satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

気ままな神さま達の日常記録 vol.16

こちらは『学びや! レイディアント学園』の番外編でございます。スピンオフというか、なんというか。全く本編に関係のない皆々様に焦点を当てたお話となっています。
前回、お料理大会前まできました。
そして、関係ないけど、しれっとこれ専用のタグも作りました。ここまでこの企画が続くと思わなくて、今まで作ってなかったのです(笑)
過去話はタグから追えるのでぜひぜひ。



☆さくっと登場人物紹介☆
アルフ:転生の神様であり、従者ミィの旦那様。普段からのほほんとしたお方。

ミィ:アルフに仕える蒼い目をした白猫であり、アルフの奥様。念力である程度のことはできちゃう。

フォース:制御者の一人。普段はステラの制御者として、あれこれ世話を焼いているし、天界でも誰かの世話をしてる。

鈴流:フォースの持つリボンの付喪神であり、フォースの奥様。好奇心旺盛であり、やると決めたらやる。

エレル:制御者の一人。真っ直ぐで素直な猫耳少女(の見た目をしてるだけで、実年齢は少女じゃない)。多分、今回の一番の被害者。





★ドキドキ!? 天界クッキング★
鈴流、ミィ、エルの二人と一匹は、天界にあるキッチンの一つに入り、料理をしている。
そんな中、おれはアルフ様とキッチンの隣の空き部屋で待機していた。ただ待機するだけでは、時間の無駄と判断したのか、アルフ様は仕事を持ち込んで、楽しそうにしていた。
そして、おれはと言うと……
「あ、フォースくん。この本、そっちに置いといてくれる?」
「はい」
アルフ様の手伝いをしていた。
おれも、ただ待つだけなのは暇だから、手伝う分には一向に構わない。しかし、どうして、おれがアルフ様の手伝いをさせられてるのかは、よく分からない。手伝って~と頼まれた記憶もなく、なんかこう……その場の流れで手伝っている気がする。
いや、別にいいんだけども。暇だから。
アルフ様が仕事中だから当たり前なのだが、おれ達は会話を交わすでもなく、必要があれば、一言二言話す程度だった。そのため、この部屋は静寂が当たり前である。
何が言いたいかって、時折、隣の部屋から、騒いでいる声が聞こえてくるのだ。
「きゃー!! 鈴流様!? そんな勢いよく割ったら、卵の殻があぁぁ!?」
「あれ~? この前はこのやり方で、ちゃんとできたんだけどな~?」
「嘘ですよね!? 卵はこう……平面なところでですね……?」
どんなやり方で卵を割ったんだろう。ボウルやシンクの角で思いっきりぶつけたんだろうか。或いは、力任せにぶつけたのか。
どちらにせよ、不器用にも程があるのでは……?
「にゃっ!」
「おわ! ミィちゃん、すごい器用だ!」
「念力を使って、卵の殻を取ってくれたんだ。ありがとー! そんなこともできるんだね、ミィちゃん!」
「にゃにゃにゃーん!」
どうやら、混入してしまった卵の殻はミィの念力で取り除いたようだ。一件落着……と言うべきなのか。新たな災難の幕開けなのか。
しかしまあ、予想通りだ。エルが一番苦労してる。ごめん、エル。いつか埋め合わせするわ……
アルフ様も隣の喧騒を聞いていたんだろう。小さな笑い声が聞こえてきた。
「隣は凄く盛り上がってるみたいだね?」
「……みたいですね。注意しますか?」
「いいや、大丈夫だよ。それにしても……楽しみだな~♪ 久しぶりにミィの料理が食べられそうだし」
どこか楽しそうに仕事をしていたのも、ミィの手料理が食べられるからだったらしい。
……ミィの手料理と言えば。
「おれ、ミィが料理できるなんて、知りませんでした。いつも、おれが作るの見てるだけだったし……作りたそうにしてる素振りもなかったので」
まあ、そもそもの話、猫が料理できるなんて思わないのだが。とは言え、ミィは念力が使える。やろうと思えば、できるのだろう。ただ、やってるイメージは全くないけど。
「まあね。と言っても、フォースくんの料理には負けるから、ミィ自身が作ることは、なかなかないけどね? 簡単な料理だったら、念力でできちゃうんだ~♪」
「そうなんですね」
「うん♪ 元々、人間の頃から器用な子ではあったんだ。それにあの頃は、森暮らしだったからね。狩りから食材の解体、加工、料理まで、ぜ~んぶ一人でできてたな。それに伴って、料理も得意だった感じだね」
へぇ……教えてもらっといてあれだが、全く想像ができない。
それはきっと、おれが猫のミィしか知らないから。人だったミィの姿を知らないから、どうもイメージしづらいのだろう。
「流石に、今のミィは複雑な工程のある料理は無理だろうけど、ミィ自身が本気になれば、煮込み料理ならできるんじゃない? 角煮とか?」
「……なぜ、数ある煮込み料理から角煮なんですか?」
「ん? あの子がお肉好きだから?」
単純な理由だった。
まあ、思い返してみれば、ミィは基本何でも食べるが、魚よりも肉の方が食いつきはよかったように思う。
猫になった今でも、魚より肉派、なのかもしれない。
「ふふふっ♪ 楽しみだね、ミィと鈴流ちゃんの料理」
「……」
どちらかと言えば、おれは恐怖の方が勝るのだが……これは言わないでおこう。

あれから数十分後。
キッチンからエルだけが先に戻ってきて、何を言うでもなく、空いてる席に座り、机に突っ伏していた。
そんなエルを見れば、どんな形であるかは分からなくとも、何かしらの事故はあったんだろうなと思う。
「……よく頑張ったな?」
「なんで、疑問系……?」
お前の活躍をこの目で見ていないから。
しかしまあ、時々、聞こえてくるエルの叫び声を聞いてれば、頑張ってるんだろうなぁとは思うだろ。
うぐぅ~……まさか、鈴流様の料理の腕があそこまで壊滅的だとは思わず……! はっ!? フォース、もしかして」
「よくは知らないよ。実際に見てないし。けど、ヤバいってのは話に聞いてた」
「それ、教えてくれてもよくない?」
教えてもよかったけど。
鈴流の料理の腕前は壊滅的らしいってのを伝えた上で、「一緒にやってやってくんない?」なんて、流石に言えない。
「教えたら、手伝ってくれんだろ?」
「聞いても手伝うよ! ミィちゃんを一人に……あ、いや、一匹に? 一匹にできないもん!」
「じゃ、知らなくても問題なかっただろ」
「人には心の準備ってもんが必要な時があるんだよ!?」
おれらは人に分類していいのやら。……見た目は人だからいいのか?
「んなこと、どうでもいいよーー!?」
「あはは♪ お疲れ様、エレルちゃん。どう? 料理は上手くいったかい?」
ニコニコと笑うアルフ様の質問に、エルは数秒間、考える素振りを見せる。そして、難しい顔をしつつも、小さく頷いた。
「なんとか……? 少し焦げちゃったけど、大丈夫だと思います。多分」
「多分て……何の卵料理を作ったの?」
「え? ん~とね……?」
エルが答える前に、部屋の扉が開く音が聞こえる。そちらに目を向ければ、トレイを片手に笑顔で入ってきた鈴流と、ミィがいた。
「お待たせしましたー!」
「にゃ~ん♪」
鈴流は意気揚々とおれ達の前に何かを置く。そこには白い皿の上に乗ったオムレツ(?)のような卵料理がある。
オムレツだと思ったのは、アルフ様の前に置かれたものがそうだったから。だから、おれのもそうなんだろうな、と思っただけだ。実際、鈴流の作ったものだけを見せられていたら、オムレツだと思えたかは怪しいところだ。
ミィが作ったオムレツは綺麗で艶々した黄色で、形も整えられた楕円形。
対して、鈴流が作ったそれは、焦げた跡が所々見受けられるし、形も崩れてしまっていて、なんとも残念な姿になってしまっている。
「ラルちゃん直伝、愛情たっぷりのオムレツで~す! どうっ!?」
どう、と言われてもなぁ?
素直に言うべきか、お世辞を言うべきか。悩ましいところである。
……いやまあ、なんだ。始めから、完璧なものが出てくるとは思っていない。それなら……
「……うん。まあ、いいんじゃない? この辺、炭になってる気がするけど」
「ほわ!? なんで、分かるのー!? ケチャップで隠したのに!」
隠れてないから指摘したんだけど。
ちなみに、そのケチャップも謎にハートマークを描いている。これにはどう反応すればいいんだろう。そう言えば、ミィの方にもあったけれど。
何をどう思ったのか、鈴流は満面の笑みを浮かべ、楽しそうに説明し始めた。
「実はね、こういうのやってみたかったの! ハートの形をした料理を大好きなフォースに食べてもらうっ! 定番なんでしょ?」
定番……なんだろうか?
なんかこう……付き合いたてのカップルとか、新婚とか……幸せオーラ爆発させてる奴らの特権かと思っていた。なんなら、こういうのって、創作物の中でしか存在していないと思っていたが。
なかなか手を出さない─単純に疑問だらけで、箸が進まないだけ─おれにエルは、どうでもいいフォローに入れ始めた。
「味は大丈夫だと思う。というか、他のよりはだいぶ、オムレツだから!」
「むしろ、他のやつはどうなってるんだよ」
「言わなくても分かるでしょ。全部、炭化しましたが!?」
「はあ? なんで」
「そんなの、私が聞きたいよー!! ミィちゃんは平気なのに、鈴流様が使うところだけ、火加減がバグってるんだもーーーん!!」
鈴流の得意属性、火じゃないんだけどね。というか、火だったとして、ここのコンロに干渉できるわけもないのだが。
「あれ? ここのコンロ、そんなに火力高かったっけ~?」
と、アルフ様は首を傾げながら、ミィお手製のオムレツを食べている。
そんなアルフ様の疑問にミィも首を傾げ、エルも諦めたように項垂れてしまう。
多分、なんかあったんだな。あの空間で。
……とりあえず、あらかた、疑問に思っていた件は答えてもらったので、おれも食べることにした。
第一、マスターのゲテモノ料理に比べれば、鈴流のなんて、至極普通である。悲しいかな、あれに慣れているせいか、お陰か、鈴流のこれは問題ないように思う。まあ、所々、失敗した箇所は見受けられるけどもだ。
フォークを使い、一口大のオムレツを口に運んだ。
その様子をどこか不安そうに見守る鈴流をおれはちらりと見上げる。
「ど、どうでしょーか……そ、その、お口に合う、ですか……?」
「食えなくはない」
「そ、それは、美味しくないってこと!?」
「いや? 炭化してないとこは美味しいよ」
「ほんと!?」
「うん」
炭化してるとこは食えなくはないってだけ。本来、そこは食べる必要はないんだろうけど、せっかく頑張って作ったんだろうし、黙って食うか。
「ふふ♪ ミィ、作ってくれてありがとう。とーっても美味しいよ~♪」
「にゃ~♪」
アルフ様に褒められ、ミィは嬉しそうに喉を鳴らす。そして、アルフ様はエレルにも目を向ける。
「エレルちゃんもありがとうね? ミィ達を手伝ってくれて」
「はっ!? い、いえ! 私は何もしてないですから!」
鈴流の監督者って簡単な役割ではなかったと思う。謙遜する必要はないが、まあ、その辺りは従者としての立場もあるんだろう。おれも褒められても、素直に受け取らんし。
……それにしても、だ。
「ふふ~ん♪ 上手くできてよかった! 次は何しよ~かな~?」
次があるのなら、何かしらの対策はした方がいいな。はてさて、どうしたものか。



~あとがき~
エレルの料理の腕は中の中くらい。平均値です。

次回、とある方のお部屋、魔改造話。

この天界組話の中で、フォースが料理(お菓子作りだったけど)する回はありましたが、他メンツの話はこれが初めてですね。そんな中で、ミィちゃんと鈴流がピックアップされた訳であります。
他メンバーにスポットが当たることはないと思いますが……少なくとも、鈴流以下の腕を持つのはファウスだけだと思うので、ご安心ください(?)。

ではでは。

気ままな神さま達の日常記録 vol.15

こちらは『学びや! レイディアント学園』の番外編でございます。スピンオフというか、なんというか。全く本編に関係のない皆々様に焦点を当てたお話となっています。
さっと登場人物の紹介からいきましょう。さっとね。さっと。



☆さくっと登場人物紹介☆
アルフ:転生の神様であり、従者ミィの旦那様。普段からのほほんとしたお方。

ミィ:アルフに仕える蒼い目をした白猫であり、アルフの奥様。念力である程度のことはできちゃう。

フォース:制御者の一人。普段はステラの制御者として、あれこれ世話を焼いているし、天界でも何かと世話をしてる。

鈴流:フォースの持つリボンの付喪神であり、フォースの奥様。好奇心旺盛であり、やると決めたらやる。

エレル:制御者の一人。真っ直ぐで素直な猫耳少女(の見た目をしてるだけで、実年齢は少女じゃない)。多分、今回の一番の被害者。





★ドキドキ!? 天界クッキング★
ここは天界。様々な神が住まう世界。
今日も今日とて、変わらず、平和な世界で、おれは廊下の中心で、何かをせがむような鈴流にしがみつかれていた。
「ねぇー! フォース!? いいでしょー! ぜーったいに迷惑はかけないから!!」
「はぁ? どの口が言ってんだ。お前、ここがどこだか分かってんの?」
そう問われた鈴流は一度、辺りをぐるりと見回し、不思議そうに首を傾げる。
「どこって……天界でしょ?」
そうだねぇ、天界だねぇ?
「ここはお前以外の神も住む、神聖な場所だ。そんなところでお前は今、何したいっつった?」
「お料理がしたいって言った!」
おれの話を聞いていたんだろうか、この娘は。
謎に自信に満ち溢れた顔をして、さも、できて当然だろ、みたいな雰囲気を出している。いや、ほんと、なんでこんなに自信満々なのだろうか。
おれはこめかみを押さえつつ、ちらりと彼女を見下ろす。やっぱり満面の笑みだし、やる気満々である。
「……何を作るつもり?」
「内緒!」
「お前一人で作れるの?」
「ん~? 分かんない! でもね、ラルちゃんに簡単なお料理の……れしぴ?……を教えてもらったから、大丈夫だと思うっ!」
どこからその自信は出てくるんだよ、マジで。
「だからね、フォースの手助けなしでやってみたいんだ~♪ いいでしょ?」
「ラルからは、お前を一人でキッチンに立たせんなって聞いてたんだけど?」
いつだったか、おれの知らないところで、ラルと鈴流は何度か、料理をしていたらしい。
鈴流はおれの力がなければ、実体を保てないが、魂の波長が合う人に憑依することで活動は可能だ。身近な人物で言えば、ラルがその対象にあたる。
だから、正確に言えば、料理したいと鈴流がラルにお願いして、ラルが体を貸し、料理に挑戦したという経緯らしい。
そんなラルからの助言だ。実際、その時に何かあったのか、想像に難くない。
「ほあ……? ちゃんと作れたけどな。前にした時は、ティール君とだったけど、なーんにもなかったよ?」
絶対に嘘だ。何もなかったら、ラルがわざわざ、おれに「一人で立たせるな」なんて、言うはずがない。
しかし、逆に言えば、『一人』でなければ、妥協しても言いとも言える。監視役というか、指南役というか。それをおれができるんなら、料理させてもいいんだけど、鈴流はおれとやりたくはないらしい。
「例えば……そうだな。手、出さないから、おれが後ろで見てるのは?」
「だめー! だって、そこにいちゃ、内緒の意味がないよ。フォースには内緒にしたいんだから!」
「あぁ……うん。そうなんだ……?」
さっきから、内緒、内緒と言っているが、おれに料理したいっつーのは、内緒の範疇じゃないんだろうか。おれに堂々と言ってるのは、何なんだろうな。
おれはため息をつきつつ、引っ付いて離れない鈴流を無理矢理、引き離した。
「とにかく、不安要素がある以上、お前一人で料理なんてさせられるか。諦めろ」
「えー! やだやだー! ぜーったい、やるの! やりたいのっ!」
「はあ!? ガキか、お前!?」
こうなってしまった以上、鈴流はなんとしてでも、自分の意思を貫こうとする。それがどんなに理不尽な方法だとしても。
鈴流は本当に子供みたいに頬を膨らませ、頑なに引こうとしない。こういうところは本当に子供っぽい。
おれじゃない誰かと一緒なら、鈴流も納得するんだろう。しかし、それを受け入れてくれる且つ、鈴流が何かやらかしても対処できるような人なんて……
「あれ、フォースくんに鈴流ちゃん? こんなところで、どうしたの~?」
「にゃあ?」
……あ、アルフ様。それにミィも。
たまたま通りかかったのだろうか。大量の資料を抱えたアルフ様と、そんなアルフ様の足元にミィが、こちらへと近寄ってくる。
「ほわ! アルフ様、ミィちゃん! お久しぶりです♪」
不機嫌そうな表情を浮かべていた鈴流がパッと笑顔を見せ、ミィを抱き上げる。そんな鈴流に、ミィも嬉しそうに彼女の頬にすり寄っていた。
「確かに。フォースくんとは、ちょこちょこ会ってるけど、鈴流ちゃんとは久しぶりだね~♪」
まあ、鈴流はあまり表に出てこないし、アルフ様と会うタイミングもなかったし。
アルフ様は何もない廊下をちらっと見て、こてんと首を傾げる。
「それで、こんなところで何してたの? 遠くからだったから、よく分かんなかったけど、言い合いしてた? 喧嘩?」
「え? あぁ、いや……そんなことは─」
「にゃにゃ!? にゃあーんっ!」
鈴流にじゃれていたミィがキッとおれを見上げて、何かを叱るように声を上げる。多分、喧嘩は駄目とか、そういう意味合いだろう。
「してねぇよ、喧嘩なんて」
「にぃ……?」
「なんでそんな疑われてんだ、おれ」
そこまで信用ない? なんで?
鈴流が苦笑しつつ、ミィを諌めるように優しく撫で、ニコッと笑う。
「だいじょぶだよ、ミィちゃん。私とフォースは喧嘩してないからね~♪」
「にゃ……」
鈴流が弁明してくれたが、まだどこか疑いは晴れていないようで、じとーっと見つめてきている。
これは一から説明するべきか……
おれは事の顛末をアルフ様とミィに説明した。それを聞いた一人と一匹は、納得したように何度も頷いた。
「つまり、鈴流ちゃんは料理がしたいけど、フォースくんは反対してるんだね?」
「まあ、そんなところです。鈴流は生前から、今の今までを通して、家事なんてやったことないですから。そんな奴をキッチンで一人になんて、させられませんよ。絶対に事故ります。恐らく、ここが爆発するかも」
「ひっどーい! 爆発はしないもん!」
「爆発『は』!? ってことは、爆発以外はありえるかもしんねぇのかよ」
「えっ!? し、しない……よ?」
「どもるな。キョロキョロすんな」
過去の料理で爆発はなくとも、他の事故は起こしてるって証拠だろ。その時、ラルやティールに何があったかなんて聞いてないけど、聞いとくべきだったかな。
「……鈴流ちゃんは、フォースくんの助けは借りたくないんだっけ?」
「はい! 内緒で作りたいので!」
「本人の目の前で、内緒で作りたいので、とか言うな。つか、なんでおれに『内緒』なんだ?」
「んと、憧れなの。ほら、よくあるでしょ? 愛する夫のために、妻が愛の手料理を振る舞う! ラブラブ夫婦の日常がしたくて」
よくあるのか? というか、そもそも、おれもお前も、食事を必要としませんが……?
「むぅ~……そういうことじゃないの。気持ちだよ。きーもーちー!」
「あ、そう……? 気持ち、ねぇ」
「カッコいい王子様と結婚したいと同じくらい、女の子の憧れだよ!」
「え、あ……そ、そう、なんだ?」
鈴流の憧れポイントが分からん。
鈴流の話を静かに聞いていたミィが、同意するように大きく頷く。
「わ~♪ ミィちゃん、分かってくれるの? じゃあ、私と一緒にアルフ様のためにお料理する?」
「にゃ~! にゃにゃにゃっ!」
鈴流の提案に目を輝かせ、何度も頷いた。ミィもやる気満々のようで……いや、それはまずくない?
「おや、珍しくミィが乗り気だね~♪」
「さっき、一人じゃ危ないからって話をしてたんですが!? そこにミィは駄目でしょう!?」
「えー? でも、やる気満々だしな~? ねぇ、ミィ?」
「にぃ~」
おねだりするように、大きな蒼い目をうるうるとさせ、甘えた目でアルフ様をじーっと見つめていた。こうなってしまうと、アルフ様はミィに弱いから、アルフ様はミィにやめるよう説得なんてしない。つまり、おれの味方は誰もいないってことだ。
もうこの際、やめさせるための説得なんてしないから、せめて、監督者を見つけなければ。この一人と一匹だけで、料理なんかさせられっか。ミィになんかあったら、アルフ様に怒られるのはおれだろ、これ……?
それだけは絶対に阻止せねば。兄貴やマスターみたいになりたくはない!
「あ、アルフさまー! こんなところにいらっしゃったのですね!」
「? ありゃ、エレルちゃんだ。どしたの~?」
大きく手を振りながら、こちらへと走ってきたのはおれの仲間の一人、エレルだ。彼女はいくつかの書類を抱え、アルフ様に手渡す。
「ウィル様からのお使いで来ました! 頼まれていた書類だそうです♪」
「わー! 流石、ウィルくん。ファウスさんと違って、仕事が早い♪ エレルちゃんもわざわざ、ありがとうね?」
「いえいえ~♪ ゆ? どしたの、フォース? 私の顔に何かついてる?」
「見つけた」
「? 何を?」
おれはエルから目線を外し、鈴流に移す。鈴流は不思議そうに首をかしげる
「なぁに?」
「おれ以外と一緒ならいいか? それなら、許してやるよ」
「! うんっ! それなら、だいじょぶ!」
よし。なら、今度は……
おれはエルに向き直り、がしっと肩を掴む。
「エル、折り入って頼みがある」
「う、うん? 何かな?」
大丈夫。なんにも難しいことはないから。



~あとがき~
今年も始まりました。年一の特別企画。

次回、エレルまでも巻き込み、料理大会開催。
ゆーて、ストーリーテラーのフォースは蚊帳の外なので、なんにも分からん。

鈴流が天界組と絡むのは、これが初めてですね。彼女は付喪神なので、一応、天界組に属します。しかし、普段はフォースの持つリボンの中で、大人しくしてるので、あまり出てこないんですけどね。
そんな彼女、家事全般苦手です。
本編にはありませんが、過去に二度、ラルやティールを巻き込み、やらかしてます。いつかそんな日常話が本編にもあるかもしれません。

ではでは。

レイ学4周年!

4年。丸4年。
未だに夏休みしてるんですが、それは!!??

まあ、それはそれとして。
今年もいつも通りの記念イラストだー!!



リーフ&ミユルちゃん。
何の繋がり? と思った方はコメント読んでもらえれば分かります←
ここ数年、夏休みの関係上、リーフ(と、ステラ)はまっったくの空気ですが、夏休み明ければ、なんとかなる(予定)ので、のんびりお待ちくだされ……!
今年中には中等部の2人も活躍の場が設けられる……はず。


では、今年もありがたいことに相方こと、mike猫よりイラストとコメントを預かってますので、そちらもどどーんと出していくぞ!!


そういうことらしいです。(雑)
記念イラストにはセラフィーヌさん(幼少期)とルーメンさん(中年期)を描いてくれました。今年が卯年ってのもあって、いい感じになってます。
そして、コメントにはプラスして、セイラ&ブライト(青年期)を描いてくれましたー!!
今の姿も見せてないのに、こっちが先なんだな!!
描いてくれて、ありがとうございました!

次回のレイ学は例年通り、天界組の話をお送りします。お楽しみに。
これからも相方共々、レイ学をよろしくお願いします!

明けましておめでとうございます!!!


卯年なラルちゃん。

普段なら、絶対、こんな格好しませんが……何かあったんやろな(笑)

ということで、明けましておめでとうございます。(新年明けて、3日経った。)
今年もよろしくお願いします。

毎回、話しているような気がしますが、今年の抱負の話。ざっくりと更新するぞ~~~とか、○○終わらすぞぉ~~~とか、そんな話しかしてないです。
まあ、それは変わらずあるんですけども!
レイ学は今やってる、夏休み編を全部、終わらすこと! あわよくば、秋のいいところまで進めること!!
他作品も更新したい……! したいよぉ~~~!!!
空海も忘れてないです。覚えてます。今、絶賛、バトルから逃げてるところです←?
そこを抜け出したいですね……いつになるやらですが。

個人的にリアルの充実も目指したいですね。
お絵描きとか、新しいやつ(TRPGリプレイ風小説進める)とか、ゲームとかとか、充実させたいですねぇ。
他にもまあ、あれこれしたいなぁと思います。(ざっくり)

こちらはゆるりとやっていきますので、お暇なときにでもちらりと覗いてやってくださいな。何かはやってますので←
ではでは!

よいお年を。

まあ、絵の通りです。
他に語ることもないです。

ということで、
今年1年、ありがとうございました!
晦日の今日、新年に向けて、のんびり過ごしている私です。
新年一発目から仕事明けするので、新年の挨拶は遅れそうですが……それはそれとして。

来年もまた、ゆるりとやっていきますので、お付き合いしてくだされば幸いです。

ではでは、皆様、よいお年を。

学びや!レイディアント学園 第366話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でだらだらしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、神子探しがスタートし、セイラがセラちゃんを捕まえたところで終わりました!
今回は一方その頃ってやつです。
ブライトがルーメンさんを捕まえられるのか!?……ってところから。
ラストまでばーっと走りますよ~!


ライトは街中をあるものを追いかけるために駆けていた。
その、あるものというのは、目の前を軽快に駆けていく一匹のオレンジのウサギだった。
水泉が見つけたウサギとの追いかけっこは、かなりの時間続いていた。初めは他の参加者が、あの手この手で追いかけ、捕まえようと試みていたのだが、どれも失敗に終わった。やがて、参加者らは体力の限界を迎えたのだろう。一人、また一人と脱落していた。
その結果、残ったのはライトだけになっていた。
「くっそ、滅茶苦茶すばしっこい。捕まる気あんのか、あの人っ!?」
『がーんばれ、がーんばれ!』
『るっちゃ、まだまだけんきなのら!』
「俺はしんどいけどな……!」
ギルドでの鍛練の成果もあり、体力には自信があるものの、ライトも人間である。無限に走り続けられはしない。
つまり、どこかでアクションを起こさない限り、この追いかけっこに終わりはない。
一応、ルーメンに対する対抗策がないわけではなかった。しかし、それなりに体力を使うため、できるならやりたくはない。
「……やりたくない。やりたくなかったけど、やらないと終わらねぇ……! あー! くそ! 来い、雪花っ!」
『ほあ!』
手元に雪花を呼び寄せ、剣として構える。ルール上、神子に対しての攻撃行為は禁止されているため、目の前のウサギを攻撃することはできない。
「この世界を凍りつかせろ。“絶対氷華”」
『あいあいさー!』
雪花を地面に突き刺し、力を注ぎ込む。すると、突き刺した地面が白く凍り始める。それに伴い、辺りの気温も下がり始めた。
普通のウサギは寒さに弱い。これは兎族のルーメンも同様らしく、寒さは得意ではない。それをライトは知っていた。
「頼むぞ、雪花」
『ん!』
強力な冷気を放ち続ける雪花を手放し、ウサギの元へ走る。
素早い動きで翻弄し続けていたウサギだったが、この寒さのせいで動きが鈍くなっている。それでも簡単には捕まらんと言いたげに、逃げる足を止めなかった。
「まだ逃げるか。……雪花!」
『ほよよ~!』
ライトの合図に雪花は冷気の届く範囲を広げる。それはどんなものより速く、強く、辺りを掌握した。
雪花は地面に氷の花を咲かせ、物を凍りつかせる。ここら一帯を氷の世界に変える程の力を加えてようやく、ウサギの足は止まった。
動かなくなったウサギを捕まえるのは子供にだって容易だ。ライトは息を切らしながらも、ウサギを持ち上げ、真っ暗な夜空と、そこで儚げに光る星々を仰ぐ。
「はぁっ……はあ……やっと、つっかまえた……!」
『やたー! るっちゃ、つかまえた!』
まるで自分が成し遂げたと言わんばかりに水泉は辺りを飛び回る。それを注意もせず、ライトは後方に置いてきた愛剣に片手を伸ばした。
「戻ってこい、雪花」
その一言で雪花はライトの手中に収まり、雪花の作り出した世界も一瞬にして消えてしまう。それを確認したライトは腕の中で大人しくするウサギを見下ろした。
「親方ですよね」
「……」
ウサギは何も答えない。分かりきったことを聞くなと言うような目をしていた。
──そして、これは唐突だった。
何の前触れもなく、ライトの体がぐらりと揺れ、支えを失った人形のように地面に倒れてしまったのだ。
これにはウサギも驚いたのか、ぎょっとしつつ、彼の腕から抜け出すと、強い光に包まれた。一瞬で晴れたその光から出てきたのは、神子衣装姿のルーメンだった。
「おい、ライト!? しっかりしろ!」
倒れてしまったライトの脈や呼吸を確認してみれば、特に異常はなかった。一応、急病ではないらしい。
そもそも、ライトは至って健康で、持病もない。仮に能力使用後なら、高い確率でこのような状況になり得るのだが、ルーメンを追いかけている間、ライトが能力を使う素振りもなかった。
つまり、ルーメンにはライトが倒れる要因が思い当たらない。
一方、ライトの剣の一つ、水泉はのほほんとした様子で『ありゃ~? でんちきれた~』と気になる発言をした。
「電池切れ? どういうことだ?」
『いーちゃ、ずっとおきてたもん。だから、でんちきれたの。……は! これ、いっちゃだめなんだっけ? あばあば! るっちゃ、ないしょだよ!?』
それだけルーメンに告げると、水泉も剣に戻ってしまい、何も喋らなくなってしまった。
しかし、今の水泉の言葉にルーメンは思い当たることがあった。
ルーメンは昨日の夜、作業をする彼の姿をギルドで見かけていた。その際、ライトには明日もあるのだから、早く寝なさいと声をかけていた。
「……徹夜明けであんな大技すりゃ、そうなるわ。全く馬鹿なヤツだ」
気持ち良さそうな寝息を立てるライトに対し、大きなため息をつきながら、起きない程度に軽く小突いた。

ルーメンが捕まった一報を聞き、セラフィーヌとセイラはルーメンの元へ向かった。
二人がルーメンの元に駆け寄れば、目の前の状況を目の当たりにした。
倒れているライトを横目に、彼の先輩らがルーメンと話をしているのだ。
「カズキさん、ハルさん……アンナさんまで。なんで……って、ライト!?」
「ライトくんっ! どうしたの!?」
「おお、来たか。いやぁ、何。ライトは心配いらない。全員の話を聞いてみれば、徹夜どころか、三徹くらいしてたみたいで、今、電池切れしてるところ」
「さ、三徹!? え、三日、寝てないってことですか!」
「そうなるねぇ?……私が三日前かね? 深夜まで作業するライトを見てるし、カズキも次の日に見てるんだよ」
「で、昨日は親方が見てるって訳でして。……いやぁ、全く気付かんかったわ!」
豪快に笑うカズキを横目に、セラフィーヌは、じとーっとライトを見下ろしていた。セイラは困ったように笑いつつも、今日のライトの様子を思い起こしていた。
いつもより眠そうにしていたこと。
神子探しの際、本調子ではないと溢していたこと。理由を聞いた時、慣れないことをしたせいだと言っていたことを思い出す。
素直に言わなかったのは、当人は問題ないと判断したからだ。少なくとも、祭りを見て回る程度の体力はあると思ったのだろう。
「こんな時になんですが……ライトはルーメンさんを捕まえたのですか?」
「あぁ、きちんと捕まえてくれたよ。こいつ、私の苦手分野で攻めてきてな。……まあ、捕まえた後、ばったり倒れるもんだから、ぜーんぜん締まらんけども」
ルーメンの言う通りだとこの場の全員が頷く。全員が呆れ返っていた。
ルーメンはパチンっと手を鳴らす。
「まあ、ただ疲れて寝てるだけなら、問題ないだろ。……セイラさん、ライトについてやってくれるかい?」
「はい! もちろんです!」
「カズキ、ハル。ライトをギルドの医務室に。セラ、私達は壇上に上がり、観客達に説明をするぞ。この様子じゃ、加護の付与は後日になるだろうからな」
「了解です」
「はい、お父さま!」
「アンナは持ち場に戻って、この後の片付けを頼む」
「了解だよ、親方」
この場の全員に指示を出し終えたルーメンはふうっと息を吐き、各々が行動するように促した。

女神祭の全工程が終了し、片付け等もギルドメンバーの協力もあり、粗方済んだ頃。
普段着に着替えたルーメンとセラフィーヌは、ライトの様子を見るため、医務室へと向かっていた。
セラフィーヌはぷくっと頬を膨らませ、不満げな声を漏らす。
「せーっかく色々したのに、ライトくんが寝ちゃったら台無しだよー! ぶー!」
今年の祭りはセイラのためにと奮闘していたセラフィーヌにとって、あの終わり方は不服であった。当然である。思い描いた結末とは違うのだから。
「今日じゃなくても、きっかけになればって話じゃなかったかい?」
「む~……でもでも、お姉様が幸せになるなら、早い方がいいもん」
「まあ、早いに越したことはないけどねぇ。そこは本人達のペースってもんに」
「あ、ついた! お姉様ー! 来たよー!」
「やれやれ……聞いてない」
目的地に着くやいなや、セラフィーヌはコンコンっと部屋をノックし、盛大に扉を開けた。最早、ノックの意味がないと思えるくらい大きな音が辺りに響く。
「お姉様ー! ライトくん起きたー!?」
「今の音で、起きてなくても起きそうだがなぁ……様子はどうかな、セイラさ……ん?」
ルーメンがセイラに目を向ければ、そこには顔を両手で覆い、体を震わせるセイラと、こちらを驚いた様子で見つめるライトの姿がある。
「お、お疲れ様です。親方、お嬢」
「お前もな。……もしかして、取り込み中だったか? それなら申し訳ないことをしたな」
「いえ。適当に話していただけですから、お気遣いなく」
ライトの言葉に、ルーメンは何やら思案し始める。この場の空気と、セイラの様子に思うところがあったのかもしれない。
セラフィーヌもセイラの様子が気掛かりだった。心配そうに話しかけるも、あまり反応のないセイラに、原因は一つしかないと決めかかり、キッとライトを睨む。
「ライトくん、お姉様に何したの!?」
「何って。……セイラ、これって言っていいやつ?」
ライトの言葉にセイラはガバッと顔を上げる。彼女は顔を真っ赤にさせ、何度も首を横に振る。
「ん~~~っ!? 駄目っ! 恥ずかしい! 今は誰にも言わないでっ!!」
「ふーん。そういうもん? じゃあ、何もしてないです」
「嘘だー!!!」
「俺からは何も言えません。セイラから聞いてください」
それだけ言うと、ライトは立ち上がり、呑気に欠伸を漏らしながら背伸びをし始める。そんな彼をルーメンは横目に見つつ、ぼそっと名前を呼ぶ。
「なあ、ライト」
「くあぁ~……あ、はい。なんですか?」
「おめでとう、で、あってるか?」
セラフィーヌのお膳立ての数々、それを経て今のセイラの様子を踏まえて、そう告げる。
ライトはちらりとセイラを見て、彼女やセラフィーヌがこちらを気にしていないのを確認すれば、小さく頷いた。
「親方の思うそれが、俺と相違なければですが」
「ほ~う?……そうか。ようやくか」
ルーメンは小さく笑い、ライトの背中をとんっと叩く。
「頑張れよ、ライト」
「はい」
程なくして、どこから広まったのか。
ライトとセイラの関係が進展し、晴れて『友人』から『恋人』関係になったと広まるのは、数日後の話である。



~あとがき~
うぇ~い! 終わった!!!
今年最後の更新でしたが、意外ときりのいいとこで終わって満足!
三人称視点のような、一人称視点のような曖昧な回想でしたが、終わります!

次回、馴れ初め話のまとめ回。
回想中に回収しきれなかった部分とかをばーっとできたらと。

ブライトもティール同様、同じ能力を持っています。しかし、コントロール精度がティールよりもはるかに劣り、且つ、ティール以上の火力持ちのため、滅多なことでは使いません。今までも片手で足りる程度しか使用してません。
ちなみに、アルドアーズも二人と同じ能力を持ってますが、彼もまたそこまで使うことはないです。純粋に能力に頼るより、自身の戦闘能力の方が信用に足るからです。別にブライトみたく、危ないから使わねぇってことはない。

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第365話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でだらだらしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ブライトとセイラの若かりし頃のデート(?)風景でした。
今回は本筋に戻り、神子探しの回だ!
え、セラさんとルーメンさんの神子神楽?
……ご、ご想像にお任せします。
ラル「作者の乏しい想像力じゃ思い付かなかったんだと」
ひえん。
まあ、セイラやブライトはきちっと見てますんで。凄かったなーって思ってますんで!
ラル「そういう問題じゃないやろ」


『神子神楽』とは、女神ミルティアに感謝を捧げる舞である。
これを目当てに訪れる観光客も多い。
それ程までに、スプランドゥールの女神祭は有名であり、その祭りのメインイベントともいえる『神子神楽』が、ギルド前のステージにて披露されていた。
二人の神子の洗礼された動き、奏者らの奏でる音楽の調和に、観客達は感嘆を漏らす。
そして、普段の二人を知るセイラとライトも同様だった。
「凄いね」
「……だな」
言葉もないとはこの事なのかと思う程、今の感情を表す言葉が見つからなかった。
そんな神秘的な光景を目の当たりにした後、セラフィーヌとルーメンが高らかに宣言するのは、『神子探し』開始の合図。
神子探しのルール、禁止事項、捕まえた人に神子からの特別な祝福があること等を観客……もっと言えば、参加者達に説明した。
それらを話し終えたセラフィーヌは、大きく手を広げながら満面の笑みを浮かべ、ルーメンは力強い笑みを見せる。
「「それでは、神子探しのお時間です!!」」
親子、声を揃えて魔法を唱えれば、セラフィーヌ、ルーメン共にウサギに変身し、共に呼び出したウサギ達と街の中へと消えていった。
ウサギ達を追いかけるため、参加者達も遅れて街中を駆けていく。
──そのような光景をセイラとライトは、観客席から見ていた。
「自由参加なんだな、あれ」
「みたいだね。事前に受付しまーすとか、なかったよね? 飛び入り参加、大歓迎なのかも」
「そっちの方が祭りって感じするし、特に問題もないんだろ」
セイラはちらりとライトを見る。
やはり大して興味ないようで、ふわりと欠伸をしながら、辺りの様子を見ていた。
望み薄かなぁ、なんて思いながら、セイラはライトに『神子探し』を一緒にやってほしいと告げる。
「……なんで俺と?」
「セラちゃんに参加して欲しいって言われてたじゃん」
「言われたけど、俺は参加するなんて言ってない」
それはそうである。あれはあくまで、セラフィーヌのお願いであり、強制ではない。
ならば、とセイラは自身の本心を語り始めた。
「その……一緒に参加できたら、楽しそうかなって。いい思い出になりそうじゃない? 神子探しって、毎回あるものじゃないしさ」
「まあ、そうらしいけど」
「でしょ? それに……純粋に私はライトと参加したいなって」
「……ふーん」
やはり彼からの反応は薄い。
セイラはこれ以上何を言えば、ライトを本気にさせることができるのだろう、と思考を巡らすものの、残念なことに妙案は浮かばない。
こうなれば、いつも振り回しているように、無理矢理にでも参加させるしかないか、と思い始めた頃、ライトは無言でセイラの手を掴み、人混みから抜け出した。
「わ! ラ、ライト? 急にどうしたの?」
「やるんだろ、神子探し。なら、あそこで突っ立ってても意味ねぇよ。……こっち来い」
「! ほんと! 出てくれるの!?」
セイラの言葉にライトは無言で頷く。
二人はギルド前からある程度離れて、人が少ない開けた場所に出る。ライトは空いていたベンチに腰かけると、バッグからいくつか道具を取り出し、何やらいじり始める。
「出るつっても……今の俺、本調子じゃないから、あんま期待するなよ」
「え! そうなの!? 大丈夫?」
「大丈夫。慣れないことばっかしてたからだと思うし。……お前、端末とか連絡手段、持ってる?」
「今日は持ってないよ。ダンジョンとか行く訳じゃなかったし」
「……だよな。じゃ、ある程度、方針……作戦を決めて挑むぞ」
ライトが決めた方針は単純だった。
ライトがルーメンを、セイラがセラフィーヌを手分けして捜すこと。これだけだった。
しかし、一言に捜すと言っても、広い街中で子ウサギ一匹見つけるのは簡単ではない。
元々、索敵に自信のあるセイラだが、流石に一長一短で見つかるものではないと理解していた。
「このゲームは時間制だからな。悠長に捜している暇はない。……セイラ、これ渡しとく」
ライトが差し出したのはスポーツ用のサングラスだった。この場面で手渡してくるのなら、何らか意味のある道具なのは分かる。しかし、それがなんなのか、セイラには見当がつかなかった。とりあえず、素直に受け取ると、ライトは取り出した道具類をバッグにしまい、ベンチから立ち上がる。
「仕組みとか説明する時間も惜しいから、効果だけ話しとく。それを使えば、大雑把にだけど、お嬢の居場所が分かる。後はお前の索敵でカバーしろ」
「え、あ、うん! なんか凄いの持ってるね? ライトも同じもの使うの?」
「二つ持ってないし、そもそも親方に同じ手法は使えない。あ、それ、お嬢に教えるなよ。バレたら面倒くさそうだから」
「わ、わかった。ライトはどうするの?」
「俺はこいつらになんとかさせる」
と、ライトは自身の腰に装備されている聖剣をぽんっと叩く。
「この後、大いに働いてもらうからな。頼むぞ、水泉。雪花もな」
『あいさー! まっかせて!』
『あいあいっ! るっちゃ、つかまえちゃうよ!』
「どうやって……まさか、能力使う気じゃ!」
ライトには液体を自在に操る能力があった。それと水泉を使用し、捜索するつもりなのかと思い当たる。しかし、彼の持つ能力は彼自身、細かなコントロールができないせいで、危険なものであった。最悪、命にも関わる程に。
焦るセイラにライトは肩をすくめ、「単なる追いかけっこに、命賭けてたまるか」とため息混じりに否定する。
「この街には、水撒き用のパイプが街中に張り巡らされている。そこに水泉の力が混じった水が少しでも流れれば、あいつのテリトリーになる。……水を司る聖剣の名は伊達じゃないんだぜ?」
「は、はわ……なるほど?」
「絶対、理解してないだろ。……まあ、いいや。んじゃ、行動開始といこう。お互いの力を信じて、捕まえられるように祈ってな」
「うん……! 頑張るよ!」
二人は互いの健闘を祈るためハイタッチを交わし、各々、別れて捜索を始めた。

セイラはライトに渡されたサングラスをかけ、街中を捜索していた。
街のあちこちで、爆発音やら、参加者の悲鳴やらが聞こえてくる辺り、妨害の被害に遇う参加者も少なくないのだろう。
「爆発に巻き込まれるとか、やだよ、私~……にしても、このサングラス凄いな。マップ表示してくれるし」
単なるサングラスではないようで、これをかけるだけで、視界にマップが写り、自分が今、どこにいるのか、おおよそセラフィーヌとどのくらいの距離があるのかを教えてくれていた。
「どうやってセラちゃん捜してるんだろ、これ?」
なんて考えながら、マップの示す通りに歩いていけば、目的地に到着する。しかし、パッと見、セラフィーヌと思われるウサギの姿はない。ライトの言う通り、大雑把にしか分からないらしい。
「この先は私が捜せってね……範囲が絞られてるなら、問題なしっ!」
セイラはバッグからギターを取り出し、じゃらんと鳴らす。そして、そっと目を閉じ、意識を集中させた。
セイラの索敵は音を使った物だった。セイラに言わせれば、音には特徴があり、一つとして同じ物がない。それを一つ一つ捉え、何かを特定し、どこに何があるのか、何がいるのかを捜し当てていた。耳のいいセイラだからこそできる技とも言える。
ゆっくりと目を開く。彼女の口元には自然と笑みが溢れていた。
「……いた。セラちゃん」
ギターをしまい、代わりに弓矢を取り出して、見当のつけた場所まで一気に駆け出していった。
走り出してすぐ、数人の参加者に追われるウサギを見つける。薄ピンクの子ウサギは、その小柄な体格を活かして、巧みに捕獲の魔の手から逃れ続けていた。
「やった! みっけ♪ まずは……三連矢でっ!」
手始めに三本の矢を手にし、すかさず発射。子ウサギに当たらないよう配慮したつもりだったが、あちらも矢の音に気付いたのか、すぐ側に迫っていた参加者の手をするりと避ければ、肩に飛び乗り、セイラの矢からも逃げていく。
「だよね~……さて、と。どこに行こうか」
逃げる子ウサギを追いかけつつ、視界に写されるマップを眺める。すぐ近くに追い込めそうな路地があり、幸運にも、そこは行き止まりだった。そこへ追い込めば、子ウサギを捕獲できそうだ。
「──よし、やりますか!」
捕獲するために、まずは他の参加者と差をつける必要がある。せっかく追い込んだのに、横取りされる……なんて展開は、望んでいないからだ。
セイラはバッグから煙玉を数個、取り出し、参加者達の頭上に投げる。そして、すかさず、矢で煙玉を全て射る。すると、パンッと彼らの頭上で煙玉が弾け、広範囲に濃い煙が立ち込める。
普通なら、セイラの視界も悪くなるところだが、今の彼女にはライトからもらったサングラスがある。
「ふっふふ~ん♪ これにも見通し眼鏡と同じ機能があるの、見逃してないよ! 私っ!」
それを使って視界を確保したところで、参加者の間を縫って、子ウサギへと迫っていった。目星をつけた路地に誘導するように矢をいくつも放ち、子ウサギの行動を制限していく。そして、子ウサギはセイラの思惑通り、路地へと曲がった。その先が袋越路である路地へ。
「入った! 作戦通りだ♪」
路地へと追い込まれた子ウサギだが、まだ諦めてはいない様子で、放置された木箱やゴミ箱を足場にして、逃げ出そうと試みる。
しかし、それもセイラの予想通りである。
子ウサギが足場にしようとしている物に矢を放ち、そちらへ行かないように捌いていく。
そして、最後の仕上げと言わんばかりに照準を子ウサギの足元に合わせた。
「これで終わり」
目にも止まらぬ早さで飛んでいった矢には、子ウサギの足を奪うためのとりもちのような粘着物を取り付けておいたのだ。
子ウサギはセイラの思惑通り、それに足を取られ、ぴたりと動きが止まってしまう。
「つっかまえた♪」
セイラは子ウサギの足に纏わり付くそれを丁寧に取り、そっと抱き上げる。そして、サングラスを外し、にこっと笑った。
「セラちゃん、だよね?」
「……」
子ウサギはするりとセイラはの腕から抜け出すと、一瞬、まばゆい光に包まれる。その光の中から現れたのは神子衣装に身を包む、セラフィーヌの姿があった。
「だいせ~かいっ! 流石、お姉様♪ セラも頑張ったのにな~? お姉様の弓捌きに負けちゃった」
「セラちゃんもなかなかだったよ。小さな体を活かして、あちこち逃げるんだもん。誘導するの、大変だったんだよ?」
「えへへ♪ お父さまと逃げる練習いっぱいしたからね! えと、あとはお父さまが残ってるのかな? んもう、ライトくん、何してるんだろ」
「ふふ♪ 相手はルーメンさんだもん。一筋縄じゃいかないんじゃないかな」
「ん~……それもそっか♪」
セイラはライトが向かったはずの方へ目を向ける。仮にルーメンが捕まったのなら、何らかのアナウンスがあるはずだ。それがないのなら、まだ『神子探し』は終わっていない。
「ライト……信じてるよ」



~あとがき~
すまん。ここまで描写するつもりはなかった。楽しくなってしまってな、ブライト側が入らんかったのや。

次回、ライトVSルーメン(ウサギ)!
神子探しの行方はいかにー!

セイラのメイン武器は弓。つまり、ティールの華麗な弓捌き(エイム力とも言うかもしれない)はセイラ譲りです。
ティールの戦闘スタイルって、二人のいいとこ取りしたような感じなんですよね。剣の腕のよさはブライト譲りだし、狙いのよさはセイラ譲り。
とはいえ、彼のアイデンティティは二刀流、双剣使いってとこにあるんですけどね~

ではでは!