撃が……まあ、気にせんでもよさそうじゃな』
雷姫の言葉と共に、銃声が幾重にも重なって響き渡る。ベヒーモスが口を大きく開け、ブレス攻撃でもするところだったのだろうが、その口にティールが銃撃をお見舞いしたのだ。たまらず、ブレス攻撃は中断され、単なる雄叫びがベヒーモスから放たれた。
ナイス、相棒……♪
「轟音と共に、敵を貫け! “雷槍”!!」
私は雷姫を地面に突き刺し、刀身に込めていた雷の力を一気に解き放った。雷は地面を通り、ベヒーモスのコア……ゴーレムのコアに狙いを定め、槍となって雷が巨大な槍を象り、隆起する。
巨大な雷の槍はゴーレムの体ごと貫いて、コアを破壊した。その証拠にゴーレムは形を保てなくなり、バラバラと崩れていく。
──まずは、一体。



~あとがき~
なんか途中で推理やらちょっとした茶番挟んだら、ベヒーモス戦終わらなかったんだが??

次回、残る一体のベヒーモス(ゴーレム)VSスカイ!
そこまで長引かない予定! お楽しみに!!

特に話すことがない~……(笑)
まあ、単調な戦闘が続いてしまってますが、それも次回で終わる予定です。もう少々お待ちを!

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第255話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でどんぱちしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回はティール視点でベヒーモス戦を行いました。何しても攻撃が通らない相手にどこかなげやりなティールでしたね。
ティール「誤解を招く言い方やめて」
で、今回は少し時間を巻き戻して、ラルとベヒーモス戦です。吹っ飛ばされた理由が分かると思います。


《L side》
ティールが片方を相手してくれている間に、私は片割れの角なしベヒーモスの相手をしよう。
私は雷姫を構え、ベヒーモスへと近づく。
「基本的な能力値は通常ベヒーモスと変わらないと仮定しよう……かなっ!」
とりあえず、お試しの一撃として雷姫による斬撃を右前足にお見舞いしてやる。そして、持ち前のスピードを生かし、すぐに距離を取る。
軽めの斬撃─とはいっても、神器の攻撃なのでそれなりの威力はあるが─でも効くのかどうか、雷姫の雷属性の攻撃は効くのかどうかを試してみたのだが……
「……微妙?」
『ふむ。斬った手応えはあるが、ダメージを与えた手応えがない。ダメージを与えた瞬間、回復でもしておるやもしれん』
そんな利口なベヒーモスさんがいらっしゃるなんて、存じ上げませんが?
当たりどころが悪かったのだろうか。ならば、今度は足を切り落とすくらいの力業で何とかしてみようか。
「雷姫、威力マシマシでもう一回お願い」
『うむ。……と、鉤爪攻撃が来るな』
「了解。一応、“身体強化”もお願い」
『承知した』
ベヒーモスの大きく振りかぶった鉤爪攻撃を跳躍で避け、即座に刀身に雷属性の力を込める。
「ちょっと予定変更して……“雷撃一真”!」
横一文字に刀を振るって作り出した雷の刃をベヒーモスの顔面目掛けて飛ばしてみた。相手は避ける暇も相殺する暇もなく、クリーンヒット。その隙に再び距離を取って、観察に徹する。
「流石に少しは効いててほしいんだけど」
顔面に受けたもんな。麻痺も引き起こし、更に目を潰せていたら万々歳なんだが……
『マスター、残念だが、魔法による咆哮が飛んでくる』
「はあ!? うっそ! 怯みもしないの!? “まもる”!」
雷姫の忠告を受けて、透明の防御壁を作り出した。そのお陰で、ベヒーモスのブレスは完全に防いでいる。それを防ぎつつ、私は頭をフル回転させた。
「待て待て待て? 属性攻撃は無意味で、斬撃も無意味? 無敵か?」
『無敵……というよりは、回復速度が異常に早いのやも知れんが。なれば、ちぃと骨が折れそうじゃなぁ』
呑気か!!
まあ、落ち着け。私?
あのブレス攻撃は牽制の意味もあるかもしれない。ダメージが多少なりともあって、それの回復のために撃った可能性だって存在する。そうであるなら、高火力な技を連続で叩き込めば……倒せるのでは? 所謂、ゴリ押しである。
いや……どれだけの時間、やればいいのか皆目見当がつかない。そもそも、高火力な技ほど、隙が生まれやすい。それを連続で行うのはリスクが高すぎる。
また、雷姫の言う通り、回復速度が異常に早い場合、このゴリ押し戦法はこちらが不利だ。相手は回復するため、それを上回れなかった場合、力尽きるのはこちらだ。
まあ、どちらにせよ、このゴリ押し戦法はあまり現実的ではないのは確かである。
敵のブレス攻撃を防ぎきった私は、防御壁を解除して雷姫を構えると、相手との距離を詰めていく。
「とりあえず、連撃してみましょっかね」
『承知した』
大きく動いて、特定の場所を狙うのではなく、適当に斬りつけていく。足だったり、胴体だったり……とにかくどこでもいいから攻撃していった。
もしかしたら、どこかの部位が弱点で、反応が変わる可能性があると思ったのだ。しかし、どこを攻撃しても大して反応は変わらなかった。
もちろん、無反応というわけではないが、大袈裟に防御するでもなく、痛がる様子もなく……私が期待する程の反応の変化は見受けられなかった。
「なんなの、あいつ。意味が分からない」
『マスター、見よ。今しがた、攻撃した傷口が塞がっていくぞ?』
雷姫の言う通り、先程攻撃した箇所の傷が綺麗になくなっていた。魔法や技を使う素振りはなかったから、自動回復の線が濃厚である。
は~ん……? いよいよ、面倒臭いぞ?
基本的に、ベヒーモスに自動回復なんて能力はない。ならば、この土地に適応したとでも言うのだろうか? いや、それならここに来るまでの敵にも同じような効果がなければおかしな話である。
……あ、いや。ここに来るまでの敵って全部ゴーレムか。ゴーレムはコアを破壊しない限り、倒されず、時間経過で復活する。自動回復と似たようなもの……?
「……なぜ、ここに来て、ベヒーモスがいるんだ?」
『マスター?』
……最初から考えろ。
ユウアちゃんはこいつらを倒せと言った。つまり、倒す手段はある。これは間違いない。
では、目の前の敵について考えてみる。
普通のベヒーモスなら、適当に攻撃して、体力を削りきれば問題はない。しかし、目の前のベヒーモスにそれは当てはまらない。雷姫の攻撃も、私の技も効かなかった。恐らく、ティールも同じような結果であろう。
仮に特殊個体のベヒーモスってことなら、そんなのが二体もいる状況は絶望的だ。倒す手段を探す前にこちらが疲弊しかねない。最悪の場合、ここで終わりになる可能性すらある。
──だが、目の前のベヒーモスが、ベヒーモスでないとしたら?
ここの敵は皆、ゴーレムだった。現に、私達はこの奥地に辿り着くまで、一匹もゴーレム以外の種を見ていない。それなのに、ここの部屋にいるのが『ゴーレム以外のモンスター』であるのは違和感がある。
仮に、私の考える通りなら……目の前のチートじみたベヒーモスにも合点はいくし、倒す手段もある。
「もし、この仮説が正しいのなら……きっとどこかに─」
『マスター! 敵の咆哮が来るぞ!』
「……っ!」
雷姫の声で意識が思考の海から現実へと引き戻される。それと同時にベヒーモスによるブレス攻撃も放たれていた。
そのブレスをどうするか、考える。
“まもる”をするには、少々時間が足りない。
単純に回避するためには、時間が足りない。
何らかの技で相殺するには、時間が足りない。そもそも、どれくらいの威力をぶつければ相殺できるかもさっぱりだ。リスクが高すぎる。
これは……うん。どう考えても避けられません。なら、受けるしかない。
じゃあ、できる限り、ダメージを下げるしかない。そして、それができるのは、私の愛刀しかいない。
「雷姫、頼んだ」
『むぅ……まあ、最善は尽くす』
任せておけとは言わない辺り、雷姫らしいか。
眼前に迫ったブレス攻撃を申し訳程度の防御姿勢で受ける。当然、ブレスの威力に押し負けて、大きく後方へと吹き飛ばされた。
これが屋外だったら、空の彼方まで飛ばされていたかもしれない。これは、屋内でよかった……と言うべきだろうか。まあ、ここは洞窟なので、当然のどこく、洞窟の壁に全身を強く打ち付けてしまう。
外の落下ダメージと壁に激突したダメージ……どっちの方がましなのだろう。私は分からなかった。
壁に思い切り激突したせいで、肺から全ての空気が抜けるような感覚と、目の前がチカチカする感覚……そこから一瞬遅れて、痛みが襲ってきた。
「……っ! いってぇぇ!!」
『その程度ですんだか。我もなかなかだな♪』
そっすね……過去のベヒーモスさんに吹き飛ばされたときよりは元気っす。流石、雷姫の“身体強化”……強力な攻撃を生身で受けて、ダメージはこんなものですむのか。
いや、痛いもんは痛いけどな。
「くっそ……でもまあ、あれだ。倒す手段を見つけたと思えば安いもんか……一発くらい多めに見てやるわよ」
『マスター、それは強がりというやつでは?』
うっちゃい!! こうでもしないとなんか情けないじゃん!?
「ラル! 大丈夫!?」
吹き飛ばされた音で私の方が心配になったのだろうか。ティールが慌ててこちらへと駆け寄ってきた。
「あ、おはようございます……とりあえず、元気です」
「おはようございますじゃないけどね!? 怪我は……ないわけないよね。見た感じ、出血とかは問題なさそうだけど……もしかして、骨折とかしてる?」
前科があるせいか、ティールが若干テンパってる気がするな。その証拠に必要以上に私を触診しまくってるし。
「落ち着けって。大丈夫だから。動けるから。骨も折れてません」
「……本当に?」
「本当に。雷姫様を舐めるなよ」
『そうだぞ、パートナー? 我がついている限り、マスターは死なせんさ♪』
雷姫の言葉を聞いたティールは、少し戸惑いつつやんわりと笑って見せる。
「えぇっと……雷姫さんのその言葉をどこまで信用していいのか……とにかく、なんともないんだよね?」
「とりあえずは。ポーション飲めば問題ない」
そう返答しつつ、バッグから回復ポーションを取り出して、一気に呷る。これで先程の打ち身による痛みは気にしなくてもよさそうだ。
私は立ち上がって、落としてしまっていた雷姫を拾い上げると、一旦鞘へと納める。そして、本当に問題ないかを確かめるために軽く体を動かしてみた。
……うん。足も手も痛みなく動かせる。それに、意識も視界等々も問題なし。いやはや、雷姫様は本当に頼りになりますわ。
「で、何があったの?」
「考え事してたら、ブレス攻撃当たっちゃった☆」
「馬鹿なの!?」
「いやいやー! 一発や二発、当たって当然では? 完全無双なんてできるわけないでしょ? 私は平々凡々な女の子だよぉ? か弱き乙女なんだよぉ?」
「どこが!? ボスのブレスもろに食らってピンピンしてる女子のどこが平々凡々で、か弱い乙女だ!?」
あ~……一理あるかもしんない。もう少し、うら若き乙女になれるように非力になろうかしら……?
まあ、それはさておき。
ティール、あいつらを倒す手段、見つかったかもしんない」
「……えっ」
「ゴーレムの一種の可能性がある。コアを探せ。そして、それを破壊しろ」



~あとがき~
ラル視点は書きやすいっすねぇ(笑)

次回、ラルとティールによるボス攻略! ラルの考えた突破口は果たして……?

ティールは基本、慎重派なので攻撃を受けるようなことはなかったですが、ラルさんはまあ、前に出ることも多いですし、何かしてても思考をがんがんするタイプなので、被弾しやすいです。思考してなくても、ぱっと体が動く人でもあるしな。
……メタ的なことを言ってしまうと、一回くらいはやられるシーン入れたかっただけなんだけどね!!←

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第254話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で戦闘する物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ユウアちゃんが消え、代わりにベヒーモス(二体)が現れましたとさ。
ラル「聞いてねぇ……」
ティール「ルーメンさんのとこだから、『言ってないからの~♪』って笑うだろうね」
ラル「ぐぬぬ
今回は久しぶりにティール視点です。


《Te side》
ラルとぼくは互いに頷き合い、敵を見据える。その時、一瞬だけ、考える素振りを見せたラルだったが、すぐに今後の方針を決めたのだろう。隣に立つぼくをちらりと見る。
「一人一体を相手する感じでよろしく」
「……わ、分かった」
「え、何? その反応」
「ラルのことだから、二体とも私がやるとか言い出すのかと」
基本的にぼくが援護に回り、ラルが主体となって攻撃する。ボス級二体が目の前にいたとしても、いつもの陣形を選ばなかったことに驚いたのだ。
まあ、ぼく個人としては、ラルだけを前に出させるのも気が引けるから、まだありがたい作戦でもある。彼女一人に負担をかけなくてすむし。
「あ~……とりあえず、敵の力量を測りたいんだよね。だから、私が片っ方を見ている間は、もう片っ方の相手をしててほしい」
つまるところ、情報収集したいから片方を抑えておけということらしかった。確実に倒すための前準備を行うのだ。そうなってくると、最終方針は別にある……のか。
「……いけそうなら、いつも通り?」
「うん。いつも通りいく」
「期待したぼくが馬鹿だった。……はぁ。次の作戦決まったら教えて」
本当なら、もう少しぼくを使ってくれてもいいんだよとか、今回は別の作戦にしないかとか、色々言いたい。言いたいけど、敵を目の前に長々と口喧嘩するのも悪手である。文句を言いたい気持ちを抑えつつ、ぼくは体勢を整え終わった角ありベヒーモスに向かって走り出した。
「さて……様子見ってことで、適当に攻撃してみようか。スイ!」
『あいさ!』
ある程度近づいたところで一度、足を止める。そして、愛剣の一つであるスイに力を込め、軽く振るう。その太刀筋から水の衝撃波……言うなれば、水の刃を発生させ、ベヒーモスへと飛ばしてみる。敵は避ける動作もなく、確実に命中するものの痛がる素振りはなかった。
そして、それはスイも感じ取った様子で、不満げな声を上げる。
『ぐにゅぅ~……てごたえなし!』
「そだね。……防御力が高いのか? 一気に畳み掛けてみるか。セツ、準備はいい?」
『ほいな!』
スイだけで駄目なら、セツの力も使ってしまえば多少は効果あるだろう。……あってほしいもんだけど……
スイに水の力を、セツに氷の力を込めて、剣を構える。ベヒーモスが攻撃モーションに入る隙を見計らい、一気に距離を詰めた。
「グオォォ!!」
ぼくが近づいたためか、ベヒーモスは前足を上げ、踏みつけ攻撃を繰り出す。それをぼくはひらりとかわし、属性付与させた斬撃を振り下ろされた前足にヒットさせた。
この攻撃に怯んだのか、ベヒーモスの動きが一瞬だけ止まり、その隙に連撃を叩き込んだ。それらの攻撃は全てクリーンヒットしていた。が、更に攻撃をするのではなく、その場から離脱を選択した。
「当たってる。当たってるけど……なんだ、これ?」
確かに、斬撃は当たっている。その手応えは感じている。感じているのに、ベヒーモスを倒せる確信が持てない。
明確な理由があるわけではないけど、直感がそう告げていた。
『すいちゃのこーげき、なおってる!』
「は?」
『せっちゃのも!』
「は??」
二人の言葉に困惑するものの、ベヒーモスを見て、すぐに理解した。
先程、幾重にも攻撃を当てたはずの前足に傷跡が残っていないのだ。傷が付いていないということは、聖剣による攻撃が全く効かない相手であると意味付けるものになってしまう。
「当たってたよな……そこまで硬い、のか。物理攻撃は効かない……? いや、でも……」
スイは「なおっている」と言っていた。つまり、少なくともヒットした瞬間は傷を与えていたのは間違いない。しかし、今はそれが残っていない。残っていないということは、なんらかの方法で回復したと考える他なかった。
考えるのは敵の特殊能力とか、効果とか、技とかそういうものだけれど……ベヒーモスにそんなのがあるなんて聞いたことはない。
あるとするなら、ここ……『奇跡の洞窟』に生息しているという特異点。これが関係している?
「まさか、回復系統の能力持ち? そういうことになるのか……? それにしたって、回復速度が早すぎる気も」
ぼくが知らないだけで、そういうこともあるかもしれない。この地に適応した能力を持っている……みたいな。
となれば、自動回復能力であると仮定して……それはとても、厄介な能力ではなかろうか?
最初の水系統の技も、先程の属性付与させた斬撃も、自動回復で補える範囲内だとするのなら……どのようにして倒せばいいのか。
自動回復では追い付けないくらいのダメージを一気に与えるしかない……?
或いは回復の範疇を越えるような一撃を与える、かだ。
例えば、過去に炎の剣士がぼくの目の前でしていたような、攻撃をする……?
「イグさんみたいな大剣による攻撃……白雪を使って、真っ二つに……してみる、か?」
それを行うには、白雪を呼び出す時間がいる。そしてそれは、数秒ではあるものの、無防備状態になるわけで。
目の前のベヒーモス相手にその数秒を与えるのは怖い。となれば、ラルの協力を仰ぐしかないけど……
『てぃー! くるー!』
セツの警告にぼくは無意識に舌打ちをしつつ、スイを構える。どうやら、ベヒーモスはぼくに向かって体当たり攻撃をするつもりらしい。あの巨体であのスピードだ。当たればそれなりのダメージを食らってしまうだろう。……あくまで、当たればの話だ。
「こっちは今、色々考え中なんだよ。少しは静かにしていろ。……スイ! ヤツを捕らえるぞ!」
『あいあい!』
スイを剣から水源へと変化させ、敵を捕らえるためのリング状の枷へと形成させる。それをベヒーモスへと放ち、動きを封じる。
ベヒーモスも馬鹿ではないのか、そのリングが危険であると即座に判断したらしい。攻撃の手をやめ、戸惑ったように動かなくなった。
「相手が一歩でも動いたら手足でも斬り落とせ」
『あいさ~……でもでも、てぃー、こわい』
……つい、脅しみたいになってしまったけれど、問答無用で切り落としてもいいのか。ありゃ、失敗したかも。
まあ、いいや。ぼくの目的はあくまで足止めだし。
さてさて、どう倒せばいいのか考えようか。
とはいえ、試そうと思っていた白雪の攻撃はスイを手放してしまったらからできないのか。他にできそうなこと……
試していないのは、銃による射撃か。
これもまた、意味がなさそうな気がする。スイやセツの斬撃をものともしなかったのだから、今更、射撃でどうにかなる相手でもないだろう。
うーん。完全に行き詰まってしまった。これはラルの分析に頼るしかないかな。
しかし、何もしないのもなんだか落ち着かないし、万が一という言葉もある。試すだけ……試してみるか。
ほぼ無意味だと感じつつも、バッグから比較的威力のあるライフル銃を取り出した。
どこを狙えばダメージを与えられるのやら……素直にヘッドショットしてみる?
『あたまだー!』
「はいはい。頭……頭っと」
行動範囲がほぼないに等しいベヒーモスにこの銃撃を避ける手段はない。とりあえず、セツの言う通り、頭を狙って、一発だけ撃ってみよう。
と、引き金に指をかけた瞬間、ぼくの背後で轟音が響いた。もちろん、ぼくの持つ銃によるものではない。ましてや、目の前のベヒーモスが何かをしたわけでもなかった。
そうなれば、可能性は一つしかない。
「え……ラル、なんかしたの? 爆弾でも投げた……?」
『ちがうー! るー、ふっとばされた!』
した方じゃなくて……された方ってこと? というか、吹っ飛ばされた!?
ラルがベヒーモスの攻撃を受けた……? 嘘だろ?
ラルがベヒーモスに深傷を負わされた過去の記憶がよみがえる。もう二度と、あんな目には遭いたくないって言ったのに。
「くそっ! スイ! そいつを任せる!」
『まかされたー!』
取り出していたライフル銃をしまい、最悪のビジョンを振り払うように、その場から駆け出した。



~あとがき~
ふへへ……楽しいなぁ~(白目)

次回、ラルが吹っ飛ばされる前のお話。一方その頃ってやつです。
ティールがあれこれしているとき、ラルは何をあれこれしてたのかお見せします。

原作、空海でもそうなんですけど、ポチャこと、ティールが危険な目に遭うことはあんまないなぁと思いました。命の危険というかね? いやまあ、危険な目には遭うんだけど、瀕死だ! みたいなところまではいかないというか……そういう役目は別の子達が担ってるというか?
だからまあ、ソロの場合、基本的に堅実な戦い方をしているんでしょうね。リスクは追わない戦い方をすると言えばいいんでしょうか?
ハイリスクハイリターンを狙うときもなくはないけど、余程の理由がないとしなさそうです。ティール君。
その辺、ラル(ピカ)やフォースは厭わないイメージあるけどね(笑)

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第253話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界な物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、時空の叫びで視た光景をあれこれ考える話でした!
今回は先に進みます。ようやくだね!
ラル「おお。そろそろ終わりかな?」
残念。終わりはしない。
ラル「……」


《L side》
ミルティアの謎は一旦放置し、私達は奥地へと順調に歩を進めていた。戦闘を重ねるうち、心なしかユウアちゃんともいい感じに連携が取れるようになり、かなり楽に事を進められたように思う。
まあ、それでもユウアちゃんに攻撃してもらうのは怖かったので、支援に徹してもらっていたけれど……最後の最後まで、なぜ支援メインになっているのか、理解してもらえなかった。なぜだ。
そんなこんなありつつも、私達はようやく最深部へと辿り着いた。
ここに来てから、綺麗な風景には見慣れていたと思っていたのだが、その考えを改めなければならないらしい。
どこからか射し込む光のシャワーに照らされる、『女神の涙』が目の前に広がっていた。その花も、私達が今まで見てきた白だけでなく、様々な色彩に溢れていた。
「女神の涙って白だけじゃなかったんだ」
しかしまあ、冷静に考えてみれば、あれは魔力石の一種だと言う。なら、他の色……すなわち、他の属性に特化したものがあっても不思議ではない。そもそも、白ばかりってのが珍しいのだ。本来ならば、だが。
「というか……ここ、地下だよね。なんで光が?」
「さあ……でも、太陽の光みたいで暖かそうだね」
違う。そうじゃない。
「わ! 見てよ、ラル! 壁の宝石達! 今までのやつより大きいよ」
ティールの言う通り、道中で見かけたもののより、大きくてキラキラ輝いているように思う。
ゴーレム達が地道に運び、これらを作り出しているのだろう。それにしても、なかなかのスケールではあるが。
さて、ここが奥地なら、依頼にあった石の採取をしなければ。確か、緑多めに採ってこいだったか。
「ラル、もう少し感動しようよ。こんなに絶景なのに」
「石にそこまでの気持ちは込めらんないかなぁ」
「えー? 薄情者だぁ」
そこまで!?
いつもなら、仕事第一なティールだが、もう少しこの風景を堪能したいらしい。私はすでにお腹いっぱいになってきたので、早々に切り上げ、今回集めた情報の整理と勤しみたいのだけれど、せっかくここまで来たのだ。多少はのんびりしてもバチは当たらないだろう。
……なんて思っていたのだが、ユウアちゃんがそろりと私達の目の前にやってくる。
「感動しているところ、申し訳ないのですが、奥地へと到着されたお二人には、最後の試練を受けてもらいます」
最後の試練?
ニヤリと怪しい笑みを浮かべたユウアちゃん─心底、嫌な予感しかしない─に着いていくと、別の部屋のようなところへ通される。
そこは壁に宝石類はあるものの、花は咲いておらず、光も射し込んでいない。言うならば、先程まで攻略していたダンジョンの大部屋のような……或いは、奥地に存在するボス部屋のような、そんなところだ。
ようやく目的地に辿り着いたはずなのに、こんなところへ連れていかれるとは。ますます、嫌な予感しかしない。
戸惑いを隠せない私達になんの説明もなく、ユウアちゃんはにっこりと笑う。
「それでは、お二人とも……頑張って『この子達』を倒してくださいませ!」
と、それだけ言い残し、この場から消えてしまった。話も、質疑応答も、抗議すらもできずじまいである。
「は!? 待ってよ、ユウア!」
いや待て、この子……『達』を倒す? つまり、複数の敵を倒せってこと?
つまり、なんだ……よくあるあれか?
「あれですか。ボス戦ですか。今からボス戦と相成るわけですか」
「え……嘘だろ?」
嘘なら、どれだけよかったか。
「グオォォ!!」
どこから現れたのか問いたくなる、大型モンスター二体が私達の目の前に出現した。
どちらも同じ見た目をしているものの、一体は二本生やし、もう一体に角はない。そして、逞しい四足のモンスターは、いかにも、悪魔みたいな見た目で、鈍い赤色の目をこちらへと向けていた。
私は……いや、私達は嫌と言うほど、こいつらのことを知っている。なんせ、過去に一度戦い、こちらが死にかけた相手だ。
「ボス級モンスターのベヒーモス……しかも、二体? なんで、こんなところに」
疑問を口にしながらも、ティールが二振りの剣を構える。そして、ちらりと私を見る。
「とにかく、これがユウアの言う試練って認識でいい?」
「……多分」
全く、悪趣味にも程がある。
何事も、衝撃的な場面ってのは強く心に残るものだ。私にとって、ベヒーモスも例外ではないらしい。
頭ではベヒーモス相手に恐れる必要なんてないと理解している。あの頃よりずっと強くなっているし、経験も知識も能力もある。
それなのに、こうも不安に思うのはなぜだろう。
「うへ……やっぱ、昔語りなんてしたせいかな」
こんなときに、嫌な光景しか浮かばない自分が嫌いだ。
過去の未熟だった頃の私と重なって、最悪のシーンが消えてくれない。
まあ、いつだって、『最悪』の展開はついてくるものだろうけれど……今回はそれが嫌にちらつく。そのせいで、上手いこと作戦が立てられる気がしない。
どうする。どう戦うのが正解だ?
相手はボス級。しかも、二体。
ここまでのモンスターのレベルを考えるに、このベヒーモスも普通の個体よりも強いかもしれない。そんなのが二体?
私達も二人。他に仲間はいない。一対一で戦うしかない? それで勝つ見込みはある?
相手の能力値が未知数である以上、踏み込みすぎるのは危険ではないか? ならば、一定距離を保ちつつ、攻撃するしかない……?
そんな逃げ腰のような攻め方で、本当に勝てる相手なの?
「──ラル!!」
相棒の叫ぶような声に私は顔を上げる。
相棒はすでに剣を振るいながら、応戦していた。私が呆然としている中でも、─いや、もしかしたら、脳内会議してると思って、守ってくれていたのかもだけど─ティールは一人で勇敢に立ち向かっていた。
力任せに一体のベヒーモスを後退させたティールは、私を庇うように前に立ち、ふっと笑う。
「もしかして、珍しく弱気になってる?」
「珍しくって何さ……別に、どう戦うか推考中なだけですが」
「そんなの簡単さ。君は一言、ぼくに言ってくれたらいい」
「一言?」
ティールに問いかけると、彼は力強くも挑戦的な笑みを浮かべた。
「二人なら勝てるって言えばいいんだ。……今のぼくらなら負けないってね。だって、ぼくとラルは最強コンビだろ」
……あぁ、そうだね。そうだった。
ティールだって、私程でないにしろ、それなりに思うところはあるはずだ。それでも、それを表に出さず、無条件に私を……私と自分自身の力を信じているのだろう。
「私達は……『あの頃』の私達じゃない。今の私達なら勝てる。ティールとなら、なんだってできる」
「そういうこと。さあ、リーダー? ぼくはどうしたらいい?」
そんなの、決まってる。
「……目の前の敵、ベヒーモス二体を倒すよ!」
「了解」



~あとがき~
一人じゃないって素晴らしいよな。

次回、スカイVSベヒーモス(二体)!

きっと、精神面の強さはティールが上なんすよね。いや、お化け駄目ってのは、置いといてね?(笑)
ラル視点なので、ティールがベヒーモスをどう思っているかは書けませんが……ラルのように、悪い方へ引き込まれることは多分、ないんですよね。それは頼れる相棒が傍にいるからに他なりませんが。
彼も頼れる相手がいない状況だと、ある程度、狼狽えるとは思います。ティールにとっても、苦い思いをさせられた相手なのでね~

ではでは。